JP4596610B2 - 振動波駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は出力軸を有する振動波駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、出力軸を有する振動波駆動装置としての振動モータはいくつか知られている。例えば図11に示すように、特開平5−38170号公報に開示されているモータがある。
【0003】
このモータは、中空筒状の弾性体としての金属ブロック150と152の間に圧電素子142と144とを配置し、これらの金属ブロック150、152の内周側に配置した筒状の結合ボルト154により両金属ブロックを結合したものを振動体140としている。
【0004】
一方、モータハウジング(外側ケース)は、ケース本体170と、ケース本体の開口端に配置されたモータ中心部に位置する筒状のモータ支持部171aを備えた蓋部171を有し、このモータ支持部171aがモータ支持部をなしており、該モータ支持部171aには軸受172が配置されて出力軸134を支持し、さらに結合ボルト154の内径部に設けられたリング状ツバ部175が固定され、振動体140を支持している。
【0005】
また、振動体140の片側には、接触体としての回転体(ロータ部)130が配置されており、このロータ部130はバネ133のバネ力により金属ブロック152の端面に円板形状のロータ本体132を加圧接触させている。バネ133はロータ本体132と支持プレート136との間に配置され、ロータ本体132と出力軸134は結合されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では軸受172がケースを構成する蓋部171のモータ支持部171aの一端側から挿入されているので、振動体の振動などで抜けやすい。
【0007】
また、それを避けるためには、軸受をケースに接着などして固定する必要がある。
【0008】
本出願に係る発明の目的は、出力軸の軸受の固定が簡単で信頼性が高い構成の振動波駆動装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、中空部が形成され、2つの曲げ振動を合成して駆動部に円又は楕円運動を発生させる振動体と、
前記振動体の前記中空部を貫通する出力軸と、
前記振動体の前記駆動部に加圧接触し、前記円又は楕円運動により駆動されて前記出力軸と一体に回転する回転体と、
前記振動体の前記中空部内に、前記振動体よりも前記回転体側に移動しないように規制されて配置された前記出力軸を支持する軸受部材と、を有し、
前記軸受部材は、前記振動体の前記2つの曲げ振動の略節となる位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
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【0011】
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【0012】
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【0013】
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【0014】
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【0015】
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【0016】
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【0017】
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【0018】
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【0019】
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【0020】
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【0021】
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【0022】
(削除)
【0023】
(削除)
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態を示す。
【0025】
図1は振動波駆動装置としての棒状の振動波モータの中心軸に沿った断面図を示す。
【0026】
