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JP4483762B2 - 車両用発電制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用発電機の出力電圧を制御する車両用発電制御装置に関する。
近年、車両の燃費を低減するため、アイドル時のエンジン回転数をより低く設定する傾向にある。ところが、エンジンの回転数が低くなればなるほど、その出力トルクも低くなるため、エンジンにベルトで連結された車両用発電機を始めとする補機類の駆動トルクの変動がエンジンのアイドル回転数の安定性に大きく影響するようになってきた。このような背景から、車両用発電機の励磁電流と回転数から発電トルクを算出し、この発電トルクの増加率が設定値を超えないように励磁電流を抑制することで、エンジン回転数の安定を図るようにした車両用発電制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−284257号公報(第3−6頁、図1−6)
ところで、特許文献1に開示された車両用発電制御装置では、定常的な状態でのトルクを推定することはできるが、エンジン回転数が変動している状態では、車両用発電機自体の慣性モーメントによる慣性トルクがその変動を打ち消そうとする方向に発生するため、車両用発電機の実際のトルクと推定されたトルクに差が生じることになる。特許文献1に開示された車両用発電制御装置では、トルク変化率を低減するために励磁電流を抑制しており、これに伴って車両用発電機の出力電圧が落ち込むが、従来の推定されたトルクは慣性トルクを考慮していない分大きな値になり、そのだけ余計に励磁電流を抑制することになるため、必要以上に出力電圧の低下を招いてしまうという問題があった。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、車両用発電機のトルクの推定精度を向上させることにより、トルク抑制に伴う出力電圧の落ち込みを必要最小限に抑えることができる車両用発電制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の車両用発電制御装置は、車両用発電機の励磁回路を断続制御することにより車両用発電機の出力電圧を制御しており、車両用発電機の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、励磁回路の励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、車両用発電機の相電圧の1周期毎の周期データを検出し、この周期データの逆数から回転数を検出する回転数検出手段と、毎周期の周期データと回転数とから回転数の変化率を算出する変化率算出手段と、出力電圧検出手段によって検出された出力電圧と、励磁電流検出手段によって検出された励磁電流と、回転数検出手段によって検出された回転数とに基づいて、車両用発電機の発電トルク値を推定する発電トルク推定手段と、変化率算出手段によって算出した回転数の変化率に基づいて車両用発電機の慣性トルク値を推定する慣性トルク推定手段と、発電トルク推定手段および慣性トルク推定手段のそれぞれによって推定されたトルク値の合計を発電制御周期毎に算出するトルク算出手段と今回算出したトルク値の合計値とそれ以前のトルク値の合計値とから平均的なトルク値の合計値を算出する平均トルク算出手段とを有し、算出した平均的なトルク値の合計値に所定値を加えた制限トルク値以上にならないように、発電制御周期毎に最新の出力電圧、回転数および制限トルク値に基づいて励磁電流制限値を算出し、この励磁電流制限値以下になるように励磁回路の励磁電流を抑制する励磁電流制御手段とを備えている。これにより、エンジン回転数が変化している過渡的な状態においても精度よく車両用発電機のトルクを推定できるので、励磁電流の抑制を必要最小限に抑えることができ、これに伴う出力電圧の低下を少なくすることができる。
また、上述した励磁電流制御手段は、エンジンのアイドリング時に、励磁電流の抑制を行うことが望ましい。これにより、エンジンの回転数が低く最も不安定になりやすいアイドル状態において、車両用発電機のトルクを抑制することにより、エンジン回転数の安定性を向上させることができる。また、エンジンのトルクが比較的大きい高回転時には励磁電流の抑制をやめることで、抑制に伴う出力電圧の落ち込みを防止することができる。
