以下、図面を参照して、本発明に係る物体検出装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る物体検出装置を、車両に搭載される衝突軽減装置に適用する。本実施の形態に係る衝突軽減装置は、検出対象として前方車両を検出し、前方車両との衝突を防止/軽減するために各種制御を行う。特に、本実施の形態に係る衝突軽減装置では、前方車両を検出するためにミリ波レーダとステレオカメラの2つのセンサを備え、ミリ波レーダによる検出物体とステレオカメラによる検出物体とを照合することによって前方車両を検出する。本実施の形態には、照合処理の違いにより2つの形態があり、第1の実施の形態が各センサについて検出物体に対する追跡処理を行わない形態であり、第2の実施の形態が各センサについて検出物体に対する追跡処理を行う形態である。
図1〜図7を参照して、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る衝突軽減装置の構成図である。図2は、本実施の形態に係るレーダ物標、ステレオ画像物標及びフュージョン物標の説明図である。図3は、第1の実施の形態に係る前回フュージョン物標とレーダ物標との照合方法の説明図である。図4は、第1の実施の形態に係る前回フュージョン物標とステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図5は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図6は、本実施の形態に係るステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が2個存在する場合のレーダ物標とステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図7は、本実施の形態に係るレーダ物標と車線の中心線との距離の演算方法の説明図であり、(a)が道路のカーブR>0の場合であり、(b)が道路のカーブR<0の場合である。
衝突軽減装置1は、前方車両を検出し、前方物体を検出した場合には衝突の可能性に応じてブレーキ制御、サスペンション制御、シートベルト制御及び警報制御を行う。衝突軽減装置1は、前方車両を検出するために、ミリ波レーダによる情報に基づいてレーダ物標を設定するとともにステレオカメラによるステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定し、レーダ物標とステレオ画像物標との照合によってフュージョン物標(前方車両)を設定する。この際、衝突軽減装置1では、レーダ物標、ステレオ画像物標それぞれについて追跡を行わずに、レーダ物標またはステレオ画像物標と前回フュージョン物標との照合を行う。特に、衝突軽減装置1では、1個のステレオ物標に対して類似性があるレーダ物標が複数個存在する場合、各レーダ物標の車線の中心線(なお、車線の中心線を自車両の車幅方向の中心における走行軌跡とみなしている)からの距離を用いて照合を行う。衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2、ステレオカメラ3、車速センサ4、ヨーレートセンサ5、ブレーキECU[Electronic Control Unit]6、サスペンション制御アクチュエータ7、シートベルトアクチュエータ8、ブザー9及び衝突軽減ECU10などを備え、これらがCAN[Controller Area Network](車内LANの標準インターフェース規格)通信で各種信号を送受信する。
なお、本実施の形態では、ミリ波レーダ2が特許請求の範囲に記載するレーダ検出手段に相当し、ステレオカメラ3が特許請求の範囲に記載する画像検出手段に相当し、衝突軽減ECU10が特許請求の範囲に記載する判断手段に相当する。
まず、図2を参照して各物標について説明しておく。レーダ物標は、ミリ波レーダ2による情報に基づいて検出された物体である。レーダ物標には、レーダ情報から取得できる物体までの距離、物体の横位置、物体との相対速度が設定される。ステレオ画像物標は、ステレオカメラ3によるステレオ画像に基づいて検出された物体である。ステレオ画像物標には、ステレオ画像から取得できる物体の前端面までの距離、物体の前端面中央の横位置、物体との相対速度、物体の横幅(自車両に対して左右方向の長さ)、物体の奥行き(自車両から遠ざかる方向の長さ)、物体の高さ、物体の高さ位置が設定される。フュージョン物標は、レーダ物標とステレオ画像物標との照合において類似度が高く、そのレーダ物標とステレオ画像物標とが同一物体であると判断できる物体である。フュージョン物標には、レーダ物標からの距離及び相対速度とステレオ画像物標からの横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置が設定される。このフュージョン物標の情報が、前方車両についての情報となる。
ミリ波レーダ2は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ2は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ2では、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ2では、そのミリ波の送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU10に送信する。
ステレオカメラ3は、2台のCCDカメラからなり、2台のCCDカメラが水平方向に所定間隔離間されて配置されている。ステレオカメラ3も、自車両の前側の中央に取り付けられる。ステレオカメラ3では、2つのCCDカメラで撮像した左右のステレオ画像のデータを各画像信号として衝突軽減ECU10に送信する。
車速センサ4は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ4では、検出値を車速信号として衝突軽減ECU10に送信する。また、ヨーレートセンサ5は、車両のヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ5では、検出値をヨーレート信号として衝突軽減ECU10に送信する。
