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JP4318985B2 - ソマトスタチンアナログ誘導体およびその利用 - Google Patents

ソマトスタチンアナログ誘導体およびその利用 Download PDF

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JP4318985B2 JP2003297606A JP2003297606A JP4318985B2 JP 4318985 B2 JP4318985 B2 JP 4318985B2 JP 2003297606 A JP2003297606 A JP 2003297606A JP 2003297606 A JP2003297606 A JP 2003297606A JP 4318985 B2 JP4318985 B2 JP 4318985B2
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Description

本発明は、金属を用いる画像診断及び治療に有用な、ソマトスタチンアナログ誘導体、該誘導体と金属との錯体、およびそれを含有する医薬組成物に関する。
ソマトスタチンはヒトを含む哺乳動物の視床下部や膵臓で合成される14個のアミノ酸からなるペプチドであり、中枢神経系、脊髄、膵臓、胃腸管等の広範な組織を構成する細胞表面に発現している特異的な受容体と結合してその生理活性を発揮する。これらの組織における内分泌腫瘍の殆どに高親和性ソマトスタチン結合部位が存在することから、ソマトスタチンレセプターの高発現に基づいて、ソマトスタチン受容体陽性腫瘍の診断や治療が可能である。従来、様々なソマトスタチン受容体に結合性のペプチド(ソマトスタチンアナログ)が報告されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)、特許文献5)。そのようなペプチドとキレーターとの化合物を金属で標識した治療・診断薬も知られており、例えば、特許文献2には式:
Figure 0004318985
(式中、A’はPheまたはTyrを表す)
で示されるソマトスタチンアナログのN末端に1,4,7,10-テトラ−アザシクロドデカン−1,4,7,10−4酢酸(1,4,7,10-テトラ−アザシクロドデカン−1,4,7,10-tetraacetic acid、以下、「DOTA」と略称)と放射性核種との錯体を含有するソマトスタチン受容体陽性癌および転移癌の治療のための医薬組成物が開示されている。上記の式でA’がPheであるオクトレオチド(Octreotide)とジエチレントリアミン5酢酸(Diethylenetriamine pentaaceticAcid、以下「DTPA」と略称)との複合体が111Inに配位している、111In-DTPA-Phe1-octreotideは、既に欧米で臨床使用されている(非特許文献1、非特許文献2)。
また、特許文献5には、式:
Figure 0004318985
で示される化合物のC末端またはN末端にキレート剤(DOTAまたはTETA)が結合してなる化合物と金属との錯体の、腫瘍組織の破壊、診断における使用について開示されている。
このように、種々のソマトスタチンアナログに属する化合物は、キレーターとの複合体として、放射性核種のような治療用及び/または診断用の金属をソマトスタチン受容体を高密度に発現している腫瘍細胞や内分泌系に選択的に到達させることから、いわば金属のキャリアとして有用であり、その開発及び機能が検討されてきた。
従来のソマトスタチンアナログを含む治療・診断用物質は、腫瘍細胞等の標的細胞表面のソマトスタチン結合性受容体のみならず、正常細胞に発現している受容体とも交差反応するために、診断精度、治療上の安全性に問題が指摘されている。たとえば、上記の111In-DTPA-Phe1-octreotideを用いた腫瘍シンチグラフィーは、特定の腫瘍(ガストリノーマ、カルチノイド、インスリノーマ等)を特異的に高感度で陽性描画し、しかも非侵襲的な全身検索を可能とし、免疫原性が低い上、血中クリアランス及び組織移行性にも優れており、投与後早期の診断を可能にして被験者の被曝を軽減したと言われている(非特許文献3)。しかしながら、腎臓における非特異的な放射能集積・滞留を示すことが知られており、診断精度の低下や治療における副作用が問題である。このような問題の解決手段も検討されており、リジンまたはアルギニンを併用する方法(特許文献2)や、リジンを併用する方法(非特許文献4)が有用であるとの報告がある。また、N末端アミノ酸を脂溶性の低いアミノ酸で置換すると、腎臓への放射能集積が低減しうるとの報告もある(非特許文献5)。しかし、これらの文献には、実際に臨床上適用しうる腎集積性の低いソマトスタチンアナログを含む、治療及び/または治療用金属のためのキャリア物質は開示されていない。このような状況下、臨床上有用な、精度の高い診断薬や安全性の高い治療薬として用いうるソマトスタチンアナログを含有する物質の開発が求められている。
英国特許出願公開第2225579号明細書 特許第3054346号公報 特許第3117218号公報 特許第3288055号公報 特表2001−515494号公報 Krenning, E.P.他、Eur.J.Nucl.Med., 20, 716-731 (1993) Kwekkeboom, D.他、J.Nucl.Med., 41, 1704-1713 (2000) Krenning, E.P.他、J.Nucl.Med., 33, 652-658 (1992) Bert F.他、J.Nucl.Med., 38, 1929-1933(1997)
本発明は、ソマトスタチン結合性受容体を高密度に発現している腫瘍等の診断または治療のための金属を、標的部位に特異的に送達する一方で腎臓への集積を最小限に止めて排泄せせることができるキャリア物質を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、上記のキャリア物質と金属との錯体、及びそれを含有するソマトスタチン受容体陽性の腫瘍等の診断及び治療用の医薬組成物を提供することを目的とするものである。
とりわけ本発明は、オクトレオチド等のソマトスタチン陽性腫瘍の診断および/または治療に有用な、ソマトスタチンアナログ部分を含む物質の腎集積性を改善することを目的とするものである。
本発明者らは、111In-DTPA-Phe1-オクトレオチドのN末端フェニルアラニンを修飾すると腎集積が有意に低下することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は式(I):
Figure 0004318985
(式中、Rはキレーター残基、Xは1つ以上の遊離のカルボキシル基またはアミノ基を有するフェニル基またはナフチル基、YはThr-OH、Thr‐NH2及びTrp‐NH2から選択される基、AはPheまたはTyr、BはThrまたはValを表す)
で示される、診断及び/または治療用の金属をソマトスタチン結合性受容体を発現している標的細胞に送達させるためのキャリア物質を提供するものである。
