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JP4420609B2 - インクジェット記録材料 - Google Patents

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JP4420609B2
JP4420609B2 JP2003048639A JP2003048639A JP4420609B2 JP 4420609 B2 JP4420609 B2 JP 4420609B2 JP 2003048639 A JP2003048639 A JP 2003048639A JP 2003048639 A JP2003048639 A JP 2003048639A JP 4420609 B2 JP4420609 B2 JP 4420609B2
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幸雄 徳永
周三 木下
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用記録材料に関し、詳しくは光沢、インク吸収性及び耐傷性に優れたインクジェット用記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙支持体上に非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の親水性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を親水性バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0004】
特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報等公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。また、特開平11−321079号、特開2001−80204号公報には、気相法シリカをカチオン性化合物の存在下で分散したスラリーを用いることが開示されている(特許文献1)。
【0005】
特開平9−286165号、同平10−181190号公報には、沈降法シリカを機械的手段で粉砕したシリカ微粒子を用いることが開示されている(特許文献2)。
【0006】
上記したような気相法シリカあるいは粉砕したシリカ微粒子は、粒子径が小さいので、高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特長がある。しかしその反面、粒子径が小さい故にインク受容層表面に傷が発生しやすく、かつその傷が目立ちやすいという問題がある。
【0007】
一方、インクジェット用記録材料の支持体としては、従来、紙が一般的に用いられており、紙自体にインク吸収層としての役割を持たせていた。近年、フォトライクの記録シートが要望される中、紙支持体を用いた記録シートは、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題があり、耐水性加工された紙支持体、例えば、紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂ラミネート紙(ポリオレフィン樹脂被覆紙)、プラスチックフィルム等が用いられるようになってきた。しかしながら、これらの耐水性支持体を用いたインクジェット記録材料は、紙支持体を用いたインクジェット記録材料に比べて平滑性が高いために、裏面との擦れ等によってインク受容層面に傷が発生しやすいという問題がある。また、耐水性支持体はそれ自体、インク吸収能力が無いためにインク受容層のインク吸収容量を大きくしなければならず、そのためにはインク受容層の空隙率を高くしてかつインク受容層を厚く塗布する必要がある。空隙率を高くするためには無機微粒子に対する有機バインダーの比率を小さくしなければならず、有機バインダー量減によってインク受容層の皮膜が脆弱になり、益々傷が発生しやすくなる。この現象は特に凝集粒子の平均粒径が500nm以下の微粒子を用いたときに顕著になる。
【0008】
上記したような問題を解消する技術として、上層にコロイダルシリカを含有する層を設けることが提案されている。例えば、特開平6−183131号、特開平6−183134号、特開平7−101142号、特開平9−183267号、特開平10−71762号、特開平10−166715号、特開2000−33769号、特開2000−37944号、特開2000−108505号、特開2000−280609号、特開2001−10212号、特開2001−353957号公報等に記載されている(特許文献3、4)。しかしながら、コロイダルシリカ含有層を上層に単に設けるだけでは、光沢、インク吸収性及び耐傷性、更に均一な塗布面を同時に充分に満足させることはできなかった。
【0009】
また、上記した特開公報からも伺えるように、従来の一般的な製造方法としては、下層のインク受容層を塗布乾燥した後、上層のコロイダルシリカ含有層を塗布し乾燥するという、逐次塗布方法が採用されていた。本発明の目的の1つであるインク吸収性を高めるためには、比較的膜厚の大きいインク受容層と比較的膜厚の小さいコロイダルシリカ含有層の構成が好ましいことを確認しているが、この構成の場合、上記した従来の製造方法、即ち、予め塗布乾燥されたインク受容層の上にコロイダルシリカ含有層を塗布し乾燥するという方法では、充分な光沢と耐傷性が得られないことが分かった。また更にインク受容層の上に比較的薄層のコロイダルシリカ含有層を逐次塗布する方法は、均一な塗布面が得られにくいという問題があった。また、上記逐次塗布に代えて、インク受容層とコロイダルシリカ含有層を同時重層塗布しても、均一な塗布面が得られず、光沢及びインク吸収性も満足できるものではなかった。
【0010】
通常、インク受容層に用いられるシリカ微粒子は、高速ホモミキサー、高圧分散機、超音波分散機、ボールミル等で分散された分散液として用いられる。この場合、水を主体とする分散媒中にシリカ微粒子を分散する方法が一般的である。気相法シリカの分散についても同様である。従来の一般的なインク受容層の塗布液の製造方法は、このようにして分散されたシリカ微粒子とポリビニルアルコールのような親水性バインダー、及びカチオン性ポリマー、界面活性剤、架橋剤等を混合し、必要に応じて再度分散機で分散して製造される。このようにして製造されたインク受容層の塗布液とコロイダルシリカ含有層の塗布液を積層して得られたインクジェット記録材料は、塗布方式にかかわらず耐傷性、光沢、インク吸収性及び均一な塗布面において十分に満足するものが得られなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−80204号公報(第2、4頁)
