JP4441987B2 - ポリエチレン系複合繊維およびこれを用いた不織布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレン系複合繊維および該繊維を用いた不織布に関する。さらに詳しくは、柔軟で風合に優れ、嵩高でかつ高強力なポリエチレン系複合繊維、該繊維を用いた不織布およびこれらを用いた医療用物品、衛生材料用物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在医療分野では、不織布から作られる使い捨ての手術帽、シーツ、手術用覆布、手術用ガウン等が急速に普及しつつある。これは、MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)、肝炎、HIV(後天性免疫不全症候群)等の院内感染を防ごうとする動きに対応するためである。また、クリーニングの必要のない使い捨ての不織布製品を使用することは、看護の質を落とさずに看護業務を簡略でき、現在深刻な社会問題となっている人手不足解消の一助ともなる。医療分野で使用される不織布には、バクテリアバリア性、耐浸透性、撥水性、リントフリー性等が要求されるが、人体に直接接するものであること、1回切りの使い捨てであることから、着用感、強度、コストも重要な要素となる。
【0003】
不織布用途の繊維の原料樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂およびポリエステル系樹脂が一般的であるが、医療分野で使用される不織布についてもこの例外ではない。
このような医療分野で使用される不織布は、しばしば放射線より滅菌されることがあるが、ポリプロピレン系樹脂は放射線を照射された際、高分子鎖が3級炭素原子の結合部位で切断され、不織布の強度が著しく低下してしまうために、このように放射線で滅菌されるような用途に対し、使用が制限されるという問題がある。
また、ポリエステル系の樹脂は放射線による強力の低下はないが、原料樹脂がポリオレフィン系樹脂よりもコスト高となること、体の動きに追従して破れない程度の強度を与えたり、透けないようにするため不織布を高目付とした場合には、不織布が硬くなってしまい着用感が悪い、原料樹脂の特性から軽量感に欠ける、といった難点があるため使用者側から敬遠されがちで普及の妨げとなっている。
これに対してポリエチレン系樹脂は、原料樹脂が柔らかいことから柔軟な不織布が得られる。3級炭素原子を持たないことから、放射線照射による不織布強度低下がない、といった長所があるため、医療用不織布材料として優れている。
【0004】
しかしながら、単成分のみで構成された従来のポリエチレン繊維は、不織布加工の際、加圧ロールによるポイントボンド加工およびカレンダー加工での不織布化は比較的容易であるが、スルーエアー加工には適さず、得られた不織布は柔軟性に欠ける。また、上記欠点を解消すべく、例えば特表平6−508892(国際公開番号はWO93/01334)により、高密度ポリエチレンを第一成分に、エチレンとα−オレフィンの共重合体(以下直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)と略記する)を第二成分としたポリエチレン系複合繊維が開示されているが、第二成分に通常のL−LDPEを用いた場合、鞘と芯の融点差が小さくスルーエアー加工等には適さない。また、第一成分と第二成分の融点差をとるために、第二成分に比較的密度の低い直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、very low density polyethylene(VLDPE)およびultra low density polyethylene(ULDPE)を使用した場合、樹脂密度を下げることにより繊維表面にべたつきが発生し、カード加工時のネップ発生等の加工性の低下と、スルーエアー不織布とした際の嵩および接着強力が低下するという欠点が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、カード加工性を落とさず、加圧接着加工法およびスルーエアー接着加工法に好適に用いられ、柔軟な風合いを有してかつ、高強力を示す不織布を得ることを可能とするポリエチレン系複合繊維および、それを用いた不織布を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記従来のポリエチレン系繊維の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、密度0.940g/cm3以上のポリエチレン樹脂からなる第一成分と、メタロセン触媒により重合されたQ値が3.0以下のポリエチレン樹脂を含む第二成分からなるポリエチレン系複合繊維が、所期の目的を達成できることを知り、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を有する。
