発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明に係る作業車両の一実施の形態としての歩行型除雪機(以下、「除雪機」)1の全体構成について、図1および図2を用いて説明する。
なお、本発明に係る作業車両としては除雪機に限定されるものではなく、例えば、歩行型の走行部の前部にモア等の刈取装置や耕耘装置等を装着した作業車両でもよい。
除雪機1は、除雪作業を行う作業部2と、除雪機1の各駆動部に動力供給を行う駆動部3と、除雪機1を走行させる左右一対の走行装置4と、除雪機1の運転操作が行われる運転操作部5とを備えており、これらが機体フレーム6に支持されている。本実施例では、走行装置4と駆動部3を走行部としている。そして、機体フレーム6内の後部には、駆動部3からの駆動力を前記走行装置4に伝達するトランスミッション30が収容されている。
作業部(作業機)2は、機体フレーム6の前側に配設され、除雪機1の走行経路上に存在する雪を除去するものである。作業部2は、雪を掻き込むための掻込オーガ10、掻き込まれた雪を排出するためのブロア11、掻込オーガ10を包囲するとともにブロア11を収容するハウジング12、雪の排出管であるシュータ13等から構成されている。すなわち、除雪機1の機体前端に掻込オーガ10が配置され、ハウジング12内の後部にブロア11が配置されており、このハウジング12の上部にシュータ13が立設されている。
そして、作業部2においては、掻込オーガ10により除雪機1前方の雪が掻き込まれ、この雪がハウジング12内に搬送されるとともにブロア11によりシュータ13を通して跳ね飛ばされる。こうして除雪機1の走行経路上の雪が除去される。ここで、シュータ13は、ハウジング12に対して水平面上で旋回可能に構成され、その先端部は、上下回動可能に構成される。これにより、ブロア11よりシュータ13を介して跳ね飛ばされる雪の地面への落下位置を調節することができる構成となっている。また、除雪機1においては、機体フレーム6に昇降装置であるオーガ昇降シリンダ90が設けられており、このオーガ昇降シリンダ90が操作されることにより作業部2が昇降するように構成されている。
駆動部3は、機体フレーム6上に配設され防振装置等の支持装置14を介して載置されるエンジン15を有している。また、駆動部3においては、エンジン15の出力を利用して発電する発電機16と、この発電機16により発電される電力を充電するバッテリ17とが備えられる。なお、図2に示す発電機16およびバッテリ17は、機体フレーム6に固定される等して設けられる。
エンジン15は、除雪機1の駆動源であり、該エンジン15からの駆動力が、作業部2の掻込オーガ10およびブロア11に伝達されるとともに、走行装置4へと伝達される。また、エンジン15は発電機16を回転駆動して電力を発生させる。この発電機16で発電される電力は、トランスミッション30に備えられるモータ35(本実施形態においては左右の電動モータ35L・35R)に供給されるか、またはバッテリ17に充電される。すなわち、発電機16またはバッテリ17からの電力が、電動モータ35L・35Rのそれぞれの駆動回路(インバータ)36L・36Rに供給され、各電動モータ35L・35Rが回転数等を制御されながら駆動する。この電動モータ35L・35Rの制御は、前記駆動回路36L・36Rが接続される制御回路37が用いられることにより行われる。
エンジン15は、機体前方に突出する出力軸15aを有しており、この出力軸15aには、二連のエンジンプーリ43a・43bが前後に配置され設けられており、後側のエンジンプーリ43aが走行装置4への駆動力伝達に用いられ、前側のエンジンプーリ43bが作業部2への駆動力伝達に用いられる。
具体的には、機体フレーム6内においては、エンジン15からの駆動力をトランスミッション30へ伝達するための駆動力伝達軸28aが機体前後方向に架設されており、この駆動力伝達軸28aの前端に入力プーリ47aが設けられ、この入力プーリ47aおよび前記エンジンプーリ43aにベルト48aが巻回される。一方、機体フレーム6内から作業部2のハウジング12内にかけては、エンジン15からの駆動力を作業部2のブロア11および掻込オーガ10へ伝達するための駆動力伝達軸28bが機体前後方向に架設されており、この駆動力伝達軸28bの後端に入力プーリ47bが設けられ、この入力プーリ47bおよび前記エンジンプーリ43bにベルト48bが巻回される。つまり、駆動力伝達軸28bは、その中途部に配置されるブロア11に駆動力を伝達するとともに、先端部にギヤボックス29が構成されており、このギヤボックス29において駆動力伝達軸28bの回転軸方向がベベルギヤ等により機体左右方向に変換され、掻込オーガ10が駆動される。
