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JP4305039B2 - 車輪速センサ異常判定装置 - Google Patents

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JP4305039B2
JP4305039B2 JP2003131685A JP2003131685A JP4305039B2 JP 4305039 B2 JP4305039 B2 JP 4305039B2 JP 2003131685 A JP2003131685 A JP 2003131685A JP 2003131685 A JP2003131685 A JP 2003131685A JP 4305039 B2 JP4305039 B2 JP 4305039B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動力低減制御システム(トラクション・コントロール・システム:TCS)等において、駆動輪の車輪速情報を得る車輪速センサの異常を判定する車輪速センサ異常判定装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輪速センサ異常判定装置は、4輪の各輪に設けられた車輪速センサからの車輪速平均値を演算し、エンジン回転数とギヤ比から推定車輪速を演算し、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲内であれば、車輪速センサは正常であると判定し、±20%の誤差範囲を超えていると、車輪速センサは異常であると判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−344091号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の車輪速センサ異常判定装置にあっては、車輪速平均値と推定車輪速との誤差により車輪速センサの異常を判定するものであるため、例えば、駆動輪の1輪に設けられた車輪速センサのみが異常で、大きな車輪速センサ値を出力しているときでも、残りの3輪の正常な車輪速センサ値との合計値を4で除した車輪速平均値と、推定される車輪速とが±20%の誤差範囲内であれば、車輪速センサが正常であると判定してしまう。
【0005】
また、1輪の異常な車輪速センサ値と残りの3輪の正常な車輪速センサ値との合計値を4で除した車輪速平均値と、推定される車輪速とが±20%の誤差範囲を超えている場合には、車輪速センサが異常であると判定するが、4輪に設けられた車輪速センサのうち、どの車輪に設けられた車輪速センサが異常かを判定することができない。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、駆動輪に設けられた車輪速センサの高出力による異常を精度良く早期に判定することができると共に、異常である車輪速センサを特定することができる車輪速センサ異常判定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、
駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサの異常を判定する車輪速センサ異常判定手段を有する車輪速センサ異常判定装置において、
車体速または従動輪の車輪速センサ値と、前記駆動輪の車輪速センサ値とに基づいて、前記駆動輪がホイールスピンしているか否かを検出する駆動輪ホイールスピン検出手段と、
車体加速度を検出する車体加速度検出手段と、を設け、
前記車輪速センサ異常判定手段は、前記駆動輪がホイールスピンしていることを検出し、且つ、検出される前記車体加速度が増加している場合、前記駆動輪の車輪速センサが異常であると判定し、
前記車体速は、前記従動輪の車輪速に基づき算出され、
前記車体加速度は、前記車体速に基づき算出されることとした。
【0008】
【発明の効果】
よって、本発明の車輪速センサ異常判定装置にあっては、駆動輪が真にホイールスピンであるとき、車体加速度は駆動スリップにより増加しなくなる点に着目し、車輪速センサ異常判定手段において、駆動輪がホイールスピンしていることを検出し、且つ、検出される車体の加速度が増加している場合、駆動輪の車輪速センサが異常であると判定するようにしたため、駆動輪に設けられた車輪速センサの高出力による異常を精度良く早期に判定することができると共に、異常である車輪速センサを特定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車輪速センサ異常判定装置を実現する実施の形態を、図面に示す第1実施例に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例の車輪速センサ異常判定装置が適用された後輪駆動車を示す全体システム図である。なお、以下の文章中で用いる「TCS」はトラクション・コントロール・システム(Traction Control System)の略称であり、「ABS」はアンチロックブレーキシステム(Anti-lock Brake System)の略称であり、「VDC」はビークル・ダイナミクス・コントロール(Vehicle Dynamic Control)の略称である。
