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JP4673519B2 - 交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法 - Google Patents

交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極プラス極性の電流と電極マイナス極性の電流とを切り換えて溶接する交流ガスシールドアーク溶接における溶接ワイヤの送給制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、従来技術の交流ガスシールドアーク溶接を行うための構成図である。同図は溶接ロボットを使用した場合を例示する。以下、同図を参照して説明する。
ロボット制御装置RCは、予め教示された作業プログラムに従ってマニピュレータRMを移動させるための動作制御信号Mcを出力すると共に、後述する溶接電源装置PSへ電圧設定信号Vs、電極マイナス電流比率設定信号Rs及び電流設定信号Isを出力する。
【0003】
溶接電源装置PSは、下記の回路ブロックから構成される。出力制御回路INVは、交流商用電源(3相200[V]等)を入力として、図示しない1次側インバータ回路によって出力制御された直流出力を、図示しない2次側インバータ回路によって電極プラス極性と電極マイナス極性とに切り換えて、交流の出力電圧Vo及び出力電流Ioをアーク負荷に供給する。また、この出力制御回路INVは、図2で後述するように、出力電圧Voを全波整流して平均化した溶接電圧平均値Vavが上記の電圧設定信号Vsと略等しくなるように出力制御すると共に、出力電流Ioを全波整流して平均化した溶接電流平均値Iavに占める電極マイナス電流の比率である電極マイナス電流比率Renが上記の電極マイナス電流比率設定信号Rsと略等しくなるように極性を切り換える。電流・送給速度変換回路IWCCは、上記の電流設定信号Isを入力として、図3で後述する予め定めたワイヤ溶融特性に基づいて送給速度設定信号Wsを出力する。送給制御回路FCは、この送給速度設定信号Wsに相当する送給速度で溶接ワイヤを送給するための送給制御信号Fcをワイヤ送給モータFMへ出力する。マニピュレータRMは、ワイヤ送給モータFM及び溶接トーチ4を搭載して、溶接ワイヤ1と被溶接物2との間にアーク3を発生させて溶接しながら移動する。
【0004】
図2は、交流ガスシールドアーク溶接の一つである交流パルスアーク溶接の出力波形図である。同図(A)は出力電流Ioの時間変化を示し、同図(B)は出力電圧Voの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
▲1▼ 時刻t1〜t2の期間(ピーク期間Tp)
予め定めたピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、1パルス1溶滴移行させる値に予め定めた電極プラス極性のピーク電流Ipを通電し、同図(B)に示すように、アーク長に対応した電極プラス極性のピーク電圧Vpが印加する。
▲2▼ 時刻t2〜t3の期間(電極マイナス期間Ten)
予め定めた電極マイナス期間Ten中は、同図(A)に示すように、溶滴移行させない値に予め定めた電極マイナス電流Ienを通電し、同図(B)に示すように、アーク長に対応した電極マイナス電圧Venが印加する。
▲3▼ 時刻t3〜t4の期間(ベース期間Tb)
ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴移行させない値に予め定めた電極プラス極性のベース電流Ibを通電し、同図(B)に示すように、アーク長に対応した電極プラス極性のベース電圧Vbが印加する。
【0005】
同図(A)に示す溶接電流平均値Iavは、時刻t1〜t2のピーク電流Ip及び時刻t3〜t4のベース電流Ibの電極プラス電流Iepと、時刻t2〜t3の電極マイナス電流Ienとから形成される出力電流Ioを、全波整流して平均化した電流値である。また、電極マイナス電流比率Renは、上記の溶接電流平均値Iavに占める電極マイナス電流Ienの比率であり、同図の場合には下式のように定義される。
Ren[%]=100・|Ien|・Ten/(Ip・Tp+|Ien|・Ten+Ib・Tb)
また、同図(B)に示す溶接電圧平均値Vavは、出力電圧Voを全波整流して平均化した電圧値である。この溶接電圧平均値Vavはアーク長と比例関係にあるので、前述した電圧設定信号Vsと溶接電圧平均値Vavとが略等しくなるようにベース期間Tbの時間長さを増減させることによって、アーク長を適正値に維持する。
【0006】
