JP4335389B2 - シリコン系薄膜光電変換装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD装置およびこのプラズマCVD装置を用いて結晶質シリコン系薄膜光電変換層を成膜する工程を含むシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、「結晶質」と「微結晶」の用語は、部分的に非晶質状態を含むものをも意昧するものとする。
【0003】
【従来の技術】
薄膜光電変換装置の代表的なものとして非晶質シリコン系太陽電池が知られている。この太陽電池に用いられる非晶質光電変換材料は、通常200℃前後の低い成膜温度の下でプラズマCVD法によって形成できるため、基板としてガラス、ステンレス、有機フィルム等の安価なものを使用できる。その結果、非晶質光電変換材料は、低コストの光電変換装置を製造するのための有力材料として期待されている。また、非晶質シリコンは可視光領域での吸収係数が大きいため、500nm以下の薄い膜厚の非晶質シリコンからなる光電変換層を有する太陽電池において15mA/cm2以上の短絡電流が実現されている。
【0004】
しかしながら、非晶質シリコン系材料は長期間の光照射を受けると、Stebler-Wronsky効果により光電変換特性が低下するなどの問題を抱えており、さらにその有効感度波長領域が800nm程度に制限されている。したがって、非晶質シリコン系材料を用いた光電変換装置においては、その信頼性や高性能化には限界が見られ、基板選択の自由度や低コストプロセスを利用し得るという本来の利点が十分には生かされていない。
【0005】
このようなことから、近年、例えば多結晶シリコンや微結晶シリコンのような結晶質シリコンを含む薄膜を利用した光電変換装置の開発が精力的に行なわれている。これらの開発は、安価な基板上に低温プロセスで良質の結晶質シリコン薄膜を形成することによって光電変換装置の低コスト化と高性能化を両立させるという試みであり、太陽電池だけでなく光センサ等の様々な光電変換装置への応用が期待されている。
【0006】
結晶質シリコン薄膜の形成方法としては、例えばCVD法やスパッタリング法にて基板上に直接堆積させるか、同様のプロセスで一旦非晶質膜を堆積させた後に熱アニールやレーザアニールを行なうことによって結晶化を図るなどの方法が知られている。いずれの方法においても前述した安価な基板を用いるためには成膜時の温度を550℃以下にする必要がある。
【0007】
前記各成膜プロセスの中でも、プラズマCVD法によって直接結晶質シリコン薄膜を堆積させる手法は、プロセスの低温化や薄膜の大面積化が最も容易であり、しかも比較的簡便なプロセスで高品質な結晶質薄膜が得られるものと期待されている。
【0008】
ところで、プラズマCVD法に用いられる装置としては従来より次のような構造のものが知られている。矩形状の反応容器は、対向する両側壁に排気部材である排気管がそれぞれ連結されている。前記排気管は、それら他端が真空ポンプ等に連結されている。基板を出し入れするためのバルブは、前記反応容器の対向する側壁に設けられている。矩形状のアノード電極は、前記反応容器内に支持軸により支持、吊下されてている。前記アノード電極下部には、保持されるべき基板を加熱するための図示しないヒータが内蔵されている。前記アノード電極は、例えばグランドに接続されている。矩形状のカソード電極は、前記反応容器内に前記アノード電極の下面と対向するように配置され、かつガス供給管を通して反応ガスが供給される。
【0009】
前記カソード電極は、前記アノード電極と対向する前面に複数の未貫通ガス吹き出し穴を開口している。前記ガス吹き出し穴の背面部分には、これらの穴と連通し、その穴より径の小さいガス導入孔が穿設されている。例えば高周波電源は、前記カソード電極に接続されている。
【0010】
このような構成のプラズマCVD装置において、バルブを通して基板を反応容器内のアノード電極上に保持し、そのアノード電極に内蔵した図示しないヒータの発熱により前記基板を所望温度に加熱する。反応ガス(例えばシラン系ガスと水素を含む反応ガス)をガス供給管を通してカソード電極に向けて供給し、その上部に配置されたガス導入孔を通してガス吹き出し穴に吹き出す。同時に、真空ポンプのような排気装置を駆動して前記反応容器内のガスを排気管を通して排気して前記反応容器内を所定の真空度に保持する。