本発明に関して、「ソマトスタチン結合性受容体を発現している標的細胞」とは、正常細胞とは異なる態様でソマトスタチン受容体を高密度に発現している細胞を意味し、具体的には、ソマトスタチン受容体陽性腫瘍の細胞、内分泌学的な疾患に関連してソマトスタチン受容体を高密度に発現している細胞が含まれる。
式(I)において、Rで示されるキレーター残基としては、前記のDTPA、DOTA及び1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−アミノエチルカルバモイルメチル−4,7,10−トリス[(R,S)メチル酢酸](1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1-aminoethylcarbamoylmethyl-4,7,10-tris[(R,S)-methylacetic Acid、以下[「DO3MA」と略称)等の配位子から導かれる基が好適に用いられる。特に好ましい配位子はDTPA及びDOTAである。
式(I)における基:R以外の部分は、ソマトスタチンレセプター結合性のソマトスタチンアナログの誘導体であり、N末端のカルボキシル化またはアミノ化されたフェニルアラニンまたはナフチルアラニンのC末端側にシクロ[Cys-A-(D-Trp)-Lys-B-Cys]-Yで表される環状ペプチドが結合している。この環状ペプチド部分を構成するアミノ酸の好ましい組み合わせは以下の通りである。
(1)AがPhe、BがThr、YがThr(ol)
(2)AがTyr、BがThr、YがThr(ol)
(3)AがTyr、BがVal、YがTrp-NH2
(4)AがTyr、BがVal、YがThr-NH2
(5)AがTyr、BがVal、YがThr-OH
N末端アミノ酸(カルボキシル化/アミノ化Phe1またはNa1)と上記の環状ペプチドとの組合せにより、既知のソマトスタチンアナログの誘導体が得られる。
即ちXがカルボキシまたはアミノフェニルであって、C末端側ペプチドが(1)の場合はオクトレオチド(Octreotide)、(2)の場合はTyr3-オクトレオチド(Tyr3-octreotide)、(3)の場合はバプレオチド(Vapreotide)、(5)の場合はTyr3-オクトレオテート(Tyr3-octreotate)の誘導体に相当する。また、Xがカルボキシまたはアミノナフチルであって、C末端側ペプチドが(4)の場合はランレオチド(Lanreotide)誘導体に相当する。従って、Xがカルボキシ又はアミノ置換基を有するフェニルである場合は、A、B、Yが(1)、(2)、(3)および(5)のいずれかの組み合わせ、Xがカルボキシ又はアミノ置換基を有するナフチルである場合は、A、B、Yが(4)の組み合わせであることが好ましく、特にXがカルボキシ又はアミノ置換基を有するフェニルであり、A、B、Yが(1)の組み合わせであることが好ましい。
なお、本明細書中、特記しない限り、アミノ酸はD‐体、L−体のいずれであってもよい。
本発明者らは、後述の実施例に記載のごとく、式(I)中、RがDTPA、Xがカルボキシフェニルまたはアミノフェニルであり、AがPhe、BがThr、YがThr(ol)である本発明の化合物(アミノ体、カルボキシ体)、及びXがメチルフェニルである点のみで異なる化合物(メチル体)合成し、これらを111Inで標識することにより下記の3種類の錯体を作成して体内動態を検討した。対照として、XがPheである化合物(Phe体)を用いた。
Figure 0004318985
Figure 0004318985
Figure 0004318985
被検物質をマウスに静脈内投与し、一定時間後の血液、組織、尿中の放射能(カウント)を測定して体内動態を検討したところ、いずれの場合も血液中の放射能は投与3時間後までにほとんど消失し、速やかな血液からのクリアランスを観測した。
また、全ての場合で、他の臓器より腎臓で高い放射能集積が認められたが、集積量とその態様はアミノ体及びカルボキシ体と、メチル体及びPhe体ではかなり異なっていた。特に、アミノ体の場合、投与10分後ではPhe体とほぼ同等であるが、投与30分後では有意に腎放射能集積が低くなった。また、カルボキシ体の場合には、試験した期間全体にわたってPhe体より低い腎放射能集積を示した。特に、投与30分後から6時間後までは有意に低くなった。これに対してメチル体の場合は、Phe体と比較して腎集積の改善を認めなかった。金属を用いる画像診断では、投与後数10分から3日間の間に診断を行うことが一般的であり、上記の結果はカルボキシ体やアミノ体が診断の精度を向上しうることを示している。この結果はまた、これらの物質が安全性の高い治療薬であることをも示すものである。これらの化合物はオクトレオチドおよびその誘導体に相当するが、オクトレオチドのD-Phe体とL-Phe体では、体内動態が殆ど変わらないことは既知である("Renal Metabolism of 111In-DTPA-D-Phe1-octreotide in vivo." Biocojugate Chem. 9(6), 662-670, 1998)。
上記の特徴を有する本発明のキャリア物質は、治療または診断のための金属を、ソマトスタチンレセプターを高密度に発現しているソマトスタチン受容体陽性腫瘍細胞等に送達するという機能を有すると共に、金属の腎臓への集積・滞留を抑制して排泄させることができる。従って、本発明のキャリア物質と金属との錯体は、診断及び/または治療のための医薬組成物の活性成分として有用である。本発明はまた、そのような医薬組成物を提供するものである。
金属としては、上記式(I)におけるキレーターに配位し、かつ診断及び/または治療に用いられる既知の常磁性及び放射性金属から任意に選択できる。放射性金属の例としてTc-99m、In-111、Cu-62、Ga-67、Ga-68、Re-186、Re-188、Y-90、Cu-64、Sn-117mおよびSm-153等が挙げられ、常磁性金属の例としてGd、Dy、FeおよびMnが挙げられる。
錯体は、使用する金属及びキャリア物質のキレーター残基の種類に応じて、常法に従い適宜調製することができる。通常は、本発明のキャリア物質の溶液と、金属イオンを含む化合物の溶液とを混合することで錯体が形成される。金属イオンを含む化合物の例として、金属塩化物、金属臭化物などが挙げられるがこれらに限定されない。また、溶媒としては水、酸、塩基、DMFなどの極性溶媒またはその混合物を用いることができるが、これらに限定されない。しかし、個々の場合に好ましい方法があり、例えば、テクネチウム−99m(Tc‐99m)の場合、キャリア物質に塩化第一スズ等の還元剤を加え、過テクネチウム酸ナトリウム溶液と混合することで錯体を好適に調製できる。In−111の場合、キャリア物質の溶液とIn-111イオンを含む酸性水性溶液を混合することが好ましい。必要に応じて、HPLC等により未反応の金属イオンを除いてもよい。
本発明の医薬組成物は、ソマトスタチン受容体を高密度に発現しているソマトスタチン受容体陽性の腫瘍細胞や内分泌疾患に罹患した細胞に特異的に集積、滞留する一方で腎臓からは速やかに排泄されるため、診断における精度が極めて高い。また、金属の腎毒性を低減することができるので、治療に際して極めて安全である。