図3は、前述した電流・送給速度変換回路IWCの入出力信号の関係を示すワイヤ溶融特性図である。同図において、横軸は入力信号の電流設定信号Isを示し、縦軸は出力信号の送給速度設定信号Wsを示す。同図は、溶接ワイヤにアルミニウム合金A5356、直径1.2[mm]を使用し、電極マイナス電流比率Ren=20[%]の場合である。一般的に、電極マイナス電流比率Renの値としては20[%]程度で使用されることが多く、標準的な値である。
【0007】
ところで、消耗電極ガスシールドアーク溶接では、溶接ワイヤの種類及び直径が選定されると溶接電流平均値Iavは送給速度Wfに略比例して定まる。この溶接電流平均値Iav(電流設定信号Is)と送給速度Wf(送給速度設定信号Ws)との関係を示すのが、同図のワイヤ溶融特性L1である。したがって、例えば電流設定信号Isが100[A]のときは、ワイヤ溶融特性L1から送給速度設定信号Wsは800[cm/min]となり、同様に、電流設定信号Isが150[A]のときには、ワイヤ溶融特性L1から送給速度設定信号Wsは1250[cm/min]となる。電流・送給速度変換回路IWCは、電流設定信号Isを入力として、同図に例示するように予め定めたワイヤ溶融特性によって、送給速度設定信号Wsを出力する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図4は、上述した従来技術の交流ガスシールドアーク溶接において、電極マイナス電流比率Ren(横軸)を変化させたときの溶接電流平均値Iav(縦軸)の変化を示す関係図である。同図に示す特性L21は電流設定信号Is=100[A]のときであり、特性L22は電流設定信号Is=150[A]のときである。
以下、同図を参照して説明する。
【0009】
特性L21は、電流設定信号Is=100[A]のときであるので、図3の説明の項で前述したように、送給速度設定信号Ws=800[cm/min]となる。図3で前述したワイヤ溶融特性L1は電極マイナス電流比率Ren=20[%]の場合であるために、特性L21において、電極マイナス電流比率Ren=20[%]のときの溶接電流平均値Iav=100[A]となる。しかし、電極マイナス電流比率Ren=10[%]のときには、特性L21に示すように、溶接電流平均値Iav=115[A]になり、電極マイナス電流比率Ren=30[%]のときには、特性L21に示すように、溶接電流平均値Iav=90[A]となる。このように、電極マイナス電流比率Renが変化すると、それに応じて溶接電流平均値Iavも変化するために、電流設定信号Is=100[A]と一致せず誤差が生じてしまう。同様に、特性L22は、電流設定信号Is=150[A]のときであるので、図3の説明の項で前述したように、送給速度設定信号Ws=1250[cm/min]となる。この特性L22に示すように、電極マイナス電流比率Ren=20[%]のときには溶接電流平均値Iav=150[A]であるが、電極マイナス電流比率Ren=10[%]のときには溶接電流平均値Iav=170[A]となり、電極マイナス電流比率Ren=30[%]のときには溶接電流平均値Iav=130[A]となり、電流設定信号Is=150[A]と一致せず誤差が生じてしまう。
【0010】
ところで、良好な溶接品質を得るためには、被溶接物の材質、板厚、継手形状等に応じて電極マイナス電流比率設定信号Rsの値を適正値に変更する必要がある。しかし、電極マイナス電流比率設定信号Rsの値を変更すると、それに応じて溶接電流平均値Iavが変化するために、電流設定信号Isの値と一致しなくなる。一般的に、自動車、電機機器等の製造のための溶接施工工程においては、被溶接物の品質管理のための重要な管理項目の一つとして溶接電流平均値がほとんどの場合使用されている。したがって、電流設定信号Isの値と溶接電流平均値Iavとが、品質管理を行うために常に略一致している必要がある。しかしながら、上述したように、従来技術では、電極マイナス電流比率設定信号Rsが変化すると、それに応じて溶接電流平均値Iavも変化するために、品質管理を行う上で問題であった。また、電流設定信号Isと実際の溶接電流平均値Iavとが一致しないことは、溶接条件設定が難しくなる。
【0011】
そこで、本発明では、電極マイナス電流比率設定信号Rsの値が変化しても、溶接電流平均値Iavは変化せず常に電流設定信号Isの値と一致する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図5及び図6に示すように、
送給速度設定値Wsに相当する送給速度Wfで溶接ワイヤを送給すると共に、電極プラス極性の電流Iepと電極マイナス極性の電流Ienとを切り換えて通電し、上記電極プラス電流Iep及び上記電極マイナス電流Ienを全波整流して平均化した溶接電流平均値Iavに占める上記電極マイナス電流の比率Renが予め定めた電極マイナス電流比率設定値Rsと略等しくなるように上記極性を切り換えて溶接する交流ガスシールドアーク溶接において、
