JP4440952B2 - 補剛装置 - Google Patents
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Description
また、従来このようなストラットタワーバーにおいて、中間部分にピロボールジョイント等の回動許容部を設けることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は車両の操縦安定性をより向上する補剛装置を提供することである。
請求項1の発明は、車体の一部に形成され、左右のサスペンション装置のショックアブソーバ上端部がそれぞれ支持される左右のショックアブソーバ支持部の間にわたして設けられる補剛装置であって、左右の前記ショックアブソーバ支持部にそれぞれ固定された左側シャフト及び右側シャフトと、前記左側シャフト及び前記右側シャフトを前記車体の車幅方向における中央部において連結するとともに、前記左側シャフトと前記右側シャフトとの回動を許容する回動許容部とを備え、前記左側シャフト及び前記右側シャフトと前記ショックアブソーバ支持部との固定箇所を、該ショックアブソーバ支持部近傍における前記ショックアブソーバのロッド軸線の位置よりも車両前方側に配置し、前記回動許容部を、前記左側シャフト及び前記右側シャフトと前記ショックアブソーバ支持部との固定箇所に対して車両後方側又は車両前方側にオフセットして配置し、前記左側シャフト及び前記右側シャフトは前記車体との間で曲げモーメントを伝達可能に前記ショックアブソーバ支持部に固定されることを特徴とする補剛装置である。
そして、旋回内輪側のショックアブソーバ支持部が車幅方向内側へ変位すると、補剛装置のシャフトには曲げ変形が生じ、これによって曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントは、反力としてショックアブソーバ支持部へ伝達され、旋回内輪側の車体の変形を抑制するように作用する。
そして、各シャフトから車体側へこの曲げモーメントが入力される固定箇所をショックアブソーバのロッド軸線に対して車両前方側に配置したことによって、車体の変形量が比較的小さい車両後方側に配置した場合よりも、より効果的に旋回内輪側の車体の変形を抑制し、また、旋回外輪側の車体の変形を促進することができる。
また、この固定箇所に対して回動許容部の位置を車両後方側又は前方側へオフセットして配置したことによって、左右固定箇所及び回動許容部を車幅方向一直線に配置した場合に対して、固定箇所と回動許容部との距離(各シャフトのスパン)を大きくして各シャフトに生じる曲げモーメントをよりいっそう大きくすることができる。
さらに、エンジンルーム内に配置される吸気系部品等の他部品との干渉も防止することができる。
さらに、旋回内輪のコーナリングフォースが増加することによって、旋回初期のヨーの立ち上がりが早くなり、操縦安定性も向上する。
実施例のストラットタワーバーは、乗用車等の自動車のマクファーソンストラット式フロントサスペンションの左右のストラットアッパマウント間にわたして設けられる。
図1は、実施例のストラットタワーバーが装着される車両のサスペンション装置を車体床下側の前方側から見た状態を示す外観斜視図である。
図2は、図1のサスペンション装置を車体床下側の車幅方向中央部側から見た状態を示す外観斜視図である。
図3は、実施例のストラットタワーバー及びサスペンション装置の構成を示す模式図であって、車両前方側から見た状態を示している。
車体1は、例えば鋼製のモノコックボディであって、図示しないキャビン(車室)の前方に独立したエンジンルームを備えており、フロントサスペンションはこのエンジンルームの両側部に配置されている。
アッパサイドフレーム20は、トーボードの上方側に設けられたバルクヘッドから車両前方側に突き出し、車両の前後方向にほぼ沿って配置された梁状の構造部材である。アッパサイドフレーム20は、車幅方向に離間して1対が設けられ、ロワサイドフレーム10よりも上方側かつ車幅方向外側に配置されている。このアッパサイドフレーム20は、車両の図示しないフロントフェンダの上端部に沿って延びている。
図3に示すように、ストラット収容部30の下端部は、ロワサイドフレーム10の上面部の車幅方向外側の端部に接続され固定されている。また、ストラット収容部30の上端部(ストラット支持部31近傍の部分)は、アッパサイドフレーム20の上面部の車幅方向内側の端部に接続され固定されている。
なお、以上のロワサイドフレーム10、アッパサイドフレーム20、ストラット収容部30は、車体1のホワイトボディの一部を構成しており、例えばスポット溶接等によって相互に接合されている。
