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JP4576856B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池と、前記燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムに関するものである。
携帯電話や携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ、等の携帯用小型電子機器の多機能化に伴う消費電力の増大や連続使用時間の増加に対応するために、搭載電池の高エネルギー密度化が強く要望されている。現在、これらの電源として、主にリチウム二次電池が使用されているが、2005年頃にはエネルギー密度500Wh/L、200Wh/kg程度で限界を迎えると予測されており、これに替わる電源として、固体高分子型燃料電池(PEFC)の早期実用化が期待されている。このPEFCの中で、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、等の有機燃料を水素に改質せずに、直接セル内部に供給して電極酸化し発電するタイプの直接型燃料電池が、有機燃料の持つ理論エネルギー密度の高さ、システムの簡素化、燃料貯蔵のしやすさの面から注目され、活発な研究開発が行われている。
直接型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に触媒層とガス拡散層とを設けたセル構造を有し、アノード極側にメタノール、エタノール、ジメチルエーテル、等の有機燃料と水を直接供給し、カソード極側に酸素又は空気、等の酸化剤を供給することで発電する燃料電池である。
例えば、有機燃料としてメタノールを用いた場合の直接型燃料電池(略称DMFC)の電極反応は以下の通りである。
アノード極:CH3OH+H2O → CO2+6H++6e-
カソード極:3/2O2+6H++6e- → 3H2
すなわち、アノード極では、メタノールが水と反応して、二酸化炭素、プロトン、電子を生成し、プロトンは電解質膜を通ってカソード極に到達する。カソード極では、酸素、プロトンと外部回路を経由した電子が結合して水を生成するものである。従って、アノード極で完全に理想的な反応が起こった場合には、アノード極から排出される化学物質は、二酸化炭素(炭酸ガス)のみとなるわけであるが、実際には、アノード極側には濃度3〜30wt%のメタノール水溶液を供給しているために、反応に関与しなかったメタノールや大過剰の水がアノード極から排出されることになる。さらに、その排出燃料の中には副反応生成物(ホルムアルデヒド、蟻酸等)や反応途中の化学物質が含まれていることが確認されている。
メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸は、いずれも毒物劇物取締法の劇物に指定されており、ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の要因となる物質としてその放出量は厳しく制限されている。
日本産業衛生学会による許容濃度等の勧告(2002年度)によれば、各物質の許容濃度(労働省が1日8時間、週間40時間程度有害物質に暴露される場合に、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度)は、メタノール:200ppm、ホルムアルデヒド:0.5ppm、蟻酸:5ppmであり、さらにホルムアルデヒドに関しては、厚生労働省の室内濃度指針値0.08ppmが提示されている。
そのため、DMFCを搭載した電子機器を室内において長時間使用した場合に、排出燃
料中の有害物質の混入濃度を上記した許容濃度を超えないように低レベルに抑制することが必須であり、この課題を解決することがDMFCの商品化への鍵を握るものと思われる。
排出燃料中のメタノールと二酸化炭素とを分離する方法として、気化したメタノールと二酸化炭素との混合ガスを冷却してメタノールの大部分を凝縮させる方法や分離膜を用いて両者を分離し、二酸化炭素のみを排出させる方法が提案されている。
しかしながら、前者の方法では、DMFCを搭載した電子機器内にメタノールの蒸気圧が充分に低いレベルに到達するまで排出ガスを冷却する機構を設けることは現実的には極めて困難である。後者の方法についても、メタノールと二酸化炭素との分離係数が充分に大きく、且つ二酸化炭素の透過速度が大きい膜が開発させれば有効な方法であると考えられるが、現状ではこのような優れた機能を有する膜は得られていない。
