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JP4553458B2 - トンネル診断装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トンネル構造物壁面の内部に存在する欠陥を、音響弾性波を用いて診断するトンネル診断装置及び方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネル覆工は、コンクリート構造体で、モルタルと骨材の混合物であり、剥離に至る欠陥モードとしてクラック、ジャンカ等がある。クラックは、覆工内の亀裂、空隙であり、ジャンカは、コンクリート成分の内のモルタル分が流出、あるいは過小の領域であり、骨材が不十分なモルタル成分で埋められた状態、場合によっては微少空隙が多数存在する状態と言える。このような現象が発生すると、コンクリート内部で、構造的に不安定な状態を顕現し、剥落の危険につながる。
トンネルの覆工を診断する方法としては、従来よりハンマーを使った打音検査がある。これはハンマーをトンネル覆工表面に打診し、この時に発生する衝撃弾性波により覆工内部の欠陥を検知しようとするものである。
また、超音波を用い超高周波の音響を覆工内部に入射し、覆工内部の欠陥を捉えようとする方式として超音波探査方式がある。この方法はパルス性の超高周波音響信号を使用することに特徴がある。原理としては覆工内部の欠陥部から反射される音響信号の伝搬時間から欠陥部の位置を検出しようとするものである。周波数が高いため音響信号の指向性が高く分解能高い計測ができるメリットがある。
【0003】
また、電磁波レーダによる方法もあり、電磁波を入射し、誘電率の異なる境界面からの反射を捉えることにより、覆工内部の空隙、覆工背面の空隙を検出する。
さらに、最近では、赤外線を用いた非接触のトンネル覆工検査方法が発明されているが、この方法は、トンネル覆工を加熱し、覆工表層に存在する剥離部位の温度差を赤外線により検出し、剥離の有無を非接触に検出する。非接触であるため高速な計測が可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ハンマーを用いた方法では、ハンマリングを一定の力で行うことができなかったり、また、判断基準も実施者の経験や勘によるところが大きく、診断結果が曖昧になる課題があり、また診断結果を定量的に残せない課題もあった。
これを解決するため、ハンマーの打撃音をマイク等で集音し、FFTアナライザ等により解析する方法も考えられている。但しこの方法でもデータの定量性は実現できるが、打診表面からの反響波を空中伝搬により記録するため、伝搬する音響の帯域が制限され、このため覆工内部の情報が欠落するという課題があった。さらには空中伝搬を使用する関係上、周囲の雑音の影響を受けやすく、また、ハンマリングの衝撃で発生する表面波の影響により、内部から伝搬してくる反響音が干渉を受けるという課題があった。またハンマー自身の固有振動音が干渉するという課題もあった。
【0005】
以上を解決するため、一定の加振力で鋼をトンネル壁面に打ち付け、衝撃音を加速度センサで受信し、FFTアナライザで解析する方法が考えられた。この方法では衝撃音が内部の欠陥部にて反射してくる反射時間から欠陥部位までの距離を計測する原理を用いている。しかし、この方法では加振が機械的な制御のため衝撃音の入力を正確に制御できないこと、また対象表面の状況によっても加振が影響を受ける可能性があり、さらには、欠陥部からの反射信号は一般に小さく、反射信号の立上がりを分解能高く検出できない課題がある。また衝撃により覆工表層に発生する表面波の影響でトンネル覆工内部より返ってくる反射信号が遮蔽され精度高い計測ができない課題もある。
【0006】
一方、超音波を用いる方法では、高周波のため、覆工を構成するコンクリートの骨材の影響を受け深部へ、信号が到達しないという問題がある。また高周波の音響信号を効率良く注入し、接触面の凹凸影響を避けるため、研削、グリース塗布等前処理が不可欠であり、計測のための準備に多大の時間と手間を要するという課題がある。
【0007】
電磁波レーダによる方法は、電磁波の反射現象を利用するため、空洞等ボリュームのある変状は検出可能であるが、クラック等の剥離の検出精度は低い課題がある。また、電磁波のため、漏水、鉄骨等により信号が減衰し、検出が困難になる課題がある。さらに直接的な構造不安定は検出不可である。
【0008】
また、赤外線を用いた方法では、覆工壁面に入射されるエネルギーに限界があり、表層部(0〜20mm)の剥離しか検知できない。また、ジャンカの存在を検知することが困難、コンクリートの機械強度は検出困難、さらに覆工厚の計測が困難という課題がある。
【0009】
従来の各方法及びその課題については上述のとおりであるが、構造的不安定な状況から剥離を検知するためには、構造不安定がもたらす振動現象を捉えるのが、最も直接的で、信頼性の高い検出方法といえる。従来の方法の内の打音、衝撃弾性波法は、打診のエネルギーが大の場合、振動を励起する可能性がある。しかし、これらの方法は衝撃性の音響信号がもつ周波数帯域の中で、とくにコンクリートを構成する骨材による散乱を受けず、浸透性の高い低周波領域を、選択的に駆動することができず、また低周波振動を高感度に検出する方法を提供するものではなかった。
また、電磁波レーダ、あるいは赤外線方式では原理的に覆工内部の構造的不安定を直接的に検知する方法ではなく、電気的、熱的特性から間接的に内部構造を検出するものである。
【0010】
また、従来技術では、単一方式でトンネル覆工の診断を行う十分なデータが得られないため、トンネル覆工の健全性診断を種々の方法を組合せ、あるいは逐次、幾度も検査を行わなければならないという課題があった。このため診断に要する時間が長期化し、多大のコストを要するという課題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、コンクリートを構成する骨材による散乱を受けず、トンネル覆工の表層部及び深部の欠陥を検出するトンネル診断装置を得ることを第一の目的にしている。