図3に示すように、フロントクロスメンバ40は、車幅方向における両端部の上面部が車体のロワサイドフレーム10の下面部に、例えばボルト・ナットによる締結等によって固定されている。
また、フロントクロスメンバ40には、その下部から突き出したブラケット41が形成されている。ブラケット41は、ロワアーム130の車体側の支点となる部分であって、左右のロワアーム130に対応して車幅方向に離間して1対が設けられている。
さらに、フロントクロスメンバ40の上部には、図示しないエンジン等のパワートレーンが、弾性体を有するエンジンマウント等を介して搭載されている。
そして、左右のストラット120の上端部間には、ストラットタワーバー200が装着されている。
ハウジング110は、その前方側に突き出して形成され、後述するステアリングシステム50のタイロッド52が接続されるナックルアームを備えている。
ストラット120は、前輪の転舵時にハウジング110とともに操向軸線(キングピン)回りに回転し、また、サスペンション装置のストロークに応じて伸縮する。ここで、キングピンは、ストラット120の上端部におけるショックアブソーバのピストンロッド軸線の位置と、ロワアーム130に対してハウジング110が支持されるボールジョイント131の回転中心とを結んだ直線となる。
ストラットアッパマウント121は、上方側へ突き出したボルトを備え、ストラット120は、このボルトを車体1側のストラット支持部31に形成されたボルト孔に挿通し、ナットで締結することによって車体1に固定される。
ロワアーム130は、車体側においては、車両の前後方向に離間して配置された2箇所の接続部においてブラケット41等に接続され、サスペンション装置のストロークに応じて、この2箇所の接続部を結んだ直線である揺動中心軸回りに揺動(回転)する。ロワアーム130の前側の接続部はフロントクロスメンバ40のブラケット41に接続され、後側の接続部は、フロントクロスメンバ40を介さず車体1に接続されている。
ロワアーム130はほぼL字状に屈曲して形成されており、前後の車体等との接続部にはそれぞれゴムブッシュが設けられている。
ロワアーム130には、前後のゴムブッシュの外筒がそれぞれ圧入される円筒部132,133がそれぞれ設けられている。前側の円筒部132は、その軸方向を車両の前後方向とほぼ一致させて配置されている。前側のゴムブッシュは、その内筒内に挿入されるボルトによって、フロントクロスメンバ40のブラケット41に固定されている。後側の円筒部133は、その軸方向がほぼ上下方向に配置されている。後側のゴムブッシュは、その内筒内に挿入されるボルトによって、車体1及びサポートプレート180に固定される。
ステアリングギアボックス151は、ステアリングホイールに接続された図示しないステアリングシャフトの回転運動を、車幅方向の直進運動に変換するラックアンドピニオン機構を備えている。
タイロッド152は、ステアリングギアボックス151とハウジング110の前端部に設けられたナックルアームとを接続し、図示しないステアリングラックの動きをハウジング110に伝達し、ハウジング110の操向を行うロッド状の部材である。タイロッド152は、その車幅方向外側の端部であるタイロッドエンドに設けられたボールジョイントを介して、ハウジング110のナックルアームに接続されている。
ドライブシャフト170は、図示しないディファレンシャルギアからハウジング110に装着された図示しないホイールハブに駆動力を伝達する駆動力伝達軸であり、その両端部には等速ジョイントが設けられ屈曲可能となっている。
サポートプレート180は、後側のゴムブッシュの下部を支持する部材であって、例えば板金によって形成され、ボルト等で車体1のフロア部に固定されている。
図4は、ストラットタワーバーの外観を示す2面図であって、図4(a)は車両装着時における上方から見た図、図4(b)は車両前方から見た図である。
ストラットタワーバー200は、左側シャフト210、右側シャフト220、左側プレート230、右側プレート240、ピロボールジョイント250を備えて構成されている。
左側シャフト210及び右側シャフト220は、それぞれのほぼ中間部において屈曲して形成されている。ストラットタワーバー200を車体1に装着した状態において、左側シャフト210及び右側シャフト220の屈曲部よりもピロボールジョイント250側(車体中央側)の部分は、ほぼ車幅方向に沿ってほぼ水平に配置されている。また、屈曲部よりもストラット支持部31側の部分は、ストラット支持部31側のほうが屈曲部よりも車両前方側でありかつ低い位置となるように傾斜して配置されている。
上述したように左側シャフト210及び右側シャフト220を屈曲して形成することによって、ピロボールジョイント250は、ストラットタワーバー200を車体1に装着した状態においては、ブラケット231,241と左側シャフト210及び右側シャフト220との固定箇所よりも車両後方側であり、さらに、ストラット120のショックアブソーバロッド軸線よりも車両後方側に配置されている。