このように、排出燃料中のメタノールと二酸化炭素とを分離するための有効な方法が見出されていないことから、メタノール、ホルムアルデヒド、等の有害物質を含む排気ガスを酸化触媒により燃焼浄化させるための方法ならびに装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、原燃料であるメタノールと水を気化させて改質器に供給するための蒸発器、この蒸発器をメタノール燃焼反応により加熱するための加熱器を設けたメタノール改質型燃料電池システムにおいて、この加熱器の後段に、加熱器からの未燃焼メタノール及びアルデヒドを捕捉するためのトラップ触媒を配置し、このトラップ触媒に燃料電池からの排水素及び排空気を供給することで未燃焼メタノール及びアルデヒドを酸化浄化させる方法が開示されている。
特許文献2には、液体燃料直接供給形燃料電池システムにおいて、正極、負極の電気化学反応で生成した反応生成物から気体と液体を分離する気液分離槽を設け、分離された気体成分を回収して大気に排出する気体成分回収手段に副生成物を吸収または分解するフィルターを備える構成が開示されている。
また、特許文献3には、二酸化マンガン及び酸化第二銅を主成分として含有する酸化触媒を使用して燃焼排ガス中に含まれる微量アルデヒドを酸化し燃焼排ガスを脱臭する方法や上記酸化触媒を層状に充填してなる燃焼排ガスの脱臭用触媒ユニットの構造に関する内容が記載されている。
例として、DMFCについて取り上げたが、他の有機燃料を用いた直接型燃料電池の場合についても同様の状況にあると考えられる。
特開2001―17835号公報 特開2003―223920号公報 特開平9―206596号公報
しかしながら、前記従来の構成では、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が高く、且つ、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さな触媒燃焼器を備えた燃料電池システムを提供することは困難であり、未だ多くの問題が存在している。
トラップ触媒を配置した排気浄化装置は、排気の通流が可能なハニカム担体の隔壁に未燃焼のメタノール及びアルデヒドを捕捉するトラップ触媒としてのゼオライト層ならびにこれらを酸化浄化する三元触媒層を担持させた構成であるため、この装置を用いた場合、排出燃料中の有害物質であるメタノールやホルムアルデヒドがトラップ触媒に完全に捕捉されずにハニカム担体の貫通孔を通過してしまい、セル外部への有害物質の放出量を法的規制の許容濃度以下に低減することができない。
また、反応生成物を気体と液体に分離する気液分離槽ならびに気体中の副生成物を吸収または分解するフィルター(吸着剤、貴金属系触媒、銀系触媒、光化学触媒をハニカム層に担持させたもの)を備える気体成分回収手段を設けた構成であっても、上記したように、気液を分離するための有効な方法が見出されていないため、排出ガス中に気化した状態もしくは微小な液滴の状態で混入する有害物質をフィルターで完全に捕捉することができず、有害物質の大気中への散逸を抑制することは極めて困難である。
さらに、燃焼排ガスの脱臭用触媒ユニットを用いた場合には、有害物質の浄化率向上には適しているものの、排出燃料通過時の圧力損失が大きくなるために、吐出圧の高いポンプ、等の導入が必要となり、システム全体の大型化/電力ロスの増大を招いてしまい好ましくない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が高く、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さな触媒燃焼器を備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムであって、前記触媒燃焼器は、触媒層付多孔質シートで分割された二つの燃焼室からなり、一方の燃焼室には、前記排出された燃料が導入される導入口のみが設けられており、他方の燃焼室には、空気が導入される導入口と、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口とが設けられていることを特徴とするものである。
本構成によって、燃料電池から排出された燃料中のすべての有害物質は、触媒層付多孔質シートに接触し、それを通過する段階で触媒燃焼されて大気中に放出されることになる。しかも燃料と空気とを予め混合させた後に触媒燃焼させるのではなく、燃料と空気を別々に触媒燃焼器に導入し、触媒層付多孔質シートの一方の表面から拡散してきた燃料が、他方の表面から拡散してきた空気中の酸素と触媒層内部の活性点で接触して燃焼する方式を用いているために、燃料及び酸素が触媒活性点に吸着し表面反応するための滞留時間を長くすることができ、その結果、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が高く、且つ、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さな触媒燃焼器を備えた燃料電池システムを提供することが可能となる。