【0011】
後輪駆動系の構成を説明すると、図1に示すように、エンジン1、スロットルバルブ2、スロットルモータ3、リヤディファレンシャル4、左前輪5、右前輪6、左後輪7(駆動輪)、右後輪8(駆動輪)を備えている。前記エンジン1の駆動トルクは、スロットルモータ3により駆動されるスロットルバルブ2の開度に応じて制御される。そして、エンジン駆動力は、図外のプロペラシャフト及びリヤディファレンシャル4を介して左右後輪7,8へ伝達される。
【0012】
ブレーキ系の構成を説明すると、図1に示すように、ブレーキペダル9、ブースタ10、マスターシリンダ11、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12、左前輪ホイールシリンダ13、右前輪ホイールシリンダ14、左後輪ホイールシリンダ15、右後輪ホイールシリンダ16を備えている。通常のブレーキ操作時はブレーキペダル9の踏み込み操作によりマスターシリンダ11にて発生したブレーキ液圧が、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12を介して、4輪のホイールシリンダ13,14,15,16に供給され、4輪の各輪に制動トルクが付与される。
【0013】
前記VDC/TCS/ABSアクチュエータ12は、後述のVDC/TCS/ABSコントローラ17からのVDC/TCS/ABSアクチュエータ駆動信号を受けて、各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するもので、VDC制御時やTCS制御時には、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12により発生したブレーキ液圧を、各車輪のホイールシリンダのうち、制動トルクの付与が必要なホイールシリンダに供給する。また、ABS制御時には、制動ロックを防止するようにVDC/TCS/ABSアクチュエータ12により各車輪のホイールシリンダ圧を調整する。
【0014】
制御系の構成を説明すると、図1に示すように、VDC/TCS/ABSコントローラ17(駆動力低減制御システム)、エンジン制御コントローラ18、A/T制御コントローラ19、左前輪速センサ20、右前輪速センサ21、左後輪速センサ22(車輪速センサ)、右後輪速センサ23(車輪速センサ)、ブレーキ圧力センサ24、横Gセンサ25、ヨーレートセンサ26、舵角センサ27、VDCオフスイッチ28、ABS警告灯29、VDC OFF表示灯30、SLIP表示灯31、スロットル開度センサ32(加速操作検出手段)を備えている。
【0015】
前記VDC/TCS/ABSコントローラ17とエンジン制御コントローラ18とA/T制御コントローラ19とは、互いに双方向通信線(CAN通信線)により接続されている。
【0016】
前記VDC/TCS/ABSコントローラ17は、各車輪速センサ20,21,22,23と、ブレーキ圧力センサ24と、横Gセンサ25と、ヨーレートセンサ26と、舵角センサ27と、VDCオフスイッチ28と、スロットル開度センサ32からのセンサ信号やスイッチ信号を入力する。そして、VDC/TCS/ABSアクチュエータ12に対しVDC/TCS/ABSアクチュエータ駆動信号を出力する。
【0017】
前記VDC/TCS/ABSコントローラ17にて実行されるTCS制御は、各車輪速センサ20,21,22,23からの車輪速情報に基づいて左右後輪7,8のホイールスピン状態を検知し、ドライバーがアクセルペダルを踏み込むことで(スロットルを開く)、ホイールスピン量がTCS制御開始しきい値以上になると、エンジン制御(電子制御によるスロットルバルブ2を閉じる、燃料カットを行う)及びブレーキ制御(ホイールスピンした駆動輪のブレーキ液圧を増圧)により、左右後輪7,8のホイールスピンを抑制する。
【0018】
前記エンジンコントローラ18は、VDC/TCS/ABSコントローラ17からエンジントルクダウン指令を受けると、スロットル制御と燃料カット制御の少なくとも一方によるエンジントルクダウン制御を行う。
【0019】
次に、作用を説明する。
【0020】
[車輪速センサ異常判定処理]
図2は第1実施例のVDC/TCS/ABSコントローラ17にて実行される車輪速センサ異常判定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(車輪速センサ異常判定手段)。
