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JP4456681B2 - 易開封性樹脂製容器蓋 - Google Patents

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裕昭 菊地
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易開封性樹脂製容器蓋に関するもので、より詳細には、成形の能率に優れていると共に、耐環境応力亀裂性と易開封性との組合せを有する易開封性樹脂製容器蓋に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料用ボトル等に用いる樹脂製容器蓋は、今日では一般的であり、一般にプロピレン系重合体や、エチレン系重合体などのオレフィン系樹脂製のものが広く使用されている。
【0003】
本出願人の提案に係る実開昭64−26257号公報には、容器首部と係合するための螺子部を内面に有するポリプロピレン製樹脂キャップにおいて、該螺子部表面は、JIS B 0651に基づいて測定した表面粗さが2乃至6μmの範囲にあることを特徴とするポリプロピレン製樹脂キャップが提案されている。
【0004】
また、特開平9−315451号公報には、天面及びスカートから成るキャップにおいて、少なくとも容器口に接する天面内面が密度が0.935g/cm以下のエチレン系重合体の連続相と、エチレン系重合体−オルガノポリシロキサン共重合体の分散相との樹脂組成物で形成されていることを特徴とするキャップが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポリプロピレン製キャップは、耐熱性にもある程度優れており、耐環境応力亀裂性にも優れているという利点があるが、開封性と成形性とに未だ問題を有している。
【0006】
即ち、一般に樹脂製キャップはボトルの口部にネジにより締結されるが、ポリプロピレンは滑り性が悪く、開栓トルクが大きくなり、締まりが硬く、開栓しにくいという問題を有している。この問題を解決するために、キャップに成形するポリプロピレンに滑剤を含有させる手段が採用されているが、開栓トルクの低減・改善には未だ限度があるとともに、無菌充填(アセプティック充填)のように、キャップを殺菌液と接触させ、その後水洗を行う用途では、キャップ表面の滑剤が流出するため、開栓トルクがやはり増大し、開栓トルクが異常に増大するという問題がある。
【0007】
また、ポリプロピレンは、ポリエチレンに比して融点が高く、熱成形には高温を必要とし、従って、成形後の樹脂製品の冷却にも長時間を必要とするとともに、ポリプロピレンは高密度ポリエチレン等に比して熱伝導率も低く、冷却効率が低くなり、金型中での占有時間が長くなるという問題がある。
【0008】
更に、圧縮成形のように、溶融された樹脂を型外においても取り扱わねばならない成形法では、ポリプロピレンはドローダウン性が大きく、また工具や装置に粘着する傾向があるという作業性の面での問題をも有している。
【0009】
一方、ポリエチレンは成形性の点では、ポリプロピレンに比して優れているが、キャップのシール性保持に必要な剛性がポリプロピレンに比して劣り、またボトル内容物やその上記との接触により環境応力亀裂を発生しやすいという問題をも有している。
【0010】
従って、本発明の目的は、成形作業性や成形の能率に優れているとともに、内容物のシール性、易開封性及び耐環境応力亀裂性に優れているポリエチレン系の易開封性樹脂製容器蓋を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、メルトフローレート(MFR)が2.0〜10g/10分であり、下記式
FLR=I(H)/I(L) ‥(1)
式中、I(H)は190℃の温度及び21.6kg荷重で測定したメルトフローレートであり、I(L)は190℃の温度及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである、
で定義されるフローレシオ(FLR)が50以上である高密度ポリエチレンの圧縮成形で形成された易開封性樹脂製容器蓋が提供される。