【0011】
反応容器内の真空度が安定した状態で、電源から前記カソード電極に例えば高周波電力を印加する。このような高周波電力の印加により前記カソード電極と前記基板の間に弱いプラズマが生成されるとともに、ホロカソード効果により前記カソード電極のガス吹き出し穴の開口付近に強いプラズマが生成される。このようなプラズマが生成されると、その中で反応ガス(シラン系ガス)が分解されてシリコンが前記所望温度(例えば550℃以下)に加熱された前記基板表面に堆積されてシリコン薄膜が成膜される。
【0012】
前述した従来のCVD装置においては、主にカソード電極内部で強い放電を行なうため、カソード電極内部でプラズマを発生でき、基板に成膜された薄膜へのイオンダメージを抑制することが可能になる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より安定したプラズマを生成して均一な膜厚および膜質を有する薄膜を高速で成膜することが可能なプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、シリコン系光電変換層を有する光電変換ユニットを積層する際、前記プラズマCVD装置を用いて均一な膜厚および膜質を有する高品位のシリコン系光電変換層を高速で成膜して性能改善を達成したシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法は、基板上に形成された少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、この光電変換ユニットはプラズマCVD法によって順次積層された一導電型半導体層と、少なくとも一つのシリコン系薄膜光電変換層と、逆導電型半導体層とを含むシリコン系薄膜光電変換装置を製造する方法であって、
排気部材を有する反応容器と、前記反応容器内に配置されたアノード電極と、前記反応容器内に前記アノード電極に対向して配置されたホロカソードタイプのカソード電極と、前記カソード電極に反応ガスを供給するためのガス供給手段と、前記カソード電極に電力を印加するための電源とを具備し、前記カソード電極は前記アノード電極に対向する前面に複数のガス吹き出し穴が開口され、これら穴の背面部分にこれら穴と連通するように穿設された前記穴より径の小さいガス導入孔とを有し、かつ前記各ガス吹き出し穴の直径は成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の2倍を超え、12倍以下であるプラズマCVD装置を用意する工程と、
前記プラズマCVD装置の前記反応容器内の前記アノード電極に前記一導電型半導体層が形成された前記基板を保持する工程と、
前記電源から電力を前記カソード電極に供給し、かつシラン系ガスと水素ガスを含む反応ガスを前記複数のガス導入孔を通してガス吹き出し穴から吹き出し、ホロカソード効果により主に前記ガス吹き出し穴近傍にプラズマを発生させることにより前記基板の一導電型半導体層上にシリコン系薄膜光電変換層を成膜する工程と
を含み、
成膜中の前記基板温度を100〜400℃、前記反応容器内の圧力を5Torr以上にそれぞれ設定することを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わるプラズマCVD装置を図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係わるプラズマCVD装置を示す概略図、図2は図1のプラズマCVD装置の要部断面図、図3は図2のIII−III矢視図、図4は図1の中空状カソード電極のガス吹き出し穴を有するガス吹き出し板の拡大断面図である。
【0019】
矩形状の反応容器1は、対向する両側壁に排気部材である排気管2,2がそれぞれ連結されている。前記排気管2,2は、それら他端が図示しない真空ポンプ等に連結されている。基板を出し入れするための図示しないバルブは、前記反応容器1の対向する側壁に設けられている。
【0020】
矩形状のアノード電極3は、前記反応容器1内に支持軸4により支持、吊下されてている。前記アノード電極3下部には、保持されるべき基板を加熱するための図示しないヒータが内蔵されている。前記アノード電極3は、例えばグランドに接続されている。