また、コンクリートを構成する骨材による散乱を受けず、トンネル覆工の表層部及び深部の欠陥を網羅的に検出するトンネル診断方法を得ることを第二の目的にしている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わるトンネル診断装置においては、トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射する音響発振子、この音響発振子によって入射された音響弾性波がトンネル覆工によって励振された反射信号を検出する受信センサ、この受信センサによって検出された反射信号の反射エネルギ−レベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを予め設定された閾値と比較することにより剥離欠陥の有無を判定する信号処理装置を備え、信号処理装置は、反射信号の減衰特性を計測する減衰特性計測機能と、剥離欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する剥離欠陥識別機能とを有するものである。
【0013】
また、信号処理装置は、反射信号をFFT演算した後、反射エネルギーレベルを算出するものである。
また、反射信号は、可変帯域フィルタを介して信号処理装置に入力され、積算されるものである。
【0014】
さらに、音響弾性波は、低周波から高周波へ向けて変化する連続波であるものである。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、トンネル覆工内部の剥離欠陥部と覆工表面とが形成する板構造の横振動によって励起された反射信号を、信号処理装置によって剥離欠陥有りと判定されるように、設定されているものである。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、予めコアリングにより剥離欠陥の存在が確認された反射エネルギーレベルを用いて設定されているものである。
【0015】
さらにまた、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、上限値及び下限値を有すると共に、信号処理装置は、反射エネルギーレベルが、上限値を越えたとき剥離欠陥有りと判定し、反射エネルギーレベルが下限値より小さいとき剥離欠陥無しと判定し、反射エネルギーレベルが上限値と下限値の間のときは、不定状態とするものである。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値の上限値は、剥離欠陥無しの場合の反射エネルギーレベルの内、最大の反射エネルギーレベルを用いて設定されているものである。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値の下限値は、剥離欠陥有りの場合の反射エネルギーレベルの内、最小の反射エネルギーレベルを用いて設定されているものである。
【0016】
加えて、信号処理装置は、剥離欠陥有りと判定した場合に、反射エネルギーレベルを用いて、剥離の厚みを推定するように構成されているものである。
また、信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工の音速または圧縮強度を推定するように構成されているものである。
また、信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、トンネル覆工背面までの縦振動を用いて、トンネル覆工の厚みを推定するように構成されているものである。
【0017】
さらに、この発明に係わるトンネル診断方法においては、トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、入射した音響弾性波のトンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギ−レベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを用いて、トンネル覆工の欠陥の有無を判定し、欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別するものである。
また、トンネル覆工への音響弾性波の入射は、トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる音響発振子により行われると共に、反射信号の検出は、トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる受信センサによって行われるものである。
【0018】
また、トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、入射した音響弾性波のトンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギーレベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを用いてトンネル覆工の剥離欠陥の有無を判定する第一の手順
この第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射エネルギーレベルを用いて、剥離の厚みを推定する第二の手順、
第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する第三
の手順を含むものである。
【0019】
た、第一の手順によって剥離欠陥無しと判定された場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を推定する第四の手順
この第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、トンネル覆工の厚みを推定する第五の手順、
第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、トンネル覆工は健全であると判定する第六の手順、