【特許文献2】
特開平10−181190号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】
特開2000−37944号公報(第2、4頁)
【特許文献4】
特開2001−10212号公報(第2、13頁)
【特許文献5】
特開2001−353957号公報(第2、4、6、14頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、光沢、インク吸収性及び耐傷性に優れ、かつ塗布面の均一なインクジェット記録材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、耐水性支持体上に、少なくとも1層のカチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層と、コロイダルシリカ含有層の全固形分に対して60質量%以上のコロイダルシリカを含有し、更にコロイダルシリカの固形分塗布量が0.3〜3.0g/m である層とをこの順に有するインクジェット記録材料であって、前記カチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層が、平均一次粒子径が5〜50nmの気相法シリカを水を主体とする分散媒中でカチオン性化合物の存在下で平均粒子径が500nm以下になるように分散せしめた微粒子、あるいは平均二次粒子径が1μm以上の湿式法シリカを水を主体とする分散媒中でカチオン性化合物の存在下で平均粒子径が500nm以下になるように粉砕せしめた微粒子を主体に含有するインク受容層であり、前記コロイダルシリカ含有層が、カチオン性コロイダルシリカを含有するか、またはカチオン性化合物を含有するコロイダルシリカ含有層であり、前記インク受容層と前記コロイダルシリカ含有層とを同時重層塗布して製造されたことを特徴とするインクジェット記録材料によって達成された。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録材料は、カチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層を少なくとも1層有する。ここで無機微粒子を主体に含有するとは、インク受容層における全固形分に対して前記無機微粒子を50質量%以上含有することであり、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは65質量%以上であり、上限は95質量%程度である。また、インク受容層における無機微粒子の塗布量は、8〜40g/m2が好ましく、10〜35g/m2の範囲がより好ましく、特に15〜30g/m2が好ましい。
【0015】
本発明に用いられるアニオン性の無機微粒子とは、表面がアニオン性の無機微粒子であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、合成シリカ等が挙げられる。本発明においてカチオン化するとは、アニオン性の無機微粒子の表面をカチオン性に変換することである。
【0016】
本発明に用いられるアニオン性無機微粒子としては、合成シリカが好ましい。合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式法シリカに大別することができる。
【0017】
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0018】
湿式法シリカは、製造方法によって更に沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造される。製造過程で粒子成長したシリカ粒子は、凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば日本シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。
【0019】
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販さている。
【0020】
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。本発明においては、このコロイダルシリカは、インク受容層の無機微粒子として用いられず、インク受容層の上に塗設されるコロイダルシリカ含有層に用いられる。
【0021】
上述したように本発明のインク受容層に用いられるアニオン性無機微粒子の好ましい合成シリカは、気相法シリカ、沈降法シリカ、あるいはゲル法シリカである。
【0022】
次に、上記したアニオン性無機微粒子のカチオン化処理について説明する。まず、気相法シリカのカチオン化処理について説明する。気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で分散することによってカチオン化される。
【0023】
気相法シリカの分散工程は、分散媒に気相法シリカを添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液を分散装置で分散する二次分散工程からなる。
【0024】
一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。二次分散工程に用いられる分散装置としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、ボールミル等が用いられる。特に、二次分散工程に用いられる分散装置としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機が好ましく、例えば特開平10−310416号、特開2000−239536号、特開2001−207078号公報に記載されている圧力式分散方法を用いることができる。
【0025】
本発明において、気相法シリカをカチオン性化合物の存在下で分散するとは、少なくとも二次分散工程における分散時には、カチオン性化合物が存在すること意味する。好ましくは、二次分散工程の開始前にカチオン性化合物を添加することであり、より好ましくは、一次分散工程で用いられる分散媒に予めカチオン性化合物を添加しておくことである。更に好ましくは、一次分散工程において、カチオン性化合物を含有する分散媒中に、気相法シリカを粉体の状態で添加し混合することである。分散媒に粉体の気相法シリカを混合する装置としては、フロー式連続吸引混合攪拌機を用いることができる。上記した気相法シリカの分散方法を用いることによって、気相法シリカの濃度が18質量%以上、更には19質量%以上の高濃度シリカスラリーの製造が可能となる。
【0026】
気相法シリカの分散に用いられる分散媒は水を主体とするが、少量の有機溶剤(エタノール等の低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。