【0007】
(1)ポリエチレン系樹脂からなる鞘芯型複合繊維であって、第一成分(芯成分)が密度0.940g/cm3以上、メルトフローレート16〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有する高密度ポリエチレン樹脂からなり、第二成分(鞘成分)がメタロセン触媒により重合されたQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)3.0以下のポリエチレン樹脂を含み、第一成分と第二成分の融点差が15℃以上であって、120℃でのウェブ収縮率が15%以下である、ポリエチレン系複合繊維。
(2)第一成分が密度0.945〜0.965g/cm3、融点125〜135℃の高密度ポリエチレンである上記(1)項に記載のポリエチレン系複合繊維。
(3)第二成分に含まれるポリエチレン樹脂が、メタロセン触媒により重合された密度0.850〜0.930g/cm3、Q値2.5以下のポリエチレン樹脂である上記(1)〜(2)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
(4)第二成分に含まれるポリエチレン樹脂が、メタロセン触媒により重合されたメルトフローレート5〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有するポリエチレンである上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
(5)カード加工用の、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
(6)スルーエアー加工用の、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
(7)上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維を用いた不織布。
(8)スルーエアー加工により繊維同士を熱融着させた上記(7)項に記載の不織布。
(9)ポイントボンド加工により繊維同士を点接着させた上記(7)項に記載の不織布。
(10)上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維と、該繊維が熱接着する温度では実質的に非接着性である繊維を混綿した不織布。
(11)繊維同士を水流交絡させた上記(7)〜(10)項のいずれか1項に記載の不織布。
(12)スパンボンド法により得られる上記(7)〜(9)項のいずれか1項に記載の不織布。
(13)上記(7)〜(12)項のいずれか1項に記載の不織布を用いた医療用物品。
(14)上記(7)〜(12)項のいずれか1項に記載の不織布を用いた衛生材料用物品。(15)ポリエチレン系樹脂からなる鞘芯型複合繊維であって、第一成分(芯成分)が密度0.940g/cm3以上、メルトフローレート16〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有する高密度ポリエチレン樹脂からなり、第二成分(鞘成分)がメタロセン触媒により重合されたQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)3.0以下のポリエチレン樹脂を含み、第一成分と第二成分の融点差が15℃以上であるポリエチレン系複合繊維を、5倍以上の延伸倍率で延伸することを特徴とする、ポリエチレン系複合繊維の製造方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
【本発明の実施の形態】
本発明でいう第一成分のポリエチレン樹脂とは、公知のチーグラーナッタ触媒を用いて低圧法で重合された、エチレン単独の重合体もしくはエチレンを主成分とし最大2重量%までの割合のC3〜C12のアルケンをコモノマーとして含む共重合体であり、一般に0.940〜0.965g/cm3好ましくは0.945〜0.960g/cm3の密度、および125〜135℃の融点を有し、5〜45g/10min好ましくは20〜40g/10minのメルトフローレート(MFR:JIS K7210(190℃、2160g、B法)によって規定される値。以下、本発明でいうメルトフローレートとは、この条件で測定される値をいう。)を有する高密度ポリエチレン樹脂である。
【0009】
