JP4471002B2 - 接合体の形成方法 - Google Patents
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Description
接着剤は、一般的に、接合する部材の材質によらず、優れた接着性を示すものである。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
このように接着剤を用いて部材同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化(固化)させることにより、部材同士を接着する。
ところが、このような接着剤を用いた接合では、以下のような問題がある。
・寸法精度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
また、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程の高コスト化・複雑化を招いている。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
・接合される部材の材質に制約がある
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
このような問題を受け、接合に供される部材の材質によらず、部材同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し得る接合体の形成方法が求められている。
本発明の接合体の形成方法は、第1の基材および第2の基材上に、それぞれ、化学的気相成膜法を用いて、主として銅で構成される接合膜を、その表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が1〜30nmとなるように形成する工程と、
前記接合膜同士が対向するようにして、前記第1の基材および第2の基材同士を接触させた状態で、前記第1の基材および第2の基材間に圧縮力を付与して、前記接合膜同士を結着させることにより接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜により接合された接合体を形成することができる。
また、前記接合膜を形成する工程において、前記接合膜は、その表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が1〜30nmとなるように形成されることにより、第1の基材および第2の基材に形成された各接合膜の表面同士が接触する接触面積の増大を図ることができる。
かかる範囲内に設定すれば、接合膜同士を確実に結着させることができる。
本発明の接合体の形成方法では、前記接合体を得る工程において、前記圧縮力を付与する時間は、5〜180分間であることが好ましい。
かかる範囲内に設定すれば、接合膜同士を確実に結着させることができる。
これにより、結着する前の接合膜に加熱エネルギーが付与されて、各接合膜に圧縮力を付与することによる接合膜同士の結着がより円滑に行われることとなる。
本発明の接合体の形成方法では、前記接合膜を加熱する温度は、75〜200℃であることが好ましい。
これにより、第1の基材および第2の基材が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜同士をより円滑に結着させることができる。
これにより、各基材上に設けられた接合膜同士が結着された接合膜を介して第1の基材と第2の基材とが接合された接合体を確実に得ることができる。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、圧縮力の付与をより簡単に行うことができる。
本発明の接合体の形成方法では、前記接合膜中に含まれる銅の含有率は、原子比で99at.%以上であることが好ましい。
このように高純度な銅で構成される接合膜を用いて第1の基材および第2の基材同士の接合を行うことにより、これらの第1の基材および第2の基材同士を確実に高い寸法精度で強固に接合することができる。
これにより、高純度の銅で構成される接合膜を、比較的容易かつ確実に、第1の基材および第2の基材上にそれぞれ形成することができる。
これにより、高純度な銅で構成される接合膜をより確実に形成することができる。
本発明の接合体の形成方法では、前記接合膜中に含まれる不純物は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
有機物の一部が不純物として残存すると、接合膜中に含まれる銅原子に活性サイトを確実に存在させることができ、その結果、接合膜同士の結着がより円滑に行われるようになると推察される。
これにより、第1の基材と第2の基材とが接合された接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接合体の形成方法では、前記第1の基材および第2の基材は、それぞれ、板状をなしていることが好ましい。
これにより、基材が撓み易くなり、基材は、対向する基材がたとえ応力等で変形したとしても、その変形した形状に沿って十分に変形可能なものとなるため、これらの密着性がより高くなる。また、基材が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和することができる。
これにより、表面処理を施さなくても、十分な接合強度が得られる。
本発明の接合体の形成方法では、前記第1の基材および第2の基材の前記接合膜を備える面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、各基材の表面を清浄化および活性化し、接合膜と各基材との接合強度を高めることができる。
これにより、接合膜を形成するために、各基材の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合体の形成方法では、前記第1の基材および第2の基材と、前記第1の基材および第2の基材に設けられた各前記接合膜との間に、それぞれ、中間層が介挿されていることが好ましい。
これにより、信頼性の高い接合体を形成することができる。
これにより、各基材と接合膜との間の接合強度を特に高めることができる。
本発明の接合体の形成方法は、第1の基材(部材)および第2の基材(部材)上に、それぞれ、化学的気相成膜法を用いて、主として銅で構成される接合膜を形成する工程と、前記接合膜同士が対向するようにして、前記第1の基材および第2の基材同士を接触させた状態で、前記第1の基材および第2の基材同士に圧縮力を付与して、前記接合膜同士を結着させることにより接合体を得る工程とを有するものである。
かかる工程により、各基材に形成された接合膜同士を結着させることができ、この結着された接合膜により第1の基材および第2の基材が接合された接合体を得ることができる。