本発明の医薬組成物が生体の腫瘍部位を核医学的手法により画像診断するための診断薬である場合、金属としてはTc-99m、In-111、Cu-62、Ga-67およびGa-68から選択される放射性金属が好ましい。
また、本発明の医薬組成物がソマトスタチン受容体陽性腫瘍を破壊するための放射性治療に用いられる場合、金属としてはRe-186、Re-188、Y-90、Cu-64、Sn-117mおよびSm-153から選択される放射性金属が好ましい。
さらに、本発明の医薬組成物が生体の腫瘍部位をMRI画像診断するための診断薬である場合には、金属としてGd、Dy、FeおよびMnから選択される常磁性金属が好ましい。
医薬組成物は、本発明の金属錯体と、薬学的に許容される担体または希釈剤から常法に従って調製することができる。必要に応じて、他の添加剤、例えば、薬学的に受容される水性緩衝液等のpH調整剤、D−マンニトール等の賦形剤及び放射化学的純度を改良するのに役立つクエン酸、酒石酸、マロン酸等を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は、金属イオン溶液と、キャリア物質とを別々の容器に収納してなる用時調製用組成物(キット)の形であってもよい。キットは例えば、浸透圧を調節するための医薬上許容される塩、緩衝剤、保存剤などの通常の添加物質を含有していてもよい。該キットの成分は、液体または凍結乾燥した形で提供することができる。
本発明の医薬組成物が核医学的手法により画像診断するための放射性診断薬である場合、そのような放射性診断薬は、ボーラス投与による静脈注射等の一般的に用いられる非経口投与直後から効率的に腫瘍等の標的部位に集積し、放射性物質の迅速な分布を達成し、投与後約1時間で、イメージングするのに充分な、標的部位/バックグランド比を提供し、更にイメージング撮像に適当な時間、標的部位に集積し、その後、速やかに腎臓から尿中に排泄されるという好ましい特性を有している。診断は、通常の放射線イメージング装置を用いて実施することができる。
本発明の放射性診断薬はボーラス投与による静脈注射等の一般的に用いられる非経口手段により投与でき、その投与量は患者の体重、年令及び適当な放射線イメージング装置等の諸条件を考慮し、イメージングが可能と考えられる放射能量が得られるように決定される。ヒトを対象とする場合、通常は37〜1,110MBqの範囲が好ましい。
本発明の医薬組成物がソマトスタチン受容体陽性腫瘍(癌)を破壊するための放射性治療薬である場合、該治療薬は非経口的に、特に静脈内に、例えば注射可能溶液または懸濁液の形で投与することができる。腫瘍等の治療すべき部位に応じてできるだけ近くに、例えばカテーテルにより投与してもよい。投与は連続的に、または繰り返して行うことができる。その投与量は患者の体重、年令及び症状等の諸条件を考慮して医師により決定されるが、ヒトを対象とする場合、通常は37〜11,100MBqの範囲が好ましい。
本発明の治療薬は、腎臓に蓄積・滞留することなくソマトスタチン受容体陽性癌に特異的に集積して癌細胞を破壊し、治療効果を発揮しうる。したがって、従来腎毒性の恐れから治療が困難であった腎障害を有する患者等にも適用することが可能であり、場合によってはより多量に投与することができるので、より高い腫瘍治療効果が期待できる。
本発明の治療薬で治療しうる癌の例として、下垂体、胃腸膵臓癌、中枢神経系、乳、前立腺、卵巣または結腸癌、小細胞肺癌、パラガングリオーマ、腎臓癌、皮膚癌、神経芽腫、褐色細胞腫、髄様甲状腺癌、骨髄腫、リンパ腫、ホジキンおよび非ホジキン病、骨癌およびそれらの転移癌が挙げられる。
また、本発明の放射性治療薬は、ソマトスタチン受容体を発現する自己免疫または炎症性疾患、例えば関節リウマチの治療にも使用し得る。
本発明の医薬組成物が生体の腫瘍部位をMRI画像診断するための診断薬である場合、本発明の金属錯体における金属を、例えば文献(Weissleder, R., "Scaling Down Imaging: Molecular Mapping of Cancer in Mice", Nature Reviews Cancer 2002; 2:11-18)に記載されたような態様で、当業者に既知の方法により種々の常磁性または強磁性金属、例えば、Gd、Mn、Dy、酸化鉄等に置き換える。このようにしてできたMRI診断薬は、静脈内投与や局所投与等の一般的に用いられる手段により投与でき、その投与量は、用いる金属の種類、MRI診断薬の緩和度その他の物理化学的性質、患者の体重、MRIイメージング装置の構成及びMRIイメージングの方法等の諸条件を考慮し、イメージングが可能な範囲で決定される。例えば、ヒトに対して静脈内投与する場合であって用いる金属種がGdである場合は、通常は体重あたり0.01〜0.3mmol/kgの範囲が好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
1.以下の実施例、実験例では、オクトレオチドのN末端アミノ酸Pheに分子サイズがほぼ同じで電荷が異なる置換基(アミノ基、カルボキシ基、メチル基)を導入してオクトレオチド誘導体を合成し、キレーターとしてDTPAを用い、In-111との金属錯体、即ち、111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド(アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド(カルボキシ体)、または111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(メチル体)を作製し、それらの体内放射能動態を検討した。
2.実験方法
2−1:試薬
以下の実施例に用いた試薬は以下の通りである。
ジエチレントリアミン:1級 東京化成工業株式会社
トリフルオロ酢酸エチル:1級 東京化成工業株式会社
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA):1級 東京化成工業株式会社
シリカゲル60 H:MERCK社
ワコーゲル(Wakogel)C-200:和光純薬工業株式会社
ブロモ酢酸 tert-ブチル:1級 東京化成工業株式会社
水素化ナトリウム:特級 石津製薬株式会社
ヒドラジン無水物:1級 東京化成工業株式会社
ブロモ酢酸ベンジル:1級 東京化成工業株式会社
パラジウム/カーボン(Pd/C):1級 ナカライテスク株式会社
9−フルオロメトキシカルボニル-O-t-ブチル-L-スレオニン
(Fmoc-Thr(But)-OH):株式会社ペプチド研究所
エチレングリコールジメチルエーテル:特級 東京化成工業株式会社
N-メチルモルホリン:特級 ナカライテスク株式会社
クロロギ酸イソブチル:特級 ナカライテスク株式会社
2-クロロトリチルクロリドレジン(2-chlorotrityl chloride resin):NOVA biochem社
乾燥ピリジン(dehydrated pyridine):関東化学株式会社
ピペリジン:特級 ナカライテスク株式会社
1,3-ジイソプロピルカルボジイミド (DIPCDI):1級 Sigma Aldrich Chem. Co.
