JP4322463B2 - 銅張積層板用プリプレグおよび銅張積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグおよび積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体の分野では高密度実装技術の進歩から従来の面実装からエリア実装に移行していくトレンドが進行し、BGAやCSPなど新しいパッケージが登場、増加しつつある。そのため以前にもましてインターポーザ用リジッド基板が注目されるようになり、高耐熱性の要求が高まってきている。
【0003】
さらに近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型化かつ高密度化が進んでいる。このプリント配線板等の高密度化への対応としてビルドアップ多層配線板が多く採用されている。
しかし、ビルドアップ多層配線板では、微細なビアにより層間接続されるので接続強度が低下するため、高温多湿雰囲気中での機械的、電気的な接続信頼性を保持することが困難といった問題点があった。
【0004】
また、これら半導体に用いられる樹脂部材は難燃性が求められることが多い。従来この難燃性を付与するため、エポキシ樹脂においては臭素化エポキシなどのハロゲン系難燃剤を用いることが一般的であった。しかし、ハロゲン含有化合物はダイオキシン発生の原因となるおそれがあることから、昨今の環境問題の深刻化とともに、ハロゲン系難燃剤を使用することが回避されるようになり、広く産業界にハロゲンフリーの難燃化システムが求められるようになった。このような時代の要求によってリン系難燃剤が脚光を浴び、リン酸エステルや赤リンが検討されたが、これらの従来のリン系難燃剤は加水分解しやすく樹脂との反応に乏しいため、耐半田耐熱性が低下する等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、接続信頼性およびハロゲン化合物およびリン化合物を使用せず難燃性に優れたプリプレグおよび積層板を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(11)記載の本発明により達成される。
(1)樹脂組成物全体を基準として、シアネート樹脂10〜50重量%、無機充填材30〜80重量%、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂2〜40重量%を含む樹脂組成物を基材に含浸して得られるプリプレグであって、
前記プリプレグを硬化して得られる硬化物の厚さ方向の膨張率(α1)が25ppm/℃以下であることを特徴とするプリプレグ。
(2)前記樹脂組成物中に、前記シアネート樹脂が20〜40重量%、前記無機充填材が30〜70重量%含まれることを特徴とする(1)に記載のプリプレグ。
(3)前記樹脂組成物中に、前記無機充填材が45〜70重量%含まれることを特徴とする(2)に記載のプリプレグ。
(4)前記樹脂組成物中に、前記エポキシ樹脂が5〜20重量%含まれることを特徴とする(3)に記載のプリプレグ。
(5)前記樹脂組成物中に、前記シアネート樹脂が20〜40重量%、前記無機充填材が45〜70重量%、前記エポキシ樹脂が6〜11重量%含まれることを特徴とする(1)に記載のプリプレグ。
(6)前記シアネート樹脂が、ノボラック型シアネート樹脂またはビスフェノールA型シアネート樹脂であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のプリプレグ。
(7)前記硬化物のガラス転移温度が210℃以上である(1)乃至(6)のいずれかに記載のプリプレグ。
(8)更に、フェノール樹脂を含むものである(1)乃至(7)のいずれかに記載のプリプレグ。
(9)前記樹脂組成物中に、前記フェノール樹脂が1〜55重量%含まれる(8)に記載のプリプレグ。
(10)前記無機充填材が、平均粒径0.01〜5μmの球状溶融シリカである(1)乃至(9)のいずれかに記載のプリプレグ。
(11)上記(1)乃至(10)のいずれかに記載のプリプレグを1枚以上有することを特徴とする積層板。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプリプレグおよび積層板について詳細に説明する。
本発明のプリプレグは、シアネート樹脂と、無機充填材とを含む樹脂組成物を基材に含浸して得られるプリプレグであって、前記プリプレグを硬化して得られる硬化物の厚さ方向の膨張率(α1)が25ppm/℃以下となることを特徴とするものである。
また、本発明の積層板は、上記プリプレグを1枚以上有することを特徴とするものである。
【0008】
以下、プリプレグに関して説明する。
本発明のプリプレグは、シアネート樹脂と、無機充填材とを含む樹脂組成物を基材に含浸して得られるプリプレグである。これにより、本発明のプリプレグを積層板にした場合に高耐熱かつ低熱膨張とすることができる。
前記シアネート樹脂は、そのプレポリマーをも含む。前記シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーは、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これにより、架橋密度増加による耐熱性向上と、積層板の難燃性を向上することができる。ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。
【0009】
前記ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば式(I)で示されるものを使用することができる。
【化1】
前記式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂のnは、特に限定されないが、1〜10が好ましく、特に1〜7が好ましい。これより少ないとノボラック型シアネート樹脂は結晶化しやすくなり、汎用溶媒に対する溶解性が比較的低下するため、取り扱いが困難となる場合がある。また、これより多いと架橋密度が高くなりすぎ、耐水性の低下や、硬化物が脆くなるなどの現象を生じる場合がある。
【0010】