このような本発明の接合体の形成方法は、第1の基材と第2の基材とを、高い寸法精度で強固に、かつ効率よく接合することができる。そして、かかる接合体の形成方法を用いて接合体を形成することにより、2つの基材同士が高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を得ることができる。
図1および図2は、本発明の接合体の形成方法を説明するための図(縦断面図)、図3は、主として銅で構成される接合膜を形成する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図4は、接合膜同士が結着する際の温度と時間との関係を示したグラフである。なお、以下の説明では、図1、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
なお、以下の説明では、「第1の基板21および第2の基板22」を総称して「基板2」と言い、2つの「接合膜31、32」、および、2つの「接合膜31、32」が結着(一体化)したものを総称して「接合膜3」と言うこともある。
基板21および基板22は、接合膜3を介して互いに接合して接合体5を得るためのものであり、結着させる前の接合膜31、32を支持する程度の剛性を有するものであれば、いかなる材料で構成されたものであってもよい。
また、基板(基材)2の形状は、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、本実施形態のような板状のものに限定されない。すなわち、基材の形状は、例えば、塊状(ブロック状)や、棒状等であってもよい。
この場合、基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
かかる接合膜31、32は、ともに、化学的気相成膜法を用いて成膜され、主として銅で構成されたものである。このような接合膜31、32は、互いに接触した状態で、圧縮力が付与されると、これら接合膜31、32同士が結着(一体化)するものであることから、この結着した接合膜3を介して、第1の基板21および第2の基板22同士を高い寸法精度で強固に効率よく接合することができる。
具体的には、接合膜3は、抵抗率が4.0×10−6Ω・cm程度となり、熱伝導率が390W・m−1・K−1程度となる。
まず、MOCVD法を用いて接合膜3を成膜する方法の説明に先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図3に示す成膜装置200は、有機金属化学気相成膜法による接合膜3の形成をチャンバー211内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、基板2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230と、基板ホルダー212を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
また、基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター221が配設されている。このシャッター221は、基板2および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]、ビス(2,6−ジメチル−2−(トリメチルシリロキシ)−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)(Cu(sopd)2)等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、キャリアガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜すること、すなわち高純度な銅で構成される膜を接合膜3として成膜することができる。
以上のような構成の成膜装置200を用いてMOCVD法により、以下のようにして基板2上に接合膜3を形成する。
なお、基板21と基板22とは、基板ホルダー212に同時に装着して、それぞれの第1の基板21および第2の基板22上に、一括して接合膜31、32を成膜するようにしてもよいし、基板ホルダー212に別々に装着して、それぞれの第1の基板21および第2の基板22上に、分割して接合膜31、32を成膜するようにしてもよい。
また、加熱手段を動作させ、基板ホルダー212を加熱する。基板ホルダー212の温度は、接合膜(純銅膜)3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、主として銅で構成される接合膜3を確実に成膜することができる。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽262が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ264を動作させるとともに、バルブ263を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー211内に導入する。
このように、前記工程[1−2]で基板ホルダー212が加熱された状態で、チャンバー211内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、基板2上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料が還元されて主として銅で構成される接合膜3を基板2上に形成することができる。
以上のようにして、基板2上に主として銅で構成される接合膜3を成膜することができる。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基板21および第2の基板22の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、各第1の基板21および第2の基板22上に形成された接合膜31、32同士が対向するように接触させた際に、接合膜31、32同士の密着性を高めることができる。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、基板2の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、接合膜3と基板2との接合強度を高めることができる。
なお、表面処理を施す基板2が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
なお、この場合、基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、表面処理に代えて、基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、あらかじめ、中間層を形成するようにしてもよい。
