以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは各図の上下方向に対応したものである。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2に基づいて、第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図2は、第1実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。
サージ吸収素子SA1は、図1に示されるように、素体1、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9を備えている。素体1は、直方体形状を呈しており、例えば、長さが1mm程度に設定され、幅が0.5mm程度に設定され、高さが0.3mm程度に設定されている。第1の端子電極3と第2の端子電極5とは、素体1の長手方向の端部にそれぞれ形成されている。第3の端子電極7と外部導体9とは、素体1の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成されている。第1の端子電極3は、サージ吸収素子SA1の入力端子電極として機能する。第2の端子電極5は、サージ吸収素子SA1の出力端子電極として機能する。第3の端子電極7は、サージ吸収素子SA1のグランド端子電極として機能する。
素体1は、図2に示されるように、インダクタ部10とサージ吸収部20とを有している。素体1は、サージ吸収部20、インダクタ部10及び保護層50が下から順に積層された構造を呈している。
インダクタ部10は、相互に極性反転結合される第1の内部導体11及び第2の内部導体13を有している。インダクタ部10は、第1の内部導体11が形成されたインダクタ層15と第2の内部導体13が形成されたインダクタ層17とが積層されることにより構成されている。
第1の内部導体11の一端は、素体1の一方の端面(第1の端子電極3が形成された端面)に露出するように、インダクタ層15の一辺に引き出されている。第1の内部導体11の一端は、第1の端子電極3に物理的且つ電気的に接続されている。第2の内部導体13の一端は、素体1の他方の端面(第2の端子電極5が形成された端面)に露出するように、インダクタ層17の一辺に引き出されている。第2の内部導体13の一端は、第2の端子電極5に物理的且つ電気的に接続されている。第1の内部導体11の他端と第2の端子電極5の他端とは、素体1の同じ側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように、インダクタ層15,17の一辺にそれぞれ引き出されている。第1の内部導体11の他端と第2の端子電極5の他端とは、素体1の側面に形成された外部導体9に物理的且つ電気的に接続されている。第1の内部導体11の他端と第2の端子電極5の他端とは外部導体9を通して電気的に接続されることとなる。
第1の内部導体11と第2の内部導体13とは、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aをそれぞれ含んでいる。第1の内部導体11と第2の内部導体13とは、領域11a,13aにおいて容量結合している。第1の内部導体11と第2の内部導体13は、上記のような外部導体9ではなく、素体1内部に形成されたスルーホール導体等によって接続されてもよい。第1の内部導体11及び第2の内部導体13に含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金からなることが好ましい。
各インダクタ層15,17は、ZnOを主成分とするセラミック材料から構成されている。インダクタ層15,17を構成するセラミック材料は、ZnOのほか、添加物として希土類(例えば、Pr)、K、Na、Cs、Rb等の金属元素を含有していてもよい。なかでも、希土類を添加すると特に好ましい。希土類の添加により、インダクタ層15,17と後述するバリスタ層25,27との体積変化率の差を容易に低減することができる。また、インダクタ層15,17には、後述するサージ吸収部20との接合性の向上を目的として、Cr、CaやSiが更に含まれていてもよい。インダクタ層15,17中に含まれるこれらの金属元素は、金属単体や酸化物等の種々の形態で存在することができる。インダクタ層15,17に含まれる添加物の好適な含有量は、当該インダクタ層15,17に含まれるZnOの総量中、0.02mol%以上2mol%以下であると好ましい。これらの金属元素の含有量は、例えば、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置(ICP)を用いて測定することができる。
各インダクタ層15,17は、後述するバリスタ層25,27に含まれるCoを実質的に含有していないものである。ここで、「実質的に含有していない」状態とは、これらの元素を、インダクタ層15,17を形成する際に原料として意図的に含有させなかった場合の状態をいうものとする。例えば、サージ吸収部20からインダクタ部10への拡散等によって意図せずにこれらの元素が含まれる場合は、「実質的に含有していない」状態に該当する。なお、インダクタ層15,17は、上述した条件を満たす限り、更なる特性の向上等を目的として、その他の金属元素等を更に含んでいてもよい。
サージ吸収部20は、第1の内部電極21と第2の内部電極23とを有している。サージ吸収部20は、第1の内部電極21が形成されたバリスタ層25と第2の内部電極23が形成されたバリスタ層27とが積層されることにより構成されている。
第1の内部電極21は、ストレートライン型のパターンを有しており、バリスタ層25の短手方向に沿って伸びている。第1の内部電極21の一端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように、バリスタ層25の一辺に引き出されている。第1の内部電極21の他端は、素体1の側面(第3の端子電極7が形成された側面)に露出しておらず、当該側面から引き込まれた位置にある。第1の内部電極21の一端は、素体1の側面に形成された外部導体9に物理的且つ電気的に接続されている。第1の内部導体11の他端、第2の内部導体13の他端及び第1の内部電極21の一端は外部導体9を通して電気的に接続されることとなる。