【0021】
前記反応容器1を貫通して底部に連通された筒体5を有する有底矩形枠状のシールド部材6は、前記アノード電極3と対向して配置されている。前記筒体5内に挿入されたガス供給管7が底部に連通された有底矩形枠状のカソード支持部材8は、前記シールド部材6内に絶縁材を介するか、もしくは空気絶縁されて配置されている。
【0022】
カソード電極9は、図1〜図3に示すように前記カソード支持部材8上に前記アノード電極23と対向するように支持固定されている。電源、例えば高周波電源(図示せず)は前記中空状のカソード電極9に接続されている。
【0023】
前記カソード電極9は、前記アノード電極3と対向する前面に複数の円柱状の未貫通ガス吹き出し穴10が開口されている。前記各ガス吹き出し穴10は、図4に示すように直径(L)が成膜時の放電条件での前記穴10内周面付近に形成される環状のプラズマシース11の距離(Ls)の2倍を超え、12倍以下である。ここでプラズマシースとは、プラズマの物体周囲に密集する本質的に単一極性の荷電粒子層を意味するものである。前記各未貫通ガス吹き出し穴10の背面の前記カソート電極9部分には、これらの穴10と連通し、その穴10より径の小さいガス導入孔12がそれぞれ穿設されている。ガス分散板13は、前記有底矩形枠状のカソード支持部材8内に前記カソード電極9と対向し、かつ所望距離隔てるように配置されている。
【0024】
前記各ガス吹き出し穴10の直径(L)を成膜時の放電条件での前記プラズマシース11の距離(Ls)の2倍を超え、12倍以下にしたのは、次のような理由によるものである。前記ガス吹き出し穴10の直径(L)を前記プラズマシース11の距離(Ls)の2倍以下にすると、前記直径がシース距離以内になり、正常なプラズマを前記ガス吹き出し穴内に生成することが困難になり、プラズマは主にカソード電極とアノード電極間に生成される。一方、前記ガス吹き出し穴10の直径(L)が前記プラズマシース11の距離(Ls)の12倍を超えると、ガス吹き出し穴の直径が大きくなり、前記カソード電極9に穿設できるガス吹き出し穴10の数が減少してホロカソード内部と前記アノード電極に保持される基板との平行部のくり返し間隔が大きくなるため、プラズマの強弱ができて波打つようになりプラズマが不安定になる恐れがある。より好ましい前記ガス吹き出し穴10の直径(L)は、前記プラズマシース11の距離(Ls)の3倍から8倍である。
【0025】
次に、前述した図1〜図4に示す構成のプラズマCVD装置の作用を説明する。
【0026】
まず、図示しないバルブを通して基板14を反応容器1内のアノード電極3に保持させ、そのアノード電極3に内蔵した図示しないヒータの発熱により前記基板13を所望温度に加熱する。反応ガス(例えばシラン系ガスと水素を含む反応ガス)をガス供給管7を通して有底矩形枠状のカソード支持部材8内に供給し、この支持部材8内に配置されたガス分散板13を通し、さらにカソード電極9の複数のガス導入孔12およびガス吹き出し穴10から吹き出す。同時に、図示しない真空ポンプのような排気装置を駆動して前記反応容器1内のガスを排気管2,2を通して排気して前記反応容器1内を所定の真空度に保持する。
【0027】
反応容器1内の真空度が安定した状態で、図示しない電源から前記カソード電極5に例えば高周波電力を印加する。このような高周波電力の印加により前記カソード電極9と前記基板14の間に弱いプラズマ151が発生するとともに、ホロカソード効果により前記カソード電極9のガス吹き出し穴10の開口部付近に強いプラズマ152が発生する。プラズマ151,152が発生されると、その中で反応ガス(シラン系ガス)が分解されてシリコンが前記所望温度(例えば550℃以下)に加熱された前記基板14表面に堆積されてシリコン薄膜が成膜される。
【0028】
前述した成膜時において、前記アノード電極3との対向部に前記カソード電極9を配置し、このカソード電極9に図4に示すように直径(L)が成膜時の放電条件で前記ガス吹き出し穴10内周面付近に形成される環状のプラズマシース11の距離(Ls)の2倍を超え、12倍以下であるガス吹き出し穴10を穿設することによって、前記カソード電極9のガス吹き出し穴10の開口部付近に強いプラズマ152を安定的に発生できる。つまり、前記ガス吹き出し穴10の直径を成膜時の放電条件でその穴10の内面付近に形成されるプラズマシース11の距離との関係で適切な大きさ(寸法)に設定することによって、プラズマ生成に関与する放電を安定化することができる。その結果、均一な膜厚および膜質を有する薄膜を前記基板14上に高速度で成膜できる。
