JP4640351B2 - 可変容量型圧縮機の吸入絞り弁 - Google Patents
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Description
特許文献1で開示された従来技術では、吸入ポート17と吸入室16の間にはガス通路18が形成され、ガス通路18と吸入ポート17の間には弁作動室が設けられている。弁作動室には開度制御弁22が上下動可能に配置されている。開度制御弁22はスプリング23により上方へ付勢されており、弁作動室内にはスプリング23の収容された弁室21が形成されている。開度制御弁22は、上下動によりガス通路18の開口面積を制御するものであり、吸入ポート17より吸入室16に吸入される冷媒流量に応じて開口面積が変化する。また弁室21は連通孔24を介して吸入室16に連通されており、開度制御弁22には弁孔25が形成されている。
一方、低流量時には、吸入ポート17と吸入室16との圧力差が小さくなるので、開度制御弁22はスプリング23の付勢力が優勢となることにより上昇し、ガス通路18の開口面積は小さくなる。この開度制御弁22の絞り効果により、低流量時における吸入脈動に起因する異音等の発生を低減できるとしている。
請求項1記載の発明によれば、弁室と吸入室とを連通する連通孔が設けられ、連通孔の開度は弁体の移動に応じて可変とされ、最大容量運転時においては連通孔の開度が全開状態となることにより、弁室の密閉状態は低くなり、密閉状態により決まるダンパー効果は最大容量運転時においては殆ど作用しない。高流量の冷媒ガスが吸入通路より吸入室へ吸入されることにより吸入圧力と吸入室圧力の間に差圧が生じ、この差圧により弁体は弁体を吸入通路の開度を縮小する方向である吸入ポート側に付勢する付勢部材の付勢力に抗する押圧力を受けて吸入通路の開度を拡大する方向である吸入ポートと反対側に移動し、吸入通路の開度は最大となる。この時、ダンパー効果は殆ど作用しないので、弁体の下方への移動はスムースに行われる。
一方、最大容量運転時よりも容量が小さい可変容量運転時においては、連通孔の開度が縮小状態となることにより、弁室の密閉状態は高くなり、密閉状態により決まるダンパー効果は大きく作用することになる。特に、吸入脈動に起因する振動及び異音の発生し易い低容量運転時においては、弁体は付勢部材の付勢力に加えて、ダンパー効果による押圧力を大きく受けて吸入ポート側に移動し、吸入通路の開度を確実に絞り込むことができる。
このように本発明では、低容量時における吸入通路の開度の絞り込み効果の増大と、高容量時における吸入通路の開度の確保という相反する課題を両立させることができ、低容量運転時における吸入脈動に起因する振動及び異音の低減を図ると共に、低容量から高容量に至る全流量範囲に渡って性能維持が可能となる。
請求項2記載の発明によれば、吸入圧力をPsとしクランク室圧力をPcとすれば、最大容量運転時においては、吸入圧力Psとクランク室圧力Pcはほぼ同等となるので、第2弁体は吸入ポートと反対側に移動し、弁室と吸入室とを連通する連通孔は全開状態となることにより、弁室の密閉状態は低くなり、密閉状態により決まるダンパー効果は最も小さくなる。高流量の冷媒ガスが吸入通路より吸入室へ吸入されることにより吸入圧力Psと吸入室圧力Ptの間に差圧が生じ、また吸入室圧力Ptと弁室圧力Pvは等しいことにより、第1弁体は第1弁体を吸入ポート側に付勢する付勢部材の付勢力に抗する押圧力を受けて吸入ポートと反対側に移動し、吸入通路の開度は最大となる。この時、ダンパー効果は殆ど作用しないので、第1弁体の下方への移動はスムースに行われる。
一方、可変容量運転時においては、クランク室圧力Pcが吸入圧力Psより高くなることにより、第2弁体はクランク室圧力Pcを受けて吸入ポート側に移動し、連通孔の開度が縮小状態となることにより、弁室の密閉状態は高くなり、密閉状態により決まるダンパー効果は大きく作用することになる。特に、低容量運転時においては、第2弁体がストッパに接地することで、連通孔は最も小さい状態となり、弁室の密閉状態により決まるダンパー効果は最も大きく作用する。また、第1弁体と第2弁体の間に設けられた付勢部材は、第1弁体に作用する吸入圧力Psと第2弁体に作用するクランク室圧力Pdとの圧力差により、圧縮されることにより第1弁体に作用する付勢部材の付勢力は増大する。従って、可変容量運転時においては、第1弁体は増大した付勢部材の付勢力に加えて、ダンパー効果による押圧力を大きく受けて吸入ポート側に移動し、吸入通路の開度の絞り込み効果を更に増大できる。