第2の内部電極23は、ストレートライン型のパターンを有しており、バリスタ層27の短手方向に沿って伸びている。第2の内部電極23の一端は、素体1の側面(第3の端子電極7が形成された側面)に露出するように、バリスタ層27の一辺に引き出されている。第2の内部電極23の他端は、素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出しておらず、当該側面から引き込まれた位置にある。第2の内部電極23の一端は、素体1の側面に形成された第3の端子電極7に物理的且つ電気的に接続されている。
第1の内部電極21と第2の内部電極23とは、バリスタ層25,27の積層方向から見て相互に重なり合う領域21a,23aをそれぞれ含んでいる。したがって、バリスタ層25,27における第1の内部電極21と第2の内部電極23とに重なる領域21a,23aがバリスタ63特性を発現する領域として機能する。第1の内部電極21及び第2の内部電極23に含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金からなることが好ましい。
各バリスタ層25,27は、ZnOを主成分とするセラミック材料から構成されている。このセラミック材料中には、添加物として、希土類及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Coが更に含まれている。ここで、バリスタ層25,27は、希土類に加えてCoを含むことから、優れた電圧非直線特性、すなわちバリスタ特性を有するものとなるほか、高い誘電率(ε)を有するものとなる。逆に言えば、上述したインダクタ層15,17は、Coを含まないことから、バリスタ特性を有さず、また誘電率が小さく、しかも抵抗率が高いため、インダクタ部10の構成材料として極めて好適な特性を有している。バリスタ層25,27を構成するセラミック材料は、添加物としてAlを更に含んでいてもよい。Alを含む場合、バリスタ層25,27は低抵抗となる。添加物として含まれる希土類は、Prが好ましい。
これらの添加物としての金属元素は、バリスタ層25,27において、金属単体や酸化物等の形態で存在することができる。なお、バリスタ層25,27は、更なる特性の向上を目的として、添加物として上述したもの以外の金属元素等(例えば、Cr、Ca、Si、K等)を更に含有していてもよい。
第1の内部導体11は、第1の直流抵抗成分を有している。第1の直流抵抗成分は、第1の端子電極3と第1の内部電極21との間に挿入される。すなわち、第1の直流抵抗成分は、第1の端子電極3と第1の内部電極21との間に接続され、その一端が第1の端子電極3に電気的に接続されると共にその他端が第1の内部電極21に電気的に接続される。
第2の内部導体13は、第2の直流抵抗成分を有している。第2の直流抵抗成分は、第1の内部電極21と第2の端子電極5との間に挿入される。すなわち、第2の直流抵抗成分は、第1の内部電極21と第2の端子電極5との間に接続され、その一端が第1の内部電極21に電気的に接続されると共にその他端が第2の端子電極5に電気的に接続される。
第2の内部導体13が有する第2の直流抵抗成分は、第1の内部導体11が有する第1の直流抵抗成分より大きく設定されている。また、第1の直流抵抗成分と第2の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分は、0Ωより大きく7.5Ω以下に設定されている。本実施形態においては、第1の内部導体11が有する第1の直流抵抗成分は0.5Ω程度に設定され、第2の内部導体13が有する第2の直流抵抗成分は、4.5Ω程度に設定されている。したがって、第1の直流抵抗成分と第2の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分は、5Ω程度となる。
保護層50は、それぞれセラミック材料からなる層であり、インダクタ部10を保護する。保護層50の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、ZnOを主成分として含む材料が好ましい。
第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7及び外部導体9は、内部導体11,13や内部電極21,23を構成しているPd等の金属と電気的に良好に接続できる金属材料からなるものであると好ましい。例えば、Agは、Pdからなる内部導体11,13や内部電極21,23との電気的な接続性が良好であり、しかも素体1の端面に対する接着性が良好であることから、外部電極用の材料として好適である。
第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7及び外部導体9の表面には、Niめっき層(図示省略)及びSnめっき層(図示省略)等が順に形成されている。これらのめっき層は、主としてサージ吸収素子SA1をはんだリフローにより基板等に搭載する際の、はんだ耐熱性やはんだ濡れ性を向上することを目的として形成されるものである。
次に、図3及び図4に基づいて、上述した構成を有するサージ吸収素子SA1の回路構成を説明する。図3は、第1実施形態に係るサージ吸収素子の回路構成を説明するための図である。図4は、図3に示された回路構成の等価回路を示す図である。
第1の内部導体11と第2の内部導体13とは、上述したように、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aをそれぞれ含んでおり、当該領域11a,13aにおいて容量結合している。このため、サージ吸収素子SA1は、図3に示されるように、第1の内部導体11と第2の内部導体13とにより形成される容量成分61を有する。容量成分61は、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に接続されることとなる。
