<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成の概略が正面断面図によって示されている。また、図2にはウエビング巻取装置10を適用した運転席44D側のシートベルト装置12の概略が正面図によって示されており、図3にはウエビング巻取装置10を適用した助手席44P側のシートベルト装置12の概略が正面図によって示されている。
図1に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム20を備えている。フレーム20は平板状の背板22を備えており、背板22がボルト等の図示しない締結手段によって、例えば、車両24のセンターピラー26(図2及び図3参照)の下端部近傍にて車体に固定され、これにより、本ウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる。
背板22の幅方向両端からは、略車両前後方向に互いに対向した一対の脚板28、30が互いに平行に延出されている。これらの脚板28、30間には略円筒形状のスプール32が配置されている。
スプール32は軸方向が脚板28、30の対向方向とされており、自らの軸周りに回転可能とされている。また、スプール32には長尺帯状のウエビングベルト34の長手方向基端部が係止されている。
ウエビングベルト34はスプール32がその軸周り一方である巻取方向に回転することでスプール32の外周部に基端側から層状に巻き取られて収納される。さらに、ウエビングベルト34を先端側から引っ張れば、スプール32に巻き取られたウエビングベルト34が引き出され、これに伴い、巻取方向とは反対の引出方向にスプール32が回転する。
図2及び図3に示されるように、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10が車両24の運転席44D用又は助手席44P用として適用されるのであれば、ウエビングベルト34は車両24のセンターピラー26に沿って略車両上方側へ引き出されている。また、センターピラー26の上端部近傍には、ウエビング巻取装置10と共にシートベルト装置12を構成するショルダアンカ36が車体に取り付けられている。ショルダアンカ36にはウエビングベルト34の通過が可能な程度のスリット孔38が形成されており、スプール32から引き出されたウエビングベルト34は、スリット孔38を通過して略車両下方へ折り返されている。
さらに、図2及び図3に示されるように、ウエビング巻取装置10の近傍では車体にアンカプレート40が取り付けられており、ウエビングベルト34の先端部がアンカプレート40に係止されている。
また、アンカプレート40に係止されたウエビングベルト34の先端部と、ショルダアンカ36でのウエビングベルト34の折り返し部分との間には、タングプレート42が、ウエビングベルト34に沿って所定範囲変位可能に設けられている。さらに、車両24の座席44を介してウエビング巻取装置10やアンカプレート40の反対側にはウエビング保持手段としてのバックル装置46が設けられている。
バックル装置46は、タングプレート42の先端側が入り込み可能に設けられており、タングプレート42が先端側からバックル装置46の内部に入り込むと、バックル装置46の内部に設けられたラッチ(図示省略)がタングプレート42に係合して、バックル装置46から抜け出る方向へのタングプレート42の移動を規制する構造になっている。
一方、図1に示されるように、スプール32の内側にはトーションシャフト48がスプール32に対して同軸的に設けられている。さらに、スプール32の軸方向に沿った脚板28側の端部には嵌合孔50が形成されている。嵌合孔50は断面形状がスプール32に対して略同軸の略円形で、しかも、嵌合孔50は軸方向一端側へ向けて段階的に内径寸法が大きくなる段付き形状とされている。
一方、スプール32の軸方向一端側には、ロック機構52が設けられている。ロック機構52はロックベース54を備えている。ロックベース54は嵌合部56を備えている。
嵌合部56は嵌合孔50の内周形状に対応してスプール32の軸方向他端側(脚板30側)へ向けて段階的に外形寸法が小さくなる略円柱形状に形成されている。嵌合部56は嵌合孔50の内側でスプール32に対して同軸的に相対回転可能に嵌合孔50に嵌め込まれていると共に、脚板28側のトーションシャフト48の端部48Aが同軸的且つ一体的に連結されている。
また、ロック機構52はケース58を備えている。ケース58は脚板28の外側(すなわち、脚板30とは反対側)に設けられており、脚板28にねじ等の締結手段や嵌合爪等の嵌合手段等により脚板28に一体的に固定されている。このケース58の内側には、図示しないラチェットギヤや圧縮コイルスプリング等のロック機構52を構成する部材、更には、ロックベース54を直接又は間接的に巻取方向に付勢する渦巻きばね等が収容されている。