ブレーキECU6は、4輪の各ホイールシリンダの油圧を調節し、4輪のブレーキ力を制御するECUである。ブレーキECU6では、各輪の目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定し、その各油圧制御信号を各ホイールシリンダの油圧を変化させるブレーキ制御アクチュエータに対してそれぞれ送信する。特に、ブレーキECU6では、衝突軽減ECU10から各輪に対する目標ブレーキ力信号を受信すると、その目標ブレーキ力信号に示される目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定する。ちなみに、ブレーキ制御アクチュエータでは、油圧制御信号を受信すると、油圧制御信号に示される目標油圧に基づいてホイールシリンダの油圧を変化させる。
サスペンション制御アクチュエータ7は、4輪の各油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させるアクチュエータである。サスペンション制御アクチュエータ7では、衝突軽減ECU10から各輪に対する目標減衰力信号を受信すると、各目標減衰力信号に示される目標減衰力に基づいて目標油圧を設定し、目標油圧に基づいて油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させる。なお、図1には、サスペンション制御アクチュエータ7は1個しか描いていないが、4輪のサスペンション毎にそれぞれ設けられる。
シートベルトアクチュエータ8は、各シートベルトを引き込み、シートベルトによる拘束力を変化させるアクチュエータである。シートベルトアクチュエータ8では、衝突軽減ECU10から各シートベルトに対する目標引込量信号を受信すると、各目標引込量信号に示される目標引込量に応じてシートベルトを引き込む。なお、図1には、シートベルトアクチュエータ8は1個しか描いていないが、シートベルト毎にそれぞれ設けられる。
ブザー9は、衝突軽減ECU10から警報信号を受信すると、ブザー音を出力する。
衝突軽減ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[ReadOnly Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、衝突軽減装置1を統括制御する。衝突軽減ECU10は、CPUのマスタクロックに基づく一定時間毎に、ミリ波レーダ2からのレーダ信号、ステレオカメラ3からの各画像信号、車速センサ4からの車速信号及びヨーレートセンサ5からのヨーレート信号を取り入れる。そして、衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、レーダ情報に基づくレーダ物標設定処理及びステレオ画像に基づくステレオ画像物標設定処理を行い、前回フュージョン物標と今回のレーダ物標及びステレオ画像物標に基づく照合処理を行い、今回フュージョン物標を設定する。さらに、衝突軽減ECU10では、今回フュージョン物標(前方車両)と自車両との関係に基づいて衝突軽減処理を行う。
レーダ物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU10では、ミリ波が出射から受信までの時間に基づいて前方の物体までの距離を演算する。また、衝突軽減ECU10では、前方の物体との相対速度を演算する。また、衝突軽減ECU10では、反射してきたミリ波の中で最も強く反射してきたミリ波の方向を検出し、その方向から自車両の進行方向と物体の方向とのなす角度を求め、その角度から横位置を演算する。ミリ波レーダ2による物体検出では、反射したミリ波を受信できた場合に物体を検出したことになるので、反射したミリ波を受信する毎に1個のレーダ物標が得られる。また、ミリ波レーダ2による物体検出では、物体までの距離を正確に検出できるので、距離及び相対速度の精度が特に高い。
ステレオ画像物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU10では、左右のステレオ画像における物体の見え方のずれを利用して三角測量的に前方の物体を立体的に特定し、ステレオカメラ3から物体までの位置(物体の前端面までの距離、物体の前端面中央の横位置、物体の高さ位置)を演算するとともに、物体の立体的な大きさ(横幅、奥行き、高さ)を演算する。また、衝突軽減ECU10では、前方の物体との相対速度を演算する。ステレオカメラ3による物体検出では、左右のステレオ画像から物体を特定できた場合に物体を検出したことになるので、物体を特定する毎に1個のステレオ画像物標が得られる。また、ステレオカメラ3による物体検出では、物体を立体的に検出できるので、物体の大きさの情報を取得できる。
照合処理について説明する。まず、衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、前回フュージョン物標と今回レーダ物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU10では、図3に示すように、前回フュージョン物標LFの位置(距離、横位置)を中心として距離の閾値と横位置の閾値を設定し(図3の破線で示す平面領域参照)、前回フュージョン物標LFの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU10では、今回レーダ物標TLの位置(距離、横位置)が前回フュージョン物標LFの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回レーダ物標TLの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU10では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標TLが前回フュージョン物標LFと類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。この照合では、精度の高い情報がそれぞれ設定されている前回フュージョン物標を中心とし、レーダ物標が持っている位置情報を考慮して照合を行う。