第五の手順によって推定されたトンネル覆工の厚みを用いて、トンネル覆工は健全であると判定する第七の手順を含むものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、一般的なトンネル覆工構造と欠陥を示す図である。
図1において、1は地山、2は地山1を覆うトンネル覆工、3はトンネル覆工2の表面であるトンネル覆工表面、4はトンネル覆工2に生じたクラック、5はトンネル覆工2に生じたジャンカ、6はトンネル覆工2のコールドジョイント、7は地山1とトンネル覆工2の間の空洞である。
【0023】
図2は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置を示す構成図である。
図2において、11は音響弾性波をトンネル覆工2に注入する音響発振子で、トンネル覆工2に圧接させて使用する。12は音響発振子11を駆動する駆動波形信号を生成する駆動制御装置、13は駆動制御装置12によって生成された駆動波形信号を駆動電流に変換増幅して音響発振子11に出力する発振電流生成装置である。14はトンネル覆工2の応答振動を受信する受信センサで、トンネル覆工2に圧接させて使用する。15は受信センサ14によって検出された受信信号を増幅する受信信号増幅器、16は増幅された受信信号が入力される可変帯域フィルタである。17は設定表示装置である。20は受信信号処理装置で、波形メモリ21と、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算機構22と、反射エネルギーレベル演算装置23と、内部欠陥判定装置24と、閾値決定装置25から構成される。FFT演算機構22は、時間変化で表された信号を周波数変換するものであり、具体的にはその信号がどのような周波数成分で構成されているか周波数のゲイン、位相で表現する処理である。
なお、音響発振子11は、低周波の振動を励振するため、低周波で歪みが大きい金属音響発振子とし、受信センサ14は、低周波の振動を検出するため、低周波に感度が高い金属音響受信センサとする。この金属音響発振子及び金属音響受信センサとしては、例えば、鉄、コバルト系の磁歪素子を適用することにより、低周波で歪が大きく、また低周波で感度が高い受信センサを実現できる。
【0024】
図3は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の駆動信号波形(チャープ波)を示す図であり、駆動制御装置12から音響発振子11へ出力される信号波形の1例を示し、時間と共に周波数が変化するチャープ波を示している。
図3において、縦軸は信号波形の電流、横軸は時間を示す。
図4は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の剥離欠陥部の振動状況を示す模式図であり、覆工表面と欠陥部がなす板状構造部が振動しているところを示している。
図5は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の周波数応答を示す図であり、図5(a)は、正常時の応答、図5(b)は欠陥存在時の応答である。
【0025】
図6は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の反射エネルギーレベルとコアの照合結果を示す図である。
図6において、横軸は各サンプル点を表し、縦軸は各サンプル点での反射エネルギーレベルを示している。31は閾値である。
図6は、各計測位置で、後述するコアリングした結果について、クラック、ジャンカ等の剥離異常を呈する現象が検出された箇所は、黒三角(クラック)、黒四角(ジャンカ)で、正常であった箇所は、白四角で示している。
図7は、この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の反射エネルギーレベルの閾値を決定するフローチャートである。
図7において、Ei はコアリングを行う第i番目の計測ポイントにおける反射エネルギーレベルを表す。L1 は閾値の下限レベル、L2 は閾値の上限レベルを表す。当初L1 とL2 は同一のレベル、あるいはL1 >L2 である。
【0026】
次に、動作について説明する。
図2の駆動制御装置12から、音響発振子11を駆動する駆動波形信号が生成され、発振電流生成装置13に出力される。発振電流生成装置13は、駆動波形信号を音響発振子11を駆動する駆動電流に変換増幅し、音響発振子11に印加する。音響発振子11は、印加された駆動電流の大きさに応じた歪みを発生するように構成されているため、音響発振子11を測定対象面であるトンネル覆工2の表面に接触させることで、トンネル覆工2に音響弾性波を注入することが可能となる。駆動制御装置12が出力する駆動波形は、図3に示すような低周波から高周波に至る連続波である。
音響発振子11から注入された音響弾性波は、トンネル覆工2内部を伝搬し、トンネル覆工の内部構造に依存した特徴周波数で共振し、応答する。内部に欠陥がない場合は、覆工背面まで音響弾性波が伝搬し、覆工表面と、覆工背面の距離に対応する縦振動が発生する。もし内部にクラック4、ジャンカ5、コールドジョイント6等の剥離欠陥が存在していれば、この欠陥部と覆工表面が形成する板構造の深度、広さによって異なった振動現象を示す。
【0027】
この振動現象は、覆工表面に圧接されている受信センサ14から受信信号として検出され、受信信号増幅器15により増幅され、可変帯域フィルタ16で予め設定された周波数帯域の信号が、受信信号処理装置20内の波形メモリ21に取り込まれる。この受信波形に対し、FFT演算機構22で演算処理を行い、周波数応答を波形メモリ21に出力する。
【0028】
ここでトンネル覆工内部の振動現象について説明する。
欠陥が存在しない場合の縦振動は、覆工の巻き厚、覆工の音速から、以下の周波数で共振する。
【数1】
Figure 0004553458
ここで、fL は縦振動の共振周波数、dは覆工の巻き厚、vは覆工コンクリートの音速である。