本発明の請求項2に記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池が固体高分子電解質膜の両側に触媒層及び拡散層からなる一対の電極を配置し、電極の一方に有機燃料を供給し、他方に空気を供給することで発電する直接型燃料電池であって、前記燃料電池のアノード極側から排出された液体及び気体を回収して、再度発電に利用することのない非循環型燃料電池であることを特徴とするものである。
本構成の燃料電池は、燃料供給量を発電時に消費される量に限りなく近づけて、結果として、アノード極側から排出される燃料排出量を極力低減させる方法で非循環状態を維持
しながら、高燃料効率の発電を実現させる電池であるため、冷却器や気液分離器、等の装置は不要となり、システムとしてコンパクトな設計が可能となる。
本発明の請求項3に記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記触媒層付多孔質シートが、触媒層の両側に多孔質拡散層を積層した構造であることを特徴とするものである。
本構成によって、排出燃料中の有害物質及び空気が多孔質拡散層を通って触媒層中に均一に供給されるとともに、排出燃料中の水ならびに触媒燃焼反応により生成する水と二酸化炭素を含んだ空気が速やかに排出されるために、触媒燃焼反応率(浄化率)の向上と触媒燃焼器の圧力損失の低減化を高いレベルで両立させることができる。
本発明の請求項4に記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記空気が前記燃料電池のカソード極から排出された排出空気を含むものであることを特徴とするものである。
本構成によって、燃料電池のカソード極から排出された空気に含有している微量の一酸化炭素やその他の副生成物についても同様に酸化浄化させることができ、有害物質の大気中放出抑制の面で極めて有用である。
本発明の請求項5に記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記触媒燃焼器内部の温度を30〜80℃とすることを特徴とするものである。
本構成によって、触媒活性が高まり、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が向上する。なお、触媒活性を高めるためには、触媒燃焼器の温度を高く設定することが有効であるが、携帯機器内部の部材への影響を考慮すると30〜80℃の範囲が好ましい。
本発明の請求項6に記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記触媒層中の触媒が、白金単体からなる白金金属、または、白金を主たる金属とし、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、オスミウム、またはイリジウムの少なくとも一つの金属との合金または混合物であることを特徴とするものである。
本構成によって、酸化剤の酸素が存在する酸化雰囲気下においても安定に存在し、しかもメタノールの酸化反応に対して高い触媒能を示す白金や白金を主たる金属とする合金または混合物を用いるために、低温環境下での触媒燃焼反応率(浄化率)の向上を実現することができる。
本発明の請求項7に記載の燃料電池システムは、請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、前記有機燃料が少なくともメタノールを含む有機化合物であることを特徴とするものである。
本構成によって、メタノール燃料の持つ理論エネルギー密度の高さ、貯蔵のしやすさ、低コストといったメリットを活かした直接型燃料電池システムを構築することができる。
本発明は、燃料電池と、燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムにおいて、触媒燃焼器が、触媒層付多孔質シートで分割された二つの燃焼室からなり、一方の燃焼室には、排出された燃料が導入される導入口のみが設けられてお
り、他方の燃焼室には、空気が導入される導入口と、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口とが設けられている構造であるため、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が高く、且つ、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さい燃料電池システムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の燃料電池システムにおける触媒燃焼器1の拡大断面図であり、図2は、本発明の燃料電池システムに関する第1の実施の形態を示す概略図である。