【0029】
また、アノード電極3およびカソード電極9を対向配置し、成膜条件で放電させ、前記カソード電極9に穿設された複数のガス吹き出し穴10に生成されるプラズマシースの距離(Ls)を測定するのみで、ホロカソード効果により正常な放電(プラズマ生成)を行なうガス吹き出し穴10の径を設計することができる。その結果、このように設計されたガス吹き出し穴10を有するカソード電極9を作製してプラズマCVD装置に組込むことによって、安定した放電によるプラズマの生成が可能になるため均一な膜厚および膜質を有する薄膜を基板上に成膜できる。
【0030】
なお、本発明に係るプラズマCVD装置は図1に示すようにアノード電極を上部側、カソード電極を下部側に配置するアップフロー型に限らず、アノード電極を下部側、カソード電極を上部側に配置するダウンフロー型にも同様に適用できる。また、アノード電極およびカソード電極をそれぞれ立てて配置する縦型フロー型にも同様に適用できる。
【0031】
前記ガス吹き出し穴は円柱形状に限らず、三角柱、四角柱または六角柱の形状にしてもよい。
【0032】
次に、本発明に係るシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、本発明の1つの実施形態により製造されるシリコン系薄膜光電変換装置を模式的に示す斜視図である。
【0034】
(第1工程)
まず、基板101上に裏面電極110を形成する。
【0035】
前記基板101としては、例えばステンレス等の金属、有機フィルム、または低融点の安価なガラス等を用いることができる。
【0036】
前記裏面電極110は、例えばTi,Cr,Al,Ag,Au,CuおよびPtから選択された少なくとも1以上の金属またはこれらの合金からなる層を含む金属薄膜102およびITO,SnO2,およびZnOから選択された少なくとも1つ以上の酸化物からなる層を合む透明導電性薄膜103をこの順序で積層することにより形成される。ただし、金属薄膜102または透明導電性薄膜103のみで裏面電極110を構成してもよい。これらの薄膜102,103は、例えば蒸着法やスパッタリング法によって形成される。
【0037】
(第2工程)
次いで、前記裏面電極110上にプラズマCVD法によって一導電型半導体層104、結晶質シリコン系薄膜光電変換層105および逆導電型半導体層106を順次積層することにより光電変換ユニット111を形成する。この光電変換ユニット111は、1ユニットに限らず、複数のユニットを前記裏面電極に形成してもよい。
【0038】
前記一導電型半導体層104、結晶質シリコン系薄膜光電変換層105および逆導電型半導体層106について、以下に詳述する。
【0039】
1)一導電型半導体層104
この一導電型半導体層104は、例えば導電型決定不純物原子であるリンが0.01原子%以上ドープされたn型シリコン層、またはボロンが0.01原子%以上ドーブされたp型シリコン層などを用いることができる。ただし、一導電型半導体層104に関するこれらの条件は限定的なものではなく、不純物原子としては例えばp型シリコン層においてはアルミニウム等でもよく、またシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウムなどの合金材料を用いてもよい。
【0040】
一導電型シリコシ系薄膜104は、多結晶、微結晶、または非晶質のいずれでもよく、その膜厚は1〜100nmより好ましくは2〜30nmにすることが望ましい。
【0041】
2)結晶質シリコン系薄膜光電変換層105