本発明においては、前記高密度ポリエチレンが0.945〜0.960g/cmの密度を有するものであること、前記高密度ポリエチレンが9000〜14000kg/cmの曲げ剛性を有するものであること、前記高密度ポリエチレンがJIS−K6760で測定して15時間以上の環境応力亀裂時間を有するものであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明では、下記の条件の全て、即ち
(1)エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、
(2)メルトフローレート(MFR)が2.0〜10g/10分であり、
(3)下記式
FLR=I(H)/I(L) ‥(1)
式中、I(H)は190℃の温度及び21.6kg荷重で測定したメルトフローレートであり、
I(L)は190℃の温度及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである、
で定義されるフローレシオ(FLR)が50以上であり、
且つ
(4)密度が0.945〜0.960g/cmである、
を満足する高密度ポリエチレンを、容器蓋(キャップ)の成形に用いることが特徴である。
【0013】
本発明で用いる高密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体からなることが耐環境応力亀裂性の点で重要である。
【0014】
高密度ポリエチレンは、ポリエチレンの内でも剛性が大きく、容器蓋の天面における変形を低減して、シール性やその保持性を維持する上で望ましい材料ではあるが、内容物やその蒸気との接触により環境応力亀裂を発生しやすいという問題を有している。即ち、環境応力亀裂はポリエチレン成形品によく見られる欠陥の一つであり、応力が加わっているポリエチレン成形品などに、水、アルコール類等の有機系溶媒、界面活性剤、或いはそれらの蒸気等が接触すると、亀裂を発生する現象として知られている。
樹脂製容器蓋の場合、容器蓋のシール部には容器口部との密封圧力(シール圧)が必ず印加されており、しかもこのシール部には内容物やその蒸気が接触するため、環境応力亀裂が至って発生しやすい環境となっていることが了解されよう。
而して、容器蓋のシール部にこのような亀裂が発生すると、この亀裂がたとえ微細なマイクロクラックであっても、漏洩や密封不良を招くことになり、この問題は解決しなければならない重要な課題といえるものである。
【0015】
本発明では、高密度ポリエチレンの内でもエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体を選択し、これを容器蓋の形成素材として用いることにより、先ず環境応力亀裂の問題を解消したものである。
後述する例を参照されたい。エチレン単独からなる高密度ポリエチレンを用いたキャップでは、4ボリュームの炭酸飲料を充填し、50℃×7日の保存試験を行った場合、10本中10本のボトルのキャップについて環境応力亀裂の発生が認められるのに対して、エチレン・ブテン−1共重合体からなる高密度ポリエチレンを用いたキャップでは、同様の試験において、10本中1本についても環境応力亀裂が発生していないのであって、本発明の優れた作用効果が明らかとなる。
【0016】
本発明に用いる高密度ポリエチレンは、メルトフローレート(MFR、JIS−K6760)が2.0〜10g/10分の範囲内にあることも、容器蓋への成形性乃至加工性や、耐環境応力亀裂性の点で重要である。
【0017】
MFRが上記範囲を下回ると、溶融流動性が低下するため、キャップの微細構造、例えば密封のためのシール部構造、タンパーエビデント性付与のためのブリッジ構造等を精度よく形成することが困難となる傾向があり、溶融流動性を向上させるために成形温度を高くすると、冷却に長時間を必要とし、成形能率が低下する傾向がある。一方MFRが上記範囲を上回ると、溶融流動性の点では問題がないとしても、前述した環境応力亀裂が発生しやすくなるので好ましくない。また、MFRが上記範囲を上回ると、剛性が不足したり、溶融ストランドのカッティング等の加工性が低下する傾向がある。
【0018】
本明細書におけるフローレシオ(FLR)は前記式(1)で定義されるものであるが、式(1)中の分母のI(L)は、通常の測定条件で測定されるメルトフローレート(MFR)であり、一方分子のI(H)は通常の測定条件の低荷重(2160g)の10倍の荷重を印加して測定したメルトフローレートを示している。即ち、このフローレシオ(FLR)は、メルトフローレートの荷重依存性を比率で示している。