図1において、2は触媒層付多孔質シートであり、触媒層3の片側もしくは両側に多孔質拡散層4を積層した構造を有している。触媒層3は、触媒金属を担持した導電性炭素粒子と高分子電解質を主成分とした厚さ10〜50μm程度の薄膜である。多孔質拡散層4としては、燃料及び空気の拡散性、発電により発生した二酸化炭素の排出性を併せ持つカーボンペーパー、カーボンクロス、等の多孔質材料を適用することができる。この触媒層付多孔質シート2をリブ付ガスシール材5、樹脂含浸黒鉛板6、触媒燃焼器の温度制御用のヒータ7、端板8で両側から挟み込み、締結ボルト9で固定する。なお、樹脂含浸黒鉛板6には、燃料もしくは空気を均一に供給するための流路が形成されている。触媒層付多孔質シート2で分割された図1の上側の燃焼室10には、燃料電池15から排出された燃料が導入される燃料導入口11のみが設けられており、下側の燃焼室12には、空気が導入される空気導入口13と触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口14が設けられている。なお、燃焼室12に導入される空気としては、前述したように、有害物質の大気中放出を抑制するとの観点から、燃料電池15のカソード極21から排出された空気を用いることが好ましい。また、触媒層3中の触媒としては、白金単体からなる白金金属、または、白金を主たる金属とし、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、オスミウム、またはイリジウムの少なくとも一つの金属との合金または混合物を適用することが好ましい。
図2に示す燃料電池システムの特徴は、燃料電池のアノード極側から排出された液体及び気体を回収して、再度発電に利用することのない非循環型燃料電池システムにある。すなわち、燃料供給量を発電時に消費される量に限りなく近づけて、結果として、アノード極側から排出される燃料排出量を極力低減させる方法で非循環状態を維持しながら発電する燃料電池システムであるため、冷却器や気液分離器、等の装置は不要となる。
燃料電池15は、固体高分子電解質膜16の両側に触媒層とガス拡散層からなる一対の電極を設けたセル構造を一つもしくは複数個積層させたセルスタックからなる。また、燃料電池15には、セル温度を制御するためのヒータが設置されている(図示せず)。まず、燃料電池15のアノード極17に燃料タンク18内の有機燃料を燃料ポンプ19により直接供給する。次いで、空気ポンプ20によりカソード極21に空気を供給することで燃料電池15を発電する。発電により燃料電池15から排出された燃料は、空気ポンプ22から送られた空気を用いて触媒燃焼器1で酸化浄化されて、水及び二酸化炭素を含んだ空気として大気中に放出される。
図3は、本発明の燃料電池システムに関する第2の実施の形態を示す概略図である。第1の実施の形態との相違点は、燃料電池のアノード極側から排出された液体及び気体を回収して、再度発電に利用する循環型燃料電池システムにある。
なお、第1の実施の形態と同様の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な
説明は省略する。燃料タンク18内の有機燃料を燃料ポンプ19により燃料電池15のアノード極17に直接供給し、カソード極21には空気ポンプ20を用いて空気を供給することで燃料電池15を発電する。発電により燃料電池15から排出された燃料は、冷却器23で冷却された後、気液分離器24で気体成分と液体成分とに可能な限り分離される。その後、液体成分は燃料タンク18に回収され、気体成分は触媒燃焼器1に送られて、空気ポンプ22から送られた空気を用いて酸化浄化された後に、水及び二酸化炭素を含んだ空気として大気中に放出される。なお、燃料タンク18内の有機燃料の濃度は、濃度センサー25を用いて常時モニターされており、燃料タンク18内の燃料濃度が一定水準よりも低下した際には、原燃料タンク(100%有機燃料タンク)26よりバルブ27を通して適宜補充される燃料濃度自動調整システムになっている。
本発明の燃料電池システムを実施例と比較例を用いて詳細に説明する。
(実施例1−1)
実施例1−1は、本発明の燃料電池システムに関する第1の実施の形態に基づく一例である。