前記シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4,500が好ましく、特に600〜3,000が好ましい。これより小さいとプリプレグにタック性が生じ、プリプレグ同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、これより大きいと反応が速くなりすぎ、積層板とした場合に、成形不良を生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。
【0011】
前記シアネート樹脂等の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜60重量%が好ましく、特に10〜50重量%が好ましい。シアネート樹脂等の含有量が前記下限値未満では、耐熱性や低熱膨張化する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると架橋密度が高くなり自由体積が増えるため耐湿性が低下する場合がある。
【0012】
前記無機充填材としては、例えばタルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ等を挙げることができる。これらの中でもシリカが好ましく、溶融シリカが低膨張性に優れる点で好ましい。その形状は破砕状、球状があるが、ガラス基材への含浸性を確保するために樹脂組成物の溶融粘度を下げるには球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法が採用される。
【0013】
前記無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、特に0.2〜2μmが好ましい。無機充填材の平均粒径が前記下限値未満であるとワニスの粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、ワニス中で無機充填剤の沈降等の現象が起こる場合がある。
更に平均粒径5μm以下の球状溶融シリカが好ましく、特に平均粒径0.01〜2μmの球状溶融シリカが好ましい。これにより、無機充填剤の充填性を向上させることができる。
前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物全体の30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましく最も50〜65重量%が好ましい。無機充填材の含有量が前記範囲内であると低熱膨張、低吸水とすることができる。
前記平均粒径は、例えばレーザー光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0014】
本発明のプリプレグを構成する樹脂組成物には、特に限定されないが、更にフェノール樹脂を添加することが好ましい。これにより、シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーの反応性を向上させることができ、これにより積層板の成形性が良好となる。
フェノール樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でもアリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、さらに吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
【0015】
前記アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えばキシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂等が挙げられる。ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂は、例えば式(II)で示すことができる。
【化2】
前記式(II)で示されるビフェニルジメチレン型フェノール樹脂のnは、特に限定されないが、1〜12が好ましく、特に2〜8が好ましい。これより少ないと耐熱性が低下する場合がある。また、これより多いと他の樹脂との相溶性が低下し、作業性が悪くなる場合があるため好ましくない。
【0016】
前述のシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー(特にノボラック型シアネート樹脂)とアリールアルキレン型フェノール樹脂との組合せにより、架橋密度をコントロールし、金属と樹脂との密着性を向上することができる。
【0017】
前記フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましく、最も8〜20重量%が好ましい。フェノール樹脂が前記下限値未満では耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張の特性が損なわれる場合がある。
前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量400〜18,000が好ましく、特に500〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記範囲より少ないとプリプレグにタック性が生じるなどの問題が起こる場合が有り、これより多いとプリプレグ作製時、基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られないなどの問題が起こる場合がある。
【0018】
本発明のプリプレグを構成する樹脂組成物には、特に限定されないが、更にエポキシ樹脂を添加することが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性を向上することができる。
【0019】
前記アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば式(III)で示すことができる。
【化3】
前記式(III)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂のnは、特に限定されないが、1〜10が好ましく、特に2〜5が好ましい。これより少ないとビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は結晶化しやすくなり、汎用溶媒に対する溶解性が比較的低下するため、取り扱いが困難となる場合がある。また、これより多いと樹脂の流動性が低下し、成形不良等の原因となる場合がある。
【0020】