1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt・H2O):1級 東京化成工業株式会社
9-フルオレニルメトキシカルボニル-S-アセトアミドメチル-L-システイン
(Fmoc-Cys(Acm)-OH):株式会社ペプチド研究所
Nα-9-フルオレニルメトキシカルボニル-Nε-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン
(Fmoc-Lys(Boc)-OH):株式会社ペプチド研究所
9-フルオレニルメトキシカルボニル-D-トリプトファン
(Fmoc-D-Trp-OH):株式会社ペプチド研究所
9-フルオレニルメトキシカルボニル-L-フェニルアラニン
(Fmoc-Phe-OH):株式会社ペプチド研究所
Fmoc-p-カルボキシ-Phe(OtBu)-OH:BACHEM社
Fmoc-p-アミノ-Phe(Boc)-OH:BACHEM社
Fmoc-p-methyl-Phe-OH:BACHEM社
チオアニゾール:1級 東京化成工業株式会社
トリフルオロ酢酸(TFA):1級 東京化成工業株式会社
グアニジン塩酸塩:特級 ナカライテスク株式会社
ヨウ素(I2):特級 石津製薬株式会社
L-(+)-アスコルビン酸:特級 石津製薬株式会社
塩化インジウム-111 (129.5 MBq/ml in 0.02 N HCl)(111InCl3):日本メジフィジックス社
ヒト血清アルブミン:Sigma Aldrich Chem. Co.
n-オクタノール:特級 和光純薬工業株式会社
HPLCの溶離液:HPLC グレードの有機溶媒および蒸留水製造装置(MILLI-Q-Labo, MILLIPORE)で得た蒸留水
その他の試薬はすべて試薬特級品である。
2−2:装置
実施例に用いた装置とその使用方法は以下の通りである。
(1) 高速原子衝突質量分析(fast atom bombardment mass spectra:FAB-MS)
FAB-MSスペクトルの測定には、70-SE型質量分析計(VG 社製)を用いた。
(2) 逆相高速液体クロマトグラフィー(reversed phase high-pressure liquid chromatography:RP-HPLC)
(2)-1 非放射性化合物のRP-HPLC実験
送液ポンプに、LC-9A (島津製作所)を2台使用し、高圧グラジェント法により行った。また、検出器には、紫外可視吸光度計 SPD-6AV (島津製作所)、記録計には C-R6A CHROMATOPAC (島津製作所)を使用した。
分取時には COSMOSIL 5C18-ARIIカラム(サイズ:20 × 250 mm, ナカライテスク株式会社)を使用し、移動相には 0.1 % トリフルオロ酢酸(TFA)/H2O とアセトニトリルを用い、流速 5 ml/min で、60分間でアセトニトリルを直線勾配で増加させた。
(DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド: 15→40 %、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド: 20→40 %、DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド: 20→40 %)
分析時には、ガードカラムとして COSMOSIL 5C18-ARIIカラム(サイズ:4.6 × 10 mm, ナカライテスク株式会社)を接続した COSMOSIL 5C18-ARIIカラム(サイズ:4.6 × 150 mm, ナカライテスク株式会社)を使用し、移動相には 0.1 % トリフルオロ酢酸(TFA)/H2O とアセトニトリルを用い、流速 0.9 ml/min で、30分間でアセトニトリルを直線勾配で増加させた。(DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド: 15→40 %、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド: 20→40 %、DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド: 20→40 %)。
(2)-2 放射性化合物のRP-HPLC実験
送液ポンプに LC-10AT (島津製作所)を2台使用し、高圧グラジェント法により行った。
カラムには、COSMOSIL 5C18-MS カラム(サイズ:4.6 × 150 mm, ナカライテスク株式会社)を使用し、移動相には 0.05 M 酢酸緩衝液(pH 5.5)とメタノールを用い、流速 1 ml/min でグラジェント溶出した。アミノ体の場合は最初の 10 分間でメタノールを0 % に保ち、続く15分間でメタノールを 0 % から 50 % に直線勾配で増加させ、最後の 20 分間はメタノールを 50 % に保った。カルボキシ体の場合は最初の 10 分間でメタノールを 0 % に保ち、続く 15 分間でメタノール を 0 % から 45 % に直線勾配で増加させ、最後の 20 分間はメタノールを 45 % に保った。メチル体の場合は最初の 10 分間でメタノールを 5 % に保ち、続く 15 分間でメタノールを 5 % から 65 % に直線勾配で増加させ、最後の 20 分間はメタノールを 65 % に保った。
また、溶出液をフラクションコレクター(RediFrac, Pharmacia LKB)で分取し、それぞれの画分の放射能(カウント)をシンチレーションカウンターにより測定した。
(3) セルロースアセテート電気泳動(CAE)
セルロースアセテート膜には、Separax-SP (Jokoh Co. Ltd., Tokyo)、パワーサプライには PS 1510 (Jokoh Co. Ltd., Tokyo)、泳動槽には EC-100 (Adbantec)を用い、CAE を行った。
(4) アミノ酸分析
アミノ酸分析は、6 N塩酸で、110 ℃、24 時間、酸加水分解した後、Hitachi L 8500 アミノ酸分析器(日立製作所)で分析した。
(5) シンチレーションカウンター
放射能の測定には、Aloka ARC 2000, Tokyo を使用した。
(6) 代謝ケージ室
マウスの尿と糞を採取するため、代謝ケージ(Metabolica, MM type;株式会社杉山元医理器)を使用した。
実施例1 DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド、およびDTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド の合成
1.モノリアクティブDTPA(mDTPA)の合成
mDTPAの合成は、アラノら(Arano, Y., Uezono, T., Akizawa, H. et al., J.Med.Chem., 39, 3451-3460 (1996))の方法に従って行った。
Figure 0004318985
a:CF3COOC2H5;b:BrCH2COOBut, DIPEA;c:BrCH2COOBut, NaH;d:NH2NH2, ButOH;e:BrCH2COOCH2C6H5, DIPEA;f:Pd/C, H2
But:tert-ブチル
Bz:ベンジル
化合物 (2)
3-((tert-ブトキシカルボニル)メチル)-6-(2-((トリフルオロアセチル)アミノ)エチル)-3,6-ジアザオクタン二酸 ジ-tert-ブチルの合成
ジエチレントリアミン(1) (3.18 g, 3.36 ml, 30.9 mmol)の無水アセトニトリル溶液(24 ml)を0 ℃以下に保ち、これにトリフルオロ酢酸エチル(4.38 g, 3.69 ml, 30.9 mmol)の無水アセトニトリル溶液(36 ml)を滴下し、2 時間撹拌した後、さらに室温で 1 時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残さを無水アセトニトリル溶液(120 ml)に溶解させ、0 ℃以下に冷却した後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(13.95 g, 18.81 ml, 108 mmol)の存在下、ブロモ酢酸tert-ブチル(21.06 g, 17.43 ml, 108 mmol)を滴下し、遮光し、室温で24 時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残さを酢酸エチル(300 ml)に溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム(300 ml)で 2 回洗浄し、有機層を無水硫酸カルシウム(CaSO4)で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残さを酢酸エチル:ヘキサン(1 : 8)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物を淡黄色油状物質として得た(収量: 10.25 g, 収率: 61.4 %)。