ケース58内のラチェットギヤは、スプール32及びロックベース54に対して同軸的且つ相対回転自在にロックベース54に軸支されている。また、ケース58内の圧縮コイルスプリングはその一端がラチェットギヤに係止されており他端はロックベース54に係止されている。
ロックベース54が回転して圧縮コイルスプリングを圧縮し、又は引っ張ることで圧縮コイルスプリングの付勢力が増加すると、圧縮コイルスプリングがその付勢力でラチェットギヤをロックベース54の回転方向へ付勢してラチェットギヤをロックベース54に追従回転させる構造になっている。
また、ラチェットギヤには、ロックベース54に取り付けられたロックプレート60が係合しており、引出方向に回転しようとするロックベース54に対してラチェットギヤが追従できない場合(すなわち、ラチェットギヤがロックベース54に対して相対的に巻取方向へ回転した場合)には、ロックプレート60がラチェットギヤに誘導されてスプール32の回転半径方向外方へ移動し、脚板28に形成されている内歯のラチェット歯62に噛み合う。これにより、ロックベース54、ひいては、スプール32の引出方向への回転を規制する。
また、ラチェットギヤの半径方向下方には、図示しないロック機構52用の加速度センサが配置されている。この加速度センサは、ラチェットギヤに対して接離移動可能な係合爪と、係合爪のラチェットギヤとは反対側に設けられた鋼球と、鋼球が載置された略皿状の載置部と、を含めて構成されている。
ロック機構52用の加速度センサは、車両24急減速状態で鋼球が載置部上で転動すると鋼球が係合爪を押し上げてラチェットギヤに接近移動させ、係合爪をラチェットギヤに係合させてラチェットギヤの回転を規制する。
上記のように、ラチェットギヤは圧縮コイルスプリングの付勢力によってロックベース54に追従して回転するが、加速度センサの係合爪がラチェットギヤに噛み合うことでラチェットギヤの回転が規制されると、ラチェットギヤとロックベース54との間で相対回転が生じる。これにより、上記のように、ロックプレート60がラチェット歯62に噛み合う。
一方、トーションシャフト48の脚板30側の端部48Bにはスリーブ82が設けられている。スリーブ82は、脚板28側へ向けて開口した有底筒形状に形成されており、その内側にトーションシャフト48の端部48Bが入り込んでトーションシャフト48とスリーブ82とが同軸的且つ一体的に連結されている。
スプール32にはスリーブ82に対応して円孔84が形成されている。スリーブ82は円孔84に嵌挿されてスプール32に対して同軸的且つ一体的に連結されている。
スリーブ82のトーションシャフト48とは反対側の端面からは軸部86がトーションシャフト48及びスプール32に対して同軸的に延出されている。軸部86は脚板30に形成された円孔88を貫通して脚板30の外側に突出している。
また、脚板30の外側には、クラッチフレーム90がねじ等の締結手段や嵌合爪等の固定手段によって脚板30に一体的に取り付けられている。クラッチフレーム90の内側には規制手段としてのクラッチ92が収容されている。クラッチ92はリング状のウオームホイール94を備えている。ウオームホイール94は軸部86に対して同軸的に配置されている。
さらに、ウオームホイール94の内側には1乃至複数のパウルが設けられている。パウルはウオームホイール94の回転中心から偏心した位置でウオームホイール94に機械的に連結されており、ウオームホイール94と共に軸部86周りに回転する。また、パウルはウオームホイール94との連結部分にて軸部86と平行な軸周りにウオームホイール94に対して回動可能とされている。
さらに、ウオームホイール94の軸心部分には図示しないアダプタが設けられている。このアダプタは軸部86に対して同軸的且つ一体的に連結されており、軸部86、ひいてはスプール32と共に一体的に回転する。
また、このアダプタの外周部にはラチェット歯が形成されており、上記のパウルが回動するとパウルの先端がアダプタの外周部のラチェット歯に係合する。この係合状態では、ウオームホイール94がパウル及びアダプタを介して軸部86が機械的に連結され、巻取方向へのウオームホイール94の回転がパウル及びアダプタを介して軸部86に伝わり、軸部86を巻取方向に回転させる構造になっている。
一方、図1に示されるように、スプール32の下方には駆動手段としてのモータ100が設けられている。モータ100は出力軸102が平面視で略凹形状となるフレーム20の開口方向側、すなわち、背板22からの脚板28、30の延出方向側とされており、その先端側は上記のクラッチフレーム90とは別の図示しないギヤケースに入り込んでいる。
このギヤケースの内部には平歯のギヤ104が収容されている。ギヤ104は出力軸102に対して同軸的且つ一体的に取り付けられている。ギヤケース内におけるギヤ104の回転半径方向側方にはギヤ104よりも十分に歯数が多い平歯のギヤ106が配置されている。
ギヤ106は回転軸108がギヤ104と同方向とされており、ギヤ104に噛み合っている。また、ギヤ106にはギヤ106よりも歯数が十分に少ない平歯のギヤ110が同軸的且つ一体的に形成されている。
