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JP4552414B2 - フィルム型電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ラミネートフィルムなどを外装体に採用したフィルム型電池に関し、特に安全性の高いフィルム型電池に関する。
二次電池などのエネルギー密度を向上する目的で電池の外装体にラミネートフィルムなどのフィルムを採用したフィルム型電池が知られている。ところで、電池内部に何らかの異常が発生し電池内部の温度が上昇すると、電池内部ではガス発生により圧力が上昇する。フィルムから構成されるフィルム外装体はフィルムの開口部を封止することで密閉しており、電池の内圧が上昇した時にはその封止部が予測不可能な状態で開口するので、内圧上昇時にガス抜きを行う安全弁を設けることが従来から提案されている(特許文献1及び2など)。
これらの安全弁は低融点樹脂からなる弁体を備えており、電池内部が高温になった際にその低融点樹脂が溶融することで他の封止部よりも率先して開口することで発生したガスを安全に電池外部に排出して内圧を低下できる。
特開2001−93489号公報 特開2001−283800号公報
ところで、電池温度の異常が発生する要因としては、外部の熱源により加熱される場合のほか、電池の発電要素からの発熱(短絡や過充電など)が考えられる。その場合に、電池を加熱する熱源の位置によっても、安全弁の作動するタイミングが安定することが好ましい。特に、電池内部からのガス発生は電池内部の温度との相関性が高いので、安全弁が開弁する電池温度をより正確に制御することで電池の安全性が向上できると考えられる。
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、安全弁を精度良く作動させることで、より安全性の高いフィルム型電池を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究を行った結果、特許文献1及び2に開示されたようなフィルム外装体の封止部に設けられた安全弁では、電池内部の発電要素から伝達される熱と外部から伝達される熱とでは、安全弁が作動するタイミングにずれが生じることを見出し、この安全弁が作動するタイミングのずれを小さくするために以下の発明に想到した。
すなわち、本発明のフィルム型電池は、発電要素と、該発電要素を格納するフィルム外装体と、該フィルム外装体の溶着部に設けられた低融点樹脂からなる弁体をもつ安全弁と、該発電要素に対して電気的に接続され該フィルム外装体の内外で電力の授受を行うリード部材と、を備えるフィルム型電池であって、
該安全弁は該リード部材から離間して設けられ、
該安全弁に接続され、該発電要素から発生する熱を直接該安全弁に伝導可能な伝熱部材を備え
前記伝熱部材は前記リード部材を介して前記安全弁に熱を伝導することを特徴とする。
つまり、安全弁はフィルム外装体の封止部に配設されるので電池外部からの熱が速やかに伝熱される。更に電池内部の発電要素から発生する熱を効果的に安全弁に伝熱する伝熱部材を新たに設けることで電池内部からの発熱も速やかに安全弁に伝わる。その結果、異常な加熱源の位置が電池の内外のいずれにあっても速やかに安全弁を精度良く作動することができる。
なお、伝熱部材としてリード部材をそのまま採用することも考えられる。しかしながら、リード部材に接触させず離間して安全弁を配設することで、安全弁の弁体の開口に伴う電池内のガス排出がリード部材に影響を与えずに可能となり、電池の安全性がより高くなる。リード部材が安全弁作動時においても安定させることでリード部材の移動による二次的な短絡の発生などの不都合を効果的に防止できる。
また、安全弁は封止部以外に配設することも考えられるが、封止部に配設することで構造が簡単にできるので、電池の信頼性及び安全性が向上できるとともに簡単に製造できる利点がある。従って、安全弁は発電要素やリード部材とは離間した状態で封止部に配設されている。なお、本明細書において「安全弁がリード部材から離間した状態」にあるとは、安全弁のうちの少なくとも開弁する弁体の部分が、フィルム外装体により狭持されたリード部材の部分に重ならないことを意味する。