また、これらの各種材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基板2と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
さらに、本発明では、接合膜3を介して第1の基板21および第2の基板22同士を接合しているため、第1の基板21および第2の基板22の構成材料に制約がないという利点があり、第1の基板21および第2の基板22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
なお、第1の基板21および第2の基板22の構成材料は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよいが、第1の基板21および第2の基板22の各熱膨張率は、ほぼ等しいものを選択するのが好ましい。第1の基板21および第2の基板22同士の熱膨張率がほぼ等しければ、接合膜3を介して第1の基板21および第2の基板22同士を接合した際に、接合膜3に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体5において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
すなわち、第1の基板21および第2の基板22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、圧縮力の付与は、できるだけ低温下で行うのが好ましい。圧縮力の付与を低温下で行うことにより、接合膜3に生じる応力のさらなる低減を図ることができる。
さらに、第1の基板21および第2の基板22同士は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、第1の基板21および第2の基板22同士をより強固に接合することができる。
なお、この圧縮力の大きさは、第1の基板21および第2の基板22の構成材料や厚さ、圧縮力を付与する時間、および、接合膜3の温度等に応じて、適宜設定されるが、具体的には、1〜100MPa程度であるのが好ましく、5〜50MPa程度であるのがより好ましい。かかる範囲内の圧縮力を付与することにより、接合膜31、32同士を確実に結着させることができる。なお、この圧縮力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基板21および第2の基板22構成材料によっては、これらの第1の基板21および第2の基板22に損傷等が生じるおそれがある。
接合膜31、32を加熱する温度は、室温より高く、基板2の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは75〜200℃程度とされ、より好ましくは150〜180℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、基板2が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜31、32同士をより円滑に結着させることができ、接合強度を確実に高めることができる。すなわち、低温下での接合膜31、32同士の結着をより促進させることができ、接合強度を確実に高めることができる。
かかる関係を満足させることにより、接合膜31、32同士を、より円滑に結着させることができ、結着された接合膜3により第1の基板21および第2の基板22同士が接合された接合体5をより確実に得ることができる。
ここで、前記式1なる関係を満足するように設定することにより、接合膜31、32同士を結着させることができるのは、以下のような本発明者の検討結果に基づくものである。
すなわち、第1の基板21および第2の基板22同士に付与する圧縮力の大きさを50[MPa]に設定したとき、接合膜31、32同士が結着されるまでの圧縮力を付与する時間と、接合膜31、32を加熱する温度との関係を検討したところ、図4に示すような接合仮想曲線上に位置するように、圧縮力を付与する時間および接合膜31、32を加熱する温度を設定することにより、接合膜31、32同士を結着させることができることが判ってきた。すなわち、この接合仮想曲線が、図4中の●印(結着可能)および×印(結着不可能)に示すように、この曲線を境界として接合領域と非接合領域とに分かれる接合可能境界線であることが判ってきた。
そのため、図4中で右上がりの斜線が引かれている領域が、接合領域であり、この領域に位置するように、圧縮力を付与する時間および接合膜31、32を加熱する温度を設定すれば、接合膜31、32同士を確実に結着し得ることが判った。
そのため、上記式1の関係を満足すれば、圧縮力を付与する時間Y[分]および接合膜31、32を加熱する温度T[K]を、図4中で右上がりの斜線が引かれている接合領域に位置させることができ、接合膜31、32同士を確実に結着し得る。
なお、図4に示すように、例えば、加熱する温度を150℃(423K)とし、圧縮力を付与する時間Bを20分としたとき、接合領域に位置していることから、接合膜31、32同士が結着して、第1の基板21および第2の基板22同士が接合膜3を介して接合されるが、その接合強度は、図中の矢印で示すように、温度Aおよび時間Bの少なくとも一方を大きくすることにより増大することとなる。
接合膜31、32同士に圧縮力を付与すると、まず、接合膜31、32の表面同士がより接近する。
ここで、本発明では、接合膜31、32は、前述したように、化学的気相成膜法を用いて成膜された主として銅で構成される膜であることにより、その膜中には、銅原子にダングリングボンド(未結合手)のような活性サイトがランダム(不規則)に存在していると考えられる。
そのため、接合膜31、32の表面同士がより接近すると、各接合膜31、32の表面付近に存在するダングリングボンド同士が結合する。
なお、第1の基板21および第2の基板22に対する圧縮力の付与は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、圧縮力の付与をより簡単に行うことができる。
以上のような本発明の接合体の形成方法は、種々の基材(部材)同士を接合するのに用いることができる。
ここでは、本発明の接合体の形成方法により形成された接合体をインクジェット式記録ヘッドに適用した場合の実施形態について説明する。
図5は、接合体を適用して得られたインクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図6は、図5に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図、図7は、図5に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、図5は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