本発明でいう第二成分のポリエチレン樹脂とはメタロセン触媒を用いて重合された、実質的な長分岐鎖を持たない、通常15重量%以下の割合のC3〜C12のアルケンをコモノマーとして含むエチレン共重合体を指しており、一般に0.850〜0.930g/cm3の密度および125℃未満の融点、3.0以下のQ値を有し、5〜45g/10min好ましくは25〜40g/10minのメルトフローレートを有する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である。(以下、このポリエチレン樹脂をメタロセンポリエチレン樹脂という。)
第二成分に用いるメタロセンポリエチレン樹脂の密度が0.850g/cm3未満の樹脂を用いた場合には、繊維にべたつきが発生し、カード加工性の低下を引き起こす。また、0.930g/cm3を超える樹脂を用いた場合には、樹脂の融点が高くなり、第一成分と第二成分の融点差が取れないことから、不織布加工する際の加工温度幅がとれず、得られた不織布の強力は高いが、風合が低下するといった問題が生じる。このことから、第二成分に用いるメタロセンポリエチレン樹脂の好適な密度は、0.850〜0.930g/cm3、好ましくは0.900〜0.925g/cm3の範囲である。
Q値として好ましい値は、3.0以下、より好ましくは2.5以下である。Q値が3.0を超えると、樹脂成分における低分子量成分の割合が多くなるため、得られる繊維はべたつき性を増し、また接着強力が低下する。
【0010】
上記範囲内のメタロセンポリエチレン樹脂は、メタロセン触媒を用いることで容易に得られる。このようなメタロセン触媒として代表的な化合物は、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−2,7−ジメチル−9−フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライドなどである。
これらの触媒を用いて製造されたメタロセンポリエチレン樹脂は、商業的に販売されているものも多く、それらの中から上記に規定した範囲の密度、融点、Q値、メルトフローレートを持つポリエチレン樹脂を適宜選んで使用することも可能である。
【0011】
メタロセンポリエチレン樹脂とチーグラーナッタ触媒を用いて重合されたポリエチレン樹脂とを比較した場合、密度が同程度であっても、メタロセンポリエチレン樹脂の融点の方が低く、かつ、べたつき成分が少ないという特徴がある。また、分子量分布が狭いという特徴から、紡糸性が安定し、得られた繊維を用いた不織布は、柔軟で風合が良く、接着強力およびヒートシール強力が向上する。
第二成分には、メタロセンポリエチレン樹脂以外に、上記の特徴を阻害しない程度であれば、LDPE、L−LDPE、VLDPE、ULDPE、HDPEをブレンドして用いても良い。
【0012】
本発明で構成されるポリエチレン系複合繊維は、公知の溶融紡糸法およびスパンボンド法にて製造することができる。また、鞘芯型、偏心鞘芯型等の複合繊維とすることができる。
複合繊維を製造する場合の第一成分と第二成分の複合比は、重量比で80/20〜20/80の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜70/30である。芯成分となる第一成分の高密度ポリエチレン樹脂を上記範囲より少なくする場合は、繊維の剛性が低下する傾向を示すので、カード通過性が低下したり、不織布とした際に嵩が低下し風合いを損なうことのないよう注意が必要である。逆に、上記範囲より第一成分を多くし、第二成分を少なくする場合は、得られる不織布の接着強力が低下する傾向があるので注意しなければならない。このため、鞘芯比は上記範囲内が最も良好となる。
本発明のポリエチレン系繊維を構成する第一成分と第二成分の融点差は、好ましくは5℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上である。この融点差が大きいほど、不織布加工する際の加工温度範囲が広くなり、不織布作製が容易になる。本発明でいう融点差とは、繊維を示差走査熱分析装置(DSC)にて分析したDSC曲線状で観察される高融点側のピークと低融点側のピークの温度差を示す。融点差が大きいことに加えて、第二成分の融点が示差走査熱分析でシャープなピークとなって現れることが好ましく、第二成分にQ値の小さいメタロセンポリエチレン樹脂を使用することは、この点においても大きく寄与する。
本発明の繊維に用いる第一成分と第二成分のいずれかまたは両方の原料となるポリエチレン樹脂には、従来公知の酸化防止剤、耐光剤、難燃剤、顔料などを本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。
【0013】