【0021】
ステップS1では、各車輪速センサ20,21,22,23からの左前輪速VFL、右前輪速VFR、左後輪速VRL、右後輪速VRRと、スロットル開度センサ32からのスロットル開度THが読み込まれ、ステップS2へ移行する。
【0022】
ステップS2では、左前輪速VFLと右前輪速VFRとの平均値(=従動輪速)を微分処理して加速度Gnを算出し、ステップS3へ移行する(車体加速度検出手段)。
【0023】
ステップS3では、ステップS2で算出された加速度Gnをメモリ(EEPROM)に記憶設定し、ステップS4へ移行する。
【0024】
ステップS4では、スリップフラグSLIPFがSLIPF=1(少なくとも1つの駆動輪がホイールスピン状態を表す)か否かが判断され、YESの場合はステップS10へ移行し、NOの場合はステップS5へ移行する。
【0025】
ステップS5では、スロットル開度THがTH>0で、Gn>Gn-1であるか否か、つまり、加速操作時で、しかも車体加速度が増加している加速中か否かが判断され、YESの場合はステップS6へ移行し、NOの場合はリターンへ移行する。
【0026】
ステップS6では、車体速として左右の従動輪速の平均値を代用し、左後輪速VRL、または、右後輪速VRRが、従動輪速にTCS制御開始しきい値SSを加えた車輪速以上か否か、つまり、駆動輪がホイールスピンであるか否かが判断され、YESの場合はステップS8へ移行し、NOの場合はステップS7へ移行する(駆動輪ホイールスピン検出手段)。なお、車体速を求める方法としては、対地センサや高精度GPSによる車体移動速度を検出して求めても良い。
【0027】
ステップS7では、スリップフラグSLIPFがSLIPF=0(2つの駆動輪が何れもホイールスピン状態でないことを表す)に設定され、リターンへ移行する。
【0028】
ステップS8では、ステップS6において駆動輪がホイールスピンしているとの判断に基づいて、例えば、エンジン出力制御によるTCS制御の開始指令が出力され、ステップS9へ移行する。
【0029】
ステップS9では、スリップフラグSLIPFがSLIPF=1に設定され、リターンへ移行する。
【0030】
ステップS10では、ステップS4でのスリップフラグSLIPFがSLIPF=1であるとの判断に基づき、今回の加速度Gnが前回の加速度Gn-1以下、つまり、車体の加速度Gnが小さくなっているか否かが判断され、YESの場合(加速度が減少または停滞)はステップS13へ移行し、NOの場合(加速度が増加)はステップS11へ移行する。
【0031】
ステップS11では、ステップS8にて開始されたTCS制御を中断する指令が出力され、ステップS12へ移行する。
【0032】
ステップS12では、ステップS6にてホイールスピンであると判断された駆動輪の車輪速センサが異常であると判定され、リターンへ移行する。
【0033】
ステップS13では、車体速として左右の従動輪速の平均値を代用し、左後輪速VRL、または、右後輪速VRRが、従動輪速にTCS制御終了しきい値SEを加えた車輪速以下か否か、つまり、駆動輪のホイールスピンが収束したか否かが判断され、YESの場合はステップS15へ移行し、NOの場合はステップS14へ移行する。
【0034】
ステップS14では、TCS制御開始からの経過時間Tが設定時間TO以上となったか否かが判断され、YESの場合はステップS11へ移行し、NOの場合はリターンへ移行する。ここで、設定時間TOは、車輪速センサ異常判断時間であって、通常のTCS制御継続時間より長い時間に設定される。
【0035】
ステップS15では、ステップS13での駆動輪のホイールスピン収束判断に基づいて、TCS制御を終了し、リターンへ移行する。
【0036】
[車輪速センサ正常時]
各車輪速センサ20,21,22,23が正常であり、かつ、加速操作時でもなく、車体加速度も増加していないときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→リターンへと進む流れとなる。
【0037】
各車輪速センサ20,21,22,23が正常であり、かつ、加速操作時で、さらに、車体加速度も増加しているときには、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進む流れとなる。つまり、ステップS6において、駆動輪がホイールスピンであるか否かが判断される。
【0038】
各車輪速センサ20,21,22,23が正常で、かつ、駆動輪にホイールスピンが発生したときは、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS8→ステップS9へと進む流れとなる。つまり、ステップS6において、駆動輪のホイールスピンが判断されると、ステップS8において、TCS制御が開始され、さらにステップS9において、スリップフラグSLIPFがSLIPF=1に書き替えられる。