一般に、低荷重でのメルトフローレートは分子量と密接な関係(1対1の対応があり、分子量が大きくなるほどFLR値は小さくなる)にあるが、高荷重でのメルトフローレートではずり応力の影響が大きく現れ、低分子量成分の含有比率が大きい場合には大きな値となり、逆に低分子量成分の含有比率が小さい場合には小さな値となる。
【0019】
従って、高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が同じであっても、前記フローレシオ(FLR)が大きいということは、同じ平均分子量であっても、比較的分子量の高いものから比較的分子量の小さいものまで分布の範囲が広いということを物語っている。
【0020】
本発明において、このようにフローレシオの大きい高密度ポリエチレンを使用すると、成形性が顕著に向上して(これは高荷重での押出量が増大することからも了解される)、低温での成形が可能となり、冷却のための型占有時間も短くなるため、キャップの生産性乃至生産効率を顕著に高めることが可能となるのである。
【0021】
更に、樹脂製容器蓋では、上記フローレシオの高密度ポリエチレンを使用しているため、滑り性が良好であり、種々の履歴を経た場合にも、開栓トルクが比較的低い範囲に安定に維持されており、開栓が至って容易であるという特徴を有している。
即ち、本発明のキャップによれば、従来のポリプロピレン製キャップに比して開栓トルクを低く抑制できるばかりではなく、キャップの易開栓性を、滑剤の配合なしに、或いは滑剤を配合するとしても、従来の配合量の1/10以下の量で達成することができる。
【0022】
本発明では、樹脂キャップへの滑剤の配合を取りやめ、或いは配合するとしても極めて少量ですむため、付加的な利点が達成される。樹脂キャップの製造現場では、キャップ天面への印刷が必要となる場合が多いが、流通及び生産調整上の必要性により、キャップの成形時と印刷時との間に1週間程度のずれが発生する場合がある。
このような時間的なずれが発生すると、キャップの天面に滑剤がブリードして印刷インキが接着しにくくなる。この接着不良の問題を解決するためには、接着強度を上げるための格別の前処理が必要となり、しかも経時に伴い前処理の程度を挙げるか、或いは時間をかける必要がある。勿論、このような前処理は生産性の低下につながることになる。
本発明の特定の高密度ポリエチレンから成る樹脂キャップでは、滑剤ブリードの問題が解消されるため、天面への印刷を、製造段階での経時に関わらず、安定に生産性を落とさずに可能と成るという利点が達成されるものである。
【0023】
[樹脂]
本発明では、容器蓋を構成する樹脂として、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、メルトフローレート(MFR)が2.0〜10g/10分であり、前記式(1)で定義されるフローレシオ(FLR)が50以上であり、且つ密度が0.945〜0.960g/cmである高密度ポリエチレンを用いる。
【0024】
上記高密度ポリエチレンにおいて、エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、特にC数が3乃至12のα−オレフィン、具体的にはプロピレン、ブテン−1、、ヘキセン−1、、オクテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1等が単独或いは2種以上の組合せで使用される。
これらのα−オレフィン共単量体は、高密度ポリエチレンの耐環境応力亀裂性を向上させるものである。
上記α−オレフィンの内でも、ブテン−1及びヘキセン−1が好適である。
【0025】
一般に、エチレン・α−オレフィン共重合体における密度は、α−オレフィン共単量体の量が増大するに伴って、低下する傾向がある。本発明に用いる高密度ポリエチレンにあっては、密度が前述した0.945〜0.960g/cmの範囲内にあるように、α−オレフィンが共重合されているべきである。
この高密度ポリエチレンにおけるα−オレフィンの含有量は、重合法によっても変化するが、一般に1乃至15重量%、特に1乃至10重量%の範囲にあるのがよい。
【0026】
本発明に用いる高密度ポリエチレンは、0.945〜0.960g/cm、特に0.950乃至0.955g/cmの密度を有するべきである。密度が上記範囲を下回ると、樹脂製容器蓋としての剛性が不足し、例えば天面の膨出変形等によりシール性が低下する傾向がある。一方、密度が上記範囲を上回ると、環境応力亀裂などが発生しやすくなる傾向がある。