本実施の形態における振動体は、円環形状の圧電素子(電気−機械エネルギー変換素子)4、金属薄板で成形された支持体3及びフレキシブルプリント基板18を中空金属製の2つの弾性体5、6の間に配置し、該2つの弾性体を締結部材である金属製の中空ボルト1により挟持固定して構成されている。
【0027】
本実施の形態の振動体は、圧電素子4へ交番電圧である駆動信号を印加することにより、位相差を有する2つの曲げ振動を励起し、その合成により、駆動部(摩擦摺動面)に円又は楕円運動を発生するものである。その駆動原理については特開平3−011981号公報等に記載され周知であるため説明は省略する。
【0028】
但し、本実施の形態では回転体を振動体の両端に2つ配置して、効率良く高トルクを得ている。
【0029】
なお、本実施の形態の振動体においては、振動体の軸心部に孔が有り、該孔に出力軸が貫通する形態の振動波駆動装置であるなら、本発明と同等の効果が得られる。
【0030】
本実施の形態の振動波駆動装置において、前記振動体は縄とびの縄の様な振動運動をしている。
【0031】
前記振動体には、2つの曲げ振動の合成で得られる振動により軸方向に沿って節位置が2つの振動が形成され、この振動の略節部に軸受7、8がそれぞれ配置される。振動の略節位置となる軸受7,8の取付部分は振動変位がきわめて小さい所なので、振動体の振動を阻害しない。
【0032】
ここで、軸受7、8は中空ボルト1の両端部と弾性体5、6の内径部との間に密着して挟まれているので、接着剤などを使用せずに容易に軸受を振動体に対し固定出来る。この軸受7、8は、樹脂板から切り出して形成されている。
【0033】
支持部材3は、圧電素子4と弾性体5との間に配置挟持される挟持部と、この挟持部より径方向外方に弾性体5の外周より延出している支持部とを有している。この支持部は、外周部が2分割構成のケース19、20の嵌合部に挟持されており、支持部材3は、振動体を支持している。そしてこの支持部材3の支持部は振動体の振動の腹に近い所に位置している。
【0034】
この支持部材3の支持部は振動体の軸心と略垂直方向に円運動をする。この振幅変位は、弾性体5、6の駆動部における振幅変位に比べて著しく小さい。それでも、該支持部を強固に支持固定することは出来ない。そのため、支持部材3は薄板で弾性のある部材で構成され、ここで振動を吸収するようにしている。これにより、振動波モータの両端をケース(振動の外系)19、20に強固に固定出来る。
【0035】
支持部材3は主に出力軸2にトルクが発生すると、その反作用としてのねじれ力を受ける。このことから、支持部材3は振動体の前記円運動に対しては柔らかく、ねじれ力に対しては剛くなるように形成されている。
【0036】
本実施の形態の振動体は、1カ所で強固に支持出来る部分がなかなか無いため、複数の支持手段を用いて振動体を支持するようにしている。
【0037】
この複数の支持手段の1つは前記した支持部材3であり、この支持部材3により振動体の回転方向の拘束を行なっている。
【0038】
また、前記した複数の支持手段の他の一つは、本実施の形態において出力軸2を支持する軸受7、8およびスペーサ9が担っており、振動体の軸心を決定すると共に、スペーサ9及びケース用ベアリング10により振動体の軸心方向(スラスト方向)を拘束する。
【0039】
弾性体5及び弾性体6の駆動部に対向してロータ11,12がそれぞれ同軸上に配置されている。ロータ11、12は、弾性体5,6との対向側部分の外径が小径に形成され、該小径部の外周にマルテンサイト系ステンレスの薄板をプレス絞り加工でリング状に成形したものを3枚重ね合わせて嵌合したものを摩擦部材11a、12aとし、各摩擦部材11a,12aの外周に締め付けリング11b、12bを装着することにより、ロータ11,12にリング状の摩擦部材11a,12aをかしめ固定する。なお、各摩擦部材11a,12aのロータ11、12より突出した部分(弾性体5、6の駆動部との接触部分)は、中心(出力軸2)側に向かって絞り込まれてバネ性が付与され、弾性体5,6の駆動部に形成される駆動振動との良好な追従性が得られるようになっている。
【0040】
前記ステンレス製の摩擦部材11a,12aはプレス加工後、焼入れ・焼戻し処理して硬さを向上させている。また、摩擦部材を構成する部材の枚数を増すほど同等の耐久性で、高トルクの駆動装置が出来る。
【0041】
一方、高いトルクの駆動装置にするにはロータ11、12(摩擦部材11a、12a)を振動体の駆動部へ強く圧接させる必要がある。摩擦部材11a、12a及び振動体の摩擦部分(摺動部分)に生じる摩耗は摩擦部分の面圧に影響を受けるので、摩擦部分の面積が同じまま該圧接の力を増加させると、摩擦部材11a、12aの摩耗が増大し、モータの耐久性が低下する。
【0042】
一方、単に摩擦部材11a、12aの板厚を増大させると、摩擦部材11a、12aの剛性が著しく大きくなる。その結果、鳴きを発生したり、摩擦部分のすべりが生じて振動波モータの駆動効率が低下してしまう。さらに、弾性体5、6の駆動部と摩擦部材11a、12aとの間に水分が凝縮して、密着力(吸引力)を生じ、振動波モータが起動しなくなることもある。