【0029】
次に、内部に欠陥が存在する場合は、図4に示すように覆工表面と欠陥部が構成する板構造が横振動を呈する。この振動は、板構造が厚さ2h、半径aの形状と仮定すると、下記のような周波数で共振する。
【数2】
Figure 0004553458
ここで、σはポアソン比、λは境界条件及び振動モードによって決まる定数(無次元)である。欠陥が表層に近く、剥離面積が大きい程、低周波の現象として現れる。
【0030】
今、図3に示す駆動波形が、トンネル覆工2に注入されると、欠陥が存在しない場合は、式(1)に示す縦振動周波数で共振振動が発生し、受信波形をFFT演算処理した結果、式(1)の共振周波数fL がピークとして検知される。一方、内部に欠陥が存在する場合、式(2)に示す横振動周波数で共振振動が発生し、受信波形をFFT演算処理した結果、式(2)の共振周波数fT がピークとして検知される。
図5に周波数応答のFFT波形例を示し、図5(a)が正常時の周波数応答、図5(b)が欠陥存在時の周波数応答である。
この周波数応答に対し、反射エネルギーレベル演算装置23は、反射エネルギーレベルの計算を行う。この反射エネルギーレベルの計算は、周波数領域では、下記のように計算される。
【数3】
Figure 0004553458
ここで、Kは定数、f1 は下限周波数、f2 は上限周波数である。GはFFT演算結果の各周波数でのゲインを示している。図2に示す反射エネルギーレベル演算装置23では、式(3)に示す演算を行い、反射エネルギーレベルを算出している。
【0031】
一方、図2に示す構成が、通過帯域に制限がある可変帯域フィルタ16を装備している場合は、この可変帯域フィルタの下限周波数f1 、上限周波数f2 と設定することにより、可変帯域フィルタの出力から得られる受信波形を直接積分することによっても反射エネルギーレベルを算出できる。
以上の正常、欠陥存在時に検出されるそれぞれの反射エネルギーレベルは、正常時の縦振動時は小さく、内部に欠陥が存在し横振動を発生するときの反射エネルギーレベルは高くなる。
これは、反射エネルギーレベルが欠陥部の呈する板構造(厚さ/広さ)に反比例するためであり、欠陥が浅く、広い程、エネルギーレベルは大になる。
【0032】
この反射エネルギーレベルが、実際のトンネル覆工2で、どのような値を示すか以下に説明する。
図6は、実トンネルで採取された受信信号から計算された反射エネルギーレベルを計算しプロットした例である。図6中のマークは、各サンプル点でコアリングを行い、欠陥の有無を判断した結果を示している。ここでいうコアリングは覆工の壁面をドリリングマシンで刳り抜き、例えば100φの円筒状サンプルを覆工壁面から取り出すことである。
このようにコアリングした結果、クラック状の剥離欠陥が検出されたポイントでは黒三角を付記した。またジャンカ状の剥離欠陥が検出されたポイントでは黒四角を付記した。一方このような欠陥が検出されなかった場合は、白四角にて非剥離の状態を付記している。
図6で明らかなように、クラック等剥離が内部にあるポイントでは、反射エネルギーレベルは高く、剥離が発生していない正常なポイントでは、反射エネルギーレベルは低い。
従って、剥離がある欠陥状態と、剥離がない正常状態は、反射エネルギーレベルにより2領域に区分されることがわかる。この区分けの境界値を、図6の閾値31で示す。この正常、異常の境界を閾値として使用すれば、新しく計測したポイントの欠陥の有無が、コアリング等の破壊検査を行うことなく推定できる。
【0033】
以下、非破壊で判定する手順を説明する。
例えば、図6に示しているポイントと異なったポイントへ行き、そこで計測し、反射エネルギーレベルを算出するものとする。その出力が図6の閾値31より低いレベルであれば、そのポイントは健全と判定される。逆に、その出力が、図6の閾値レベルより高いレベルにあれば、そのポイントは剥離ありと判定される。すなわち、そのポイントでコアリングをすることなく覆工内部の剥離診断を非破壊で実施できる。
【0034】
この動作を、図2において説明する。
まず計測が完了すると、波形メモリ21の計測結果を基に、FFT演算機構22がFFT演算結果を出力し、さらに反射エネルギーレベル演算装置23が反射エネルギーレベルを演算する。
内部欠陥判定装置24には、予め図6に示す閾値31の値を入力されており、反射エネルギーレベル演算装置23により出力された反射エネルギーレベルに対し、反射エネルギーレベルが閾値以上か閾値以下を判断し、結果を出力する。この場合、閾値31以上の反射エネルギーレベルに対しては、剥離異常を設定表示装置17に出力し、閾値31より小さい反射エネルギーレベルに対しては、非剥離状態を出力する。
以上のような手順及び計測で診断作業を、長期に亘り実施する。
保守工事の中で新たにコアリングを行う場合は、さらに本装置の判定の精度向上を図るため、そのポイントの反射エネルギーレベルを算出し、コアリングと照合した結果を、図6に追記していく。この照合によるサンプル数が増えれば増える程、この剥離有無の推定精度は向上する。
【0035】
このためサンプルポイントを追加する場合の閾値の決定フローを、図7を用いて、以下に説明する。
まず、これまで得られたコアリングポイントに対し、さらに新たなコアリングポイントiが得られるとき、この点で反射エネルギーレベルE1 を計測する(ステップS1)。また、コアリングによって得られたコアサンプルの所見(クラックの有無、ジャンカの有無)を記録する(ステップS2)。
次いで、ステップS3で、もしコアサンプルに剥離が発生していず、ステップS4で得られた反射エネルギーレベルE1 が、閾値の上限レベルL2 より大であれば、閾値の上限レベルL2 は新たに得られたE1 に置き換えられる(ステップS5)。但し、得られた反射エネルギーレベルEi が、閾値の上限レベルL2 より小であれば、L2 は変化なしである。
【0036】
ステップS3で、もし剥離が発生しており、ステップS6で得られた反射エネルギーレベルEi が、閾値の下限レベルL1 より小であれば、L1 は新たに得られたE1 に置き換えられる(ステップS7)。但し、得られた反射エネルギーレベルEi が、L1 より大であれば、L1 は変化なしである。