この結晶質シリコン系薄膜光電変換層105は、例えば前述した図1〜図4に示すプラズマCVD装置を用い、その反応容器1内のアノード電極3に予め一導電型の半導体層104が成膜された前記基板101(14)を保持し、電源からカソード電極9に電力を供給するとともに前記アノード電極3を接地し、かつシラン系ガスと水素ガスを含む反応ガスをガス供給管7を通して有底矩形枠状のカソード支持部材8内に供給し、この支持部材8内に配置されたガス分散板13を通し、さらにカソード電極9の複数のガス導入孔12およびて図4に示すようにプラズマシース11の距離との関係で適切な大きさ(寸法)に設定したガス吹き出し穴10から吹き出し、前記カソード電極9と前記基板14(101)の間に弱いプラズマ151を発生させるとともに、ホロカソード効果により前記カソード電極9のガス吹き出し穴10の開口部付近に強いプラズマ152を安定的に発生させることにより高速度で成膜される。
【0042】
前記成膜工程において、前記アノード電極3に内蔵したヒータによる基板のシリコン堆積部の加熱温度はガラス等の安価な基板の使用を可能にする550℃以下とすることが好ましい。
【0043】
前記成膜工程において、前記反応容器1内の圧力を5Torr以上の高い圧力にすることが好ましい。このような条件に設定することにより、前記基板14表面に成膜される結晶質シリコン薄膜へのイオンダメージをより低減することが可能になる。その結果、成膜速度を速めるために高周波パワーを高く(例えばプラズマ放電電力密度が100mW/cm2以上)したり、ガス流量を増加させても、成膜中の薄膜表面へのイオンダメージを低減して結晶質シリコン系薄膜光電変換層を高速度で成膜することが可能になる。また、高圧力にすることによって、結晶粒界や粒内の欠陥が水素でパッシベーションされ易くなるため、それらに起因する結晶質シリコン系薄膜への欠陥密度を減少させることが可能になる。より好ましい前記反応容器1内の圧力は5〜20Torrである。
【0044】
前記シラン系ガスとしては、例えばモノシラン、ジシラン等が好ましいが、これらに加えて四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、ジクロルシラン等のハロゲン化ケイ素ガスを用いてもよい。このようなシラン系ガスに加えて希ガス等の不活性ガス、好ましくはヘリウム、ネオン、アルゴン等を用いもよい。
【0045】
前記成膜工程において、前記反応容器1内に導入される全反応ガス(シラン系ガスと水素ガスを含む)に含まれるシラン系ガスに対する水素ガスの流量比は100倍以上にすることが好ましい。このように全反応ガスに含まれるシラン系ガスに対する水素ガスの流量比を100倍以上にすることによって、活性化された水素のエッチング作用等によって、低品位で剥離し易い結晶質シリコンが反応場である膜堆積部以外に領域に堆積されのを防ぐことが可能になる。
【0046】
前記成膜工程において、プラズマ放電電力密度を100mW/cm2以上にすることが好ましい。
【0047】
このような図1〜図4に示すプラズマCVD装置を用いて、シラン系ガスと水素ガスを含む反応ガスをガス供給管7から有底矩形枠状のカソード支持部材8内に供給し、前記カソード電極9の複数のガス導入孔12を通して図4に示すようにプラズマシース11の距離との関係で適切な大きさ(寸法)に設定したガス吹き出し穴10に吹き出すとともに、前記カソード電極9に例えば高周波電力を印加することによって、前述したようにカソード電極9と基板14(101)の間に弱いプラズマ151を発生させ、同時にホロカソード効果により前記カソード電極9のガス吹き出し穴10の開口部付近に強いプラズマ152を安定的に発生できるため、前記アノード電極3に保持された基板14(101)の一導電型半導体の表面全体に均一な膜厚および膜質を有する高品位の結晶質シリコン系薄膜光電変換層を高速度で成膜することができる。
【0048】
また、前述した成膜速度の向上によって、膜成長初期における結晶核生成時間が短いために相対的に核発生密度が減少し、大粒径で強く結晶配向した結晶粒を有する結晶質シリコン系薄膜を形成することが可能になる。
【0049】
具体的には、結晶質シリコン系薄膜光電変換層105はその中に含まれる結晶粒の多くが一導電型半導体層(下地層)104から上方に柱状に延びて成長される。これらの多くの結晶粒は膜面に平行に(110)の優先結晶配向面を有し、そのX線回折で求めた(220)回折ピークに対する(111)回折ピークの強度比は2/5以下、より好ましくは1/10以下であることが望ましい。
【0050】
