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JP4663095B2 - 水素精製装置 - Google Patents

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JP4663095B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素を主成分とし一酸化炭素(以下COと記す)を含有する改質ガスを精製し、高純度の水素ガスを提供する水素精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池などの水素源として、炭化水素もしくはアルコール、エーテルなどの改質によって得られる改質ガスを用いるが、100℃以下の低温で動作する固体高分子型燃料電池の場合には、燃料電池の電極に用いるPt触媒が改質ガスに含まれるCOによって被毒される恐れがある。Pt触媒の被毒が起こると、水素の反応が阻害され、燃料電池の発電効率が著しく低下する。そのため、水素精製装置を利用して、COを100ppm以下、好ましくは10ppm以下に除去する必要がある。
【0003】
通常、COを除去するためには、水素精製装置における、CO変成触媒体を設置したCO変成部でCOと水蒸気とをシフト反応させ、二酸化炭素と水素とに転換し、数千ppm〜1%程度の濃度までCO濃度を低減させる。
【0004】
その後、微量の空気を利用して酸素を加え、CO選択酸化触媒体によって、燃料電池に悪影響をおよぼさない数ppmレベルまでCOを除去する。ここで、充分にCOを除去するためには、CO濃度の1〜3倍程度の酸素を加える必要があるが、このとき、水素も酸素量に対応して消費される。そして、CO濃度が高い場合には、加えるべき酸素量も増加し、消費される水素が増大するため、装置全体の効率が大きく低下する。
【0005】
したがって、CO変成触媒体を設置したCO変成部において、COを充分に低減させておくことが必要となる。
【0006】
従来から、CO変成触媒には、低温用CO変成触媒としては、150〜300℃で使用可能な銅−亜鉛系触媒、銅−クロム系触媒などが用いられ、高温用CO変成触媒としては、300℃以上で機能する鉄−クロム系触媒などが用いられている。これらのCO変成触媒は、化学プラントや燃料電池用水素発生器などの用途に応じて、低温用CO変成触媒のみで使用したり、高温用CO変成触媒と低温用CO変成触媒とを組み合わせて使用されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の銅系の低温用CO変成触媒を中心に用いた場合、非常に高い触媒活性が得られるが、使用前に還元処理を施して活性化させる必要がある。そして、活性化処理中に発熱するため、触媒が耐熱温度以上にならないように、例えば還元ガスの供給量を調節しながら、長時間かけて処理する必要があった。また、一度活性化させたCO変成触媒は、装置の停止時などに酸素が混入した場合には再酸化されて劣化する可能性があるため、酸化を防止するなどの対策が必要であった。さらに、低温用CO変成触媒は、耐熱性が低く、装置の始動時に触媒を急激に加熱することができないため、徐々に温度を上昇させるなどの対策が必要であった。
【0008】
一方、高温用CO変成触媒のみを用いた場合には、耐熱性が高く温度が多少上昇しすぎても問題はないため、始動時の加熱などが容易になる。
【0009】
しかしながら、CO変成反応は、高温領域においてCO濃度を低減させる方向には進行しにくい平衡反応であり、高温でしか機能しない高温用CO変成触媒を用いた場合には、CO濃度を1%以下にすることが困難であった。そのため、後に接続するCO浄化部での浄化効率が低下してしまうことがあった。
【0010】
このように、従来の技術においては、たとえば、水素精製装置の起動に時間を要したり、取り扱いが煩雑なため、頻繁に起動停止を繰り返す用途には、充分には適用できないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記従来のこのような課題を考慮し、たとえば、始動時の加熱などが容易であり、高いCO浄化効率を有する水素精製装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明(請求項1に対応)は、水素、一酸化炭素および水蒸気を含む改質ガスから一酸化炭素を除去するための一酸化炭素変成触媒体を備えた水素精製装置であって、
前記一酸化炭素変成触媒体は、ZrとCeとの複合酸化物に、Pt、Pd、Rh、Ruの内の少なくとも一つが担持されたものであり、前記複合酸化物は固溶体を形成しており、前記複合酸化物における酸素を除いた元素の組成比率は、Ceが5〜90原子パーセントであることを特徴とする水素精製装置である。
【0017】