【0039】
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS10→ステップS13→ステップS14→リターンへと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS10において、駆動輪ホイールスピンの発生により車体加速度が増加していない方向であることが判断されると、ステップS13での駆動輪のホイールスピン収束判断と、ステップS14でのTCS制御継続時間判断が行われる。そして、ステップS13において、駆動輪のホイールスピンが収束したと判断されると、ステップS13からステップS15へと移行し、TCS制御を終了する。
【0040】
[車輪速センサ異常時]
駆動輪である左右後輪7,8の少なくとも1輪の車輪速センサ22,23が、車輪速センサ値を高い値としてしまう異常時には、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS8→ステップS9へと進む流れとなる。つまり、ステップS6において、センサ異常により駆動輪のホイールスピンが判断されると、ステップS8において、TCS制御が開始され、さらにステップS9において、スリップフラグSLIPFがSLIPF=1に書き替えられる。
【0041】
その後、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS10へと進む流れとなり、ステップS10において、車体の加速度が定速状態あるいは加速状態を維持している場合には、ステップS10からステップS11→ステップS12へと進み、ステップS11にてTCS制御が中断されると共に、ステップS12にて駆動輪の車輪速センサが異常であると判定される。
【0042】
一方、例えば、下り坂から上り坂へ移行する走行時等で、センサ異常による駆動輪ホールスピン判断であるにもかかわらず、ステップS10において、車体の加速度が減速状態であると判断された場合には、ステップS10からステップS13→ステップS14→リターンへと進む流れが繰り返される。そして、ステップS13において、駆動輪のホイールスピンが収束していないと判断されたままで、ステップS14において、TCS制御時間Tが設定時間TOを経過すると、ステップS14からステップS11→ステップS12へと進み、ステップS11にてTCS制御が中断されると共に、ステップS12にて駆動輪の車輪速センサが異常であると判定される。
【0043】
[車輪速センサ異常判定作用]
従来の車輪速センサ異常判定装置は、4輪の各輪に設けられた車輪速センサからの車輪速平均値を演算し、エンジン回転数とギヤ比から推定車輪速を演算し、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲内であれば、車輪速センサは正常であると判定し、±20%の誤差範囲を超えていると、車輪速センサは異常であると判定している。よって、下記に列挙する問題点を有する。
【0044】
▲1▼例えば、駆動輪の1輪に設けられた車輪速センサのみが異常により、大きな車輪速センサ値を出力しているとき、残りの3輪の正常な車輪速センサ値との合計値を4で除した車輪速平均値と、推定車輪速とが±20%の誤差範囲内であれば、車輪速センサが異常であるにもかかわらず正常であると誤判定してしまう。
【0045】
▲2▼例えば、駆動輪がホイールスピンを起こした場合、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲を超えてると、車輪速センサが正常であるにもかかわらず異常であると誤判定してしまう。
【0046】
▲3▼例えば、駆動輪がブレーキ等によりロックした場合、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲を超えてると、車輪速センサが正常であるにもかかわらず異常であると誤判定してしまう。
【0047】
▲4▼例えば、駆動輪のうち、1輪の車輪速センサが大きな車輪速センサ値を出力する異常で、残りの1輪の車輪速センサが小さな車輪速センサ値を出力する異常である場合、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲内であれば、車輪速センサが異常であるにもかかわらず正常であると誤判定してしまう。
【0048】
▲5▼例えば、タイヤの空気圧低下やテンパータイヤ装着時等であって、タイヤの動的負荷半径が変化した場合、車輪速平均値と推定車輪速とが±20%の誤差範囲を超えてると、車輪速センサが正常であるにもかかわらず異常であると誤判定してしまう。
【0049】