また、上述した励磁電流制御手段は、車両用発電機の出力電圧が所定の設定値以下のときに、励磁電流の抑制を行わないことが望ましい。出力電圧が所定の設定値以下になるような大きな電気負荷が接続されたときに励磁電流の抑制制御を行うと、さらに出力電圧低下を招き、各種の電気負荷の誤動作を引き起こすおそれがある。したがって、このような出力電圧が大きく低下している状況においては励磁電流の抑制を行わないことで、出力電圧の低下による電気負荷の誤動作を防止することができる。
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用発電制御装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図であり、あわせてこの車両用発電制御装置と車両用発電機やバッテリとの接続状態が示されている。
図1において、車両用発電制御装置1は、車両用発電機2の出力端子(B端子)の電圧が所定の調整電圧設定値(例えば14V)になるように制御するためのものである。また、車両用発電制御装置1は、B端子以外に、電源端子(IG端子)とグランド端子(E端子)を有している。IG端子は、キースイッチ4を介してバッテリ3に接続されている。E端子は、車両用発電機2のフレームに接続されている。
車両用発電機2は、固定子に含まれる3相の固定子巻線200と、この固定子巻線200の3相出力を全波整流するために設けられた整流回路202と、回転子に含まれる励磁巻線204とを含んで構成されている。この車両用発電機2の出力電圧の制御は、励磁回路を構成する励磁巻線204に対する通電を車両用発電制御装置1によって適宜断続制御することにより行われる。車両用発電機2のB端子はバッテリ3に接続されており、B端子からバッテリ3に充電電流が供給される。
次に、車両用発電制御装置1の詳細構成および動作について説明する。図1に示すように、車両用発電制御装置1は、電源回路100、回転検出回路110、出力電圧検出回路120、励磁電流検出回路130、励磁電流制御回路140、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150、パワートランジスタ160、還流ダイオード162、電圧比較器164、アンド回路166、抵抗170、172、174を備えている。
電源回路100は、IG端子にバッテリ電圧が印加されると、所定の動作電圧を生成する。回転検出回路110は、固定子巻線200のいずれかの相に現れる相電圧を監視することにより、車両用発電機2の回転数やその変化率を算出するために必要な相電圧の周期検出を行う。出力電圧検出回路120は、車両用発電機2の出力電圧(B端子電圧)を検出する。この出力電圧検出回路120は、例えばA/D変換回路によって構成されており、出力電圧に対応する所定ビット数のデジタルデータがトルク検出・励磁電流MAX決定回路150に入力される。励磁電流検出回路130は、NチャネルMOS−FETで構成されるパワートランジスタ160のソース側の一方端の電位に基づいて励磁巻線204に流れる励磁電流を検出する。パワートランジスタ160のソース側には励磁電流検出用のセンス抵抗である抵抗170が接続されており、パワートランジスタ160のソース・ドレイン間および抵抗170を介して励磁電流が流れたときに生じる抵抗170の端子電圧に基づいて励磁電流検出回路130による励磁電流の検出が行われる。
励磁電流制御回路140は、励磁電流検出回路130によって検出される励磁電流が所定の励磁電流MAX値以下になるように励磁電流制御信号を生成する。トルク検出・励磁電流MAX決定回路150は、回転検出回路110によって検出された車両用発電機2の回転数と、励磁電流検出回路130によって検出された励磁電流とに基づいて車両用発電機2の発電トルク(以後、車両用発電機2の発電トルク(あるいは駆動トルク)を「発電機トルク」と称する)を推定するとともに、発電機トルクの増加を制限するためにその時点における励磁電流の許容上限値である励磁電流MAX値を決定する。
パワートランジスタ160は、励磁巻線204に直列に接続されており、オン状態のときに励磁巻線204に励磁電流が流れる。環流ダイオード162は、励磁巻線204に並列に接続されており、パワートランジスタ160がオフ状態のときに励磁電流を環流させる。電圧比較器164は、車両用発電機2の出力電圧を抵抗172、174によって構成された分圧回路で分圧した電圧がマイナス端子に、電源回路100によって生成される基準電圧がプラス端子にそれぞれ印加されており、これらプラス端子とマイナス端子のそれぞれに印加される電圧を比較する。車両用発電機2の出力電圧に応じて生成される分圧電圧が基準電圧よりも低くなると、すなわち、車両用発電機2の出力電圧が所定の調整電圧設定値よりも低くなると、電圧比較器164の出力信号がハイレベルになる。
