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JP4455129B2 - 収差計測方法及びそれを用いた投影露光装置 - Google Patents

収差計測方法及びそれを用いた投影露光装置 Download PDF

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JP4455129B2 JP2004112170A JP2004112170A JP4455129B2 JP 4455129 B2 JP4455129 B2 JP 4455129B2 JP 2004112170 A JP2004112170 A JP 2004112170A JP 2004112170 A JP2004112170 A JP 2004112170A JP 4455129 B2 JP4455129 B2 JP 4455129B2
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Description

本発明は、収差計測方法及びそれを用いた投影露光装置に関し、たとえば半導体素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等をリソグラフィー工程で製造する際に使用される投影露光装置の投影光学系の波面収差やフォーカス等を計測し、補正する際に好適なものである。
半導体素子、液晶表示素子又は薄膜磁気ヘッド等をリソグラフィ工程で製造する際に、フォトレチクル又はレチクル(以下「レチクル」と総称する)のパターンの像を投影光学系を介して感光基板上に結像する投影露光装置が使用されている。かかる投影露光装置の投影レンズの収差によるデバイスパターンへの影響が今日深刻な問題になっており、レンズ収差計測の重要度が増している。また投影レンズに対する収差の要求は当然厳しく、その検査項目も年々増加する一方で、検査精度の向上だけでなく検査時間の短縮も重要な課題である。
また、特に半導体素子においては、素子を形成するパターンに微細化による素子の性能向上要求が大きく、半導体素子の標準的な技術ロードマップとして作成されているITRS(International Technology Roadmap for Semicondouctors)のロードマップでは2年毎に素子パターンの微細化がなされるようなっている。1990年代前半までは、半導体素子のパターン寸法は、投影露光装置の露光波長よりも大きく、パターンの微細化要求に応えるためには、投影露光装置の露光光源を変更し、露光波長を短くすることが行われていたが、1990年代後半になると、露光波長よりも微細なパターン寸法が要求されるようになり、超解像技術と呼ばれる光学的な解像限界を超えるパターンの投影解像ができるように開発された技術を用いて半導体素子の製造が行われるようになっている。超解像技術を用いた投影露光装置による結像は、投影レンズに収差に非常に敏感で、半導体素子パターン投影像のレチクルパターンに対する忠実性に対する要求を満たすために、投影レンズの収差量としては、露光波長の5/1000という非常に低収差な投影レンズが必要となっている。
また、超解像技術では、解像力を露光波長以下とするために、レチクルパターンにより生じる回折光の一部のみを使用して投影像を結像したり、レチクルパターンを通過した光の位相差を利用して解像力を高めたりすることが行われるので、パターンの形状によっては、投影レンズの収差の内、ある特定の収差のみがウェハ上に投影された結像パターンの形状に大きく影響するということが発生する。このため、投影レンズの収差をレチクル上のパターン形状に合わせて高精度に調整することも必要となってきている。
これに対し現在様々な方法が提案され、球面収差、像面、非点、コマ、波面収差などの収差測定が実際の評価や検査に用いられている。これら収差測定の中でもZernike係数は波面収差そのものであり、レンズ製造現場では通常干渉計(PMI(phase measurement interferometer等)を用いて計測を行っている。しかしながら投影露光装置本体上ではスペースの制約が大きく干渉計計測が難しい。そのため干渉計を使わないで波面収差を計測できる方法が検討されている。
一般に波面収差はZernike多項式等で近似する事で、そのファクターである球面収差、像面、非点、コマなどといった代表的な収差を算出可能である。またZernike係数を使った実デバイスパターンでのSimulationの結果からマスクやプロセス更には露光装置へのフィードバックも活発に行われておりその用途は高く、投影露光装置上でZernike係数を高い精度で計測する事を、強く求められている。
波面収差の測定方法としては、特許文献1や特許文献2で示される方式がある。この測定方式は、レチクルパターン面に格子状のパターンがあり、上記パターン中心の真下に少し距離をおいてピンホールがあり、更にレチクルガラス面には上記パターン中心の真上に凸レンズを置いた特殊なレチクルを用いる。露光装置の照明系から出た照明光は前記凸レンズによりσ1以上の幅広い照明角度でその下にある格子パターンを照射する。格子パターンを透過した光はその下にあるピンホールを通過する。
この時通過できる光は前記格子パターンそれぞれの点の位置と前記ピンホールを結んだ角度の光のみに限定される。つまり前記格子パターンの各点から出た光は全く異なる角度の光となって進む。これら角度の異なる光は投影レンズ瞳面上で異なる位置に到達し、投影レンズの波面収差の影響を受けウエハー面上で結像される。この時結像した格子パターンの各点は異なる波面収差(位相)の影響を受けている。つまり光線は波面の法線方向に進むため結像した各点は波面の各点の傾き分だけシフトすることになる。よって前記結像した格子パターンの理想格子からのずれを測定することにより瞳面内各点の波面の傾きが得られ様々な数学的手法から波面を算出することができる。