化合物(3)
3,6-ビス((tert-ブトキシカルボニル)メチル)-9-(トリフルオロ-アセチル-3,6,9-トリアザウンデカン二酸 ジ-tert-ブチルの合成
N,N-ジメチルホルムアミド(82 ml)に懸濁させた水素化ナトリウム(0.908 g, 22.71 mmol)を-15 ℃以下に保ち、これに化合物 (2) (10.25 g, 18.93 mmol)の N,N-ジメチルホルムアミド溶液(14 ml)を滴下し、室温で 1 時間撹拌した。0 ℃以下に冷却した後、ブロモ酢酸 tert-ブチル(5.54 g, 4.59 ml, 28.4 mmol)を滴下し、室温で 4 時間撹拌した。反応液に 酢酸エチル(400 ml)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム(400 ml)で 2 回洗浄し、有機層を CaSO4 で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残さを酢酸エチル:ヘキサン(1:8)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物を淡黄色油状物質として得た(収量: 7.51 g, 収率: 60.5 %)。
FAB-MS(C30H53N3O9F3)(MH+): m/z 計算値, 656; 実測値, 656。
化合物 (4)
1-ベンジル tert-ブチル 3,6,9-トリス((tert-ブトキシカルボニル)メチル)-3,6,9-トリアザウンデカン二酸の合成
化合物(3)(7.4 g, 11.3 mmol)の tert-ブチルアルコール溶液(74 ml)を0 ℃以下に保ち、これに無水ヒドラジン(35.4 ml, 1.13 mol)を加え、3 時間撹拌した。反応液に クロロホルム(400 ml)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム(400 ml)で 2 回洗浄し、有機層を CaSO4 で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残さをN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.19 g, 2.95 ml, 16.9 mmol)の存在下、ブロモ酢酸ベンジル(3.89 g, 2.68 ml, 9.6 mmol)を滴下し、室温で 24 時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル(350 ml)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム(350 ml)で2回洗浄し、有機層をCaSO4 で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残さを酢酸エチル:ヘキサン(1 : 3)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物を淡黄色油状物質として得た(収量: 3.4 g, 収率: 42.5 %)。
FAB-MS(C37H62N3O10 (MH+): m/z 計算値, 708; 実測値, 708。
化合物(5)
3,6,9-トリス((tert-ブトキシカルボニル)メチル)-3,6,9-トリアザウンデカン二酸 tert-ブチル (mDTPA)の合成
化合物 (4) (1.55 g, 2.19 mmol)を酢酸エチル(5.6 ml)に溶解させ、10 % パラジウム/炭素(0.1 g)の存在下、水素置換を行い、室温で 4.5 時間撹拌した。パラジウム/炭素を濾去した後、溶媒を減圧留去し、mDTPA を淡黄色油状物質として得た(収量: 1.26 g, 収率: 93.1 %)
FAB-MS(C30H56N3O10)(MH+): m/z 計算値, 618; 実測値, 618。
2. DTPA-p-アミノ-Phe 1 -オクトレオチド、DTPA-p-カルボキシ-Phe 1 -オクトレオチド、およびDTPA-p-メチル-Phe 1 -オクトレオチド の合成
(1)Fmoc-Thr(Bu t )-ol の合成
Figure 0004318985
Fmoc-Thr(But)-OH Fmoc-Thr(But)-ol
a:N-メチルモルホリン, クロロギ酸イソプロピル;b:NaBH4
Fmoc: 9-フルオレニルメトキシカルボニル
But: tert-ブチル
Fmoc-Thr(But)-ol は、ロドリゲッツら(Rodrigues, M., Lilnares, M., Doulut, S. et al., Tetrahedron Lett., 32, 923-926 (1991))の方法に従って合成した。
Fmoc-Thr(But)-OH (1.99 g, 5 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(5 ml) を -15 ℃に保ち、これにN-メチルモルホリン (0.65 ml, 5 mmol)と クロロギ酸イソプロピル(0.65 ml, 5 mmol)を加え、1 分間撹拌した。速やかに沈殿物を取り除き、0 ℃以下に冷却した後、水(2.5 ml)に懸濁させたホウ水素化ナトリウム(0.57 g, 15 mmol)を加え、30 分間撹拌した。水(125 ml)を加えて反応を終了させ、酢酸エチル (50 ml)により 3 回抽出した。有機層を合わせ、5 % 炭酸水素ナトリウム溶液(150 ml)で 2 回洗浄し、有機層をCaSO4 で乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残さをクロロホルム:メタノール(19 : 1)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、目的物を白色油状物質として得た(収量: 1.21 g, 収率: 36.2 %)。
FAB-MS(C23H29NO4)(MH+): m/z 計算値, 384; 実測値, 384
(2)Fmoc-Thr(Bu t )-olのレジンへの導入
Figure 0004318985
2-クロロトリチルクロリドレジン Fmoc-Thr(But)-O-レジン
a:Fmoc-Thr(But)-ol, 脱水ピリジン
ウエンシュらの方法(Wenschuh, H., Beyerman, M., Haber, H. et al., J.Org.Chem., 60, 405-410 (1995))に従って、Fmoc-Thr(But)-olを2-クロロトリチル クロリドレジンに導入した。
2-クロロトリチルクロリドレジン(1.26 mmol/g; 200 mg, 0.252 mmol)と、Fmoc-Thr(But)-ol (289 mg, 0.76 mmol)を脱水ジクロロメタン (1.0 ml)と脱水N,N-ジメチルホルムアミド(1.0 ml)の混合溶媒に溶解し、脱水ピリジン(0.12 ml)を加え、窒素置換を行い、室温で 24 時間撹拌した。その後、N,N-ジメチルホルムアミド で洗浄し、メタノール(2.5 ml)を加え、30 分間撹拌することにより、未反応のトリチル基をエンドキャップした。次いで、N,N-ジメチルホルムアミドとジクロロメタンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。
(3)レジン上の Fmoc-Thr(Bu t )-olの定量
マインホッファーらの方法(Meienhofer, J., Waki, M., Heimer, E.P. et al., Int.J.Pept.Protein Res., 13, 35-42 (1979))に従って、レジンに結合したFmoc-Thr(But)-olを定量した。