そして、前記伝熱部材は前記リード部材を介して前記安全弁に熱を伝導する。伝熱部材としてリード部材及び安全弁の間を接続する部材を採用することで、上記効果を達成できる簡単な構造の電池を提供できる。リード部材と伝熱部材との接続は発電要素の完成後に行うことができるので発電要素の他の部分に伝熱部材を接続する場合よりも簡単に発電要素と伝熱部材との熱的接続が達成できる。両者の接続は発電要素の完成後、抵抗溶接、超音波溶接などで簡単に行うことができる。フィルム型電池における発電要素は、帯状の正負極を捲回して積層したり、複数の板状の正負極を積層した構造をもつ場合が多く、このような構造をもつ発電要素の電極部分などに伝熱部材を接続しようとするよりも、発電要素の完成後のリード部材に伝熱部材や安全弁を接続する方が簡単である場合が多い。この場合、前記伝熱部材は前記リード部材と同じ材料で形成されていることが好ましい。リード部材は良好な導電体を採用しているので熱の伝導性にも優れるとともに、伝熱部材をリード部材と同種の材料で構成することで異種材料の接触による電気的な腐食を防止できる。
また、前記発電要素からの発熱による前記弁体の昇温速度は、前記リード部材の前記フィルム外装体に接触する部分の昇温速度より大きいことが好ましい。そして、前記発電要素からの発熱による前記弁体の昇温速度は、前記リード部材の前記フィルム外装体に接触する部分に配設したと仮定した場合の該弁体の昇温速度より大きいことが好ましい。弁体の昇温速度が速い伝熱部材を採用することで、異常時に速やかに対応できる。なお、昇温速度の遅速は安全弁の位置を変更する、伝熱部材の長さや断面積を変化する、伝熱部材の材質を変化させることなどにより制御できる。安全弁について、昇温速度の実際の遅速はフィルム型電池において実測したり、安全弁の位置をリード部材の位置に配設したものと比較したりすることで簡単に確認できる。
本発明のフィルム型電池について以下実施形態に基づき詳細に説明する。本実施形態のフィルム型電池は発電要素とフィルム外装体と安全弁とリード部材とを備える。更に必要に応じてその他の部材を設けることができる。それぞれの部材について本電池は複数個備えることがある。特に安全弁及び伝熱部材については一般的な態様においても複数組存在することがある。
発電要素は、正極活物質を備える正極と負極活物質を備える負極とが電解質を介して対向して形成された二次電池用の部材が例示できる。発電要素は複数の板状の正負極をセパレータを介して交互に積層したり、帯状の正負極を帯状のセパレータを介して重ね合わせて巻回したりすることで配設できる。また、発電要素には電解質を含む。電解質は液状のもの、ゲル状のものなどどのような形態であっても良い。電解質は自身が液体状の物質であっても、適正な溶媒とともに用いられることが多い。更に、発電要素としては、比表面積の大きい活性炭を活物質として含む電極合材を集電体の表面に層状に形成させた電極を有する電気二重層キャパシタ用の部材も適用可能である。従って、本明細書において「電池」とは「電気二重層キャパシタ」の意味をも含むものとする。
フィルム外装体は発電要素を格納するために、フィルム型電池の内外を区画する部材である。フィルム外装体は電池内外間での物質の移動を規制している。フィルム外装体はフィルムにより発電要素を包み込んだ後に開口部を封止した封止部を形成している。フィルム外装体の封止部の幅や封止の方法は特に限定しないが、封止部が通常の電池の使用において剥離しない程度の強さ及び幅にて封止する。フィルムの封止はヒートシールや接着剤による接着などで行うことができる。フィルム外装体を構成するフィルムとしては本フィルム型電池内の雰囲気において化学的及び物理的に安定であるとともに、発電要素に含まれる電解質や電解質を溶解する溶媒の透過性が低いことが望まれる。更に、機械的強度に優れることが好ましい。
好ましいフィルムとしてはラミネートフィルムを採用できる。ラミネートフィルムは、複数種類の材質からなる薄膜を積層して一体化したものである。ラミネートフィルムを構成する薄膜は、フィルムに要求される特性に応じて選択される。例えば、物質透過性の低いアルミなどの金属薄膜をヒートシール性や化学的安定性、更には機械的強度に優れた樹脂製の薄膜により狭持したものが挙げられる。樹脂製薄膜を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂、PETなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂やそれらのアロイ、コポリマーなどが単独又は複数組み合わされて用いることができる。また、ヒートシール性の向上などの目的で、必要に応じて変性させた材料(変性オレフィンなど)を採用することもできる。