走行装置4は、左右一対のクローラ式走行装置4L・4Rにより構成されている。クローラ式走行装置4L・4Rは、それぞれ、後側に配置される駆動スプロケット18、前側に配置される従動スプロケット19およびこれらに巻回される無端ベルトであるクローラベルト20等から構成される。駆動スプロケット18は、トランスミッション30から機体左右側方に突出する、クローラ式走行装置4L・4Rの駆動軸である車軸21L・21Rの先端部(外側端部)にそれぞれ外嵌固定される。左右の車軸21L・21Rは、その軸線方向が機体左右方向となるように同一軸線上に配置される。また、従動スプロケット19は、機体フレーム6の前部にて回転可能に軸支される従動軸22に左右両側にて外嵌固定される。このような構成において、左側の車軸21Lの回転により左側のクローラ式走行装置4Lが駆動され、右側の車軸21Rの回転により右側のクローラ式走行装置4Rが駆動される。なお、本実施形態においては、左右一対の走行装置4をクローラ式の走行装置としているが、これに限定されずホイル式のものであってもよい。
運転操作部5は、機体フレーム6上の左右両側から上後方に延設される左右のハンドル23、該ハンドル23にそれぞれ設けられる旋回レバー24、機体フレーム6の後部において立設される操作部フレーム25に設けられる主変速レバー26、作業部2への駆動力の伝達の断接を行う作業部クラッチレバー27(図2参照)、前記昇降装置を操作し作業部2を昇降するための作業部昇降レバー(図示略)等を備えている。
作業者は、左右のハンドル23の先端部に設けられる把持部23aを持って除雪機1を操作する。ここで、作業者が左右のハンドル23に設けられる旋回レバー24を操作する(把持部23aとともに旋回レバー24を握る)ことにより、操作された旋回レバー24の側の駆動スプロケット18が減速して、その側に除雪機1が旋回する構成となっている。つまり、作業者は、左右のハンドル23の把持部23aを持って除雪機1を操作する際、左右の旋回レバー24を操作することによって除雪機1の旋回を行い、主変速レバー26を操作することによって除雪機1の走行速度を調節する。
具体的には、旋回レバー24は、前記制御回路37と接続されており、この制御回路37により旋回レバー24の操作量(回動角度)が検出され、これに基づき前記駆動回路36L・36Rを介して電動モータ35L・35Rが制御される。つまり、左右の電動モータ35L・35Rが作動されることにより除雪機1の旋回が行われる。また、主変速レバー26は、該主変速レバー26のレバー位置を検出するポテンショメータ26aを介して制御回路37に接続されている。つまり、主変速レバー26が操作されると、そのレバー位置がポテンショメータ26aにより検出され、制御回路37を介して、エンジン15から走行装置4に伝達される駆動力の変速が行われる。なお、左右の電動モータ35L・35Rは、この主変速操作にともなって(両旋回レバー24が操作されていない場合には同一速度(回転数)で)、走行装置4の駆動をアシストするものとしてもよい。一方、作業部クラッチレバー27は、エンジン15から作業部2への駆動力の入切を行う作業部クラッチ38と接続されており、作業部クラッチレバー27が操作されることにより、作業部2の駆動が操作される。なお、運転操作部5における各種レバーの構成や配置等は本実施形態に限定されるものではない。
続いて、トランスミッション30について、図3〜図7を加えて説明する。トランスミッション30は、駆動源であるエンジン15および電動モータ35L・35Rからの駆動力を左右のクローラ式走行装置4L・4Rに伝達し、除雪機1を直進(前進・後進)または左右旋回させるものである。このとき、トランスミッション30は、左右の走行装置4の回転速度をそれぞれ調節し、除雪機1の直進および滑らかな旋回を可能としている。