レジンサンプルを真空下で、恒量になるまで乾燥させ、1〜2×10-3 g (X)を正確に量り採り、ピペリジン(0.4 ml)とジクロロメタン(0.4 ml)を加え、30 分間反応させた。メタノール(1.6 ml)を添加して反応を終了させ、ジクロロメタンを加え、全量を正確に10 ml にして溶液を混和した。301 nmにおいて、対照溶液に対するサンプル溶液の吸光度 (A301)を測定し、置換率を次式により求めたところ、0.243 mmol/g であった。
置換率 (アミノ酸 mmol/レジン 1 g)=(A301/7800)×(10 ml/X)
(4)保護 DTPA-p-アミノ-Phe 1 -オクトレオチド (6)、保護 DTPA-p-カルボキシ-Phe 1 -オクトレオチド (7) 、および保護 DTPA-p-メチル-Phe 1 -オクトレオチド(8)の合成
20 %ピペリジン/ジメチルホルムアミド (2 ml)を加え、20 分間撹拌し、Fmoc基を除去した。次いで、ジメチルホルムアミドで洗浄し、2.5 等量の側鎖保護 F-moc-アミノ酸誘導体および縮合剤であるDIPCDIとHOBt・H2O を加え、ジメチルホルムアミド (1 ml)中で縮合反応を1.5 時間行った。本縮合反応を、カイザー試験(Kaiser Test)(Kaiser, E., Colescot, R.L., Bossinger, C.D. et al., Anal.Biochem., 34, 595-598 (1970))によって陰性になるまで繰り返した。このF-moc 基の除去と F-moc-アミノ酸誘導体の縮合を繰り返し、保護ペプチド鎖をそれぞれの N 末アミノ酸である p-アミノ-Phe, p-カルボキシ-Phe, あるいは p-メチル-Pheまで延長した。F-moc-アミノ酸には、Fmoc-Cys(Acm)-OH、Fmoc-Thr(But)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Trp-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-p-アミノ-Phe(Boc)-OH、Fmoc-p-カルボキシ-Phe(OtBu)-OH、Fmoc-p-メチル-Phe-OH を用いた。その後、2.5 等量の mDTPAおよびDIPCDIとHOBt・H2O を加え、ジメチルホルムアミド(1 ml)中で縮合反応を1.5 時間行い、保護DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド(6)、保護DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド(7)、および保護DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(8)を得た。
(5)[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe 1 -オクトレオチド (9)、[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe 1 -オクトレオチド (10)、および[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe 1 -オクトレオチド (11) の合成
保護DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド(6)(100 mg)、保護 DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド(7)(100 mg)または、保護 DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(8)(100 mg)を0 ℃以下に保ち、これにチオアニソール(400 μl)の存在下、トリフルオロ酢酸(TFA) (4 ml)を加え、室温で 2 時間撹拌した。0 ℃以下に冷却した後、エーテル(5 ml)を加え、粗 [Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド、粗[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド、または粗[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(11)を沈殿させた。沈殿物を6 M グアニジン塩酸塩(5 ml)で抽出し、グラスフィルターを用いてレジン(樹脂)を取り除いた。水系フィルター(DISMIC-13HP,東京ろ紙株式会社)を用いた前処理を行った後、RP-HPLC により精製した。230 nm でモニターし、目的物を含むフラクションを集め、凍結乾燥し、[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド(9)(収量: 8.09 mg, 収率: 15.4 %)、[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド(10)(収量: 6.05 mg, 収率: 14.27 %)、または[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(11)(収量: 5.56 mg, 収率: 10.57 %)を白色状粉末として得た。
また、得られた[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド、[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド、および[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド の白色状粉末を、RP-HPLCにより分析したところ、それぞれ、保持時間 16.70 分、16.04 分、20.82 分にメジャーピークが観測された。
[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド:
FAB-MS(C69H101N16O21S2)(MH+): m/z 計算値, 1554; 実測値, 1554.
[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド:
FAB-MS(C70H100N15O23S2)(MH+): m/z 計算値, 1582; 実測値, 1582.
[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド
FAB-MS(C70H101N15O21S2)(MH+): m/z 計算値, 1552; 実測値, 1552.
(6)DTPA-p-アミノ-Phe 1 -オクトレオチド(12)、DTPA-p-カルボキシ-Phe 1 -オクトレオチド(13)およびDTPA-p-メチル-Phe 1 -オクトレオチド(14)の合成
[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (9) (1 mg, 0.64 μmol)、[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (10) (1 mg, 0.63 μmol)、または[Cys(Acm)2,7]-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (11) (1 mg, 0.64 μmol)を 80 % 酢酸(324 μl)に溶解させ、20 % I2/メタノール(16.6 μl, 13.02 μmol)を加え、室温で 60 分間撹拌した。1 Mアスコルビン酸水溶液を加え、過剰量のヨウ素を還元させ、水系フィルター(DISMIC-13HP, 東京ろ紙株式会社)を用いた前処理を行った後、RP-HPLC により精製した。230 nm でモニターし、目的物を含むフラクションを集め、凍結乾燥し、DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド(9)(収量: 292 μg, 収率: 32.19 %)、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド(10)(収量: 163 μg, 収率: 17.92 %)、または DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(11)(収量: 306 μg, 収率: 33.71 %)を白色状粉末として得た。