また、特許文献3で開示された方式がある。この測定方法は、光を遮断する遮光部と、光を通す第一の透明部と、第二の透明部とをもち、第一の透明部を透過した光と第二の透明部を透過した光の位相差が90°且つ、遮光部と第一、第二透明部の幅の比が2:1:1に構成された回折格子パターンをもつ測定用マスクを用いる。この特殊な回折格子の回折光はプラス1次回折光とマイナス1次回折光の一方が実質的に零となる。したがって、この特殊な回折格子の投影レンズによる投影像は、2次以上の回折光角度が投影レンズ開口数より大きくなるように回折格子のピッチが設定された場合、0次の回折光とプラス1次またはマイナス1次回折光のいずれか一方との2光束干渉像となる。この2光束干渉像の結像位置は、投影レンズのもつ波面収差により0次回折光の位相と1次回折光の位相との間に発生する位相差に応じてシフトする。1次回折光が瞳面上を通過する位置は、回折格子のパターンピッチ、回折格子パターンの配置角度によってコントロールできるので、パターンピッチ、配置角度を変えた複数の回折格子に対する結像位置のシフトを測定することによって投影レンズの波面収差を算出することができる。
さらに、特許文献4で開示された収差測定法がある。この方式は、前記2種の収差測定法と違い、所望のZernike項に対応する収差のみを測定する方法である。この方式は、予め計算で求められた特殊な形状の照明絞りとマスク上のBOX in BOXパターンとを用いる。この方式に用いられる照明絞りの形状は、マスク上のBOXマークの投影レンズによる結像位置ずれが特定のZernike項に対し、その1つの係数に主に依存するように該投影光学系の瞳領域を通過する光束を制限するように予め計算して決定された形状を有している。したがって、特殊な照明絞りを用いてウェハ上に投影したBOXマークの結像位置ずれを特殊な照明絞りを用いないでウェハ上に投影した別のBOXマークの結像位置を基準に測定することにより所望のZernike項に対応する投影レンズの収差を算出することができる。
米国特許第5828455号 米国特許第5978085号 特許第3297423号 特開2003−178968号公報
しかし、特許文献1や特許文献2に開示された方式では、測定パターンを透過し投影レンズに入射、ウェハ上への結像に寄与する光がピンホールで照明光のごく一部に制限されるため、測定パターンをウェハ上のレジスト膜に転写するために必要な照明光光量がピンホールを介さない場合に比較し、100倍以上必要とされ、露光時間が非常に長くなるという問題がある。
さらに、測定パターンである格子状パターン各点の座標は投影レンズ瞳面上の座標と一対一に対応し、Zernike係数の形で投影レンズ収差を求めるためには瞳面上全ての座標に対する測定を行う必要があるため、一つの測定ポイントに対し、格子パターンの位置ずれを200点以上測定する必要があり、測定に多大な時間を要するという問題がある。
また、特許文献3の方式では、回折格子のパターンピッチと配置角度によって、投影レンズ瞳面上の収差測定点を調整するため、瞳面上の複数の点での波面収差を測定し、Zernike係数を算出するには、マスク上に複数の測定マークを配置する必要がある。パターンピッチは被測定レンズの開口数に応じて調整する必要があるため、開口数の違う複数の投影レンズの測定に対応するには、さらに多数の測定マークを予めマスク上に配置しておく必要があり、マスクの準備が煩雑になるという問題点がある。
さらに配置角度を0°あるいは90°とは異なる角度にした測定マークの測定は一部のオーバーレイ測定機でしか行えないという問題もある。
また、回折格子の2次回折光が投影レンズに入射してしまうと測定マークの位置ずれに誤差が生じ、正しく波面収差が測定できないので、回折格子のパターンピッチは2次回折光角度が投影レンズの開口数より大きくなるにしなければならないという制限があり、投影レンズ瞳全面での波面収差測定は原理上不可能でZernike係数を正確に求めることができないという問題がある。
特許文献4の方式は、2〜4点の測定で所望のZernike係数を正確に求めることができる利点があるが、正確にZernike係数を求めるためには、複数の照明絞りを用意するか、照明絞りを回転する作業を複数回行う必要があり、測定サンプルの作成時間が長くなるという問題点がある。
本発明の目的は、以上の従来技術の問題点を考慮し、サンプル作成作業が短時間かつ簡便で、サンプルの測定も特別な測定機を必要とせず、短時間の測定時間でZernike係数に対応する投影レンズの波面収差量を算出することができる収差測定方法を提供することにある。
本発明の一側面としての収差測定方法は、投影光学系の収差を測定する方法であって、光源からの光を用いて照明光学系でレチクルを照明するステップと、前記レチクルに形成されたテストパターンの像を前記投影光学系で基板上に投影する投影ステップと、前記テストパターンの像の位置ずれ量を測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定した前記位置ずれ量に基づいて、前記投影光学系の収差を決定する決定ステップと、を有し、前記投影ステップは、前記投影光学系の瞳の所定領域のみを前記光が通過するように前記光を前記照明光学系又は投影光学系の中に配置された整形手段と前記レチクルの前記テストパターンが形成された面と反対の面に形成された遮光パターンとを用いて整形する整形ステップを含み、前記所定領域の形状は、前記位置ズレ量が特定のZernike項の係数に主に依存するように、最適化を行ったものであることを特徴とする。
本発明の第一実施例によれば、瞳領域最適化手段を用いることにより所望の収差の測定を行うので、特定のZernike項に対しその係数を抽出することが可能となる。これにより、多数の測定を行うことなく、短時間の測定作業で所望のZernike項の係数を算出することができる。
また、測定用のテストパターン形状をオーバーレイ測定に一般的用いられるBOX in BOXマークあるいは、Bar in Barマークとすることで、特別な測定機を用いないで収差測定が可能となる。
また、マスク裏面に形成された遮光パターンとの組み合わせにより瞳領域の最適化を行うため、マスク裏面の遮光パターンと表面のテストパターンの組み合わせを複数配置しておくことにより、照明絞りを複数用意したり、回転して複数回テストパターンの露光を繰り返すことなく収差測定を行うことができ、テストサンプルの露光作業を簡便にできる。
さらにテキサスインスツルメンツ社のDigital Mirror Device(以下、DMDと称する。)など用いて有効光源を任意の形状に変化させることのできる可変装置を露光装置に搭載すれば、照明系絞りも新たに準備することなく任意の収差測定が可能となる。
また、マスク裏面の遮光パターンを投影レンズ開口数に依存せず有効光源の一部を遮光するパターンとすることで測定対象である投影レンズの開口数変化によりマスクを新たに準備することなく収差測定が可能となり、高価なテストマスクを複数準備するというコスト的な問題点も解決される。