さらに、前記成膜工程において前記基板のシリコン堆積部(一導電型半導体層)の温度を100〜400℃に設定することにより、0.1原子%以上で20原子%以下の水素を含む多結晶シリコンまたは体積結晶化分率80%以上の微結晶シリコンからなる結晶質シリコン系薄膜光電変換層を形成することが可能になる。
【0051】
前記結晶質シリコン系薄膜光電変換層は0.5〜10μmの厚さを有することが好ましい。
【0052】
また、下地層である1導電型層104の表面形状が実質的に平面である場合でも、光電変換層105の形成後のその表面にはその膜厚よりも約1桁ほど小さい間隔の微細な凹凸を有する表面テクスチャ構造が形成される。
【0053】
3)逆導電型半導体層106
この逆導電型半導体層106としては、例えば導電型決定不純物原子であるボロンが0.01原子%以上ドープされたp型シリコン薄膜、またはリンが0.01原子%以上ドープされたn型シリコン薄膜などが用いられ得る。ただし、逆導電型半導体層106についてのこれらの条件は限定的なものではない。不純物原子としては、例えばp型シリコンにおいてはアルミニウム等でもよく、またシリコンカーバイドやシリコンゲルマニウム等の合金材料の膜を用いてもよい。この逆導電極シリコン系薄膜106は、多結晶、微結晶または非晶質のいずれでもよく、その膜厚は3〜100nmの範囲内に設定され、より好ましくは5〜50nmの範囲内に設定される。
【0054】
(第3工程)
次いで、前記光電変換ユニット111上に透明導電性酸化膜107、櫛形状の金属電極108を順次形成することにより図5に示す構造の光電変換装置を製造する。
【0055】
前記透明導電性酸化膜107は、例えばITO,SnO2,ZnO等から選択された少なくとも1以上の層から形成される。
【0056】
前記櫛形状の金属電極108(グリッド電極)は、例えばAl,Ag,Au,Cu,Pt等から選択された少なくとも1以上の金属またはこれらの合金の層をパターニングすることにより形成される。これらの金属もしくは合金の層は、例えばスパッタリング法または蒸着法によって成膜される。
【0057】
このような方法で製造された図5に示す光電変換装置において、光109は前記透明導電性酸化膜107に入射されて光電変換がなされ、前記裏面電極110の例えば金属薄膜102および前記金属電極108の端子間から出力される。
【0058】
なお、図5ではシリコン系薄膜光電変換装置の1つを例示しているだけであって、本発明は図5に示すシリコン結晶質光電変換層を含む少なくとも1つの結晶系薄膜光電変換ユニットに加えて、周知の方法で形成される非晶質系薄膜光電変換ユニットまたは非晶質光電変換層を含む少なくとももう1つの非晶質系薄膜光電変換ユニットをも合むタンデム型光電変換装置にも適用することが可能である。
【0059】
また、nipのみならず、pin型の光電変換装置にも適用できる。
【0060】
以上述べた本発明によれば、シリコン系薄膜光電変換装置の一連の製造工程のうちで、スループットを向上させるシリコン系光電変換層を高品質で成膜することできるため、シリコン系薄膜光電変換装置の高性能化と低コスト化に大きく貢献することができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明に係わる好ましい実施例を参考例と対比して詳細に説明する。
【0062】
(参考例1)
前述した図5の実施の形態に類似して、参考例1としての結晶質シリコン薄膜太陽電池を製造した。
【0063】
まず、長さ126mm,幅126mm,厚さ1.1mmのガラス基板101上に裏面電極110として、厚さ300nmのAg膜102と厚さ100nmのZnO膜103のそれぞれがスパッタリング法によって順次形成した。裏面電極110上に厚さ10nmでリンドープされたn型微結晶シリコン層104、厚さ3μmでノンドープの多結晶シリコン薄膜光電変換層105、および厚さ10nmでボロンドープされたp型微結晶シリコン層106をそれぞれプラズマCVD法により成膜し、nip光電変換ユニット111を形成した。光電変換ユニット111上に前面電極107として、厚さ80nmの透明導電性ITO膜をスパッタリング法にて堆積し、その上に電流取出のための櫛形Ag電極108を蒸着法およびパターニング技術により形成した。
【0064】