本発明で構成されるポリエチレン系複合繊維を延伸する方法としては、公知の熱ロール延伸、温水延伸などを用いることができ、一段延伸方式、2段延伸方式、多段延伸方式を用いることができる。カード通過性が良好でより嵩高な不織布を得るためには、繊維の結晶配向度を促進させ繊維の剛性を高めることが有効である。繊維の結晶配向度を上げる手法としては、繊維の溶融紡糸時に、高速で引き取り、配向させる方法と、高延伸倍率で延伸する方法が考えられる。後者の方法を用る場合には、少なくとも5〜8倍以上の延伸倍率で延伸されることが好ましく、より好ましくは10倍以上の高延伸倍率で延伸することで剛性を有するポリエチレン系複合繊維が得られる。また、繊維の捲縮保持力も重要であり、公知のスタッファボックスによる機械捲縮を付与する場合は、スタッファボックスに入る寸前の繊維に十分熱を加えることで、繊維の捲縮保持力が向上する。
【0014】
本発明のポリエチレン系複合繊維には、該繊維が熱接着する温度では実質的に非熱接着性である他の繊維、例えばポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル系ビニロンなどの合成繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、木綿、羊毛、絹、麻、パルプ繊維などの再生繊維、動物繊維を本発明の効果を妨げない範囲において混繊、混綿することができる。
【0015】
本発明のポリエチレン系複合繊維は、不織布の原料として好適に使用できる。例えば、公知のポイントボンド法(エンボス法ともいう)、スルーエアー法、ニードルパンチ法、水流絡合法等により不織布とすることができ、特に本発明で得られるポリエチレン系複合繊維は、鞘芯に融点差があることから不織布とする際の加工温度巾が広くとれ、ポイントボンド法、スルーエアー法を用いた熱融着結合法に好適に用いることができる。
スルーエアー法にて不織布を得る場合、繊維の熱収縮率が大きいと加工時の熱により繊維が収縮し、得られる不織布の寸法安定性不良、地合不良、ひきつり等の問題が生じるため、繊維のウェブ収縮率は、15%以下、好ましくは10%以下(120℃ オーブン加熱)に抑える必要がある。
ウェブ収縮を抑制させるには、ノズルから溶融される樹脂の流動性を上げる必要がある。その方法として、紡糸時の溶融温度を上げる、またはメルトインデックスの比較的高い樹脂を使用する等が考えられる。ポリエチレン樹脂は高い温度で溶融させるとゲル(熱架橋劣化物)が発生し、紡糸時の糸切れの要因となるため、ウェブ収縮を抑制するには、後者がより有効な手段となる。
本発明のポリエチレン系複合繊維は、特に放射線照射による劣化が少ないので、得られる不織布は放射線照射着用衣をはじめとして、手術帽、シーツ、手術用被服布、手術用ガウン、診察衣等の医療用途として広く利用することができる。
また、本発明の不織布は、吸収性物品として、特に乳児用や大人用の使い捨ておむつ、ナプキン等をはじめ、更には、吸汗パット、皮脂除去用シート材、お手拭き、トイレ拭き、ワイパー等の衛材用物品として好ましく利用できる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示し本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明中における原綿作製条件、実施例および比較例の各物性の評価法、測定値は以下に示す通りである。
【0017】
本発明に使用した原綿作製条件としては、表1に示す第一成分、第二成分のポリエチレン樹脂の組み合わせにて、第一成分を240℃、第二成分を200℃で、孔経0.8mmφの紡糸口金から押し出し、紡糸速度376m/minで引き取り18.7dtexのポリエチレン複合繊維を得た。この未延伸糸を90℃の温水で満たした温水延伸装置を用いて、10倍で延伸したのち、押し込み型のクリンパーでジグザグ状の捲縮を付与し、80℃の熱風サクションドライヤーにて乾燥後、51mm長にカットした。得られた繊維の繊度は2.2dtexとなった。
【0018】
ウェブ作製は、大和機工製 高速型サンプルローラーカードを用い、目付20g/m2のウェブを作製した。このときのネップの発生状況、地合を観察し、下記の評価に基づき判断した。
○…ネップが発生することなく均一なウェブが得られた。
△…少量のネップが観察されたが均一なウェブが得られた。
×…多量のネップが発生し均一なウェブが得られなかった。
【0019】
上記で得られた目付20g/m2のウェブをスルーエアー加工および、エンボス加工を行い不織布とした。不織布加工条件を以下に示す。
スルーエアー加工:熱風循環式サクションバンドドライヤーを用い、0.8m/sの風速、8.5m/minの加工速度にて熱融着を行った。加工温度は110、115、120、125℃とした。