【0027】
上記した気相法シリカのカチオン化処理のための分散工程では、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤(硬膜剤)は含まない状態で分散される。気相法シリカがカチオン化された後は、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤を添加して再度高圧ホモジナイザー等で分散してもよい。
【0028】
本発明に用いられる気相法シリカは、平均一次粒子径が5〜50nmのものが好ましい。より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつBET法による比表面積が90〜400m2/gの気相法シリカが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0029】
上記のようにしてカチオン化された気相法シリカは、数nm〜数十nmの一次粒子が網目構造あるいは鎖状につながりあって二次的に凝集した状態で存在する。この凝集粒子の平均粒径が500nm以下になるまで分散されるのが好ましく、より好ましくは300nm〜50nmになるまで分散される。ここで、凝集粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0030】
次に、湿式法シリカのカチオン化処理について説明する。ここで用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカである。これらの湿式法シリカの平均粒径(平均二次粒子径)は、通常1μm以上である。本発明は、これらの湿式法シリカを、平均粒径が500nm以下になるまで粉砕する。好ましくは、平均粒径が300nm以下になるまで粉砕する。この粉砕する過程で、シリカ微粒子をカチオン化する。粉砕された湿式法シリカの粒子径は、前述したように透過型電子顕微鏡あるいはレーザー散乱式の粒度分布計で求めることができる。
【0031】
湿式法シリカの粉砕工程は、分散媒にシリカ微粒子を添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液中のシリカを粉砕する二次分散工程からなる。一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。湿式法シリカの粉砕方法としては、分散媒中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルが好ましく用いられる。
【0032】
本発明において、湿式法シリカをカチオン性化合物の存在下で粉砕するとは、少なくとも粉砕工程(二次分散工程)には、カチオン性化合物が存在すること意味する。好ましくは、粉砕工程の開始前にカチオン性化合物を添加することであり、より好ましくは、一次分散工程で用いられる分散媒に予めカチオン性化合物を添加しておくことである。更に好ましくは、一次分散工程において、カチオン性化合物を含有する分散媒中に、湿式法シリカを粉体の状態で添加し混合することである。分散媒に粉体の湿式法シリカを混合する装置としては、フロー式連続吸引混合攪拌機を用いることができる。
【0033】
湿式法シリカの分散に用いられる分散媒は水を主体とするが、少量の有機溶剤(エタノール等の低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。
【0034】
上記した湿式法シリカのカチオン化処理のための粉砕工程では、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤(硬膜剤)は含ませない。湿式法シリカがカチオン化された後は、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤を添加して再度高圧ホモジナイザー等で分散してもよい。
【0035】
本発明に用いられる湿式法シリカは、平均粒子径(平均二次粒子径)が5μm以上のものが好ましい。比較的大きな粒子径のシリカを粉砕することによって、より高濃度での分散が可能となる。本発明に用いられる湿式法シリカの平均粒子径の上限は特に制限されないが、通常湿式法シリカの平均粒子径は200μm以下である。
【0036】
本発明のインク受容層に用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカが好ましい。前述したように、沈降法シリカは、その二次粒子が緩やかな凝集粒子であるので、粉砕するのに好適である。
【0037】
本発明において、アニオン性無機微粒子をカチオン化するのに用いられるカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、あるいはシランカップリング剤が用いられる。これらのカチオン性化合物の中でも特にカチオン性ポリマー及び水溶性多価金属化合物が好ましく、特にカチオン性ポリマーが好ましい。
【0038】
本発明に用いられるカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム基、ホスホニウム基、あるいは1〜3級アミンの酸付加物を有する水溶性カチオン性ポリマーが挙げられる。例えば、ポリエチレンイミン、ポリジアルキルジアリルアミン、ポリアリルアミン、アリキルアミンエピクロルヒドリン重縮合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号、WO99/64248号公報等に記載されたカチオン性ポリマーが挙げられる。本発明に用いられるカチオン性ポリマーの重量平均分子量は10万以下が好ましく、より好ましくは5万以下であり、特に好ましくは2千〜3万程度である。
【0039】
上記カチオン性ポリマーの中でも、特にポリジアリルアミン誘導体の構成単位を有するカチオン性ポリマーが好ましく、下記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を構成単位とするカチオン性ポリマーである。これらのカチオン性ポリマーは、シャロールDC902P(第一工業製薬)、ジェットフィックス110(里田化工)、ユニセンスCP−101〜103(センカ)、PAS−H(日東紡績社)として市販されている。
【0040】
【化1】
Figure 0004420609
【0041】
【化2】
Figure 0004420609
【0042】
【化3】
Figure 0004420609
【0043】
【化4】
Figure 0004420609
【0044】