【0027】
本発明において、高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)及び式(1)で定義されるフローレシオ(FLR)が特定の範囲にあることの重要性については既に指摘したとおりであるが、フローレシオが50以上、特に70乃至150の範囲にあることの重要性が強調されなければならない。
【0028】
本発明に用いる高密度ポリエチレンの製法は、特に限定されず、例えば、少なくとも一方がエチレン・α−オレフィン共重合体からなる高密度ポリエチレンであって、高分子量のものと、低分子量のものとを、MFR及びFLRが上記範囲となるように溶融混練することによっても製造できる。
しかしながら、操作の簡単さ及び組成の均質さからいって、それ自体公知の高密度ポリエチレンの重合法において、多段重合法、一般に二段重合法で製造されたものが好ましい。高密度ポリエチレンの重合法においては、チタン系触媒成分及び有機アルミニウム化合物触媒成分から成るチーグラー型触媒の存在下に、必要により水素の存在下に、有機溶剤中、液状単量体中、或いは気相中でエチレンを重合させる。この重合法において、一段目において、エチレン或いは更にα−オレフィンを重合させて高分子量成分の基となる高密度ポリエチレンを製造し、引き続き重合系中にエチレン、α−オレフィン及び水素を導入して、高分子量成分と低分子量成分とを含む高密度ポリエチレンを調製する。
【0029】
本発明の目的に好適な高密度ポリエチレンは、市販品として入手することができ、例えば、日本ポリケム(株)社よりノバテックHDの商品名で入手することができる。
【0030】
本発明に用いる高密度ポリエチレンは、JIS−K6760により測定して、9000〜14000kg/cmの曲げ弾性率を有するものであることが好ましい。曲げ弾性率が上記範囲を下回ると、シール性が不満足となり、一方上記範囲を上回ると、成形後のキャップの型からの無理抜きが難しくなるなど、成形作業性に難点が現れると共に、耐環境応力亀裂性が低下するなど、キャップ性能の点でも満足な性能が得られなくなる。
【0031】
本発明の樹脂製容器蓋では、高密度ポリエチレンを用いているにもかかわらず、例外的に優れた耐環境応力亀裂性を有している。この特性は、JIS−K6760で規定されている環境応力亀裂時間で評価できる。本発明の容器蓋では、環境応力亀裂時間(F50)が15時間以上である。
【0032】
本発明樹脂製容器蓋では、滑剤の使用なしに十分な滑り性が得られるが、所望によっては少量の滑剤を配合することができる。
このような滑剤としては、一般にポリエチレンに使用されるもの全てが適用可能である。すなわち、滑剤は(イ)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、(ロ)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、(ハ)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、(ニ)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、(ホ)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、(ヘ)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケンおよび(ト)それらの混合系が一般に用いられるが、特に脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系が好ましい。これらの滑剤は1.0重量%以下、特に0.01乃至0.40重量%の量で含有させることが好ましい。
【0033】
[容器蓋]
本発明は、上述した特定の高密度ポリエチレンを容器蓋の構成材料として用いる点に特徴を有するものであり、容器蓋の形状及び構造はそれ自体公知の任意のものであってよい。しかしながら、本発明の容器蓋は、上述した特徴を有するので、圧縮成形で形成され、天面部とその周囲から垂下するスカート部とから成り、天面部内面には容器口部と当接するシール部を有し、スカート部内周には容器口部外周のネジと係合するネジを備え、且つスカート部の下部には開封明示機構を備えているものに好適に適用できる。以下、この例について説明する。