以下、第1の実施形態に係る可変容量型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」と呼ぶ)の吸入絞り弁を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示されるように、圧縮機10においてはシリンダブロック11の前部側にフロントハウジング12が接合され、後部側にリヤハウジング13が接合されている。尚、図1において圧縮機10の左側を前方とし、右側を後方とする。
フロントハウジング12には、クランク室14が後部側をシリンダブロック11により閉鎖された状態にて形成されている。
駆動軸15の前端は、突出端としてフロントハウジング12の外側へ突出されており、この突出端は車両のエンジンやモータ等の駆動源(図示せず)から回転力の伝達を受ける機構(図示せず)と連結されている。
クランク室14内における駆動軸15には、回転支持体16が固定されるとともに回転支持体16に係合される斜板17が備えられている。
斜板17は、ガイド孔20に対するガイドピン19の嵌入の関係に基づき、駆動軸15と一体的に回転する。
また、斜板17は、ガイド孔20に対するガイドピン19のスライドにより、駆動軸15の軸方向にスライド可能であるほか傾動可能に駆動軸15に支持されている。
なお、フロントハウジング12内の前部内壁にスラストベアリング21が備えられており、回転支持体16はスラストベアリング21を介してフロントハウジング12に対して回動可能である。
斜板17は、コイルスプリング22の付勢力を受けて常に後方、すなわち、斜板17の傾斜角度が減少する方向へ向けて押圧される。尚、斜板17の傾斜角度とは、ここでは駆動軸15と直交する面と斜板17の面により成す角度を意味している。
各ピストン26の前端は一対のシュー27を介して斜板17の外周と係合されており、斜板17が駆動軸15とともに回転すると、各ピストン26はシュー27を介してシリンダボア25内を軸線方向へ往復移動する。
リヤハウジング13内の中心側には吸入室29が形成されており、リヤハウジング13内の外周側には吐出室30が形成されている。吸入室29及び吐出室30は、バルブプレート28に設けられている吸入孔28a及び吐出孔28bによりシリンダボア25内の圧縮室31とそれぞれ連通されている。吸入孔28a及び吐出孔28bには、それぞれ吸入弁28c及び吐出弁28dが設けられている。
この容量制御弁32は、クランク室14と吐出室30とを連通する給気通路33の途中に配置されている。また、シリンダブロック11には、クランク室14と吸入室29とを連通する抽気通路34が形成されている。
この吸入通路36の途中には吸入通路36の開度を調節する吸入絞り弁37が配置されている。図2に示されるように、吸入絞り弁37の弁ハウジング38は、弁ハウジング38の上部を構成するハウジング上部39と、下部を構成するハウジング下部40を有している。吸入絞り弁37の弁ハウジング38は、例えば、樹脂製材料により形成された有底の筒状部材である。
この実施形態では、図1及び図2において、ハウジング上部39側を吸入絞り弁37における上方とし、ハウジング下部40側を下方とする。
ハウジング上部39の側面には、吸入通路36と連通する開口部41が形成されている。弁ハウジング38の外周は吸入通路36の内壁面とほぼ一致するように形成されており、ハウジング上部39の開口部41は、吸入室29を臨む吸入通路36に対向している。
ハウジング上部39の内部には弁作動室42が形成され、弁作動室42内には吸入通路36を開閉するための円筒状の第1弁体43が収容されている。第1弁体43はハウジング上部39の内径に対応する外径を有し、上下に往復移動可能に収容されている。