平均一次粒子径30nmを持つ導電性炭素粒子であるケッチェンブラックEC(オランダ国、AKZOChemie社製)に、平均粒径30Åの白金とルテニウムとを、それぞれ25重量%担持させたものを触媒担持粒子とした。次に、この触媒担持粒子をイソプロパノールに分散させた溶液と、高分子電解質をエチルアルコールに分散させた溶液とを混合した後、ビーズミルで高分散させることにより触媒ペーストを作製した。このとき触媒ペースト中の導電性炭素粒子と高分子電解質との重量比を1:1とした。なお、高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸イオノマー(旭硝子社製フレミオン)を用いた。この触媒ペーストをスプレー法により多孔質拡散層4(東レ社製TGP−H060)上に塗布し、これを大気中常温で12時間乾燥させることで、外寸60mm×60mm、厚み30μmの触媒層3を形成させた。なお、触媒層3の白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ2mg/cm2(総量72mg)である。さらに、触媒層3上に多孔質拡散層4を積層した後にプレスすることで、触媒層付多孔質シート2(触媒層3の両側に多孔質拡散層4を積層した構造)を作製した。この触媒層付多孔質シート2をリブ付ガスシール材5、厚さ5mmの樹脂含浸黒鉛板6、触媒燃焼器の温度制御用のヒータ7、端板8で両側から挟み込み、締結ボルト9で固定することで触媒燃焼器1を作製した。なお、樹脂含浸黒鉛板6には、幅2mm、深さ2mmのサーペンタイン型流路が形成されている。また、ヒータ7により触媒燃焼器内部の温度を60℃に保持した。
上記触媒燃焼器1と燃料電池15、燃料タンク18、燃料ポンプ19、空気ポンプ20、空気ポンプ22をそれぞれ図2のように連結して、第1の実施の形態である燃料電池システムAを作製した。なお、本実施例の燃料電池15は、10個のセルを積層した10セルスタックからなる。
(実施例1−2)
触媒層付多孔質シート2は、触媒層3の片側にのみ多孔質拡散層4を設けた構造であり、燃料電池15からの排出燃料が導入される燃焼室10側に向けて触媒層3面を配置すること以外は、実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システムBを作製した。
(実施例1−3)
触媒層付多孔質シート2は、触媒層3の片側にのみ多孔質拡散層4を設けた構造であり、空気が導入され、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される燃焼室12側に向けて触媒層3面を配置すること以外は、実施例1−1と同様な方法により、燃料電
池システムCを作製した。
(実施例1−4)
触媒燃焼器1内部の温度を40℃に制御すること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システムDを作製した。
(実施例1−5)
触媒燃焼器1内部の温度を30℃に制御すること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システムEを作製した。
(実施例1−6)
触媒燃焼器1内部の温度を20℃に制御すること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システムFを作製した。
(実施例1−7)
触媒燃焼器1の燃焼室12に導入される空気を燃料電池15から排出された空気とすること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システムGを作製した。
(比較例1−1)
燃料電池15から排出された燃料と空気とを予め混合させた後に、触媒燃焼器1の燃焼室10に
導入すること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システム1を作製した。
(比較例1−2)
実施例1−1で作製した触媒ペースト中にセラミックハニカム(平行貫通孔2mm角)を浸漬させることで、白金触媒及びルテニウム触媒を担持させたハニカム構造体を作製し、これを触媒層付多孔質シート2の代わりに用いること、燃料電池15から排出された燃料と空気とを予め混合させた後に、燃焼室10に導入すること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システム2を作製した。なお、ハニカム構造体に担持している白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ72mgである。
(比較例1−3)
実施例1−1で作製した触媒ペーストをスプレー法により触媒燃焼器1の燃焼室10を構成している樹脂含浸黒鉛板6のサーペンタイン型流路に塗布し触媒層を形成すること、燃料電池15から排出された燃料と空気とを予め混合させた後に、燃焼室10に導入すること、燃焼室10に触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口を設けること以外は実施例1−1と同様な方法により、燃料電池システム3を作製した。なお、樹脂含浸黒鉛板6の流路に形成された触媒層中の白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ72mgである。