図5に示すインクジェット式記録ヘッド10は、図7に示すようなインクジェットプリンタ9に搭載されている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔111を備えるインクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「ヘッド10」と言う。)と、ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド10およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド10から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)14を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子14、印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
ヘッド10は、ノズル板11と、インク室基板12と、振動板13と、振動板13に接合された圧電素子(振動源)14とを備えるヘッド本体17と、このヘッド本体17を収納する基体16とを有している。なお、このヘッド10は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
このノズル板11には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔111が形成されている。これらのノズル孔111間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
ノズル板11には、インク室基板12が固着(固定)されている。
各インク室121は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成され、各ノズル孔111に対応して配設されている。各インク室121は、後述する振動板13の振動により容積可変であり、この容積変化により、インクを吐出するよう構成されている。
一方、インク室基板12のノズル板11と反対側には、振動板13が接合され、さらに振動板13のインク室基板12と反対側には、複数の圧電素子14が設けられている。
各圧電素子14は、それぞれ、下部電極142と上部電極141との間に圧電体層143を介挿してなり、各インク室121のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電素子14は、圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。
各圧電素子14は、それぞれ、振動源として機能し、振動板13は、圧電素子14の振動により振動し、インク室121の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
以上のような、ノズル板11とインク室基板12との接合、インク室基板12と振動板13との接合、およびノズル板11と基体16とを接合する際に、少なくとも1箇所において本発明の接合体の形成方法が適用されている。
このようなヘッド10は、接合部の接合界面の接合強度および耐薬品性が高くなっており、これにより、各インク室121に貯留されたインクに対する耐久性および液密性が高くなっている。その結果、ヘッド10は、信頼性の高いものとなる。
このようなヘッド10は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層143に変形が生じない。このため、振動板13にも変形が生じず、インク室121には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔111からインク滴は吐出されない。
なお、ヘッド10は、圧電素子14の代わりに電気熱変換素子を有していてもよい。つまり、ヘッド10は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出する構成(いわゆる、「バブルジェット方式」(「バブルジェット」は登録商標))のものであってもよい。
さらに、接合体を配線基板に適用した場合の実施形態について説明する。
図8は、接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
図8に示す配線基板410は、絶縁基板413と、絶縁基板413上に配設された電極412と、リード414と、リード414の一端に、電極412と対向するように設けられた電極415とを有する。
また、接合膜3は、前述したように、その厚さを高い精度で容易に制御することができる。これにより、配線基板410は、より寸法精度の高いものとなり、各電極412、415間の導電性も容易に制御することができる。
以上、本発明の接合体の形成方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の接合体の形成方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、前記実施形態では、2つの基板を接合する場合について説明しているが、これに限らず、3つ以上の基板を接合する場合に、本発明の接合体の形成方法を用いるようにしてもよい。
1.接合体の製造
(実施例1)
まず、基板として、それぞれ、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板、および、縦20mm×横10mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意した。
次に、表面処理を行った各基板を、それぞれ、図3に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、原材料をビス(2,6−ジメチル−2−(トリメチルシリロキシ)−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)(Cu(sopd)2)とし、MOCVD法を用いて、平均厚さ100nmの主として銅で構成される接合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
・チャンバー内の雰囲気 :窒素ガス + 水素ガス
・有機金属材料(原材料) :Cu(sopd)2
・霧化した有機金属材料の流量 :1g/min
・キャリアガス :窒素ガス + 水素ガス
・成膜時のチャンバー内の圧力 :20Torr
・成膜時の水素分圧 :15Torr
・基板ホルダーの温度 :270℃
