本発明は、内燃機関に関し、さらに詳しくは内燃機関に液体燃料および水素を供給する内燃機関に関するものである。
一般的な乗用車に搭載される内燃機関であるガソリンエンジンは、エンジンに供給する液体燃料であるガソリンと、エンジンの吸気系統から吸気される空気との空燃比が理論空燃比(λ=1)となるように運転されるものである。エンジンを理論空燃比で運転すると、このエンジンの排気系統に排出される排気ガス中に含まれる有害物質(CO2,HC,NOx)は、そのほとんどが三元触媒のみで浄化することできる。したがって、他の触媒、例えばNOx吸蔵触媒などを必要とすることがない。しかしながら、上述のようなエンジンにおいては、ガソリンと空気との空燃比を理論空燃比(λ=1)で運転するために、エンジンの吸気系統から吸気される空気の量を調整するスロットル弁を全開に対して閉じなくてはならず、この全開に対して閉じた状態のスロットル弁によりポンプ損失が発生し、エンジンの高効率化を阻害するという問題がある。
そこで、上記ポンプ損失を低減する方法としては、まずスロットル弁を開くことで、ガソリンと空気との空燃比を理論空燃比よりも高い状態(λ>1)でエンジンを運転することが考えられる。つまり、エンジンの燃焼室内でガソリンを希薄燃焼させて、エンジンを運転することで高効率化を図るものである。しかしながら、ガソリンは、その可燃範囲が狭く、着火性が低いため、エンジンの高効率を図ることができる程度の希薄燃焼を行えないという問題がある。また、エンジンを理論空燃比よりも高い状態(λ>1)で運転する、つまりガソリンを希薄燃焼させると、エンジンの排気系統に排出される排気ガスのNOx濃度が高くなる。従って、エンジンを理論空燃比で運転することにより、排気ガス中の有害物質を浄化する三元触媒のみでは、排気ガス中に含まれるNOxを大気に排出することができる程度に浄化することができず、新たにNOx吸蔵触媒が必要となるという問題もある。
また、エンジンの排気系統の排気ガスを吸気系統に再循環させることが考えられる。排気ガスをエンジンの吸気系統に再循環すると、エンジンの吸気系統に吸気される空気の量が減る。従って、ガソリンと空気との理論空燃比でエンジンを運転するためには、スロットル弁を開く必要があり、これにより、ポンプ損失を低減し、高効率化を図ることができる。また、エンジンの吸気系統に再循環された排気ガスは、その熱容量が大きいため、エンジンの燃焼室内でガソリンと空気の混合気が燃焼することで燃焼ガスとなった際に、この燃焼ガスの燃焼温度が低下する。一般に、燃焼ガスの燃焼温度が低下すると、NOxの発生を低減することができるので、排気ガス中のNOx濃度を低くすることができる。しかしながら、エンジンの吸気系統に多量に排気ガスを再循環させると、燃焼室内でのガソリンと空気の混合気の燃焼が悪化してしまう。従って、エンジンの吸気系統に再循環させる排気ガスの量は、多量とすることができず、ポンプ損失を低減し、エンジンの高効率化を図ることは困難であった。
そこで、従来において、液体燃料であるガソリンと水素をエンジンに供給、つまりガソリンに水素添加して、エンジンの燃焼室内で、ガソリンおよび水素と空気との混合気を希薄燃焼させて、このエンジンを運転する技術が提案されている。ここで、水素は、ガソリンなどの液体燃料と比較して、その可燃範囲が広く、着火性が高い。従って、スロットル弁を開き、エンジンの吸気系統に吸気される空気の量を増やし、ガソリンおよび添加された水素と空気との空燃比を理論空燃比よりも高い状態(λ>1)でエンジンを運転することができる。これにより、ポンプ損失を低減することができ、このエンジンの高効率化を図ることができる。
ところで、上記従来例では、ポンプ損失の低減を図るために、ガソリンおよび添加された水素と空気との空燃比を理論空燃比よりも高い状態(λ>1)でエンジンを運転する必要がある。従って、三元触媒によりエンジンの排気系統に排出される排気ガスを浄化しても、三元触媒で浄化された後の排気ガスのNOx濃度を低くすることができず、新たにNOx吸蔵触媒が必要となるという問題がある。また、エンジンの排気系統に排出される排気ガスを三元触媒やNOx吸蔵触媒により浄化する必要がない程度までNOx濃度を低くするためには、ガソリンに添加する水素を増やす、つまりガソリンに対する水素添加割合を高くし、さらに希薄燃焼側で燃焼させる必要がある。従って、エンジンの運転に必要な水素の量が増えるという問題もある。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体燃料に対する水素の添加割合を高くすることを抑制でき、三元触媒のみで大気に排出される排気ガスのNOx濃度を低減することができるとともに、内燃機関の高効率化を図ることができる内燃機関を提供することを目的とするものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、液体燃料タンク内の液体燃料を内燃機関に供給する液体燃料供給手段と、水素貯留部内に貯留された水素を内燃機関に供給する水素供給手段と、内燃機関の排気系統に排出された排気ガスを内燃機関の吸気系統に再循環させる排気ガス再循環手段と、排気系統の排気ガスを浄化する三元触媒と、排気系統に排気ガスのNOx濃度を検出するNOx濃度検出手段とを備える内燃機関であって、排気ガスを内燃機関の吸気系統に再循環する際には、液体燃料および水素を当該内燃機関に供給し、液体燃料および水素と、吸気系統から吸気される空気との空燃比が、理論空燃比となるように運転し、前記内燃機関に供給される液体燃料に対する前記水素の添加割合は、前記再循環される排気ガスの再循環量に対して、前記液体燃料および水素と前記空気との混合気の安定した燃焼が行える割合以上であり、かつ前記NOx濃度に基づいて変化することを特徴とする内燃機関。
また、この発明では、上記内燃機関において、液体燃料に対する水素の添加割合は、排気ガスのNOx濃度が三元触媒により浄化できるNOx濃度以下となる添加割合であることを特徴とする。
また、この発明では、上記内燃機関において、水素供給手段は、水素貯留部内の残存水素量を検出する残存水素量検出手段をさらに備え、残存水素量に基づいて液体燃料に対する水素の添加割合を変化させることを特徴とする。
また、この発明では、上記内燃機関において、残存水素量がなくなった際には、液体燃料のみを前記内燃機関に供給するとともに、内燃機関の吸気系統への排気ガスの再循環を停止し、液体燃料と空気との空燃比が、理論空燃比となるように運転することを特徴とする。