更に、前述のシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー(特にノボラック型シアネート樹脂)とフェノール樹脂とアリールアルキレン型エポキシ樹脂(特にビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂)との組合せを用いて積層板を作製した場合、優れた寸法安定性を得ることが出来る。
【0021】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に2〜40重量%が好ましく、最も5〜20重量%が好ましい。樹脂が前記下限値未満では、シアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したり場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜20,000が好ましく、特に800〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグにタック性が生じるなどの問題が起こる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時、基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られないなどの問題が起こる場合がある。
【0022】
前記樹脂組成物には、上記シアネート樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の一部をビニルエステル樹脂、メラミン樹脂等の他の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂と併用しても良い。
【0023】
前記樹脂組成物には、特に限定されないが、更にカップリング剤を用いることが好ましい。カップリング剤は樹脂と無機充填剤の界面の濡れ性を向上させることにより、基材に対して樹脂および充填剤を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良するために配合する。カップリング剤としては通常用いられるものなら何でも使用できるが、これらの中でもエポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤及びシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが無機充填剤界面との濡れ性が高く、耐熱性向上の点で好ましい。本発明でカップリング剤は、無機充填剤に対して0.05重量%以上、3重量%以下が望ましい。これより少ないと充填剤を十分に被覆できず十分な耐熱性が得られない場合があり、これより多いと反応に影響を与え、曲げ強度等が低下するようになるためこの範囲での使用が望ましい。
【0024】
前記樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を用いてもよい。硬化促進剤としては公知の物を用いることが出来る。たとえば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノー等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。
【0025】
前記樹脂組成物には、必要に応じて、上記成分以外の添加物を特性を損なわない範囲で添加することが出来る。樹脂組成物は、プリプレグの厚み方向の熱膨張係数が所定の値となるように、適宜原料やその配合量を調整することにより得ることができる。
【0026】
前記基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい
【0027】
前記樹脂組成物を基材に含浸させる方法には、例えば基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0028】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
前記樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分40〜80重量部が好ましく、特に50〜65重量部が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。前記基材に前記樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃等で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0029】
本発明のプリプレグは、上述のプリプレグを硬化して得られる硬化物の厚さ方向の膨張率(α1)が25ppm/℃以下である。すなわち、ガラス転移温度以下の領域(α1領域)における硬化物の厚さ方向の膨張率(α1)を前記下限値未満とすることにより、積層板の接続信頼性を向上することができる。
例えば、層間を接続する銅の膨張率が17ppm/℃であることから、積層板の厚さ方向の線膨張係数が17ppm/℃付近になれば銅と基材間の熱膨張量の差は少なくなり応力は軽減する。よって、熱衝撃によるスルーホールメッキの断線が減少することにより接続信頼性を向上することができる。
また、前記硬化物の厚さ方向の膨張張率(α1)は、10ppm/℃以上25ppm/℃以下が好ましく、特に15ppm/℃以上20ppm/℃以下が好ましい。線膨張係数が上記範囲内であると、特に積層板の接続信頼性に優れることができる。
前記厚さ方向の膨脹率は、例えば硬化物を熱機械分析装置(TMA)を用いて、10℃/minの昇温速度で測定することができる。
【0030】
前記硬化物のガラス転移温度は、特に限定されないが、210℃以上が好ましく、特に230℃以上が好ましい。これにより、α1領域が広くなり加工工程中の銅との熱膨張差が少なくなり接続信頼性を向上することができる。また、弾性率の低下も抑えられ金ワイヤーのボンディング性、半導体チップのバンプ接続性も向上させることが出来る。
前記ガラス転移温度は、例えば硬化物を熱機械分析装置(TMA)、動的粘弾性分析装置(DMA)、熱示差分析(DSC)を用いて測定することができる。
なお、前記硬化物を硬化する条件は、例えばプリプレグを190〜210℃で、30〜120分加熱する場合を挙げることができる。
【0031】
次に、本発明の積層板について説明する。