アンド回路166は、励磁電流制御回路140から出力される励磁電流制御信号と電圧比較器164の出力信号とが入力されており、これらの信号の論理積となる駆動信号を出力する。このアンド回路166の出力端はパワートランジスタ160のゲートに接続されており、アンド回路166から出力される駆動信号がハイレベルになるとパワートランジスタ160がオン状態になる。
図2は、回転検出回路110の詳細構成を示す図である。図2に示すように、回転検出回路110は、抵抗111、112、電圧比較器113、タイマ回路114を備えている。固定子巻線200のいずれかの相電圧が抵抗111、112からなる分圧回路によって分圧され、電圧比較器113のプラス入力端子に印加される。電圧比較器113のマイナス入力端子には所定の基準電圧Vref が印加されており、電圧比較器113は、この基準電圧Vref と前段の分圧回路から印加された分圧電圧とを比較することにより波形整形を行い、波形整形後の信号をタイマ回路114に入力する。タイマ回路114は、電圧比較器113から入力された信号の立ち上がりの周期に相当する所定ビット数(例えば8ビット)の周期データを出力する。具体的には、タイマ回路114は、入力信号の立ち上がりタイミングに同期して、一つ前の立ち上がりタイミングから次の立ち上がりタイミングまでの周期に相当する周期データτ1、τ2、τ3、…、τi、…を出力する。この周期データτの逆数が車両用発電機2の回転数に相当する回転数データNi(=k×(1/τi)、kは定数)となる。仮に、8ビットデータ「240」が800rpmに対応しているものとすると、8ビットデータ「200」では960rpmに、「160」では1200rpmに相当する。また、この回転数データNを用いると、回転数変化率は(Ni−Ni-1)/τiで算出することができる。
図3は、励磁電流検出回路130の詳細構成を示す図である。図3に示すように、励磁電流検出回路130は、演算増幅器131、抵抗132、133、A/D変換回路134を備えている。演算増幅器131と2つの抵抗132、133によって、2つの抵抗132、133の各抵抗値によって決まる所定の増幅率を有する増幅器が構成されており、励磁電流に応じた値を有する入力電圧が増幅されて出力される。A/D変換回路134は、入力端子(IN)にこの増幅器の出力信号が、クロック端子(CL)にアンド回路166から出力される駆動信号が負論理で入力されており、駆動信号がハイレベルからローレベルに変化するタイミングで前段の増幅器の出力電圧を取り込んで、所定ビット数(例えば8ビット)のデジタルデータ(励磁電流値)に変換する。
図4は、励磁電流制御回路140の詳細構成を示す図である。図4に示すように、励磁電流制御回路140は、デジタルコンパレータ141、抵抗142、コンデンサ143、鋸波発生回路144、電圧比較器145を備えている。デジタルコンパレータ141は、一方の入力端子(IN+ )に入力されるトルク検出・励磁電流MAX決定回路150からの励磁電流MAX値と、他方の入力端子(IN- )に入力される励磁電流検出回路130からの励磁電流値とを比較し、励磁電流MAX値の方が励磁電流値よりも大きいときにはハイレベルの信号を出力する。この出力信号は、抵抗142とコンデンサ143によって構成される平滑回路に入力されて平滑された後、電圧比較器145のプラス端子に入力される。この電圧比較器145は、鋸波発生回路144から出力される鋸波信号がマイナス端子に入力されており、この鋸波信号とプラス端子に入力される平滑後の電圧とを比較することにより、比較結果に対応したデューティ比を有するPWM信号を出力する。
図5は、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150の詳細構成を示す図である。図5に示すように、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150は、マイコン(マイクロコンピュータ)151および不揮発性メモリ152を備えている。マイコン151は、回転検出回路110によって検出された車両用発電機2の回転数を算出するための周期データτと、出力電圧検出回路120によって検出された車両用発電機2の出力電圧値と、励磁電流検出回路130によって検出された励磁電流値とが入力されており、所定のプログラムを実行することにより、不揮発性メモリ152に格納されている算出テーブルを参照して車両用発電機2の発電トルクと慣性トルクを算出し、これらを合計した発電機トルクの増加率が設定値を超えないように制限する励磁電流MAX値を決定する。上述した算出テーブルには、励磁電流Ifと、車両用発電機2の回転数N(この回転数Nは周期データτから算出されるが、回転数Nと周期データτは1対1の関係にあることから算出テーブルのパラメータとして回転数Nの代わりに周期データτを用いるようにしてもよい)と、出力電圧VB と、発電トルクT1との関係や、回転数Nの変化率と慣性トルクT2との関係が示されている。