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)において、R1及びR2は各々、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、またはヒドロキシエチル基等の置換アルキル基を表し、Yはラジカル重合可能なモノマー(例えば、スルホニル、アクリルアミド及びその誘導体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等)を表す。また、一般式(3)及び(4)において、n/m=9/1〜2/8、l=5〜10000である。Xはアニオンを表す。
【0045】
一般式(3)又は(4)で示されるポリジアリルアミンの誘導体の具体的な例としては、特開昭60−83882号公報記載のSO2基を繰り返し単位に含む もの、特開平1−9776号公報に記載されているアクリルアミドとの共重合体等が挙げられる。
【0046】
本発明において、カチオン性ポリマーの使用量は無機微粒子に対して1〜10質重%の範囲が好ましい。
【0047】
本発明に用いられる水溶性多価金属化合物としては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、チタン、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンが挙げられ、これらの金属の水溶性塩として用いることができる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩化チタン、硫酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。これらの中でも特に、アルミニウムあるいは周期表IVa族元素(ジルコニウム、チタン)の水溶性塩が好ましい。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0048】
上記以外の水溶性アルミニウム化合物として、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の一般式5、6又は7で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0049】
[Al2(OH)nCl6-nm ・・一般式5
[Al(OH)3nAlCl3 ・・一般式6
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n ・・一般式7
【0050】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。これらの塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、特公平3−24907、同平3−42591号公報にも記載されている。
【0051】
上記した水溶性多価金属塩化合物の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0052】
本発明に用いられるシランカップリング剤としては、特開2000−233572号公報に記載されており、それらの中からカチオン性のものを用いることができる。シランカップリング剤の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0053】
本発明において、インク受容層には皮膜としての特性を維持するために有機バインダーを含有するのが好ましい。有機バインダーとしては、各種水溶性ポリマーあるいはポリマーラテックスが好ましく用いられる。水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル系等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい有機バインダーは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0054】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0055】
また有機バインダーとして用いられるポリマーラテックスとしては、例えば、アクリル系ラテックスとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基等のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、アクリルアミド、アクリル酸及びメタクリル酸等の単独重合体または共重合体、あるいは上記モノマーと、スチレンスルホン酸やビニルスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン等との共重合体が挙げられる。オレフィン系ラテックスとしては、ビニルモノマーとジオレフィン類のコポリマーからなるポリマーが好ましく、ビニルモノマーとしてはスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等が好ましく用いられ、ジオレフィン類としてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0056】
本発明のインク受容層において、有機バインダーを無機微粒子に対して5〜35質量%の範囲で用いるのが好ましく、特に10〜30質量%の範囲で用いるのが好ましく、更に10〜27質量%の範囲で用いるのが好ましい。このように、有機バインダーの比率を低くすることによってインク吸収性が向上する。
【0057】
インク受容層における有機バインダーの比率は、用いられる無機微粒子の種類によって好ましい範囲が適宜選択される。インク受容層に気相法シリカを用いる場合は、有機バインダーの比率は、気相法シリカに対して15〜30質量%が好ましく、16〜27質量%の範囲がより好ましく、特に17〜25質量%の範囲が好ましい。インク受容層に湿式法シリカを用いる場合は、有機バインダーの比率は、湿式法シリカに対して10〜20質量%の範囲が好ましく、特に12〜19質量%の範囲が好ましい。
【0058】
本発明において、インク受容層に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは有機バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0059】
本発明において、インク受容層には、有機バインダーとともに硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する有機バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0060】
インク受容層には、更に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。また、本発明のインク受容層の塗布液のpHは、3.3〜6.0の範囲が好ましく、特に3.5〜5.5の範囲が好ましい。
【0061】