本発明の積層板は、上記のプリプレグのプリプレグを少なくとも1枚以上有することを特徴とするものである。これにより、耐熱性、低膨張性および難燃性に優れた積層板を得ることができる。
例えば、プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。
次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、1.5〜5MPaが好ましく、特に2〜4MPaが好ましい。 また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
▲1▼樹脂ワニスの調製
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−60)20重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000P)11重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7851−S)9重量部、およびエポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)0.3重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、球状溶融シリカSO−32R(株式会社アドマテックス社製)60重量部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌して、樹脂ワニスを得た。
【0033】
▲2▼プリプレグの製造
上述の樹脂ワニスをガラス織布(厚さ200μm、日東紡績製、WEA−7628)に含浸し、120℃の加熱炉で2分乾燥してワニス固形分(プリプレグ中に樹脂とシリカの占める成分)が約50%のプリプレグを得た。
【0034】
▲3▼積層板の製造
上述のプリプレグを所定枚数重ね、両面に18μmの銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形することによって両面銅張積層板を得た。
【0035】
(実施例2)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂を30重量部、球状溶融シリカを50重量部とし、その他は実施例1と同様にした。
【0036】
(実施例3)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂を40重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂を8重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂を7重量部、球状溶融シリカを45重量部とし、その他は実施例1と同様にした。
【0037】
(実施例4)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂を20重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂を6重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂を4重量部、球状溶融シリカを70重量部とし、その他は実施例1と同様にした。
【0038】
(実施例5)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂として、ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−60 30重量部およびプリマセット PT−30(重量平均分子量約700)10重量部を用いた。エポキシ樹脂として、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂8重量部を用いた。フェノール樹脂として、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂5重量部およびノボラック樹脂(PR−51714 水酸基当量103 住友ベークライト株式会社製)2重量部を用いた。無機充填材として、球状溶融シリカSO−32R(平均粒径1.5μm)40重量部およびSFP−10X(平均粒径0.3μm:電気化学工業株式会社製)5重量部を用いた。
【0039】
(実施例6)
無機充填材として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様とした。
球状溶融シリカ FB−5SDX(平均粒径4.4μm:電気化学工業株式会社製)を用いた。
【0040】
(実施例7)
シアネート樹脂として以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にした。
ビスフェノールA型シアネート樹脂 AroCy B−30(旭化成エポキシ株式会社製)を用いた。
【0041】
(比較例1)
シアネート樹脂を用いずに、樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ビフェニルアルキレン型エポキシ樹脂 NC−3000P(エポキシ当量275:日本化薬株式会社製)22.5重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂17.5重量部とした以外は、実施例1と同様とした。
【0042】
(比較例2)
無機充填材を用いずに、樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂を50重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂を28重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂22重量部とした以外は、実施例1と同様にした。
【0043】
(比較例3)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂を40重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂を20重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂を15重量部、球状溶融シリカを25重量部とし、その他は実施例1と同様にした。
【0044】