【0043】
そのため、本実施の形態の様に独立して変形可能な複数の摩擦部材11a、12aを設けることで、高トルク型の振動波モータに対応している。
【0044】
また、ロータ11,12を弾性体5、6に圧接させる、すなわち、摩擦部材11a,12aを弾性体5,6の駆動部に圧接させるために加圧バネ13、14がロータ11,12の内径部内にそれぞれ配置され、加圧バネ13,14の軸方向外方端部は、ロータ11,12の軸方向外方に設けた円盤形状の回り止め部材15,16に当接している。回り止め部材15,16と弾性体5,6との間の間隔を調節(言い換えれば、加圧バネ13、14の長さを調節)することにより、バネ圧を変更できる。なお、回り止め部材15,16は、回転体であるロータ11,12の回転力を出力軸2に伝達するためのものであり、出力軸2に圧入され固定されている。もちろん、レーザ溶接のようなさらに確実な方法で固定してもよい。さらに、出力軸2の外周面にローレットやスプライン溝を設けて圧入するのもよい。ロータ11、12の端部と回り止め部材15、16との間には、加圧バネ13、14の加圧力調整等のために隙間が設けられている。
【0045】
本実施の形態において、回り止め部材15、16にはロータ11,12に対向して2個所に爪15a、16aが軸対称に形成されており、爪15a、16aがロータ11,12の端部(回り止め部材15、16と対向する端部)に形成された溝に嵌合して、ロータ11、12の回転力を回り止め部材15、16に伝えている。なお、爪15a、16aはロータ11,12側に設けてもよい。また、ピンなどの別部材をロータあるいは回り止め部材に圧入してもよい。
【0046】
図1中左側に設けられた一方の回り止め部材16には、スペーサ9側のスリーブ部16bに出力軸2と直交方向にネジ孔16cが軸対称に形成され、ネジ孔16cに止めネジ17をねじ込むことにより、一方の回り止め部材16を出力軸2に固定できるようになっている。
【0047】
この止めネジ17を緩めることで、振動波モータを分解出来る。右ケース19及び左ケース20はその嵌合部で前述のように支持部材3を固定し、また端部でそれぞれケース用ベアリング10を保持している。
【0048】
各ベアリング10と回り止め部材15,16との間には、スペーサ9が配置され、ガタが生じないようになっている。
【0049】
上記の構成において、出力軸2に対して図1中左方向の力(外力)が加わった場合、止めネジ17により出力軸2と一体の回り止め部材16がスペーサ9に当接して左方向移動が規制される。
【0050】
また、出力軸2に対して図1中右方向の力(外力)が加わった場合、図中左側の回り止め部材16、加圧バネ14、ロータ12、摩擦部材12a、振動体(弾性体5、6)、摩擦部材11a、ロータ11、加圧バネ13を介して回り止め部材15に伝わり、回り止め部材15はスペーサ9と当接してそれ以上の移動が規制される。このように、出力軸2に側力(出力軸2の軸方向における外力)が加わっても、ロータ11、12(摩擦部材11a、12a)及び弾性体5、6の摩擦部分には何ら影響も与えないので、振動波モータの出力特性は安定している。
【0051】
図2は図1に示した1つの軸受付近を拡大したものである。
【0052】
この軸受8は、中空ボルト1の端部1a、弾性体6の内径部と接触しないようにしている。接触させない理由は2つある。
【0053】
第1に、振動体が振動中、軸受8と中空ボルト1の端部1a、あるいは弾性体6との接触面で互いにすべりを生じ、内部損失(運動エネルギーからエネルギーへの非可逆な変換であり、材料自体の持っているものと材料同士の接触界面で生じる摩擦損失も含む)が増大するのを防ぐためである。
【0054】
軸受には通常高分子材料のような、一般に振動減衰能の高い材料を使用するので、前記すべりによる該軸受の変形で内部損失が大きくなる。
【0055】
第2に、振動モードの変化に応じて、自動的に軸受8を最も振動の小さい所へ移動させて、内部損失や振動もれによる鳴きの発生を防ぐためである。軸受8は上述のように、設計上、振動体の略節部に配置している。
【0056】
しかし、図1において、ロータ12の摩擦部材12aから振動体が摩擦力を受けると、振動体における節部の位置が若干変化することもある。このような位置変化を許容できるようにするために、軸受8と中空ボルト1の端部1aとの間に隙間を設け、軸受8を軸方向に僅かながらでも自由に移動出来るようにしている。
【0057】
本実施の形態では、軸受8と中空ボルト1の端部1aとの間に上述した隙間を設けるために、中空ボルト1の突き当て部1bを、弾性体6の内周側に設けられた段部に当接させている。
【0058】