さらに、第二の実施例では、輪帯形状の有効光源の径を変化させてテストパターンの位置ずれ量のデフォーカス成分、球面収差に対する敏感度をコントロールするため、特殊な形状の照明絞りを用意することがなく、露光機の焦点位置の管理が可能となる。また、最新の露光機では輪帯照明の径を任意にコントロールする機構が露光機に内蔵されているため、テストレチクルのみで最適焦点位置を管理することも可能であり、内蔵機構で有効光源形状を変化させるため、絞りを用いる場合のように露光光量を減ずることなく有効光源形状を変化させることが可能となり、測定サンプルの露光時間が大幅に増えることがない。
また、第一、第二の収差測定結果を露光機にフィードバックし、露光機に内蔵された収差補正機構を駆動することにより、より高精度なパターンニングを達成できる。
本発明の実施形態を説明する前にZernike係数の計測方法について説明する。
投影露光装置の本体上においてZernike係数計測、特に投影レンズの瞳面に対応するパターンの像の位置ずれを瞳面全面に渡って測定し、Zernike係数を算出する方式では幾つかの問題が指摘されている。Zernikeは直交多項式であるため各Zernike項は一般に影響を及ぼしあわない。つまり各Zernike係数は独立に計算が可能で、無限により高次な項を付け加えて計算可能である。しかしながら上記メリットを利用するには、離散的な計測点の集合が直交条件を満たさなければならならず制約も大きい。そこで直交性にこだわらない方法について以下考察する。
実際、主に結像性能に影響をおよぼす項はいわゆる低次項であり、今後デバイスの微細化が進みより高次項の影響を考慮する必要が出てきたとしても、現在一般的に議論されているZernike36項程で十分と思われる。特に36項に限る必要性は無いが、現実の投影光学系の低次のZernike項成分と比較し、その高次成分が十分に小さいと見なせる高次項までを考慮すれば良い。言い換えると、直交系でない近似計算を行う計測において、問題となる低次項の係数に影響をおよぼすであろう高次項までに限って近似計算を行う。
表1にZernike36項の数式表現を示す。ここで記号CはZernike係数を示し、その後の数字が項番号を示している。
Figure 0004455129
仮に投影レンズの波面がこの36項で全て表現されるとした場合、36項全てを使ってフィッティングを行える。
Figure 0004455129
上記行列式(1)を解くことになるが、実際は計測値Siには誤差が含まれ、更にデータの欠落、測定法の違いや測定法の条件(設計)変更などによる計測点(ri,θi)、i=1・・・qのサンプリングのしかた(測定点数、測定個所)が異なることによって解Cjは影響を受けることになる。
Figure 0004455129
行列式から見ると、行列Z→Z’とベクトルS→S’の変化がおこり結果として異なる結果を算出する(ベクトルc→c’)。上記問題は今まで挙げてきた計測方法共通の問題と言える。これらの問題を避ける方法としては、行列Zを固定すること、更に行列Zは直交条件を満たしてないので解が一意に決まる対角行列のような形を計測法自身が持つ事が望ましい。
Figure 0004455129
ここで上記対角行列の、行ベクトル(λ1,0,0,..0)だけに着目して、次のような方程式による最適化を考える。
Figure 0004455129
上記連立方程式(2)は計測される投影レンズの瞳座標に対応した任意の位置kにおける結像面での像の位置ずれ変化量がZernike項ごとにあらかじめわかっていれば(Zernike敏感度)、重み係数Wkおよび瞳領域kを最適化することで(2)を満足させることを意味している。(2)を満足する計測法を構築することにより、像の位置ずれ量S1は被計測投影光学系の1項のZernike係数のみを独立に計測する事になる。
Figure 0004455129
他のZernike項についても同様に重み係数Wkおよび瞳領域kを最適化することで独立にZernike係数を抽出可能となる。従って各々異なる計測条件(重み係数Wkおよび瞳領域k)にてZernike係数を計測することにより、Zernike項同士の干渉のない独立した計測法が実現できる。
ここで像の位置ずれとZernike敏感度の関係について述べておく。波面のスロープもしくは位相差はその瞳位置とZernike係数であらわされる。従ってそれらによって生じる像の位置ずれは、結像の際瞳面を通過した光束の位置(微小な領域)での波面のスロープもしくは位相差に線形である。
S1=g・ΣCi・Zi(x1,y1) ・・・(3)
S1...瞳座標(x1,y1)に対する位置ずれ
g...定数
Ci...Zernike係数
Zi(x,y)...瞳位置(x、y)でのi項のZernike敏感度
前記(3)式より、同様に様々なインコヒーレントな光束が異なる瞳位置を通過、結像するとその合成像Sはその線形性から、
=ΣWk・Sk
=ΣWk Σg・Ci・Zi(xk,yk)
=gΣCiΣWk・Zi(xk,yk) ・・・(4)
となる。
(4)式から像の位置ずれは、各微小な瞳領域ごとの位置ずれSkの総和であり、またそれはあるZernike項iについて言えば、瞳位置k毎のZernike敏感度の和にZernike係数を掛けたものである。すなわち、この瞳位置k毎のZernike敏感度の和を最適化することで所望のZernike係数を計測することができる。
以上の考え方を利用したZernike係数計測方法を実施することで、直交条件の問題から生じる像高や絶対値の問題を解決することができる。更に一般に1つの係数を求めるのに1つの計測値でよい為、計測時間を大幅に向上でき、これに関しても解決することができることを、本出願人が先に特許文献4において開示している。
ここで、特許文献4で開示した収差計測法を簡単に説明する。特許文献4の収差測定法の概念図を図1に示す。特許文献4の収差測定法では、投影露光装置の照明系ユニット内に照明絞り4を挿入し、マスク9上のテストパターンTPを照明する照明光の有効光源形状を最適化することで、テストパターンTPを通過し、投影レンズの瞳面10aに達する光束LPの瞳面上を通過する領域に制限を加えている。テストパターンTPは、図3に示すようなライン間もしくはスペース間のピッチ(間隔)がほぼ等しい周期パターンであり、かつ光が透過する個々のスペース幅が周期パターンの中心ラインもしくは中心スペースのパターンから外側のパターンに向かって減少する特殊のパターンとなっている。このパターンは透過した光の回折光が通常のスペースパターンと比較して非常に小さいという特性を有している。