また、ブレーキ制御を行うTCSの場合、車輪速センサの異常で車輪速が実際の値よりも高く出力され、その値がTCS制御開始しきい値を超えると、当該輪へのブレーキ制御を行ってしまう。すると、急に減速度とヨーモーメントが発生し、車両挙動が不安定となる。すなわち、車輪速センサの異常で車輪速が実際の値よりも高く出力される場合には、ブレーキ制御によるTCS作動で車両挙動不安定になるのを防止するためにも、早期に車輪速センサの異常を検出したいという要求がある。
【0050】
これに対し、第1実施例装置では、駆動輪がホイールスピンしていることを検出し(図2のステップS6にてYESとの判断)、且つ、検出される車体の加速度が増加している場合(図2のステップS10にてNOとの判断)、TCS制御を中断すると共に(図2のステップS11)、駆動輪の車輪速センサが異常であると判定(図2のステップS12)するようにしたため、駆動輪に設けられた車輪速センサの高出力による異常を精度良く早期に判定することができる。また、ステップS6での駆動輪ホイールスピン判断により、2つの左右後輪速センサ22,23のうち、異常である車輪速センサを特定することができる。
【0051】
すなわち、駆動輪が真にホイールスピンであるとき、ホイールスピンした輪から路面へ伝達される駆動力が大きく低下し、図4に示すように、車体加速度(従動輪速)としては、駆動輪のホイールスピンにより増加しない。
【0052】
一方、例えば、1つの駆動輪速センサの異常により制御上においてホイールスピンであると判断されるとき、ホイールスピンした輪から路面へ伝達される駆動力の低下がなく、図3に示すように、車体加速度(従動輪速)としては、異常発生時までの走行状態が加速状態であれば加速状態を維持するし、少なくとも定速状態を維持する。
【0053】
よって、駆動輪ホイールスピン条件と、車体加速条件(定速を含む)とを満足するとき、車輪速センサの高出力による異常と判定することができる。
【0054】
ただし、下り坂から上り坂に移行するような走行時で、上り坂に移行する地点で車輪速センサの異常により駆動輪ホイールスピンであると判断された場合、走行抵抗により車体が減速してしまうことがあり、この場合、車輪速センサの高出力による異常を判定できないことになる。
【0055】
しかしながら、駆動輪がホイールスピンしていることを検出し(図2のステップS6にてYESとの判断)、且つ、車体の加速度が小さくなっている場合(図2のステップS10にてYESとの判断)、且つ、駆動輪ホイールスピンが収束していない場合には(図2のステップS13)、ステップS14において、これらの条件を満足する状態が設定時間TO継続すると、TCS制御を中断すると共に(図2のステップS11)、駆動輪の車輪速センサが異常であると判定(図2のステップS12)するようにしたため、走行状況にかかわらず、駆動輪に設けられた車輪速センサの高出力による異常を確実に判定することができる。
【0056】
すなわち、この車輪速センサの異常判定は、車輪速センサが高出力による異常である場合には、TCS制御が実行されているにもかかわらず、車輪速センサ値が低下しないことで、車輪速の収束によるTCS制御の終了に至らず、TCS制御がそのまま継続されてしまうことになる点に着目したものであるということができる。
【0057】
次に、効果を説明する。
第1実施例の車輪速センサ異常判定装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0058】
(1) 駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサ22,23の異常を判定する車輪速センサ異常判定手段を有する車輪速センサ異常判定装置において、車体速または従動輪の車輪速センサ値と、駆動輪の車輪速センサ値とに基づいて、駆動輪がホイールスピンしているか否かを検出する駆動輪ホイールスピン検出手段と、車体の加速度を検出する車体加速度検出手段と、を設け、前記車輪速センサ異常判定手段は、駆動輪がホイールスピンしていることを検出し、且つ、検出される車体の加速度が増加している場合、車輪速センサ22,23が異常であると判定するため、駆動輪に設けられた車輪速センサの高出力による異常を精度良く早期に判定することができると共に、異常である車輪速センサを特定することができる。
【0059】
(2) 加速操作を検出するスロットル開度センサ32を設け、前記車輪速センサ異常判定手段は、スロットル開度が正の加速操作時で、しかも、車体加速度が増加しているとき、駆動輪ホイールスピンの判断を行うようにしたため、下り坂での走行時等で真に駆動輪にホイールスピンが発生した場合に、車輪速センサの高出力による異常であるとの誤判定を防止することができる。
【0060】
(3) 車輪速センサからの車輪速センサ値は、TCSでの加速スリップを監視する入力情報として用いられ、前記駆動輪ホイールスピン検出手段は、駆動輪の車輪速センサ値が駆動力低減制御開始しきい値を超えている場合に駆動輪がホイールスピンであると検出するため、車輪速センサの異常で車輪速が実際の値よりも高く出力される場合に、ブレーキ制御によるTCS作動で車両挙動不安定になるのを防止することができる。