第1弁体43は、最大流量時に弁作動室42内の最下位置に案内され、最小流量時に弁作動室42内の最上位置へ案内される弁体である。第1弁体43は、吸入ポート35側に対向する円盤状の弁本体43aと、弁作動室42内において最上位に位置するときに開口部41の全体を遮蔽する環状の側壁43bを有している。
筒状キャップ44の開口端はフランジ状に形成され、ハウジング上部39の開口端に係止される。ハウジング上部39内に挿入固定された筒状キャップ44の下端部は第1弁体43の最上位置を規定する。
ハウジング上部39とハウジング下部40の間には、弁ハウジング38の内周から弁ハウジング38内の中心側へ向けて延設される環状突部45が形成されており、環状突部45は第1弁体43の最下位置を規定する。
第2弁体47は、円盤状の弁本体47aと、弁本体47aの外縁において上方へ延設された環状の側壁47bとを有する。
第2弁体47は、弁作動室46内において環状突部45の下面により最上位置を規定され、弁ハウジング38の底面50により最下位置を規定されている。尚、環状突部45の下面が第2弁体47の上方への移動を規制するストッパに相当する。
第2弁体47は、クランク室14と吐出室30が給気通路33を通じて連通されるとき(容量制御弁32が開くとき)、最上位置に案内される弁体である。
第2弁体47は、最上位置へ移動されたときにコイルばね49を介して第1弁体43に対する上向きの付勢力を増大させる。
従って、弁作動室46内における第2弁体47の上下方向への移動に伴い、抜き通路51の開口面積は変化し、第2弁体47が最下位置にある時には、抜き通路51の開口面積は最も大きく全開状態となり、第2弁体47が最上位置にある時には、抜き通路51の開口面積は最も小さくなり縮小状態となる。尚、第2弁体47が最上位置にあっても、抜き通路51は完全に閉じられることは無く、若干の隙間を維持された状態にある。
第2弁体47は、分岐路54からのクランク室圧力Pcを受けてハウジング下部40内の弁作動室46を上下に往復移動する。
駆動軸15の回転に伴い、斜板17は揺動回転運動を行い、斜板17と連結されたピストン26は、前後方向へ往復運動を行う。ピストン26が前方に移動することにより吸入室29の冷媒ガスは吸入孔28a及び吸入弁28cを介して圧縮室31に吸入され、続くピストン26の後方への移動により、圧縮室31にて所定の圧力に圧縮された後、吐出孔28b及び吐出弁28dを介して吐出室30に吐出される。
例えば、クランク室14のクランク室圧力Pcが下げられると、斜板17の傾斜角度が増加してピストン26のストロークが増大し、吐出容量が大きくなる。逆に、クランク室14のクランク室圧力Pcが上げられると、斜板17の傾斜角度が減少してピストン26のストロークが縮小し、吐出容量が小さくなる。
(1)吸入通路36の開度を調節するための弁体を、吸入圧力Psを受けて移動自在に配置された第1弁体43と、クランク室圧力Pcを受けて移動自在に配置された第2弁体47とで構成し、第1弁体43と第2弁体47の間の弁室48にコイルばね49を設け、弁室48と吸入室29を連通する抜き通路51を設け、この抜き通路51の開度を第2弁体47の上下移動に応じて可変とされているので、最大容量運転時においては、吸入圧力Psとクランク室圧力Pcはほぼ同等となることにより、第2弁体47は下方に移動し、弁室48と吸入室29とを連通する抜き通路51は全開状態となり、弁室48の密閉状態が低くなることによりダンパー効果は最も小さくなる。また、高流量の冷媒ガスが吸入通路36より吸入室29に吸入されることにより、吸入圧力Psと弁室圧力Pvとの間に差圧が生じ、第1弁体43はコイルばね49の付勢力に抗する下方への押圧力を受け、弁作動室42内を下方に移動し、開口部41は全開状態となる。この時、弁室48の密閉状態により決まるダンパー効果は最も小さくなるので、第1弁体43の下方への移動を阻害する要因が少なくなり、第1弁体43はスムースに移動し、冷房フィーリングの悪化が防止される。