この特性により、光束LPが通過する前記投影レンズ瞳面上の制限された領域は、前記照明絞りにより形成された照明光有効光源形状と同じ形状になる。したがって、所望のZernike係数を測定するために瞳領域を最適化するには、最適化したい瞳領域形状と同じ形状の照明絞りを用意すればよいことになる。すなわち、特殊な形状をしたテストパターンTPを配置したマスク9と、所望のZernike係数に対応する波面収差によってのみテストパターンTPの投影像TPaの位置ずれが起こるように最適化された瞳面領域と同じ形状を持つ照明絞り4とを用いることにより、前記投影レンズの所望のZernike係数を計測することができる。
しかし、実際にTPaの位置ずれ計測により複数のZernike係数を正確に算出するには、照明絞りの取り付け角度を複数回変更してテストパターンの露光を行うか、複数の照明絞りを用意して照明絞りを交換してテストパターンの露光を行う必要がある。このように、特許文献4の収差測定法には、複数回の照明絞りの角度変更と複数回のテストパターンの露光作業が必要になり露光作業が煩雑になるという問題があった。また、照明絞りの角度変更によらず、複数の照明絞りで収差測定を行う場合も、テストパターンの露光は複数回行う必要があり、複数の照明絞りを準備しなければならないという問題もあった。
本発明ではこのような問題点を鑑み、露光作業が簡便で、かつ、複数の照明絞りを準備することなく所望のZernike係数を正確に計測することのできる収差測定法を提案する。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の投影露光装置の一部分の要部概略図である。図1においてレチクル9上に形成されたパターンもしくはパターン群(テストパターン)TPに照明光学系の開口面に設けられた特殊な形状の照明絞り4とレチクル9のテストパターンTPが形成されている面とは反対のレチクル基盤面に形成された遮光パターンAPを介して、主光線LPが照射し、このレチクル9上のテストパターンTPが投影レンズ10で結像した空中像もしくは感光基板Wに転写したパターン像TPaの位置を測定する。尚、テストパターンTPおよび遮光パターンAPはレチクル9でなく、投影露光装置に内蔵された別の基準プレート上に形成したものであっても良い。前記テストパターンには、本出願人が先の国際公開番号WO03−021352号公報で提案したライン間もしくはスペース間のピッチ(間隔)がほぼ等しい周期パターンであり、かつ光が透過する個々のスペース幅が周期パターンの中心ラインもしくは中心スペースのパターンから外側のパターンに向かって減少するパターンや他のパターンを用いる。
レチクル9上のテストパターンTPを照明する照明光の有効光源形状は、照明開口絞り4と遮光パターンAPによって形成される。光源より取り出された照明光は光学素子を介して、照明開口絞り4に達し、開口絞りにより遮光され開口絞り形状の有効光源が形成される。さらに、開口絞り4で形成された有効光源形状をもつ照明光は、レチクル裏面の遮光パターンAPによって遮光され、最終的にテストパターンTPを照明する照明光の有効光源形状は開口絞り4で形成された形状のうち遮光パターンAPを透過する一部のものとなる。図1の図面では、光源から形成される有効光源の形状は円形であるが、開口絞り4により対の三日月形状になり、さらにレチクル裏面の遮光パターンAPによって一部が遮光されてテストパターンTPを照明する有効光源の形状は右側の三日月形状となる。
国際公開WO03/021352号公報のパターンは回折光を低減することにより、投影レンズ10の瞳面10aにおいて、照明開口絞り形状4とレチクル裏面の遮光パターンAPとで形成される有効光源形状と等価の光強度分布を形成することができる。また投影レンズ10を介し結像したパターン像TPaの光強度分布は、ライン間が解像しない歪の少ない1つの大きなパターンと見なし得るものとなる。この前記空中像もしくは感光基板上に転写したパターン像TPaをある基準からの位置ずれ量として測定している。前記照明開口絞り4の開口形状とレチクル裏面の遮光パターンAPによって形成される有効光源形状は、前記投影レンズ10の瞳面上の各位置に対応してあらかじめ計算により求めておいた位置ずれ量のZernike敏感度のデータベースより特定のZernike項について最適化を行ったものである。
即ち、該テストパターン像の所定位置からの位置ずれ量が特定のZernike項に対し、その1つの係数に主に依存するように該照明系の有効光源分布を設定することや該投影光学系の瞳領域を通過する光束を制限することである。
特に該テストパターン像の所定位置からの位置ずれ量と特定のZernike項に対し、その係数が1:1の関係となるように該照明系の有効光源分布を設定することや該投影光学系の瞳領域を通過する光束を制限するようにしている。
以下、具体的な実施形態を説明する。
図2は本実施形態の投影露光装置全体の概略図である。図1は図2の一部分の斜視図に相当している。
図2において1は露光光用の光源であり、高圧水銀灯やエキシマレーザ等が使用できる。高圧水銀灯を用いる場合には、光源1から射出された露光光は楕円鏡1aで集光された後に、インプットレンズ2を経てフライアイレンズ3の入射面3aに入射する。フライアイレンズの後側(レチクル側)焦点面3bには多数の2次光源が形成され、これら2次光源から射出された露光光は、開口絞り4、第1リレーレンズ5、投影式レチクルブラインド6、第2リレーレンズ7、メインコンデンサーレンズ8を経てレチクル9を均一な照度で照明する。露光光で照明されるレチクル9のパターンは投影光学系10によって感光基板(ウエハ)Wに投影される。
ウエハステージ12は、投影光学系10の光軸10bに垂直な面内の任意の位置に検出系11を位置決めするXYステージ12aと投影光学系10の光軸10bに平行な方向で感光基板Wのフォーカス位置を設定するZステージ12b等より構成されている。
