JP4306337B2 - エキスパンド方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着シートのエキスパンド方法及びエキスパンド装置に関し、特に粘着シートを介してリング状のフレームにマウントされ、個々のチップにダイシング加工された板状物に対し、ダイシング加工後に、粘着シートをエキスパンドして個々のチップ間の間隔を拡大するエキスパンド方法及びエキスパンド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程等において、表面に半導体装置や電子部品等が形成された板状物であるウェーハは、プロービング工程で電気試験が行われた後、ダイシング工程で個々のチップ(ダイ、又はペレットとも言われる)に分割され、次に個々のチップはダイボンディング工程で部品基台にダイボンディングされる。ダイボンディングされた後、樹脂モールドされ、半導体装置や電子部品等の完成品となる。
【0003】
プロービング工程の後ウェーハは、図5に示すように、片面に粘着層が形成された厚さ100μm程度の粘着シート(ダイシングシート又はダイシングテープとも呼ばれる)Sに裏面を貼り付けられ、剛性のあるリング状のフレームFにマウントされる。ウェーハWはこの状態でダイシング工程内、ダイシング工程ダイボンディング工程間、及びダイボンディング工程内を搬送される。
【0004】
ダイシング工程では、ダイシングブレードと呼ばれる薄型砥石でウェーハWに研削溝を入れてウェーハをカットするダイシング装置が用いられている。ダイシングブレードは、微細なダイヤモンド砥粒をNiで電着したもので、厚さ10μm〜30μm程度の極薄のものが用いられる。
【0005】
このダイシングブレードを30,000〜60,000rpmで高速回転させてウェーハWに切込み、ウェーハWを完全切断(フルカット)する。このときウェーハWの裏面に貼られた粘着シートSは、表面から10μm程度しか切り込まれていないので、ウェーハWは個々のチップTに切断されてはいるものの、個々のチップTがバラバラにはならず、チップT同士の配列が崩れていないので全体としてウェーハ状態が保たれている。
【0006】
また、ダイシングブレードを用いずに、ウェーハWの内部に集光点を合わせたレーザー光を照射し、ウェーハ内部に多光子吸収現象による改質領域を形成させ、この改質領域を起点としてウェーハWを割断するレーザーダイシング加工が提案されている。このレーザーダイシング加工の場合も、ウェーハWは図5に示すような状態でダイシングされるので、チップT同士の配列が崩れず、全体としてウェーハ状態が保たれている。
【0007】
ここでは、このようにダイシング加工されて個々のチップTに分割された後であっても、チップT同士の配列が崩れていないこのチップTの集合体をも便宜上ウェーハWと呼ぶこととする。
【0008】
この後ウェーハWはダイボンディング工程に送られる。ダイボンディング工程ではダイボンダが用いられる。ダイボンダではウェーハWは先ずエキスパンドステージに載置され、次に粘着シートSがエキスパンドされて、チップT同士の間隔が広げられチップTをピックアップし易くしている。
【0009】
次に、下方からチップTをプッシャで突上げるとともに上方からコレットでチップTをピックアップし、基台の所定位置にチップTをボンディングする。
【0010】
このように、ダイボンダの中に粘着シートSを押し広げ、チップT同士の間隔を広げるエキスパンド装置を組込むことは、従来から行われていた。また、このエキスパンド装置の種々の改良発明も行われている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平7−231003号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平7−321070号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術では、粘着シートSを介してフレームFにマウントされたウェーハWは、ダイシングブレードで個々のチップTに切断された後、ダイシング装置内をそのままの状態で搬送されて洗浄等が行われ、次にダイボンダまで搬送され、ダイボンダ内もその状態のままで搬送が行われていた。
【0014】
ところが、近年IC等の半導体装置ではウェーハW1枚当たりのチップ形成数を増加させるため、ダイシング加工の為の加工領域(ストリートとも呼ばれる)の幅が極度に狭くなってきている。そのため、ダイシング工程では厚さ10μm〜15μm程度の極薄のダイシングブレードが使用されるようになってきた。