このようにして作製した実施例の燃料電池システムA〜G及び比較例の燃料電池システム1〜3について、触媒燃焼器の触媒燃焼反応率(浄化率)及び圧力損失を評価した結果を表1に示す。
(1)触媒燃焼器の触媒燃焼反応率(浄化率)
実施例の燃料電池システムA〜G及び比較例の燃料電池システム1〜3において、燃料タンク18内の2Mメタノール水溶液を燃料ポンプ19により、各セルあたりの燃料流量0.4cc/分で燃料電池15のアノード極17に直接供給し、カソード極21には空気ポンプ20を用いて、各セルあたりの空気流量1L/分を供給した。次に、電池温度を6
0℃に設定した後、電流密度100mA/cm2で連続発電試験を行った。その際、燃料電池15のアノード極17からのメタノール排出量は、1.56×10-3mol/分であった。上記の排出メタノール水溶液は各実施例及び比較例の触媒燃焼器1に導入され、空気ポンプ22から送られた空気1L/分により酸化浄化される。その後、触媒燃焼器1から排出される水溶液中のメタノール量αmol/分を測定し、下式により、触媒燃焼器1による触媒燃焼反応率(浄化率)を算出した。
触媒燃焼反応率(%)=(1.56×10-3−α)/1.56×10-3×100
(2)触媒燃焼器の圧力損失
実施例の燃料電池システムA〜G及び比較例の燃料電池システム1〜3において、触媒燃焼器1の空気を導入する側の燃焼室に、空気流量1L/分を供給した際の触媒燃焼器1による圧力損失値を測定した。
表1から明らかなように、燃料電池システムA〜Gは、燃料電池と、燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムであって、上記触媒燃焼器が、触媒層付多孔質シートで分割された二つの燃焼室からなり、一方の燃焼室には、排出された燃料が導入される導入口のみが設けられており、他方の燃焼室には、空気が導入される導入口と、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口とが設けられている構造であるために、燃料電池から排出された燃料中のすべての有害物質は、触媒層付多孔質シートに接触し、それを通過する段階で触媒燃焼されて大気中に放出されることになる。その結果として、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が高く、且つ、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さい燃料電池システムが得られることがわかった。
特に、燃料電池システムAと燃料電池システムB、Cとの比較から、触媒層付多孔質シートとしては、触媒層の両側に多孔質拡散層を積層した構造が、排出燃料中の有害物質及び空気の触媒層への供給、ならびに水と二酸化炭素を含んだ空気の触媒層からの排出が良好となるために、触媒燃焼反応率(浄化率)の向上と触媒燃焼器の圧力損失の低減化を高いレベルで両立させることができた。また、燃料電池システムA、D、E、Fとの比較から、触媒燃焼器内部の温度を高くすることにより、触媒活性が高まり、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が向上することが明らかとなった。一方、燃料電池システムAと燃料電池システムGとの比較から、触媒燃焼器に導入される空気としては、燃料電池のカソード極から排出された空気を適用しても同等の効果が得られることがわかった。
これに対して、燃料電池システム1の場合には、燃料と空気とを予め混合させた後に、連続的に触媒層に送り込み触媒燃焼させる流通型の浄化方法であるために、燃料及び酸素が触媒層付多孔質シート中の触媒活性点に吸着し表面反応するための滞留時間が短くなり、触媒燃焼反応率(浄化率)が低下した。さらに、燃料と空気との混合物が触媒層付多孔質シート内部を通過するために、触媒燃焼器による圧力損失が大幅に増大する結果となった。一方、燃料電池システム2、3の場合には、触媒燃焼器による圧力損失は小さいものの、排出燃料中の有害物質を完全に捕捉することができずに、有害物質がハニカム担体の貫通孔や燃焼室の排出口を通過してしまい、触媒燃焼反応率(浄化率)が著しく悪化した。
(実施例2−1)
実施例2−1は、本発明の燃料電池システムに関する第2の実施の形態に基づく一例である。