さらに、ギヤケース内におけるギヤ110の回転半径方向側方にはギヤ110よりも十分に歯数が多い平歯のギヤ112が配置されている。
ギヤ112は回転軸114がギヤ104〜112と同方向とされており、ギヤ110に噛み合っている。また、ギヤ112の回転軸114はギヤケースを突出して更にクラッチフレーム90内に入り込んでいる。
クラッチフレーム90内では回転軸114にウオームギヤ116が回転軸114に対して同軸的且つ一体的に設けられている。ウオームギヤ116は上記のウオームホイール94に噛み合っており、モータ100の出力軸102の回転が、ギヤ104〜112を介してウオームギヤ116に伝わり、ウオームギヤ116が回転すると、ウオームギヤ116の回転がウオームホイール94に伝えられて、ウオームホイール94が回転する。
一方、図4のブロック図に示されるように、モータ100は、ドライバ122を介してバッテリー124に電気的に接続されており、モータ100はドライバ122を介して通電されることで駆動し、出力軸102を回転させる。また、ドライバ122は制御手段としてのECU126に電気的に接続されている。
ECU126からはドライバ122に対して正転駆動制御信号Dcs又は逆転駆動制御信号Drsが出力される。ECU126から出力された正転駆動制御信号DcsがLowレベルからHighレベルに切り替わると、ドライバ122はモータ100に順方向の電流Idを流してモータ100を正転駆動させる。また、ECU126から出力された正転駆動制御信号DcsがHighレベルからLowレベルに切り替わると、ドライバ122はモータ100に対する電流Idの供給を停止してモータ100を停止させる。
これに対して、ECU126から出力された逆転駆動制御信号DrsがLowレベルからHighレベルに切り替わると、ドライバ122はモータ100に逆方向の電流−Idを流してモータ100を逆転駆動させる。また、ECU126から出力された逆転駆動制御信号DrsがHighレベルからLowレベルに切り替わると、ドライバ122はモータ100に対する電流−Idの供給を停止してモータ100を停止させる。
また、図4に示されるように、ECU126はバックルスイッチ130に電気的に接続されており、バックルスイッチ130から出力される信号BsがECU126に入力される。図2及び図3に示されるように、バックルスイッチ130はバックル装置46に内蔵されている。
バックル装置46にタングプレート42が挿し込まれていない状態では、バックルスイッチ130はOFF状態になっており、バックルスイッチ130から出力される信号BsはLowレベルとなっている。これに対して、バックル装置46にタングプレート42が挿し込まれてバックル装置46に対するタングプレート42の装着状態になると、バックルスイッチ130はON状態になり、信号BsはLowレベルからHighレベルに切り替わる。
さらに、図4に示されるように、ECU126はドアロック手段としてのキー装置132に電気的に接続されており、キー装置132から出力される信号KsがECU126に入力される。図2及び図3に示されるように、キー装置132はドア134の内部等に設けられており、イグニッションキー等のキーを車両24の外部からキー装置132のキーシリンダに挿し込んで操作したり、又は、車両24の室外からキーレスエントリーシステムのコントローラ等の操作手段から電波を送信して、乗降口を閉止しているドア134をロックしたり、また、ロックを解除したりできる。
キー装置132はドア134のロック解除状態ではLowレベルの信号Ksを出力し、ロック状態になると信号KsがLowレベルからHighレベルに切り替わる(すなわち、Lowレベルの信号Ksが特許請求の範囲で言う「施錠解除信号」)。
また、図4に示されるように、ECU126は開閉検出手段としてのカーテシスイッチ136に電気的に接続されており、カーテシスイッチ136から出力される信号Cds(特許請求の範囲で言う「開放信号」)がECU126に入力される。図2及び図3に示されるように、カーテシスイッチ136は、座席44のうち運転席44Dに対応したドア134(以下、運転席44Dに対応したドア134を「ドア134D」と称する)の下側(すなわち、運転席44Dに対応した車両24の乗降口の周縁部)に設けられている。
ドア134Dが乗降口を閉止した状態では、カーテシスイッチ136はOFF状態になっており、カーテシスイッチ136から出力される信号CdsはLowレベルとなっている。これに対して、乗降口をドア134Dが開放した場合には、カーテシスイッチ136はON状態になり、信号CdsはLowレベルからHighレベルに切り替わる。
