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JP4659162B2 - 水系顔料分散体の製造方法 - Google Patents

水系顔料分散体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系媒体中に低い機械的エネルギーで分散させることのできる水系顔料分散体の製造方法に関する。
【従来の技術】
従来、顔料の水系分散体を製造する方法としては、水系に適するように処理された顔料を、分散ワニスと混合後、サンドミル、ビーズミル等の分散機を使用して、膨大なエネルギーと時間を費やして分散させる方法が採用されていた。
使用される顔料についても多くのエネルギーと時間を使い製品としての顔料に仕上げられていた。例えば、粗製顔料の湿式粉砕による顔料化工程では、粗製顔料を顔料化助剤の存在下でニーダー等の粉砕機により粉砕するため、粉砕のための混練エネルギーと時間、さらに顔料化助剤を顔料から分離精製するためのエネルギーと時間が必要であった。
【0002】
これらの問題を解決すべく、特開昭55-75453号公報には、粗製フタロシアニンを界面活性剤の存在下で乾式粉砕する方法が、特開平9-217019公報には、粗製顔料を乾式粉砕後、樹脂および有機溶剤と機械的に分散する方法が、特開平9-188845号公報には、粗製銅フタロシアニンを樹脂および有機液体と乾式粉砕する方法等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法をもってしても水系媒体中に低い機械的エネルギーで分散する顔料組成物を経済的に製造するのは不十分であった。
したがって、本発明は、水系媒体に容易に分散する顔料組成物を大量の水や溶剤を使用せずかつ単一工程で製造する方法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、粗大粒子を含む顔料を水溶性樹脂の存在下で乾式粉砕する工程(A)と、該工程(A)で得られた乾式粉砕物に、アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤を添加して水中に分散せしめる工程(B)とからなる水系顔料分散体の製造方法に関する。
【0005】
更に本発明は、アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤が顔料に対して1〜30重量%添加する上記の製造方法に関する。
更に本発明は、水溶性樹脂がアルカリ可溶型樹脂である上記製造方法に関する。
更に本発明は、上記製造方法で得られた水系顔料分散体に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における顔料としては、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料などの縮合多環系顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料などのアゾ系が挙げられるが、これらのものに限定されない。乾式粉砕に供する顔料は、最終的な製品形態としての顔料として好ましくない粗大粒子を含む顔料であって、好ましくは、縮合多環系の粗製顔料である。
【0007】
本発明における水溶性樹脂は、水系顔料分散体の樹脂成分またはバインダー成分として通常使用される樹脂、又は、本発明の顔料組成物を用いたインキ濃縮物中に添加される他の成分と相溶性のある樹脂であり得る。好ましく使用できる水溶性樹脂の例は、アクリル酸エステル重合体、アクリル-スチレン共重合体、アクリル-α-メチルスチレン共重合体等のアクリル系樹脂である。これらのアクリル系樹脂は、アルカリ金属イオン、アミン、アンモニア等のアルカリ成分の存在下に水中に溶解することができる。乾式粉砕時に添加する水溶性樹脂はペレット状の形態であると取り扱いが容易であるため好ましい。
【0008】
本発明において乾式粉砕時に添加する水溶性樹脂の量は、顔料に対して2〜50重量%、好ましくは、10〜25重量%であり、上記数値より多いと乾式粉砕により得られた顔料組成物を用いた濃縮物中の樹脂比率が高くなり、水系分散体の用途が限定されたり、使用できなくなって好ましくなく、上記数値より少ないと乾式粉砕により得られた顔料組成物が水中に解膠し難くなるため好ましくない。
【0009】
本発明のアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤は、分子中にアセチレン基と水酸基を有する脂肪族系化合物で、具体的には、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールもしくはこれのエチレンオキシド付加物が挙げられる。アセチレン基を含むノニオン系界面活性剤とエーテル、グリコールとの混合物が使用上好ましい。
【0010】
本発明において乾式粉砕物を水中に分散せしめる工程において使用するアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤の量は、顔料に対して1〜20重量%、好ましくは、3〜10重量%であり、上記より界面活性剤が多くなると水系顔料分散体の用途が限定される。また、界面活性剤の量が少なくなると、顔料組成物がビヒクル中で解膠せず、特にフタロシアニン顔料を使用した場合、顔料が発色しなくなる。アセチレン基を含むノニオン系界面活性剤とともに他の界面活性剤を併用してもよい。
【0011】
本発明の乾式粉砕は、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した粉砕機を使用し、水や溶剤により顔料を凝集させることなく、粉体の状態で粉砕物を粉砕するものである。粉砕装置としては、乾式アトライター、ボールミル、振動ミルなどを挙げることができるが、生産効率の点からアトライターが好ましい。
【0012】
乾式粉砕の条件は、使用する装置により設定する必要があるが、粉砕温度は30〜150℃で行うことが好ましい。特に粉砕温度は使用する水溶性樹脂の軟化点より高くなると乾式装置内部での粉砕物の固着が生じる危険性が高くなる。そのため、使用する水溶性樹脂の軟化点よりなるべく低く設定する必要がある。粉砕時間は10分〜6時間が好ましく、粉砕時間が短いと顔料中に粉砕が不十分な粒子が含まれるため好ましくなく、又、粉砕時間が長いと生産効率が悪くなるため好ましくない。
【0013】
本発明の顔料組成物は、微細に粉砕された顔料の表面を樹脂が被覆した状態にあり、アルカリ存在下で水中に容易に解膠し分散する。本発明の顔料組成物は、アルカリ存在下で水系顔料分散体用ビヒクルとを撹拌混合等の簡単な操作により水性顔料分散体とすることができる。
【0014】
本発明で得られる顔料組成物に含まれる顔料分散粒子は、ソルベントソルトミリング法で得られた顔料粒子とほぼ同じ粒子径とすることができる。
本発明の水系顔料分散体は、例えば、水性塗料、捺染剤、水性インキ、インキジェット用インキ、カラーフィルター用の分散液等として使用することができる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例中で標準顔料として使用しているのは、粗製顔料をソルベントソルトミリングにより顔料化したものであり、結晶型の測定にはX線回折装置を使用した。また粒子サイズと粒子形態は透過型電子顕微鏡で観察した。
【0016】
