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JP4431226B2 - フェニルピリジルアミン誘導体 - Google Patents

フェニルピリジルアミン誘導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は有機化合物に関するものであり、詳細には、感光色素の耐光性改善剤として有用な新規フェニルピリジルアミン誘導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報記録及び情報表示の分野における新展開に伴い、例えば、情報記録の分野においては、レーザー作用を有する感光色素やレーザー光に感応する感光色素が、また、情報表示の分野においては、レーザー作用を有する感光色素に加えて、電界発光能を有する感光色素の需要が急増している。情報化時代と形容され、情報記録手段及び情報表示手段の高性能化、大記録容量化、小型化及び保存安定性が希求される昨今においては、光特性のより優れた感光色素に対する要望が以前にも増して強くなり、多種多様な感光色素が次々と開発されるようになった。ところが、感光色素は、総じて、耐光性が小さく、繰返し露光させたり発光させると、感光色素そのものが変化し、所期の性能を発揮し得ないこととなる。例えば、高密度な情報記録媒体として脚光を浴びているCD−R(コンパクトディスクを利用する追記形メモリ)、DVD−R(デジタルヴィデオディスクを利用する追記形メモリ)などの光記録媒体に頻用されるシアニン色素は、そのポリメチン鎖が再生光や環境光への露光により発生する一重項酸素によってたやすく酸化され、分解する。光記録媒体においては、最低10年間の寿命が要求されることから、その要求される寿命を達成すべく、感光色素に適用する耐光性改善剤の研究はこの分野が最も盛んである。
【0003】
シアニン色素におけるこの問題を解消すべく、従前より提案されているのは、色素を金属との錯体にするか、あるいは、色素の分子内にスクアリリウム環などの環状構造を導入する方法であるが、これらの方法は、いずれも、有機溶剤における色素の溶解性を著しく低下させることとなり、適用範囲や適用し得る量に克服し難い限界があった。特公平7−782号公報、特公平7−783号公報、特公平7−784号公報及び特公平7−76198号公報においては、シアニン色素の溶解性を低下させることなく耐光性を改善すべく、一重項酸素の捕捉剤として、例えば、ニトロソジフェニルアミン、ニトロソアニリン、ニトロソフェノール、ニトロソナフトールなどのニトロソ化合物を添加する方法が提案されている。しかしながら、これらのニトロソ化合物は、シアニン色素の耐光性を改善する効果はあるものの、依然として、光記録媒体の作製に頻用される有機溶剤における溶解性が低いうえに、色素との相溶性が充分でないことから、光記録媒体の作製に当って、色素の耐光性を改善し得る濃度まで添加すると、色素やニトロソ化合物の結晶が析出して作業性や製品の歩留りが低下してしまい、また、ニトロソ化合物の量を低めに設定すると、今度は、最終製品において所期の品質や特性を達成するのが困難になるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、感光色素に適用して、その望ましい光特性を実質的に損なうことなく耐光性を改善し得る、有機溶剤における溶解性と色素との相溶性に優れた有機化合物を提供することにある。なお、この発明でいう「感光色素」とは、光に感応する性質を具備する有機色素化合物全般を意味し、光に感応する性質が利用される、例えば、シアニン色素などのポリメチン系色素が重要な適用対象となる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意研究し、検索したところ、アミノピリジン骨格を有する化合物にp−ニトロソフェノール又はp−ニトロソフェニルアルキルエーテルを反応させる工程を経由する方法により得ることのできる一連のフェニルピリジルアミン誘導体は、シアニン色素をはじめとする感光色素に適用すると、その望ましい光特性を実質的に損なうことなく耐光性を改善し、再生光や環境光への露光に伴う劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を効果的に抑制し得ることを見出した。しかも、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、有機溶剤における溶解度が大きく、色素との相溶性にも優れているので、色素に高濃度で適用しても、自身晶出したり、色素の溶解性を損なわないことが判明した。この発明は、新規なフェニルピリジルアミン誘導体の創製と、その産業上有用な諸特性の発見に基づくものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
この発明は、前記の課題を、シアニン色素をはじめとする感光色素の耐光性を改善する性質を具備するフェニルピリジルアミン誘導体、とりわけ、化1で表されるフェニルピリジルアミン誘導体を提供することによって解決するものである。
【0007】
【化1】
Figure 0004431226
【0008】
化1において、R1は、水素原子、アラルキル基、アリール基、複素環基又は直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を表し、それらのアラルキル基、アリール基、複素環基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。R2は、水素原子、アシル基、エステル基、スルホニル基、アラルキル基、アリール基又は直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を表し、それらのアラルキル基、アリール基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。さらに、R1及びR2は、上述の定義にかかわりなく、それらが結合している窒素原子を含んで互いに環状構造を形成していてもよい。
【0009】