また、感光基板Wのフォーカス位置を検出するためのオートフォーカス系13が設けられている。オートフォーカス系13は、プレート11a上の結像面に例えばスリット状の検出パターンの像を、投影光学系10の光軸10bに対して斜めに投影する送光系13aと、その結像面からの反射光を受光してその検出パターンの像を再結像する受光系13bとより構成されている。プレート11a上の結像面のフォーカス位置が変化すると、受光系13bにおいてその再結像される検出パターンの像の位置が変化することから、この像位置を検出することでフォーカス位置の変化を検出することができる。受光系13bには、その再結像された検出パターンの位置に応じて変化するフォーカス信号を生成する光電検出器13cが組み込まれ、そのフォーカス信号が所定のレベルに維持されるように制御系13dによってウエハステージ12中のZステージ12bを駆動することにより、感光基板W上の結像面のフォーカス位置を所定の位置(フォーカス状態)に維持することができる。
図3(A)(B)は本実施形態で使用するテストパターンの詳細図である。図5、図6は、使用するテストパターン例である。前記テストパターンに開口絞り4により形成される第一の照明光を照射し、前記テストパターン像を投影光学系10を通し感光基板W上に結像させる。図5においてグリッドの一部TPXが前述した図3に示すパターン形状より成っている。さらに図5のテストパターンの上部に位置するレチクル上部のクロム膜には遮光パターンAPが形成されている。一方、図6のテストパターンの上部はクロム膜が除去されており、図6を照明する有効光源はレチクルにより制限されないようになっている。図5のテストパターンと図6のテストパターンが図4に示すようにウェハ上で重ね合わされた形に結像されるように二重露光を行い、図6のパターンを基準として図5の位置ずれを計測する。
以下、更にZernike項C5、C6(非点収差)の計測手順を具体的説明する。
図7、図8は、C5計測に用いるテストパターンユニットの説明図である。図7は、レチクル下面Crに配置されるテストパターンの配置図である。ユニットは、大きく2つの部分に分かれており、図面の上半分の領域には、図5のテストパターン4aが十字状に4つ配置されている。図面の下半分には図6のテストパターン5aがテストパターン4aと同じように十字状に配置されている。4つの4aパターンの中心位置と4つの5aパターンの中心位置とは上下にYsだけ離れて配置されており、4aパターンを露光後にウェハステージ12をYsだけ移動させてから5aパターンを二重露光することで、全ての4a、5aパターンが図4のように重ね合わされた形で露光されるように4a、5aパターンは配置されている。
図8は、図7のテストパターンが配置されているCr面の裏のCr面に配置される遮光パターンAPの配置図である。図8では、扇形状(1/4円)の透光部が4つ十字状に形成されるように遮光パターンAPが配置されており、それぞれの扇形パターンの頂点と図7のテストパターン4aの中心とが一致するようになっている。また、遮光パターンの半径Raは投影光学系10の開口数NAをレチクル上面において半径に換算した値Rnaより大きく作成されている。図8の下半分の領域は、Cr膜が除去された状態になっており、図7のテストパターン5aに入射する照明光の有効光源は一切の制限を受けずに5aパターンを照明するようになっている。
図9、図10は、C6計測に用いるテストパターンユニットの説明図である。
図9のテストパターン4a、5aは図7のパターン配置を45度回転した位置に配置されている。同様に図10の遮光パターンも図8の配置を45度回転した位置に配置されており、図10の下半分の領域は図8同様Crが除去されている。
図11、図12は照明開口絞りの一例を示したものである。図11の開口絞りは、C5の計測に用いる開口絞りであり、図12はC6の計測に用いる開口絞りである。
次に二重露光手順を説明する。まず、求めるZernike係数によって照明開口絞り形状4bを決める。すなわち、C5を計測する場合は図11の、C6を計測する場合は図12の開口絞りを用いる。この照明開口絞りとレチクル上の遮光パターンAPとで形成される有効光源形状を持つ照明光でマーク4aを露光し、次にマーク4aとマーク5aが重なり合うようにウエハステージ12をYsだけ移動させ、マーク5aを露光する。このように露光したウェハサンプルを現像、レジストパターンを形成後にオーバーレイ測定機で5aパターンに対する4aパターンの位置ずれを測定する。この位置ずれ測定結果から収差量が計算される。求める収差量がC5の場合は、図7の4つのテストパターンをオーバーレイ測定機で測定し、C6の場合は、図9の4つのテストパターンを測定する。
以下、C5を計測する場合についてテストパターンの位置ずれ量から収差量を求める手順を説明する。
図7のテストパターンの内、右側のテストマークの位置ずれ量をd1、同じく左側のテストパターンの位置ずれ量をd2とし、両者の差をS(d1−d2)表す。この時位置ずれ量として2つの量が計測される。1つはVパターン(X方向のずれ)でもう1つはそれに直交するHパターン(Y方向のずれ)である。それぞれSV(d1−d2),SH(d1−d2)と表せる。次に前記同様上側テストパターンの位置ずれd3と、下側テストパターンd4の2つの位置ずれ量からSV(d3−d4),SH(d3−d4)が得られる。これらの位置ずれ測定結果からC5は次の様な計算により求めることができる。
C5={SV(d1−d2)−SH(d3−d4)}/Zer5・・・(1)
ここで、Zer5は、予め、シミュレーション計算または、実験などにより求めたC5の発生量に対するテストパターンの位置ずれ量の敏感度係数である。図13は、この敏感度係数を光学シミュレーション計算から求めた結果である。図13に示されるようにテストパターンの位置ずれ量は、Zernike係数の各項のうちC5項のみ大きな敏感度をもち、本実施例の計測方法によりC5項を精度良く計測できることを示している。
同様に図12の開口絞りと図9のテストパターンを用いた場合、右上、左下、左上、右下の各テストパターンの位置ずれ量をそれぞれ、d1’,d2’,d3’,d4’とすると、以下の計算によりC6が求まる。
C6={SV(d1’−d2’)+SH(d1’−d2’)+SV(d3’−d4’)−SH(d3’−d4’)}/Zer6・・・(1)
ここで、Zer6は前記と同様にテストパターン位置ずれ量のC6に対する敏感度係数である。前記と同様に光学シミュレーションから求めたZer6の結果を図14に示す。
以上の実施例で述べた方式で、実際の投影レンズ数本分について本実施例の測定結果とPMIで測定したZernike係数の結果との相関を調べた結果を図15(A)、(B)に示す。これより本計測方法がZernike係数(レンズ収差)を求めるのに十分な計測精度を持つことが分かる。
