JP4325001B2 - 多段遠心圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一軸多段式の遠心圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
遠心圧縮機として、インペラを収容するケーシングの内面に回転するインペラによって切削されるアブレーダブル層を設け、インペラとアブレーダブル層(ケーシング内面)とのクリアランスを可及的に小さくすることにより、効率の向上を図ったものが知られている(特開平6-257454号公報等)。
【0003】
他方、図1に示すように、同一の回転軸5にインペラ2、3を複数(2個)取り付けてなる多段遠心圧縮機1が知られている。ここで、かかる2段遠心圧縮機1に前述した技術を適用すれば、各段のインペラ2、3を収容するケーシング4の内面に、各段毎に夫々アブレーダブル層を設けることが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、高価なアブレーダブル層を各段毎に夫々設けることはコストアップに繋がる。そこで、本発明者は、各段毎に夫々アブレーダブル層を設けることについて検討したところ、後段側にのみアブレーダブル層を設ければ足り、前段側にはアブレーダブル層を設ける必要がないことを見出した。
【0005】
すなわち、図1に示すように同一の回転軸5に2個のインペラ2、3を取り付けた場合、各段のインペラ2、3の回転数が等しくなるため、後段側のインペラ3の体積流量が前段側のインペラ2の体積流量より小さくなり、図2に示すように後段側のインペラ3の出口幅W2が前段側のインペラ2の出口幅W1より小さくなる。
【0006】
インペラ出口幅Wが小さくなると、インペラ−ケーシング間のクリアランスδが相対的に大きくなる。このため、クリアランスδと出口幅Wとの比δ/Wは、例えばδ1=δ2とした場合、後段側(δ2/W2)の方が前段側(δ1/W1)よりも大きくなる。
【0007】
よって、クリアランスδ2による漏れの影響が大きい後段側(高圧側)にのみアブレーダブル層を設け、クリアランスδ1による漏れの影響が比較的小さい前段側(低圧側)にはアブレーダブル層を設けないことが、コストアップと効率向上との兼合い上適切であるとの結論に達した。
【0008】
また、回転軸5は、振動を抑制する等の理由により、軸方向に多少スライドを許容するように軸受13で軸支されている。よって、図1に示すように、1本の回転軸5の両端にインペラ2、3を背中合わせで取り付けると、後段側のインペラ3を通過する高速空気流によってインペラ3がケーシング側(符号31側)に引き寄せられ、回転軸5が許容範囲内で図中右方に移動する。
【0009】
このため、仮に前段側のケーシング内面(符号26)にアブレーダブル層を設けたとしても、運転中に回転軸5が図1中右方に移動して前段側インペラ2がそのアブレーダブル層から離間するため、インペラ2が空振り状態となってしまい、余り意味がない。逆に、後段側においてはインペラ3がケーシング内面(符号31)に押し付けられるため、アブレーダブル層が大きな効果を発揮する。
【0010】
よって、この観点からも、インペラ3がケーシング(符号31)に押し付けられる後段側にのみアブレーダブル層を設け、インペラ2がケーシング(符号26)から離間する前段側にはアブレーダブル層を設けないことが、コストアップと効率向上との兼合い上適切であるとの結論に達した。
【0011】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、コストダウンと効率向上とを両立させた多段遠心圧縮機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明は、同一の回転軸に圧縮機用のインペラを複数取り付けてなる多段遠心圧縮機において、上記インペラを収容するケーシングに、後段側インペラが対向する部分に位置させて、該インペラの接触によって切削されるアブレーダブル層を設け、上記後段側インペラを通過する高速空気流によって、上記後段側インペラが上記ケーシングの上記後段側インペラ対向部分に引き寄せられるように、上記回転軸を上記ケーシングに軸方向にスライド可能に軸支したものである。
【0013】
本発明によれば、一軸多段の遠心圧縮機において、前述したように効果の大きな後段側にのみアブレーダブル層を設けたので、アブレーダブル層(高価)を各段に設けたものと比べると、効率を殆ど低下させることなくコストダウンを図ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態にかかる2段遠心圧縮機1は、各段のインペラ2、3を収容するケーシング4を有する。ケーシング4の内部には、回転軸5が軸受13を介して支持されている。回転軸5は、振動を抑制する等の理由により、軸方向に多少(0.2mm 程度)スライドを許容するように軸支されており、モータ6の回転が大径ギヤ7およびピニオン8を介して伝達されるようになっている。
【0016】
回転軸5の両端部には、第1段インペラ2と第2段インペラ3とが、背中合わせで取り付けられている。各インペラ2、3は、回転軸5に取り付けられた円錐状のロータ9、10と、ロータ9、10に放射状に取り付けられたブレード11、12とからなっている。ブレード11、12は、図2(b) に示すようにフルブレードとハーフブレードとが交互に配置されていてもよく、図2(a) に示すようにフルブレードのみで構成されていてもよい。
【0017】
ケーシング4は、図1に示すように、回転軸5の軸受13が取り付けられる中央ブロック14と、中央ブロック14の装着穴15に左方から嵌め込まれる第1段側ブロック16と、中央ブロック14の装着穴17に右方から嵌め込まれる第2段側ブロック18と、第2段側ブロック18の装着穴19に右方から嵌め込まれるインデューサブロック20とからなる。各ブロック16、18、20は、それぞれ段差部21、22、23によって位置決めされる。
【0018】