本発明のインクジェット記録材料は、上記したインク受容層の上に更にコロイダルシリカを主体に含有する層(以降、コロイダルシリカ含有層と称す)を有する。このコロイダルシリカ含有層は、最表面の層(最外層)であることが好ましい。更に、コロイダルシリカ含有層は、前記したインク受容層と隣接することが好ましい。
【0062】
コロイダルシリカ含有層は、コロイダルシリカとしてカチオン性コロイダルシリカを含有する層であるか、もしくはコロイダルシリカの種類に係わらずカチオン性化合物を含有する層である。
【0063】
本発明に用いられるコロイダルシリカは、前述したように、湿式法シリカに属するもので、ゾル法によって合成されたシリカである。具体的には、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化珪素をコロイド状に水中に分散させたものであり、平均一次粒径が数nm〜100nm程度の湿式法合成シリカである。
【0064】
コロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)社からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−20L、ST−O、ST−OL、ST−S、ST−XS、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL等が市販されている。これらのコロイダルシリカは、通常アニオン性である。
【0065】
本発明に用いられるカチオン性コロイダルシリカは、例えばケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカに、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ジルコニウムイオン等の多価金属イオンを反応させて得られたものであり、特公昭47−26959号公報にはアルミニウム処理によるカチオン性コロイダルシリカが開示されている。市販されているカチオン性コロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)社のスノーテックスST−AK−L、ST−UP−AK、ST−AK、ST−PS−M−AK、ST−AK−YL等がある。
【0066】
本発明に用いられるコロイダルシリカは、インク吸収性及び光沢の観点から平均一次粒子径が10〜100nmの範囲のものが好ましく、特に30〜100nmの範囲のものが好ましい。更に平均一次粒子径の異なる2種類以上のコロイダルシリカを併用することができる。この場合、平均一次粒子径が30nm以上〜60nm未満のコロイダルシリカと平均一次粒子径が60nm以上〜100nm以下のコロイダルシリカを組み合わせて用いるのがより好ましい。また、球状粒子が連結して鎖状となった場合には平均粒径が40〜200nm、好ましくは40〜160nm程度のものが使用される。
【0067】
コロイダルシリカ含有層は、コロイダルシリカを主体に含有する。ここでコロイダルシリカを主体に含有するとは、コロイダルシリカ含有層の全固形分に対してコロイダルシリカを60質量%以上含有することであり、好ましくは70質量%以上、更には80質量%以上含有することである。
【0068】
コロイダルシリカ含有層におけるコロイダルシリカの固形分塗布量は、0.1〜8.0g/m2が好ましく、0.3〜5.0g/m2の範囲がより好ましく、特に0.5〜3.0g/m2の範囲が好ましい。これによって、インク受容層のインク吸収性を低下させずに、光沢性及び耐傷性の一段の改良が図られる。
【0069】
本発明において、コロイダルシリカ含有層は、コロイダルシリカとしてカチオン性コロイダルシリカを含有する層であるか、もしくはコロイダルシリカの種類に係わらずカチオン性化合物を含有する層である。前者の場合は、前述したカチオン性コロイダルシリカを主体に含有する。後者の場合は、コロイダルシリカの種類は限定されないが、特にアニオン性コロイダルシリカを用いたときに好ましく適用される。また、前者のカチオン性コロイダルシリカを主体に含有する層にカチオン性化合物を含有させても良い。
【0070】
後者の場合に用いられるカチオン性化合物としては、前述したアニオン性無機微粒子をカチオン化するのに用いたカチオン性化合物が用いられる。これらのカチオン性化合物の中でも、カチオン性ポリマー及び水溶性多価金属化合物が好ましく、特にカチオン性ポリマーが好ましい。カチオン性化合物の添加量は、コロイダルシリカに対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8.0質量%の範囲がより好ましく、特に0.5〜3質量%の範囲が好ましい。
【0071】
コロイダルシリカ含有層が、アニオン性コロイダルシリカとカチオン性化合物を含有する場合、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを添加する前に、予めアニオン性コロイダルシリカとカチオン性化合物を混合し、比較的高速回転の攪拌機、例えば、高速ホモミキサーあるいは高速回転ディスパーで充分に分散するのが好ましい。
【0072】
コロイダルシリカ含有層には、更に有機バインダーを含有するのが好ましい。有機バインダーはコロイダルシリカに対して10質量%以下で用いるのが好ましく、特に8質量%以下で用いるのが好ましく、下限は0.5質量%程度である。より好ましくは、有機バインダーをコロイダルシリカに対して1〜7質量%の範囲で用いることである。有機バインダーをこの範囲で含有させることによってインク吸収性を低下させずに耐傷性を向上させることができる。
【0073】
上記有機バインダーとしては、インク受容層に用いられる前述した有機バインダーを挙げることができる。これらの中でも特に好ましい有機バインダーは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0074】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0075】
コロイダルシリカ含有層には、有機バインダーとともに硬膜剤を用いることができる。硬膜剤としては、前述したインク受容層に用いられる硬膜剤を挙げることができる。これらの硬膜剤の中でも特に、ほう酸あるいはほう酸塩が好ましく用いられる。コロイダルシリカ含有層には、他に界面活性剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等を含有することができる。
【0076】
本発明において、コロイダルシリカ含有層の塗布液のpHは3.3〜6.0の範囲が好ましく、更にpH3.5〜5.5の範囲がより好ましい。
【0077】