また、衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、前回フュージョン物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU10では、図4に示すように、前回フュージョン物標LFの位置(距離、横位置、高さ位置)を中心として距離の閾値、横位置の閾値、高さ位置の閾値を設定するとともに物体の奥行きの閾値、物体の横幅の閾値、物体の高さの閾値を設定し(図4の破線で示す立体領域参照)、前回フュージョン物標LFの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU10では、今回ステレオ画像物標TIの位置(距離、横位置、高さ)が前回フュージョン物標LFの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内かつ高さ位置の閾値内に入っているか否か及び今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅、高さ)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内かつ高さの閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回ステレオ画像物標TIの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU10では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回ステレオ画像物標TIが前回フュージョン物標LFと類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。この照合では、精度の高い情報がそれぞれ設定されている前回フュージョン物標を中心とし、ステレオ画像物標が持っている位置情報に立体物の大きさ情報を考慮して照合を行う。
前回フュージョン物標に対して類似性のある今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標がそれぞれ存在する場合、衝突軽減ECU10では、その今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU10では、図5に示すように、今回レーダ物標TLの位置(距離、横位置)を中心として距離の閾値、横位置の閾値を設定するとともに物体の奥行きの閾値、物体の横幅の閾値を設定し(図5の破線で示す平面領域参照)、今回レーダ物標TLの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU10では、今回ステレオ画像物標TIの位置(距離、横位置)が今回レーダ物標TLの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入っているか否か及び今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回ステレオ画像物標TIの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU10では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU10では、その今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとの組み合せを記憶する。一方、類似性がないと判定した場合、衝突軽減ECU10では、前回フュージョン物標を削除する。この照合では、距離の精度が高く、物体のほぼ中央を横位置とする今回レーダ物標を中心とし、レーダ物標とステレオ画像物標が持っている位置情報にステレオ画像物標の持っている大きさ情報を考慮して照合を行う。
レーダ物標が複数個存在する場合、1個のステレオ画像物標と複数個のレーダ物標とがそれぞれ類似性を持つことがある。特に、前方車両の一部が影になっていることなどを要因としてステレオ画像物標として前方車両の一部しか検出していない場合(ステレオ画像物標の大きさ情報が車両の大きさより小さい場合)、その前方車両の一部からなるステレオ画像物標がその複数個の各レーダ物標を中心とした各閾値条件をそれぞれ満たしてしまう可能性である。例えば、図6に示すように、ステレオ画像物標TIとして前方車両の左端部を検出している場合、そのステレオ画像物標TIの大きさ情報は小さいので、車線内の左端部に位置する物体を検出したレーダ物標TL1を中心とした各閾値条件をステレオ画像物標TIが全ての満たし、また、車線内の中心付近に位置する物体を検出したレーダ物標TL2を中心とした各閾値条件をステレオ画像物標TIが全て満たし、1個のステレオ画像物標TIが2個のレーダ物標TL1,TL2とそれぞれ類似性があると判定される。この場合、この複数個のレーダ物標TL1,TL2から、ステレオ画像物標TIと同一物体であると判断できるレーダ物標を1個に絞る必要がある。
自車両が走行しているときの検出対象が前方車両である場合、前方車両は自車両の車幅方向の中心における推測走行軌跡に近いところを走行している可能性が高い。そこで、複数個のレーダ物標が存在する場合、複数個のレーダ物標から自車両の車幅方向の中心の推測走行軌跡に近いレーダ物標を選択する。この場合、通常、車両は車線の中心部を走行する可能性が高いので、自車両の車幅方向の中心の推定走行軌跡は自車両が走行している車線の中心とみなして処理することができる。
検出対象が前方車両であり、車両は車線の端部付近より中央付近を走行している確率が高いので、車両の車幅方向の中心は車線の端部より中心に近いと推測できる。また、ミリ波レーダ2による物体検出では横位置として物体の中央付近を検出する可能性が高い。したがって、車線の中心に近いレーダ物標ほど、車両である可能性が高い。そこで、複数個のレーダ物標から1個のレーダ物標に絞るために、各レーダ物標について横位置と車線の中心線との距離をそれぞれ求め、その距離が最も短いレーダ物標を選択する。図6に示す例の場合、車線の中心線LCにレーダ物標TL2の方が近いので、レーダ物標TL2が選択され、レーダ物標TL2とステレオ画像物標TIとが同一物体と判断される。
任意のフュージョン物標について類似性のある全ての今回レーダ物標と全ての今回ステレオ画像物標との全ての組み合せについての照合が終了すると、衝突軽減ECU10では、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とで類似性があると判定されて記憶されている組み合せから、1個のステレオ画像物標に対して類似性があると判定された今回レーダ物標が1個または複数個かを判定する。類似性がある今回レーダ物標が1個と判定した場合、衝突軽減ECU10では、その任意のフュージョン物標を今回フュージョン物標として更新し、今回フュージョン物標の情報として今回レーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともに今回ステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する。