また、この発明では、上記内燃機関において、水素供給手段は、水素貯留部から内燃機関に水素を供給する水素噴射弁までを連結する水素供給通路に水素供給通路の通路内圧力を検出する通路内圧力検出手段と、水素貯留部から水素噴射弁に供給される水素を遮断する遮断弁と、をさらに備え、内燃機関への液体燃料および水素の供給を停止する際には、遮断弁を閉じ水素の供給を停止するとともに、内燃機関の吸気系統への排気ガスの再循環を停止し、通路内圧力が規定圧力以下となったときに、液体燃料の供給を停止することを特徴とする。
この発明にかかる内燃機関は、排気ガスを内燃機関の吸気系統に再循環する際には、液体燃料および水素を内燃機関に供給するので、排気ガスを多量に再循環しても、液体燃料および水素と吸気系統から吸気される空気との混合気の安定した燃焼が行える。また、多量に排気ガスを再循環することで、液体燃料に対する水素の添加割合を高くすることを抑制でき、排気系統に排出される排気ガスのNOx濃度を低減することができる。また、液体燃料および水素と、吸気系統から吸気される空気との空燃比が、理論空燃比となるように運転するので、排気系統に排出されたNOx濃度の低い排気ガスを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、他の触媒、例えば、NOx吸蔵触媒などを必要とせず、内燃機関の製造コストを低減することができる。さらに、吸気系統から吸気される空気量は、多量に再循環された排気ガスにより減少するため、内燃機関を液体燃料および水素と空気との空燃比が理論空燃比となるように運転するためには、吸気系統から吸気される空気量を調整するスロットル弁を開く必要がある。これにより、ポンプ損失を低減し、内燃機関の高効率化を図ることができるという効果を奏する。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、以下の実施例では、内燃機関として乗用車、トラックなどの車両に搭載されるガソリンエンジンについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ディーゼルエンジンなどにも適用可能である。また、内燃機関に供給する液体燃料としてガソリンを用いる場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体燃料として軽油、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)などを供給する内燃機関にも適用可能である。
図1は、実施例1にかかるエンジン(内燃機関)の構成例を示す図である。図1に示すように、内燃機関であるエンジン1は、液体燃料供給手段である液体燃料供給装置2と、水素供給手段である水素供給装置3と、排気ガス再循環手段であるEGR装置4と、エンジン1の排気系統5に設けられた三元触媒51とにより構成されている。なお、6はエンジン1の各気筒であり、7はエンジン1の運転を制御する運転制御装置であるECU(Engine Control Unit)であり、8はエンジン1の吸気系統である。
液体燃料供給手段である液体燃料供給装置2は、図示しない液体燃料タンク内の液体燃料であるガソリンを内燃機関であるエンジン1に供給するものである。この液体燃料供給装置2は、図示しない液体燃料タンクと、図示しない低圧ポンプと、高圧ポンプ21と、液体燃料噴射弁22とにより構成されている。図示しない液体燃料タンク内に貯留されているガソリンは、ECU7からの低圧ポンプ駆動信号により駆動する低圧ポンプにより加圧され、高圧ポンプ21に圧送される。高圧ポンプ21には、少なくとも図示しない電磁弁、加圧室、プランジャが備えられている。高圧ポンプ21に圧送された加圧されたガソリンは、ECU7からの電磁弁開閉信号により、その弁開度が制御される電磁弁から加圧室に供給される。加圧室に供給されたガソリンは、図示しないクランクシャフトの回転力によって上下動するプランジャによりさらに加圧され、液体燃料噴射弁22に圧送される。液体燃料噴射弁22は、高圧ポンプ21から圧送されたガソリンを後述するエンジン1の吸気系統8の吸気通路81内に噴射するものであり、ECU7からの液体燃料噴射信号により、噴射タイミングおよび噴射量が制御される。
水素供給手段である水素供給装置3は、水素貯留部である水素タンク31内に貯留された水素を内燃機関であるエンジン1に供給するものである。この水素供給装置3は、液体水素を貯留する水素貯留部である水素タンク31と、水素ポンプ32と、内燃機関であるエンジン1に水素を供給する水素噴射弁33と、水素タンク31から水素噴射弁33までを連結する水素供給通路34とにより構成されている。この水素タンク31内に貯留されている液体水素は、ECU7からの水素ポンプ駆動信号により駆動する水素ポンプ32により、水素供給通路34を介して、水素燃料噴射弁33に供給される。ここで、水素タンク31内で液体であった水素は、水素供給通路34に流出することで気体となる。水素噴射弁33は、水素ポンプ32から供給された気体となった水素を後述するエンジン1の吸気系統8の吸気通路81内に噴射するものであり、ECU7からの水素噴射信号により、噴射タイミングおよびガソリン対しての添加割合に基づく噴射量が制御される。
なお、35は、水素貯留部である水素タンク31内の残存水素量を検出し、ECU7に残存水素量を出力する残存水素量検出手段であるタンク内圧力センサである。また、水素タンク31は、液体水素を直接貯留するものに限られず、例えば、水素を吸蔵することができる水素吸蔵合金を水素タンク31内に配置しても良いし、ガソリンなどの燃料を改質することで生成した水素を気体として貯留しても良い。また、上記液体燃料供給装置2および水素供給装置3は、ともにエンジン1の吸気系統8の吸気通路81にガソリンおよび水素を噴射するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガソリンあるいは水素の少なくともいずれか一方を後述するエンジン1の各気筒6に形成される燃焼室Aに直接噴射する構成としても良い。
排気ガス再循環手段であるEGR装置4は、内燃機関であるエンジン1の排気系統5に排出された排気ガスをエンジン1の吸気系統8に再循環させるものである。このEGR装置4は、EGR弁41と、EGR通路42とにより構成されている。EGR弁41は、図示しないサーボモータや磁力によりその開度を変化させるものであり、ECU7からのEGR弁開閉信号により、排気ガスの再循環量を制御するものである。エンジン1の排気系統5の排気通路52に連通するEGR通路42に流入した排気ガスは、EGR弁41により再循環量を調整され、後述するエンジン1の吸気系統8の吸気通路81のスロットル弁84より上流側に流入する。