第二の本発明(請求項に対応)は、前記一酸化炭素変成触媒体は、前記改質ガスの流れていく方向に対して複数段に分割されており、
前記分割された各一酸化炭素変成触媒体におけるCeの組成比率は、前記改質ガスの流れていく方向に対してより上流にある方がより高いことを特徴とする第一の本発明の水素精製装置である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ説明を行う。
【0019】
(実施の形態1)
はじめに、図1を参照しながら、本実施の形態における水素精製装置の構成について説明する。なお、図1は、本実施の形態における水素精製装置の構成を示す概略縦断面図である。
【0020】
図1において、1は、CO変成触媒体(以下では、単に触媒体ともいう)であり、反応室2の内部に設置した。3は、改質ガス入口であり、ここから改質ガスを導入する。CO変成触媒体1で反応した改質ガスは、改質ガス出口より排出される。
【0021】
なお、触媒体1の上流側には、改質ガスが均一に流れるように拡散板5を設置してある。また、反応器を一定温度に保つために、必要箇所は、外周をセラミックウールからなる断熱材6で覆った。
【0022】
ここで、触媒体1には、セリウム(以下Ceと記す)とジルコニア(以下Zrと記す)との複合酸化物にPtを担持した触媒を、コージェライトハニカムにコーティングしたものを用いた。
【0023】
つぎに、本実施の形態における水素精製装置の動作について説明する。
【0024】
水素精製装置に供給する改質ガスを発生させるために用いる燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどがあり、改質方法も、水蒸気を加える水蒸気改質、空気を加えておこなう部分改質などがあるが、ここでは、天然ガスを水蒸気改質して改質ガスを得る場合について述べる。
【0025】
天然ガスを水蒸気改質した場合の改質ガスの組成は、改質触媒体の温度によって多少変化するが、水蒸気を除いた平均的な値として、水素が約80%、二酸化炭素、一酸化炭素がそれぞれ約10%含まれる。
【0026】
天然ガスの改質反応は、500〜800℃程度でおこなうのに対し、COと水蒸気が反応する変成反応は、150〜350℃程度で進行するため、改質ガスは、改質ガス入口3の手前で冷却してから供給する。CO変成触媒体1通過後のCO濃度は、約0.5%まで低減され、改質ガス出口4より排出される。
【0027】
次に、本実施の形態の水素精製装置の動作原理について説明する。
【0028】
CO変成反応は、温度に依存する平衡反応であり、低温で反応させるほど、CO濃度を低減させることができる。一方、低温になると触媒上での反応速度が低下する。したがって、CO濃度が極小値をとる温度が存在する。
【0029】
従来の水素精製装置においてCO変成触媒として用いられる銅−亜鉛触媒、銅−クロム触媒などの銅系の変成触媒は、150〜250℃の低温でCO変成反応を行うことができ、条件によっては、CO濃度を数百〜千ppm前後にまで低減させることができる。
【0030】
しかし、銅系の触媒は、反応器に充填した後、水素や改質ガスなどの還元ガスを流通させて活性化させる必要があるとともに、耐熱性は300℃前後と低い。したがって、活性化時の反応熱で耐熱温度を超えないように、還元ガスを不活性ガスなどで希釈して供給するか、または少流量で徐々に反応させる必要があり、反応に長時間を要する。また、装置の起動時にも、過昇温によって耐熱温度を超えないように、ゆっくりと長時間かけて加熱する必要があり、頻繁に起動停止を繰り返すような用途には、問題点が多い。
【0031】
一方、本発明の水素精製装置では、触媒体1として貴金属触媒Ptを用いており、銅系の触媒と比較して非常に高い耐熱性を持つため、装置の起動時に500℃程度の高温になった場合でも、触媒の大きな劣化は無い。また、銅系触媒のように、長時間の還元処理を行う必要もない。また、装置を停止させた場合に空気が混入しても銅系触媒よりも触媒劣化は少ない。
【0032】
なお、Pt、Pd、Rh、およびRuなどを活性成分とする貴金属触媒は、活性が高いために、反応の選択性が比較的低い。そのため、条件によっては、CO変成反応の副反応として、COまたは二酸化炭素のメタン化反応も進行することがあり、メタン化反応の進行による水素の消費が、装置全体の効率を低下させることが懸念される。
【0033】
ただし、通常、CO変成反応を行う150〜450℃の温度領域では、高温になるほどメタン化反応が顕著となるが、貴金属の種類によっても、メタン生成率は異なる。これは、貴金属の種類によってCOの吸着機構が異なるためであり、メタン化反応が進行しやすいCOの吸着機構をもつPd、RhおよびRuは、比較的低温でメタンを発生させ、CO変成反応を行うことができる温度領域が狭くなる。これに対して、本実施の形態で用いるPt触媒は、メタン化反応を起こしにくく、広い温度範囲でCO変成反応を行うことができる。したがって、メタン化反応の進行によって大量の水素が消費されることはなく、本実施の形態の水素精製装置置は、効率よく稼働することができる。