この算出テーブルを用いることにより、励磁電流If、回転数N、出力電圧VB がわかっているときにこれらに対応する発電トルクT1を求めることや、回転数N、出力電圧VB 、発電トルクT1がわかっているときにこれらに対応する励磁電流Ifを求めることが可能になる。車両用発電機2の仕様によって発電トルクの計算式が異なるため、例えば、車両用発電機2あるいは車両用発電制御装置1の検査時等に、電気的に不揮発性メモリ152に書き込まれる。なお、このようにして車両用発電機2の仕様に合わせて算出テーブルを書き込む場合には、不揮発性メモリ152は少なくとも1回のデータの書き込みが可能である必要がある。また、車両用発電機2の慣性トルクT2は(慣性モーメント)×(角加速度)の式で算出することができ、角加速度は回転数変化率に基づいて算出することができるため、回転検出回路110から入力される周期データτに基づいて回転数変化率および慣性トルクT2をその都度計算によって求めるようにしてもよい。
図6は、図5に示したマイコン151を用いて行われるトルク検出・励磁電流MAX決定回路150の動作手順を示す流れ図である。所定のタイミング(例えば5msec間隔)で励磁電流If、回転数N、出力電圧VB が入力されると(ステップ100)、マイコン151は、回転数Nの内容を判定し(ステップ101)、回転数Nが800〜3500rpmの範囲内にある場合には、さらに、出力電圧VB が11Vより高いか否かを判定する(ステップ102)。なお、正確には、回転数Nは、入力された周期データτに基づいて算出される。出力電圧VB が11Vより高い場合には肯定判断が行われ、次に、マイコン151は、回転数Nの変化率を算出し(ステップ103)、この算出した変化率を用いて不揮発性メモリ152に格納されている算出テーブルを参照して車両用発電機2の慣性トルクT2を算出する(ステップ104)。また、マイコン151は、不揮発性メモリ152に格納されている算出テーブルに基づいて、ステップ100において入力された励磁電流If、回転数N、出力電圧VB に対応する発電トルクT1を算出するとともに(ステップ105)、これらの慣性トルクT2および発電トルクT1を合計した総発電機トルクTを算出して(ステップ106)、自身の内蔵RAMに記憶する(ステップ107)。また、マイコン151は、内蔵RAMに記憶されている最近n回の総発電機トルクTの平均値Tavを算出するとともに(ステップ108)、この平均値Tavに増加量αを加算して制限トルク値TMAXを求め(ステップ109)、この制限トルク値TMAXに対応する励磁電流制限値Ifmaxを不揮発性メモリ152に格納された算出テーブルを参照することにより算出する(ステップ110)。なお、この励磁電流制限値Ifmaxを求めるために行われる参照テーブルの参照は、制限トルクTMAXからその時点における慣性トルクT2分を差し引いた発電トルクT1相当のトルク値が用いられる。この励磁電流制限値Ifmaxは、励磁電流MAX値としてトルク検出・励磁電流MAX決定回路150から励磁電流制御回路140に入力される。なお、車両用発電機2の回転数Nが800rpmよりも低い場合、すなわちエンジンが停止していると考えられる場合には、デューティ比が25%となる励磁電流Ifに対応する励磁電流MAX値が設定される(ステップ111)。一方、車両用発電機2の回転数Nが3500rpmよりも高い場合には、エンジン回転が安定領域にあるといえるため、上述した発電機トルク抑制制御は行われない。
上述した出力電圧検出回路120が出力電圧検出手段に、励磁電流検出回路130が励磁電流検出手段に、回転検出回路110が回転数検出手段に、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150が変化率算出手段、発電トルク推定手段、慣性トルク推定手段に、励磁電流制御回路140、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150が励磁電流制御手段にそれぞれ対応する。
本実施形態の車両用発電制御装置1はこのような構成を有しており、次にその制御動作を説明する。
(1)エンジン始動前
運転者によってキースイッチ4が操作されてオン状態になると、電源回路100によって動作電圧が生成され、車両用発電制御装置1による制御動作が開始される。エンジン始動前で車両用発電機2が回転していない場合には、車両用発電機2による発電が行われていないため、バッテリ3の端子電圧は12V程度であって所定の調整電圧(例えば14V)よりも低くなっており、電圧比較器164の出力信号はハイレベルとなる。