【0034】
ワンピース型のキャップの一例を示す図1において、このプラスチックキャップ10は、容器口部の形状にあわせてほぼ円筒形状をしており、天面12と天面12の周縁部から垂下したスカート状側壁部13とから形成されているキャップ本体1と、スカート状側壁部13の下側に環状切断面3を介して位置する開封明示用の周状バンド2からなる。
【0035】
キャップ本体1と周状バンド2とは環状切断面3により分割されていると共に、ブリッジ4により連結されている。
【0036】
スカート状側壁部13の外面には、キャップの把持を容易にするためのローレット溝14が形成されており、一方スカート状側壁部13の内面側には、容器口部(図示せず)との締結を可能にするためのネジ15が形成されている。ネジ15の所々には、開栓に際してガス抜きを速やかに行い、キャップの飛翔を防止するためのガス抜き溝16が形成されていてもよい。
【0037】
キャップ本体1の天面部12内面には、容器口部のシール機構17が天面部と一体に設けられており、このシール機構17は、容器口部の外周面乃至外周側肩部と係合するアウターリング19からなっている。このアウターリング19の内側には、容器口部とキャップとの位置決めを行わせるためのインナーリング18が設けられている。また、アウターリング19の内面側付け根には、容器口部のの頂面乃至外周側肩部と当接して、天面部12の内圧によるバックリング変形(パネリング変形)の開始点をこの位置に固定するための肩部19aも設けられている。
【0038】
側壁部13の下部が周状バンド2に向けて外径の増大する部分、特にテーパー状の部分20から成っており、この下にブリッジ4の形成用スペースが確保されている。同様に、周状バンド2の外面も下向きに径の増大するテーパ面22となっている。
【0039】
側壁部下部20の内面側には段部21が形成されており、この段部下面側からブリッジ4が周状バンド2側に延びており、型抜き等の成形性を良好にしている。
【0040】
キャップ本体1と周状バンド2とは環状切断面3により分割されているが、ブリッジ4は環状切断面3よりも内側に位置していることが了解されよう。
【0041】
周状バンド2は、容器口部への係止のために、径内方向且つ斜め上方向に延びる片状のフラップ片25を多数周状に配置して備えている。フラップ片25は容器口部外周に設けられたあご部の下側と係合してキャップを容器口部に係止させるものである。
【0042】
また、周状バンド2の内面側には、フラップ片25の付け根26が存在するが、この付け根26の上側には凹部27が、また下側には凹部28が形成されている。フラップ片25は斜め下向きの状態で成形されるが、バンド2の下側凹部28はフラップ片25の径外方向への変形を容易にして、その無理抜きを可能にするものであり、一方、バンド2の上側凹部27は、フラップ片25が上向きに反転されて容器口部に閉栓されるとき、やはりフラップ片25の径外方向への変形を容易にして、容器口部への閉栓を可能にするものである。
【0043】
一方、キャップの開栓時においては、フラップ片25等の固定機構により周状バンド2が容器口部に固定され、キャップ本体1のみが開栓方向に回転するので、剪断力によりブリッジ4が破断する。この破断により、キャップ本体1と周状バンド2とが分離して開封が行われる。
【0044】
このワンピースタイプの樹脂キャップ10では、キャップを前述した特定の高密度ポリエチレンで形成したため、密封部も耐環境応力亀裂性に優れていると共に、天面の内圧による変形も小さく抑えられ、優れた密封性が得られると共に、容器口部との滑り性にも優れており、開栓操作が容易であるという利点が奏されるものである。
【0045】
本発明の容器蓋の他の例を示す図2において、このキャップは、ツーピース構造となっており、基本的構成は図1に示したものと同様であり、図1と共通の引照数字で示されるが、プラスチックのキャップシェルと別体としてライナーが設けられている点及び開封明示用バンド2の機構が図1のものと相違している。
【0046】
即ち、キャップ本体1の天面部12の内面には、側壁部13から小間隔をおいて周状突起のリテイナー30が設けられ、前記リテイナー30内にライナー31が保持されている。
ライナー30は、キャップ本体1を倒立した状態で、内部にライナー形成用樹脂の溶融塊を押しだし、これを押圧成形することにより形成され、容器口部の内周部或いはその肩部と当接する内周リング部32と、容器口部の頂面と係合する平面部33とを備えており、容器口部との密封が行われるようになっている。