第1の内部導体11は、直列に接続されたインダクタンス成分と第1の直流抵抗成分62aとを有する。第2の内部導体13は、直列に接続されたインダクタンス成分と第2の直流抵抗成分62bとを有する。これにより、サージ吸収素子SA1は、図3に示されるように、第1の内部導体11と第2の内部導体13とにより形成される直流抵抗成分62(第1の直流抵抗成分62aと第2の直流抵抗成分62bとの合成抵抗成分)を有する。直流抵抗成分62は、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に電気的に接続されることとなる。第2の直流抵抗成分62bは、上述したように、第1の直流抵抗成分62aよりも大きい。
ここで、「極性反転結合」とは、図3に示されるように、第1の内部導体11に相当するインダクタンス成分の巻き始めを第1の端子電極3側とし、第2の内部導体13に相当するインダクタンス成分の巻き始めを第1の内部導体11と接続する側(本実施形態においては、外部導体9側)とした場合に、第1の内部導体11と第2の内部導体13との結合が「正」であることを意味する。すなわち、「極性反転結合」とは、第1の内部導体11に第1の端子電極3側から電流が流れ込み、第2の内部導体13に第1の内部導体11と接続する側(本実施形態においては、外部導体9側)から電流が流れ込み、第1の内部導体11に生じる磁束と第2の内部導体13に生じる磁束を互いに強めあうことを意味する。
サージ吸収素子SA1においては、第1の内部電極21と、第2の内部電極23と、バリスタ層25,27における第1の内部電極21及び第2の内部電極23に重なる領域21a,23aとにより、一つのバリスタ63が構成されることとなる。バリスタ63は、図3に示されるように、第1の内部導体11と前記第2の内部導体13との接続点(外部導体9)と前記第3の端子電極7との間に電気的に接続される。
相互に極性反転結合される第1の内部導体11及び第2の内部導体13は、図4に示されるように、第1のインダクタンス成分65、第2のインダクタンス成分67及び第3のインダクタンス成分69に変換することができる。第1のインダクタンス成分65と第2のインダクタンス成分67とは、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に直列に接続される。第3のインダクタンス成分69は、直列に接続された第1のインダクタンス成分65と第2のインダクタンス成分67との接続点とバリスタ63との間に接続される。各内部導体11,13の誘導係数をLzとし、内部導体11,13間の結合係数をKzとすると、第1のインダクタンス成分65及び第2のインダクタンス成分67の誘導係数は(1+Kz)Lzとなり、第3のインダクタンス成分69の誘導係数は−KzLzとなる。
バリスタ63は、図4に示されるように、第3のインダクタンス成分69と第3の端子電極7との間に並列接続される可変抵抗71及び浮遊容量成分73に変換することができる。可変抵抗71は、通常は抵抗値が大きく、高圧サージが印加されると抵抗値が小さくなる。バリスタ63において、小振幅の高速信号に対しては、浮遊容量成分73のみで近似することができる。
図4に示されたサージ吸収素子SA1の入力インピーダンスZinは、下記(1)式にて表される。ここで、容量成分61の容量をCsとし、バリスタ63の浮遊容量成分73の容量をCzとしている。なお、直流抵抗はインピーダンスに与える影響が小さいので、容量成分とインダクタンス成分とについての式を考察する。
(1)式において、下記(2)式を満たすように容量成分61の容量Csを設定すれば、入力インピーダンスZinは周波数特性に依存しなくなる。容量成分61の容量Csを下記(2)式に設定した上で、下記(3)式に示すように各内部導体の誘導係数Lzを設定すれば、入力インピーダンスZinは特性インピーダンスZoに整合させることができる。
上記(2)式及び(3)式からも分かるように、内部導体11,13間の結合係数Kzを任意に選べるため、柔軟性の高い回路設計が可能となる。
したがって、本実施形態によれば、サージ吸収素子SA1を、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護しつつ、高速信号に対してもインピーダンス整合に優れたサージ吸収素子とすることができる。
ところで、バリスタ63は、図5に示されるように、浮遊インダクタンス成分75も含んでいる。通常は、可変抵抗71の抵抗値が大きく、高圧サージが印加されると抵抗値が小さくなる。しかし、浮遊容量成分73及び浮遊インダクタンス成分75が存在する。このために、入力信号として高速信号を扱う半導体デバイスの入力側にサージ吸収素子SA1を付加すると、高速信号の劣化の原因となる。高速信号を扱う回路にサージ吸収素子SA1を適用するためには、浮遊容量成分73だけでなく浮遊インダクタンス成分75の影響も小さくする方が好ましい。
図4に示される等価回路からも分かるように、負性誘導係数を持つ第3のインダクタンス成分69を利用すると、バリスタ63の浮遊インダクタンス成分75をキャンセルすることができる。ただし、見かけ上、結合が小さくなった状態と同じになるため、結合係数Kzと誘導係数Lzはそのままで、容量成分61の容量Csを下記(4)式とする。ここで、浮遊インダクタンス成分75の誘導係数をLeとしている。
ただし、KzLz≧Leである。このように設計すると、サージ吸収素子SA1に浮遊容量成分73と浮遊インダクタンス成分75が含まれていても、入力インピーダンスZinを特性インピーダンスZoに整合させることができる。
次に、図6を参照して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1を製造する方法について説明する。図6は、第1実施形態に係るサージ吸収素子を製造する工程を説明するためのフロー図である。
サージ吸収素子SA1の製造においては、まず、インダクタ層15,17、及び、バリスタ層25,27の原料となるセラミック材料を含むペーストを製造する(ステップS101)。具体的には、バリスタ層25,27形成用のペーストは、主成分であるZnOに対し、添加物として、希土類(例えば、Pr)及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素、Coのほか、必要に応じてAl、Cr、Ca、Si、K等を、焼成後に所望の含有量となるように加え、これらのバインダー等を添加して混合することにより調製することができる。この場合の金属元素は、例えば、酸化物として添加することができる。