また、エンジン始動前であって車両用発電機2の回転数Nが800rpmよりも低いため、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150によってデューティ比25%に対応する励磁電流MAX値が出力され、パワートランジスタ160を断続することにより流れる励磁電流のデューティ比が25%に制御されて初期励磁状態となる。
(2)アイドリング時
キースイッチ4がさらにエンジン始動位置まで操作されてスタータが回転してエンジンが始動され、車両用発電機2の回転数Nがエンジンのアイドリング回転まで上昇すると発電が開始される。車両用発電機2の回転数Nが2000rpm程度になると、上述の初期励磁状態が解除され、トルク検出・MAX決定回路150によるトルク抑制制御が開始される。すなわち、最近n回の発電機トルクTの平均値Tavに対応する制限トルク値Tmax (=Tav+α)、励磁電流MAX値が決定され、この励磁電流MAX値を越えないように励磁電流Ifの供給が行われる。したがって、出力電圧VB が調整電圧になるまで、デューティ比25%に相当する励磁電流Ifから徐々に増加し、発電機トルクTも徐々に増加するので、始動直後のアイドリング状態の安定化を図ることができる。
また、さらに出力電圧VB が上昇して調整電圧を超えると、電圧比較器164の出力がローレベルに変わるため、アンド回路166から出力される駆動信号もローレベルになり、パワートランジスタ160がオフ状態になって出力電圧VB が減少に転じる。
このように、アイドリング時であって電気負荷量や車両用発電機2の回転数Nが安定している状態においては、励磁電流制限値Ifmaxは実際の励磁電流Ifよりも若干大きな値に設定されており、出力電圧VB の制御には影響を及ぼすことなく、出力電圧VB が調整電圧に制御される。
(3)アイドリング時(電気負荷投入)
アイドリング時に電気負荷が投入されると、バッテリ3の端子電圧が瞬時に低下する。このとき、電圧比較器164の出力がハイレベルを維持するが、実際の励磁電流Ifは、励磁電流制限値Ifmaxまでしか増加しない。このため、発電機トルクが急に増加することもなく、電気負荷投入によるエンジン回転の落ち込みはほとんど発生しない。その後、設定時間毎にトルク制限値TMAXが更新されて増加するため、これに伴って励磁電流制限値Ifmaxも増加し、さらに出力電圧VB が調整電圧に達した時点で定常状態に復帰する。
図7は、回転数NがN1からN2へ低下したときの発電機トルクの変化を示す図である。励磁電流抑制制御をしない場合、回転数Nの低下に伴い発電能力の低下を補うように励磁電流が増加するため、特性Aで示すように発電機トルクも増加していく。それに比べて、特許文献1に開示されている励磁電流抑制制御を行った場合には、特性Bで示されるこの発電機トルクの増加速度を所定値以下に抑えるために、出力電圧と励磁電流と回転数とから発電機トルクを推定し、そこから更に励磁電流を逆算しながら抑制する。ところが、この発電機トルクの推定において、減速時、斜線部Cで示したような車両用発電機2の慣性トルクが発生することが考慮されておらず、その時点の励磁電流に対応して発生している発電機トルクを実際より過大な値に推定してしまっている。このような推定値を用いて、抑制する励磁電流値を逆算しているので、抑制量も必要以上に大きな値となり、その結果、実際の発電量と必要な発電量との乖離も大きくなるため出力電圧の落ち込み量も大きくなってしまう。こういった出力電圧の落ち込みは、例えば夜間に信号待ちをしているような場合にヘッドライトの明るさが暗くなったりするとドライバーが気が付き、ドライバーに不安感を与えてしまう。また、落ち込みがひどいときには、最悪の場合には車両に搭載されている各種の電子機器が誤動作してしまうおそれもある。
これに対し、本実施形態では、回転数が変化しているときに発生する慣性トルクを考慮して、発電機トルクに含まれる発電トルクの正確な推定をするので、不必要に過度の励磁電流抑制をしなくなり、よって出力電圧の落ち込みも小さく押さえることができる。
(4)アイドリング時(バッテリ放電時)
アイドリング時に、バッテリ3が放電状態のときに大きな電気負荷が投入され、バッテリ3の端子電圧が11V以下になると、図6に示したステップ102の判定において否定判断が行われ、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150による励磁電流制限が行われないため、本発明のトルク抑制制御は行われない。これにより、発電機出力電圧VB がさらに低下して各種の電気負荷が誤動作することを防止することができる。
