JP4576762B2 - エンジンの排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの排気浄化装置に関し、特に触媒担体に三元触媒層とHC吸着層とを形成した触媒コンバータを備えた排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
エンジンの冷間運転時の排気エミッション性能を改善するものとして、触媒担体上にHC吸着材と酸化触媒または三元触媒とを積層した多層構造の触媒コンバータが知られている。触媒の活性が不十分な冷間運転時にエンジンから排出された未燃燃料分はHC吸着層に一時的に吸着され、ある程度触媒コンバータの温度が上昇するとHCは吸着層から脱離して表層側の三元触媒層により酸化処理される。ただし、一般にHC吸着層からのHCの脱離温度は三元触媒層の活性開始温度よりも低いので、触媒が活性化する過程では脱離した一部のHCが酸化されることなく排出されてしまう。
【0003】
これに対して、特開平11-82003号公報には、HC吸着層からHCの脱離が開始されてから三元触媒が活性温度に達するまでの間に点火時期リタードや回転上昇制御を行うことにより排気温度を上昇させて三元触媒の活性化を促進するようにしたものが提案されている。しかしながら、このような排気温度制御によっても、三元触媒が活性化するまでの間のHC吸着層からのHCの脱離は抑えられないので、HCエミッション性能という観点からは改善の余地があった。
【0004】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、エンジン始動時にHC吸着層からのHCの脱離を確実に抑止することのできる排気浄化装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、触媒担体と該担体を被覆する三元触媒層との間にHC吸着層を形成した触媒コンバータをエンジン排気通路に介装した排気浄化装置において、前記触媒コンバータに三元触媒層からHC吸着層への伝熱を抑制する熱伝達抑制手段を設ける。また、エンジンの冷間始動時など三元触媒層が活性温度に満たないときには、前記HC吸着層がHC脱離開始温度に達する以前に前記三元触媒層が活性温度に達するように排気温度を制御する排気温度制御手段とを備える。
【0006】
第2の発明は、前記第1の発明の熱伝達抑制手段として、三元触媒層とHC吸着層との間に断熱材からなる中間層を形成する。
【0007】
第3の発明は、前記第1の発明の熱伝達抑制手段として、三元触媒層に比較してHC吸着層の厚さを大とした構成を適用する。
【0009】
第4の発明は、前記第1から第3の発明における熱伝達抑制手段として、三元触媒層に対する層間接触面積を小とした構成を適用する。
【0010】
第5の発明は、前記第1の発明の排気温度制御手段を、火花点火式エンジンの点火時期を遅らせる点火時期リタード制御または回転数を上昇させる回転数上昇制御の少なくとも何れか一方によりエンジン始動後の排気温度を上昇させるように構成する。
【0011】
第6の発明は、前記第1または第5の発明の排気温度制御手段を、活性温度付近に達して以降は三元触媒層が該活性温度付近の温度に維持されるように排気温度を制御するように構成する。
【0012】
第7の発明は、前記第1または第5の発明の排気温度制御手段を、活性温度付近に達して以降はHC吸着層が脱離開始温度に達することを遅延させられるように排気温度を制御するように構成する。
【0013】
【作用・効果】
前記第1の発明以下の各発明によれば、例えば第2〜第5の発明に示したような熱伝達抑制手段により三元触媒層からHC吸着層への熱伝達を抑制したことから、エンジン始動後の暖機運転時などに排気温度を上昇させることでHC吸着層がHC脱離温度に達する以前に三元触媒層を活性温度にまで昇温させることが可能である。これにより、低温条件下でのHC排出を確実に抑制して排気エミッション性能を改善することができる。
【0014】
熱伝達抑制手段としては、第2の発明として示したように三元触媒層とHC吸着層との間に断熱材からなる中間層を形成して三元触媒層からの熱が直接的にHC吸着層に伝わらないようにする。あるいは、第3の発明として示したようにHC吸着層の厚さを三元触媒層に比較して大とする。これによりHC吸着層の熱容量が増大して三元触媒層からの熱伝達により昇温しにくくなると共に三元触媒層は昇温しやすくなるので、HC吸着層がHC脱離温度に達する前に三元触媒層を速やかに活性温度にまで高めることができる。また、熱伝達抑制手段として、第4の発明として示したように三元触媒層に対する層間接触面積を小さくすることによっても、三元触媒層からHC吸着層への熱伝達を抑制することができる。
【0015】
三元触媒層の活性化のために排気温度を上昇させる制御としては、第5の発明として示したように点火時期リタードまたは回転数上昇の何れか一方または双方の制御を実行する。点火時期を遅らせると排気熱損失の増大に伴い排気温度が上昇する。また回転数を高めれば単位時間当たりの燃焼ガス量ないしは排気流量が増えることから排気温度が上昇する。
【0016】
第6または第7の発明として示したように、活性温度に達して以降は三元触媒の温度が当該活性温度付近に維持されるように、あるいはHC吸着層の温度が脱離開始温度に達するのを遅延させるように、点火時期リタードや回転数上昇の制御を抑制することにより、余剰な加熱によるHC吸着層の温度上昇を抑えてHCの脱離速度を低減できるので、脱離HCと三元触媒層の触媒貴金属とが酸化反応を起こす頻度が増えてHC浄化率をより向上させることができる。