排気系統5は、三元触媒51と、排気通路52と、図示しない消音装置とにより構成されている。後述するエンジン1の各気筒6の排気ポート67から排出された排気ガスは、排気通路52を介して、三元触媒51に流入する。三元触媒51は、エンジン1が各気筒6の燃焼室Aに供給されるガソリンあるいはガソリン及び水素とエンジン1の吸気系統8から各気筒6の燃焼室Aに吸気された空気との空燃比が理論空燃比となるように運転することで、その他の触媒を用いずに排気ガス中に含まれる有害物質(CO2,HC,NOx)を浄化することができるものである。この三元触媒51により浄化された排気ガスは、図示しない消音装置を介して、大気に排出される。なお、53は、各気筒6の排気ポート67から排出された排気ガスのNOx濃度を検出し、ECU7に排気ガスのNOx濃度を出力するNOx濃度検出手段であるNOx濃度検出センサである。また、54は、三元触媒51に流入する排気ガスのO2濃度を検出し、ECU7に排気ガスのO2濃度を出力するO2濃度検出手段であるO2濃度検出センサである。
エンジン1の各気筒6は、シリンダブロック61と、ピストン62と、シリンダブロック61に固定されたシリンダヘッド63と、吸気弁64と、排気弁65と、吸気ポート66と、排気ポート67と、点火プラグ68とにより構成されている。ここで、ピストン62とシリンダヘッド63との間に燃焼室Aが形成される。点火プラグ68は、ECU7からの点火信号により、点火するものである。エンジン1の吸気系統8の吸気通路81内に噴射されたガソリンあるいはガソリンおよび水素と、後述するエアクリーナ82を介して吸気通路81内に吸気された空気は、各気筒6の吸気弁64が開くことで、燃焼室A内に流入する。なお、69は、燃焼室A内の圧力を検出し、ECU7に燃焼室A内の圧力を出力する燃焼室内圧力手段である燃焼室内圧力センサである。
内燃機関の運転制御装置であるECU7は、エンジン1の運転を制御するものである。ECU7は、エンジン1の各所に取り付けられたセンサ、例えば図示しないクランクシャフトに取り付けられたエンジン回転数を検出する角度センサ、アクセル開度を検出する図示しないアクセル開度センサ、タンク内圧力センサ35、NOx濃度検出センサ53、O2濃度検出センサ54、燃焼室内圧力センサ69、後述するエンジン1の吸気系統8のエアフロメータ83などから、エンジン回転数、アクセル開度、残存水素量、排気ガスのNOx濃度、排気ガスのO2濃度、燃焼室内圧力、空気量などが入力信号として入力される。また、この入力信号および記憶部73に記憶されている各種マップに基づいて、液体燃料噴射弁22および水素噴射弁33の噴射制御、図示しない低圧ポンプおよび水素ポンプ32の駆動制御、高圧ポンプ21の図示しない電磁弁およびEGR弁41、並びに後述するエンジン1の吸気系統8のスロットル弁の開閉制御、点火プラグ68の点火制御などを行う出力信号を出力する。
具体的には、上記入力信号や出力信号の入出力を行うインターフェース部71と、液体燃料噴射弁22および水素噴射弁33の噴射タイミングや噴射量、EGR弁の弁開度などを算出する処理部72と、上記マップなどを記憶する記憶部73とにより構成されている。処理部72は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成され、内燃機関であるエンジン1の運転方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、エンジン1の運転方法などを実現させるものであっても良い。また、記憶部73は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能な揮発性のメモリあるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能な揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
エンジン1の吸気系統8は、各気筒6の燃焼室Aに、このエンジン1の外部からの空気を吸気させるためのものである。この吸気系統8は、吸気通路81と、エアクリーナ82と、エアフロメータ83と、スロットル弁84とにより構成されている。エアクリーナ82は、エンジン1の外部の大気である空気に含まれる不純物を除去するものである。エアフロメータ83は、各気筒6の吸気ポート66から燃焼室Aに吸気される空気量を検出し、ECU7にエンジン1に吸気される空気量を出力するものである。スロットル弁84は、図示しないサーボモータや磁力によりその弁開度を変化させるものであり、ECU7からのスロットル弁開閉信号により、EGR装置4により吸気系統8の吸気通路81に再循環された排気ガスとともに燃焼室A内に吸気される空気量を制御するものである。各気筒6の吸気バルブ66が開弁し、燃焼室A内の発生した負圧により、エアクリーナ82を介して不純物が除去された空気は、スロットル弁84により空気量が調整され、各気筒6の吸気ポート66から燃焼室Aに吸気される。
次に、内燃機関であるエンジン1の運転方法について説明する。図2は、実施例1にかかるエンジンの運転フローを示す図である。図3−1は、燃費率とG/Fとの関係を示す図である。図3−2は、排気系統に排出される排気ガス中のNOx量とG/Fとの関係を示す図である。ここで、燃費率とは、エンジンの単位時間当たりの出力に対して必要な燃料(液体燃料であるガソリンおよび水素を合わせたもの)の量をいう。また、G/Fとは各気筒6の燃焼室A内に吸気されるガス(空気と再循環された排気ガスを含む)と、液体燃料であるガソリンおよび水素との質量比をいう(以下、同様)。ここで、燃費率は、その値が低いほど、燃費が優れているものである。また、G/Fは、排気ガスが再循環されない場合は、A/Fと同様である。