また、得られたDTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド、およびDTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド の白色状粉末を、RP-HPLC により分析したところ、それぞれ、保持時間 17.13 分、17.65 分、22.52 分にメジャーピークが観測された。
DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド
FAB-MS(C63H89N14O19S2)(MH+): m/z 計算値, 1410; 実測値, 1410
6 N塩酸での酸分解後のアミノ酸組成比:
Thr 1.00 (1) Phe 1.08 (1) Lys 0.99 (1) [括弧内は理論的組成比]
DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド
FAB-MS(C64H88N13O21S2)(MH+): m/z 計算値, 1439; 実測値, 1439
6 N塩酸での酸分解後のアミノ酸組成比:
Thr 1.00 (1) Phe 1.63 (1) Lys 1.07 (1) [括弧内は理論的組成比]
DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド
FAB-MS(C64H90N13O19S2) (MH+): m/z 計算値, 1409; 実測値, 1409
6 N 塩酸での酸分解後のアミノ酸組成比:
Thr 1.00 (1) Phe 0.88 (1) Lys 1.02 (1) [括弧内は理論的組成比]。
実施例2 111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (メチル体)の合成
10 μg の DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド、DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド、またはDTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド を 0.1 %酢酸(100 μg)に溶解した後、111InCl3 の 0.02 N HCl 溶液(7.62〜12.5 μl)を加え、室温で 1 時間放置した。電気的性質の比較、脂溶性の比較には、ここで得られたサンプルを用いた。また、体内放射能分布には、次の操作により得られたサンプルを用いた。上記のサンプルに、さらに0.1 HSA (ヒト血清アルブミン)を含有する 10 mM HEPES (2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸)緩衝液(pH 7.6)を加え、0.1 μg/100 μl の溶液を調製した。
アミノ体、カルボキシ体、およびメチル体を、RP-HPLCにより分析したところ、それぞれ、保持時間39 分、38 分、34 分にメジャーピークが観測された。
なお、調製したアミノ体、カルボキシ体、およびメチル体は、RP-HPLCによる分析で、放射化学的純度が95 % 以上であることを確認し、以後の実験に使用した。
実験例1 111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (メチル体)の電気的性質
111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (メチル体)の電気的性質を比較するために、セルロースアセテート電気泳動(CAE)を行った。セルロースアセテート膜にSeparax-SP(Jokoh Co. Ltd., Tokyo)を用い、尿のpHに相当するpH5.0、6.0、7.0および血漿のpHに相当するpH7.4の 20 mMリン酸緩衝液中で60分間泳動した。結果を図1に示す。図中、AはpH5.0、BはpH6.0、CはpH7.0、DはpH7.4での結果を表している。図1に示すように、尿のpHに相当するpH5.0、6.0、7.0 および血漿のpHに相当するpH7.4では、Phe体に比べてアミノ体はマイナス側に移動し、カルボキシ体はプラス側に移動した。また、メチル体は、Phe体と同じ位置に移動した。これらの結果は、尿中および血漿中で、Phe体およびメチル体に比べてアミノ体はプラスに、カルボキシ体はマイナスに帯電し、Phe1残基の側鎖の電荷を反映していることを示している。
実験例2 111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (メチル体)の脂溶性
アミノ体、カルボキシ体、およびメチル体の脂溶性を比較するために、n-オクタノール/緩衝液分配比を以下のようにして求めた。
n-オクタノールとリン酸塩緩衝液を混合し、一晩放置して飽和させた。シリコンコーティング(シリコナイズ L-25, Fuji System Corporation)したプラスチックチューブに、有機層および水層からそれぞれ3 mlずつ採り、アミノ体、カルボキシ体、または メチル体の溶液(5 μl)を加えた。[1分間ボルテックス−1分間放置]を3回繰り返した後、20分間放置した。この操作を3回繰り返し、遠心分離した。上層(n-オクタノール層)と下層(緩衝液層)をそれぞれ1mlずつ採り、シンチレーションカウンターで放射能(カウント)を測定し、分配比(PC)を次式により算出した。
PC=[n-オクタノール層の放射能]/[緩衝液層の放射能]
なお、緩衝液には、尿のpHに相当するpH5.0、6.0、7.0 および血漿のpHに相当するpH7.4の0.1 Mリン酸塩緩衝液を用いた。結果を表1に示す。表1から明らかに、アミノ体、カルボキシ体は、いずれもPhe体に比べて低い脂溶性を示したが、pH 5.0、6.0では、アミノ体よりカルボキシ体が高い脂溶性を示し、pH 7.0、7.4 では、カルボキシ体よりアミノ体が高い脂溶性を示した。また、メチル体は、いずれのpHでもPhe体に比べて高い脂溶性を示した。しかし、いずれの脂溶性も極めて低かった。
表 1 アミノ体、カルボキシ体、およびメチル体の脂溶性
Figure 0004318985
実験例3 111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド (メチル体)の血漿中安定性
エーテル麻酔下で、6 週齢の ddY 系雄性マウスから心臓採血し、20分間、4 ℃、900 gの遠心分離により、マウス血漿を調製した。アミノ体(5 μl, 0.5 μg, 126.4 kBq)、カルボキシ体(5 μl, 0.5 μg, 126.4 kBq)、またはメチル体(5 μl, 0.5 μg, 126.4 kBq)を、調製直後の新鮮なマウス血漿(450 μl)に加え、37 ℃でインキュベートした。1および3時間後に試料溶液を取り出し、分画分子量10,000の限外濾過膜(Microcon-10, Amicon Inc., Beverly, MA)で濾過した後、RP-HPLC により分析した。結果を図2に示す。縦軸は、0時間における未変化体の割合を100%としたときの、未変化体の割合(%)を示している。
アミノ体、カルボキシ体およびメチル体は、それぞれ、インキュベート1時間後に98、97、97 % が、3 時間後に98、97、96 %が未変化体として存在した。これらの結果は、アミノ体、カルボキシ体およびメチル体が、Phe体と同様に血中で安定に存在することを示している。
実験例4 111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(メチル体)の体内放射能分布
1群が5〜6匹よりなる6群の6週齢ddY系雄性マウス(体重 28〜30 g)に尾静脈よりアミノ体(0.1 ng, 100 μl)、カルボキシ体(0.1 ng, 100 μl)、またはメチル体(0.1 ng, 100 μl)を投与し、10および30分、1、3、6、および24時間後、断頭採血、解剖し、関心臓器(肝臓、腎臓、脾臓、膵臓および肺)を摘出し、血液と関心臓器の重量と放射能を測定した。また、放射能の体外排泄経路と排泄量を調べるため、マウスを24時間、代謝ケージで飼育し、投与直後から24時間後までに排泄された尿と糞を採取し、それぞれの放射能を測定した。対照として111In-DTPA-Phe1-オクトレオチド(Phe体)を用いて試験した。結果を表2〜5に示す。また、アミノ体、カルボキシ体、メチル体及びPhe体の腎臓における放射能活性の経時変化を図3に示す。
表 2 マウスにおける111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド静脈投与後の体内放射能分布a