中央ブロック14とこれに装着される第1段側ブロック16とは、第1段側圧縮機24のインデューサ25と、インペラ対向部26と、ディフューザ27と、スクロール室28とを区画形成する。同様に、中央ブロック14と第2段側ブロック18とインデューサブロック20とは、第2段側圧縮機29のインデューサ30と、インペラ対向部31と、ディフューザ32と、スクロール室33とを区画形成する。
【0019】
第1段側圧縮機24のインペラ2とインペラ対向部26との間には、図2(a) に示すように、所定のクリアランスδ1(0.2mm 程度)が形成されている。このインペラ対向部26には、アブレーダブル層は設けられていない。他方、図2 (b) に示すように、第2段側圧縮機29のインペラ12とインペラ対向部31との間のクリアランスδ2は略零に設定されている。このインペラ対向部31には、アブレーダブル層34が設けられている。
【0020】
アブレーダブル層34は、例えばテフロンに石英やマイカ等を混ぜた材質からなり、インデューサブロック20の先端部にブロック体として装着されている。かかるアブレーダブル層34は、当初インペラ3のブレード12がアブレーダブル層34に軽く接触する状態に設定されており、2段遠心圧縮機1の運転中インペラ3のブレード12によって適宜切削されて馴染み、クリアランスδ2は略零となる。
【0021】
以上の構成からなる本実施形態の作用を述べる。
【0022】
かかる2段遠心圧縮機1は、第1段側圧縮機24のインデューサ25から吸込んだ空気をインペラ2で加速しディフーザ27で圧力に変換しスクロール室28で整流した後に連絡通路35を介して第2段圧縮機29のインデューサ30に導き、同様にして第2段圧縮機29のインペラ3とディフーザ32とスクロール室33とを通し、高圧空気として排出する。
【0023】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、1本の回転軸5に2個のインペラ2、3を取り付けているので、各段のインペラ2、3の回転数が等しくなり、後段側のインペラ3の体積流量が前段側のインペラ2の体積流量より小さくなって、図2に示すように後段側のインペラ3の出口幅W2が前段側のインペラ2の出口幅W1より小さくなる。
【0024】
インペラ出口幅Wが小さくなると、インペラ−ケーシング間のクリアランスδが相対的に大きくなる。このため、クリアランスδと出口幅Wとの比δ/Wは、例えばδ1=δ2とした場合、後段側(δ2/W2)の方が前段側(δ1/W1)よりも大きくなる。
【0025】
このため、本実施形態では、クリアランスδ2による漏れの影響が大きい後段側(高圧側)圧縮機29にのみアブレーダブル層34を設け、クリアランスδ1による漏れの影響が比較的小さい前段側(低圧側)圧縮機24にはアブレーダブル層を設けないこととしたのである。
【0026】
また、回転軸5は、前述のように振動を抑制する等の理由により、軸方向に多少スライドを許容するように軸支されている。よって、図1に示すように、1本の回転軸5の両端にインペラ2、3を背中合わせで取り付けると、後段側のインペラ3を通過する高速空気流によってインペラ3がケーシング(アブレーダブル層34)側に引き寄せられ、回転軸5が許容範囲内で図中右方に移動する。
【0027】
このため、仮に前段側(第1段側圧縮機24)のケーシング内面(インペラ対向部26)にアブレーダブル層を設けたとしても、運転中に回転軸5が図1中右方に移動して前段側インペラ2がそのアブレーダブル層から離間するため、インペラ2が空振り状態となってしまい、余り意味がない。逆に、後段側(第2段側圧縮機29)においてはインペラ3がケーシング(インペラ対向部31)に押し付けられるため、そこに設けられたアブレーダブル層34が大きな効果を発揮する。
【0028】
よって、この観点からも、本実施形態では、運転中にインペラ3がケーシング(インペラ対向部31)に押し付けられる後段側(第2段側圧縮機29)にのみアブレーダブル層34を設け、インペラ2がケーシング(インペラ対向部26)から離間する前段側(第1段側圧縮機24)にはアブレーダブル層を設けないこととしたのである。
【0029】
すなわち、本実施形態においては、一軸2段の遠心圧縮機1において、効果の大きな後段側(第2段側圧縮機29)にのみアブレーダブル層34を設け、効果の小さい前段側(第1段側圧縮機24)についてはアブレーダブル層を省略したので、アブレーダブル層34(高価)を各段に設けたものと比べると、効率を殆ど低下させることなくコストダウンを図ることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る多段遠心圧縮機によれば、コストダウンと効率向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す多段遠心圧縮機の断面図である。
【図2】上記多段遠心圧縮機の部分断面図であり、 (a)は第1段側圧縮機の部分断面図、 (b)は第2段側圧縮機の部分断面図である。
【符号の説明】
1 2段遠心圧縮機
2 インペラ
3 インペラ
4 ケーシング
5 回転軸
31 後段側インペラが対向する部分としてのインペラ対向部
34 アブレーダブル層
Claims (1)
- 同一の回転軸に圧縮機用のインペラを複数取り付けてなる多段遠心圧縮機において、上記インペラを収容するケーシングに、後段側インペラが対向する部分に位置させて、該インペラの接触によって切削されるアブレーダブル層を設け、上記後段側インペラを通過する高速空気流によって、上記後段側インペラが上記ケーシングの上記後段側インペラ対向部分に引き寄せられるように、上記回転軸を上記ケーシングに軸方向にスライド可能に軸支したことを特徴とする多段遠心圧縮機。
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- 1998-11-30 JP JP33969898A patent/JP4325001B2/ja not_active Expired - Fee Related
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