トランスミッション30は、ミッションケース31、油圧式無段変速装置(以下、「HST」(Hydro Static Transmission)という。)32、左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有する差動機構34、左右一対の電動モータ35L・35Rを具備している。すなわち、トランスミッション30は、ミッションケース31内に、左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有する差動機構34を具備し、エンジン15および電動モータ35L・35Rからの駆動力を、差動機構34を経て、左右一対のクローラ式走行装置4L・4Rの駆動軸である各車軸21L・21Rへ伝達する。
先ず、ミッションケース31は、トランスミッション30の構成要素を収容してその内部への塵挨等の侵入を防止する筐体としての機能と、同じくその内部において構成要素を支持(軸支)する構造体としての機能を有する。ミッションケース31は、車軸21L・21Rの回転軸線に対して直角な分割面を有し、2つのケース要素31L・31Rに分離接合自在に構成されている。そして、これらのケース要素31L・31Rの前面には、電動モータ35L・35Rを設置して支持するための取付面が形成され、また、該ケース要素31L、31Rのいずれか一方の後面には、HST32を設置して支持するための取付面が形成され、本実施例においては、ケース要素31Rの後面上部にHST32の取付面が形成されている。
次に、HST32は、エンジン15から伝達される駆動力を変速し、差動装置34へ伝達する無段変速装置であり、ミッションケース31のケース要素31Rの後面上部に形成された前記取付面に取り付けられている。このHST32は、センタセクション、油圧ポンプ41、油圧モータ42等により構成されている。センタセクションには、油圧ポンプ41および油圧モータ42が付設される付設面がそれぞれ形成されており、これら付設面に油圧ポンプ41および油圧モータ42がそれぞれ付設されて構成され、本実施例においては、センタセクションを介して、右側に油圧ポンプ41、左側に油圧モータ42を配置する構成としている。そして、センタセクションには油路が形成されており、この油路を介して油圧ポンプ41と油圧モータ42とが流体的に接続されている。
油圧ポンプ41は、いわゆる可動斜板式のアキシャルピストンポンプであり、入力軸(ポンプ軸)41aと、この入力軸41aに相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、このシリンダブロックに穿設される複数のシリンダ孔に気密的に付勢バネを介して摺接可能に収容される複数のピストンと、これらピストンを往復駆動させる斜板カムとして作用する可動斜板とを備えている。すなわち、前記センタセクションに形成される付設面にシリンダブロックが付設され、このシリンダブロック内の複数のピストンが可動斜板に当接しながら回転することにより、センタセクション内に形成される油路を介して圧油が油圧モータ42へ搬送される。可動斜板は、その板面の、入力軸41aの軸線方向に対する角度を変更可能に構成されており、可動斜板の板面が入力軸41aの軸線方向に対して垂直であるときは、入力軸41aが回転駆動されても油圧モータ42に圧油が搬送されることがない中立状態であり、同じく可動斜板の板面が入力軸41aの軸線方向に対して垂直の状態から傾動することにより、入力軸41aの回転駆動に連動して油圧モータ42に圧油が搬送される。ここで、可動斜板の傾動角度が調節されることにより、入力軸41aが一回転する間に搬送される圧油の量が調節され、後述する油圧モータ42の出力軸42aの回転数および回転方向が調節される。
また、油圧モータ42は、いわゆる固定斜板式のアキシャルピストンモータであり、出力軸(モータ軸)42aと、この出力軸42aに相対回転不能に嵌設されるシリンダブロックと、このシリンダブロックに穿設される複数のシリンダ孔に気密的に付勢バネを介して摺接可能に収容される複数のピストンと、油圧ポンプ41から搬送される圧油によるピストンの往復駆動力を出力軸42aの回転駆動力に変換する斜板カムとして作用する固定斜板とを備えている。すなわち、前記センタセクションに形成される付設面にシリンダブロックが付設され、このシリンダブロック内の複数のピストンが固定斜板に当接しながら回転することにより、出力軸42aが回転する。
前記油圧ポンプ41の入力軸41aが、エンジン15からの駆動力をトランスミッション30に入力するための入力軸となり、この入力軸41aは機体前後方向を軸線方向とし、機体前方に向けて突出されている。また、油圧モータ42の出力軸42aは、ミッションケース31内において機体前後方向を軸線方向とし、この出力軸42aの前端には出力ギヤ49であるベベルギヤが固設されている。