さらに、図4に示されるように、ECU126は開閉検出手段としてのカーテシスイッチ138に電気的に接続されており、カーテシスイッチ138から出力される信号Cps(特許請求の範囲で言う「開放信号」)がECU126に入力される。カーテシスイッチ138は座席44のなかで助手席44Pに対応した図3に示されるドア134(以下、助手席44Pに対応したドア134を「ドア134P」と称する)の下側(すなわち、助手席44Pに対応した車両24の乗降口の周縁部)に設けられている。
ドア134Pが乗降口を閉止した状態では、カーテシスイッチ138はOFF状態になっており、カーテシスイッチ138から出力される信号CpsはLowレベルとなっている。これに対して、乗降口をドア134Pが開放した場合には、カーテシスイッチ138はON状態になり、信号CpsはLowレベルからHighレベルに切り替わる。
また、図4に示されるように、本ウエビング巻取装置10が運転席44D用であるならば、ECU126はトリガ手段としてのイグニッション装置142に電気的に接続されており、イグニッション装置142から出力される信号Is(特許請求の範囲で言う「トリガ信号」)がECU126に入力される。図2に示されるように、イグニッション装置142は運転席44Dの前方側のステアリングホイール144の近傍に設けられている。
イグニッション装置142にはイグニッションキーを挿し込み可能なシリンダが設けられており、シリンダにイグニッションキーを挿し込んだ状態でACC(アクセサリ)位置までイグニッションキーを回転させると車両24に搭載されたオーディオ装置や空調装置を作動させることが可能になる。さらに、上記のACC位置よりもイグニッションキーを回転させると、車両24に搭載されたセルモータが作動してエンジンが起動する。
イグニッション装置142はシリンダに挿し込まれたイグニッションキーがACC位置に回転するまではLowレベルの信号Isを出力し、ACC位置にイグニッションキーが到達すると信号IsがLowレベルからHighレベルに切り替わる。
一方、図4に示されるように、本ウエビング巻取装置10が助手席44P用であるならば、ECU126は着座検出手段としてのシートスイッチ146に電気的に接続されており、シートスイッチ146から出力される信号Ss(特許請求の範囲で言う「着座信号」)がECU126に入力される。図3に示されるように、シートスイッチ146は助手席44Pのシートクッションに設けられており、シートクッションに対して上方から作用する荷重を検出している。
助手席44Pに乗員が着座して、乗員の体重がシートスイッチ146に作用すると、シートスイッチ146から出力される信号SsがLowレベルからHighレベルに切り替わり、乗員が助手席44Pから離席すると信号SsがHighレベルからLowレベルに切り替わる。
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、スプール32にウエビングベルト34が層状に巻き取られた収納状態で、タングプレート42を引っ張りつつウエビングベルト34を引っ張ると、スプール32に巻き取られたウエビングベルト34が引き出される。
このようにして引き出されたウエビングベルト34を、助手席44Pに着座した乗員の身体の前方に掛け回しつつタングプレート42をバックル装置46に挿し込み、バックル装置46にタングプレート42を保持させることで乗員の身体に対するウエビングベルト34の装着状態となる。
また、例えば、乗員が自らの身体に装着しているウエビングベルト34を外すためにバックル装置46を操作してバックル装置46からタングプレート42を抜き取ると、バックル装置46内のバックルスイッチ130から出力される信号BsがHighレベルからLowレベルに切り替わる。このようにHighレベルからLowレベルに切り替わった信号BsがECU126に入力されると、ECU126は正転駆動制御信号Dcsを出力する。
ECU126から出力された正転駆動制御信号Dcsがドライバ122に入力されると、ドライバ122は順方向の電流Idをモータ100に流す。これにより、モータ100が正転駆動して、出力軸102が正転する。出力軸102の正転はギヤ104〜110を介してギヤ112に伝えられ、これによりギヤ112が回転させられる。
さらに、ギヤ112が回転することでウオームギヤ116が回転し、これにより、クラッチ92のウオームホイール94が回転する。このようにしてウオームホイール94が回転すると、ウオームホイール94の内側に設けられたパウルがアダプタに噛み合い、アダプタをウオームホイール94の回転をアダプタ、ひいては軸部86に伝えて軸部86を巻取方向に回転させる。
軸部86の巻取方向への回転は、スリーブ82、トーションシャフト48、及びロックベース54を介してスプール32に伝わり、スプール32を巻取方向に回転させる。スプール32が巻取方向に回転することで、ウエビングベルト34が基端側からスプール32に巻き取られて収納される。
ところで、本実施の形態では、駐車中の車両24に対して、車両24の外部からキーレスエントリーシステムのコントローラを操作してドア134のロックを解除すると、Highレベルの信号Ksがキー装置132から出力される。