Figure 0004318985
表 3 マウスにおける111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド静脈投与後の体内放射能分布a
Figure 0004318985
表 4 マウスにおける111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド静脈投与後の体内放射能分布a
Figure 0004318985
表 5 マウスにおける111In-DTPA-p-Phe1-オクトレオチド静脈投与後の体内放射能分布a
Figure 0004318985
表2〜5から、血液中の放射能は、いずれの場合も投与3時間後までにほとんど消失し、速やかに血液から消失することが分かる。また、いずれの場合も、腎臓において、他の臓器と比べて高い放射能集積を示したが、その集積量はアミノ体、カルボキシ体、メチル体で大きく異なっていた。即ち、アミノ体の場合、Phe体と比較して、投与10分後では同等であるが、投与30分後では有意に低くなり、投与24時間後では高くなっていた。カルボキシ体の場合、Phe体に比べて、検討したすべての時点で低い集積を示し、投与30分後から6時間後までは有意に低くなっていた。メチル体の場合、Phe体に比べて、投与1時間後と6時間後で有意に高いが、他ではほぼ同等の挙動を示した(図3)。
その他の臓器においては、有意差が認められるポイントはあるものの、放射能の集積量は非常に少なかった。
また、投与して24時間後までに尿中および糞便中に排泄された放射能は、アミノ体の場合には、それぞれ82.03 %、5.80 %、カルボキシ体の場合には、それぞれ86.30 %、5.72 %、メチル体の場合には、それぞれ66.67 %、11.74 %であった。一方、Phe体ではそれぞれ57.54 %、22.81 %であった。この結果から金属は主として尿中に排泄されることが分かった。
実験例5 尿中のアミノ体、カルボキシ体およびメチル体の分析
アミノ体(100 μl, 0.1 ng, 9.25 kBq)、カルボキシ体(100 μl, 0.1 ng, 9.25 kBq)、または メチル体(100 μl, 0.1 ng, 9.25 kBq)を6週齢ddY系雄性マウス(体重28〜30g)に投与し、マウスを24時間、代謝ケージで飼育し、投与直後から24時間後までに排泄された尿を採取した。採取した尿を分画分子量10,000の限外濾過膜(Microcon-10, Amicon Inc., Beverly, MA)で濾過した後、RP-HPLCにより分析した。結果をそれぞれ、図4、図5及び図6に示す。アミノ体の場合には保持時間37分(図4)に、カルボキシ体の場合には保持時間41分(図5)に、メチル体の場合には保持時間33分(図6)に、未変化体のものと考えられるメジャーピークを観測した。
また、この結果(図4−6)をもとに、尿中に排泄された放射能のうち未変化体が占める割合を算出したところ(図7)、アミノ体では76.00 %、カルボキシ体では86.69 %、メチル体では71.14 % が未変化体であった。
以上の実験例に記載の実験結果から、以下の点が明らかとなった。
(1)アミノ体、カルボキシ体、メチル体、Phe体は、いずれも血中で安定でありかつ速やかな血液からのクリアランスを示すことから、未変化体のまま臓器に移行すると考えられる。
(2)どの態様でも、試験した臓器のうち腎臓で高い放射能集積が認められ、放射能は主に尿中に排泄され、その70%以上は111In-DTPA-Phe1-オクトレオチドに準じた未変化体である(図7)。この結果は、アミノ体、カルボキシ体、メチル体、およびPhe体のいずれも、その大部分が未変化体のまま糸球体濾過されて尿中に排泄され、一部が腎細胞に取り込まれるという点でほぼ同様の放射能動態を示すことを示している。即ち、脂溶性、電気的性質の相違は、腎細胞に取り込まれる割合には影響しないことを示唆している。
(3)腎臓への放射能集積に関しては、図3から明らかなように、本発明のアミノ体の場合、投与30分から3時間後ではPhe体よりも低く、カルボキシ体の場合、検討したすべての時点でPhe体より低く抑制されており、腎細胞への取り込み後の迅速なクリアランスを示した。
本発明のカルボキシ体及びアミノ体はいずれもPhe体、メチル体に比較して、投与後画象診断に必要な期間を通して有意に低い腎集積を示すことから、診断薬として有望である。また、腎細胞への取り込み後迅速に排泄されるという性質は、腎臓の細胞に対する細胞毒性の発現を回避する上で極めて重要であり、治療薬としても極めて有望である。
産業上の有用性
本発明のキャリア物質は、治療用及び診断用の金属を血中で安定に維持し、速やかに標的のソマトスタチン受容体陽性腫瘍や内分泌系疾患の細胞へ送達することができ、しかも、金属の腎集積を低く抑えるという優れた性質を有する。このキャリア物質に適当な放射性または常磁性金属を配位させることにより、精度が高く副作用の低い、診断・治療薬が得られる。本発明によれば、患者の被曝や負担を大幅に軽減してより正確で安全な診断・治療を行うことができると同時に、適用が困難または不可能であった腎臓や腎臓周辺の疾患や腫瘍の核医学的診断・治療、MRI診断等を実施することが可能となる。
111In-DTPA-p-アミノ-Phe1-オクトレオチド (アミノ体)、111In-DTPA-p-カルボキシ-Phe1-オクトレオチド (カルボキシ体)、および111In-DTPA-p-メチル-Phe1-オクトレオチド(メチル体)のセルロースアセテート電気泳動における放射能(カウント)プロファイルを示す図である。 RP-HPLCにより測定した、マウス血漿中でのアミノ体、カルボキシ体、およびメチル体の安定性を示す図である。 アミノ体、カルボキシ体、メチル体、およびPhe体をマウスに投与した後の、腎臓における放射能活性の経時変化を示すグラフである。 アミノ体のマウス尿中への放射能クリアランスの状態をHPLCで分析した結果を示す図である。 カルボキシ体のマウス尿中への放射能クリアランスの状態をHPLCで分析した結果を示す図である。 メチル体のマウス尿中への放射能クリアランスの状態をHPLCで分析した結果を示す図である。 図4−6に記載の分析結果に基づいて作成した尿中に排泄された放射能のうち未変化体が占める割合を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 式(I):
    Figure 0004318985
    (式中、Rは、DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)、DOTA(1,4,7,10-テトラ−アザシクロドデカン−1,4,7,10−4酢酸)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−アミノエチルカルバモイルメチル−4,7,10−トリス[(R,S)メチル酢酸]から選択されるキレーター残基、
    Xはカルボキシフェニルまたはアミノフェニル
    YはThr-OH
    はPheであって、
    はThrである
    で示される、診断及び/または治療用の金属をソマトスタチン結合性受容体を発現している標的細胞に送達させるためのキャリア物質。
  2. Rが、DTPAである請求項1のキャリア物質。
  3. 診断及び/または治療用の金属と請求項1または2に記載のキャリア物質との腫瘍集積性の錯体。
  4. 金属が、Tc-99m、In-111、Cu-62、Ga-67、Ga-68、Re-186、Re-188、Y-90、Cu-64、Sn-117mおよびSm-153からなる放射性金属ならびにGd、Dy、FeおよびMnからなる常磁性金属から選択される、請求項3記載の腫瘍集積性の錯体。
  5. 請求項4記載の錯体を含有する腫瘍の診断または治療のための医薬組成物。
  6. 金属がTc-99m、In-111、Cu-62、Ga-67およびGa-68から選択される放射性金属である、生体の腫瘍部位を核医学的手法により画像診断するための、請求項5記載の医薬組成物。
  7. 金属がRe-186、Re-188、Y-90、Cu-64、Sn-117mおよびSm-153から選択される放射性金属である、放射性治療のための、請求項5記載の医薬組成物。
  8. 金属がGd、Dy、FeおよびMnから選択される常磁性金属である、生体の腫瘍部位をMRI画像診断するための、請求項5記載の医薬組成物。
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