また先の実施形態では開口絞り4の開口部4bは光を通すか遮光するかのデジタルな選択のみで最適化を行ったが、減光材料などで濃度を変えてやれば、更に精度の高い最適化が行える。そして更に高次の次数を高く設定して最適化を進めていけば、更に高次収差の測定も可能である。
更にテキサスインスツルメンツ社のDigital Mirror Device(以下、DMDと称する。)などを用いて有効光源を任意の形状に変化させることのできる可変装置を露光装置に搭載すれば、特殊な形状の照明開口絞りを準備することなく最適な有効光源形状を作成することも可能である。
また、投影露光装置で行う瞳領域最適化は、投影レンズの中に瞳フィルターを設けることで行っても良い。
また、得られた計測値を本体系にフィードバックすることで投影レンズ10内にある補正光学系を駆動させたり、照明光源であるエキシマレーザーからの発振波長の中心波長を変える等の補正手段により露光装置の収差自動補正に適用できる。
次に本発明の実施形態2を説明する。
第一の実施形態で説明したように本発明の計測方法を用いることにより、所望の収差量(Zernike項)を精度良く測定することができる。しかし、実際の露光装置の運用においては、簡易的に特定の収差量が管理できれば、露光装置の性能を維持管理するには十分な場合が多い。例えば、照明有効光源形状やパターンの違いにより、焦点位置は変化するが、この変化を管理するためには投影レンズのデフォーカス成分と低次の球面収差を測定すればよい。
図16は、有効光源形状の違いによる焦点位置(最適フォーカス値)の違いの一例を示したグラフである。グラフの横軸は投影レンズ中心から測定点までの距離(像高)を表し、縦軸は各測定点での最適焦点位置を示している。グラフ中、上側の曲線は、図17の有効光源形状、σ0.25の小σ照明、での焦点位置の測定像高により変化(像面湾曲形状)を、下側の曲線は、図25(A)の輪帯照明(外σ0.85、内σ0.57)での像面湾曲形状を示している。図16のグラフのように有効光源形状の違いにより、最適フォーカス値、像面湾曲形状の差異が生じる。この差異は投影レンズの残存球面収差によるものである。図18は、球面収差によって生じる最適フォーカス値の差異を模式的に説明したものである。図18では黒矢印、灰色矢印はそれぞれ、輪帯照明、小σ照明におけるレチクルパターンへの照明光の入射から投影レンズによるウェハ面上への結像までの光線の経路を模式的に表している。図18中の投影レンズの中に描かれている4次曲線は、低次の球面収差、Zernike項で表した場合C9項の波面形状を表しており、図18の投影レンズには残存球面収差があることを示している。
図25(A)の輪帯照明の場合、レチクル上のパターンに対する照明光は、図18の黒い矢印で示されるようにレチクル面の法線方向に対し角度の大きな光線のみとなる。一方、図17の小σ照明の場合は、図18の灰色の矢印で示されるようにレチクル面の法線方向に対し、角度の小さな光線での照明となる。
輪帯照明の光線、黒矢印は、投影レンズの瞳面上でレンズ中心から離れた位置を通過する。この瞳面上の位置は、球面収差による波面形状変化が少ない位置にあたり、結像は球面収差の影響をほとんど受けない。一方、小σの光線、灰色矢印は、投影レンズ瞳面の中心付近を通過する。この位置は球面収差による波面形状の変化が大きい部分にあたり、図18の灰色矢印で示すように結像光線は球面収差により曲げられ、焦点位置のずれとなる。
このように、輪帯照明では焦点位置は球面収差の影響をあまり受けず、小σ照明では球面収差の影響で焦点位置ずれが発生する。このことを光学シミュレーション計算で確認した結果が図19(A)(B)である。図19は、各Zernike項の焦点位置変化に対する寄与率を表しており、デフォーカスを表すC4項の寄与率を1としたときの他のZernike項の寄与率を棒グラフで示したものである。図19(A)は輪帯照明での計算結果であり、(B)は小σ照明での計算結果となっており、輪帯照明(A)では、球面収差C9項の寄与率はC4の1/10程度と小さいのに対し、小σ照明(B)ではC9項の寄与率はC4項の約1.5倍と大きくなっており、図18にて模式的に説明した球面収差の焦点位置への影響を裏付けるものとなっている。図19においてより高次の球面収差、C16,C25,C36項の寄与も大きなものとなっているが、通常この高次の収差成分については投影レンズ製造時に小さな値に抑えられており、実際の焦点位置の変化にはほとんど寄与しない。図20は、輪帯照明の焦点位置と小σ照明での焦点位置との差異とC9項との相関を数本の投影レンズについて確認した結果である。図20から輪帯照明と小σ照明との焦点位置の差異は、C9項によって発生していることがわかる。
以上のように、投影レンズの残存球面収差により、照明系の有効光源形状変更に伴う焦点位置の変化が発生するため、露光装置の焦点位置変化を管理するためにはデフォーカス成分(C4項)と低次の球面収差(C9項)を測定できればよい。以下に、本発明の収差測定法を用いて簡易的に露光装置の焦点位置を管理する方法を図21〜図27に基づいて説明する。
図21、図22は、本実施例に用いるレチクル9上のテストパターンの説明図である。ここで用いるレチクル9は前記第一実施例と同じく、レチクル基板上下両面にCr膜を形成し、上面には照明光の有効光源の入射を規制する遮光パターンAPを、下面には図3のパターンで構成された図5,6の位置ずれ計測用のテストパターンTPが形成されたものである。図21はレチクル下面のテストパターンTPの配置例を示したものであり、図22はレチクル上面の遮光パターンAPの配置例を示したものである。図22において、遮光パターンAPによって形成されている透光部は、前記第一実施例の場合とはことなり、半円形状をしている。これに対し、テストパターンTPは、図5の位置ずれ計測マーク4aが、前記遮光パターンAPによって形成されている透光部の弦の中点に対応する位置に十字状に配置されており、このマークからY方向にYsだけ離れた位置に図6の位置ずれマーク5aが配置されている。位置ずれマーク6aの上面のCrは除去されており、位置ずれマーク6aを照明する照明光の有効光源は遮光パターンによる規制をうけないようになっていることも前記第一実施例の場合と同じである。このレチクルのパターン構成は本出願人が特開2002−289494号公報で開示したフォーカスモニターを実現するものとなっている。