まず、図2に示すように、ECU7の処理部72は、図示しない角度センサおよびアクセル開度センサ、エアフロメータ83より出力されたエンジン回転数、アクセル開度、空気量を入力する(ステップST1)。次に、処理部72は、通常添加割合マップに基づいて、液体燃料噴射手段22から噴射するガソリンの噴射量、このガソリンに対する水素の添加割合、吸気系統8に再循環する排気ガスの再循環量に基づくEGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST2)。これは、記憶部73に記憶されている図示しないエンジン回転数とアクセル開度とのマップである通常添加割合マップと、ECU7に入力信号として入力されたエンジン回転数およびアクセル開度の入力信号に基づいて決定される。ここで、処理部72が用いる通常添加割合マップは、記憶部73に記憶されているマップの1つであり、ガソリンに対する水素の添加割合を通常(20〜30%程度)で添加してエンジン1を運転する際に用いるマップである。なお、排気ガスが吸気系統8に再循環されると吸気系統8に吸気される空気量が減少するため、スロットル弁84の弁開度の算出は、ガソリンおよび水素と空気との空燃比が理論空燃費(λ=1)となるように行われる。
次に、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度、点火タイミングによりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。具体的には、処理部72は、液体燃焼噴射弁22に液体燃料噴射信号を出力することで、吸気系統8の吸気通路81内に、液体燃料噴射弁22から所定の噴射タイミングで算出された噴射量のガソリンを噴射する。また、処理部72は、ガソリンに対する水素の添加割合に基づいて、水素噴射弁33により噴射する水素の噴射量を算出し、水素噴射弁33に水素噴射信号を出力することで、吸気系統8の吸気通路81内に、水素噴射弁33から所定の噴射タイミングで算出された噴射量の水素を噴射する。ここで、液体燃料であるガソリンは液体としてエンジン1に供給されるのに対して、水素は気体としてエンジン1に供給されるため、ガソリンに対する水素の添加割合に基づく水素の噴射量の算出は、ガソリンおよび水素の発熱量に基づいて行われる。
また、処理部72は、EGR弁41にEGR弁開閉信号を出力することで、EGR弁41を算出された排気ガスの再循環量に基づいた弁開度に開き、吸気系統8の吸気通路81内に排気ガスを再循環させる。また、処理部72は、スロットル弁84にスロットル弁開閉信号を出力することで、スロットル弁84を算出された弁開度に開き、吸気系統8の吸気通路81内に空気を吸気する。各気筒6の吸気バルブ64が開弁することで、吸気系統8から各気筒6の燃焼室Aにガソリン、水素、再循環された排気ガス、空気が吸気される。これにより、燃焼室A内は、ガソリンおよび水素と空気との空燃比が理論空燃比(λ=1)である混合気が充満する。そして、処理部72は、点火プラグ68に点火信号を出力することで、点火プラグ68を点火する。点火プラグ68が点火することにより、燃料室A内の混合気が着火し、燃焼ガスとなり、ピストン62を押し下げ、図示しないコンロッドを介して回転自在に連結された図示しないクランクシャフトに回転力を与える。
以上により、ガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃比(λ=1)としてエンジン1を運転する。上記実施例1の内燃機関であるエンジン1では、排気ガスをエンジン1の吸気系統8に再循環する際には、液体燃料であるガソリンおよび水素をエンジン1に供給するので、排気ガスを多量に再循環しても、ガソリンおよび水素と空気との混合気の安定した燃焼が行える。
次に、実施例1にかかる内燃機関であるエンジン1と従来例であるガソリンに対して水素を添加し希薄燃焼させるエンジンとの比較について説明する。図3−1のCに示す従来のエンジンは、吸気系統から吸気される空気量を増やし、G/Fを増加させることで、燃費率を低くすることができる。一方、Bに示すエンジン1は、理論空燃比で運転しているため、排気ガスの再循環量を増やし、G/Fを増加させることで、燃費率を低くすることができる。ここで、従来のエンジンの最低燃費率はc点であり、エンジン1の最低燃費率はb点である。従って、燃費率、つまりエンジンの高効率化のみに着目すれば、c点の方がb点よりも低いため、従来のエンジンの方が優れているといえる。
一方、図3−2のEに示す従来のエンジンは、吸気系統8から吸気される空気量を増やし、G/Fを増加させることで、排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量を低くすることができる。一方、Dに示すエンジン1は、理論空燃比で運転しているため、排気ガスの再循環量を増やし、G/Fを増加させることで、排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量を低くすることができる。これは、再循環された排気ガスの熱容量が大きいため、燃焼室A内でガソリンおよび水素と空気との混合気が燃焼することで燃焼ガスとなった際に、この燃焼ガスの燃焼温度を低下させることができ、燃焼ガス中のO2濃度を低下させることができることで、排気ガス中のNOx量を低くすることができるからである。ここで、上記従来のエンジンの最低燃費率c点におけるG/Fに対応したNOx量はeとなり、エンジン1の最低燃費率b点におけるG/Fに対応したNOx量はdとなる。つまり、エンジンの高効率化のみでいえば、従来のエンジンの方が優れているが、排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量に着目すれば、d点の方がe点よりも低いため、エンジン1の方が優れているといえる。また、従来のエンジンは、エンジンの高効率化および排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量の低減を図るため、液体燃料および水素と、空気との空燃比を理論空燃比より高い状態(λ>1)で運転する必要がある。従って、排気系統5に排出された排気ガスに含まれるNOxを三元触媒によって大気に排出できる程度まで浄化することができない。つまり、他の触媒、例えば、NOx吸蔵触媒などを用いるか、排気系統5に排気されるNOx量をさらに低減するために、ガソリンに対する水素の添加割合を高くしなければならない。
これらにより、エンジン1は、多量に排気ガスを再循環することで、ガソリンに対する水素の添加割合を高くすることを抑制でき、排気系統5に排出される排気ガス中のNOx量、つまり排気ガスのNOx濃度を低減することができる。また、液体燃料および水素と、空気との空燃比が、理論空燃比となるように運転するので、排気系統に排出されたNOx濃度の低い排気ガスを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、他の触媒、例えば、NOx吸蔵触媒などを必要とせず、内燃機関の製造コストを低減することができる。