化1において、R1及びR2を通じてアラルキル基とは、メチレン基の個数が5まで、通常、1乃至3の範囲にあり、かつ、その一端に、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アントラキノニル基、カルバゾリル基、2−ピリジル基、2−キノリル基、2−テトラヒドロピラニル基、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル基、1,3−ジオキソラン−2−イル基、3,5−ジメチル−イソオキサゾール−4−イル基、3−ピペリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、1−ピペラジニル基、ピロリジン−1−イル基、1−メチル−2−ピロリジニル基、2−ベンゾイミダゾリル基、フタルイミド−1−イル基、5−ウラシル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基などの単環式若しくは多環式の飽和若しくは不飽和の炭化水素又は複素環の1価基を結合してなるものであって、それらの1価基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アジド基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、あるいは、直鎖状又は環状若しくは分岐を有する短鎖長のアルキル基若しくはハロアルキル基を1又は複数有していてもよい。また、R1及びR2を通じてアリール基とは、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの単環式若しくは多環式の芳香族炭化水素の1価基であって、それらの1価基はハロゲン原子、アルコキシ基、あるいは、直鎖状又は分岐若しくは環状構造を有する短鎖長のアルキル基を1又は複数有していてもよい。さらに、R1及びR2を通じてアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基などの炭素数20まで、望ましくは、炭素数1乃至18の直鎖状若しくは分岐を有する短鎖長若しくは中鎖長のアルキル基であって、これらのアルキル基は、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基などの置換基を1又は複数有していてもよい。
【0010】
また、化1に関連して、R1における複素環基とは、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピペリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、クマリン環などの複素原子を含む単環式若しくは多環式の飽和若しくは不飽和の五員環乃至十員環の1価基を意味し、それらの1価基は、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、あるいは、短鎖長のアルキル基又はハロアルキル基を1又は複数有していてもよい。R2におけるエステル基とは、アルキル蟻酸やアリール蟻酸などの蟻酸誘導体から派生するエステル基であって、そのアリール蟻酸は複素原子を含んでいてもよい。また、R2におけるスルホニル基とは、アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基のいずれかであって、そのアリールスルホニル基は複素原子を含んでいてもよい。さらに、R2におけるアシル基とは、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、ピリジンカルボニル基、チオフェンカルボニル基、チオフェンアセチル基、フロイル基などの、短鎖長のアルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基であって、そのアリールカルボニル基は複素原子を含んでいてもよい。
【0011】
さらに、化1に関連して、R1及びR2は、上述の定義にかかわりなく、それらが結合している窒素原子を含んで互いに環状構造を形成していてもよく、その環状構造は、例えば、メチル基、エチル基などの短鎖長アルキル基を1又は複数有していてもよい。斯かる環状構造としては、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピロリン環、ピロール環、ピラゾール環、チオモルホリン環、ピペラジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、テトラヒドロキノリン環、インドール環、プリン環などの単環式若しくは多環式の飽和若しくは不飽和の五員環乃至十員環が挙げられる。なお、その環状構造がさらに別の窒素原子を含んでなる場合には、その窒素原子には、例えば、水素原子、酸素原子(N−オキシル基)、メチル基、フェニル基、ベンジル基、2−ピリジル基などが結合していてもよい。
【0012】
この発明の望ましいフェニルピリジルアミン誘導体としては、例えば、化3乃至化57で表される化合物が挙げられる。これらは、いずれも、有機溶剤における溶解性に優れ、しかも、シアニン色素をはじめとする感光色素に適用すると、その望ましい光特性を実質的に損なうことなく耐光性を改善する性質が顕著である。
【0013】
【化3】
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【0014】
【化4】
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【0015】
【化5】
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【0016】
【化6】
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【0017】
【化7】
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【0018】
【化8】
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【0019】
【化9】
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【0020】
【化10】
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【0021】
【化11】
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【0022】
【化12】
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【0023】
【化13】
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【0024】
【化14】
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【0025】
【化15】
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【0026】
【化16】
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【0027】
【化17】
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【0028】
【化18】
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【0029】
【化19】
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【0030】
【化20】