前述したカチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層と、コロイダルシリカ含有層とを積層することによって、耐傷性、光沢性、及びインク吸収性が向上し、加えてインク受容層とコロイダルシリカ含有層との界面での凝集がなくなり、塗布ムラや光沢ムラが解消される。
【0078】
本発明において、インク受容層及びコロイダルシリカ含有層の塗布方法は、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)、あるいは多層同時重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)のいずれの方法であっても、本発明の効果は得られる。しかし、多層同時重層塗布方法が好ましく用いられる。
【0079】
従来、インク受容層とコロイダルシリカ含有層は逐次塗布(インク受容層を塗布乾燥後にコロイダルシリカ含有層を塗布乾燥する方法)するのが一般的であったが、コロイダルシリカ含有層におけるコロイダルシリカの塗布量が固形分で5g/m2以下の場合、更には3g/m2以下の場合に逐次塗布すると、コロイダルシリカ含有層の光沢性及び耐傷性の効果が十分に発揮されない場合がある。これは、塗布乾燥されたインク受容層の上に、薄層のコロイダルシリカ含有層を塗布した場合、インク受容層中の空隙にコロイダルシリカ含有層の塗布液が一部浸透し、均一なコロイダルシリカ含有層が得られないためと考えられている。また、インク受容層中の空隙に存在する空気が上層のコロイダルシリカ含有層の塗布液中に拡散して泡となって、クレーター状の塗布欠陥(クレーター状ハジキ)を発生させることもコロイダルシリカ含有層の均一塗布の障害になっていた。
【0080】
また、更に、インク受容層の無機微粒子として、平均粒子径が500nm以下になるまで分散あるいは粉砕された気相法シリカまたは湿式法シリカを用いた場合、インク受容層を一旦塗布乾燥した後、コロイダルシリカ含有層を塗布した場合、インク受容層が再度湿潤状態となって乾燥する過程で、インク受容層に微小なひび割れを生じさせる場合がある。
【0081】
上記したように、薄層のコロイダルシリカ含有層をインク受容層の塗布乾燥後に逐次塗布する場合の課題は、インク受容層とコロイダルシリカ含有層を同時重層塗布することによって解消する。しかしながら、従来から知られているインク受容層とコロイダルシリカ含有層を単に同時重層塗布しても本発明の目的とする効果は十分に得られず、本発明の構成によって初めて得られるものである。
【0082】
本発明において、コロイダルシリカ含有層の薄層塗布は、インク吸収性の点で好ましい。コロイダルシリカは、インク吸収性に劣るために、上層にコロイダルシリカ含有層を設ける場合は薄層の方が好ましい。その反面、コロイダルシリカは光沢及び耐傷性に優れており、均一な塗布面が形成できれば薄層であっても充分に高い光沢性及び耐傷性の効果が得られる。従って、インク吸収性、光沢、及び耐傷性を同時に高いレベルで満足させるためには、薄層のコロイダルシリカ含有層をインク受容層と同時重層塗布するのが極めて好ましいと言える。これらの効果を享受するためには、本発明の構成は必須である。
【0083】
本発明において、インク受容層は単一層であっても、複数の層から構成されていても良い。インク受容層が複数の場合は、カチオン化されかつ平均粒子径が500nm以下まで粉砕された湿式法シリカを含有するインク受容層(A)と、カチオン化されかつ平均粒子径が500nm以下まで分散された気相法シリカを含有するインク受容層(B)をこの順に設けるのが好ましい。更に、具体的に説明すると、インク受容層(A)の湿式法シリカの固形分塗布量は、15〜25g/m2で、インク受容層(B)の気相法シリカの固形分塗布量は、1〜8g/m2で、更にその上に設けられるコロイダルシリカ含有層(C)のコロイダルシリカの固形分塗布量は、0.5〜3g/m2の範囲が好ましい。
【0084】
本発明で使用される支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアサテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体が好ましい。これらの耐水性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは80〜260μmのものが用いられる。
【0085】
本発明に好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、ポリオレフィン樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、その含水率は特に限定しないが、カール性より好ましくは5.0〜9.0%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0%の範囲である。ポリオレフィン樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
【0086】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0087】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0088】
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
【0089】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0090】
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0091】
ポリオレフィン樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、基紙の両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。樹脂被覆層の厚みとしては、5〜50μmが適当である。
【0092】
本発明に用いられる耐水性支持体のインク受容層が塗設される側には、下引き層を設けるのが好ましい。この下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め耐水性支持体の表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/m2が好ましく、20〜300mg/m2がより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。支持体に下引き層を設けることによって、インク受容層塗布時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