次に、差動機構34は、走行装置4における左右の車軸21L・21Rを差動的に連結し、これら車軸21L・21Rに、HST32を介して伝達されるエンジン15からの駆動力および電動モータ35L・35Rからの駆動力を合成して伝達するものであり、前述したように左右一対の遊星歯車機構33L・33Rを有しており、ミッションケース31内の下部において配置構成される。なお、車軸21L・21R上の軸線方向内側とは、各車軸21L・21R上におけるミッションケース31内部側(左側の車軸21Lの右側、右側の車軸21Rの左側)を指し、車軸21L・21R上の軸線方向外側とは、各車軸21L・21R上における駆動スプロケット18側(左側の車軸21Lの左側、右側の車軸21Rの右側)を指すものとする。
各遊星歯車機構33L・33Rは、左右の車軸21L・21R間にて該車軸21L・21Rと同一軸線上に配置されるサンギヤ軸50に設けられるサンギヤ51と、各車軸21L・21Rにスプライン嵌合されることにより相対回転不能に軸支されるキャリア52L・52Rと、該キャリア52L・52Rからは独立して車軸21L・21R上に相対回転自在に軸支されるインターナルギヤ53L・53Rと、各キャリア52L・52Rに回動自在に軸支される複数のプラネタリギヤ54L・54Rとを有しており、これらプラネタリギヤ54L・54Rはそれぞれ各車軸21L・21R上にてサンギヤ51に噛合し、かつインターナルギヤ53L・53Rに噛合する。
すなわち、サンギヤ軸50は、左右の遊星歯車機構33L・33Rの回転中心となるサンギヤ51を構成するものであり、各遊星歯車機構33L・33R間に架設されるとともに、左右の車軸21L・21Rと同一軸線上に配置され回動自在に支持される。そして、サンギヤ51は、サンギヤ軸50に一体的に刻設される。ただし、サンギヤ51は、サンギヤ軸50に一体的に刻設される構成ではなく、各遊星歯車機構33L・33Rにおいてプラネタリギヤ54L・54Rと噛合するようにサンギヤ軸50の両端部に固設される別体の構成であってもよい。また、サンギヤ軸50の中間部には、該サンギヤ軸50の入力ギヤであるセンターギヤ44が、スプライン嵌合されること等により相対回転不能に軸支される。そして、センターギヤ44の左右側面は、サンギヤ軸50に固設される留め具により固定され位置決めされている。
キャリア52L・52Rは、略円環板状に形成される部材であり、左右の車軸21L・21R上のそれぞれの軸線方向内側端部、すなわち、左側の車軸21Lの右側端部、右側の車軸21Rの左側端部にそれぞれスプライン嵌合されることにより車軸21L・21Rに対して相対回転不能に軸支され、車軸21L・21Rと一体的に回転する。
インターナルギヤ53L・53Rは、車軸21L・21R上の軸線方向における前記キャリア52L・52Rの外側、すなわち、左側の車軸21Lにおいてはキャリア52Lの左側、右側の車軸21Rにおいてはキャリア52Rの右側にそれぞれ設けられ、車軸21L・21Rに対して相対回転自在に軸支される。インターナルギヤ53L・53Rは、その内周側にギヤ部53aを有しており、外周側には後述するアウターギヤ75L・75Rが形成されている。
プラネタリギヤ54L・54Rは、各遊星歯車機構33L・33Rにおいて車軸21L・21Rの軸線に対して放射状に等間隔に複数(図6においては一つのみ図示)配置され、略円環板状のキャリア52L・52Rから、軸線方向を車軸21L・21Rと同じくし該軸線方向において内側(左側の遊星歯車機構33Lにおいては右側、右側の遊星歯車機構33Rにおいては左側)に向けて突出する回転軸59L・59Rを介してキャリア52L・52Rに対して回転自在に軸支される。そして、プラネタリギヤ54L・54Rは、前記サンギヤ51およびインターナルギヤ53L・53Rのギヤ部53aにそれぞれ噛合する。また、プラネタリギヤ54L・54Rの車軸21L・21R上の軸線方向内側には、該車軸21L・21Rに固定される円盤状の留め板54aがそれぞれ設けられており、この留め板54aによりプラネタリギヤ54L・54Rが位置決めされている。