平均一次粒子径30nmを持つ導電性炭素粒子であるケッチェンブラックEC(オランダ国、AKZOChemie社製)に、平均粒径30Åの白金とルテニウムとを、それぞれ25重量%担持させたものを触媒担持粒子とした。次に、この触媒担持粒子をイソプロパノールに分散させた溶液と、高分子電解質をエチルアルコールに分散させた溶液とを混合した後、ビーズミルで高分散させることにより触媒ペーストを作製した。このとき触媒ペースト中の導電性炭素粒子と高分子電解質との重量比を1:1とした。なお、高分子電解質としては、パーフルオロカーボンスルホン酸イオノマー(旭硝子社製フレミオン)を用いた。この触媒ペーストをスプレー法により多孔質拡散層4(東レ社製TGP−H060)上に塗布し、これを大気中常温で12時間乾燥させることで、外寸60mm×60mm、厚み30μmの触媒層3を形成させた。なお、触媒層3の白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ2mg/cm2(総量72mg)である。さらに、触媒層3上に多孔質拡散層4を積層した後にプレスすることで、触媒層付多孔質シート2(触媒層3の両側に多孔質拡散層4を積層した構造)を作製した。この触媒層付多孔質シート2をリブ付ガスシール材5、厚さ5mmの樹脂含浸黒鉛板6、触媒燃焼器の温度制御用のヒータ7、端板8で
両側から挟み込み、締結ボルト9で固定することで触媒燃焼器1を作製した。なお、樹脂含浸黒鉛板6には、幅2mm、深さ2mmのサーペンタイン型流路が形成されている。また、ヒータ7により触媒燃焼器内部の温度を30℃に保持した。
上記触媒燃焼器1と燃料電池15、燃料タンク18、燃料ポンプ19、空気ポンプ20、空気ポンプ22、冷却器23、気液分離器24、濃度センサー25、原燃料タンク(100%有機燃料タンク)26、バルブ27をそれぞれ図3のように連結して、第2の実施の形態である燃料電池システムHを作製した。なお、本実施例の燃料電池15は、10個のセルを積層した10セルスタックからなる。
(実施例2−2)
触媒燃焼器1内部の温度を20℃に制御すること以外は実施例2−1と同様な方法により、燃料電池システムIを作製した。
(比較例2−1)
実施例2−1で作製した触媒ペースト中にセラミックハニカム(平行貫通孔2mm角)を浸漬させることで、白金触媒及びルテニウム触媒を担持させたハニカム構造体を作製し、これを触媒層付多孔質シート2の代わりに用いること、燃料電池15から排出された燃料と空気とを予め混合させた後に、燃焼室10に導入すること以外は実施例2−1と同様な方法により、燃料電池システム4を作製した。なお、ハニカム構造体に担持している白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ72mgである。
(比較例2−2)
実施例2−1で作製した触媒ペーストをスプレー法により触媒燃焼器1の燃焼室10を構成している樹脂含浸黒鉛板6のサーペンタイン型流路に塗布し触媒層を形成すること、燃料電池15から排出された燃料と空気とを予め混合させた後に、燃焼室10に導入すること、燃焼室10に触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口を設けること以外は実施例2−1と同様な方法により、燃料電池システム5を作製した。なお、樹脂含浸黒鉛板6の流路に形成された触媒層中の白金触媒量、ルテニウム触媒量はそれぞれ72mgである。
このようにして作製した実施例の燃料電池システムH、I及び比較例の燃料電池システム4、5について、触媒燃焼器の触媒燃焼反応率(浄化率)及び圧力損失を評価した結果を表2に示す。
(1)触媒燃焼器の触媒燃焼反応率(浄化率)
実施例の燃料電池システムH、I及び比較例の燃料電池システム4、5において、燃料タンク18内の2Mメタノール水溶液を燃料ポンプ19により、各セルあたりの燃料流量2.0cc/分で燃料電池15のアノード極17に直接供給し、カソード極21には空気ポンプ20を用いて、各セルあたりの空気流量1L/分を供給した。次に、電池温度を60℃に設定した後、電流密度100mA/cm2で連続発電試験を行った。その際、燃料電池15のアノード極17からの排出メタノール水溶液は、冷却器23(温度25℃に設定)で冷却された後、気液分離器24で気体成分と液体成分とに可能な限り分離される。その後、液体成分は燃料タンク18に回収され、気体成分3.43×10-5mol/分は、各実施例及び比較例の触媒燃焼器1に導入され、空気ポンプ22から送られた空気1L/分により酸化浄化される。その後、触媒燃焼器1から排出される水溶液中のメタノール量βmol/分を測定し、下式により、触媒燃焼器1による触媒燃焼反応率(浄化率)を算出した。
触媒燃焼反応率(%)=(3.43×10-5−β)/3.43×10-5×100
(2)触媒燃焼器の圧力損失
実施例の燃料電池システムH、I及び比較例の燃料電池システム4、5において、触媒燃焼器1の空気を導入する側の燃焼室に、空気流量1L/分を供給した際の触媒燃焼器1による圧力損失値を測定した。