次いで、ステップS8で、追加コアリングポイントがあれば、ステップS1に戻り、なければ処理を終了する。
以上のように動作すると、閾値の下限レベルL1 は、これまで得られた剥離のあるコアサンプルの反射エネルギーレベルの集合の内、最小の反射エネルギーレベルになる。一方、閾値の上限レベルL2 は、これまで得られた剥離のない健全なコアサンプルの反射エネルギーレベルの集合の内、最大の反射エネルギーレベルになる。
コアサンプルの状況によっては、L1 <L2 となり、L1 〜L2 間は剥離とも健全とも言えない不定領域が発生する。この場合は不定状態を設定表示装置17に出力することとなる。以上の処理は、閾値決定装置25で実行される。
【0037】
実施の形態1によれば、トンネル覆工内部の剥離等欠陥状況を、反射エネルギーレベルから精度高く診断することができる。
【0038】
実施の形態2.
以下、実施の形態2につき説明する。
実施の形態2は、従来診断に要する時間が長期化し、コスト増を要した問題に対処するもので、音響弾性波を用い、コンクリート覆工内部の欠陥を逐次、網羅時に診断する方法についてのものである。
図8は、この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の診断機能を示す構成図である。
図8において、90は周波数掃引機能、91は剥離検出機能、92は剥離厚推定機能、93は周波数特性計測機能、94は減衰特性計測機能であり、対象物の固有周波数にて所定時間励振し、その後その励振を遮断した後に固有周波数の振動が減衰する特性である減衰特性を、減衰時間によって計測する。95は音速推定機能、96は圧縮強度推定機能、97は覆工厚推定機能である。98はクラック・ジャンカ識別機能である。90〜98は受信信号処理装置20に内蔵されている。ここで周波数特性計測機能93は受信された信号をFFT変換し、周波数応答を算出し、またその応答からピーク周波数を算出する機能である。減衰特性計測機能94は、音速推定機能95と圧縮強度推定機能96を有している。
【0039】
一方、これらの基本機能を組合せた以下のステップが存在する。
図9は、この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の診断フローチャートである。
図9において、911は受信センサが検出した反射エネルギーレベルから剥離の有無を検出する実施の形態1に示す診断機能を実施する剥離検出ステップで、周波数掃引機能90と剥離検出機能91を有する。912は反射エネルギーレベルから剥離厚を推定する剥離厚推定ステップで、剥離厚推定機能92を有する。
913は反射エネルギーレベル、減衰特性からクラック、ジャンカの識別を行うクラック・ジャンカ識別ステップで、周波数特性計測機能93、減衰特性計測機能94及びクラック・ジャンカ識別機能98を有する。914は覆工厚推定ステップで、周波数特性計測機能93、減衰特性計測機能94、音速推定機能95、圧縮強度推定機能96及び覆工厚推定機能97を有し、周波数特性から覆工厚ピーク周波数を検出するサブステップ、減衰特性から減衰時定数を計測するサブステップ、減衰時定数から音速、圧縮強度を推定するサブステップ、先程算出された音速と周波数応答から覆工厚を推定するサブステップから成る。
図10は、この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の欠陥モードの存在位置と診断機能を示す図である。
【0040】
図9に示す診断の流れは、大きく2つのステップに分かれる。
第一の診断ステップは、剥離の有無検出を実施する剥離検出ステップ911(第一の手順)である。第一の診断ステップの結果に基づき、第二の診断ステップは、剥離ありの場合は剥離厚を推定する剥離厚推定ステップ912(第二の手順)、及び剥離原因のクラック及びジャンカの識別を実施するクラック・ジャンカ識別ステップ913(第三の手順)、並びに剥離なしの場合は、音速、圧縮強度を推定する(第四の手順)と共に、覆工厚を推定する覆工厚推定ステップ914(第五の手順)により構成される。
以下、図9の各ステップについて説明する。なお、ステップS90〜ステップS98は、90〜98の各機能に対応している。
【0041】
(1)第一の診断ステップ
第一の診断ステップは、計測箇所が剥離しているか否かを検出することを目的としたものである。剥離がある場合、剥離層において横振動が発生する。この横振動は欠陥形状によって決定される固有振動にて励振される。このため音響弾性波はそれ以上深部に到達しないか、大半のエネルギーが剥離層で消費、反射され、それ以上深部に伝搬しなくなる。言い換えれば、剥離が発生していれば、その剥離により、以深の診断はエネルギーが到達せず無効になる。このため、最初のステップで剥離の有無を判定する。ステップS90で周波数掃引を行い、ステップS91で剥離検出機能91により、実施の形態1で述べたように反射エネルギーレベルを演算して、剥離有無を判定する。
【0042】
(2)第二の診断ステップ
第一の診断ステップの結果に基づき、覆工内部状態をより詳細に推定する第二の診断ステップへ移行する。第二の診断ステップにおいては、第一の診断ステップにて剥離が検出された場合と、検出されなかった場合について、それぞれ異なるステップにて診断を実施する。
【0043】
(2−1)剥離ありの場合
第一の診断ステップにて剥離が検出された場合は、ステップ912で、その剥離状態のより詳細な情報収集が可能になる。このため、剥離厚(表面から剥離面までの距離)の推定、及びステップ913でその剥離の原因となっている変状のクラック/ジャンカの識別を実施する。
剥離厚の推定は、剥離厚データベースを基に剥離厚推定機能92によって算出される。剥離厚推定が完了すると、ステップS93で周波数特性計測を行い、ステップS94で減衰特性を計測することにより、減衰時定数を基にしたクラック/ジャンカデータベースからクラック、ジャンカの識別がステップS98で実行される。