インダクタ層15,17形成用のペーストは、主成分であるZnOに対し、必要に応じて、添加物として希土類、Bi等の金属元素を加え、更にこれらにバインダー等を添加して混合することによって調製可能である。インダクタ層15,17形成用のペーストには、バリスタ層25,27形成用のペーストとは異なり、Coは添加しない。上記金属元素は、例えば、酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩等の化合物の形態で添加することができる。これらの添加量は、後述するような焼成を行った後の素体1において、金属元素が上述したような所望の含有量となるように調整する。
これらのペーストを、プラスチックフィルム等の上にドクターブレード法等により塗布した後に乾燥させ、セラミック材料からなるグリーンシートを形成する(ステップS102)。これにより、インダクタ層15,17形成用のグリーンシート(以下、「インダクタシート」という)、及び、バリスタ層25,27形成用のグリーンシート(以下、「バリスタシート」という)を、それぞれ所要の枚数ずつ得る。上記グリーンシートの形成において、プラスチックフィルム等は、塗布・乾燥後すぐに各シートから剥離してもよく、後述する積層の直前に剥離してもよい。また、このグリーンシートの形成工程においては、これらのシートとともに、上記と同様の方法でZnOを含む保護層50形成用のグリーンシートを形成する。
次に、インダクタシート又はバリスタシートの上に、第1及び第2の内部導体11,13又は第1及び第2の内部電極21,23を形成するための導体ペーストを、それぞれのシートに対して所望のパターンとなるようにスクリーン印刷する(ステップS103)。これにより、所望のパターンを有する導体ペースト層が設けられた各シートを得る。ここで、第1及び第2の内部導体11,13を得るための所望のパターンを有する導体ペースト層は、後の工程で焼成されることにより得られる第1及び第2の内部導体11,13がそれぞれ上述した所望の直流抵抗成分を有するように、形成される。導体ペーストとしては、例えばPdやAg−Pd合金を主成分として含む導体ペーストが挙げられる。
続いて、第1及び第2の内部電極21,23にそれぞれ対応する導体ペースト層が設けられたバリスタシートを順次積層する(ステップS104)。続いて、この上に、第1及び第2の内部導体11,13にそれぞれ対応する導体ペースト層が設けられたインダクタシートを順次積層する(ステップS105)。さらに、これらの積層構造の上に、保護層50形成用のグリーンシートを更に重ね、これらを圧着することにより、素体1の前駆体である積層体を得る。
その後、得られた積層体を、所望のサイズとなるようにチップ単位に切断した後、このチップを、所定温度(例えば、1000〜1400℃)で焼成して、素体1を得る(ステップS106)。続いて、得られた素体1の表面からその内部にLiを拡散させる。ここでは、得られた素体1の表面にLi化合物を付着させた後、熱処理等を行う。Li化合物の付着には、密閉回転ポットを用いることができる。Li化合物としては、特に限定されないが、熱処理することによりLiが素体1の表面から第1及び第2の内部導体11,13や第1及び第2の内部電極21,23の近傍にまで拡散できる化合物であり、例えば、Liの酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩及びシュウ酸塩等が挙げられる。なお、サージ吸収素子SA1の製造において、このLi拡散の工程は必ずしも必須ではない。
そして、このLi拡散された素体1の側面に、銀を主成分とするペーストを転写した後に焼き付けた後、更にめっきを施すことによって、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9をそれぞれ形成し、サージ吸収素子SA1を得る(ステップS107)。めっきは、電気めっきにより行うことができ、例えば、CuとNiとSn、NiとSn、NiとAu、NiとPdとAu、NiとPdとAg、又は、NiとAg等を用いることができる。
以上のように、本第1実施形態では、インダクタ部10が相互に極性反転結合される第1の内部導体11及び第2の内部導体13を有している。このため、サージ吸収部20の浮遊容量成分73に対してインダクタ部10の誘導係数を適切に設定することにより、浮遊容量成分73の影響をキャンセルすることが可能となる。この結果、広帯域にわたって周波数特性の平坦な入力インピーダンスを実現することができる。
また、本第1実施形態では、第1の直流抵抗成分62aと該第1の直流抵抗成分62aよりも大きい第2の直流抵抗成分62bとを有する抵抗部を更に備えている。これにより、サージ吸収素子SA1、特に、サージ吸収部20(バリスタ63)と第2の端子電極5との間の回路部分のインピーダンスが比較的大きくなる。このため、サージ吸収部20(バリスタ63)と第2の端子電極5との間の回路部分は、人体と電子機器の端子が接触した場合等に発生する静電気パルスの高周波成分に対して、ICやLSI等の被保護素子よりも相対的に高インピーダンスとなる。この結果、第2の端子電極5に被保護素子を接続した場合、静電気パルスの被保護素子への通過を抑制し、静電気パルスを効果的にサージ吸収部20(バリスタ63)へ導くことができ、サージ吸収素子によるESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)の保護レベルを高めることができる。
また、本第1実施形態では、第1の直流抵抗成分62aと第2の直流抵抗成分62bとの合成直流抵抗成分が、0Ωより大きく7.5Ω以下に設定されている。これにより、HDMI等の差動伝送方式の伝送線路にサージ吸収素子SA1を挿入した場合でも、インピーダンス整合を図ることができる。