【0034】
また、Ceを助触媒として添加することによって、Pt触媒のCO変成反応に対する活性が向上するとともに、メタン化反応を抑制することができる。担体に含有するCeの比率が高いほど、メタン化反応を抑制することができ、酸化セリウムを担体として用いた場合が、最も変成反応に対する低温活性が高く、メタン化反応も抑制できる。
【0035】
ただし、酸化セリウムは、耐熱性がアルミナやジルコニアなどの担体と比較して低く、600℃を越える温度になるような条件で使用した場合や、装置の起動や停止時に水凝縮が生じた場合には、触媒活性が低下する可能性がある。これは、熱による焼結で、酸化セリウムの比表面積が低下したり、塩基性である酸化セリウムが、改質ガス中の二酸化炭素と反応することが原因である。
【0036】
一方、本発明の水素精製装置では、触媒担体として、CeにZrを複合化させた複合酸化物を用いており、触媒担体の安定性が向上し、触媒の活性低下が生じにくい。CeとZrの比率は、Ceが少ない(すなわち、Zrが多い)ほど耐熱性も上がり安定であるが、Ceの含有量の減少とともに、高温域でのメタン化反応が進行しやすくなる。そのため、Ceの含有量は、5原子%以上であることが好ましい。ただし、Ceの含有量が90原子%よりも高いと、酸化セリウムとほぼ同じの性能しか得られない。なお、Ceに対してZrを複合化させる方法は、特に限定はなく、例えば共沈法、ゾルゲル法、アルコキシド法などを用いることができる。
【0037】
また、酸化セリウムとジルコニアとが、固溶体を形成して均一に複合化されている場合には、担体の安定性が高くなるとともに、メタン化反応の進行も抑制される。これは、酸化セリウムやジルコニアが固溶せずに存在していた場合に、それぞれ材料単独の低耐熱性、メタン化反応性の特性が現れるためである。固溶体の形成は、粉末X線回折測定で確認でき、酸化セリウムやジルコニアの単相の回折線強度が小さいほど、均一に固溶体が形成されていることが分かる。
【0038】
充分な触媒活性を得るためにはPt粒子を小さくし、多くの活性点を持つことが必要であるが、このためには、BET比表面積が1当たり10平方メートル以上ある金属酸化物にPtを担持させるのが、好ましい。ここで、BET比表面積とは、粉末に窒素を吸着させておこなう公知の測定法で求められる比表面積のことである。
【0039】
BET比表面積の上限は、特に限定はなく、1g当たり100〜200平方メートルであっても、同様に高い活性が得られるが、1g当たり100平方メートル以上になると、比表面積増加による効果は小さくなる。金属酸化物および複合金属酸化物のBET比表面積が、1g辺り10平方メートル未満であった場合には、Ptが充分吸着せずにPtの分散度が低下し、充分な触媒活性が得られない。なお、Ptの粒径を小さくするため、Pt担持量を少なくした場合、活性点の数が減少し、充分な活性は得られない。
【0040】
また、本実施の形態では、Ceに対してZrを複合化させた複合酸化物を用いたが、ここにAlを添加することによって、高温域での比表面積減少が小さくなり、耐熱性が向上する。また、Zrの代わりに、Alのみを複合化させた場合でも、同様の効果が得られる。要するに、本発明の複合酸化物は、Zrおよび/またはAlがCeに対して複合化された複合酸化物であればよい。
【0041】
また、本実施の形態では、触媒体の形状は、触媒をコージェライトハニカムにコーティングしたものを用いたが、担体の形状をペレット形状とし、Pt塩を含浸させてCO変成触媒体を作製しても、同様の性能を有する変成触媒体が得られる。
【0042】
(実施の形態2)
つぎに、図2を参照しながら、本実施の形態における水素精製装置の構成と動作について説明する。なお、図2は、本実施の形態における水素精製装置の構成を示す概略縦断面図である。
【0043】
本実施の形態における水素精製装置は、図2に示すように、触媒体を2段に分割して触媒体の中間に冷却部を設けており、作用効果の大部分は、実施の形態1と類似である。したがって、異なる点を中心に本実施の形態を説明する。
【0044】
触媒体を第触媒体11と第触媒体13とに分割し、中間に冷却部を設け、冷却ファン19で改質ガスを冷却することにより、少ない触媒量でCO濃度を低減することができる。なぜならば、CO変成反応は発熱反応であるため、触媒体の上流部で発生した反応熱は、改質ガスによって下流部に伝達される。このため、触媒体の温度は、下流部の方が高温になりやすく、上流部でCO濃度を充分に低減しても、高温の下流部で、再び逆反応により、CO濃度が増加する。したがって、下流側の第触媒体13を第触媒体11よりも低温にすることによって、逆反応を抑制できるからである。
【0045】