エンボス加工:エンボス面積率25%のエンボスロールとフラットロールの上下一対からなるエンボス加工機を用い、1.96Mpaの線圧、6.0m/min加工速度で熱圧着を行った。加工温度は105、110、115、120℃とした。
【0020】
不織布強度測定は、得られたスルーエアー不織布とエンボス不織布を15cm×5cm(MD×CD:MD強度測定サンプル)、5cm×15cm(MD×CD:CD強度測定サンプル)に切断し、島津製作所製オートグラフAG−500Dを用い、引張り速度200m/minにてサンプルの破断強度を求めた。
【0021】
ウェブ収縮測定は、高速サンプルローラーカードを使用し、原綿100gを通し、ウェブを作製した。このウェブを25×25cmに切断しMD方向に切り出しサンプルの中央とサイドから1cm中央部(上下)、計3ヶ所を計り、この平均値をAとした。次に、切り出しサンプルを120℃に加熱された、オーブンに5分間入れて熱処理し、5分間常温で放置後、熱処理前に計った場所をもう一度計り、この平均値をBとした。
下記計算式を用いウェブ収縮率を求めた。
(式) ウェブ収縮率=(A−B)×100/A(%)
【0022】
不織布の風合いは、10人のパネラーにより評価した結果、9人以上が柔軟である感じた場合を◎、5人以上が柔軟であると感じた場合を○、柔軟であると感じた人が4人以下の場合を△、柔軟であると感じた人が2人以下の場合を×とし、◎および○は実用範囲、△、×は実用範囲外とした。また、不織布加工(スルーエアーおよびエンボス加工)において得られた不織布にひきつり等の収縮がみられた場合も実用範囲外とした。
【0023】
実施例1、3、4は、第二成分に使用しているメタロセンポリエチレン樹脂の密度を本発明内で変更したものである。何れもカード通過性は良好であり、ウェブ収縮も10%以下であった。
【0024】
実施例2は、第一成分と第二成分共に高いMFR樹脂を使用したものである。カード通過性は良好であり、且つウェブ収縮が低減している。
【0025】
実施例5は実施例2の樹脂構成で、第一成分と第二成分の比を70/30から50/50へ変更したものである。カード通過性は良好であり、ウェブ収縮も10%以下であった。
【0026】
実施例6は鞘に使用しているメタロセンポリエチレン樹脂にチーグラーナッタポリエチレン樹脂を40%ブレンドしたものである。カード通過性は良好で、ウェブ収縮も10%以下であった。
【0027】
比較例1はチーグラーナッタポリエチレン樹脂からなる実施例1と同様の密度とMFRの樹脂であり、また、比較例2、3、4は第二成分の密度を上げたものである。比較例1はカード通過性が非常に悪く、多量のネップが発生したため、ウェブサンプルは採取不可能であった。また、比較例2、3、4は高密度になる程、カード性は改善される傾向ではあったが、何れもウェブ収縮が高かった。
【0028】
比較例5はMFRの高いチーグラーナッタポリエチレン樹脂の組み合わせによるものである。カード工程にて少量のネップが見られ、またウェブ収縮は15%以上と高いものであった。
【0029】
比較例6は比較例2の第一成分と第二成分の比を70/30から50/50へ変更したものであるが、カード通過性が悪く多量のネップが発生したことから、ウェブサンプルは採取不可能であった。
【0030】
実施例1、2、3、4、5、6の繊維をスルーエアー不織布加工し、その不織布物性を測定した結果が表2の実施例7、8、9、10、11、12である。何れも加工温度巾が大きいことから、不織布加工が容易であり、低温加工性が向上する。また、不織布は柔軟で風合が良好であり、比容積、強力が高いことが分かった。
【0031】
比較例2、3、5の繊維をスルーエアー不織布加工し、その不織布物性を測定した結果が表2の比較例7、8、10である。何れも加工温度巾が狭いため不織布加工が困難であり、低温加工性が低下する。また、比容積が低く、不織布は硬く風合を損なう。
本発明で得られる繊維を用いたスルーエアー不織布と比較すると各加工温度における強力が低く、特に低温加工時にその強力の差が最も大きくなる。
【0032】
比較例4の繊維をスルーエアー加工し、不織布を製造することを試みたが、表面にひきつりが見られ、著しく地合が悪く、表2の比較例9に示すように物性データを測定できるような不織布は得られなかった。これは、第一成分と第二成分の融点差がきわめて狭いためである。
【0033】
実施例1、2、3、4、5、6の繊維をエンボス不織布加工し、その不織布物性を測定した結果が、表3の実施例13、14、15、16、17、18である。何れも、加工温度巾がとれることから不織布加工が容易であり、低温加工性が向上する。また、得られた不織布の強力は高く、非常に柔軟で風合が良好であった。