また、本第1実施形態では、第1の直流抵抗成分62aが第1の内部導体11により形成され、第2の直流抵抗成分62bが第2の内部導体13により形成される。この場合、抵抗部を構成するための抵抗体等を別途設ける必要がなく、素子SA1の構成が簡素化されると共に、素子SA1の小型化を図ることができる。そして、本第1実施形態では、第1の内部導体11が有する第1直流抵抗成分62aと第2の内部導体13の第2の直流抵抗成分62bとの合成直流抵抗成分が、0Ωより大きく7.5Ω以下に設定されている。
また、本第1実施形態では、容量成分61を有するキャパシタ部を更に備えることとなる。これにより、サージ吸収部20の浮遊容量成分73に対してインダクタ部10の誘導係数とキャパシタ部40の容量成分61の容量とを柔軟に設定することができる。
本第1実施形態のサージ吸収素子SA1は、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護しつつ、高速信号に対してもより一層インピーダンス整合に優れたサージ吸収素子SA1とすることができる。
本第1実施形態において、キャパシタ部40が有する容量成分61は、第1の内部導体11と第2の内部導体13とにより形成されている。これにより、キャパシタ部40を構成するための内部電極等を別途設ける必要がなく、素子の構成が簡素化されると共に、素子の小型化を図ることができる。
本第1実施形態において、インダクタ部10は、第1の内部導体11が形成されたインダクタ層15と第2の内部導体13が形成されたインダクタ層17とが積層されることにより構成され、第1の内部導体11と第2の内部導体13とは、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13aを含んでいる。これにより、第1の内部導体11と第2の内部導体13とにおける、インダクタ層15,17の積層方向から見て相互に重なり合う領域11a,13a同士が容量結合し、当該領域11a,13a同士により上述した容量成分61が形成されることとなる。これにより、キャパシタ部を構成するための内部電極等を別途設ける必要がなく、サージ吸収素子SA1の構成が簡素化されると共に、サージ吸収素子SA1の小型化を図ることができる。
本第1実施形態において、サージ吸収部20は、第1の内部電極21が形成されたバリスタ層25と第2の内部電極23が形成されたバリスタ層27とが積層されることにより構成され、第1の内部電極21と第2の内部電極23とは、バリスタ層25,27の積層方向から見て相互に重なり合う領域を含んでいる。これにより、サージ吸収部20をバリスタ63により構成することができる。
本第1実施形態において、インダクタ部10を構成するインダクタ層15,17及びサージ吸収部20を構成するバリスタ層25,27が、ともにZnOを主成分とするセラミック材料から形成されている。このため、インダクタ部10とサージ吸収部20とでは、焼成時に生じる体積変化の差が極めて小さい。したがって、これらを同時に焼成したとしても、両者の間にひずみや応力等が発生し難い。その結果、得られたサージ吸収素子SA1は、インダクタ部10とサージ吸収部20とが異なる材料により形成された従来のサージ吸収素子SA1と比較して、両者の剥離が極めて生じ難いものとなる。
インダクタ層15,17は、上述の如く、ZnOを主成分とし、添加物としてCoを実質的に含有しないセラミック材料から構成される。このような材料は、インダクタの構成材料として十分な程度に高い抵抗率を有している。具体的には、インダクタ材料として好適な1MΩを超える抵抗率を有するものとなり易い。このため、インダクタ部10は、単独では抵抗率の点で特性が不十分であったZnOを主成分として含んでいるにもかかわらず、優れたインダクタ特性を発揮し得るものとなる。
本第1実施形態において、第1の内部導体11の他端、第2の内部導体13の他端、及び第1の内部電極21は、外部導体9を通して接続されている。これにより、第1の内部導体11の他端、第2の内部導体13の他端、及び第1の内部電極21を容易且つ確実に接続することができる。
第1の内部導体11の第1の直流抵抗成分62a及び第2の内部導体13の第2の直流抵抗成分62bを上述した所望の値に調整する手法としては、以下のものが存在する。第1及び第2の内部導体11,13の幅、厚み、又は線長等を調整する。第1及び第2の内部導体11,13を形成するための導体ペーストに含まれる金属材料を選択して、抵抗率を調整する。上記導体ペーストに含まれる金属材料の配合比率を調整する、あるいは、金属材料の粒度を調整することにより、第1及び第2の内部導体11,13の密度を調整する。
(第2実施形態)
次に、図7及び図8に基づいて、第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2の構成を説明する。図7は、第2実施形態に係るサージ吸収素子を示す概略斜視図である。図8は、第2実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2は、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1の内部導体11、第2の内部導体13、第1の内部電極21、第2の内部電極23、及び外部導体9の数に関して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1と相違する。
サージ吸収素子SA2は、図7に示されるように、素体1を備えている。素体1は、直方体形状を呈しており、例えば、長さが1.4mm程度に設定され、幅が1.0mm程度に設定され、高さが0.5mm程度に設定されている。サージ吸収素子SA2は、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)備えている。第1の端子電極3と第2の端子電極5と第3の端子電極7とは、素体1の側面に互いに対向するようにそれぞれ形成されている。外部導体9は、素体1の長手方向の端部にそれぞれ形成されている。
インダクタ部10は、図8に示されるように、相互に極性反転結合される第1の内部導体11及び第2の内部導体13をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)有している。第1の内部導体11同士は、インダクタ層15上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。第2の内部導体13同士は、インダクタ層17上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。