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【0031】
【化21】
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【0032】
【化22】
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【0033】
【化23】
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【0034】
【化24】
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【0035】
【化25】
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【0036】
【化26】
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【0037】
【化27】
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【0038】
【化28】
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【0039】
【化29】
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【0040】
【化30】
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【0041】
【化31】
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【0042】
【化32】
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【0043】
【化33】
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【0044】
【化34】
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【0045】
【化35】
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【0046】
【化36】
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【0047】
【化37】
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【0048】
【化38】
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【0049】
【化39】
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【0050】
【化40】
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【0051】
【化41】
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【0052】
【化42】
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【0053】
【化43】
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【0054】
【化44】
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【0055】
【化45】
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【0056】
【化46】
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【0057】
【化47】
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【0058】
【化48】
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【0059】
【化49】
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【0060】
【化50】
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【0061】
【化51】
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【0062】
【化52】
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【0063】
【化53】
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【0064】
【化54】
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【0065】
【化55】
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【0066】
【化56】
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【0067】
【化57】
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【0068】
この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は種々の方法により調製することができるが、経済性を重視するのであれば、アミノピリジン骨格を有する化合物にp−ニトロソフェノール又はp−ニトロソフェニルアルキルエーテルを反応させる工程を経由する方法が好適である。例えば、化1に対応するR及びRを有する化2で表される化合物をp−ニトロソフェノール又はp−ニトロソフェニルアルキルエーテルの存在下でそれぞれ脱水反応又は脱アルコール反応させると、この発明によるフェニルピリジルアミン誘導体が高収量で生成する。化3乃至化57で表されるフェニルピリジルアミン誘導体は、いずれも、これらの方法により容易に調製することができる。なお、化2で表されるアミノピリジン誘導体は、例えば、2−クロロ−5−ニトロピリジンに化1に対応するR1及びR2を有するアミンを反応させた後、生成物におけるニトロ基を還元することによって得ることができる。
【0069】
【化2】
Figure 0004431226
【0070】