表2から明らかなように、燃料電池システムH、Iは、燃料電池と、燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムであって、上記触媒燃焼器が、触媒層付多孔質シートで分割された二つの燃焼室からなり、一方の燃焼室には、排出された燃料が導入される導入口のみが設けられており、他方の燃焼室には、空気が導入される導入口と、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口とが設けられている構造であるために、燃料電池から排出された後に、冷却器及び気液分離器を経由して、気体成分として存在するすべての有害物質は、触媒層付多孔質シートに接触し、それを通過する段階で触媒燃焼されて大気中に放出されることになる。その結果として、排出燃料中の有害物質に対する触媒燃焼反応率(浄化率)が低温環境下においても高く、且つ、排出燃料及び触媒燃焼用の空気が通過する際の圧力損失の小さい燃料電池システムが得られることがわかった。
これに対して、燃料電池システム4、5の場合には、触媒燃焼器による圧力損失は小さいものの、低温環境下においては、排出燃料中の有害物質を完全に捕捉することができずに、有害物質がハニカム担体の貫通孔や燃焼室の排出口を通過してしまい、触媒燃焼反応率(浄化率)が悪化した。
上記した実施の形態は、有機燃料としてメタノールを用いた場合の直接型燃料電池(略称DMFC)システムについて説明したが、これに限定されるものではなく、メタノール以外の有機燃料、例えば、エタノール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、等を用いた燃料電池システムにも適用することができる。
本発明の燃料電池と、前記燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムは、携帯電話や携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ等の携帯用小型電子機器用の電源システムとして有用である。また、電動スクータ用電源等の用途にも応用できる。
本発明の一実施の形態の燃料電池システムの、触媒浄化器部分を拡大して示した模式断面図 本発明の一実施の形態の燃料電池システムの概略図 本発明の別の実施の形態の燃料電池システムの概略図
符号の説明
1 触媒燃焼器
2 触媒層付多孔質シート
3 触媒層
4 多孔質拡散層
5 リブ付ガスシール材
6 樹脂含浸黒鉛板
7 ヒータ
8 端板
9 締結ボルト
10 燃焼室
11 燃料導入口
12 燃焼室
13 空気導入口
14 排出口
15 燃料電池
16 固体高分子電解質膜
17 アノード極
18 燃料タンク
19 燃料ポンプ
20 空気ポンプ
21 カソード極
22 空気ポンプ
23 冷却器
24 気液分離器
25 濃度センサー
26 原燃料タンク
27 バルブ

Claims (7)

  1. 燃料電池と、前記燃料電池から排出された燃料を浄化する触媒燃焼器とを含む燃料電池システムにおいて、
    前記触媒燃焼器は、触媒層付多孔質シートで分割された二つの燃焼室からなり、一方の燃焼室には、前記排出された燃料が導入される導入口のみが設けられており、他方の燃焼室には、空気が導入される導入口と、触媒燃焼後の水及び二酸化炭素を含んだ空気が排出される排出口とが設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に触媒層及び拡散層からなる一対の電極を配置し、電極の一方に有機燃料を供給し、他方に空気を供給することで発電する直接型燃料電池であって、
    前記燃料電池のアノード極側から排出された液体及び気体を回収して、再度発電に利用することのない非循環型燃料電池であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記触媒層付多孔質シートが、触媒層の両側に多孔質拡散層を積層した構造であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  4. 前記空気が前記燃料電池のカソード極から排出された空気を含むものであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  5. 前記触媒燃焼器内部の温度を30〜80℃とすることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  6. 前記触媒層中の触媒が、白金単体からなる白金金属、または、白金を主たる金属とし、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、オスミウム、またはイリジウムの少なくとも一つの金属との合金または混合物であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  7. 前記有機燃料が少なくともメタノールを含む有機化合物であることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。


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