各第2の内部導体13の直流抵抗成分は各第1の内部導体11の直流抵抗成分よりも大きい。各第1の内部導体11の直流抵抗成分と各第2の内部導体13の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分は0Ωより大きく7.5Ω以下にそれぞれ設定されている。サージ吸収素子SA2では、インダクタ部10は、0Ωより大きく15Ω以下の直流抵抗成分を有することとなる。本実施形態においては、各第1の内部導体11の直流抵抗成分は0.5Ω程度に設定され、各第2の内部導体13の直流抵抗成分も4.5Ω程度に設定されている。したがって、サージ吸収素子SA2では、インダクタ部10は、10Ω程度の直流抵抗成分を有することとなる。
サージ吸収部20は、図8に示されるように、第1の内部電極21及び第2の内部電極23をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)有している。
第1の内部電極21同士は、バリスタ層25上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。各第1の内部電極21は、第1の電極部分31と、第2の電極部分33とを含んでいる。第1の電極部分31は、バリスタ層25,27の積層方向から見て、後述する第2の内部電極23の第1の電極部分35と互いに重なり合う。第1の電極部分31は、略矩形状を呈している。第2の電極部分33は、第1の電極部分31から素体1の側面(外部導体9が形成された側面)に露出するように引き出されており、引き出し導体として機能する。各第1の電極部分31は、第2の電極部分33を通して外部導体9に電気的に接続されている。第2の電極部分33は、第1の電極部分31と一体に形成されている。
各第2の内部電極23は、第1の電極部分35と、第2の電極部分37とを含んでいる。第1の電極部分35は、バリスタ層25,27の積層方向から見て第1の内部電極21の第1の電極部分31と互いに重なるように形成される。第1の電極部分35は、略矩形状をそれぞれ呈している。第2の電極部分37は、各第1の電極部分35から素体1の両側面(第3の端子電極7が形成された両側面)に露出するようにそれぞれ引き出されており、引き出し導体として機能する。各第1の電極部分35は、第2の電極部分37を通して第2の端子電極5に電気的に接続されている。第2の電極部分37は、第1の電極部分35と一体に形成されている。
第2の内部電極23同士は、図9に示されるように、バリスタ層27上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有していてもよい。この場合、各第2の電極部分37は、図8に示されるように、各第1の電極部分35から素体1の側面(第3の端子電極7が形成された側面)に露出するようにそれぞれ引き出される。
サージ吸収部20においては、第1の電極部分31と、第1の電極部分35と、バリスタ層25,27における第1の電極部分31及び第1の電極部分35に重なる領域とにより、一つのバリスタが構成されることとなる。
以上のように、本第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護することができると共に、高速信号に対するインピーダンス整合がより一層優れることとなる。
また、本第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、静電気パルスの被保護素子への通過を抑制し、静電気パルスを効果的にサージ吸収部20(バリスタ63)へ導くことができ、サージ吸収素子SA2によるESDの保護レベルを高めることができる。
本第2実施形態においては、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1の内部導体11、第2の内部導体13、第1の内部電極21、及び第2の内部電極23をそれぞれ複数有している。これにより、アレイ状とされたサージ吸収素子SA2を実現することができる。
(第3実施形態)
次に、図10に基づいて、第3実施形態に係るサージ吸収素子の構成を説明する。図10は、第3実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。第3実施形態に係るサージ吸収素子は、キャパシタ部40の構成に関して第1実施形態に係るサージ吸収素子SA1と相違する。
第3実施形態のサージ吸収素子は、図1に示されたサージ吸収素子SA1と同じく、素体1、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9を備えている。素体1は、図10に示されるように、インダクタ部10、サージ吸収部20及びキャパシタ部40を有している。素体1は、サージ吸収部20、インダクタ部10、キャパシタ部40及び保護層50が下から順に積層された構造を呈している。
各第2の内部導体13の直流抵抗成分は各第1の内部導体11の直流抵抗成分よりも大きい。各第1の内部導体11の直流抵抗成分と各第2の内部導体13の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分は0Ωより大きく7.5Ω以下にそれぞれ設定されている。第3実施形態に係るサージ吸収素子では、インダクタ部10は、0Ωより大きく15Ω以下の直流抵抗成分を有することとなる。本実施形態においては、各第1の内部導体11の直流抵抗成分は0.5Ω程度に設定され、各第2の内部導体13の直流抵抗成分も4.5Ω程度に設定されている。したがって、第3実施形態に係るサージ吸収素子では、インダクタ部10は、10Ω程度の直流抵抗成分を有することとなる。
キャパシタ部40は、第3の内部電極41と第4の内部電極43とを有している。キャパシタ部40は、第3の内部電極41が形成された絶縁体層45と第4の内部電極43が形成された絶縁体層47とが積層されることにより構成されている。