実施例および比較例で得られた積層板について、次の評価を行った。評価項目を、評価方法と共に示す。得られた結果を表1に示す。
▲1▼線膨張係数
厚さ1.2mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から2mm×2mmのテストピースを切り出し、TMAを用いて厚み方向(Z方向)の線膨張係数を5℃/分で測定した。
【0045】
▲2▼ガラス転移温度
厚さ0.6mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から10mm×60mmのテストピースを切り出し、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMA983を用いて3℃/分で昇温し、tanδのピーク位置をガラス転移温度とした。
【0046】
▲3▼難燃性
UL−94規格に従い、1mm厚のテストピースを垂直法により測定した。
【0047】
▲4▼吸水率
厚さ0.6mmの両面銅張り積層板を全面エッチングし、得られた積層板から50mm×50mmのテストピースを切り出し、JIS6481に従い測定した。
【0048】
▲5▼吸湿はんだ耐熱性
厚さ0.6mmの両面銅張積層板から50mm×50mmに切り出し、JIS6481に従い半面エッチングを行ってテストピースを作成した。125℃のプレッシャークッカーで処理した後、260℃のはんだ槽に銅箔面を下にして浮かべ、180秒後にフクレが発生する処理時間を計測した。
【0049】
▲6▼接続信頼性
厚さ0.4mmの4層板(デージーチェーン)を作製し、260℃60秒、常温60秒のホットオイル試験を行った。100穴あたりの導通抵抗が初期値の120%に変化するまでのサイクル数を測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
表中の樹脂等について、以下に詳細に示す。
・プリマセット PT−60(ノボラック型シアネート樹脂、重量平均分子量約2600):ロンザジャパン株式会社製
・プリマセット PT−30(ノボラック型シアネート樹脂、重量平均分子量約700):ロンザジャパン株式会社製
・Arocy B−30(ビスフェノールA型シアネート樹脂):旭化成エポキシ株式会社製
・NC−3000P(ビフェニルアルキレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量275):日本化薬株式会社製
・MEH−7851−S(ビフェニルアルキレン型ノボラック樹脂、水酸基当量203):明和化成株式会社製
・PR−51714(ノボラック樹脂、水酸基当量103 重量平均分子量約1600):住友ベークライト株式会社製
・SO−32R(球状溶融シリカ、平均粒径1.5μm):株式会社アドマテックス製
・SFP−10X(球状溶融シリカ、平均粒径0.3μm):電気化学工業株式会社製
・FB−5SDX(球状溶融シリカ、平均粒径4.4μm):電気化学工業株式会社製
・A−187(エポキシシラン型カップリング剤):日本ユニカー株式会社製
【0052】
表から明らかなように、実施例1〜7は、ガラス転移温度が高く、難燃性に優れ、ホットオイル試験のサイクル数にも優れていたことより、耐熱性、難燃性、接続信頼性に優れていることが確認された。
また、実施例1〜6は、難燃性がV−0であり、特に難燃性に優れていた。
また、実施例1、2および6、7は、吸湿半田耐熱性にも優れていた。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、接続信頼性および難燃性に優れたプリプレグおよび積層板を得ることができる。
また、ノボラック型シアネート樹脂を用いた場合、特に難燃性に優れたプリプレグおよび積層板を得ることができる。
また、無機充填材を特定の含有量にした場合、特に低吸水化することができる。
Claims (10)
- 樹脂組成物全体を基準として、ノボラック型シアネート樹脂またはビスフェノールA型シアネート樹脂20〜40重量%、シリカ40〜70重量%、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂2〜40重量%を含む樹脂組成物を基材に含浸して得られる銅張積層板用プリプレグであって、
前記銅張積層板用プリプレグを硬化して得られる硬化物の厚さ方向の膨張率(α1)が12ppm/℃以上、24ppm/℃以下であることを特徴とする銅張積層板用プリプレグ。 - 前記樹脂組成物中に、前記シリカが45〜70重量%、前記ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が5〜20重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記樹脂組成物中に、前記ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が6〜11重量%含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記ノボラック型シアネート樹脂または前記ビスフェノールA型シアネート樹脂の重量平均分子量が、600〜3000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記硬化物のガラス転移温度が210℃以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 更に、フェノール樹脂を含むものである請求項1乃至5のいずれかに記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記樹脂組成物中に、前記フェノール樹脂が1〜55重量%含まれる請求項6に記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記シリカの平均粒径が0.01〜5μmである請求項1乃至7のいずれかに記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 前記シリカが、球状溶融シリカである請求項8に記載の銅張積層板用プリプレグ。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載の銅張積層板用プリプレグを1枚以上有することを特徴とする銅張積層板。
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