ストラットタワーバー200のピロボールジョイント250は、図示しないエンジンの上部に装着されたエンジンカバー51の後方に配置されるインタークーラ52のさらに後方側に配置され、このインタークーラ52とバルクヘッドとの間に収容されている。インタークーラ52は、図示しないターボチャージャによって過給された空気を、走行風との熱交換器によって冷却し、エンジンの充填効率を向上させる吸気系部品である。
<比較例1>
図6は、本発明の比較例1である車両のフロントサスペンション部の模式図である。図6(a)は、車両の前方側から見た状態を示し、図6(b)は、アッパサイドフレーム及びストラット収容部を上方側から見た状態を示している(図8(a)、図8(b)、図10(a)、図10(b)、図12(a)、図12(b)において同じ)。
比較例1は、上述した実施例の車両に対して、ストラットタワーバーを設けていない点で相違する。
また、この接地荷重に起因するロワアーム130の引張力のため、ロワサイドフレーム10にも捻りモーメントが作用している。
図7は、比較例1の旋回時におけるフロントクロスメンバ支持部の曲げモーメントとブラケットの横変位との相関を示すグラフである。図7において、縦軸はフロントクロスメンバ40とロワサイドフレーム10との結合箇所A点における曲げモーメントを示し、横軸はフロントクロスメンバ40のブラケット41とロワアーム130の結合箇所B点の横変位を示している。(図9、図11、図13において同じ)
これに対し、旋回外輪側では、A点に旋回内輪側とは反対向きの曲げモーメント変化が発生しても、フロントクロスメンバ40のヒステリシスロスとして吸収されてしまうため、B点の横変位や、旋回内輪側のような車体1の変形はほとんど生じない。
このため、旋回内輪側サスペンションのジャッキダウン現象が抑制されるとともに、旋回外輪側サスペンションのジャッキアップ現象が促進され、車両は前上がりとなるピッチング挙動を伴うロール挙動を示すようになる。
図8は、比較例2のストラットタワーバー及びサスペンション装置の構成及び旋回時の車体変形を示す模式図、及び、ストラットタワーバーの曲げモーメント線図である。図8(c)に示す曲げモーメント線図において、横軸は車幅方向における位置を示し、縦軸は曲げモーメントの大きさ、向きを示している(図10(c)、図12(c)において同じ)。
図9は、比較例2の旋回時におけるフロントクロスメンバ支持部の曲げモーメントとブラケットの横変位との相関を示すグラフである。
比較例2は、実施例のストラットタワーバー200に代えて、以下説明するストラットタワーバー200Aを備えている。
ストラットタワーバー200Aは、ストラットタワーバー200の左側シャフト210、右側シャフト220、ピロボールジョイント250に代えて、左右一体に形成されたシャフト260を備えた剛体ストラットタワーバーである。シャフト260の両端部は、左右の各ブラケット231,241に固定される。
このような曲げモーメントがストラット収容部30を介して車体1に入力されると、ロワサイドフレーム10に作用する捻りモーメントは、旋回内輪側で減少するとともに、旋回外輪側ではわずかに増加する。
これらのことから、比較例2では、比較例1に対して旋回内輪のコーナリングフォース低下がある程度緩和され、その結果、ロール時の前上がりピッチング挙動も緩和される。
図10は、比較例3のストラットタワーバー及びサスペンション装置の構成及び旋回時の車体変形を示す模式図、及び、ストラットタワーバーの曲げモーメント線図である。
図11は、比較例3の旋回時におけるフロントクロスメンバ支持部の曲げモーメントとブラケットの横変位との相関を示すグラフである。
比較例3は、実施例のストラットタワーバー200に代えて、以下説明するストラットタワーバー200Bを備えたものである。
ストラットタワーバー200Bは、ストラットタワーバー200の左側シャフト210及び右側シャフト220に代えて、以下説明する左側シャフト270及び右側シャフト280を備えたフレキシブルストラットタワーバーである。
その結果、旋回内輪の実舵角の切り戻しがより低減され、ロール時の前上がりピッチング挙動を抑制し、フィーリングを改善することができる。
しかし、比較例3においては、左右各シャフトの曲げ変形が少ないため、上述した曲げモーメントも小さく、操安性向上効果が不足する懸念がある。また、比較例3においては、ストラットタワーバー200Bが車幅方向にほぼ沿ってストレートに配置されていることから、インタークーラ52等のエンジンルーム内部品との干渉を避けることが難しい。