中空ボルト1の軸方向における両端側は、先端部に向かって外径が順に小さくなる3段の外周部に形成され、外径が中間の中央外周部(2段目の外周部)に雄ネジ部が形成され、該中央外周部と大径の外周部との境目の段部が突き当て部1bを構成する。また、弾性体6の内周は、中空ボルト1の外周部に対応して、外端部に向かって内径が順に小さくなる内周部が形成され、中空ボルト1の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が形成された中央内周部と、この中央円周部と隣り合う内径の大きな内周部とを有している。そして、弾性体6における中央内周部及び内径の大きな内周部の間の段部が突き当て部1bと当接するまで、中空ボルト1の雄ネジ部と雌ネジ部との螺合が行なわれる。この状態で、中空ボルト1の端部1aと軸受8との間には、上記した隙間が形成される。振動体を構成するにあたって、まず圧電素子4や支持部材3及び圧電素子4に電力を供給するなど(逆に、圧電素子4の変位で発生した出力電圧を取り出す役割もある。)の役割を持つフレキシブルプリント基板18は、2つの弾性体5、6の間ですべて密着して挟持固定されている必要がある。
【0059】
そのために、中空ボルト1の突き当て部1bと弾性体5、あるいは弾性体6の内、一方との間には隙間が生じるように予め設定している。
【0060】
次に、中空ボルト1の突き当て部1bが弾性体5、あるいは弾性体6の内周側の段部に突き当たっても、中空ボルト1の端部1aが軸受7及び8に接触しない様に、中空ボルト1の全長、弾性体5、6の内部のスラスト寸法及び軸受7,8の厚さが決められている。
【0061】
この実施の形態では、圧電素子4、支持部材3及びフレキシブルプリント基板18のそれぞれの内径と、中空ボルト1の中央付近の外径との嵌合により、以上の部品間の位置関係が決められる。
【0062】
さらに、中空ボルト1の外径と弾性体5、6の内径嵌合部(6a)との嵌合により、それらの部品間の中心位置関係も決められる。
【0063】
なお、本実施の形態は振動体(弾性体5、6)の軸方向両側にロータ11、12を配置したタイプについて説明したが、振動体の片側だけにロータを配置したタイプでも良い。また、振動体内に2つの軸受7、8を配置しているが、1つの軸受だけでも良い。
(第2の実施の形態)
図3は第2の実施の形態を示す。
【0064】
図2では、中空ボルト1の両端側に3段の外周部を形成し,中央(2段目)の外周部に雄ネジ部を形成し、それよりも軸方向中央側の大径の外周部との間の段部を弾性体6の内周部に形成された段部に当接させることで、中空ボルト1及び弾性体6間のねじ込みを規制し、軸受8と中空ボルト1の端部1dとの間に隙間を形成しているが、本実施の形態では、中空ボルト1の先端側にある程度の長さを残して雄ネジ部を形成している。そして、この中空ボルト1の雄ネジ部の端部を突き当て部1cとし、突き当て部1cを弾性体6の内周に形成した段部に突き当てることで、中空ボルト1の端部1aと軸受8との間に隙間を形成している。なお、図2に示す実施の形態では、中空ボルト1の反対側の突き当て部(図示せず)と弾性体5(図3では図示せず。図1には図示)の内径部は大抵は突き当たっている。
【0065】
本実施の形態は第1の実施の形態と異なり、中空ボルト1の中央付近にもネジが切ってあるので、該中空ボルト1のネジ部は転造加工が容易である。すなわち、第1の実施の形態のように、2個所にネジ部があると、2工程で転造加工しなければならないので工数がかかるが、本実施の形態ではこのような点が解消されている。
【0066】
バイトによる切削加工やタップ加工に比べて転造加工の優れた点は、安価な加工コスト、高強度なネジ山、さらにはボルト自身の材質として切削加工に適さない焼入れ硬化可能な高強度合金鋼を選択出来ることである。
【0067】
本実施の形態のモータに使用する中空ボルト1には、上記の転造ボルトが最適である。
(第3の実施の形態)
図4は第3の実施の形態を示す。
【0068】
本実施の形態は、外径が一定の中空ボルト1の内周の両端部に、この内周における他の部分よりも大径の内径部を夫々形成し、この大径の内径部に、軸受8を設けたものである。予め軸受8を中空ボルト1に嵌合しておけば、容易に振動体を組み立てられる。
【0069】
本実施の形態の場合に限らないが、軸受8を中空ボルト1の内周部に嵌合すると軸受8の内径部が小さくなる場合があるので、出力軸2を軸受8に貫通させる前にリーマなどで内径寸法を仕上げることもある。
【0070】
その場合は、中空ボルト1と軸受8を組み合わせた後に、該リーマ加工を施しておけば、振動体を組み立てた後に該リーマ加工を実施するより工程が簡単であり、これにより、切り粉の処理が簡単で部品に打痕やキズをつける心配が少なくなる。
【0071】
摩擦摺動部に摩擦係数の小さい高分子材料が残留すると、振動波モータのトルク低下や回転ムラになってしまう。
【0072】