一方、類似性がある今回レーダ物標が複数個と判定した場合、衝突軽減ECU10では、複数個の今回レーダ物標の中から今回ステレオ画像物標と同一物体と判断できる今回レーダ物標を選択する。具体的には、衝突軽減ECU10では、今回レーダ物標毎に、今回レーダ物標の横位置を用いて、今回レーダ物標と車線の中心線との距離を演算する。そして、衝突軽減ECU10では、複数個の今回レーダ物標について車線の中心線からの各距離を比較し、最も短い距離の今回レーダ物標を選択する。さらに、衝突軽減ECU10では、その選択した今回レーダ物標によってその任意のフュージョン物標を今回フュージョン物標として更新し、今回フュージョン物標の情報としてその選択した今回レーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともに今回ステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する。
図7を参照して、レーダ物標TLと車線の中心線LCとの距離X’の演算方法について説明する。衝突軽減ECU10では、自車両の車幅方向の中心の推測走行軌跡が車線の中心と一致していると仮定してレーダ物標と車線の中心線との距離を演算する。まず、衝突軽減ECU10では、ヨーレート信号に基づくヨーレートYが0か否かを判定する。ヨーレートYが0の場合(すなわち、自車両が直進している場合)、衝突軽減ECU10では、レーダ物標の横位置Xの絶対値をレーダ物標TLと車線の中心線LCとの距離X’として設定する。
一方、ヨーレートYが0でない場合(すなわち、自車両が道路に沿って旋回している場合)、衝突軽減ECU10では、現在走行している道路のカーブRを推定するために、式(1)により、車速信号に基づく自車速VとヨーレートYを用いてカーブRを演算する。カーブRが0より大きい場合、衝突軽減ECU10では、式(2)により、カーブRとレーダ物標TLに設定されている自車両からレーダ物標TLまでの距離Zを用いて、自車両の現在位置とレーダ物標の前方位置における車幅方向の距離XRを演算する。そして、衝突軽減ECU10では、式(3)により、車幅方向の距離XRとレーダ物標TLに設定されている横位置Xを用いて、レーダ物標TLと車線の中心線LCとの距離X’を演算する。一方、カーブRが0より小さい場合、衝突軽減ECU10では、式(4)により、カーブRとレーダ物標TLまでの距離Zを用いて、自車両の現在位置とレーダ物標TLの前方位置における車幅方向の距離XRを演算する。そして、衝突軽減ECU10では、式(5)により、車幅方向の距離XRと横位置Xを用いて、レーダ物標TLと車線の中心線LCとの距離X’を演算する。このように、車線の中心線LCを自車両の車幅方向の中心の推測走行軌跡として処理することになる。
但し、ヨーレートYは、車両の右旋回をときにはプラス値であり、左旋回のときにはマイナス値に設定されている。したがって、カーブRも、車両の右旋回をときにはプラス値となり、左旋回のときにはマイナス値になる。また、横位置Xは、自車両の横位置を0として右側がプラス値であり、左側がマイナス値である。また、カーブRの絶対値が自車両からレーダ物標までの距離Zよりも大きいことを条件としている。
更新された今回フュージョン物標と類似性がなかった今回レーダ物標と今回ステレオ画像とがそれぞれ残っている場合、衝突軽減ECU10では、その残っている今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。この照合方法は、上記した今回レーダ物標と今回ステレオ画像と同様の照合方法である。衝突軽減ECU10では、類似性があると判定した今回レーダ物標と今回ステレオ画像とがある場合には今回フュージョン物標として新たに設定し、上記と同様に今回フュージョン物標の各情報を設定する。この場合も、1個のステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が複数個存在する場合、上記と同様の方法により、複数個のレーダ物標から1個のレーダ物標を選択し、その選択したレーダ物標を用いて今回フュージョン物標の各情報を設定する。
なお、各照合において照合対象の物標が複数ある場合(例えば、今回レーダ物標が複数ある場合)、全ての組み合せについてそれぞれ照合を行う。また、各閾値は、ミリ波レーダ2やステレオカメラ3による検出精度などを考慮して予め設定され、衝突軽減ECU10に格納されている。距離の閾値や相対速度の閾値については、自車両の車速を考慮して可変としてもよい。奥行き、横幅、高さは物体の大きさを表し、検出対象が車両なので、奥行き、横幅、高さの各閾値については一般的な車両の大きさに基づいて設定される。
図8には、路側付近を走行中の自動二輪車がレーダ物標TL1として検出され、車線の中央を走行中の前方車両がレーダ物標TL2として検出され、前方車両の左端部がステレオ画像物標TIとして検出されている場合の照合結果の一例を示している。ステレオ画像物標TIは、その位置が2個のレーダ物標TL1,TL2とそれぞれ近くかつ横幅情報が狭いので、2個のレーダ物標TL1,TL2とそれぞれ類似性があると判断される。この際、レーダ物標TL1の車線の中心線からの距離とレーダ物標TL2の車線の中心線からの距離とを比較すると、レーダ物標TL2の車線の中心線からの距離が短いので、レーダ物標TL2がステレオ画像物標TIと同一物体と判断される。また、図9には、路側に立っているポールがレーダ物標TL1として検出され、車線の中央を走行中の前方車両がレーダ物標TL2として検出され、前方車両の左端部がステレオ画像物標TIとして検出されている場合の照合結果の一例を示している。この場合も、図8の例と同様に、レーダ物標TL2がステレオ画像物標TIと同一物体と判断される。このように、ステレオ画像物標が複数個のレーダ物標と類似性がある場合でも、各レーダ物標の車線の中心線からの距離を用いることにより、前方車両を検出対象の物体として検出し、路側付近の自動二輪車やポールなどの車線の中心線から離れている物体を検出しない。ちなみに、前方車両の全体がステレオ画像物標TIとして検出されている場合、ステレオ画像物標TIの横幅情報は広くなるので、レーダ物標TL1を中心とした各閾値条件を満たさなくなり、レーダ物標TL1とは類似性がないと判断される。