斯くして得られるこの発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、用途によっては反応混合物のまま用いられることもあるが、通常、使用に先立って、例えば、分液、傾斜、抽出、濾過、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、結晶化、昇華などの、類縁化合物の精製に用いられる通常一般の方法により精製され、必要に応じて、これらの精製方法は組合せて適用される。なお、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を、例えば、光吸収剤として用いたり、光記録媒体、色素レーザー、銀塩写真などに用いる場合には、使用に先立って、蒸留、結晶化及び/又は昇華などの方法によって精製しておくのが望ましい。
【0071】
この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、シアニン色素をはじめとする感光色素に適用すると、その望ましい光特性を実質的に損なうことなく耐光性を改善し、自然光や人工光などの環境光への露光による色素の劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を効果的に抑制する。したがって、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、感光色素の耐光性改善剤として、斯かる環境光への露光による感光色素の望ましくない変化を嫌う諸分野において多種多様の用途を有することとなる。しかも、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体の多くは、シアニン色素などのポリメチン系色素との相溶性が高いうえに、従来公知の耐光性改善剤と比較して、有機溶剤における溶解性が格段に優れており、例えば、光記録媒体の分野で頻用される2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(以下、「TFP」と略記する。)においては、20℃で測定すると、多くのフェニルピリジルアミン誘導体が50mg/ml以上、誘導体によっては、200mg/ml以上にも達する大きな溶解度を示す。
【0072】
したがって、この発明による耐光性改善剤を最も有利に適用し得る分野は、例えば、CD−R、DVD−Rなどの光記録媒体の分野である。この発明による耐光性改善剤は、斯かる光記録媒体に頻用されるアミジニウムイオン発色団を有するポリメチン系色素、とりわけ、互いに独立した二つの塩基性複素環がアミジニウムイオン発色団における二つのN末端をそれぞれ含む形態で結合してなるシアニン色素に適用すると、光記録媒体において要求される色素の光特性を実質的に損なうことなく耐光性を顕著に改善する。したがって、シアニン色素などのポリメチン系色素と、感光色素の耐光性改善剤としてフェニルピリジルアミン誘導体を含んでなるこの発明による光記録媒体は、記録情報の再生に際して繰返し露光しても、記録面における未記録部分の反射率が低下し難いので、記録情報の読取エラーが発生し難い特徴がある。また、この発明による耐光性改善剤は、露光により特に分解し易いといわれている近赤外領域に吸収極大を有するシアニン色素や、吸収極大がより短波長の青色域にあるシアニン色素にも有効であることから、この発明による耐光性改善剤を用いることによって、光記録媒体に用い得るシアニン色素の選択肢を大いに広げることができる。
【0073】
そこで、この発明による耐光性改善剤の用途に関連して、光記録媒体における使用方法についてさらに説明すると、この発明による耐光性改善剤は光記録媒体に用いるに際して特殊な処理や操作を必要としないことから、この発明による光記録媒体は従来公知の光記録媒体に準じて作製することができる。例えば、記録層における反射率や光吸収率を調節すべく、光吸収剤としてのシアニン色素の複数を適宜組合せて配合し、さらに、この発明による耐光性改善剤の有効量とともに、必要に応じて、汎用のバインダー、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などの1又は複数を配合したうえで有機溶剤に溶解し、溶液を、例えば、噴霧法、浸漬法、ローラー塗布法、回転塗布法などの方法により基板の片面に均一に塗布し、乾燥させて記録層となるシアニン色素の薄膜を形成した後、必要に応じて、所定の反射率になるように、例えば、真空蒸着法、化学蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより、金、銀、銅、クロム、ニッケル、鉄、錫、アルミニウムなどの金属若しくはそれらの合金による記録層に密着する反射層を形成したり、傷、埃、汚れなどから記録層を保護する目的で、紫外線硬化樹脂などをさらに塗布し、光照射して硬化させることによって反射層に密着する保護層を形成する。
【0074】
感光色素としては、前述のとおり、ポリメチン系色素が望ましく、通常、メチン基が9個まで、望ましくは、1乃至7個からなるポリメチン鎖の両端に同種又は異種のチアゾリン骨格、インドレニン骨格、チアゾール骨格、α−ナフトチアゾール骨格、β−ナフトチアゾール骨格、2−キノリン骨格、4−キノリン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、ベンゾセレナゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格などを有する複素環が結合してなる、例えば、化58及び化59で表されるシアニン色素、メロシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキサノール色素、キサンテン色素、トリアリールメタン色素などが用いられる。なお、これらのポリメチン系色素における陰イオンは、色素の溶解性を勘案しながら適宜のものとすればよく、通常、六弗化燐酸イオン、ハロゲンイオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗化硼素酸イオンなどの無機酸イオンや、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオンなどの有機酸イオン、さらには、金属錯体イオンなどが採用される。
【0075】
【化58】
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【0076】
【化59】
Figure 0004431226
【0077】