(2)可変容量運転時においては、クランク室圧力Pcが吸入圧力Psより高くなることにより、第2弁体47はクランク室圧力Pcを受けて上方に移動し、抜き通路51は縮小状態となり、弁室48の密閉状態が高くなることによりダンパー効果は大きくなる。また、第1弁体43に作用するコイルばね49の付勢力は増大し、第1弁体は増大した付勢部材の付勢力に加えて、ダンパー効果による押圧力を大きく受けて上方に移動し、吸入通路36の開度の絞り込み効果を増大できる。よって、吸入弁28cの自励振動による吸入脈動の伝播が防止される。特に、低容量運転時においては、第2弁体47が環状突部45の下面に当接することで、抜き通路51の開口面積は最も小さい状態となり、弁室48の密閉状態により決まるダンパー効果は最も大きく作用する。また、コイルばね49の付勢力も最も大きくなり、吸入通路36の開度の絞り込み効果を更に増大できるので、低容量運転時における吸入脈動に起因する振動及び異音の低減を確実に図ることができる。
(3)このように本実施形態においては、弁室48と吸入室29を連通する抜き通路51を設け、この抜き通路51の開口面積を第2弁体47の移動に応じて可変とすることにより、ダンパー効果を有効に作用させることができ、低容量時における吸入通路36の開度の絞り込み効果の増大と、高容量時における吸入通路36の開度の確保という相反する課題を両立させることができる。よって、低容量運転時における吸入脈動に起因する振動及び異音の低減を図ると共に、低容量から高容量に至る全流量範囲に渡って性能維持が可能となる。
(4)弁室48と吸入室29を連通する抜き通路51を設け、この抜き通路51の開度を第2弁体47の上下移動に応じて可変とされているので、抜き通路51の開度を調整するための特別の駆動機構を設ける必要がなく、装置の小型化と部品点数の削減が可能となる。
○ 第1の実施形態では、弁体を第1弁体と第2弁体とで構成するとして説明したが、弁体は1個で有っても良い。この場合には、弁体と弁体が往復動する弁作動室のハウジングとで弁室が形成され、この弁室と吸入室とを連通する連通孔を設け、この連通孔を弁体の移動に応じて可変とすれば良い。弁体が1個で済むので、装置の簡略化を図ることが可能となる。
○ 第1の実施形態では、弁ハウジングの上部の内径を下部の内径より大きく設定し、第1弁体の外径を第2弁体の外径より大きいとして説明したが、同等であっても良く、また、逆に第1弁体の外径が第2弁体の外径より小さくても良い。
○ 第1の実施形態における付勢部材としてコイルスプリングを用いるとしているが、両弁体を常に引き離す方向への付勢力を有している付勢部材であれば良く、皿ばね等でも良い。
14 クランク室
29 吸入室
35 吸入ポート
36 吸入通路
37 吸入絞り弁
41 開口部
43 第1弁体
47 第2弁体
48 弁室
49 コイルバネ
51 抜き通路
Ps 吸入圧力
Pc クランク室圧力
Claims (2)
- 冷媒ガスを吸入する吸入ポートと吸入された冷媒ガスを収容する吸入室との間の吸入通路に、該吸入通路の開度を調節するための弁体が移動自在に配設され、前記弁体を前記吸入通路の開度を縮小する方向に付勢する付勢部材が設けられた弁室を備えた可変容量型圧縮機の吸入絞り弁において、
前記弁室と前記吸入室とを連通する連通孔を設け、
前記連通孔の開度を、最大容量運転時においては全開状態となり、前記最大容量運転時よりも容量が小さい可変容量運転時においては縮小状態となるように、前記弁体の移動に応じて可変としたことを特徴とする可変容量型圧縮機の吸入絞り弁。 - 前記弁体を吸入圧力を受けて移動自在に配置された第1弁体と、クランク室圧力を受けて移動自在に配置された第2弁体とで構成し、
前記第1弁体と前記第2弁体の間に前記付勢部材を設けた前記弁室を形成し、
前記第1弁体と前記第2弁体の間に前記第2弁体の移動を規制するストッパを設け、
前記第2弁体により前記連通孔の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の可変容量型圧縮機の吸入絞り弁。
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