【0047】
また、リテイナー30の内面側には径内方向向きのくさび状突起34が周状に多数配置され、ライナー31はこのくさび状突起34とかみ合って、ライナー脱落防止を図っている。
【0048】
図2のキャップでは、開封明示用バンド2の内面側に、周状に多数配置され、且つ径内方向且つ斜め方向に延びる可撓性フィン24が設けられている。この可撓性フィン24は容器口部外周のあご部の下面側と係合するものであり、可撓性フィン24の付け根から延びる方向は、閉栓時には可撓性フィンの逃げが可能であり、開栓時には可撓性フィンと前記あご部との係合が可能となるようなものである。
【0049】
図2のキャップでも、可撓性フィン24、24間には凹部27が形成されており、閉栓時に可撓性フィン24の逃げが可能となるようになっていると共に、成形時には型からの可撓性フィンの抜けが可能となるようになっている。
【0050】
更に、図2のキャップでは、開封明示用バンド2の下端に薄肉部があり、この薄肉部は径内方且つ上向きにベンドしてビード23を形成している。このビード23は、キャップを圧縮成形又は射出成形後、薄肉部を熱収縮させることにより形成されるものであり、可撓性フィン24と容器口部外周のあご部との係合力を向上させる作用を有すると共に、開封明示用バンドの下方から器具等を挿入して、不正開封を防止する作用を有するものである。
【0051】
このツーピースタイプのキャップは、図1のキャップと同様に優れた易開栓性を示すものであり、また、耐圧密封性のあるライナー材を組み合わせることにより、耐圧密封性やその持続性が得られるものである。
【0052】
[樹脂製容器蓋の製造法]
本発明では、特定の高密度ポリエチレンを容器蓋の製造に用いることにより、樹脂温度を低めて尚優れた成形性が得られ、また成形の際の冷却時間を短縮して成形能率及び生産性を顕著に向上させうるものである。
【0053】
樹脂キャップの成形は、圧縮成形により行うことができる。圧縮成形では、押出機のホッパーに前述した高密度ポリエチレンを供給し、スクリューで溶融混練した後、ダイスを通してストランドの形に押しだし、この押出物を一定の量になるように切断し、切断された溶融樹脂塊を開いた圧縮成形型中に投入し、圧縮成形型を圧力下に閉じることにより、圧縮成形を行うことができる。
【0055】
本発明で用いる高密度ポリエチレンでは、圧縮成形の際の樹脂温度も、一般に160乃至230℃、特に160乃至190℃と、ポリプロピレンの樹脂温度に比してかなり低く、このために、やはり、圧縮成形型内での冷却時間をかなり短縮することができる。
【0056】
本発明では、圧縮成形により樹脂キャップを成形する。即ち、圧縮成形では、既に指摘したとおり、樹脂をストランドに押し出し、これを一定の量に切断する操作が必要であるが、本発明に用いる高密度ポリエチレンでは、ドローダウン性のあるポリプロピレンに比しては勿論のこと、その他の高密度ポリエチレンに比しても、ドローダウンがなく、ストランドの押し出しが安定しており、更に溶融ストランドのカッティングも良好であって、優れた圧縮成形によるキャップが得られる。
【0057】
圧縮成形による樹脂キャップの成形を説明するための図3(上面図)において、この圧縮成形装置40は、軸41により回転可能に設けられた回転支持体42と、回転支持体の周囲に多数設けられた圧縮成形型43とを備えている。
【0058】
圧縮成形型43は1回転することにより、1回の成形操作が完了するように回転支持体42の回転と関連づけされており、その周囲には、溶融樹脂供給域A、成形域B、冷却域C及び排出域Dが順次設けられている。
【0059】
溶融樹脂供給域Aに溶融樹脂を定量供給するための供給機構44が設けられ、この溶融樹脂供給機構44は、押出機45、ダイヘッド46及び押出機45のノズルとダイヘッド46とを連結するフレキシブルホース47からなっている。ダイヘッド46には、ダイヘッド46を径方向に駆動する往復駆動機構48も設けられている。即ち、往復駆動機構48はダイヘッド46を成形型43に対応した作用位置と成形型から離れた非作用位置とに移動自在に駆動することができる。これは、溶融樹脂の塗布量が安定するまでの作業開始時と、トラブルがあった場合にダイヘッド46を非作用位置に位置せしめ、溶融樹脂が成形型43内に入るのを防止する作用をする。