図23は、このフォーカスモニターの動作原理を模式的に表した説明図である。図23において照明絞り4は輪帯形状をしている。ここでは説明を簡易にするために、照明絞りを用いているが、最近の露光機では、絞りによる照明光光量の損失を防ぐために光学部品の組み合わせで輪帯形状の有効光源を作成可能となっており、この機能を用いて図23の有効光源形状を実現しても良い。レチクル9上には、図21、図22のテストパターンおよび遮光パターンが配置されている。図23においては遮光パターンAPで形成されている透光部の内、一つの半円パターンのみが図示されている。レチクル9上のテストパターンTPを照明する照明光の有効光源形状は、照明開口絞り4と遮光パターンAPによって形成される。照明絞り4で形成された輪帯状の有効光源は、レチクル9上の半円状の透光部を形成している遮光パターンAPで遮光され、投影レンズ10の瞳面10aでは輪帯の半分の領域のみが有効光源となっている。瞳面10aにおいて有効光源が半分のみになると言うことは、幾何光学的に言うと、投影レンズ10に対し、レチクル9からの光線が角度の偏った斜入射光となることであり、これに応じて、ウェハW面上でのテストパターンの結像TPaの主光線もウェハ面に対して斜入射することとなる。このように結像の主光線が斜入射となるため、ウェハ面の高さがdzだけ変わった場合、ウェハ面が焦点位置と一致している時の結像位置に対して、図23のようにdsの位置れが発生する。逆に言うと、テストパターンウェハW上への結像TPaの位置ずれdsを測定することにより、ウェハ面が焦点位置からのZ方向のずれている距離dzを求めることができる。実際には、図21のテストパターンaとaを前記のように二重露光してaの位置を基準にしてaの位置ずれの測定を行う。aパターンの上面には遮光パターンが存在しないので、aの結像光はウェハ面に対し斜入射にならず、ウェハ面がZ方向ずれた場合でも結像の位置ずれは発生しない。
このように、図21、22のテストパターンを配置したレチクルを用いることにより、本出願人が特開2002−289494号公報で開示したように高精度のフォーカス計測が可能となる。同じテストレチクルを用いて球面収差も測定可能であることを以下に説明する。
図21、22のテストレチクルを用いた球面収差の測定原理を図示したものが図24である。テストレチクルは図21、図22に示したものであり、図24においては断面図として図示されている。また、照明光の有効光源としては、図25(A)(B)の2種の形状を用いる。図25(A)(B)は、両者とも輪帯照明となっているが、輪帯の径が異なる。図25(A)は外円の径がσ0.85、内円の径がσ0.57、(B)は外円の径がσ0.60、内円の径が0.40となっている。図24において、黒矢印で示された光線が図25(A)の照明光に相当し、灰色矢印で示された光線が(B)の照明光に相当する。図25の投影レンズ内に描かれた4次曲線は、投影レンズに低次球面収差、Zernike項C9が残存している場合の瞳面上での波面形状を表している。レチクルに入射する照明光は図24のようにレチクル面対し一定の立体角をもって入射するが、レチクルの上面には、遮光パターンAPが配置されているため、照明光の内、立体角の半分のものは遮光パターンAPで遮られるため、投影レンズにはテストパターンTPの照明光の内、半分の領域のみが入射する。図25(A)の輪帯照明(黒矢印)の場合、この光線は、瞳面上で外側の領域を通過するが、この領域はC9項による波面形状の変化が小さい部分に相当し、光線はC9項による波面形状の影響をうけることなく投影レンズからウェハに入射する。すなわち、ウェハ面が投影レンズの焦点面に一致している場合、図24のようにテストパターンの毛一像TPaは位置ずれを起こさない。一方、図25(B)の輪帯照明(灰色矢印)の場合、投影レンズに入射した光線は、瞳面の中間位置を通過し、この位置はC9項による波面形状の変化が大きな位置に相当するため、光線の進行方向は曲げられ、図24に示したようにウェハ面上で位置ずれdsが発生する。このように一般的に投影レンズの瞳面上の一部のみを通過して結像する場合、結像面で像は位置ずれを起こし、その位置ずれ量は、光線が瞳面で通過する位置での波面の傾きに比例することが知られている。すなわち、像の位置ずれds’は波面形状をZernike級数Zi(ρ,θ)で表した場合、
Figure 0004455129
ここで、kは比例定数、(ρ、θ)は極座標で表した瞳面上の座標。
と表すことができる。図24の場合波面収差はC9項のみなので、数4は下記のようになる。
Figure 0004455129
このように、像の位置ずれdsはZernike級数で示される波面収差関数の微分関数に比例する。すなわち、波面収差がある場合、どのような像の位置ずれが発生するかは、瞳面上で照明光が通過する位置において、波面がどのような傾きを示しているかを考えれば直感的に理解できる。図26(A)(B)は、図25(A)(B)の形状を持つ有効光源でテストパターンを照明した場合の波面収差形状と照明光が瞳面を通過する位置との関係を図示したものである。図26においては、波面収差としてZernike級数の内、デフォーカスに相当するC4項と低次の球面収差に相当するC9項とを瞳面上の座標を極座標で表した場合の径方向の座標ρに対しグラフで示したものとなっている。また、グラフ上に図25(A)(B)の有効光源で照明した場合の照明光の瞳面の通過位置を帯状の領域として図示している。図26(A)は図25(A)の有効光源で照明した場合であるが、この場合は、照明光の通過領域はC9項の傾きがほぼ0の領域にあたり、C9項による位置ずれは、ほとんど発生せず、C4項による位置ずれがC4項の傾きに比例して発生するものと理解できる。一方、図26(B)は図25(B)の有効光源の場合であるが、この場合は、照明光の通過領域では、C4項の傾きは正、C9項の傾きは負であるのでC4項による位置ずれとC9項による位置ずれは逆向きであると理解できる。実際に光学シミュレーションにより、図25(A)(B)の有効光源にて図3(B)のテストパターンを照明した時の各Zernike項で表される波面収差の発生量に対する像の位置ずれ量の敏感度を計算し、C4項に対する敏感度を1.0として他のZernike項に対する位置ずれ量の敏感度を相対値でグラフにしたのが図27(A)(B)である。図27(A)は図25(A)の有効光源形状に対応した計算結果であり、図26(A)を用いて説明したように位置ずれ量はC9項に対してほとんど敏感度を持たないことがわかる。また、図27(B)は図25(B)の有効光源形状に対応した計算結果であり、図26(B)に基づいて説明したようにC4項に対する位置ずれとC9に対する位置ずれは逆方向の敏感度を持つことがわかる。図20で示したように通常、投影レンズにおいては、高次の収差成分は製造時に小さく抑えられており、露光装置のフォーカス値管理を行うには、C4とC9の管理を行えば良い。つまり、図27において、高次の収差に対する位置ずれ敏感度は、元々の収差量が小さいとみなせるため、無視してよく、図25(A)の有効光源形状におけるテストパターンの位置ずれ量をdsa、C4、C9に対する位置ずれの敏感度をa4,a9、図25(B)の有効光源形状における位置すれ量をdsb、C4、C9に対する位置ずれの敏感度をb4,b9とすれば、dsa、dsbはそれぞれ、