そして、各遊星歯車機構33L・33Rにおいてインターナルギヤ53L・53Rの外周側に形成されるアウターギヤ75L・75Rには、電動モータ35L・35Rからの駆動力が伝達されるウォームギヤ60L・60Rがそれぞれ噛合している。つまり、各遊星歯車機構33L・33Rを構成するインターナルギヤ53L・53Rに設けられるアウターギヤ75L・75Rは、それぞれウォーム軸64L・64Rを回動軸として回動するウォームギヤ60L・60Rに対応するウォームホイルとなり、ウォームギヤ60L・60Rの回転軸線方向を略直角方向に変換して出力する。前記ウォーム軸64L・64Rは、機体前後方向を軸線方向とし、ミッションケース31内において前後方向に架設され、その両端部が軸受等を介して回動自在に支持される。なお、電動モータ35L・35Rからの駆動力の伝達については後述する。
このような構成のトランスミッション30において、エンジン15からの駆動力の伝達について説明する。前述したように、エンジン15からの駆動力は、出力軸15aに設けられるエンジンプーリ43a等を介して駆動力伝達軸28aに伝達される。この駆動力伝達軸28aは後方に向けて延設され、ジョイントを介してミッションケース31から前方に向けて突出するHST32の油圧ポンプ41の入力軸41aと連結されており、駆動力伝達軸28aの駆動力が、この入力軸41aに伝達される。
前記入力軸41aを介してHST32に入力される駆動力は、該HST32により変速され、油圧モータ42の出力軸42aに伝達される。
また、ミッションケース31内におけるHST32と差動機構34との間には、伝達軸61が、その軸線方向が機体左右方向となるように軸支されている。この伝達軸61の右端には、油圧モータ42の出力軸42aに固定される出力ギヤ49と噛合する伝達ギヤ62が固設され、出力ギヤ49に伝達ギヤ62が噛合することにより、機体左右方向の回転軸方向が機体前後方向に変換される。そして、伝達軸61の中途部には伝達ギヤ63が固設されており、また、サンギヤ軸50にはセンターギヤ44がスプライン嵌合により回転不能に支持されており、このセンターギヤ44と伝達ギヤ63には、無端チェーンであるチェーン80が巻回されている。また、伝達軸61の左端には伝達軸61の回転を制動するための駐車ブレーキ81が取り付けられている。なお、駐車ブレーキ81については後述する。
このような構成において、エンジン15からの駆動力は、出力軸15a→エンジンプーリ43a→ベルト48a→入力プーリ47a→駆動力伝達軸28a→入力軸41aを経てHST32に伝達される。このHST32に伝達された駆動力は、HST32にて変速された後、出力軸42a→出力ギヤ49→伝達ギヤ62→伝達軸61→伝達ギヤ63→チェーン80→センターギヤ44→サンギヤ軸50を経て差動機構34の左右の遊星歯車機構33L・33Rのサンギヤ51に伝達される。
左側の遊星歯車機構33Lに伝達された駆動力は、サンギヤ軸50→サンギヤ51→プラネタリギヤ54L→回転軸59L→キャリア52L→車軸21Lを経て、クローラ式走行装置4Lの駆動スプロケット18に伝達される。一方、右側の遊星歯車機構33Rに伝達された駆動力は、サンギヤ軸50→サンギヤ51→プラネタリギヤ54R→回転軸59R→キャリア52R→車軸21Rを経て、クローラ式走行装置4Rの駆動スプロケット18に伝達される。このようにして、エンジン15からの駆動力は、左右一対の車軸21L・21Rに伝達され、左右のクローラ式走行装置4L・4Rが回転駆動される。
次に、電動モータ35L・35Rは、トランスミッション30に旋回用の駆動力を伝達する動力源であり、ミッションケース31のケース要素31L・31Rの前面に形成された前記取付面に、モータ軸の回転軸線が車軸21L・21Rの回転軸線と直角となるように付設されている。すなわち、一対の電動モータ35L・35Rからの駆動力は、遊星歯車機構33L・33Rに設けられるウォームホイルとしてのアウターギヤ75L・75Rに噛合するウォームギヤ60L・60Rを介することにより、電動モータ35Lまたは35Rに対応する側の遊星歯車機構33Lまたは33Rを経て、この遊星歯車機構33Lまたは33Rに対応する側のクローラ式走行装置4Lまたは4Rの車軸21Lまたは21Rに伝達される。
電動モータ35L・35Rからの駆動力は、前述の如く、ウォームホイルとしてのアウターギヤ75L・75Rに噛合するウォームギヤ60L・60Rを介して差動機構34の左右の遊星歯車機構33L・33Rに伝達されるのであるが、この際、各電動モータ35L・35Rのモータ軸とウォームギヤ60L・60Rのウォーム軸64L・64Rとの間にそれぞれ減速ギヤが介在しており、電動モータ35L・35Rの駆動力は、この減速ギヤを介してウォームギヤ60L・60Rへ伝達される。