衝突軽減処理について説明する。今回フュージョン物標がある場合(つまり、前方車両が存在する場合)、衝突軽減ECU10では、車速を考慮して、今回フュージョン物標に設定されている距離情報に基づいて衝突する可能性の段階(例えば、可能性が高い、低い、無しの3段階)を設定する。そして、衝突軽減ECU10では、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9を制御する。
この制御を衝突する可能性の段階が3段階の場合を例に挙げて説明する。衝突の可能性が無い段階では、衝突軽減ECU10では、ブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9に対する制御を行わない。
衝突の可能性が低い段階では、衝突軽減ECU10では、ブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・に対する制御を行わず、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9に対する制御を行う。具体的には、衝突軽減ECU10では、前方に車両が接近していることを知らせるためにシートベルトを少し引き込むための目標引込量信号を設定し、その目標引込量信号をシートベルトアクチュエータ8,・・・にそれぞれ送信する(運転席のシートベルトアクチュエータ8にのみ送信するようにしてもよい)。また、衝突軽減ECU10では、前方に車両が接近していることを知らせるために警報信号を設定し、その警報信号をブザー9に送信する。
衝突の可能性が高い段階では、衝突軽減ECU10では、ブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9全てに対する制御を行う。具体的には、衝突軽減ECU10では、車両を減速させるための目標ブレーキ力信号を設定し、その目標ブレーキ力信号をブレーキECU6に送信する。また、衝突軽減ECU10では、車両が傾かないように(前部が沈みこまないように)するための目標減衰力信号を設定し、その目標減衰力信号をサスペンション制御アクチュエータ7,・・・にそれぞれ送信する。また、衝突軽減ECU10では、乗員を強く拘束するための目標引込量信号を設定し、その目標引込量信号をシートベルトアクチュエータ8,・・・にそれぞれ送信する。また、衝突軽減ECU10では、前方に車両が接近していることを知らせるために警報信号を設定し、その警報信号をブザー9に送信する。
なお、衝突する可能性だけでなく、前方車両とのオーバラップ量なども求め、これら他の情報も考慮してブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9を制御するようにしてもよい。
図1〜図7を参照して、衝突軽減装置1における動作について説明する。特に、衝突軽減ECU10における照合処理の流れについては図10のフローチャートに沿って説明する。図10は、第1の実施の形態に係る照合処理の流れを示すフローチャートである。
ミリ波レーダ2では、前方にミリ波を送信するとともに反射してきたミリ波を受信し、その送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU10に送信する。ステレオカメラ3では、前方をそれぞれ撮像し、その撮像した左右のステレオ画像を各画像信号として衝突軽減ECU10にそれぞれ送信する。車速センサ4では、自車両の車速を検出し、その検出値を車速信号として衝突軽減ECU10に送信する。ヨーレートセンサ5では、自車両のヨーレートを検出し、その検出値をヨーレート信号として衝突軽減ECU10に送信する。
衝突軽減ECU10では、ミリ波レーダ2からのレーダ信号を受信するとともに、ステレオカメラ3からの各画像信号をそれぞれ受信する。そして、衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいてレーダ物標を設定する。また。衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、各画像信号による左右のステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定する。
そして、衝突軽減ECU10では、一定時間毎に、以下の照合処理を行う。衝突軽減ECU10では、距離、横位置の位置情報及び相対速度により、前回フュージョン物標とレーダ物標との照合を行う(S10)。また、衝突軽減ECU10では、距離、横位置、高さ位置の位置情報、奥行き、横幅、高さの大きさ情報及び相対速度により、前回フュージョン物標とステレオ画像物標との照合を行う(S11)。そして、前回フュージョン物標と類似性のあるレーダ物標とステレオ画像物標がそれぞれ存在する場合、衝突軽減ECU10では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、そのレーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S12)。
衝突軽減ECU10では、S12での照合において類似性があるか否かを判定する(S13)。S13にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU10では、ステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が2個以上存在するか否かを判定する(S14)。S14にて2個以上存在すると判定した場合、衝突軽減ECU10では、レーダ物標毎に車線の中心線からレーダ物標までの距離をそれぞれ演算し、2個以上のレーダ物標についての車線の中心線からの各距離を比較する。そして、衝突軽減ECU10では、距離が最も短いレーダ物標を選択し、その選択したレーダ物標と類似性のあったステレオ画像物標とにより前回フュージョン物標を今回フュージョン物標に更新し、その今回フュージョン物標の情報としてその選択したレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S15)。この際、類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標を削除する。一方、S14にて1個存在すると判定した場合、衝突軽減ECU10では、その1対1で類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標とにより前回フュージョン物標を今回フュージョン物標に更新し、その今回フュージョン物標の情報としてそのレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S16)。この際、類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標を削除する。一方、S13にて類似性がないと判定した場合、衝突軽減ECU10では、照合を行った前回フュージョン物標を削除する(S17)。このS10〜S17までの処理を、全ての前回フュージョン物標と全てのレーダ物標及び全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、前回フュージョン物標に対する追跡が終了する。