dsa=(a4×C4)+(a9×C9) ・・・(A)
dsb=(b4×C4)−(b9×C9) ・・・(B)
ここで、C4,C9はC4項、C9項の発生量。
と表すことができる。さらにここで、a9の値はa9、b4、b9に比較して小さいので0とみなせば、C4、C9を以下のように求めることができる。
C4=dsa/a4
C9=(dsb−b4×dsa)/b9
このように2種の有効光源形状によるテストパターンの位置ずれを測定することにより、デフォーカス成分C4と低次の球面収差C9を別々に求めることができ、この測定結果と、図19のように各有効光源形状でのデバイスパターンでの焦点位置の波面収差に対する敏感度を予め計算した結果があれば、デバイスパターンでの焦点位置を管理することができる。
本実施例の説明では図25の輪帯状の有効光源を照明絞りで形成する前提で説明してきたが、前記のように露光機の照明システムに内蔵された光学系やDMDで有効光源を形成しても、同じ効果が得られる。また、図21に示したテストレチクルでは位置ずれ計測用のテストパターンを十字状に配置してあるため、非点収差による縦パターンと横パターンの焦点位置の差も管理することができる。
図21において、テストパターンを任意の角度方向に配置すれば、任意の角度で傾いたパターンの焦点位置の管理も可能である。さらに、C16などの更に高次の収差に対する敏感度を考慮し、3種以上の有効光源で位置すれを測定すれば、C16以上の収差の管理も可能である。
また、第一、第二実施例ともにテストレチクルを用いることを前提に説明を行ったが、露光装置内のレチクル面と等価な位置に設けられたテストパターン用のプレートにテストパターンを配置することでも第一、第二実施例の収差測定を実現できる。
さらに、感光材料を塗布したウェハ上にテストパターンを転写して、テストパターンの転写像の位置ずれをオーバーレイ測定機にて測定することにより収差測定を行うこととしたが、ウェハステージ12上に設けられた光強度検出系11を用いて、テストパターン15の結像位置を検出系11による光強度検出とウェハステージ12の位置情報とから測定することによっても同様な効果が得られる。
第一実施例の投影露光装置一部分の要部概略図 本発明の投影露光装置全体の要部概略図 本発明に係るテストパターンの説明図 本発明に係るテストパターンの説明図 本発明に係るテストパターンの説明図 本発明に係るテストパターンの説明図 第一実施例のレチクル上のテストパターン配置説明図 図7に対応する遮光パターンの配置説明図 第一実施例のレチクル上のテストパターン配置説明図 図9に対応する遮光パターンの配置説明図 第一実施例に係る照明系開口絞りの説明図 第一実施例に係る照明系開口絞りの説明図 図11の絞りを用いたときの最適化の説明図 図12の絞りを用いたときの最適化の説明図 図11、12の絞りを用いたときの評価結果の説明図 有効光源形状による最適焦点位置の差異の説明図 図16の小σ照明有効光源形状の説明図 図16の最適焦点位置の差異発生原理の説明図 有効光源形状による最適焦点位置変化のZernike敏感度の計算結果 低次の球面収差と最適焦点位置の相関の説明図 第二実施例のレチクル上のテストパターン配置説明図 図21に対応する遮光パターンの配置説明図 第二実施例の投影露光装置一部分の要部概略図 第二実施例における球面収差測定原理の説明図 第二実施例に用いる輪帯照明の有効光源形状の説明図 輪帯照明の照明光が瞳面を通過する領域と波面形状との関係を示した図 図25の輪帯照明における像の位置ずれ量のZernike敏感度の計算結果
符号の説明
1 光源
2 インプットレンズ
3 フライアイレンズ
4 開口絞り
5 第1リレーレンズ
6 投影式レチクルブラインド
7 第2リレーレンズ
8 メインコンデンサーレンズ
9 レチクル
10 投影光学系
11 検出系
12 ウエハーステージ
13 オートフォーカス系
14 ウエハーアライメント系
15 テストパターン
LP 主光線
TPa パターン線
W ウエハー

Claims (5)

  1. 投影光学系の収差を測定する方法であって、
    光源からの光を用いて照明光学系でレチクルを照明するステップと、
    前記レチクルに形成されたテストパターンの像を前記投影光学系で基板上に投影する投影ステップと、
    前記テストパターンの像の位置ずれ量を測定する測定ステップと、
    前記測定ステップで測定した前記位置ずれ量に基づいて、前記投影光学系の収差を決定する決定ステップと、
    を有し、
    前記投影ステップは、前記投影光学系の瞳の所定領域のみを前記光が通過するように前記光を前記照明光学系又は投影光学系の中に配置された整形手段と前記レチクルの前記テストパターンが形成された面と反対の面に形成された遮光パターンとを用いて整形する整形ステップを含み、
    前記所定領域の形状は、前記位置ズレ量が特定のZernike項の係数に主に依存するように、最適化を行ったものである
    ことを特徴とする収差測定方法。
  2. 前記所定領域の形状は、前記投影光学系の瞳面上の各位置に対応してあらかじめ計算により求めておいた前記位置ズレ量のZernike敏感度のデータベースに基づいて、前記最適化を行ったものである
    ことを特徴とする請求項1記載の収差測定方法。
  3. 前記照明光学系の中に配置された整形手段は、前記照明光学系の瞳面に配置された開口絞りを含む
    ことを特徴とする請求項1記載の収差測定方法。
  4. 前記投影光学系の中に配置された整形手段は、瞳フィルターを含む
    ことを特徴とする請求項1記載の収差測定方法。
  5. 前記照明光学系の中に配置された整形手段は、輪帯状の有効光源の内径及び/又は外径を変更する
    ことを特徴とする請求項1記載の収差測定方法。
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