耐光性改善剤としては、この発明による耐光性改善剤を単独で用いるか、あるいは、この発明の目的を逸脱しない範囲で、必要に応じて、公知の耐光性改善剤の1又は複数と組合せて用いる。併用し得る公知の耐光性改善剤としては、例えば、ニトロソジフェニルアミン、ニトロソアニリン、ニトロソフェノール、ニトロソナフトールなどのニトロソ化合物、同じ特許出願人による特願平11−163036号明細書(国際公開第00/75111号パンフレット、発明の名称「ホルマザン金属錯体」)に開示された発明によるホルマザンニッケル錯体、ビス[2´−クロロ−3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)ジチオベンジル]ニッケル(商品名『NKX−1199』、株式会社林原生物化学研究所製造)などの金属錯体、さらには、ジイモニウム化合物、テトラシアノキノジメタン誘導体などを含んでなるものが挙げられる。配合比としては、色素の種類と用途にもよるけれども、例えば、色素がポリメチン系色素である場合には、色素1モルに対して、この発明による耐光性改善剤をフェニルピリジルアミン誘導体の量に換算して0.001乃至10モル、望ましくは、0.005乃至5モルの範囲で加減しながら含有せしめる。色素の種類によっては、耐光性改善剤がこの範囲を下回ると耐光性改善効果が顕現せず、反対に、この範囲を上回ると色素の色濃度が低下することがあり、通常、上述の範囲で用いるのが望ましい。
【0078】
この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、諸種の有機溶剤において良好な溶解性を発揮するので、感光色素とともに基板に塗布するための有機溶剤にも特に制限がない。したがって、この発明による光記録媒体の作製に当っては、光記録媒体の作製に頻用されるTFPか、あるいは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン、イソオクタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジアセトンアルコールなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、フルフラール、アセトン、1,3−ジアセチルアセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、燐酸トリメチルなどのエステル類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミドなどのアミド類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、エチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリドンなどのアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物をはじめとするTFP以外の汎用の有機溶剤から選択し、必要に応じて、これらを適宜混合して用いる。
【0079】
とりわけ、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、例えば、TFPやエチルセロソルブ、ジアセトンアルコールなどの蒸発し易い有機溶剤における溶解度が大きいので、斯かる溶剤にこの発明のフェニルピリジルアミン誘導体を溶解し、基板に塗布しても、乾燥後、感光色素やフェニルピリジルアミン誘導体の結晶が付着したり、記録層の膜厚や表面が不均一になることがない。また、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体の多くは、非ハロゲン溶剤である、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、さらには、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノンなどのケトン類において良好な溶解性を発揮する。この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を斯かる非ハロゲン溶剤に溶解して基板に塗布するときには、溶剤によって基板を傷めたり、環境を汚染し難い実益がある。
【0080】
基板も汎用のものでよく、通常、圧出成形法、射出成形法、圧出射出成形法、フォトポリマー法(2P法)、熱硬化一体成形法、光硬化一体成形法などにより適宜の材料を最終用途に応じて、例えば、直径12cm、厚さ0.6mm又は1.2mmのディスク状に形成し、これを単板で用いるか、あるいは、粘着シートなどにより適宜貼合せて用いる。基板の材料としては、ガラス、セラミックのほかに、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン(スチレン共重合物)、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート・ポリスチレン−アロイ、ポリエステルカーボネート、ポリフタレートカーボネート、ポリカーボネートアクリレート、非晶性ポリオレフィン、メタクリレート共重合物、ジアリルカーボネートジエチレングリコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのプラスチックが用いられ、通常、ポリカーボネートが頻用される。プラスチック製基板の場合、同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部は、通常、成形の際にトラック内周に転写される。
【0081】
この発明による耐光性改善剤は、通常、光吸収剤としてのシアニン色素とともに前述のごとき有機溶剤の溶液にして、乾燥後の記録層の厚みが10乃至1,000nm、望ましくは、20乃至500nmになるように基板に均一に塗布される。なお、溶液の塗布に先立って、基板の保護や接着性の改善などを目的に、必要に応じて、基板に下引層を設けてもよく、下引層の材料としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、シリコン、液状ゴムなどの高分子物質が挙げられる。また、バインダーを用いる場合には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ニトロセルロース、シアノエチルプルラン、メチルビニルエーテル、塩素化パラフィン、無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、キシレン樹脂などのポリマーが単独又は組合せて、重量比で、シアニン色素の0.001乃至2倍用いられる。
【0082】
この発明による光記録媒体の使用方法について説明すると、斯くして得られるこの発明によるCD−R、DVD−Rなどの形態の光記録媒体は、書込光、読取光として、例えば、AlGaInP系、GaAsP系、GaAlAs系、InGaP系、InGaAsP系若しくはInGaAlP系の半導体レーザー、あるいは、第二高調波発生素子(SHG素子)と組合せたYAGレーザーなどによる波長600乃至830nmのレーザー光を用いて諸種の情報を高密度に書き込み、読み取ることができる。書込、読取の際のレーザー出力について言えば、この発明の耐光性改善剤と組合せて用いるシアニン色素の種類と配合量にもよるけれども、この発明による光記録媒体においては、情報を書き込むときのレーザー出力は、ピットが形成されるエネルギーの閾値を越えて比較的強めに、一方、書き込んだ情報を読み取るときの出力は、その閾値を下回って比較的弱めに設定するのが望ましい。一般的には、1mW以上の出力、通常、3乃至30mWの範囲で書き込み、読取は1mWを下回る出力、通常、0.1乃至0.5mWの範囲で加減する。記録された情報は、光ピックアップにより、光記録媒体の記録面におけるピットとピットが形成されていない部分の反射光量又は透過光量の変化を検出することによって読み取る。