さらに、吸気系統8から吸気される空気量は、多量に再循環された排気ガスにより減少するため、エンジン1を液体燃料および水素と空気との空燃比が理論空燃比となるように運転するためには、吸気系統8から吸気される空気量を調整するスロットル弁を開く必要がある。これにより、液体燃料のみで運転するエンジンと比較して、ポンプ損失を低減し、エンジンの高効率化を図ることができる。
〔変形例1〕
水素タンク31内の残存水素量がなくなった状態で、排気ガスを多量に吸気系統8に再循環すると、各気筒6の燃焼室A内で失火が発生する虞がある。そこで、残存水素量がなくなった際には、液体燃料のみを内燃機関であるエンジン1に供給するとともに、エンジンの吸気系統8への排気ガスの再循環を停止し、ガソリンのみと空気との空燃比が、理論空燃比となるようにエンジン1を運転する。
ここで、実施例1にかかるエンジン1の他の運転方法について説明する。図4は、実施例1にかかるエンジンの他の運転フローを示す図である。なお、図4に示す運転方法は、図1に示す実施例1にかかるエンジン1の運転方法と基本的なフローは略同一なので簡略化して説明する。まず、図4に示すように、ECU7の処理部72は、エンジン回転数、アクセル開度、空気量を入力する(ステップST1)。次に、処理部72は、通常添加割合マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST2)。
次に、処理部72は、残存水素量を入力する(ステップST4)。ここで、残存水素量とは、水素タンク31に取り付けられたタンク内圧力センサ35から出力されたタンク内圧力に基づいて算出されたものである。次に、処理部72は、残存水素量がなくなったか否かの判断を行う(ステップST5)。これは、タンク内圧力に基づいて、残存水素量がゼロあるいは略ゼロか否かを判断するものである。次に、残存水素量がなくなっていなければ、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。
一方、処理部72は、残存水素量がなくなっていれば、ガソリンに対する水素の添加割合を0とし、EGR弁の弁開度を0とし、ガソリンのみのマップに基づいて、液体燃料噴射手段22から噴射するガソリンの噴射量、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST6)。これは、記憶部73に記憶されている図示しないエンジン回転数とアクセル開度とのマップであるガソリンのみのマップと、ECU7に入力信号として入力されたエンジン回転数およびアクセル開度の入力信号に基づいて決定される。ここで、処理部72が用いるガソリンのみのマップは、記憶部73に記憶されているマップの1つであり、液体燃料であるガソリンのみによりエンジン1を運転する際に用いるマップである。
次に、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、スロットル弁の弁開度、点火タイミングによりガソリンと空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST7)。具体的には、処理部72は、液体燃焼噴射弁22に液体燃料噴射信号を出力することで、吸気系統8の吸気通路81内に、液体燃料噴射弁22から所定の噴射タイミングで算出された噴射量のガソリンを噴射する。また、処理部72は、ガソリンに対する水素の添加割合を0とするために、水素噴射弁33に噴射信号が出力されている場合は、噴射信号の出力を停止する。また、処理部72は、EGR弁41の開弁度を0とするために、EGR弁41に開閉信号が出力されている場合は、開閉信号の出力を停止する。また、処理部72は、スロットル弁84にスロットル弁開閉信号を出力することで、スロットル弁84を算出された弁開度に開き、吸気系統8の吸気通路81内に空気を吸気する。各気筒6の吸気バルブ64が開くことで、吸気系統8から各気筒6の燃焼室Aにガソリンおよび空気のみが吸気される。これにより、燃焼室A内は、ガソリンと空気との空燃比が理論空燃比(λ=1)である混合気が充満する。そして、処理部72は、点火プラグ68に点火信号を出力することで、点火プラグ68を点火する。点火プラグ68が点火することにより、燃料室A内の混合気が着火し、燃焼ガスとなり、ピストン62を押し下げ、図示しないコンロッドを介して回転自在に連結された図示しないクランクシャフトに回転力を与える。
以上のように、水素タンク31内の残存水素量がなくなった状態においては、ガソリンのみをエンジン1に供給するとともに、エンジン1の吸気系統8への排気ガスの再循環を停止することで、各気筒6の燃焼室A内で失火が発生する虞を抑制することができる。また、ガソリンと空気との空燃比が理論空燃比となるようにエンジン1を運転するので、残存水素量がなくなった際にも、排気系統に排出された排気ガスに含まれるNOxを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、エンジン1の製造コストを低減することができる。
上記実施例1では、ガソリンに対する水素の添加割合を20〜30%程度として、エンジン1を運転したが、実施例1に対して水素の添加割合を減少させても、吸気系統8に排気ガスを循環させることで、排気系統5に排出された排気ガスに含まれるNOxを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができる。そこで、残存水素量に基づいて液体燃料であるガソリンに対する水素の添加割合を変化、つまり半減させて、ガソリンおよび水素と空気との空燃比が理論空燃費(λ=1)となるようにエンジン1を運転する。なお、実施例2にかかる内燃機関であるエンジンは、図1に示すエンジン1と同様であるためその説明は省略する。
ここで、実施例2にかかるエンジン1の運転方法について説明する。図5は、実施例2にかかるエンジンの運転フローを示す図である。図6−1は、燃費率とG/Fとの関係を示す図である。図6−2は、排気系統に排出される排気ガス中のNOx量とG/Fとの関係を示す図である。なお、図5に示す実施例2にかかるエンジンの運転方法は、図4に示す実施例1にかかる他の運転方法と基本的なフローは、略同一なのでその説明省略する。まず、図5に示すように、ECU7の処理部72は、エンジン回転数、アクセル開度、空気量を入力する(ステップST1)。次に、処理部72は、通常添加割合マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST2)。