このような構成において、左側に配置される電動モータ35Lからの駆動力は、モータ軸→減速ギヤ→ウォーム軸64L→ウォームギヤ60L→アウターギヤ75L→インターナルギヤ53L→プラネタリギヤ54L→回転軸59L→キャリア52L→車軸21Lを経て、左側のクローラ式走行装置4Lの駆動スプロケット18に伝達される。一方、右側に配置される電動モータ35Rからの駆動力は、モータ軸→減速ギヤ→ウォーム軸64R→ウォームギヤ60R→アウターギヤ75R→インターナルギヤ53R→プラネタリギヤ54R→回転軸59R→キャリア52R→車軸21Rを経て、右側のクローラ式走行装置4Rの駆動スプロケット18に伝達される。
このようにして、左右の電動モータ35L・35Rからの駆動力は、対応する車軸21L・21Rに伝達され、左右のクローラ式走行装置4L・4Rが回転駆動する。そして、左側の電動モータ35Lおよび右側の電動モータ35Rの回転速度に応じて対応するクローラ式走行装置4L・4Rの走行速度が滑らかに変化し、左右のクローラ式走行装置4L・4R間で走行速度差が生じることにより、除雪機1が滑らかに旋回することができる。なお、動力源としては、本実施例に示す電動モータ35L・35Rの他、油圧モータでも構わない。この場合、該油圧モータへ圧油を供給する油圧ポンプを単一としてエンジンに連動連結させるとともに、該油圧ポンプから吐出される圧油量を二分する可変式流量調整弁を設け、前記旋回レバー24の操作量に応じて夫々の油圧モータに供給する油量を変更するように構成する。あるいは、夫々の油圧モータに対応する一対の可変容積式油圧ポンプを設け、前記旋回レバー24の操作量に応じて夫々の油圧ポンプの吐出量を変更するように構成するものであってもよい。また、遊星歯車機構33L、33Rに対してモータ軸45L、45Rを作動的に連結せしめる手段としては、本実施例に示すウォームギヤの他、ベベルギヤやフェースギヤ、ハイポイドギヤ等を用いてもよい。
そして、前述のように、HST32は、ミッションケース31のケース要素31Rの後面上部に形成された取付面に取り付けられている。すなわち、HST32は、車軸21L・21Rに対し、上後方に配置されている。このため、エンジン15の配置に際してHST32が邪魔にならず、エンジン15を従来よりも後方に配置できる。つまり、ミッションケース31の前上部に近づけて配置することができる。また、電動モータ35L・35Rは、ミッションケース31の前部に取り付けられている。すなわち、電動モータ35L・35Rは、車軸21L・21Rに対し、トランスミッション30の前方に配置されている。このため、トランスミッション30前方上方のスペースが従来よりも広がることとなる。
これにより、エンジン15をより後方に配置できるため、本機の重心を機体の前後中央付近に位置させることができ、本機の前後重量バランスが良くなり、除雪性能が向上する。また、HST32を車軸21L・21Rの上後方に配置することにより、HST32を機体の後方に配置できるため、HST32のメンテナンスが容易となる。さらに、電動モータ35L・35Rをトランスミッション30の前方に配置することにより、トランスミッション30の前側上方のスペースが広がるため、オーガ昇降シリンダ90を左右中央付近に位置させることができ、本機の左右重量バランスが良くなる。
また、前記油圧ポンプ41においては、可動斜板が傾動操作されるためのコントロール軸41eが、その上端部を突出した状態で上下方向に軸支されている。このコントロール軸41eは、ミッションケース31内にある下端部が揺動アーム等を介して可動傾斜板と連結されており、その上方突出部分がHST32を操作するための電動モータ82と連結されている(図1参照)。電動モータ82は、HST32を操作するための動力源であって、トランスミッション30の後方上面に取り付けられている。すなわち、電動モータ82は、HST32の上面に取り付けられており、機体フレーム6の後部上面より外側に突出するように配置されている。そして、発電機16またはバッテリ17からの電力が、電動モータ82の駆動回路(インバータ)88に供給され、電動モータ82が回転数等を制御されながら駆動する。この電動モータ82の制御は、前記駆動回路88が接続される制御回路37が用いられることにより行われる(図2参照)。