【0060】
溶融樹脂供給域Aにおいて、成形型43は開いた状態にあって、押出機45で溶融混練された高密度ポリエチレンは、フレキシブルホース47を経て、前進位置にあるダイヘッド46に供給され、ダイヘッド46に付属するカッター(図示せず)により一定量切断され、成形型10に供給される。
【0061】
樹脂が供給された成形型10は、供給域Aから成形域Bに移行し、型締めされて樹脂のキャップへの成形が開始される。型締めが完了した後、成形型10は冷却域Cに移行して成形された樹脂の冷却が行われ、樹脂の冷却が完了した成形型10は型開きされて、排出域Dに達し、排出装置49によりキャップの取り出しが行われる。
以下、成形型10は樹脂供給域Aに移行し、前述した動作が反復される。
【0062】
【発明の効果】
本発明では、高密度ポリエチレンの内でもエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体を選択し、これを容器蓋の形成素材として用いることにより、先ず環境応力亀裂の問題が解消される。
また、本発明では、フローレシオの大きい高密度ポリエチレンを使用することにより、成形性が顕著に向上して、低温での成形が可能となり、冷却のための型占有時間も短くなるため、キャップの生産性乃至生産効率を顕著に高めることが可能となるのである。
更に、上記フローレシオの高密度ポリエチレンを使用しているため、滑り性が良好であり、種々の履歴を経た場合にも、開栓トルクが比較的低い範囲に安定に維持されており、開栓が至って容易であるという特徴を有している。
更にまた、上記の特定の高密度ポリエチレンから成る樹脂キャップでは、滑剤ブリードの問題が解消されるため、天面への印刷を、製造段階での経時に関わらず、安定に生産性を落とさずに可能と成るという利点が達成されるものである。
【0063】
【実施例】
本発明を次の例で説明するが、この例に限定されない。
(1)組成物の作成
表1に示す各樹脂及び添加剤の重量を測定し、ヘンシルミキサーで均一に混合後、押出機にて溶融混合し、ペレットを作成した。この溶融混練は50mm径押出機(L/D28、フルフライトスクリュー)を使用して220℃で溶融押出し、ペレットとした。
【0064】
(2)容器蓋の成形に使用した樹脂材の物性測定は次の通りである。
1)メルトフローレイト(MFR)の測定
JIS−K6760に準拠して測定した。190℃、2.16kgの荷重の条件で測定した。
2)フローレシオ(FLR)
JIS−K6760に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定したMFRであるI(L)と190℃、21.6kgの荷重の条件下で測定したMFRであるI(H)の比を計算し、FLRとした。
FLR=I(H)/I(L)
3)密度
JIS−K6760に準拠して測定した。
4)曲げ弾性率
射出成型機により樹脂温度が220℃、金型温度40℃にて成形して得られた試験片を、JIS−K7106に準拠して測定した。
5)定ひずみ環境応力亀裂試験(ESC)
JIS−K6760に準拠して測定した。ただし、浸漬に使用する溶液は10%界面活性剤を使用した。各試験片の亀裂の発生時間を求め、F50として、時間単位で明記した。
【0065】
(3)シェルの成形
試験用シェルは圧縮成型機を使用して成形した。すなわち、各種樹脂材の組成物(ペレット)を、40mmの押出機で、160℃〜234℃の範囲内で樹脂ごとに樹脂の成形に適した温度に且つ樹脂の成形に適した圧力にそれぞれ設定後均一溶融し、押し出し、この溶融樹脂を押出機の先端のノズルで接している回転カッターにより、連続して切断する。又、この溶融樹脂の押し出し量は押出機のスクリュ−回転数にて調整する。カッターで切断された溶融樹脂は、直下に配置されたシェル金型中に落下させ、圧縮成型機により押圧され直接シェルを成形する。金型を冷却後、成型機から排出される。これを試験用キャップに使用した。シェル成型時の押出機の樹脂温度、その樹脂圧力を押出機に設置している専用の計器で確認した。なお樹脂温度は℃で、又樹脂圧力はkgf/cm で明記した。
【0066】
(4)キャップ成形性の評価
キャップの成形性は、樹脂押出機の押し出し先端のノズル出口でのストランドの安定性と、ストランドのカッティング性、ストランド外観を観察し評価した。又、圧縮成型機で成形したキャップの天面の反りを観察した。
6)ストランド安定性基準と外観観察