【0061】
(4) 前記車輪速センサ異常判定手段は、TCS制御が介入した駆動輪の車輪速センサ値が所定の継続時間を経過しても低下しない場合、駆動輪の車輪速センサが異常であると判定するため、下り坂から上り坂に移行するような走行時で、上り坂に移行する地点で車輪速センサの高出力による異常が発生した場合にも確実に駆動輪の車輪速センサが異常であると判定することができる。
【0062】
以上、本発明の車輪速センサ異常判定装置を第1実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この第1実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0063】
例えば、第1実施例では、後輪駆動車への適用例を示したが、前輪駆動車や4輪駆動車にも適用することができるし、TCS搭載車以外の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の車輪速センサ異常判定装置が適用された後輪駆動車を示す全体システム図である。
【図2】第1実施例のVDC/TCS/ABSコントローラにて実行される車輪速センサ異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】加速走行中、駆動輪の1輪に設けられた車輪速センサが高出力による異常であるときの車輪速特性を示す図である。
【図4】全ての車輪速センサが正常であるとき駆動輪ホイールスピンの発生に基づきTCS制御が行われる場合の車輪速特性を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 スロットルバルブ
3 スロットルモータ
4 リヤディファレンシャル
5 左前輪
6 右前輪
7 左後輪
8 右後輪
9 ブレーキペダル
10 ブースタ
11 マスターシリンダ
12 VDC/TCS/ABSアクチュエータ
13 左前輪ホイールシリンダ
14 右前輪ホイールシリンダ
15 左後輪ホイールシリンダ
16 右後輪ホイールシリンダ
17 VDC/TCS/ABSコントローラ(駆動力低減制御システム)
18 エンジン制御コントローラ
19 A/T制御コントローラ
20 左前輪速センサ
21 右前輪速センサ
22 左後輪速センサ
23 右後輪速センサ
24 ブレーキ圧力センサ
25 横Gセンサ
26 ヨーレートセンサ
27 舵角センサ
28 VDCオフスイッチ
29 ABS警告灯
30 VDC OFF表示灯
31 SLIP表示灯
32 スロットル開度センサ(加速操作検出手段)

Claims (4)

  1. 駆動輪の車輪速を検出する車輪速センサの異常を判定する車輪速センサ異常判定手段を有する車輪速センサ異常判定装置において、
    車体速または従動輪の車輪速センサ値と、前記駆動輪の車輪速センサ値とに基づいて、前記駆動輪がホイールスピンしているか否かを検出する駆動輪ホイールスピン検出手段と、
    車体加速度を検出する車体加速度検出手段と、を設け、
    前記車輪速センサ異常判定手段は、前記駆動輪がホイールスピンしていることを検出し、且つ、検出される前記車体加速度が増加している場合、前記駆動輪の車輪速センサが異常であると判定し、
    前記車体速は、前記従動輪の車輪速に基づき算出され、
    前記車体加速度は、前記車体速に基づき算出されること
    を特徴とする車輪速センサ異常判定装置。
  2. 請求項1に記載の車輪速センサ異常判定装置において、
    加速操作を検出する加速操作検出手段を設け、
    前記車輪速センサ異常判定手段は、加速操作時で、且つ、前記車体加速度が増加しているとき、前記駆動輪ホイールスピンであると検出すること
    を特徴とする車輪速センサ異常判定装置。
  3. 請求項2に記載の車輪速センサ異常判定装置において、
    前記車輪速センサ値は、駆動力低減制御システムでの加速スリップを監視する入力情報として用いられ、
    前記駆動輪ホイールスピン検出手段は、前記駆動輪の車輪速センサ値が駆動力低減制御開始しきい値を超えている場合に前記駆動輪がホイールスピンであると検出すること
    を特徴とする車輪速センサ異常判定装置。
  4. 請求項3に記載の車輪速センサ異常判定装置において、
    前記車輪速センサ異常判定手段は、駆動力低減制御が介入した駆動輪の車輪速センサ値が所定の継続時間を経過しても低下しない場合、前記駆動輪の車輪速センサが異常であると判定すること
    を特徴とする車輪速センサ異常判定装置。
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