また、高温になりやすい上流側の第一触媒体11に、Ceの含有量の多い複合酸化物を用いるのが、望ましい。なぜならば、Ceの含有量の多い複合酸化物を高温になりやすい上流側に用いることにより、メタン化反応によって装置の作動が制限を受ける高温域においても、CO変成反応を促進することが可能な作動温度域を拡大することができ、より装置の制御が容易にできるからである。
【0046】
さらに、起動時に水の凝縮が起こりやすい下流部に、Ceの含有量の少ない複合酸化物を用いることによりメタン化反応が進行しにくくなり、前述したような水による特性低下を抑制することができ、耐久寿命の長期化ができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、触媒体を第触媒体11と第触媒体13とに分割する2段構成としたが、特に段数に制限はなく、各段の触媒体がそれぞれ最適な温度に制御できる構成であれば、高い特性が得られる。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の金属酸化物、または複合酸化物1〜15に、Ptを1重量%担持した。これをコージェライトハニカムにコーティングして、図1に示す反応室2に設置した。
【0049】
改質ガス入口3より、一酸化炭素8%、二酸化炭素8%、水蒸気20%、残りが水素である改質ガスを、毎分10リットルの流量で導入した。改質ガス温度を制御し、触媒体1で反応させた後に、改質ガス出口4より排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィで測定した。
【0050】
CO濃度の最低値、触媒温度が400℃における反応後のガス中のメタン濃度を測定し、さらに、装置を停止させた後、再び起動させる動作を10回繰り返し、CO濃度を測定して触媒の活性変化を確認した。これらの結果を、表1にまとめて示す。
【0051】
【表1】
Figure 0004663095
表1に示された実験結果より、前述したつぎのような事実が裏付けられる。たとえば、酸化セリウムは、変成反応に対する活性が極めて高く、メタン化反応も抑制できるが、アルミナやジルコニアなどと比較して、装置の起動停止の繰り返しにより触媒活性が低下しやすい。また、触媒担体としてCeにZrを複合化させた複合酸化物を用いるとき、Ceの比率が少ないほど、(1)触媒の活性低下は生じにくいが、(2)たとえば高温域でのメタン化反応は進行しやすくなる。
【0052】
なお、Alは、Zrと同様にCeと複合酸化物を作りやすく、Al23単体としても安定である。したがって、具体的なデータは省略するが、Ceに対して、(a)Al、または(b)ZrおよびAlを複合化させた複合酸化物を用いた場合にも、Ceに対してZrを複合化させた複合酸化物を用いた場合と同様の実験結果が得られる。
【0053】
(実施例2)
実施例1で用いた表1中の試料6に示したZrとCeの比率が原子数にして1対1である複合酸化物に、Ptを1重量%担持した。これをコージェライトハニカムにコーティングし、第触媒体11と第触媒体13との体積の合計を実施例1と同じにして、図2に示す第反応室12と第反応室14とにそれぞれ設置した。
【0054】
改質ガス入口15より、一酸化炭素8%、二酸化炭素8%、水蒸気20%、残りが水素である改質ガスを、毎分10リットルの流量で導入した。CO濃度の最低値、第触媒体11の温度が400℃における反応後のガス中のメタン濃度は、それぞれ0.09%、0.06%であった。さらに、装置を停止させた後、再び起動させる動作を10回繰り返し、CO濃度を測定して触媒の活性変化を確認したところ、0.11%であった。
【0055】
このように、本実施例における触媒体を用いた場合、何れのCO濃度も、メタン濃度も、実施例1における試料6を利用した触媒体を用いた場合よりも低くなっている。したがって、実施の形態2で説明された冷却部は、CO濃度を低減させる方向への反応の進行を促進し、水素精製装置の高能率稼働に寄与していることが裏付けられた。
【0056】
(実施例3)
実施例2で、第触媒体11、第触媒体13に用いる複合酸化物におけるCeとZrとの比率を、それぞれ9対1、1対9とし、上流側の触媒体に含まれるCeの含有量を多くなるようにした。実施例2と同様に、CO濃度の最低値、第触媒体11の温度が400℃における反応後のガス中のメタン濃度を測定すると、それぞれ0.09%、0.01%であった。さらに、装置を停止させた後、再び起動させる動作を10回繰り返し、CO濃度を測定して触媒の活性変化を確認したところ、0.09%であった。
【0057】
このように、本実施例における触媒体を用いた場合、何れのCO濃度も、メタン濃度も、実施例2における触媒体を用いた場合よりも低くなる傾向が見られる。特に、メタン濃度に関して、この傾向は顕著である。したがって、前述されたように、Ceの含有量の多い複合酸化物を高温になりやすい上流側に用いることにより、メタン化反応の進行が抑制され、水素精製装置の高能率稼働が促進されることが裏付けられた。