【0083】
この発明による光記録媒体は、文字情報、画像情報及び音声情報を高密度に記録することができるので、文書、データ及びコンピュータープログラムを管理するための民生用及び業務用記録媒体として極めて有用である。この発明による光記録媒体を用い得る個々の業種と情報の形態としては、例えば、建設・土木における建築・土木図面、地図、道路・河川台帳、アパチュアカード、建築物見取図、災害防止資料、配線図、配置図、新聞・雑誌情報、地域情報、工事報告書など、製造における設計図、成分表、処方、商品仕様書、商品価格表、パーツリスト、メンテナンス情報、事故・故障事例集、苦情処理事例集、製造工程表、技術資料、デッサン、ディテール、自社作品集、技術報告書、検査報告書など、販売における顧客情報、取引先情報、会社情報、契約書、新聞・雑誌情報、営業報告書、企業信用調査、在庫一覧など、金融における会社情報、株価記録、統計資料、新聞・雑誌情報、契約書、顧客リスト、各種申請・届出・免許・許認可書類、業務報告書など、不動産・運輸における物件情報、建築物見取図、地図、地域情報、新聞・雑誌情報、リース契約書、会社情報、在庫一覧、交通情報、取引先情報など、電力・ガスにおける配線・配管図、災害防止資料、作業基準表、調査資料、技術報告書など、医療におけるカルテ、病歴・症例ファイル、医療関係図など、塾・予備校におけるテキスト、問題集、教育用資料、統計資料など、大学・研究所における学術論文、学会記録、研究月報、研究データ、文献及び文献のインデックスなど、情報における調査データ、論文、特許公報、天気図、データ解析記録、顧客ファイルなど、法律における判例など、各種団体における会員名簿、過去帳、作品記録、対戦記録、大会記録など、観光における観光情報、交通情報など、マスコミ・出版における自社出版物のインデックス、新聞・雑誌情報、人物ファイル、スポーツ記録、テロップファイル、放送台本など、官庁関係における地図、道路・河川台帳、指紋ファイル、住民表、各種申請・届出・免許・許認可書類、統計資料、公共資料などが挙げられる。とりわけ、1回のみ書き込みできるこの発明による光記録媒体は、記録情報が改竄されたり消去されてはならない、例えば、カルテや公文書の記録保存に加えて、美術館、図書館、博物館、放送局などの電子ライブラリーとして極めて有用である。
【0084】
この発明による光記録媒体のやや特殊な用途としては、コンパクトディスク、デジタルヴィデオディスク、レーザーディスク、MD(光磁気ディスクを用いる情報記録システム)、CDV(コンパクトディスクを利用するレーザーディスク)、DAT(磁気テープを利用する情報記録システム)、CD−ROM(コンパクトディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−ROM(デジタルヴィデオディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−RAM(デジタルヴィデオディスクを利用する書き込み可能な読取メモリ)、デジタル写真、映画、コンピューターグラフィック、出版物、放送番組、CM、ゲームソフトなどの編集、校正、さらには、大型コンピューター、カーナヴィゲーション用の外部プログラム記録手段としての用途が挙げられる。
【0085】
上記においては、この発明による耐光性改善剤の用途に関連して、光記録媒体における適用例を中心に説明したけれども、この発明の耐光性改善剤の用途は決して光記録媒体に限定されてはならない。この発明による耐光性改善剤は、光記録媒体に加えて、自然光や人工光などの環境光への露光による感光色素の劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を嫌う、例えば、光重合性組成物、写真、色素レーザー、電界発光素子、情報表示装置用のパネル、フィルター及びスクリーン、プラスチック、ゴム、紙、布、木材、塗料、染料、増白剤、シンチレーター、蛍光分析試薬などにおいても極めて有利に用いることができる。とりわけ、この発明の耐光性改善剤を光照射によって重合性化合物を光化学的重合させるための光増感剤として用いられる感光色素、銀塩写真において露光の際の感光効率を調節するための化学増感剤として用いられる感光色素、さらには、色素レーザーにおいてレーザー作用物質として用いられる感光色素に適用するときには、それらの感光色素の耐光性を改善したり、光に対する感応性を調節することができる。
【0086】
さらに、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、その多くが紫外領域及び/又は可視領域に吸収極大を有することから、例えば、重合性化合物を可視光に露光させて重合するための光増感剤や、諸種の衣料を染色するための染色剤としても有用である。また、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を、必要に応じて、紫外領域、可視領域及び/又は赤外領域の光を吸収する他の光吸収剤の1又は複数とともに、衣料一般や、衣料以外の、例えば、ドレープ、レース、ケースメント、プリント、ベネシャンブラインド、ロールスクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団側地、布団カバー、布団綿、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、テント、自動車の内装材、ウインドガラス、窓ガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷、靴の内張地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ、照明装置や、例えば、ブラウン管ディスプレー、液晶ディスプレー、電界発光ディスプレー、プラズマディスプレーなどを用いるテレビ受像機やパーソナルコンピューターなどの画像表示装置用のパネル類、フィルター類及びスクリーン類、サングラス、サンルーフ、サンバイザー、PETボトル、貯蔵庫、ビニールハウス、寒冷紗、光ファイバー、プリペイドカード、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、さらには、これらの物品を包装、充填又は収納するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、生物や物品における自然光や人工光などの環境光による障害や不都合を防止したり低減できるだけではなく、物品の色彩、色調、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望の色バランスに整えることができる実益がある。
【0087】