・きわめて安定→◎
・ストランドが安定している→○
・ストランドにうねりがみられ、又は表面が鮫肌気味→△
・ストランドに大きなうねりがあり、又はメルトフラクチャー気味→×
7)ストランドカッティング性
・カッティング良好→○
・ややカッティング性問題あり→△
・カティング性不良→×
8)シェル天面変形
・シェルの天面が真っ平らである→◎
・シェルの天面がほぼフラットである→○
・シェルの天面がややへこんでいる→△
・シェル天面が大きくへこんでいる→×
【0067】
(5)キャップ性能評価
9)シェルの割れ評価
4.0volに調整した溶液を500mlのPETボトルにつめ、圧縮成型機で成形したシェルを密栓し50℃の恒温器に正立で1週間放置後、シェルに割れが発生していないかを調べ、その試料数10のうち、割れた本数を確認した。
10)開栓トルク測定
4.0volに調整した溶液を500mlのPETボトルにつめ、圧縮成型機で成形したシェルを密栓し、室温に1週間放置後、開栓トルク値を測定した。単位はkgfcmで明記した。
【0068】
(6)実施例1〜7
11)シェルの成形及びキャップの評価結果
日本ポリケム社製HDPE材HJ340と日本ポリオレフィン社製6080とを実施例の比率となるように計量し、又、必要に応じて滑剤、着色剤を添加後、ヘンシルミキサーで均一にドライブレンドした。これを押出機で220℃で溶融押し出してペレットとした。このペレットを使用して圧縮成型機にてシェルを成形した。又、シェル成型時に、樹脂温度、樹脂圧力、ストランド安定性、カッティング性、その外観を観察した。
圧縮成型したシェルを、4.0Volに内容液が調整され、満たされている500mlのPETボトルに密栓し、開栓トルクとシェルの割れを評価した。その結果を表2に示した。
【0069】
(7)比較例8〜13
表3に示す樹脂材にてシェルを実施例1と同様に成形し、シェルの評価をした。その結果を表3に示した。
【0070】
以上の結果から、本発明で明らかな様に、2以下の低MFRでは、圧縮成型方法では樹脂温度をあげても、成型品の冷却に問題があり、目標としたシェル寸法のキャップが生産できなかった。
又、10を越す高MFRではFLRも小さく、キャップの割れが確認され、キャップとしての機能に問題があった。従って、実施例であげたように、MFRは2〜10、FLRが50以上であれば、圧縮成型でのキャップの生産は問題なく良好であり、又キャップの割れも発生せず、優れたキャップが得られた。又、滑剤を添加することで開栓トルク値は更に低下した。
【0071】
【表1】
Figure 0004456681
【0072】
【表2】
Figure 0004456681
【0073】
【表3】
Figure 0004456681

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂製容器蓋の一例(ワンピース構造)の一部断面側面図である。
【図2】本発明の樹脂製容器蓋の他の例(ツーピース構造)の一部断面側面図である。
【図3】圧縮成形による樹脂製容器蓋の製造装置の配置図である。

Claims (4)

  1. エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であって、メルトフローレート(MFR)が2.0〜10g/10分であり、下記式
    FLR=I(H)/I(L) ‥(1)
    式中、I(H)は190℃の温度及び21.6kg荷重で測定したメルトフローレートであり、I(L)は190℃の温度及び2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである、
    で定義されるフローレシオ(FLR)が50以上である高密度ポリエチレンの圧縮成形で形成された易開封性樹脂製容器蓋。
  2. 前記高密度ポリエチレンが0.945〜0.960g/cmの密度を有するものである請求項1記載の易開封性樹脂製容器蓋。
  3. 前記高密度ポリエチレンが9000〜14000kg/cmの曲げ剛性を有するものである請求項1又は2記載の易開封性樹脂製容器蓋。
  4. 前記高密度ポリエチレンがJIS−K6760で測定して15時間以上の環境応力亀裂時間を有するものである請求項1乃至3の何れかに記載の易開封性樹脂製容器蓋。
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