上記電流設定値Is及び上記電極マイナス電流比率設定値Rsを入力として、上記電極マイナス電流比率Renが変化しても上記溶接電流平均値Iavが上記電流設定値Isと略等しくなるように予め定めた送給速度演算関数Ws=f(Is,Rs)によって上記送給速度設定値Wsを演算して設定し、この送給速度設定値Wsに従って送給速度を制御する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法である。
【0013】
第2の発明は、図7及び図8に示すように、
第1の発明に記載する送給速度演算関数Ws=f(Is,Rs)が、溶接ワイヤの種類及び直径に応じて変化する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
[第1の発明]
第1の発明は、電流設定値Is及び電極マイナス電流比率設定値Rsを入力として、電極マイナス電流比率Renが変化しても溶接電流平均値Iavが電流設定値Isと略等しくなるように予め定めた送給速度演算関数Ws=f(Is,Rs)によって送給速度設定値Wsを演算して設定し、この送給速度設定値Wsに従って送給速度を制御する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法である。以下、図面を参照して説明する。
【0015】
図5は、電流設定信号Is及び電極マイナス電流比率設定信号Rsを入力として、送給速度設定信号Wsを演算する送給速度演算関数を例示する図である。同図は、溶接ワイヤにアルミニウム合金A5356,直径1.2[mm]を使用した場合である。以下、同図を参照して説明する。
【0016】
送給速度演算関数をWs=f(Is,Rs)と表記することにする。同図において、特性L31は、電流設定信号Is=100[A]のときの電極マイナス電流比率設定信号Rs(横軸)に対する送給速度設定信号Ws(縦軸)の関係を示す。したがって、特性L31は送給速度演算関数Ws=f(100,Rs)を示すことになる。この特性L31に示すように、電流設定信号Is=100[A]及び電極マイナス電流比率設定信号Rs=20[%]のときには送給速度設定信号Ws=800[cm/min]となり、電極マイナス電流比率設定信号Rs=10[%]のときには送給速度設定信号Ws=610[cm/min]となり、電極マイナス電流比率設定信号Rs=30[%]のときには送給速度設定信号Ws=910[cm/min]となる。
【0017】
また、特性L32は、電流設定信号Is=150[A]のときの電極マイナス電流比率設定信号Rs(横軸)に対する送給速度設定信号Ws(縦軸)の関係を示す。したがって、特性L32は送給速度演算関数Ws=f(150,Rs)を示すことになる。この特性L32に示すように、電流設定信号Is=150[A]及び電極マイナス電流比率設定信号Rs=20[%]のときには送給速度設定信号Ws=1250[cm/min]となり、電極マイナス電流比率設定信号Rs=10[%]のときの送給速度設定信号Ws=1090[cm/min]となり、電極マイナス電流比率設定信号Rs=30[%]のときの送給速度設定信号Ws=1380[cm/min]となる。
【0018】
上述したように、電流設定信号Is及び電極マイナス電流比率設定信号Rsを入力として、予め定めた送給速度演算関数によって送給速度設定信号Wsを演算する。この送給速度演算関数は、電流設定信号Isの値ごとに同図に示す特性を実験によって算出し、その結果に基づいて定義する。上記の特性は、電流設定信号Isの値が50,100,150…と50[A]ステップで算出して、そのステップの間の電流設定信号Isの入力値に対しては、特性間の補完によって送給速度設定信号Wsを演算してもよい。
【0019】
図6は、上述した第1の発明を実施するための溶接装置の構成図である。同図において、前述した図1と同一の装置及び回路ブロックには同一符号を付し、それらの説明は省略する。以下、図1とは異なる回路ブロックである点線で示す送給速度演算回路WSCについて説明する。
送給速度演算回路WSCは、電流設定信号Is及び電極マイナス電流比率設定信号Rsを入力として、予め定めた送給速度演算関数f(Is,Rs)によって演算して、送給速度設定信号Wsを出力する。この送給速度演算関数f(Is,Rs)は、図5の説明の項で前述したようにして予め定義する。
【0020】
[第2の発明]
第2の発明は、前述した送給速度演算関数f(Is,Rs)が、溶接ワイヤの種類及び直径に応じて変化する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法である。以下、図面を参照して説明する。