前記n型微結晶シリコン層104は、RFプラズマCVD法によって堆積した。このときに用いられた反応ガスの流量は、シランが5.0sccm、水素が200sccm、ホスフィンが0.05sccmであった。また、反応容器内の圧力は1Torrにし、RFパワー密度を30mW/cm2に設定した。
【0065】
前記光電変換層105は、400℃の基板温度と5Torrの反応容器内圧力の下にプラズマCVD法により形成した。このとき用いられたカソード電極は、アノード電極との対向面に直径0.5mmのガス導入孔と連通する直径1.5mmのガス吹き出し穴(成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の1.5倍に相当)が4.0mmmの間隔で穿設されたガス吹き出し板を有する。前記カソード電極と基板を保持するアノード電極との距離を1.5cmに設定した。前記カソード電極のガス吹き出し穴から吹出された反応ガスにおいて、シラン/水素の流量比を1/18とし、放電パワーを80mW/cm2に設定した。
【0066】
このような条件の下において、光電変換層105の成膜速度は1.15μm/hであった。
【0067】
前記p型微結晶シリコン層106のプラズマCVDにおいては、反応ガスの流量をシランが1.0sccm、水素が500sccm、ジボランが0.01sccmとした。また、反応容器内の圧力を1Torrにし、RFパワー密度を150mW/cm2に設定した。
【0068】
このようにして得られた参考例1の太陽電池において、図5に示す入射光109としてAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射したときの出力特性を調べた。その結果、開放端電圧が0.357V、短絡電流密度が10.2mA/cm2、曲線因子が56.1%、変換効率が2.0%であった。このように成膜された光電変換層105を有する太陽電池において、前記出力特性が低下するのはカソード電極のガス吹き出し板に穿設されたガス吹き出し穴の直径が成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の2倍以下であり、これらガス吹き出し穴でのホロカソード効果によるプラズマ生成がなされず、主にカソード電極とアノード電極(基板)間にプラズマが生成されるためである。
【0069】
(参考例2)
光電変換層105をアノード電極との対向面に直径0.5mmのガス導入孔と連通する直径15mmのガス吹き出し穴(成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の15倍に相当)が20mmmの間隔で穿設されたガス吹き出し板を有するカソード電極を備えたプラズマCVD装置を用いて成膜した以外、参考例1と同じ条件の下で太陽電池を製造した。
【0070】
このような条件下において、光電変換層105の成膜速度は1.3μm/hであった。
【0071】
この参考例2の太陽電池において、図5に示す入射光109としてAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射したときの出力特性を調べた。その結果、開放端電圧が0.401V、短絡電流密度が12.3mA/cm2、曲線因子が60.1%、変換効率が3.1%であった。このように成膜された光電変換層105を有する太陽電池において、前記出力特性が低下するのはカソード電極のガス吹き出し板に穿設されたガス吹き出し穴の直径が成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の12倍を超え、ガス吹き出し穴の直径が大きくなり、前記ガス吹き出し板に穿設できるガス吹き出し穴の数が減少してホロカソード内部と前記アノード電極に保持される基板との平行部のくり返し間隔が大きくなって、プラズマの強弱ができて波打つようになりプラズマが不安定になったためである。
【0072】
(実施例1)
光電変換層105をアノード電極との対向面に直径0.5mmのガス導入孔と連通する直径4.0mmのガス吹き出し穴(成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の4倍に相当)が5mmmの間隔で穿設されたカソード電極を備えた前述した図1〜図4に示す構造のプラズマCVD装置を用いて成膜した。