ここで、図5のモータ制御プログラムの概略的なフローチャートに示されるように、キー装置132から出力されたHighレベルの信号KsがECU126に入力されると、モータ制御プログラムが起動する(ステップ200)。
次いで、ステップ202で初期設定がなされ、例えば、フラグFがリセットされる。さらに、ステップ204でドア134Dに対応したカーテシスイッチ136から出力される信号CdsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態で、例えば、運転席44D側で乗員が車両24に乗り込もうとしないためにドア134Dが開放されなければ、カーテシスイッチ136から出力される信号CdsはLowレベルで維持される。この場合にはステップ206に進む。
ステップ206では、ドア134Pに対応したカーテシスイッチ138から出力される信号CpsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態で、例えば、助手席44P側で乗員が車両24に乗り込もうとしないためにドア134Pが開放されなければ、カーテシスイッチ138から出力される信号CpsはLowレベルで維持される。この場合にはステップ204に戻る。
したがって、このような場合には、ドア134D及びドア134Pの何れかが開放されるまで待機状態になる。
次いで、ドア134D又はドア134Pが開放され、信号Cds又は信号CpsがLowレベルからHighレベルに切り替わるとステップ208に進み、ECU126から逆転駆動制御信号Drsが出力される(又は、ECU126から出力される逆転駆動制御信号DrsがLowレベルからHighレベルに切り替わる)。
ECU126から出力された逆転駆動制御信号Drsがドライバ122に入力されると、ドライバ122は逆方向の電流−Idをモータ100に流す。
これにより、モータ100が逆転駆動して、出力軸102が逆転する。出力軸102の逆転はギヤ104〜112に伝えられ、これによりウオームギヤ116が上述したスプール32を巻取方向に回転させる際とは反対方向に回転させられる。このようにウオームギヤ116が回転することで、クラッチ92におけるパウルとアダプタとの噛み合いが解除され、パウルはアダプタから離間する。これにより、クラッチ92を介したモータ100とスプール32との連結が解除される。
このようにモータ100とスプール32との連結が解除されることで、スプール32の回転力がモータ100の出力軸102に伝わることがない。したがって、この状態でウエビングベルト34を引っ張っても、ギヤ104〜112やモータ100がスプール32の回転の抵抗になることがなく、容易にウエビングベルト34を引き出すことができる。
次いで、上記のようなクラッチ92によるモータ100とスプール32との連結を解除するためのモータ100に対する通電が終了すると、ステップ210で助手席44Pに設けられたシートスイッチ146から出力される信号SsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態で、助手席44Pに乗員が着座していなければ、シートスイッチ146から出力される信号SsはLowレベルであるため、ステップ212でフラグFに1が代入されているか否かが判定される。
仮に、ステップ202で初期設定されたままステップ212に到達したのであれば、フラグFはリセットされたままであるため、ステップ210に戻り、言わば、助手席44Pに乗員が着座することを待機する。
助手席44Pに乗員が着座することで、Highレベルの信号Ssが出力されると、ステップ214でフラグFに1が代入される。次いで、ステップ216でイグニッション装置142からの信号IsがHighレベルであるか否か、すなわち、イグニッション装置142のシリンダに挿し込まれたイグニッションキーがACC位置又はACC位置を越えて回転したか否かが判定される。
この状態で、イグニッション装置142のシリンダに挿し込まれたイグニッションキーがACC位置まで回転操作されていなければ、ステップ210に戻る。
さらに、この状態で、助手席44Pの乗員が運転席44Dや後部座席等の他の座席44に移動したり、また、助手席44Pの乗員が降車してシートスイッチ146から出力される信号SsがHighレベルからLowレベルに切り替わると、ステップ212を経てステップ218に進む。
ステップ218ではステップ206と同様に、ドア134Pに対応したカーテシスイッチ138から出力される信号CpsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態で、ドア134Pが開放されなければ信号CpsがLowレベルで維持されるため、ステップ210に戻る。
すなわち、この状態では、イグニッション装置142のシリンダに挿し込まれたイグニッションキーがACC位置又はACC位置を越えて回転されるか、又は、ドア134Pが開放されるまで待機する。