【0058】
(比較例1)
本発明の複合酸化物にPtを担持させたものの代わりに、本比較例においては、触媒体1として従来の銅亜鉛触媒を用い、実施例1と同様に、図1に示す反応室2に設置した。改質ガス入口3より、一酸化炭素8%、二酸化炭素8%、水蒸気20%、残りが水素である改質ガスを、毎分10リットルの流量で導入した。改質ガス温度を制御し、触媒体1で反応させた後に、改質ガス出口4より排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィで測定したところ、CO濃度の最低値は0.08%であった。さらに、装置を停止させた後、再び起動させる動作を10回繰り返し、CO濃度を測定して触媒の活性変化を確認したところ、CO濃度の最低値は4%であった。
【0059】
このように、本比較例における触媒体を用いた場合、10回起動停止後のCO濃度は、前述の実施例における触媒体を用いた場合よりも著しく高い。したがって、前述されたように、本発明の水素精製装置は、運転の起動停止を繰り返した場合にも、酸素混入などによる影響を受けにくく、長期間にわたって安定に動作することが裏付けられた。
【0060】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、たとえば、少なくとも水素ガス、一酸化炭素および水蒸気を含む改質ガスを供給する改質ガス供給部、および前記改質ガス供給部の下流側に位置する一酸化炭素変成触媒体を具備した反応室を備える水素精製装置であって、前記一酸化炭素変成触媒体は、Ceに対して少なくともZrおよび/またはAlが複合化された複合酸化物に少なくともPtを担持させてあることを特徴とするものである。
【0061】
このとき、複合酸化物における組成比率は、Ceが5〜90原子%、残りがZrおよび/またはAlであることが好ましい。また、複合酸化物が固溶体を形成していることが好ましい。また、一酸化炭素変成触媒体が複数段に分割されており、各触媒体の中間に放熱部、もしくは冷却部が設けられてあることが好ましい。また、複合酸化物は、改質ガスの流れ方向に対して上流部より下流部におけるCeの含有比率が低いことが好ましい。
【0062】
なお、本発明の複合酸化物に担持されているのは、上述された本実施の形態では、Ptであったが、これに限らず、要するに、Pt、Pd、Rh、Ruの内の少なくとも一つであればよい。ただし、Pd、Rh、Ruなどを活性成分とする貴金属触媒は、前述したようにメタン化反応を進行させてしまうことがあるため、Ptを利用することが最も好ましい。よって、Pd、Rh、Ruなどを利用する場合にも、前記複合酸化物には少なくともPtが担持されており、これらはPtを主体として添加されていることが望ましい。
【0063】
このように、本発明の水素精製装置は、CO変成触媒体の耐久性が改善されており、装置の起動停止を繰り返した場合でも安定に動作することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、たとえば、始動時の加熱などが容易であり、高いCO浄化効率を有する水素精製装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水素精製装置を含む水素発生装置の構成を示す概略縦断面図
【図2】本発明の実施の形態2に係る水素精製装置を含む水素発生装置の構成を示す概略縦断面図
【符号の説明】
1 触媒体
2 反応室
3、15 改質ガス入口
4、16 改質ガス出口
5、17 拡散板
6、18 断熱材
11 第触媒体
12 第反応室
13 第触媒体
14 第反応室
19 冷却ファン

Claims (2)

  1. 水素、一酸化炭素および水蒸気を含む改質ガスから一酸化炭素を除去するための一酸化炭素変成触媒体を備えた水素精製装置であって、
    前記一酸化炭素変成触媒体は、ZrとCeとの複合酸化物に、Pt、Pd、Rh、Ruの内の少なくとも一つが担持されたものであり、前記複合酸化物は固溶体を形成しており、前記複合酸化物における酸素を除いた元素の組成比率は、Ceが5〜90原子パーセントであることを特徴とする水素精製装置。
  2. 前記一酸化炭素変成触媒体は、前記改質ガスの流れていく方向に対して複数段に分割されており、
    前記分割された各一酸化炭素変成触媒体におけるCeの組成比率は、前記改質ガスの流れていく方向に対してより上流にある方がより高いことを特徴とする請求項1に記載の水素精製装置。
JP2000323062A 2000-08-18 2000-10-23 水素精製装置 Expired - Fee Related JP4663095B2 (ja)

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