またリーマ加工時、摩擦面などに高い平面精度を必要とする振動体を固定するにあたって、打痕やキズを防ぐため細心の注意あるいは複雑な組立装置が必要になってくる。
【0073】
但し、振動体の軸心と軸受の孔(=出力軸の軸心)との同軸度を高める必要がある時は、逆に振動体を組み立ててから前記リーマ加工をした方がよい。
(第4の実施の形態)
図5は第4の実施の形態を示す。
【0074】
本実施の形態における中空ボルト1は、図3に示すものと同じものを用いており、異なるのは軸受8を樹脂又はゴムで形成し、軸受8の外周には周方向に沿ってV溝部が形成されている。そしてこの軸受8は軸方向に弾力を有し、弾性変形できるようになっている。この軸受8を樹脂製とする場合は、樹脂板から切り出して形成されている。
【0075】
このため、たとえスラスト方向の寸法誤差で中空ボルト1の一端が先に軸受8に当たっても、軸受8自体が軸方向に弾性変形することで、前述したように振動体の組立で最も重要なことを阻害しない。
【0076】
つまり、2つの弾性体5、6と圧電素子4、支持部材3及びフレキシブルプリント基板18を当接させたままとすることができる。
【0077】
また、軸受8は、中空ボルト1と弾性体6との間に挟まれて、軸方向に変形することで、特に内径部が小さくなるので、軸受8の内周は出力軸2としっかりと密接する。
(第5の実施の形態)
図6は第5の実施の形態を示す。
【0078】
上記した図5に示す実施の形態においては、軸受8を樹脂又はゴムで形成することにより、軸受8自体に軸方向の弾性変形を与えることができるようにしているが、本実施の形態の軸受8はバネ部材により円錐台形に形成し、軸受8がちょうど皿バネと同じように機能し、軸方向に弾性変形可能であり、この場合も上記の実施の形態と同様の効果が得られる。また、本実施の形態の軸受8は、板状の素材をプレス打ち抜きで簡単に作製することが出来る。
(第6の実施の形態)
図7は第6の実施の形態を示す。
【0079】
本実施の形態における軸受8は、軸方向の外端側には出力軸2を僅かな幅で支持するための内フランジ部8aが形成され、反対側には弾性体6の内周に僅かな幅で支持されるための外フランジ部8bが形成されている。また、弾性体6の内周部には、軸受8の外方端部(内フランジ部8aが設けられた外周側の端部)と嵌合して、軸受8の軸方向外方への位置規制を行なう段部が形成されている。
【0080】
また、中空ボルト1の端部まで雄ネジ部が形成され、中空ボルト1を弾性体6にねじ込み、中空ボルト1の端部が軸受8の端部(外フランジ部8b)に当接するまでねじ込まれる。本実施の形態における軸受8は樹脂の射出成形で作られており、内フランジ部8aで出力軸2を支持し、外フランジ部8bで弾性体6に支持されることにより軸受8の外径部が弾性体6と接触する部分を最小限面積とし、振動漏れを小さくしつつ、圧入作業を行いやすくしている。
【0081】
また、振動漏れと摩耗との兼ね合いで、軸受8の内径部の接触面積(出力軸2に対する内フランジ部8aの接触面積)も決める。
【0082】
本実施の形態では、軸受8の全長(軸方向の長さ)を長くした分、中空ボルト1の全長を短く出来る。その結果、軸受8と中空ボルト1を合わせた合計コストが低減可能である。
(第7の実施の形態)
図8は第7の実施の形態を示す。
【0083】
本実施の形態において、軸受8をゴム製のオー(O)リングで形成している。
【0084】
本実施の形態においては、出力軸2と弾性体6との間に、ゴム製のOリングである軸受8が挟まれているため、振動体の振動を確実に遮断し、出力軸2にはほとんど振動漏れがない。
【0085】
また、オーリングの軸受8の表面にはフッ素樹脂などの潤滑性のある表面処理が施され、軸受8における摩擦損失が低減して出力軸2の回転負荷を低減するようにしている。
(第8の実施の形態)
図9は第8の実施の形態を示す。本実施の形態は、出力軸2に周方向に溝部2aを設け、該溝部2aに上記の実施の形態と同様のオーリングの軸受8を嵌合している。
【0086】
本実施の形態において、軸受8としてのオーリングは、弾性体6の内周に形成した内フランジ部6bの斜面部と、中空ボルト1の端部に形成された斜面部とにも当接している。
【0087】
よって、出力軸2に軸(スラスト)方向の力が加わっても、出力軸2と振動体はそれらの相対位置が動かない。
【0088】
そのため、本実施の形態では、図1におけるスペーサ9が不要となる。
【0089】
すなわち、図1のように、スペーサ9で出力軸2の軸方向に加わる力を受ける設計では、トルク損失が生じる。
【0090】
つまり、軸方向の力が加わって回り止め部材16とスペーサ9及びケース用ベアリング10が互いに密接すると、そこで摩擦が生じるので振動波モータの発生トルクの低減を招くおそれがある。
(第9の実施の形態)
図10は第9の実施の形態を示す。
【0091】
出力軸2は外端側が小径で、内側が大径の段付き形状に形成されており、該段付き部に樹脂製シートをプレス加工でワッシャ状に打ち抜いて形成した軸受8を弾性体6の内径段差部に押し当てている。