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づき説明する。
【0088】
【実施例1】
〈フェニルピリジルアミン誘導体〉
2−ジエチルアミノ−5−アミノピリジン8.3g、2−ジエチルアミノ−5−アミノピリジン塩酸塩0.6g及び4−ニトロソフェネトール7.9gをエタノール50mlに溶解し、攪拌しながら、アルゴン気流下、室温にて4時間反応させた。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、得られた油状物約17gを充填剤としてシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、化4で表されるフェニルピリジルアミン誘導体の茶褐色結晶が3.6g得られた。
【0089】
デジタル熱分析計(商品名『TG/DTQ220型』、セイコウ電子工業株式会社製造)を用い、常法にしたがって測定したところ、本例のフェニルピリジルアミン誘導体の融点及び分解点はそれぞれ104.3℃及び177.8℃であり、また、メタノール中で紫外線吸収スペクトルを測定したところ、波長428nmに吸収極大が観察された。
【0090】
ちなみに、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、化3乃至化57で表されるものを含めて、誘導体によって仕込の条件や収率において若干の違いはあるものの、いずれも、実施例1の方法によるか、あるいは、実施例1の方法に準じて製造することができる。
【0091】
【実施例2】
〈フェニルピリジルアミン誘導体による耐光性改善〉
TFP3mlに、被験試料として実施例1の方法により得た化4で表されるフェニルピリジルアミン誘導体を2mg加え、さらに、化58及び化59で表されるシアニン色素をそれぞれ10mg及び5mg加えた後、室温下、超音波を5分間印加して溶解させた。次に、常法にしたがって、この溶液を研磨したガラス基板(5cm×5cm)の片面に一定量滴下し、基板を1,000rpmで1分間回転させることによって溶液をガラス基板状に均一に塗布した後、温風及び冷風をこの順序で送風して乾燥させた。
【0092】
その後、常法にしたがって、基板上の一定部位における波長640nm、660nm、680nm及び700nmにおける透過率(T0)をそれぞれ測定した後、ガラス基板に向けて冷風を送風しながら500Wキセノンランプに25分間露光し、同様の波長における同一部位の透過率(T)を再度測定した。これらの透過率T及びT0を測定波長ごとに数1に代入し、シアニン色素の残存率(%)をそれぞれ計算した。併行して、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体に代わる耐光性改善剤として化60及び化61で表される公知のニッケル錯体及びニトロソジフェニルアミン誘導体のいずれかを用いる系と、耐光性改善剤を一切用いない系をそれぞれ設け、これらを上記と同様に処置して対照とした(それぞれ「対照1」、「対照2」、「対照3」と言う)。結果を表1に示す。
【0093】
【数1】
Figure 0004431226
【0094】
【化60】
Figure 0004431226
【0095】
【化61】
Figure 0004431226
【0096】
【表1】
Figure 0004431226
【0097】
表1の測定結果に見られるとおり、対照3においては、僅か5分間の露光によって60%前後のシアニン色素が変化し、当初の光特性を発揮し得なくなっていたのに対して、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を用いる系並びに対照1及び対照2においては、いずれも、当初の94%を上回るシアニン色素が変化することなく残存していた。この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を用いる系と対照1、対照2を比較すると、化4で表されるフェニルピリジルアミン誘導体は、各測定波長において、対照1及び対照2と同等以上の耐光性改善を発揮し、とりわけ、光記録媒体において重要視される長波長域における改善が顕著であった。これらの結果は、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体がシアニン色素をはじめとする感光色素の耐光性改善剤として極めて有用であることを物語っている。
【0098】
【実施例3】
〈フェニルピリジルアミン誘導体の溶解性〉
実施例1の方法により得た化4で表されるフェニルピリジルアミン誘導体につき、常法にしたがってTFPにおける溶解度(20℃)を測定した。併行して、化61で表される公知のニトロソジフェニルアミン誘導体(「対照」と言う。)についても同様にして溶解度を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
Figure 0004431226
【0100】
表2の測定結果に見られるとおり、対照における溶解度が43mg/ml程度であったのに対して、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、それを遥かに上回る、極めて大きな溶解度(200mg/ml以上)を示した。TFPは、光記録媒体の分野において、光記録媒体の基板にシアニン色素などのポリメチン系色素を回転塗布する際に用いられる代表的な有機溶剤である。この発明のフェニルピリジルアミン誘導体がTFPにおいて斯くも顕著な溶解性を示したことは、この発明による耐光性改善剤がポリメチン系色素を用いるCD−R、DVD−Rなどの光記録媒体において極めて有利に用い得ることを物語っている。
【0101】
【実施例4】
〈光記録媒体〉
光吸収剤として化58及び化59で表されるシアニン色素をそれぞれ最終濃度2.7%(w/w)及び0.3%(w/w)になるようにTFPに加え、さらに、耐光性改善剤として実施例1の方法により得た化4で表されるフェニルピリジルアミン誘導体を濃度0.5%(w/w)になるように加えた後、超音波を印加して溶解した。この溶液を、常法にしたがって、トラック内周に同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部を転写しておいたポリカーボネート製のディスク状基板(直径12cm、厚さ1.2mm)の片面に均一に回転塗布し、乾燥して厚さ100nmの記録層を形成した。その後、基板に金を厚さ100nmまで蒸着して記録層に密着する反射層を形成し、さらに、その反射層に公知の紫外線硬化樹脂(商品名『ユニディックSD17』、大日本インキ化学工業株式会社製造)を均一に回転塗布した後、光照射することによって反射層に密着する保護層を形成してCD−Rを作製した。
【0102】