【0015】
このような極薄のダイシングブレードでダイシングされたウェーハWや、前述のレーザーダイシングされたウェーハWでは、チップT同士の間隔が極度に狭いため、従来のように粘着シートSを介してフレームFにマウントされた状態のままで搬送した場合、搬送中の振動によって隣同士のチップTのエッジとエッジとが接触し、エッジ部に欠けやマイクロクラックが生じ、良品チップTを不良にしたり、完成後の製品の信頼性を損なうという問題が生じていた。
【0016】
このため、ダイシング装置内でダイシング後直ちにエキスパンドし、チップT同士の間隔を広げて搬送することが要求されるようになってきた。ところが、従来行われていたエキスパンド方法や、前述の特許文献1、及び特許文献2に記載されたエキスパンド方法をダイシング装置内で行ったとしても、粘着シートSへの張力付与を解除するとエキスパンドされた粘着シートSが又元通りに縮んでしまうため、ウェーハWをフレームFごと搬送することができなかった。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ダイシング後のチップ同士の間隔が極度に狭いウェーハであっても、搬送中の振動によって隣同士のチップのエッジとエッジとが接触してエッジ部に欠けやマイクロクラック等が発生することなしに、フレームごと搬送することのできる粘着シートのエキスパンド方法、及びエキスパンド装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、粘着シートを介してリング状のフレームにマウントされ、個々のチップにダイシング加工された板状物に対し、ダイシング加工後に、前記粘着シートをエキスパンドして前記個々のチップ間の間隔を拡大するエキスパンド方法において、エキスパンド後に、前記板状物を前記フレームにマウントしたままの状態で前記粘着シートのエキスパンド状態を保持させ、拡大された前記チップ間の間隔を維持したまま前記板状物を前記フレーム毎搬送可能とし、前記フレームと前記板状物との間の粘着シートに凸部を形成することによって前記粘着シートをエキスパンドし、前記凸部の基部を溶着又は接着することによって前記粘着シートのエキスパンド状態を保持することを特徴としている。
【0019】
請求項1の発明によれば、ダイシングされた板状物がフレームにマウントされたままの状態で粘着シートのエキスパンド状態が保持されているので、チップ間の間隔を維持したまま板状物をフレーム毎搬送することができる。そのため、チップ同士の間隔が極度に狭い板状物であっても、搬送中の振動によって隣同士のチップのエッジとエッジとが接触してエッジ部に欠けやマイクロクラック等が発生することがない。
【0021】
請求項1の発明によれば、粘着シートに凸部を形成してエキスパンドし、凸部の基部を溶着又は接着してエキスパンド状態を保持しているので、板状物をフレーム毎取り扱うことができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記粘着シートに形成された凸部の基部を超音波溶着することを特徴としている。請求項2の発明によれば、粘着シートに形成された凸部の基部を超音波で溶着するので、容易に局所溶着を行うことができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記粘着シートのエキスパンドは、前記ダイシング加工後、前記板状物をダイシング用のチャックステージから取り外さずに行うことを特徴としている。
【0024】
請求項3の発明によれば、ダイシング加工後板状物をチャックステージにチャックしたままエキスパンドするので、ダイシング装置内の搬送においても、搬送中の振動によって隣同士のチップのエッジとエッジとが接触してエッジ部に欠けやマイクロクラック等が発生することがない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るエキスパンド方法及びエキスパンド装置の好ましい実施の形態について詳説する。尚、各図において同一部材には同一の番号または記号を付している。
【0030】
図1は、エキスパンド装置の構成を表わす断面図である。エキスパンド装置10は、XYθテーブル11、チャックステージ12、フレームチャック13、押圧部材14、ハウジング15、溶着工具としての超音波溶着工具16、押さえリング17等から構成されている。
【0031】
XYθテーブル11は、図示しない駆動装置によって図のXY方向に移動されるとともに、θ回転される。XYθテーブル11にはチャックステージ12とフレームチャック13が取付けられている。フレームチャック13の上面には多孔質部材13Aが埋め込まれ、電磁弁21B、レギュレータ22Bを経由して減圧ポンプ23に接続され、フレームFを吸着するようになっている。