【0092】
本実施の形態では、きわめて簡単な構成であり、かつ前述した軸方向への力が出力軸2に加わってもその力に対抗出来る。
【0093】
但し、この実施の形態では第8の実施の形態と同じように、圧電素子4などを2つの弾性体5、6の間に挟み込んで振動体を組み立てる時に、同時に出力軸2も組みつけておく必要がある。段差の関係で後から出力軸2を挿入することは出来ない。
【0094】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、振動体の内部に軸受部材を設けるに当たって、該軸受部材を弾性体と中空ボルト等の締結部材との間に配置させることで、接着や圧入などにその固定を頼る方法と異なり、組立工程の低減と軸受の抜け落ちの心配がない確実なセッティングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による振動波駆動装置の第1の実施の形態を示すの断面図。
【図2】図1の一部断面図。
【図3】本発明による振動波駆動装置の第2の実施の形態を示の一部断面図。
【図4】本発明による振動波駆動装置の第3の実施の形態を示す一部断面図。
【図5】本発明による振動波駆動装置の第4の実施の形態を示す一部断面図。
【図6】本発明による振動波駆動装置の第5の実施の形態を示す一部断面図。
【図7】本発明による振動波駆動装置の第6の実施の形態を示す一部断面図。
【図8】本発明による振動波駆動装置の第7の実施の形態を示す一部断面図。
【図9】本発明による振動波駆動装置の第8の実施の形態を示す一部断面図。
【図10】本発明による振動波駆動装置の第9の実施の形態を示す一部断面図。
【図11】従来の振動波駆動装置(モータ)の断面図。
【符号の説明】
1 中空ボルト
1a 端部
1b 突き当て部
1c ねじ突き当て部
2 出力軸
3 支持板
4 圧電素子
5,6 弾性体
6a 嵌合部
7,8 軸受
9 スペーサ
10 ケース用ベアリング
11 ロータ
11a 摩擦部材
11b かしめ部材
12 ロータ
12a 摩擦部材
12b しめつけリング
13,14 加圧バネ
15,16 回り止め
17 ネジ
18 フレキシブルプリント基板
19 右ケース
20 左ケース
Claims (8)
- 中空部が形成され、2つの曲げ振動を合成して駆動部に円又は楕円運動を発生させる振動体と、
前記振動体の前記中空部を貫通する出力軸と、
前記振動体の前記駆動部に加圧接触し、前記円又は楕円運動により駆動されて前記出力軸と一体に回転する回転体と、
前記振動体の前記中空部内に、前記振動体よりも前記回転体側に移動しないように規制されて配置された前記出力軸を支持する軸受部材と、を有し、
前記軸受部材は、前記振動体の前記2つの曲げ振動の略節となる位置に設けられていることを特徴とする振動波駆動装置。 - 前記振動体は、複数の弾性部材と、前記複数の弾性部材間に配置される電気−機械エネルギー変換素子と、前記複数の弾性部材の内周部側に配置され、前記複数の弾性部材を締結するための締結部材とを有し、
前記複数の弾性部材のうち少なくとも1つの弾性部材の内周部に前記軸受部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。 - 前記振動体は、複数の弾性部材と、前記複数の弾性部材間に配置される電気−機械エネルギー変換素子と、前記複数の弾性部材の内周部側に配置され、前記複数の弾性部材を締結するための締結部材とを有し、
前記締結部材の内周部に前記軸受部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。 - 前記軸受部材は、前記振動体の軸方向に沿って一定量の移動が許容可能に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに1項に記載の振動波駆動装置。
- 前記軸受部材は軸方向に変位可能であることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の振動波駆動装置。
- 前記締結部材の端部近傍の内周部に、前記軸受部材の軸方向の移動を許容する空隙を形成したことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の振動波駆動装置。
- 前記軸受部材は軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動波駆動装置。
- 前記振動体は軸方向両側に前記駆動部を有し、前記各駆動部に対応して前記回転体がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
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