安全弁は低融点樹脂からなる弁体をもつ。弁体はフィルム外装体の封止部に設けられ、弁体が開弁することでフィルム外装体の内外を通気可能に連通する部材である。低融点樹脂はフィルム外装体を構成する材料よりも低い融点で溶融する樹脂である。特にフィルム外装体の封止部がヒートシールされている場合にはそのヒートシールされた樹脂よりも低い融点をもつ樹脂である。低融点樹脂の融点は80℃〜130℃程度にすることが好ましい。例えば、フィルム外装体のヒートシール性を担保する樹脂としてPPを採用した場合には低融点樹脂としてPEを採用できる。この低融点樹脂は直接、フィルム型電池内部の雰囲気に接触するので、電池内部の雰囲気における物理的・化学的安定性が高いことが望まれる。
安全弁はすべて低融点樹脂から構成して弁体のみの構成にするほか、弁体を支持する支持体により弁体を保持する構成を採用することもできる。弁体としては一定の面積をもった膜状の部材を採用することができる。膜状の弁体を単独で又は支持体とともにフィルム外装体の封止部に狭持することにより、安全弁を構成できる。電池が過熱して内部からガスが発生し、弁体が融点以上に加熱された場合に、弁体が融解しているので電池の内圧によって安全弁の弁体部分が開口する。フィルム外装体の封止部がフィルム外装体の内外を区画する方向における安全弁の長さは、フィルム外装体の封止部の幅と同程度の長さか僅かに長い程度にして封止部に狭持された際に封止部の内外に露出する程度にすることが好ましい。
リード部材は、発電要素に対してフィルム外装体の外部から電力の授受を行うための部材である。リード部材は発電要素に対して電気的に接続されており、一部がフィルム外装体の外部に露出している。リード部材は前述の安全弁とは離間されている。リード部材としては銅やアルミニウムなどの金属から形成されることが好ましい。リード部材は発電要素に一体化することもできる。発電要素が金属箔からなる集電体をもつ場合にその集電体をリード部材の形状に切り欠くことができる。また、リード部材は発電要素に溶接などにて接合することもできる。リード部材をフィルム外装体の封止部から露出させる場合には、封止部への応力集中を低減するために、リード部材を箔状乃至は板状の部材から形成することが好ましい。例えば、想定される電力の授受が充分に行われる断面積をもつ短冊状の部材とすることができる。
伝熱部材は発電要素から発生する熱をリード部材を介して安全弁の弁体に伝熱する部材である。伝熱部材は安全弁に接触する。伝熱部材は弁体に直接接触させることもできる。伝熱部材は発電要素に直接接触させることができる。また、伝熱部材はリード部材の中途に接続する。いずれにしても発電要素から発生する熱をリード部材を介して安全弁に伝熱できる。発電要素に直接接続する場合はリード部材と同様に発電要素を構成する集電体などに溶接して固定したり、発電要素に密着させたりする。伝熱部材をリード部材に接続する場合も溶接により固定したり、密着させて接続できる。溶接などにより伝熱部材を固定することが好ましい。伝熱部材はリード部材と同じ材料から構成されることが好ましい。伝熱部材が安全弁に接触する長さは安全弁が封止部に狭持される部分の長さを基準にして30%〜60%程度、好ましくは40%程度である。また、安全弁全体の長さを基準にして40%〜70%程度、好ましくは60%程度である。
必要に応じて設けることができる部材としては特に限定しないが、安全弁の弁体のフィルム外装体の外部に接続された筒状の部材であり、安全弁の弁体から排出するガスを安全な部位にまで導出させるダクトなどが例示できる。
(試験1)
・試験電池の調製
試験電池としてリチウムイオン二次電池を採用した。正極活物質としてのニッケル酸リチウムを85質量部、導電材としてのカーボンブラックを10質量部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部、N−ピロリドン中にて混合して正極合材ペーストを調製してアルミニウム製の集電材(厚み15μm)の両面に塗布し乾燥させることで各30μmの厚みの正極合材層とした。合材ペーストの塗布後、切断することにより、30mm×40mmの長方形と、その長方形の短辺の端に設けられた幅8mm、長さ5mmの突出部とを設けた正極シートを形成した。