レーダ物標とステレオ画像物標が残っている場合、衝突軽減ECU10では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、レーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S18)。
衝突軽減ECU10では、S18での照合において類似性があるか否かを判定する(S19)。S19にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU10では、ステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が2個以上存在するか否かを判定する(S20)。S20にて2個以上存在すると判定した場合、衝突軽減ECU10では、レーダ物標毎に車線の中心線からレーダ物標までの距離をそれぞれ演算し、2個以上のレーダ物標についての車線の中心線からの各距離を比較する。そして、衝突軽減ECU10では、距離が最も短いレーダ物標を選択し、その選択したレーダ物標と類似性のあったステレオ画像物標とにより今回フュージョン物標を設定し、その今回フュージョン物標の情報としてその選択したレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S21)。一方、S20にて1個存在すると判定した場合、衝突軽減ECU10では、その1対1で類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標とにより今回のフュージョン物標を設定し、その今回フュージョン物標の情報としてそのレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S22)。このS18〜S22までの処理を、残っていた全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との照合処理が終了する。
なお、前回フュージョン物標が設定されていない場合、衝突軽減ECU10では、S10〜S17の処理を行わずに、S18の処理から照合処理を行う。また、今回フュージョン物標を更新後にレーダ物標、ステレオ画像物標が残らなかった場合、衝突軽減ECU10では、S18〜S22の処理を行わずに、今回の照合処理を終了する。また、レーダ物標、ステレオ画像物標の少なくとも一方の物標が設定されていない場合、今回の照合処理を行わない。
照合処理によって今回のフュージョン物標が設定された場合、衝突軽減ECU10では、そのフュージョン物標に設定されている情報に基づいて衝突する可能性の段階を設定し、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU6、サスペンション制御アクチュエータ7,・・・、シートベルトアクチュエータ8,・・・、ブザー9を制御する。この制御によって、前方車両との衝突の可能性が低い段階では、シートベルトアクチュエータ8,・・・によるシートベルトの引き込みとブザー9によるブザー音の出力によって前方車両の接近を運転者に認識させる。さらに、前方車両との衝突の可能性が高くなると、ブレーキECU6による自動ブレーキ力による減速とサスペンション制御アクチュエータ7,・・・によるサスペンションの硬さ調節を行い、シートベルトアクチュエータ8,・・・によるシートベルトの更なる引き込みによって乗員を強く拘束し、ブザー9によるブザー音の出力によって前方車両の更なる接近を運転者に認識させる。一方、照合処理によって今回のフュージョン物標が設定されなかった場合、衝突軽減ECU10では、今回の衝突軽減処理を行わない。
この衝突軽減装置1によれば、ステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が複数個存在する場合、その複数個のレーダ物標の車線の中心線からの距離を比較することにより、そのステレオ画像物標と同一物体と判断できるレーダ物標を選択でき、前方車両を高精度に検出することができる。特に、衝突軽減装置1では、レーダ物標の車線の中心線からの距離を演算する際に車線の中心と自車両の車幅方向の中心の走行軌跡とが一致していると仮定して演算を行うので、車線の中心線を推測する手段を必要とせず、構成を簡単化できる。
さらに、この衝突軽減装置1によれば、位置情報に加えて大きさの情報を用いて照合を行うので、検出対象の車両の大きさを考慮して照合を行うことができ、車両を高精度に検出することができる。さらに、衝突軽減装置1によれば、相対速度も用いて照合を行うので、移動体である車両をより高精度に検出することができる。
図1、図2及び図5〜図7を参照して、第2の実施の形態に係る衝突軽減装置21について説明する。なお、衝突軽減装置21では、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
衝突軽減装置21は、衝突軽減装置1と比較すると、レーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理が異なる。つまり、衝突軽減装置21では、レーダ物標、ステレオ画像物標それぞれについて追跡を行い、レーダ物標またはステレオ画像物標と前回フュージョン物標との照合を行わない。したがって、衝突軽減装置21は、衝突軽減装置1とは衝突軽減ECUにおける処理のみが異なり、第1の実施の形態に係る衝突軽減ECU10の代わりに衝突軽減ECU30を備えている。なお、第2の実施の形態では、衝突軽減ECU30が特許請求の範囲に記載する判断手段に相当する。