この状態から、例えば、助手席44Pに乗員が着座したまま、運転席44Dの乗員がイグニッション装置142のシリンダに挿し込まれたイグニッションキーを回転操作し、その回転位置がACC位置に到達し又はACC位置を越えた場合には、ステップ220に進む。また、助手席44Pの乗員が降車するためにドア134Pを開放した場合にもステップ220に進む。
ステップ220では、正転駆動制御信号DcsがECU126から出力される(又は、ECU126から出力される正転駆動制御信号DcsがLowレベルからHighレベルに切り替わる)。
上記のように、ECU126から出力された正転駆動制御信号Dcsがドライバ122に入力されると、モータ100が正転駆動し、これにより、クラッチ92のパウルがアダプタに噛み合う。これにより、クラッチ92が結合状態になり、クラッチ92を介してモータ100とスプール32とが機械的に連結される。
但し、ウエビングベルト34を収納する場合とは異なり、この場合にはモータ100に対する通電時間が、クラッチ92を結合状態にできる程度にスプール32を回転させるにとどまる。
クラッチ92を介してモータ100とスプール32とを連結した状態では、スプール32を引出方向に回転させようとすると、ギヤ104〜112やモータ100がスプール32の回転の抵抗になる。したがって、この状態では容易にウエビングベルト34を引き出すことができない。このため、この状態で車両24が走行しても、走行中の車両24の振動等で不用意にウエビングベルト34が伸び出ることがない。
一方、上記のように、クラッチ92の結合に要するだけモータ100を駆動させると、ステップ222に進む。ステップ222ではステップ206と同様に、ドア134Pに対応したカーテシスイッチ138から出力される信号CpsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態でドア134Pが開放されなければ信号CpsがLowレベルで維持されるためステップ224に進む。
ステップ224では、ステップ210と同様にシートスイッチ146から出力される信号SsがHighレベルであるか否かが判定される。この状態で、助手席44Pに乗員が着座していなければ、ステップ222に戻り、ドア134Pが開放されるか、又は。助手席44Pに乗員が着座するまで待機する。
この状態から、乗員がドア134Pを開放して乗車したり、また、車両24の室内で助手席44P以外の座席44から助手席44Pに乗員が移動して着座すると、ステップ208に戻り逆転駆動制御信号DrsがECU126から出力される。
上記のように、あらためて乗員が助手席44Pに着座した際には、乗員がウエビングベルト34を装着する可能性が高い。この状態でECU126から逆転駆動制御信号Drsが出力されて、上記のようにクラッチ92によるスプール32とモータ100との連結が解除されることにより、あらためて助手席44Pに着座した乗員がウエビングベルト34を装着する際に、ウエビングベルト34を引っ張っても、ギヤ104〜112やモータ100がスプール32の回転の抵抗になることがなく、容易にウエビングベルト34を引き出してウエビングベルト34を装着することができる。
このように、本ウエビング巻取装置10では、助手席44Pに着座していない可能性が高い状態で、クラッチ92によってモータ100をスプール32に連結することで、スプール32に巻き取られているウエビングベルト34が不用意に伸び出してくることを効果的に防止でき、車両24の室内の見栄えを良好な状態で維持できる。
しかも、助手席44Pに着座する可能性が高い状態になると、クラッチ92によるモータ100とスプール32との連結を解除するため、助手席44Pに着座した乗員が容易にウエビングベルト34を引き出して装着できる。
なお、本実施の形態では、トリガ手段をイグニッション装置142とした構成であったが、トリガ手段は車両24の運転開始時又は運転中に車両24に対して乗員が行なう所定の動作で操作される装置であればイグニッション装置142に限定されるものではない。
トリガ手段の他の態様としては、車両24の走行を開始する直前に自動変速機のシフトレンジをパーキングレンジからドライブレンジに変更することから、このシフトレンジの変更を検出する構成、例えば、シフトレバー装置に設けられたシフトレバーの位置検出手段(マイクロスイッチ等)であってもよい。
また、このように、シフトレンジをパーキングレンジからドライブレンジに変更する際には、フットブレーキを踏み込まないとシフトレバーを操作できない構造になっていることが多い。このことから、フットブレーキの踏み込みを検出するペダルスイッチ等をトリガ手段としてもよい。
また、これまでに説明したように、本実施の形態では、基本的に助手席44Pに設けられたウエビング巻取装置10のモータ100に対する制御を例に説明したが、例えば、同様の制御を後部座席に対応して設けられたウエビング巻取装置10のモータ100に対して行なってもよい。