次に、処理部72は、残存水素量を入力する(ステップST4)。次に、処理部72は、残存水素量が所定量よりも低いか否かの判断を行う(ステップST8)。これは、タンク内圧力に基づいて、残存水素量が所定量よりも低いか否かを判断するものである。ここで、所定量とは、例えば、水素タンク31に新に水素を貯留するまでに、排気ガスをエンジン1の吸気系統8に再循環する際において、水素噴射弁33から吸気系統8の吸気通路81に水素を噴射できる量や、水素タンク31内に貯留できる全水素量に対して10%の量などをいう。残存水素量が所定量以上である場合は、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。
一方、処理部72は、残存水素量が所定量よりも低い場合は、記憶部72の添加割合半減マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST9)。これは、記憶部73に記憶されている図示しないエンジン回転数とアクセル開度とのマップである添加割合半減マップと、ECU7に入力信号として入力されたエンジン回転数およびアクセル開度の入力信号に基づいて決定される。ここで、処理部72が用いる添加割合半減マップは、記憶部73に記憶されているマップの1つであり、ガソリンに対する水素の添加割合を通常(20〜30%程度)の添加割合に対して半減した添加割合(10〜15%程度)で添加してエンジン1を運転する際に用いるマップである。従って、エンジン1の任意の運転状態において、添加割合半減マップに基づいて算出された水素の添加割合は、通常添加割合マップに基づいて算出された水素の添加割合に対して半減した値となる。次に、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、通常の水素の添加割合に対して半減された水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。
以上により、残存水素量が所定値よりも低い場合は、通常の水素の添加割合に対して半減された水素の添加割合で、エンジン1を運転する。従って、上記実施例2の内燃機関であるエンジン1では、上記実施例1と同様に排気ガスを多量に再循環しても、ガソリンおよび水素と空気との混合気の安定した燃焼が行える。
また、実施例2にかかるエンジン1を水素の添加割合を通常の添加割合に対して半減して運転した際の燃費率とG/Fとの関係は、図6−1のFに示すようになり、最低燃費率はf点となる。従って、Bに示す実施例1にかかるエンジン1のように水素の添加割合を通常の添加割合で運転した際の最低燃費率のb点と比較して、燃費率、つまりエンジンの高効率化に着目すれば、エンジン1を水素の添加割合を通常の添加割合で運転した方が優れているといえる。また、実施例2にかかるエンジン1を水素の添加割合を通常の添加割合に対して半減して運転した際の排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量とG/Fとの関係は、図6−2のGに示すようなり、最低燃費率f点におけるG/Fに対するNOx量はgとなる。従って、Dに示す実施例1にかかるエンジン1のように水素の添加割合を通常の添加割合で運転した際のNOx量dと比較して、排気系統5に排気される排気ガス中のNOx量に着目すれば、エンジン1を水素の添加割合を通常の添加割合で運転した方が優れているといえる。
しかしながら、ガソリンに対する水素の添加割合は、実施例1にかかるエンジン1の運転方法に対して、実施例2にかかるエンジンの運転方法は、残存水素量が所定値よりも低い場合は、通常の水素の添加割合に対して半分となる。従って、実施例2かかるエンジン1は、ガソリンに対する水素の添加割合を高くすることをさらに抑制でき、排気系統に排出されたNOx濃度の低い排気ガスを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、内燃機関の製造コストを低減することができる。
上記実施例2では、残存水素量が所定値よりも低い場合は、通常の水素の添加割合に対して半減された水素の添加割合で、エンジン1を運転したが、排気系統5に排出された排気ガスのNOx濃度が三元触媒のみの浄化により大気に排出できる程度までの濃度であれば水素割合を減少させることができる。そこで、排気系統5に排出された排気ガスのNOx濃度に基づいて、液体燃料であるガソリンに対する水素の添加割合を変化させて、ガソリンおよび水素と空気との空燃比が理論空燃費(λ=1)となるようにエンジン1を運転する。なお、実施例3にかかる内燃機関であるエンジンは、図1に示すエンジン1と同様であるためその説明は省略する。
ここで、実施例3にかかるエンジン1の運転方法について説明する。図7は、実施例3にかかるエンジンの運転フローを示す図である。なお、図6に示す実施例3にかかるエンジンの運転方法は、図5に示す実施例2にかかる運転方法と基本的なフローは、略同一なのでその説明省略する。まず、図6に示すように、ECU7の処理部72は、エンジン回転数、アクセル開度、空気量を入力する(ステップST1)。次に、処理部72は、通常添加割合マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST2)。
次に、処理部72は、残存水素量を入力する(ステップST4)。次に、処理部72は、残存水素量が所定量よりも低いか否かの判断を行う(ステップST8)。これは、タンク内圧力に基づいて、残存水素量が所定量よりも低いか否かを判断するものである。残存水素量が所定量以上である場合は、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。
一方、処理部72は、残存水素量が所定量よりも低い場合は、記憶部72の各添加割合減少マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST10)。これは、記憶部73に記憶されている図示しないエンジン回転数とアクセル開度とのマップである各添加割合減少マップと、ECU7に入力信号として入力されたエンジン回転数およびアクセル開度の入力信号に基づいて決定される。ここで、処理部72が用いる各添加割合減少マップは、記憶部73に記憶されている複数のマップであり、ガソリンに対する水素の添加割合を通常(20〜30%程度)の添加割合に対して、例えば所定間隔で減少した添加割合で添加してエンジン1を運転する際に用いる複数のマップである。例えば、通常の水素の添加割合を20%とし、所定間隔を2とすると添加割合減少マップは、18%、16%、14%…4%、2%の添加割合で添加してエンジン1を運転する際に用いるマップとなる。なお、処理部72は、最初に残存水素量が所定量よりも低いと判断した際には、各添加割合減少マップのうち最も水素の添加割合減少量が多い添加割合減少マップを用いる。