【0032】
また、チャックステージ12の上面も図示しない多孔質部材が埋め込まれ、電磁弁21C、レギュレータ22Cを経由して減圧ポンプ23に接続され、板状物であるウェーハWを吸着するようになっている。
【0033】
粘着シートSのフレームFとウェーハWとが貼付されていない部分の上方には、環状の溝(空間部)15Aを有するリング状のハウジング15が配置されている。環状の溝15Aの内面は多孔質部材15Bで形成され、電磁弁21A、レギュレータ22Aを経由して減圧ポンプ23に接続されて、溝15Aの内部を減圧するようになっている。このハウジング15は、図示しない駆動手段によって上下に移動されるとともに、下降端でクランプされるようになっている。
【0034】
粘着シートSを挟んでハウジング15と対向してリング状の押圧部材14が設けられている。押圧部材14は図示しない駆動手段によって上下移動されるようになっており、上昇してハウジング15の溝15A内に挿入されるように位置決めされている。押圧部材14の上端縁は滑らかに面取りされている。
【0035】
ハウジング15の内側には環状の押さえリング17が設けられ、図示しない駆動手段によって上下移動され、下方に移動された時にチャックステージ12を強く押圧するようになっている。
【0036】
ハウジング15の外側には、溶着工具としての超音波溶着工具16が先端をハウジング15の溝15Aの入口に向けて斜めに配置されている。超音波溶着工具16は図示しない駆動手段によってその軸方向に移動されるようになっており、超音波を発振しながら先端で対象物を押圧する。
【0037】
次に、このように構成されたエキスパンド装置10によるエキスパンド方法について説明する。図2は本発明のエキスパンド方法の実施形態を表わすフローチャートである。粘着シートSを介してフレームFにマウントされたウェーハWはチャックステージ12とフレームチャック13に載置され、ウェーハWは粘着シートSを介してチャックステージ12に吸着され、フレームFは粘着シートSを介してフレームチャック13に吸着されている。この状態でウェーハWは個々のチップTにダイシングされている。
【0038】
粘着シートSのエキスパンドにあたっては、図2に示すように、最初にフレームFの吸着はそのままにしておき、電磁弁21Cを作動させてチャックステージ12の吸着のみを解除する(ステップS11)。
【0039】
次にハウジング15を下降させ、下端が粘着シートSと接触する位置でクランプする(ステップS13)。次に押圧部材14を上昇させて粘着シートSに当接させ、なおも上昇させることにより粘着シートSを押し上げてハウジング15の溝15A内に凸部を形成させる。これにより粘着シートSは中心部から外方にエキスパンドされ、粘着シートSに貼付されているチップT同士の間隔が拡大される(ステップS15)。
【0040】
ここで押さえリング17を下降させ、チャックステージ12の上面との間で粘着シートSを押圧してクランプする。これにより押さえリング17の内側の粘着シートSのエキスパンド状態が保持される(ステップS17)。
【0041】
図3はこの状態を表わしたもので、粘着シートSが押圧部材14で押し上げられ、ハウジング15の環状の溝内に環状の凸部SAが形成されている。これにより粘着シートSは中央部から外方向に伸ばされ、個々のチップT間の間隔が拡大され、押さえリング17でこのエキスパンド状態が保持されている。
【0042】
次に、電磁弁21Aを作動させ、ハウジング15の溝15A内の空間部を減圧ポンプで減圧し、粘着シートSの凸部SAを溝15Aの内面に吸着する。溝15Aの内面は多孔質部材15Bで形成されているので凸部SAを均一に吸着することができる(ステップS19)。
【0043】
ここで粘着シートSに凸部SAを形成させた押圧部材14を下降させる。押圧部材14が下降しても、粘着シートSの凸部SAは溝15Aの内面に吸着されているので凸部SAが元に戻ることはない(ステップS21)。
【0044】
次に、超音波溶着工具16を前進させ、先端部で粘着シートSの凸部SAの根元部分である基部を押圧し、基部同士を接触させてハウジング15の溝15Aの壁に押付ける(ステップS23)。次いで超音波溶着工具16は超音波を発振させ、先端で粘着シートSの凸部SAの基部を局所溶着するとともに、XYθテーブル11を1回転させ環状の凸部SAの基部全周にわたって溶着する(ステップS25)。
【0045】