【実施例1】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶の含有率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部をアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィンSTG」)1.0重量部と共に、樹脂を溶解するための水酸化ナトリウムを含む水溶液20重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン61重量部を加え最終インキに調整した後、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキは着色力、透明性、鮮明性などにおいて標準インキより優れており着色力は140%程度の品位を有していた。この時の平均分 散粒径は80〜120nmであった。
【0017】
【実施例2】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶含有率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部をアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノールTG」)1.0重量部と共に、樹脂を溶解するための水酸化ナトリウムを含む水溶液20重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。
次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン61重量部を加え最終インキに調整した後、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキは着色力、透明性、鮮明性などにおいて標準インキより優れており着色力は130%程度の品位を有していた。この時の平均分 散粒径は80〜120nmであった。
【0018】
【実施例3】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶含有 率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部をアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール504」)1.0重量部と共に、樹脂を溶解するための水酸化ナトリウムを含む水溶液20重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン61重量部を加え最終インキに調整た後、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキは着色力、透明性、鮮明性などにおいて標準インキより優れており着色力は110%程度の品位を有していた。この時の平均分粒径は80 〜120nmであった。
【0019】
【比較例1】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶含有率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部を樹脂を溶解するための水酸化ナトリ ウムを含む水溶液20重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。
次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン62重量部を加え最終インキに調整したが、ほとんど発色していなかった。
【0020】
【比較例2】
乾式アトライターで粗製銅フタロシアニンを90℃で20分間粉砕した。得られた顔料のα型結晶含有率は30%程度であった。次に、得られた顔料15重量部をアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤( 日信化学工業株式会社製「オルフィンSTG」)1.0重量部と共に、水20重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。
次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン64重量部を加え最終インキに調整したが、ほとんど発色していなかった。
【0021】
【実施例4】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶の 含有率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部をアセチレン基を含むノニオン系界 面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィンSTG」)0.5重量部と共に、樹脂を溶解するための水酸化ナトリウムを含む水溶液20.5重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。
次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン61重量部を加え最終インキに調整した後、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキは着色力、透明性、鮮明性などにおいて標準インキより優れており着色力は120%程度の品位を有していた。この時の平 均分散粒径は80〜120nmであった。
【0022】
【実施例5】
乾式アトライターに粗製銅フタロシアニン84重量部とアクリル系樹脂(ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリルJ-679」)16重量部を加え90℃で20分間粉砕した。得られた顔料組成物のα型結晶の含有率は50%程度であった。次に、得られた顔料組成物18重量部をアセチレン基を含むノニオン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィンSTG」)2.0重量部と共に、樹脂を溶解するための水酸化ナトリウムを含む水溶液19重量部に加え室温で穏やかに撹拌することにより濃縮分散体を得た。
次に、得られた濃縮分散体に水性用スチレンアクリルエマルジョン61重量部を加え最終インキに調整した後、同一顔料分を含む標準インキと比較したところ、本実施例のインキは着色力、透明性、鮮明性などにおいて標準インキより優れており着色力は150%程度の品位を有していた。この時の平 均分散粒径は80〜120nmであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明により得られた顔料は、一般的な顔料製造方法として採用されているソルベントソルトミリング法から得られる顔料と比較して同等もしくはそれ以上の品質が得られ、より低コストで顔料を提供することが可能である。
また、本発明の顔料組成物は、水中に簡単な操作で顔料を分散することができる。

Claims (3)

  1. 粗大粒子を含む顔料を水溶性樹脂の存在下で乾式粉砕する工程(A)と、該工程(A)で得られた乾式粉砕物に、アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤を添加して水中に分散せしめる工程(B)とからなる水系顔料分散体の製造方法。
  2. アセチレン基を含有するノニオン系界面活性剤が顔料に対して1〜30重量%添加する請求項1記載の製造方法。
  3. 水溶性樹脂がアルカリ可溶型樹脂である請求項1又は2記載の製造方法。
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