【0017】
【実施形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1または図2は、本実施形態に係るガソリンエンジンの概略構成を示している。図において、1はコントローラであり、エンジン2の燃料噴射量、点火時期、排気温度を制御する機能を有する。エンジン2の吸気通路3には吸入空気量を検出するエアフローメータ4およびスロットルバルブ5が設けられ、吸気通路3には燃料噴射弁6が設けられている。燃料噴射弁6には図示しない燃料供給系統により一定圧力で燃料が供給され、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。コントローラ1により演算される燃料噴射量は、前記燃料噴射弁6の開弁時間に相当する噴射パルス幅として算出される。
【0018】
7はエンジンクランクシャフトの回転角度およびエンジン回転数を検出するためのクランク角センサ、8はエンジン冷却水温を検出する水温センサ、9は排気通路10にて排気中の酸素濃度を検出する空燃比センサである。11は排気通路10に介装された触媒コンバータであり、これは触媒担体上にHC吸着層と三元触媒層とを積層した構成のHC吸着触媒を備えている。12は前記三元触媒部分の温度を検出する触媒温度センサである。図2に示したように前記HC吸着触媒11の上流側に三元触媒からなる他の触媒コンバータ13を介装した構成を適用することもできる。14は点火プラグであり、コントローラ1からの信号に基づき設定された点火時期に燃料への点火を行う。
【0019】
前記触媒コンバータ11の触媒層の構成例を図3以下に示す。図3に示した触媒の実施形態は、ハニカム触媒担体21の表面にゼオライトなどからなるHC吸着層22が被覆され、さらにその上に三元触媒層23が被覆されている。前記HC吸着層22は図示したように三元触媒層23に比較して厚さが大になっており、これによりHC吸着層22の熱容量を大きくして温度が上昇しにくくなるようにしている。図4は他の実施形態であり、これはハニカム触媒担体21の表面に被覆するHC吸着層22と三元触媒層23との間に断熱材からなる中間層24を形成し、中間層24により三元触媒層23からHC吸着層22への直接の熱伝達が行われないようにすることでHC吸着層の温度上昇を抑制するようにしている。前記中間層24を構成する断熱材としては例えば触媒貴金属を含まないアルミナやセリアを適用することで熱伝達が行われにくい構成とすることができる。
【0020】
前記三元触媒層23からHC吸着層22への熱伝達をさらに抑制するためには、HC吸着層22をより比熱の大きい材料で形成し、あるいは多孔質構造による気孔や空隙により三元触媒層23との層間接触面積を少なくしてやることが有効である。
【0021】
次に、前記構成下でコントローラ1により実行されるエンジン制御につき説明する。前記コントローラ1はマイクロコンピュータおよびその周辺装置から構成され、運転状態信号として前記エアフローメータ4からの吸入空気量信号、クランク角センサ9からの回転数信号、水温センサ10からの水温信号、空燃比センサ11からの酸素濃度信号等が入力し、これらに基づき燃料噴射量および点火制御量の演算を行うと共に、前記水温信号および触媒温度センサ14からの触媒温度信号を用いて排気温度を制御する。
【0022】
図5と図6は前記排気温度制御の第1の実施形態を示し、図5は排気温度制御の処理内容を表す流れ図、図6は前記処理によるタイミング図である。図5中の符号Sは処理ステップを表す。この処理はコントローラ1内のマイクロコンピュータにより周期的に実行される。
【0023】
この排気制御では、まずステップ11にてエンジン始動時の冷却水温を水温センサ8からの信号により検出し、次いでステップ12にて前記検出水温をあらかじめ設定された基準値と比較することで排気昇温すなわち触媒の加熱を行うべき温度条件であるか否かを判定する。水温が基準値よりも高いときは以降の処理を行わずに今回の制御ルーチンを終了する。水温が基準値よりも低いときには、次にステップ13にて点火時期を安定限界付近にまで遅角させる点火時期リタードを行う。このときの点火時期は、例えばエンジン回転数と水温とからリタード量を与えるようにあらかじめ設定されたテーブルを検索して求められる。
【0024】
前記点火時期リタードの後、ステップ14にて触媒温度センサ12からの信号に基づき、触媒コンバータ11の三元触媒温度を検出し、次いでステップ15にてこの三元触媒温度をあらかじめ設定された活性判定温度と比較し、活性判定温度に達していないときにはステップ13に戻って点火時期リタードを継続し、達していればステップ16にて点火時期リタードを中止し、通常の点火時期制御へと移行する。
【0025】
前記制御に基づき、図6に示したように冷間始動後の排気温度が上昇すると共に触媒は速やかに活性温度に達する。図においてTcとThは前記本発明の構成による三元触媒層温度とHC吸着層温度、Thaは断熱を行わない従来構成の触媒によるHC吸着層温度である。前述したようにHC吸着触媒は三元触媒層からHC吸着層への熱伝達が抑制されるように構成されていることから、特性線Thに見られるように三元触媒温度が速やかに上昇してもHC吸着層は比較的低温に保たれ、HC脱離温度t1に達するまでに三元触媒温度が活性温度t2にまで昇温する。このため未燃HC成分の排出量は図の特性線Hで示されるように抑制される。これに対して、従来はt2に達するまでにHC吸着層温度がt1になってしまうため、特性線Haで示したようにHCが排出されてしまっていた。