負極活物質としてのグラファイトを92.5質量部、結着材としてのPVDFを7.5質量部、N−ピロリドン中にて混合して負極合材ペーストを調製して銅製の集電材(厚み20μm)の両面に塗布し乾燥させることで各40μmの厚みの負極合材層とした。合材ペーストの塗布後、切断することにより、32mm×42mmの長方形と、その長方形の短辺の端に設けられた幅8mm、長さ5mmの突出部とを設けた負極シートを形成した。
正負極シートの突出部は塗布した正負極合材層を剥離した。これら正極シートを7枚、負極シートを8枚を両端が負極シートになり、それぞれの突出部が同位置に重なるように交互に積層して発電要素とした。正負極シート間には厚さ25μm、34mm×44mmのPE性の多孔質膜からなるセパレータを狭持した。
発電要素の正極シートの突出部(7枚)に正極のリード部材(厚み20μmのアルミニウム製で5mm×40mm)を超音波溶接にて接合し、負極シートの突出部(8枚)に負極のリード部材(厚み30μmの銅製で5mm×40mm)を抵抗溶接にて接合した。
製造した発電要素及びリード部材を正負極のリード部材の先端がそれぞれ27.5mmずつフィルム外装体の封止部から突出するように、フィルム外装体を構成する2枚のラミネートフィルム(厚み30μmのPETシート、厚み40μmのアルミニウム箔、厚み30μmのPPシートの積層体;40mm×62mm)で狭持して全周を5mm幅にてヒートシール(加圧力0.1MPa、温度190℃、10秒間)を行い封止部を形成することでフィルム外装体を密封した。フィルム外装体の内部には電解液(1mol/L LiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=3/7(体積比)溶液)を充填した。
封止部の種々の位置に安全弁を狭持してして試験電池1、3及び4とした。安全弁はPP−PE−PPの3層構造をもつ厚さ50μmのフィルムであり、8mm×8mmの大きさに切断されたものを採用した。PEも部分が弁体に相当し、PEを狭持するPPが支持体に相当する。つまり、PPフィルム間をPEにて接着しているが、PE部分が融解し、電池内圧が上昇することでPP部分が剥離して開弁される。ここで用いたPEの融点は105℃〜115℃程度である。この安全弁は、図1に示す所定位置にフィルム外装体の封止部の外縁に一辺を合わせて狭持した。図1では、内部が把握しやすいように、各試験電池のフィルム外装体30の一部を切り欠いた状態を示した。なお、本実施例における図は模式図であり、各構成要素の縮尺、細部の構造などは正確なものではないことがある。また、各図において、関連する構成要素には同じ符号を付したものもある。
試験電池1では負極のリード部材22の脇の部分(図1(a))に配設した。そして、リード部材22と同じ素材から形成された伝熱部材50(厚さ30μmの銅箔、5mm×15mm)により負極のリード部材22に熱的に接続した。伝熱部材50及びリード部材22は抵抗溶接により行った。伝熱部材50と安全弁40は安全弁40の電池内部側から5mmの幅で重ねた。従って、封止部31に重なる部分では安全弁40と伝熱部材50とが2mm重なり、封止部31を外れた部分では安全弁40と伝熱部材50とが3mm重なった(安全弁が封止部に狭持される部分の長さを基準にして40%、安全弁全体の長さを基準にして62.5%)。
試験電池2は安全弁を設けなかった(図1(b))。試験電池3では安全弁40を正負極リード部材21、22が封止部31に狭持された部分のほぼ中央部分に配設した(図1(c))。試験電池4では安全弁40を負極リード部材22と重ね合わせて封止部31に狭持するように配設した(図1(d))。各試験電池は5個ずつ用意した。
・試験
各試験電池について過充電試験(SOCが100%から試験を開始して、連続して1A(3C相当)の電流にて充電を行った)と加熱試験(SOCが100%の状態で、開始雰囲気温度160℃から、雰囲気温度の昇温速度5℃/分にて加熱を行った)とを実施した。それぞれの試験は試験電池の安全弁が開弁するか、封止部が開き、内部のガスが抜けるまで行い、その場合の試験電池の温度(発電要素の中央付近)を測定した。試験結果はそれぞれの試験電池の5個について最小値と最大値とを示す。
・結果:過充電試験
試験電池1は過充電試験開始後330秒〜370秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は102℃〜110℃であった。試験電池2は過充電試験開始後992秒〜1214秒にて、予期しない封止部の部分から内部のガスを放出した。試験電池の温度は165℃〜1750℃であった。