図4はこの状態を表わしたものである。粘着シートSは、押さえリング17の内側がエキスパンドされてチップT間の間隔が拡大された状態のまま、凸部SAの基部SBが超音波溶着工具16の先端で押圧され、基部SB同士が溝15Aの壁に押付けられ、超音波振動によって局部溶着されている。
【0046】
ここで超音波溶着工具16を後退させ(ステップS27)、電磁弁21Aを作動させてハウジング15の溝15A内の減圧を解除するとともに、ハウジング15及び押さえリング17を上昇させる(ステップS29)。
【0047】
以上の工程により、粘着シートSに貼付され個々のチップTにダイシングされたウェーハWのチップT間の間隔が広げられた状態となり、この状態で粘着シートSは外周近傍に弛みが造られ弛みの根元が摘まれたような状態になり、個々のチップTの間隔が拡大したまま保持され、ダイシングされたウェーハWをフレーム毎搬送することができる。
【0048】
このエキスパンドは、ダイシング装置内で、ダイシング加工直後に行われるのが好ましい。ウェーハWはこのように、チップTの間隔が拡大された状態が保持されたままフレーム搬送されるので、搬送中の振動によって隣同士のチップのエッジとエッジとが接触して、エッジ部に欠けやマイクロクラック等が発生することが防止される。
【0049】
以上説明した実施の形態では、粘着シートSを下方から押し上げ、上方に向けて凸部SAを形成したが、本発明はこれに限らず、粘着シートSを下方に押圧し、下方に向けて凸部SAを形成するようにしてもよい。
【0050】
また、粘着シートSの凸部SAの基部SBを超音波溶着したが、超音波溶着に限らず熱圧着で局部溶着してもよく、また溶着に限らず、接着材で接着してもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のエキスパンド方法及びエキスパンド装置によれば、ダイシングされた板状物がフレームにマウントされたままの状態で粘着シートのエキスパンド状態が保持されているので、チップ間の間隔を維持したまま板状物をフレーム毎搬送することができる。そのため、チップ同士の間隔が極度に狭い板状物であっても、搬送中の振動によって隣同士のチップのエッジとエッジとが接触してエッジ部に欠けやマイクロクラック等が発生することがない。
【0052】
また、ダイシング装置内でダイシング加工後板状物をチャックステージにチャックしたままエキスパンドを行うので、ダイシング直後にチップ同士の間隔を広げることができ、また板状物がフレームにマウントされたままの状態でエキスパンド状態を保持するので、ダイシング装置内の搬送においてもチップ同士の接触を完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るエキスパンド装置を表わす構成図
【図2】本発明の実施の形態に係るエキスパンド方法を表わすフローチャート
【図3】エキスパンド状態を表わす概念図
【図4】エキスパンド保持状態を表わす概念図
【図5】フレームにマウントされたウェーハを表わす斜視図
【符号の説明】
10…エキスパンド装置、11…XYθテーブル、12…チャックステージ、14…押圧部材、15…ハウジング、15A…溝(空間部)、16…超音波溶着工具(溶着工具)、17…押さえリング、20…減圧手段、F…フレーム、S…粘着シート、SA…凸部、SB…基部、T…チップ、W…ウェーハ(板状物)
Claims (3)
- 粘着シートを介してリング状のフレームにマウントされ、個々のチップにダイシング加工された板状物に対し、ダイシング加工後に、前記粘着シートをエキスパンドして前記個々のチップ間の間隔を拡大するエキスパンド方法において、
エキスパンド後に、前記板状物を前記フレームにマウントしたままの状態で前記粘着シートのエキスパンド状態を保持させ、拡大された前記チップ間の間隔を維持したまま前記板状物を前記フレーム毎搬送可能とし、
前記フレームと前記板状物との間の粘着シートに凸部を形成することによって前記粘着シートをエキスパンドし、前記凸部の基部を溶着又は接着することによって前記粘着シートのエキスパンド状態を保持することを特徴とするエキスパンド方法。 - 前記粘着シートに形成された凸部の基部を超音波溶着することを特徴とする、請求項1に記載のエキスパンド方法。
- 前記粘着シートのエキスパンドは、前記ダイシング加工後、前記板状物をダイシング用のチャックステージから取り外さずに行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のエキスパンド方法。
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