【0034】
比較例2、3、4、5の繊維をエンボス不織布加工し、その不織布物性を測定した結果が、表3の比較例11、12、13、14である。何れも、加工温度巾が狭いため不織布加工が困難であり、低温加工性が低下する。また、得られた不織布は硬く風合が低下した。
本発明で得られる繊維を用いたエンボス不織布と比較すると各加工温度における強力が低く、特に低温加工時にその強力の差が最も大きくなる。
【0035】
本発明で得られる繊維を用いたスルーエアー不織布を市販されている大人用使い捨ておむつの表面材を切り取り、表2の実施例7と比較例7の不織布を固定した、実施例19、比較例15の着用試験を行ったところ、実施例19の大人用使い捨ておむつは非常に肌触りが良く、使用時に耐える強力を持ち、比較例15の大人用使い捨ておむつは、べたつき感があるため肌触りが悪く、着用感が悪いことが確認された。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
本発明のポリエチレン系複合繊維は、第一成分と第二成分の融点差が充分にとれることから、不織布加工が容易であり、低温加工性が向上する。また、得られた不織布は嵩高で柔軟であり、更に高い接着強力を示す。特に従来、使用が困難であったスルーエアー用原綿として好適に用いることが出来、医療用途のみならず衛材用途に適した性能を有している。
Claims (15)
- ポリエチレン系樹脂からなる鞘芯型複合繊維であって、第一成分(芯成分)が密度0.940g/cm3以上、メルトフローレート16〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有する高密度ポリエチレン樹脂からなり、第二成分(鞘成分)がメタロセン触媒により重合されたQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)3.0以下のポリエチレン樹脂を含み、第一成分と第二成分の融点差が15℃以上であって、120℃でのウェブ収縮率が15%以下である、ポリエチレン系複合繊維。
- 第一成分が密度0.945〜0.965g/cm3、融点125〜135℃の高密度ポリエチレンである請求項1に記載のポリエチレン系複合繊維。
- 第二成分に含まれるポリエチレン樹脂が、メタロセン触媒により重合された密度0.850〜0.930g/cm3、Q値2.5以下のポリエチレン樹脂である請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
- 第二成分に含まれるポリエチレン樹脂が、メタロセン触媒により重合されたメルトフローレート5〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有するポリエチレンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
- カード加工用の、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
- スルーエアー加工用の、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維を用いた不織布。
- スルーエアー加工により繊維同士を熱融着させた請求項7に記載の不織布。
- ポイントボンド加工により繊維同士を点接着させた請求項7に記載の不織布。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエチレン系複合繊維と、該繊維が熱接着する温度では実質的に非接着性である繊維を混綿した不織布。
- 繊維同士を水流交絡させた請求項7〜10のいずれか1項に記載の不織布。
- スパンボンド法により得られる請求項7〜9のいずれか1項に記載の不織布。
- 請求項7〜12のいずれか1項に記載の不織布を用いた医療用物品。
- 請求項7〜12のいずれか1項に記載の不織布を用いた衛生材料用物品。
- ポリエチレン系樹脂からなる鞘芯型複合繊維であって、第一成分(芯成分)が密度0.940g/cm3以上、メルトフローレート16〜45g/10min(190℃、2160g、B法)を有する高密度ポリエチレン樹脂からなり、第二成分(鞘成分)がメタロセン触媒により重合されたQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)3.0以下のポリエチレン樹脂を含み、第一成分と第二成分の融点差が15℃以上であるポリエチレン系複合繊維を、5倍以上の延伸倍率で延伸することを特徴とする、ポリエチレン系複合繊維の製造方法。
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