【0044】
減衰時定数を基に、クラック/ジャンカデータベースからクラック及びジャンカを識別する方法は、以下の通りである。
クラック及びジャンカの減衰特性は、クラック及びジャンカの構造的特性に依存する。クラックの減衰時定数は、ジャンカの減衰時定数より大きい。
従って、クラックがある欠陥状態と、ジャンカがある欠陥状態は、減衰時定数により2領域に区分される。この区分けの境界値は閾値として予めクラック/ジャンカ識別機能98に記録されている。新しく計測し剥離ありと判定されたポイントの減衰時定数をクラック、ジャンカの識別機能に入力すると、判定結果が出力される。
【0045】
(2−2)剥離なしの場合
一時診断にて剥離が検出されなかった場合は、覆工深部へのエネルギー伝達が可能になり、ステップ914により、覆工厚が推定できる。
まず、ステップS93で、周波数特性計測を実施することにより、覆工厚からの縦振動応答を計測する。次にステップS94で、減衰特性計測を実施することにより、減衰時定数が計算される。ステップS95、S96で、減衰時定数−音速/圧縮強度データベースは、この減衰時定数から音速、圧縮強度をそれぞれ出力する(第四の手順)。この結果、音速が求まれば、覆工厚からの縦振動応答(式1)に、得られた音速値を適用し、ステップS97で、覆工厚さが求められることになる。
覆工厚の推定値から、覆工が設計巻厚を確保しているかを確認する(第七の手順)。また、表面から覆工背面までの平均音速またはトンネル覆工の圧縮強度の推定値から、覆工内部に音速の低下した部分(弱ジャンカ状態)が存在していないか診断する(第六の手順)。
【0046】
以上の診断フローを、トンネル覆工内部の欠陥(トラック、ジャンカ)とその存在位置(表層:0〜25cm、深層:覆工背面)別に分類した表を図10に示す。
この診断アルゴリズムは、以上のように構成されているため、これらの欠陥モード診断において、表層、深層、健全の各部分において、それぞれに合致した手法を適用することにより、各診断モードの診断が実現できる。
【0047】
実施の形態2によれば、覆工内部の欠陥状況を反射エネルギーレベルから精度高く診断することができる。
【0048】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射する音響発振子、この音響発振子によって入射された音響弾性波がトンネル覆工によって励振された反射信号を検出する受信センサ、この受信センサによって検出された反射信号の反射エネルギ−レベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを予め設定された閾値と比較することにより剥離欠陥の有無を判定する信号処理装置を備え、信号処理装置は、反射信号の減衰特性を計測する減衰特性計測機能と、剥離欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する剥離欠陥識別機能とを有するので、トンネル覆工の表層部及び深部の剥離欠陥を効率よく判定することができるとともに剥離欠陥の種類を識別することができる
【0049】
また、信号処理装置は、反射信号をFFT演算した後、反射エネルギーレベルを算出するので、FFT演算後の反射エネルギーレベルを算出することができる。
また、反射信号は、可変帯域フィルタを介して信号処理装置に入力され、積算されるので、所定の周波数帯域の反射信号について、反射エネルギーレベルを算出することができる。
【0050】
さらに、音響弾性波は、低周波から高周波へ向けて変化する連続波であるので、剥離欠陥を検出しやすい波形とすることができる。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、トンネル覆工内部の剥離欠陥部と覆工表面とが形成する板構造の横振動によって励起された反射信号を、信号処理装置によって剥離欠陥有りと判定されるように、設定されているので、剥離欠陥を容易に判定することができる。
【0051】
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、予めコアリングにより剥離欠陥の存在が確認された反射エネルギーレベルを用いて設定されているので、剥離欠陥の判定を有効に行うことができる。
さらにまた、反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、上限値及び下限値を有すると共に、信号処理装置は、反射エネルギーレベルが、上限値を越えたとき剥離欠陥有りと判定し、反射エネルギーレベルが下限値より小さいとき剥離欠陥無しと判定し、反射エネルギーレベルが上限値と下限値の間のときは、不定状態とするので、剥離欠陥有りと剥離欠陥無しと、不定状態を判定することができる。
【0052】
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値の上限値は、剥離欠陥無しの場合の反射エネルギーレベルの内、最大の反射エネルギーレベルを用いて設定されているので、剥離欠陥有りを精度よく判定することができる。
また、反射エネルギーレベルと比較するための閾値の下限値は、剥離欠陥有りの場合の反射エネルギーレベルの内、最小の反射エネルギーレベルを用いて設定されているので、剥離欠陥無しを精度よく判定することができる。
【0053】
加えて、信号処理装置は、剥離欠陥有りと判定した場合に、反射エネルギーレベルを用いて、剥離の厚みを推定するように構成されているので、剥離の厚みを推定することができる。
また、信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工の音速または圧縮強度を推定するように構成されているので、剥離欠陥無しと判定した場合に、トンネル覆工の音速または圧縮強度を推定することができる。
また、信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、トンネル覆工背面までの縦振動を用いて、トンネル覆工の厚みを推定するように構成されているので、トンネル覆工の厚みを推定し、健全性を判定することができる。