図13は、実施例の旋回時におけるフロントクロスメンバ支持部の曲げモーメントとブラケットの横変位との相関を示すグラフである。
実施例においては、比較例3と対比した場合に、左側シャフト210及び右側シャフト220の一部に車幅方向に対して傾斜して配置された部分を設けて、ピロボールジョイント250をブラケット231,241に対して車両後方側にオフセットしているため、これらのブラケット231,241との固定部からピロボールジョイント250までの距離(各シャフトのスパン)を大きくすることができる。これによって、左右シャフトの曲げ変形量(曲げ撓み角)を大きくし、図12(c)に示すように、ブラケット231,241との接続部における左側シャフト210及び右側シャフト220の曲げモーメントを増大することができる。図12(b)に示すように、このとき、ストラットタワーバー200は、ピロボールジョイント250が後方側へ大きく変位するように変形する。
このため、旋回内輪側における車体変形をよりいっそう抑制し、さらに、旋回外輪側においても、旋回内輪側とは逆向きの車体変形を生じさせることができる。すなわち、旋回外輪側でも横力の大きい領域では、フロントクロスメンバ40のブラケット41、及び、これに接続されたロワアーム130が、わずかに車幅方向内側へ変位する。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例では、回動許容部にピロボールを用いていたが、本発明はこれに限らず、左右シャフト相互を回動可能に連結できるものであれば他の方式の自在継手を用いてもよい。
(2)実施例では、回動許容部を車体側との固定箇所よりも車体後方側へオフセットして配置しているが、車体前方側へオフセットしてもよい。例えば、エンジンに対してフロントサスペンションが相対的に前寄りに配置される後輪駆動車の場合には、回動許容部をエンジンの前側に配置してもよい。
(3)実施例では、補剛装置は例えばストラット式サスペンションの左右ストラットアッパマウント間にわたして設けられるストラットタワーバーであったが、これに限らず、例えばダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式サスペンションにおける左右ショックアブソーバの車体側取付部の間にわたして設けるようにしてもよい。
(4)ストラットタワーバーの材質や構造は、実施例の構造に限定されない。例えば、シャフトの材質として、スチールパイプ、カーボン繊維強化樹脂パイプを単独又は組み合わせて用いてもよい。また、車体側固定部の形状や材質も特に限定されない。
(5)実施例では、回動許容部をインタークーラの後方側に配置しているが、インタークーラをもたない自然吸気エンジン搭載車の場合であっても、例えばサージタンク、吸気チャンバ、レゾネータ等の吸気部品の後方側等に回動許容部を配置することができる。
10 ロワサイドフレーム 20 アッパサイドフレーム
30 ストラット収容部 31 ストラット支持部
40 フロントクロスメンバ 41 ブラケット
110 ハウジング
120 ストラット 121 ストラットアッパマウント
130 ロワアーム 140 スタビライザ
150 ステアリングシステム 151 ステアリングギアボックス
152 タイロッド 160 フロントブレーキ
170 ドライブシャフト 180 サポートプレート
200 ストラットタワーバー
210 左側シャフト 220 右側シャフト
230 左側プレート 231 ブラケット
240 右側プレート 241 ブラケット
250 ピロボールジョイント
Claims (1)
- 車体の一部に形成され、左右のサスペンション装置のショックアブソーバ上端部がそれぞれ支持される左右のショックアブソーバ支持部の間にわたして設けられる補剛装置であって、
左右の前記ショックアブソーバ支持部にそれぞれ固定された左側シャフト及び右側シャフトと、
前記左側シャフト及び前記右側シャフトを前記車体の車幅方向における中央部において連結するとともに、前記左側シャフトと前記右側シャフトとの回動を許容する回動許容部とを備え、
前記左側シャフト及び前記右側シャフトと前記ショックアブソーバ支持部との固定箇所を、該ショックアブソーバ支持部近傍における前記ショックアブソーバのロッド軸線の位置よりも車両前方側に配置し、
前記回動許容部を、前記左側シャフト及び前記右側シャフトと前記ショックアブソーバ支持部との固定箇所に対して車両後方側又は車両前方側にオフセットして配置し、
前記左側シャフト及び前記右側シャフトは前記車体との間で曲げモーメントを伝達可能に前記ショックアブソーバ支持部に固定されること
を特徴とする補剛装置。
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