第3の内部電極41は、第1の電極部分41aと、第2の電極部分41bとを含んでいる。第1の電極部分41aは、絶縁体層45,47の積層方向から見て、後述する第4の内部電極43の第1の電極部分43aと互いに重なり合う。第1の電極部分41aは、略矩形状を呈している。第2の電極部分41bは、第1の電極部分41aから素体1の一方の端面(第1の端子電極3が形成された端面)に露出するように引き出されており、引き出し導体として機能する。第1の電極部分41aは、第2の電極部分41bを通して第1の端子電極3に電気的に接続されている。第2の電極部分41bは、第1の電極部分41aと一体に形成されている。
第4の内部電極43は、第1の電極部分43aと、第2の電極部分43bとを含んでいる。第1の電極部分43aは、絶縁体層45,47の積層方向から見て、第3の内部電極41の第1の電極部分41aと互いに重なり合う。第1の電極部分43aは、略矩形状を呈している。第2の電極部分43bは、第1の電極部分43aから素体1の他方の端面(第2の端子電極5が形成された端面)に露出するように引き出されており、引き出し導体として機能する。第1の電極部分43aは、第2の電極部分43bを通して第2の端子電極5に電気的に接続されている。第2の電極部分43bは、第1の電極部分43aと一体に形成されている。
第3の内部電極41の第1の電極部分41aと第4の内部電極43の第1の電極部分43aとは容量結合しており、第3の内部電極41と第4の内部電極43とにより容量成分61が形成される。これにより、キャパシタ部40が、第1の端子電極3と第2の端子電極5との間に接続された容量成分61を有することとなる。
各絶縁体層45,47は、それぞれセラミック材料からなる層である。絶縁体層45,47の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、ZnOを主成分として含む材料が好ましい。
以上のように、本第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護することができると共に、高速信号に対するインピーダンス整合がより一層優れることとなる。
また、本第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、静電気パルスの被保護素子への通過を抑制し、静電気パルスを効果的にサージ吸収部20(バリスタ63)へ導くことができ、サージ吸収素子SA3によるESDの保護レベルを高めることができる。
(第4実施形態)
次に、図11に基づいて、第4実施形態に係るサージ吸収素子の構成を説明する。図11は、第4実施形態に係るサージ吸収素子に含まれる素体の構成を説明するための分解斜視図である。第4実施形態に係るサージ吸収素子は、インダクタ部10及びサージ吸収部20の構成に関して第2実施形態に係るサージ吸収素子SA2と相違する。
第4実施形態のサージ吸収素子は、図7に示されたサージ吸収素子SA2と同じく、素体1、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、及び外部導体9をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)備えている。
インダクタ部10は、第1の内部導体11が形成されたインダクタ層15と第2の内部導体13が形成されたインダクタ層17とをそれぞれ複数(本実施形態においては、2層)備えている。インダクタ部10は、インダクタ層15とインダクタ層17とが一層ずつ対になるように積層されることにより構成されている。
各第2の内部導体13の直流抵抗成分は各第1の内部導体11の直流抵抗成分よりも大きい。各第1の内部導体11の直流抵抗成分と各第2の内部導体13の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分は0Ωより大きく7.5Ω以下にそれぞれ設定されている。第4実施形態に係るサージ吸収素子では、インダクタ部10は、0Ωより大きく15Ω以下の直流抵抗成分を有することとなる。本実施形態においては、各第1の内部導体11の直流抵抗成分は0.5Ω程度に設定され、各第2の内部導体13の直流抵抗成分も4.5Ω程度に設定されている。したがって、第4実施形態に係るサージ吸収素子では、インダクタ部10は、10Ω程度の直流抵抗成分を有することとなる。
インダクタ部10は、内部導体が形成されていない複数(本実施形態においては、2層)の絶縁体層(ダミー層)19を備えている。絶縁体層19は、インダクタ層15及びインダクタ層17により構成される第1のインダクタ層対と、インダクタ層15及びインダクタ層17により構成される第2のインダクタ層対との間に位置する。絶縁体層19は、第1のインダクタ層対を構成するインダクタ層17に形成された第2の内部導体13と、第2のインダクタ層対を構成するインダクタ層15に形成された第1の内部導体11との極性反転結合を抑制するための層である。絶縁体層19の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、インダクタ層15,17と、同様にZnOを主成分として含む材料が好ましい。
インダクタ部10の下にも、内部導体が形成されていない複数(本実施形態においては、2層)の絶縁体層(ダミー層)51が位置している。第1のインダクタ層対を構成するインダクタ層15とインダクタ層17との間に、内部導体が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。また、第2のインダクタ層対を構成するインダクタ層15とインダクタ層17との間に、内部導体が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。
第4実施形態のサージ吸収素子では、第2実施形態のサージ吸収素子SA2と比較して、素体1の長さ及び幅が同じ、すなわちインダクタ層15,17の面積が同じである場合、第1の内部導体11及び第2の内部導体13によるコイル面積が大きく設定することが可能となる。この結果、第4実施形態のサージ吸収素子では、第2実施形態のサージ吸収素子SA2に比して、誘導係数(インダクタンス値)を大きくすることができる。