【0073】
このような条件下において、光電変換層105の成膜速度は2.1μm/hであった。
【0074】
この実施例1の太陽電池において、図5に示す入射光109としてAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照射したときの出力特性を調べた。その結果、開放端電圧が0.529V、短絡電流密度が23.8mA/cm2、曲線因子が72.1%、変換効率が9.1%であった。このことから、ガス吹き出し穴の直径を成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の2倍を超え、12倍以下に設定したカソード電極を備えるプラズマCVD装置を用いて成膜した光電変換層を有する実施例1の太陽電池は、参考例1、2のものに比べて光電変換特性を向上できることがわかる。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、より安定したプラズマを生成して均一な膜厚および膜質を有する薄膜を高速で成膜でき、太陽電池の光電変換装置、液晶表示装置等の膜形成に有効に適用することが可能なプラズマCVD装置を提供できる。
【0076】
また、本発明によればシリコン系光電変換層を有する光電変換ユニットを積層する際、前記プラズマCVD装置を用いて均一な膜厚および膜質を有する高品位のシリコン系光電変換層を成膜して性能改善を達成したシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるプラズマCVD装置を示す概略図。
【図2】図1のプラズマCVD装置の要部断面図。
【図3】図2のIII−III矢視図。
【図4】図1の中空状カソード電極のガス吹き出し穴を有するガス吹き出し板の拡大断面図。
【図5】本発明の1つの実施の形態により製造されるシリコン系薄膜光電変換装置を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
1…反応容器、
2…排気管、
3…アノード電極、
9…カソード電極、
10…ガス吹き出し穴、
11…プラズマシース、
12…ガス導入孔、
14…基板、
151、152…プラズマ、
102…Ag等の薄膜、
103…ZnO等の薄膜
104…一導電型半導体層、
105…結晶質シリコン系光電変換層、
106…逆導電型半導体層、
107…ITO等の透明導電膜、
110…裏面電極、
111…結晶質シリコン系光電変換ユニット。
Claims (1)
- 基板上に形成された少なくとも1つの光電変換ユニットを含み、この光電変換ユニットはプラズマCVD法によって順次積層された一導電型半導体層と、少なくとも一つのシリコン系薄膜光電変換層と、逆導電型半導体層とを含むシリコン系薄膜光電変換装置を製造する方法であって、
排気部材を有する反応容器と、前記反応容器内に配置されたアノード電極と、前記反応容器内に前記アノード電極に対向して配置されたホロカソードタイプのカソード電極と、前記カソード電極に反応ガスを供給するためのガス供給手段と、前記カソード電極に電力を印加するための電源とを具備し、前記カソード電極は前記アノード電極に対向する前面に複数のガス吹き出し穴が開口され、これら穴の背面部分にこれら穴と連通するように穿設された前記穴より径の小さいガス導入孔とを有し、かつ前記各ガス吹き出し穴の直径は成膜時の放電条件での前記穴内周面付近に形成されるプラズマシースの距離の2倍を超え、12倍以下であるプラズマCVD装置を用意する工程と、
前記プラズマCVD装置の前記反応容器内の前記アノード電極に前記一導電型半導体層が形成された前記基板を保持する工程と、
前記電源から電力を前記カソード電極に供給し、かつシラン系ガスと水素ガスを含む反応ガスを前記複数のガス導入孔を通してガス吹き出し穴から吹き出し、ホロカソード効果により主に前記ガス吹き出し穴近傍にプラズマを発生させることにより前記基板の一導電型半導体層上にシリコン系薄膜光電変換層を成膜する工程と
を含み、
成膜中の前記基板温度を100〜400℃、前記反応容器内の圧力を5Torr以上にそれぞれ設定することを特徴とするシリコン系薄膜光電変換装置の製造方法。
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