【0054】
さらに、この発明に係わるトンネル診断方法においては、トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、入射した音響弾性波のトンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギ−レベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを用いて、トンネル覆工の欠陥の有無を判定し、欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別するので、トンネル覆工の表層部及び深部の欠陥を効率よく判定することができるとともに剥離欠陥の種類を識別することができる
また、トンネル覆工への音響弾性波の入射は、トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる音響発振子により行われると共に、反射信号の検出は、トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる受信センサによって行われるので、確実に欠陥を検出することができる。
【0055】
また、トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、入射した音響弾性波のトンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギーレベルを算出すると共に、算出された反射エネルギーレベルを用いてトンネル覆工の剥離欠陥の有無を判定する第一の手順
この第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射エネルギーレベルを用いて、剥離の厚みを推定する第二の手順、
第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する第三の手順を含むので、トンネル覆工の表層部及び深部の剥離欠陥を効率よく判定することができるとともに剥離欠陥の種類を識別することができる
【0057】
また、第一の手順によって剥離欠陥無しと判定された場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を推定する第四の手順
この第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、トンネル覆工の厚みを推定する第五の手順、
第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、トンネル覆工は健全であると判定する第六の手順、
第五の手順によって推定されたトンネル覆工の厚みを用いて、トンネル覆工は健全であると判定する第七の手順を含むので、音速またはトンネル覆工の圧縮強度及びトンネル覆工の厚みを推定するとともにトンネル覆工が健全であることを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一般的なトンネル覆工構造と欠陥を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置を示す構成図である。
【図3】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の駆動信号波形(チャープ波)を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の剥離欠陥部の振動状況を示す模式図である。
【図5】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の周波数応答を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の反射エネルギーレベルとコアの照合結果を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態1によるトンネル診断装置の反射エネルギーレベルの閾値を決定するフローチャートである。
【図8】 この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の診断機能を示す構成図である。
【図9】 この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の診断フローチャートである。
【図10】 この発明の実施の形態2によるトンネル診断装置の欠陥モードの存在位置と診断機能を示す図である。
【符号の説明】
1 地山、2 トンネル覆工、3 トンネル覆工表面、4 クラック、
5 ジャンカ、6 コールドジョイント、7 空洞、11 音響発振子、
12 駆動制御装置、13 発振電流生成装置、14 受信センサ、
15 受信信号増幅器、16 可変帯域フィルタ、17 設定表示装置、
20 受信信号処理装置、21 波形メモリ、22 FFT演算機構、
23 反射エネルギーレベル演算装置、24 内部欠陥判定装置、
25 閾値決定装置、31 閾値、90 周波数掃引機能、
91 剥離検出機能、92 剥離厚推定機能、93 周波数特性計測機能、
94 減衰特性計測機能、95 音速推定機能、96 圧縮強度推定機能、
97 覆工厚推定機能、98 クラック・ジャンカ識別機能。

Claims (16)

  1. トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射する音響発振子、
    この音響発振子によって入射された音響弾性波が上記トンネル覆工によって励振された反射信号を検出する受信センサ、
    この受信センサによって検出された反射信号の反射エネルギ−レベルを算出すると共に、上記算出された反射エネルギーレベルを予め設定された閾値と比較することにより剥離欠陥の有無を判定する信号処理装置を備え
    上記信号処理装置は、反射信号の減衰特性を計測する減衰特性計測機能と、