試験電池3は過充電試験開始後621秒〜653秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は140℃〜145℃であった。試験電池4は過充電試験開始後424秒〜448秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は125℃〜131℃であった。
・結果:加熱試験
安全弁をリード部材から離隔し且つ発電要素から発生する熱を直接安全弁に伝導する伝熱部材を設けた試験電池1は、加熱試験開始後16分30秒〜17分5秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は90℃〜93℃であった。安全弁をもたない試験電池2は、加熱試験開始後22分15秒〜23分20秒にて、予期しない封止部の部分から内部のガスを放出した。試験電池の温度は160℃であった。
安全弁をリード部材から離隔しているが、発電要素から発生する熱を直接安全弁に伝導する伝熱部材をもたない試験電池3は、加熱試験開始後16分10秒〜16分55秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は91℃〜93℃であった。安全弁をリード部材に接触させた上でリード部材を介して発電要素から発生する熱を直接安全弁に伝導する試験電池4は、加熱試験開始後16分40秒〜16分50秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は91℃〜93℃であった。
両試験の結果から以下のことが分かった。試験電池1は両試験共に速やかに安全弁が開弁して速やかに内部ガスを放出できた。安全弁が開弁したときの試験電池の温度も低いものであった。
試験電池2は両試験共に内部のガス放出に至るまでの時間が最も長かった。これは安全弁を設けなかったためであると考えられる。また、封止部の開く部分が事前に予測できないという不都合もあった。更に、過充電試験では内部の過熱によって電解液を構成する非水溶媒に着火した試験電池もあった。
試験電池3及び4は加熱試験においては、ほぼ試験電池1と同程度の時間及び試験電池温度にて安全弁を開弁することができた。これは外部からの伝熱は伝熱部材の有無によっては大きな影響がないことを示唆している。しかしながら、過充電試験では安全弁が開弁するまでに試験電池1よりも長時間必要であり、且つ開弁時の試験電池温度も高かった。過充電試験では、試験電池3の安全弁が開弁するまでの時間の方が試験電池4よりも長時間であった。更に試験電池3の方が試験電池4よりも開弁時の電池温度が高かった。これは試験電池4が、負極のリード部材に接するように安全弁を配設したために、過充電により発電要素から発生する熱がより直接的に安全弁に伝達してものと考えられる。
なお、試験電池4では一部安全弁が開弁する時に負極のリード部材が脱落した電池があった。試験電池4におけるリード部材の脱落はリード部材と安全弁とを重ねて配設することによるメカストレスに由来すると考えられる。なお、リード部材が脱落するとリード部材へ不必要な力が加わるばかりか発電要素にまで不必要な力が加わることになる。
従って、試験電池1〜4のうち、試験電池1が過充電状態や過熱状態などの緊急時に最も速やかに電池内部で発生するガスを安全に放出できることが分かった。
(試験2)
・試験電池の調製
本試験の試験電池は、図2(a)に示す試験1の試験電池1と、安全弁と伝熱部材との重なり部分の量を変化させた以外、試験電池1とほぼ同様にして作製した試験電池5及び6とを用いた。試験電池5は、図2(b)に示すように、伝熱部材50と安全弁40とを安全弁40の電池内部側から7mmの幅で重ねた。従って、封止部31において安全弁40と伝熱部材50とは4mm重なり、封止部31を外れて安全弁40と伝熱部材50とは3mm重なった(安全弁が封止部に狭持される部分の長さを基準にして80%、安全弁全体の長さを基準にして87.5%)。試験電池6は、図2(c)に示すように、伝熱部材50と安全弁40とを安全弁40の電池内部側から2mmの幅で重ねた。従って、封止部31において安全弁40と伝熱部材50とは重なる部分はなく、封止部31を外れて安全弁40と伝熱部材50とは2mm重なった(封止部31の端部から伝熱部材50の端部は1mm離れた;安全弁が封止部に狭持される部分の長さを基準にして0%、安全弁全体の長さを基準にして25%)。
・試験及び結果