その後、柳沢秀一ら『日本化学会誌』、第10号、1,141乃至1,143頁(1992年)に記載された方法に準じて、発振波長780nmの半導体レーザーを用い、上述のようにして作製したCD−Rに矩形波を記録パワー8mWで書き込んだ後、再生パワー0.7mW(書込、読取とも、出力信号の周波数が720kHzになるように、ディスクの回転速度を線速度1.4m/秒に設定)で連続的に読み取りつつ、オシロスコープを用いて、再生された正弦波における1μmピット当りの振幅を経時的に読み取った。その読み取った振幅につき、読取を所定の回数繰返した時点における振幅の当初の振幅に対する比率(%)を計算し、光記録媒体におけるシアニン色素の耐光性改善の指標とした。併行して、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を省略する系を設け、これを上記と同様に処置して対照とした。結果を図1に示す。なお、図1において、「○印」を含む実線は、耐光性改善剤としてこの発明のフェニルピリジルアミン誘導体を用いるCD−Rにおける振幅の経時変化を、また、「□印」を含む実線は、耐光性改善剤を一切用いないCD−Rにおける振幅の経時変化を示す。
【0103】
図1の結果に見られるとおり、対照においては、読取回数が増すにしたがって振幅が明らかに低下し、1×106回読み取ると、当初の約60%にまで低下した。これに対して、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を用いるCD−Rは、1×106回再生し、記録情報を読み取っても、振幅の低下は僅少であった。しかも、本例のCD−Rは、対照と比較して、出力信号のレベルが一貫して有意に高く、読取エラーも皆無であった。また、電子顕微鏡を用いて本例のCD−Rの記録面を注意深く観察したところ、シアニン色素や耐光性改善剤の晶出は皆無であった。これらの結果は、光記録媒体において、この発明による耐光性改善剤が、シアニン色素などのポリメチン系色素の望ましい光特性を実質的に損なうことなく、再生光などの露光による色素の望ましくない変化を効果的に抑制するとともに、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体がポリメチン系色素と良好な相溶性を発揮することを物語っている。
【0104】
本例のCD−Rは600MBを越える記録容量を有し、波長780nmのレーザー光による光ピックアップを用いることにより、大量の文字情報、画像情報及び音声情報を高密度に書き込むことができる。当然のことながら、本例のCD−Rは光記録媒体一般に要求される耐用寿命を具備しており、一旦記録された情報は、繰返し再生したり長時間環境光にさらしても、10年以上に亙って正確に読み取ることができる。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明は、新規なフェニルピリジルアミン誘導体の創製と、そのフェニルピリジルアミン誘導体の産業上有用な諸特性の発見に基づくものである。この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、シアニン色素をはじめとする感光色素に適用すると、その望ましい光特性を実質的に損なうことなく耐光性を顕著に改善し、露光による感光色素の劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を抑制する。また、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、従来公知の耐光性改善剤に用いられる化合物、とりわけ、ニトロソ基を有するジフェニルアミン誘導体と比較して、有機溶剤における溶解性が格段に優れているうえに、シアニン色素などのポリメチン系色素との相溶性が格段に高い。
【0106】
したがって、斯かるフェニルピリジルアミン誘導体を含んでなるこの発明による耐光性改善剤は、感光色素におけるこれらの変化を嫌う、例えば、光記録媒体、光増感剤、化学増感剤、色素レーザー、電界発光素子、情報表示装置用のパネル、フィルター及びスクリーン、さらには、プラスチック、ゴム、紙、布、木材、塗料、増白剤、シンチレーター、蛍光分析用試薬などに極めて有利に適用することができる。とりわけ、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体を含んでなる光記録媒体は、繰返し再生したり長期間保存しても、記録情報の読取エラーが発生し難いことから、文字情報、画像情報及び音声情報を高密度に記録する保存性に優れた媒体として広範な用途を有する。
【0107】
さらに、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、その多くが紫外領域又は可視領域に吸収極大を有することから、光増感剤、化学増感剤、染色剤、光吸収剤として多種多様の物品において有利に用いることができる。なお、この発明のフェニルピリジルアミン誘導体は、アミノピリジン骨格を有する化合物にp−ニトロソフェノール又はp−ニトロソフェニルアルキルエーテルのいずれかを反応させる工程を経由する方法により所望量を容易に製造することができる。
【0108】
斯くも顕著な作用効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CD−Rにおけるこの発明の耐光性改善剤の効果を示す図である。

Claims (4)

  1. 化1で表されるフェニルピリジルアミン誘導体。
    Figure 0004431226
    化1において、R1は、水素原子、アラルキル基、アリール基、複素環基又は直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を表し、それらのアラルキル基、アリール基、複素環基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。R2は、水素原子、アシル基、エステル基、スルホニル基、アラルキル基、アリール基又は直鎖状若しくは分岐を有するアルキル基を表し、それらのアラルキル基、アリール基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。さらに、R1及びR2は、上述の定義にかかわりなく、それらが結合している窒素原子を含んで互いに環状構造を形成していてもよい。
  2. 2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールにおける溶解度が、20℃で測定すると、50mg/ml以上である請求項1に記載のフェニルピリジルアミン誘導体。
  3. 感光色素の耐光性を改善する性質を有する請求項1又は2に記載のフェニルピリジルアミン誘導体。
  4. 化1に対応するR1及びR2をそれぞれ有する化2で表されるアミノピリジン骨格を有する化合物にp−ニトロソフェノール及びp−ニトロソフェニルアルキルエーテルのいずれかを反応させる工程を経由する請求項1乃至3に記載のフェニルピリジルアミン誘導体の製造方法。
    Figure 0004431226
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