衝突軽減ECU30も、第1の実施の形態に係る衝突軽減ECU10と同様に、衝突軽減装置21を統括制御する電子制御ユニットである。衝突軽減ECU30は、衝突軽減ECU10とレーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理が異なる。そこで、その各処理についてのみ説明する。
レーダ物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU30では、第1の実施の形態と同様に、一定時間毎に、レーダ情報からレーダ物標を得る。さらに、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、前回レーダ物標とその得たレーダ物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における前回フュージョン物標と今回レーダ物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、相対速度により照合を行う。この際、前回フュージョン物標の代わりに前回レーダ物標を中心にして各閾値を設定し、その各閾値内にレーダ物標が入っているか否かを判定する。衝突軽減ECU30では、照合において類似性があると判定した場合には前回レーダ物標を今回レーダ物標として更新し、今回の情報を設定する。一方、衝突軽減ECU30では、照合において類似性がないと判定した場合には前回レーダ物標を削除する。また、衝突軽減ECU30では、前回レーダ物標と類似性のなかったレーダ物標を今回レーダ物標として新たに設定する。
ステレオ画像物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU30では、第1の実施の形態と同様に、一定時間毎に、ステレオ画像からステレオ画像物標を得る。さらに、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、前回ステレオ画像とその得たステレオ画像物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における前回フュージョン物標と今回ステレオ画像物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、高さ位置、奥行き、横幅、高さ、相対速度により照合を行う。この際、前回フュージョン物標の代わりに前回ステレオ画像物標を中心にして各閾値を設定し、その各閾値内にステレオ画像物標が入っているか否かを判定する。衝突軽減ECU30では、照合において類似性があると判定した場合には前回ステレオ画像物標を今回ステレオ画像物標として更新し、今回の情報を設定する。一方、衝突軽減ECU30では、照合において類似性がないと判定した場合には前回ステレオ画像物標を削除する。また、衝突軽減ECU30では、前回ステレオ画像物標と類似性のなかったステレオ画像物標を今回ステレオ画像物標として新たに設定する。
なお、衝突軽減ECU30では、各センサによる検出によって物標として認識したものについてそれぞれ認識番号を付与し、その認識番号を用いて追跡が行われているか否かを判定する。
照合処理について説明する。衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における残った今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、奥行き、横幅、相対速度により照合を行う。なお、照合において照合対象の物標が複数ある場合(例えば、今回レーダ物標が複数ある場合)、全ての組み合せについてそれぞれ照合を行う。
図1、図2及び図5〜図7を参照して、衝突軽減装置21における動作について説明する。特に、衝突軽減ECU30における照合処理の流れについては図11のフローチャートに沿って説明する。図11は、第2の実施の形態に係る照合処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、衝突軽減装置1における動作と異なる衝突軽減ECU30におけるレーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理についてのみ説明する。
衝突軽減ECU30では、ミリ波レーダ2からのレーダ信号を受信するとともに、ステレオカメラ3からの各画像信号をそれぞれ受信する。
そして、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいてレーダ物標を取得する。そして、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、前回レーダ物標を追跡するために、その取得したレーダ物標と前回レーダ物標との照合を行う。照合の結果、衝突軽減ECU30では、類似性のあった前回レーダ物標を今回のレーダ物標として更新して今回の情報を設定し、類似性のなかった前回レーダ物標を削除する。さらに、衝突軽減ECU30では、取得したレーダ物標のうち類似性のなかったレーダ物標を今回レーダ物標として新たに設定する。なお、前回レーダ物標が設定されていなかった場合、衝突軽減ECU30では、取得したレーダ物標を全て今回のレーダ物標として設定する。
また、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、各画像信号による左右のステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を取得する。そして、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、前回ステレオ画像物標を追跡するために、その取得したステレオ画像物標と前回ステレオ画像物標との照合を行う。照合の結果、衝突軽減ECU30では、類似性のあった前回ステレオ画像物標を今回のステレオ画像物標として更新して今回の情報を設定し、類似性のなかった前回ステレオ画像物標を削除する。さらに、衝突軽減ECU30では、取得したステレオ画像物標のうち類似性のなかったステレオ画像物標を今回のステレオ画像物標として新たに設定する。なお、前回ステレオ画像物標が設定されていなかった場合、衝突軽減ECU30では、取得したステレオ画像物標を全て今回のステレオ画像物標として設定する。