【0093】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0094】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出被覆し、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70質量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30質量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0095】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作成した。尚、部とは質量部を表す。
【0096】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0097】
上記のようにして作製した支持体の下引き層を設けた面に下記組成のインク受容層塗布液、及びコロイダルシリカ含有層塗布液をスライドビードコーターで同時重層塗布した。インク受容層塗布液の湿分塗布量は220g/m2(気相法シリカの固形分塗布量は19.8g/m2)であり、コロイダルシリカ含有層塗布液の湿分塗布量は15g/m2(コロイダルシリカの固形分塗布量は1.2g/m2)である。
【0098】
<気相法シリカ分散液1の作製>
水 430部
変性エタノール 22部
ポリジアリルアミン誘導体のカチオン性ポリマー 3部
(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、平均分子量9000)
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
【0099】
分散媒の水と変性エタノールの中にカチオン性ポリマーを添加し、次いで気相法シリカを添加し予備分散して粗分散液を作製した。次にこの粗分散液を高圧ホモジナイザーで2回処理して、シリカ濃度が20質量%のカチオン化された気相法シリカの分散液を作製した。気相法シリカの平均粒子径は100nmであった。
【0100】
<インク受容層Aの塗布液>
気相法シリカ分散液1(気相法シリカの固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
界面活性剤 0.3部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM)
【0101】
気相法シリカ分散液1に、ポリビニルアルコール、ほう酸、及び界面活性剤を添加して高圧ホモジナイザーで再度分散してインク受容層塗布液を作製した。このインク受容層塗布液は、気相法シリカが9質量%の固形分濃度になるように調整し、更にpHが4.5になるように調整した。
【0102】
<気相法シリカ分散液2の作製>
水 430部
変性エタノール 22部
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
【0103】
分散媒の水と変性エタノールの中に気相法シリカを添加し予備分散して粗分散液を作製した。次にこの粗分散液を高圧ホモジナイザーで2回処理して、シリカ濃度が20質量%の気相法シリカ分散液を作製した。気相法シリカの平均粒子径は100nmであった。
【0104】
<インク受容層Bの塗布液>
気相法シリカ分散液2(気相法シリカの固形分として) 100部
ポリジアリルアミン誘導体のカチオン性ポリマー 3部
(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、平均分子量9000)
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 5部
界面活性剤 0.3部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM)
【0105】
気相法シリカ分散液2に、ポリジアリルアミン誘導体のカチオン性ポリマー、ポリビニルアルコール、ほう酸、及び界面活性剤を添加して、高圧ホモジナイザーで再度分散してインク受容層塗布液を作製した。このインク受容層塗布液は、気相法シリカが9質量%の固形分濃度になるように調整し、更にpHが4.5になるように調整した。
【0106】
<コロイダルシリカ含有層Aの塗布液>
コロイダルシリカ 100部
平均一次粒子径が40〜50nmのスノーテックスST−OL40と、平均一次粒子径が70nmのスノーテックスST−OZL(両者とも日産化学工業株式会社)との併用(併用比率;ST-OL40:ST-OZL=7:3)
カチオン性ポリマー;ポリフィックス601 1部
(昭和高分子社性、特殊変性ポリアミン)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM)
【0107】
上記のコロイダルシリカ含有層Aの塗布液は以下のようにして作製した。まずコロイダルシリカの濃度が10質量%になるように水を加えてコロイダルシリカ水溶液を調製し、このコロイダルシリカ水溶液を高速回転ディスパーで高速撹拌しながら0.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約1上昇させた後、カチオン性ポリマー(ポリフィックス601の10質量%溶液)を添加して更に10分間高速撹拌した。次いで、ポリビニルアルコール、界面活性剤を順に加えてコロイダルシリカ含有層Aの塗布液を作製した。この塗布液のコロイダルシリカの濃度は8質量%であり、塗布液のpHは4.0であった。
【0108】
<コロイダルシリカ含有層Bの塗布液>
コロイダルシリカ 100部
平均一次粒子径が10〜20nmのカチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業株式スノーテックスAK)と平均一次粒子径が60nmのカチオン性コロイダルシリカ(同社製のスノーテックスAK−YL)を比率7:3で併用
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM)
【0109】
カチオン性ポリマーを加えない以外は、コロイダルシリカ含有層Aと同様にして、上記組成に基づいて作製した。
【0110】
<コロイダルシリカ含有層Cの塗布液>
上記コロイダルシリカ含有層Aと同様に作製した。但し、カチオン性ポリマー(ポリフィックス601)を添加しなかった。
【0111】
上記のようにして作製したインク受容層の塗布液と、コロイダルシリカ含有層の塗布液とをそれぞれ、スライドビード塗布装置にて同時重層塗布して、表1に示す6種類のインクジェット記録材料を作製した。塗布後の乾燥条件は、塗布後すぐに10℃以下の雰囲気下で冷却しゲル化した後、30〜50℃の温風で乾燥した。このようにして作製した6種類の記録材料について、インク吸収性、光沢性、及び耐傷性を以下の方法でそれぞれ評価した。更に、塗布面のムラの発生程度も評価した。その結果を表1に示す。
【0112】