(5)走行時
車両の走行時には、エンジン回転が上昇して発電機回転数Nが3500rpmよりも高くなるため、トルク検出・励磁電流MAX決定回路150による励磁電流制限が行われないため、本発明のトルク抑制制御は行われない。これにより、エンジン回転が安定してトルク抑制制御が不要な場合には、発電機出力電圧に基づく励磁電流制御が優先され、安定した動作電圧を電気負荷に供給することが可能になる。
このように、本実施形態の車両用発電制御装置1によるトルク抑制制御を行うことにより、エンジン回転数が変化している過渡的な状態においても車両用発電機2の発電機トルクおよびこれに含まれる発電トルクを精度よく推定できるので、励磁電流の抑制を必要最小限に抑えることができ、これに伴う出力電圧の低下を少なくすることができる。また、発電機出力電圧が極端に低くなった場合に、発電機トルクを抑制する制御を行わないようにすることで、発電機出力電圧の低下による電気負荷の誤動作を防止している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、車両用発電制御装置1内のトルク検出・励磁電流MAX決定回路150において制限トルク値TMAXや制限電流値Ifmaxを算出したが、この機能をエンジン制御装置(ECU)等の外部の制御装置に持たせるようにしてもよい。すなわち、車両用発電制御装置において検出した発電機回転数N、励磁電流If、発電機出力電圧VB を外部の制御装置に送って制限電流値Ifmaxを算出し、この算出結果を車両用発電制御装置1に送り返すようにしてもよい。
一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図である。 回転検出回路の詳細構成を示す図である。 励磁電流検出回路の詳細構成を示す図である。 励磁電流制御回路の詳細構成を示す図である。 トルク検出・励磁電流MAX決定回路の詳細構成を示す図である。 図5に示したマイコンを用いて行われるトルク検出・励磁電流MAX決定回路の動作手順を示す流れ図である。 回転数が低下したときの発電機トルクの変化を示す図である。
符号の説明
1 車両用発電制御装置
2 車両用発電機
3 バッテリ
4 キースイッチ
100 電源回路
110 回転検出回路
120 出力電圧検出回路
130 励磁電流検出回路
140 励磁電流制御回路
150 トルク検出・励磁電流MAX決定回路
160 パワートランジスタ

Claims (3)

  1. 車両用発電機の励磁回路を断続制御することにより前記車両用発電機の出力電圧を制御する車両用発電制御装置において、
    前記車両用発電機の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
    前記励磁回路の励磁電流を検出する励磁電流検出手段と、
    前記車両用発電機の相電圧の1周期毎の周期データを検出し、この周期データの逆数から回転数を検出する回転数検出手段と、
    毎周期の前記周期データと前記回転数とから回転数の変化率を算出する変化率算出手段と、
    前記出力電圧検出手段によって検出された出力電圧と、前記励磁電流検出手段によって検出された励磁電流と、前記回転数検出手段によって検出された回転数とに基づいて、前記車両用発電機の発電トルク値を推定する発電トルク推定手段と、
    前記変化率算出手段によって算出した回転数の変化率に基づいて前記車両用発電機の慣性トルク値を推定する慣性トルク推定手段と、
    前記発電トルク推定手段および前記慣性トルク推定手段のそれぞれによって推定されたトルク値の合計を発電制御周期毎に算出する手段と、今回算出したトルク値の合計値とそれ以前のトルク値の合計値とから平均的なトルク値の合計値を算出する手段とを有し、算出した平均的なトルク値の合計値に所定値を加えた制限トルク値以上にならないように、前記発電制御周期毎に最新の出力電圧、回転数および制限トルク値に基づいて励磁電流制限値を算出し、この励磁電流制限値以下になるように前記励磁回路の励磁電流を抑制する励磁電流制御手段と、
    を備えることを特徴とする車両用発電制御装置。
  2. 請求項1において、
    前記励磁電流制御手段は、エンジンのアイドリング時に、前記励磁電流の抑制を行うことを特徴とする車両用発電制御装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記励磁電流制御手段は、前記車両用発電機の出力電圧が所定の設定値以下のときに、前記励磁電流の抑制を行わないことを特徴とする車両用発電制御装置。
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