・処理時間 :10分
以上のようにして成膜された接合膜は、銅で構成されており、2次イオン質量分析法(SIMS法)を用いて、銅の純度を測定したところ、原子比99at.%であった。
かかる工程を経て、各単結晶シリコン基板上に、それぞれ、主として銅で構成される接合膜を形成した。
次に、この状態で、これらの基板同士に、50MPaの圧縮力を付与しつつ、175℃で接合膜を加熱し、圧縮力の付与を5分間維持して、各基板に形成された接合膜同士を結着させることにより、前記式1を満足する条件下で、結着された接合膜を介して各基板が接合された接合体を得た。
2つの基板間に付与する圧縮力、圧縮力の付与を維持する時間および接合膜を加熱する温度を、それぞれ表1に示す条件に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
なお、これらの条件は、いずれも、前記式1を満足するものであった。
2つの基板間に付与する圧縮力、圧縮力の付与を維持する時間および接合膜を加熱する温度を、それぞれ表1に示す条件に変更した以外は、前記実施例1と同様にして接合体を得た。
なお、これらの条件は、いずれも、前記式1を満足しないものであった。
2.1 剥離の有無の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ、接合膜同士間での剥離の有無を確認した。そして、接合膜同士間での剥離の有無にしたがって以下のように評価した。
<剥離の有無の評価基準>
○:接合膜同士間で剥離が認められない
×:接合膜同士間で剥離が認められる
各実施例および各比較例で得られた接合体について、縦方向の端部に、それぞれ、電極を設け、電極同士間の抵抗率を測定することにより、接合体の抵抗率を求めた。そして、測定した抵抗率を以下の基準にしたがって評価した。
<抵抗率の評価基準>
◎: 1×10−5Ω・cm未満
○: 1×10−5Ω・cm以上、 1×10−3Ω・cm未満
△: 1×10−3Ω・cm以上、 1×10−1Ω・cm未満
×: 1×10−1Ω・cm以上
以上、2.1〜2.2の各評価結果を表1に示す。
また、各実施例で得られた接合体では、各比較例で得られた接合体と比較して、抵抗率が低く、優れた導電体特性を示した。
Claims (18)
- 第1の基材および第2の基材上に、それぞれ、化学的気相成膜法を用いて、主として銅で構成される接合膜を、その表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が1〜30nmとなるように形成する工程と、
前記接合膜同士が対向するようにして、前記第1の基材および第2の基材同士を接触させた状態で、前記第1の基材および第2の基材間に圧縮力を付与して、前記接合膜同士を結着させることにより接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合体の形成方法。 - 前記接合体を得る工程において、前記第1の基材および第2の基材間に付与する圧縮力は、1〜100MPaである請求項1に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合体を得る工程において、前記圧縮力を付与する時間は、5〜180分間である請求項1または2に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合体を得る工程において、前記接合膜を加熱する請求項1ないし3のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記接合膜を加熱する温度は、75〜200℃である請求項4に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合体を得る工程において、前記第1の基材および第2の基材間に付与する圧縮力の大きさを50[MPa]とし、前記圧縮力を付与する時間をY[分]とし、前記接合膜を加熱する温度をT[K]とし、気体定数をR[J/(mol・K)]としたとき、1/Y≧1.35×109exp(−82×103/RT)なる関係を満足するよう設定する請求項4または5に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合体を得る工程において、前記圧縮力の付与は、大気雰囲気中で行われる請求項1ないし6のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記接合膜中に含まれる銅の含有率は、原子比で99at.%以上である請求項1ないし7のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記接合膜は、有機金属材料を原材料として用いる有機金属化学気相成膜法により成膜される請求項1ないし8のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記有機金属材料は、金属錯体である請求項9に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合膜中に含まれる不純物は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項9または10に記載の接合体の形成方法。
- 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし11のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記第1の基材および第2の基材は、それぞれ、板状をなしている請求項1ないし12のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記第1の基材および第2の基材の少なくとも前記接合膜を形成する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記第1の基材および第2の基材の前記接合膜を備える面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし14のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記表面処理は、プラズマ処理である請求項15に記載の接合体の形成方法。
- 前記第1の基材および第2の基材と、前記第1の基材および第2の基材に設けられた各前記接合膜との間に、それぞれ、中間層が介挿されている請求項1ないし16のいずれかに記載の接合体の形成方法。
- 前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されている請求項17に記載の接合体の形成方法。
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