【0021】
図7は、溶接ワイヤにアルミニウム合金A4043、直径1.2[mm]を使用したときの送給速度演算関数を例示する図である。前述した図5とは溶接ワイヤの種類が異なるので、特性も異なっている。同図に示す特性に基づいて、溶接ワイヤにアルミニウム合金A4043、直径1.2[mm]を使用したときの送給速度演算関数が定義される。
【0022】
図8は、溶接ワイヤにアルミニウム合金A5356、直径1.0[mm]を使用したときの送給速度演算関数を例示する図である。前述した図5とは溶接ワイヤの直径が異なるので、特性も異なっている。同図に示す特性に基づいて、溶接ワイヤにアルミニウム合金A5356、直径1.0[mm]を使用したときの送給速度演算関数が定義される。
【0023】
上述したように、溶接ワイヤの種類及び直径の組み合わせごとに、適正な送給速度演算関数を定義する必要がある。上記の例では、溶接ワイヤにアルミニウム合金を使用した場合について説明したが、鉄鋼、ステンレス鋼等の他の金属についても同様である。
ところで、電流設定信号Isの値と溶接電流平均値Iavとを常に一致させる別の方法として、電流設定信号Isを目標値として溶接電流平均値Iavをフィードバック制御する方法がある。しかし、この方法では、溶接中に刻々と送給速度が変化することになり、アーク発生状態が不安定になりやすいという問題がある。これに対して、本発明では、電流設定信号Isが変更されない限り、溶接中に送給速度が変化することはなく、アーク発生状態が不安定になることはない。
【0024】
【発明の効果】
本発明の交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法では、送給速度演算関数によって電極マイナス電流比率設定値Rsに対応した送給速度設定値Wsが演算されるので、常に溶接電流平均値Iavは電流設定値Isと一致する。したがって、溶接施工時に溶接電流平均値Iavを正確にかつ容易に設定することができるので、溶接品質が常に良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の交流ガスシールドアーク溶接装置の構成図
【図2】交流パルスアーク溶接の出力波形図
【図3】電流設定信号Isと送給速度設定信号Wsとの関係図
【図4】電極マイナス電流比率Renと溶接電流平均値Iavとの関係図
【図5】送給速度演算関数の特性を例示する図
【図6】本発明の溶接装置の構成図
【図7】送給速度演算関数の別の特性を例示する図
【図8】送給速度演算関数の別の特性を例示する図
【符号の説明】
1 溶接ワイヤ
2 被溶接物
3 アーク
4 溶接トーチ
f(Is,Rs) 送給速度演算関数
Ib ベース電流
Ien 電極マイナス電流
INV 出力制御回路
Io 出力電流
Ip ピーク電流
Is 電流設定(信号/値)
IWC 電流・送給速度変換回路
Mc 動作制御信号
PS 溶接電源装置
RC ロボット制御装置
Ren 電極マイナス電流比率
RM マニピュレータ
Rs 電極マイナス電流比率(信号/値)
Tb ベース期間
Ten 電極マイナス期間
Tp ピーク期間
Vb ベース電圧
Ven 電極マイナス電圧
Vo 出力電圧
Vp ピーク電圧
Vs 電圧設定信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
Wf 送給速度
Ws 送給速度設定(信号/値)
WSC 送給速度演算回路

Claims (2)

  1. 送給速度設定値に相当する送給速度で溶接ワイヤを送給すると共に、電極プラス極性の電流と電極マイナス極性の電流とを切り換えて通電し、前記電極プラス電流及び前記電極マイナス電流を全波整流して平均化した溶接電流平均値に占める前記電極マイナス電流の比率が予め定めた電極マイナス電流比率設定値と略等しくなるように前記極性を切り換えて溶接する交流ガスシールドアーク溶接において、
    前記電流設定値及び前記電極マイナス電流比率設定値を入力として、前記電極マイナス電流比率が変化しても前記溶接電流平均値が前記電流設定値と略等しくなるように予め定めた送給速度演算関数によって前記送給速度設定値を演算して設定し、この送給速度設定値に従って送給速度を制御する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法。
  2. 請求項1に記載する送給速度演算関数が、溶接ワイヤの種類及び直径に応じて変化する交流ガスシールドアーク溶接の送給制御方法。
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