このような構成において、コントロール軸41eが電動モータ82により回動操作されることにより、可動斜板が傾動操作され、油圧ポンプ41の出力変更操作が行われる。つまり、電動モータ82は制御回路37に接続されており、該制御回路37と前記ポテンショメータ26aを介して接続される前記主変速レバー26が操作されることにより、HST32の出力、すなわち、油圧モータ42の出力軸42aの回転数および回転方向が調節される。これにより、HST32の操作に要する力が軽減できるとともに、電動モータ82を機体フレーム6の外側に配置できるため電動モータ82のメンテナンスが容易となる。
次に、トランスミッション30の本機取り付けに係る構成について図8を加えて説明する。前述したようにトランスミッション30は、機体フレーム6内の後部に収容されており、具体的には、トランスミッション30は、機体フレーム6内の後部に設けられている取付フレーム83に取り付けられている。すなわち、前記トランスミッション30の前後中途部の外周の同一平面上に取付部(本機取付面87)が形成され、該取付部の外周形状に合わせた開口部83aを有する板状の取付フレーム83に、後方よりトランスミッション30を挿入して取り付けるように構成している。前記取付フレーム83は、トランスミッション30を取り付ける部材であって、機体左右方向の面を有するプレートにより構成されている。取付フレーム83の中央には、トランスミッション30の外周部が挿着される開口部83aが設けられており、この開口部83aに後方からトランスミッション30が挿着される。また、取付フレーム83の開口部83aの外周には、トランスミッション30への取付孔84・84・・・が開口部83aに沿って複数箇所開口されている。一方、トランスミッション30のミッションケース31には、前記取付孔84・84・・・に位置を合わせて取付孔86・86・・・が設けられている。本実施例では該取付孔86・86・・・は、ミッションケース31の左右外側に2箇所ずつ(電動モータ35Rの外側下方に2箇所、電動モータ35Lの外側下方に2箇所)、そして、ミッションケース31の上部に1箇所の合計5箇所配置している。そして、該取付孔86・86・・・の前面は、ミッションケース31の同一平面上に位置して本機取付面87を構成している。つまり、該取付孔86・86・・・は、ミッションケース31の前後方向中途部の同一平面上に設けられている。なお、取付孔84・84・・・および取付孔86・86・・・の位置は、本実施例に限定するものではない。
このような構成において、トランスミッション30は次のようにして取付フレーム83に取り付けられる。すなわち、トランスミッション30を取付フレーム83の開口部83aに後方から挿入し、取付フレーム83の取付孔84・84・・・と、ミッションケース31の取付孔86・86・・・を一致させて、トランスミッション30の本機取付面87と取付フレーム83のトランスミッション取付面89を当接させる。そして、取付孔84・84・・・からボルトを挿入して取付孔86・86・・・に螺装、または、ナットにより締め付けて、取付フレーム83にトランスミッション30を固定する。これにより、トランスミッション30の本機への取り付け、位置決めが容易となる。
次に、駐車ブレーキ81に係る構成について説明する。従来は、ブレーキが取り付けられている軸と車軸が前後(同じ高さ)に配置されていた。しかし、駐車ブレーキの位置が低いため、錆等の問題や雪によるブレーキレバー凍結の恐れがあった。そこで、図6等に示すように、駐車ブレーキ81を取り付ける軸(伝達軸61)と車軸21L・21Rを上下に配置し、駐車ブレーキ81をミッションケース上部に位置する軸に配置するように構成している。すなわち、前述のように車軸21L・21Rの直上方に位置する伝達軸61の左端には、伝達軸61の回転を制動するための駐車ブレーキ81が取り付けられている。駐車ブレーキ81は、伝達軸61に固定されているブレーキドラム81aと、ブレーキドラム81aに押し付けられ摩擦力によりその回転を止めるブレーキシュウ81b等から構成される。ブレーキシュウ81bは、ミッションケース31の側面に軸支されているブレーキレバー81cとリンク装置等を介して連結されており、このブレーキレバー81cをレバー軸81dを中心に下方に押し下げることにより、ブレーキシュウ81bがブレーキドラム81aに押し付けられて伝達軸61の回転が制動される。反対に、その状態からブレーキレバー81cをレバー軸81dを中心に上方に引き上げることにより、駐車ブレーキ81が解除される。なお、駐車ブレーキ81は、本実施例に示すドラム式に限定するものではない。これにより、駐車ブレーキ81を地面から遠ざけることにより、凍結や錆等から保護できる。