そして、衝突軽減ECU30では、一定時間毎に、以下の照合処理を行う。衝突軽減ECU30では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、レーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S30)。
衝突軽減ECU30では、S30での照合において類似性があるか否かを判定する(S31)。S31にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU30では、ステレオ画像物標と類似性を持つレーダ物標が2個以上存在するか否かを判定する(S32)。S32にて2個以上存在すると判定した場合、衝突軽減ECU30では、レーダ物標毎に車線の中心線からレーダ物標までの距離をそれぞれ演算し、2個以上のレーダ物標についての車線の中心線からの各距離を比較する。そして、衝突軽減ECU30では、距離が最も短いレーダ物標を選択し、その選択したレーダ物標と類似性のあったステレオ画像物標とにより今回フュージョン物標を設定し、その今回フュージョン物標の情報としてその選択したレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S33)。一方、S32にて1個存在すると判定した場合、衝突軽減ECU30では、その1対1で類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標とにより今回のフュージョン物標を設定し、その今回フュージョン物標の情報としてレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する(S34)。このS30〜S34の処理を、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との照合処理が終了する。なお、レーダ物標、ステレオ画像物標の少なくとも一方の物標が設定されていない場合、今回の照合処理を行わない。
この衝突軽減装置21でも、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1と同様の効果を奏する。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では車両に搭載される衝突軽減装置に適用したが、車間距離制御装置、追従走行装置などの他の運転支援装置にも適用可能であり、車線上の物体を検出する物体検出装置単体としても活用可能である。また、検出対象としては、前方の車両以外にも、車線上に存在する自動二輪車や障害物などの他の物体を検出することも可能である。
また、本実施の形態ではレーダ検出手段としてミリ波レーダを用いる構成としたが、レーザレーダなどの他のレーダを用いてもよい。
また、本実施の形態では画像検出手段としてステレオカメラを用いる構成としたが、ステレオカメラ以外のカメラを用いてもよい。
また、本実施の形態ではミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の設定及びステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の設定を衝突軽減ECUで行う構成としたが、ミリ波レーダに処理部を備え、ミリ波レーダでレーダ物標を設定する構成としてもよいし、また、ステレオカメラに画像処理部を備え、ステレオカメラでステレオ画像物標を設定する構成としてもよい。
また、本実施の形態では車線の中心と自車両中心の走行軌跡とが一致していると仮定し、各レーダ物標の車線の中心線からの距離を求める構成としたが、ステレオカメラによるステレオ画像などの情報を用いて車線(例えば、両側の白線)を検出し、その車線の中心線を演算によって推測し、その推測した中心線と各レーダ物標の位置情報に基づいて各レーダ物標の中心線からの距離を求める構成としてもよい。車線の中心線を推定する手法として、カーナビゲーションなどの道路情報を利用してもよい。
また、本実施の形態では車線の中心線を基準にしてレーダ物標が車線の中心に近いか否かを判断する構成としたが、車両前方の中心部に設けられたレーダからの方向を基準にしてレーダ物標が車幅方向の中心の推測走行軌跡に近いか否かを判断するようにしてもよいし、また、自車両が走行する車線の道路境界部からあるいは対向する車線との境界部からの距離に基づいてレーダ物標が車幅方向の中心の推測走行軌跡に近いか否かを判断するようにしてもよい。
また、本実施の形態では横幅や奥行きなどの大きさ情報及び相対速度も用いて照合を行う構成としたが、相対速度を用いないで照合を行う構成としてもよいし、あるいは、大きさ情報の全てまたは一部を用いないで照合を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では各照合において複数の閾値による判定で全ての閾値条件を満たしている場合に類似性があると判定する構成としたが、全ての閾値条件のうちの幾つかの閾値条件を満たしている場合に類似性があると判定する構成としてもよい。
また、第2の実施の形態では衝突軽減ECUにおいてミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の追跡判定処理とステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の追跡判定処理及びレーダ物標とステレオ画像物標との照合処理を行う構成としたが、これら全ての処理を衝突軽減ECUで行う必要はなく、ミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の追跡判定処理を行うためのミリ波レーダECUとステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の追跡判定処理を行うための画像ECUを衝突軽減ECUとは別に設ける構成としてもよい。この場合、物標の追跡判定処理についてはミリ波レーダECUと画像ECUでそれぞれ行い、照合処理については衝突軽減ECUで行うことになる。このような構成とする場合、ミリ波レーダECUをミリ波レーダと衝突軽減ECUとの間に配置し、画像ECUをステレオカメラと衝突軽減ECUとの間に配置することが適している。
1,21…衝突軽減装置、2…ミリ波レーダ、3…ステレオカメラ、4…車速センサ、5…ヨーレートセンサ、6…ブレーキECU、7…サスペンション制御アクチュエータ、8…シートベルトアクチュエータ、9…ブザー、10,30…衝突軽減ECU