<インク吸収性>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−880Cで、Y、M、Cを混色印字し、インクの吸収状態及びモットリング(画像の濃淡むら)の発生状況を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:速やかにインクが吸収され、モットリングの発生はない。
○:インクの吸収はやや遅いが、モットリングの発生はない。
△:印字面にインクがやや溢れ、僅かにモットリングの発生が認められる。
×:印字面にインクが溢れ、明らかに認められる強いモットリングの発生がある。
【0113】
<光沢性>
記録材料の印字前の光沢感を斜光で観察し、下記の基準で評価した。
○:カラー写真並の高い光沢感が有る。
△:アート、コート紙並の光沢感が有る。
×:アート、コート紙並の光沢感がない。
【0114】
<耐傷性>
印字していない記録材料を表面を上に2枚重ね、その上に150gの分銅を置いた状態で下の記録材料を抜き出した後、インク受容層面の傷を目視で観察した。
○:傷が全く認められない。
△:傷が若干認められる。
×:傷が明確に認められる。
【0115】
<塗布面のムラ>
塗布面のムラの発生状況を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:塗布面にムラが全く認められない。
△:塗布面にムラが僅かに認められる。
×:塗布面にムラが明確に認められる。
【0116】
【表1】
Figure 0004420609
【0117】
実施例2
湿式法シリカを以下のようにして粉砕して、湿式法シリカ分散液1を作成した。
<湿式法シリカ分散液1>
カチオン性ポリマー(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー;シャロールDC902P)4部を水に溶解した分散媒中に、沈降法シリカ(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に、この予備分散液をビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズ、該ビーズの充填率80容量%、円盤周速10m/秒)に1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均粒子径200nmの湿式法シリカ分散液1を作製した。
【0118】
<インク受容層Cの塗布液>
湿式法シリカ分散液1 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 3部
【0119】
このインク受容層Cの塗布液は、湿式法シリカが15質量%の固形分濃度になるように調整し、更にpHが4.5になるように調整した。
【0120】
<湿式法シリカ分散液2>
前記湿式法シリカ分散液1のカチオン性ポリマーを除いた以外は同様にして作製した。
【0121】
<インク受容層Dの塗布液>
湿式法シリカ分散液2 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール 15部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
カチオン性ポリマー 4部
(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー;シャロールDC902P)
ほう酸 3部
【0122】
このインク受容層Cの塗布液は、湿式法シリカが15質量%の固形分濃度になるように調整し、更にpHが4.5になるように調整した。
【0123】
実施例1と同じ支持体の下引き層を設けた面に、上記のインク受容層塗布液、及び実施例1のコロイダルシリカ含有層塗布液をスライドビードコーターで同時重層塗布し、実施例1と同様に乾燥して、表2に示す6種類のインクジェット記録材料を作製した。インク受容層塗布液の湿分塗布量は147g/m2である(湿式法シリカの固形分塗布量は22.0g/m2)。コロイダルシリカ含有層塗布液の湿分塗布量は15g/m2である(コロイダルシリカの固形分塗布量は1.2g/m2)。
【0124】
上記のようにして作製したインクジェット記録材料について、実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
Figure 0004420609
【0126】
実施例3
実施例1と同じ支持体の下引き層を設けた面に、実施例2のインク受容層C塗布液、実施例1のインク受容層Aの塗布液、及び実施例1のコロイダルシリカ含有層の塗布液をこの順にスライドビードコーターで同時重層塗布し、実施例1と同様に乾燥して、表3に示す2種類のインクジェット記録材料を作製した。インク受容層Cの塗布液の湿分塗布量は133g/m2(湿式法シリカの固形分塗布量は20.0g/m2)、インク受容層Aの塗布液の湿分塗布量は44g/m2(気相法シリカの固形分塗布量は4.0g/m2)、コロイダルシリカ含有層塗布液の湿分塗布量は15g/m2(コロイダルシリカの固形分塗布量は1.2g/m2)である。
【0127】
上記のようにして作製したインクジェット記録材料について、実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0128】
【表3】
Figure 0004420609
【0129】
【発明の効果】
上記結果から、本発明の記録材料は、インク吸収性、光沢性、耐傷性、及び塗布ムラの全ての特性に優れていることが分かる。

Claims (1)

  1. 耐水性支持体上に、少なくとも1層のカチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層と、コロイダルシリカ含有層の全固形分に対して60質量%以上のコロイダルシリカを含有し、更にコロイダルシリカの固形分塗布量が0.3〜3.0g/m である層とをこの順に有するインクジェット記録材料であって、前記カチオン化されたアニオン性無機微粒子を主体に含有するインク受容層が、平均一次粒子径が5〜50nmの気相法シリカを水を主体とする分散媒中でカチオン性化合物の存在下で平均粒子径が500nm以下になるように分散せしめた微粒子、あるいは平均二次粒子径が1μm以上の湿式法シリカを水を主体とする分散媒中でカチオン性化合物の存在下で平均粒子径が500nm以下になるように粉砕せしめた微粒子を主体に含有するインク受容層であり、前記コロイダルシリカ含有層が、カチオン性コロイダルシリカを含有するか、またはカチオン性化合物を含有するコロイダルシリカ含有層であり、前記インク受容層と前記コロイダルシリカ含有層とを同時重層塗布して製造されたことを特徴とするインクジェット記録材料。
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