各試験電池ついて、試験1と同様にして過充電試験を実施した。それぞれの試験は試験電池の安全弁が開弁するか、封止部が開くまで行い、その場合の試験電池の温度(発電要素の中央付近)を測定した。試験結果はそれぞれの試験電池の5個について最小値と最大値とを示す。
試験電池1は過充電試験開始後330秒〜370秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は102℃〜110℃であった。試験電池5は過充電試験開始後450秒〜475秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は128℃〜135℃であった。試験電池5では安全弁が開弁すると同時に安全弁の周囲が破れる試験電池もあった。安全弁の周囲が破れることで伝熱部材を接続した負極のリード部材にも大きな力が加わった。試験電池6は過充電試験開始後633秒〜648秒にて安全弁が作動し、内部のガスを放出した。試験電池の温度は143℃〜146℃であった。
試験の結果から以下のことが分かった。試験電池1は速やかに安全弁が開弁して速やかに内部ガスを放出できた。安全弁が開弁したときの試験電池の温度も低いものであった。試験電池5は内部のガス放出に至るまでの時間が試験電池1よりも長かった。従って、安全弁と伝熱部材との接触面積には適正値があり、接触面積が大きすぎても速やかな安全弁の開弁は進行しないことが分かった。つまり、接触面積が大きいと伝熱部材による伝熱により安全弁の昇温速度がかえって遅くなって、弁体を構成する低融点樹脂の融点にまで達する時間が長くなるからである。試験電池1では重なり部分の面積が適正であるので、伝熱部材と重なった安全弁の部分がまず融解して安全弁が一部剥離することで安全弁の開弁が速やかに進行したものと考えられる。このことは、試験1において試験電池4(リード部材が安全弁を貫通している)の安全弁の開弁時間が試験電池1よりも長いことからも裏付けられる。従って、伝熱部材は安全弁を貫通してフィルム外装体の外部に突出しないことが好ましい。更に試験電池5では、安全弁の開弁に伴い、試験電池4と同様に、安全弁の周囲にも破れが発生することで伝熱部材やリード部材に力が加わった。
試験電池6では伝熱部材と安全弁との重なり部分が少ないので、発電要素から発生した熱が安全弁に速やかに伝導できず開弁するまでの時間が試験電1及び5よりも遅くなったものと考えられる。開弁時間が遅くなったので、安全弁の開弁時の試験電池の温度も一番高温になっている。
従って、試験電池1、5及び6のうち、試験電池1が過充電状態や過熱状態などの緊急時に最も速やかに電池内部で発生するガスを安全に放出できることが分かった。更に、安全弁と伝熱部材との重なり部分の量を調節することで開弁のタイミングを調節できることが分かった。つまり、安全弁及び伝熱部材との重なり部分を変化させることで適正な開弁挙動を実現できる。
実施例において用いた試験電池の概略一部断面図である。 実施例において用いた試験電池の安全弁と伝熱部材との関係を模式的に示した一部拡大図である。
符号の説明
10…発電要素
21…正極リード部材 22…負極リード部材
30…フィルム外装体 31…封止部
40…安全弁
50…伝熱部材

Claims (4)

  1. 発電要素と、該発電要素を格納するフィルム外装体と、該フィルム外装体の封止部に設けられた低融点樹脂からなる弁体をもつ安全弁と、該発電要素に対して電気的に接続され該フィルム外装体の内外で電力の授受を行うリード部材と、を備えるフィルム型電池であって、
    該安全弁は該リード部材から離間して設けられ、
    該安全弁に接続され、該発電要素から発生する熱を直接該安全弁に伝導可能な伝熱部材を備え
    前記伝熱部材は前記リード部材を介して前記安全弁に熱を伝導することを特徴とするフィルム型電池。
  2. 前記伝熱部材は前記リード部材と同じ材料で形成されている請求項1に記載のフィルム型電池。
  3. 前記発電要素からの発熱による前記弁体の昇温速度は、前記リード部材の前記フィルム外装体に接触する部分の昇温速度より大きい請求項1又は2に記載のフィルム型電池。
  4. 前記発電要素からの発熱による前記弁体の昇温速度は、前記リード部材の前記フィルム外装体に接触する部分に配設したと仮定した場合の該弁体の昇温速度より大きい請求項1又は2に記載のフィルム型電池。
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