次に、処理部72は、算出された水素の添加割合が最低添加割合以上か否かを判断する(ステップST11)。ここで、最低添加割合は、各添加割合減少マップごとに規定されており、処理部72により算出された吸気系統8に再循環する排気ガスの再循環量に対して、各気筒6の燃焼室A内で安定した燃焼を行うことができるガソリンに対する水素の添加割合である。これは、排気ガスを多量に吸気系統8に再循環した状態で、水素の添加割合が最低添加割合よりも低いと、各気筒6の燃焼室A内で失火が発生する虞があるからである。算出された水素の添加割合が最低添加割合よりも低い場合は、ステップST10に戻る。処理部72は、ステップ10に戻ったと判断した場合は、直近で用いた添加割合減少マップよりも、水素の添加割合減少量が1間隔分少ない添加割合減少マップを用いて、ステップST10を繰り返す。
次に、処理部72は、排気系統5に排出された排気ガスのNOx濃度を入力する(ステップST12)。ここで、NOx濃度は、排気系統5の排気通路52の三元触媒51の上流側に取り付けられたNOx濃度センサから出力されたものである。次に、処理部72は、排気ガスのNOx濃度が規定濃度以下であるか否の判断を行う(ステップST13)。これは、排気ガスのNOx濃度によって、大気に排出できる程度に三元触媒51のみによりNOxを浄化できない排気ガスが排気系統5に排気されることを抑制するためである。ここで、規定濃度とは、排気系統5に排出される排気ガスのNOxが三元触媒51のみにより大気に排出できる程度に浄化できる濃度である。つまり、ステップST13は、液体燃料であるガソリンに対する水素の添加割合を、排気系統5に排出される排気ガスのNOx濃度が三元触媒51により浄化できるNOx濃度以下となる添加割合とするものである。
次に、排気ガスのNOx濃度が規定濃度以下である場合は、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1を運転する(ステップST3)。一方、排気ガスのNOx濃度が規定濃度よりも高い場合は、処理部72は、直近で用いた添加割合減少マップよりも、水素の添加割合減少量が1間隔分少ない添加割合減少マップを用いて、ステップST10に戻り、ステップST10からステップST13までを繰り返す。なお、処理部72は、水素の添加割合減少量が隣接する添加割合減少マップの間におけるガソリンに対する水素の添加割合を算出する際には、この隣り合う添加割合減少マップどうしを直線補完することで、ガソリンに対する水素の添加割合を算出しても良い。
以上により、残存水素量が所定値よりも低い場合は、排気系統5に排出された排気ガスのNOx濃度が三元触媒のみの浄化により大気に排出できる程度までの濃度となる減少した水素割合でエンジン1を運転する。従って、上記実施例3の内燃機関であるエンジン1では、上記実施例1と同様に排気ガスを多量に再循環しても、ガソリンおよび水素と空気との混合気の安定した燃焼が行える。また、ガソリンに対する水素の添加割合を高くすることをさらに抑制でき、排気系統に排出されたNOx濃度の低い排気ガスを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、内燃機関の製造コストを低減することができる。
上記実施例2および実施例3にかかるエンジン1において、上記変形例1と同様に、残存水素量がなくなった際には、液体燃料のみを内燃機関であるエンジン1に供給するとともに、エンジンの吸気系統8への排気ガスの再循環を停止し、ガソリンのみと空気との空燃比が、理論空燃比となるようにエンジン1を運転してもよい。これにより、各気筒6の燃焼室A内で失火が発生する虞を抑制することができる。また、残存水素量がなくなって際にも、排気系統に排出された排気ガスに含まれるNOxを三元触媒のみで大気に排出できる程度まで浄化することができ、エンジン1の製造コストを低減することができる。
図8は、実施例4にかかるエンジン(内燃機関)の構成例を示す図である。図8に示すエンジン1´が図1に示すエンジン1と異なる点は、水素供給装置3に通路内圧力センサ36および遮断弁37が備えられている点である。なお、図8に示すエンジン1´の基本的構成は、図1に示すエンジン1の基本的構成と略同様であるためその説明は省略する。
水素供給手段である水素供給手段3には、水素ポンプ32の下流側、つまり水素噴射弁33側の水素供給通路34に、この水素供給通路34の通路内圧力を検出し、ECU7に通路内圧力を出力する通路内圧力検出手段である通路内圧力センサが取り付けられている。また、水素ポンプ32の上流側、つまり水素タンク31側の水素供給通路34に、水素貯留部である水素タンク31から水素噴射弁33に供給される水素を遮断する遮断弁37が取り付けられている。この遮断弁37は、図示しないサーボモータや磁力により開閉を行うものであり、ECU7からの遮断弁開閉信号により、水素タンク31から水素供給通路34を介して水素噴射弁33に水素を供給することを遮断するものである。
液体燃料であるガソリンとともに、水素を供給される内燃機関であるエンジン1´では、エンジン1´の運転を停止する場合に、イグニッション(IG)をOFFすると共に、エンジン1´の運転を停止すると、水素供給手段である水素供給装置3の水素貯留部である水素タンク31から水素噴射弁33までを連結する水素供給通路34内に水素が残留することとなる。この残留した水素は、時間経過により水素供給通路34からエンジン1´が搭載されている車両内、あるいは車両外部に漏れ出す虞がある。これは、水素は、全原子中、最も径が小さく、最も漏れ易い物質であるためである。
従って、イグニッションをOFF、つまり内燃機関であるエンジン1´への液体燃料であるガソリンおよび水素の供給を停止する際には、水素タンク31から水素供給通路34に流出する水素を遮断するとともに、水素供給通路34に残留する水素をエンジン1´に供給するまで、エンジン1´を運転し続ける必要がある。また、排気ガスをエンジン1´の吸気系統8に再循環している際には、エンジン1´に供給する水素がなくなると、エンジン1´、つまり各気筒6の燃焼室A内で失火が発生する虞がある。