【0026】
また、図中のTc’とTh’はそれぞれ三元触媒温度がt2に達したのちも点火時期リタードを継続したとした場合の三元触媒層とHC吸着層の温度変化特性を表しており、この場合はThがt1に達した時点でHCの脱離が開始されるが(Ho)、この時点ではすでに三元触媒層が活性化して脱離HCを酸化処理するためHCの排出は抑制される。ただし、本発明のように三元触媒の活性温度に達した時点で点火時期リタードを終了させれば、以後の排気温度低下によりHC吸着層の温度上昇も緩やかになり、それだけt1以後のHC脱離速度が低下するので、三元触媒層による転換効率が向上してHCの排出量をより低減することができる。三元触媒層は活性温度に到達したのちは点火時期リタードを終了させても運転を続ける限りは温度低下することはないので、HCの処理は問題なく行うことができる。
【0027】
図7、図9に本発明の排気温度制御に関する他の実施形態を示す。図7は第2の実施形態の処理内容を表す流れ図、図9は第3の実施形態の処理内容を表す流れ図である。
【0028】
前記第1の実施形態と異なる部分について説明すると、図7では三元触媒層温度が活性判定温度に達するまではステップ13〜ステップ16の処理としてエンジン回転数を上昇させる制御を行い、活性温度に達した後は回転数を元に戻すようにしている。回転数を上昇させるための制御としては、例えばアイドル空気量の増量制御を行う。また、図9は、ステップ13〜ステップ16の処理として、点火時期リタードとエンジン回転上昇の双方の制御を行うようにしたものである。
【0029】
図8と図10にそれぞれ前記図7の制御によるタイミング図と、図9の制御によるタイミング図を示す。図中の符号の意味は図6と同一である。図示したようにこれらの制御によってもHC吸着層がHC脱離温度に達する以前に三元触媒層を活性温度にまで昇温させてHCの排出を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る排気浄化装置の全体構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る排気浄化装置の他の構成例を示す全体構成図。
【図3】本発明に係る触媒の第1の実施形態の積層構造を示す断面図。
【図4】本発明に係る触媒の第2の実施形態の積層構造を示す断面図。
【図5】本発明に係る排気温度制御の第1の実施形態を示す流れ図。
【図6】排気温度制御の第1の実施形態によるタイミング図。
【図7】本発明に係る排気温度制御の第2の実施形態を示す流れ図。
【図8】排気温度制御の第2の実施形態によるタイミング図。
【図9】本発明に係る排気温度制御の第3の実施形態を示す流れ図。
【図10】排気温度制御の第3の実施形態によるタイミング図。
【符号の説明】
1 コントローラ
2 エンジン
3 吸気通路
4 エアフローメータ
5 スロットルバルブ
6 燃料噴射弁
7 クランク角センサ
8 水温センサ
9 空燃比センサ
10 排気通路
11 触媒コンバータ(HC吸着触媒)
12 触媒温度センサ
13 触媒コンバータ(三元触媒)
14 点火プラグ
21 触媒担体
22 HC吸着層
23 三元触媒層
24 中間層
Claims (7)
- 触媒担体と該担体を被覆する三元触媒層との間にHC吸着層を形成した触媒コンバータをエンジン排気通路に介装した排気浄化装置において、
前記触媒コンバータに三元触媒層からHC吸着層への伝熱を抑制する熱伝達抑制手段を設けると共に、
前記三元触媒層がその活性温度に満たないときに、前記HC吸着層がHC脱離開始温度に達する以前に前記三元触媒層が活性温度に達するように排気温度を制御する排気温度制御手段とを備えたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。 - 前記熱伝達抑制手段は、三元触媒層とHC吸着層との間に設けた断熱材からなる中間層である請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記熱伝達抑制手段は、三元触媒層に比較してHC吸着層の厚さを大とした構成である請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記熱伝達抑制手段は、三元触媒層に対する層間接触面積を小とした請求項1から請求項3の何れかに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記排気温度制御手段は、火花点火式エンジンの点火時期を遅らせる点火時期リタード制御または回転数を上昇させる回転数上昇制御の少なくとも何れか一方により排気温度を上昇させるように構成されている請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記排気温度制御手段は、活性温度付近に達して以降は三元触媒層が該活性温度付近の温度に維持されるように排気温度を制御するように構成されている請求項1または請求項5の何れかに記載のエンジンの排気浄化装置。
- 前記排気温度制御手段は、活性温度付近に達して以降はHC吸着層が脱離開始温度に達することを遅延させられるように排気温度を制御するように構成されている請求項1または請求項5の何れかに記載のエンジンの排気浄化装置。
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