    上記剥離欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する剥離欠陥識別機能とを有することを特徴とするトンネル診断装置。
  2. 信号処理装置は、反射信号をFFT演算した後、反射エネルギーレベルを算出することを特徴とする請求項1記載のトンネル診断装置。
  3. 反射信号は、可変帯域フィルタを介して信号処理装置に入力され、積算されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のトンネル診断装置。
  4. 音響弾性波は、低周波から高周波へ向けて変化する連続波であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  5. 上記反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、トンネル覆工内部の剥離欠陥部と覆工表面とが形成する板構造の横振動によって励起された反射信号を、信号処理装置によって剥離欠陥有りと判定されるように、設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  6. 上記反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、予めコアリングにより剥離欠陥の存在が確認された反射エネルギーレベルを用いて設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  7. 上記反射エネルギーレベルと比較するための閾値は、上限値及び下限値を有すると共に、信号処理装置は、反射エネルギーレベルが、上記上限値を越えたとき剥離欠陥有りと判定し、反射エネルギーレベルが上記下限値より小さいとき剥離欠陥無しと判定し、反射エネルギーレベルが上記上限値と下限値の間のときは、不定状態とすることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  8. 上記反射エネルギーレベルと比較するための閾値の上限値は、剥離欠陥無しの場合の反射エネルギーレベルの内、最大の反射エネルギーレベルを用いて設定されていることを特徴とする請求項7記載のトンネル診断装置。
  9. 上記反射エネルギーレベルと比較するための閾値の下限値は、剥離欠陥有りの場合の反射エネルギーレベルの内、最小の反射エネルギーレベルを用いて設定されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載のトンネル診断装置。
  10. 信号処理装置は、剥離欠陥有りと判定した場合に、反射エネルギーレベルを用いて、剥離の厚みを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  11. 信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工の音速または圧縮強度を推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  12. 信号処理装置は、剥離欠陥無しと判定した場合に、トンネル覆工背面までの縦振動を用いて、トンネル覆工の厚みを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項記載のトンネル診断装置。
  13. トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、上記入射した音響弾性波の上記トンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギ−レベルを算出すると共に、上記算出された反射エネルギーレベルを用いて、上記トンネル覆工の欠陥の有無を判定し、上記欠陥有りと判定した場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別することを特徴とするトンネル診断方法。
  14. トンネル覆工への音響弾性波の入射は、上記トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる音響発振子により行われると共に、反射信号の検出は、上記トンネル覆工表面に圧接された鉄及びコバルト系の磁歪素子からなる受信センサによって行われることを特徴とする請求項13記載のトンネル診断方法。
  15. トンネル覆工に低周波の音響弾性波を入射し、上記入射した音響弾性波の上記トンネル覆工によって励振された反射信号から反射エネルギーレベルを算出すると共に、上記算出された反射エネルギーレベルを用いて上記トンネル覆工の剥離欠陥の有無を判定する第一の手順
    この第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射エネルギーレベルを用いて、上記剥離の厚みを推定する第二の手順、
    上記第一の手順によって剥離欠陥有りと判定された場合に、反射信号の減衰時定数を、予め記憶されている減衰時定数の閾値と比較することにより、剥離欠陥の種類を識別する第三の手順を含むことを特徴とするトンネル診断方法。
  16. 第一の手順によって剥離欠陥無しと判定された場合に、反射信号の減衰特性を用いて、トンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を推定する第四の手順
    この第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、トンネル覆工の厚みを推定する第五の手順、
    上記第四の手順によって推定されたトンネル覆工中の音速またはトンネル覆工の圧縮強度を用いて、上記トンネル覆工は健全であると判定する第六の手順、
    上記第五の手順によって推定されたトンネル覆工の厚みを用いて、上記トンネル覆工は健全であると判定する第七の手順を含むことを特徴とする請求項15記載のトンネル診断方法。
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