そこで、内燃機関であるエンジン1´への液体燃料であるガソリンおよび水素の供給を停止する際には、遮断弁37を閉じ水素の供給を停止するとともに、内燃機関であるエンジン1´の吸気系統8への排気ガスの再循環を停止し、通路内圧力が規定圧力以下となったときに、液体燃料であるガソリンの供給を停止し、エンジン1´の運転を停止する。
ここで、実施例4にかかるエンジン1´の他の運転方法について説明する。図9は、実施例4にかかるエンジンの他の運転フローを示す図である。なお、図9に示す運転方法は、図1に示す実施例1にかかるエンジン1の運転方法と基本的なフローは略同一なので簡略化して説明する。まず、図9に示すように、ECU7の処理部72は、エンジン回転数、アクセル開度、空気量を入力する(ステップST1)。次に、処理部72は、通常添加割合マップに基づいて、ガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁41の弁開度、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST2)。次に、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、水素の添加割合、EGR弁の弁開度、スロットル弁の弁開度によりガソリンおよび水素と空気との空燃比を理論空燃費(λ=1)で、エンジン1´を運転する(ステップST3)。
次に、処理部72は、イグニッション(IG)のOFFを入力する(ステップST14)。次に、処理部72は、EGR弁の弁開度を0とし、遮断弁37の弁開度を0とする。(ステップST15)。具体的には、処理部72は、EGR弁41の開弁度を0とするために、EGR弁41に開閉信号が出力されている場合は、開閉信号の出力を停止する。これにより、エンジン1´の吸気系統8への排気ガスの再循環を停止する。また、処理部72は、遮断弁37の弁開度を0、つまり遮断弁37を閉弁するために、遮断弁37に開閉信号が出力されている場合は、開閉信号の出力を停止する、あるいは遮断弁37を開く出力信号が出力されている場合は、遮断弁37を閉じる出力信号を出力する。これにより、水素タンク31から水素供給通路34を介して水素噴射弁33に水素が供給されることを停止する。
次に、アイドリング時のガソリンのみのマップに基づいて、ガソリンの噴射量、スロットル弁84の弁開度、点火プラグ68の点火タイミングを算出する(ステップST16)。これは、記憶部73に記憶されている図示しないエンジン回転数とアクセル開度とのマップであるアイドリング時のガソリンのみのマップと、ECU7に入力信号として入力されたエンジン回転数およびアクセル開度の入力信号に基づいて決定される。ここで、処理部72が用いるアイドリング時のガソリンのみのマップは、記憶部73に記憶されているマップの1つであり、内燃機関であるエンジン1´がアイドリング時に液体燃料であるガソリンのみによりエンジン1´を運転する際に用いるマップである。
次に、処理部72は、算出されたガソリンの噴射量、スロットル弁の弁開度、点火タイミングにより、エンジン1´をアイドリング運転する(ステップST17)。このとき、水素供給通路34内の水素は、水素噴射弁33により、吸気系統8の吸気通路81に噴射される。
次に、処理部72は、水素供給通路34内の通路内圧力が規定圧力以下か否かを判断する(ステップST18)。このとき、処理部72には、すでに水素供給通路34に取り付けられた通路内圧力センサ36から出力された通路内圧力が入力されている。ここで、規定値とは、水素供給通路34内の通路内圧力が大気圧かあるいは略大気圧か否かを判断するものである。次に、通路内圧力が規定圧力以下である場合は、処理部72は、内燃機関であるエンジン1´の運転を停止する(ステップST19)。なお、通路内圧力が規定圧力よりも高い場合は、上記ステップST17、18を繰り返す。
以上のように、エンジン1´へのガソリンおよび水素の供給を停止する際には、遮断弁37を閉じ水素の供給を停止するとともに、排気ガスの再循環を停止し、通路内圧力が規定圧力以下となったときに、ガソリンの供給を停止し、エンジン1´の運転を停止するので、水素供給通路内に水素が残留せず、水素が水素供給通路から外部に漏れ出す虞を抑制できる。また、エンジン1´に供給する水素がなくなることで、エンジン1´で失火が発生する虞を抑制できる。
上記実施例4では、イグニッション(IG)をOFFとして、エンジン1´を停止することで、エンジン1´へのガソリンおよび水素の供給を停止する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アクセル開度が0の場合も、エンジン1´へのガソリンおよび水素の供給を停止されるので、この場合にも適用することができる。また、この発明は、排気ガスを内燃機関であるエンジン1、1´の吸気系統8に再循環している際には、液体燃料であるガソリンおよび水素をエンジン1、1´に供給するものであるが、エンジン1、1´の始動時などは、水素のみをエンジン1、1´に供給しても良い。
以上のように、この発明にかかる内燃機関は、内燃機関に液体燃料および水素を供給する内燃機関に有用であり、特に、液体燃料に対する水素の添加割合を高くすること抑制でき、三元触媒のみで大気に排出される排気ガスのNOx濃度を低減することができるとともに、内燃機関の高効率化を図るのに適している。
実施例1にかかるエンジン(内燃機関)の構成例を示す図である。
実施例1にかかるエンジンの運転フローを示す図である。
燃費率とG/Fとの関係を示す図である。
排気系統に排出される排気ガス中のNOx量とG/Fとの関係を示す図である。
実施例1にかかるエンジンの他の運転フローを示す図である。
実施例2にかかるエンジンの運転フローを示す図である。
燃費率とG/Fとの関係を示す図である。
排気系統に排出される排気ガス中のNOx量とG/Fとの関係を示す図である。
実施例3にかかるエンジンの運転フローを示す図である。
実施例4にかかるエンジン(内燃機関)の構成例を示す図である。
実施例4にかかるエンジンの運転フローを示す図である。
符号の説明
1、1´ エンジン(内燃機関)
2 液体燃料供給装置(液体燃料供給手段)
3 水素供給装置(水素供給手段)
4 EGR装置(排気ガス再循環手段)
5 排気系統
51 三元触媒
6 各気筒
7 ECU
8 吸気系統