サージ吸収部20は、第1の内部電極21及び第2の内部電極23をそれぞれ複数(本実施形態においては、2つ)有している。インダクタ部10とサージ吸収部20との間には、内部導体が形成されていない複数の絶縁体層(ダミー層)が位置している。また、サージ吸収部20の上下には、サージ吸収部20を挟むように、内部導体が形成されていない複数の絶縁体層(ダミー層)28,29がそれぞれ位置している。絶縁体層28,29の構成材料は特に限定されず、種々のセラミック材料等を適用可能であるが、上述した積層構造との剥離を低減する観点からは、バリスタ層25,27と、同様にZnOを主成分として含む材料が好ましい。バリスタ層25とバリスタ層27との間に、内部導体が形成されていない絶縁体層(ダミー層)が位置していてもよい。
第1の内部電極21同士は、バリスタ層25上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。第2の内部電極23同士は、バリスタ層27上において、互いに電気的に絶縁されるように所定の間隔を有している。各第1の内部電極21は、第1の電極部分31と、第2の電極部分33とを含んでいる。各第2の内部電極23は、第1の電極部分35と、第2の電極部分37とを含んでいる。第1の電極部分31は、バリスタ層25,27の積層方向から見て、第1の電極部分35と互いに重なり合う。第1の電極部分31と第1の電極部分35とは、略台形状をそれぞれ呈している。
第4実施形態のサージ吸収素子では、第2実施形態のサージ吸収素子SA2と比較して、第1の電極部分31と第1の電極部分35とが互いに重なり合う部分の面積が大きく設定されている。これにより、等価直列抵抗(ESR)化及び等価直列インダクタンス(ESL)化を図ることができる。第1の内部電極21同士の上記所定の間隔は、第1の内部電極21同士間のクロストークを考慮し、当該クロストークの発生を抑制し得る値に設定される。第2の内部電極23同士の上記所定の間隔も、第2の内部電極23同士間のクロストークを考慮し、当該クロストークの発生を抑制し得る値に設定される。
以上のように、本第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、半導体デバイス等を高圧の静電気から保護することができると共に、高速信号に対するインピーダンス整合がより一層優れることとなる。
また、本第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、静電気パルスの被保護素子への通過を抑制し、静電気パルスを効果的にサージ吸収部20(バリスタ63)へ導くことができ、サージ吸収素子によるESDの保護レベルを高めることができる。
本第4実施形態においては、第1の端子電極3、第2の端子電極5、第3の端子電極7、第1の内部導体11、第2の内部導体13、第1の内部電極21、及び第2の内部電極23をそれぞれ複数有している。これにより、アレイ状とされたサージ吸収素子を実現することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
第1の内部導体11及び第2の内部導体13の直流抵抗成分は、上述した値に限られることなく、第2の内部導体13の直流抵抗成分が第1の内部導体11の直流抵抗成分よりも大きいと共に、第1の内部導体11の直流抵抗成分と第2の内部導体13の直流抵抗成分との合成直流抵抗成分が0Ωより大きく7.5Ω以下であればよい。第1の内部導体11の直流抵抗成分は、0Ωであってもよい。
上述した実施形態では、第1の直流抵抗成分62aが第1の内部導体11により形成され、第2の直流抵抗成分62bが第2の内部導体13とにより形成されているが、これに限られない。例えば、第1の直流抵抗成分62aを第1の内部導体11に直列接続される抵抗体により形成してもよく、第2の直流抵抗成分62bを第2の内部導体13に直列接続される抵抗体により形成してもよい。
本発明のサージ吸収素子は、上述した等価回路やこれと同等の機能を有するものを構成できれば、その積層構造や電極等の形成位置を任意に変化させることができる。すなわち、上述した実施形態ではサージ吸収部20の上にインダクタ部10が設けられた構造を例示したが、例えば、一対のサージ吸収部20の間にインダクタ部10が挟まれた構造としてもよい。また、端子電極3〜7及び外部導体9の位置関係は任意に変更してもよい。これらの構造を有する場合であっても、上述したような効果に優れるサージ吸収素子SA1が得られる。
本実施形態では、サージ吸収部20としてバリスタ63を用いるようにしているが、これに限られない。サージ吸収部20として、コンデンサ、PN接合(例えば、ツェナーダイオードや、シリコンサージクランパ等)、ギャップ放電素子等を用いるようにしてもよい。
インダクタ部10、サージ吸収部20、キャパシタ部40及び保護層50の各積層数は、必ずしも上述した実施形態に限定されない。すなわち、例えば、内部導体が形成されたインダクタ層15,17を繰り返し積層することで、コイルパターンにおけるターン数を更に増加させてもよい。また、内部電極が形成されたバリスタ層25,27を更に繰り返して積層してもよい。これらの積層数は、所望とするサージ吸収素子の特性にあわせて適宜調整することができる。
ところで、サージ吸収素子のインダクタ部10において内部導体を積層していると、インダクタ層15,17を構成する材料が高誘電率を有する場合、積層方向に隣り合う内部導体が結合して、当該内部導体間に寄生容量が生じることになる。したがって、インダクタ部10において内部導体を積層した構成のものでは、特に、高周波用途への適用が困難な傾向にある。このような観点から、インダクタ層15,17は、その誘電率が低い方が好ましく、具体的には、比誘電率が50以下であると好ましい。
1…素体、3…第1の端子電極、5…第2の端子電極、7…第3の端子電極、9…外部導体、10…インダクタ部、11…第1の内部導体、13…第3の内部導体、15,17…インダクタ層、20…サージ吸収部、21…第1の内部電極、23…第2の内部電極、25,27…バリスタ層、40…キャパシタ部、41…第3の内部電極、43…第4の内部電極、45,47…絶縁体層、50…保護層、62a…第1の直流抵抗成分、62b…第2の直流抵抗成分、63…バリスタ、SA1,SA2…サージ吸収素子。