図1は、本発明の実施の一形態の移相器20を模式的に示す斜視図である。移相器20は、誘電体部22と、一対の第1および第2平板導電体部23a,23bと、一対の第1および第2電極24a,24bと、電圧印加手段19とを含んで構成される。本発明の実施の形態の移相器20は、略直方体形状に形成される。移相器20における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器20の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
誘電体部22は、誘電体から成り、印加電界に応じて、誘電率が変化する変化部を含む第1誘電体部25と、第2誘電体部26とを含んで構成される。誘電体部22は、電磁波が入力する第1入出力端22aおよび電磁波が出力する第2入出力端22bを有する。第1入出力端22aおよび第2入出力端22bは、電磁波が伝播する伝播方向(線路の延在方向)Xに沿って、伝播方向Xの上流側および下流側にそれぞれ形成される。本発明の実施の形態では、誘電体部22は、直方体形状に形成され、第1入出力端22aおよび第2入出力端22bは、伝播方向Xに垂直な平面によって形成され、相互に対向して設けられる。誘電体部22の、伝播方向Xに垂直な断面は、矩形状となる。前記伝播方向Xにそれぞれ垂直であって、かつ互いに垂直な方向を、それぞれ「幅方向Y」および「厚さ方向Z」という。本発明の実施の形態では、幅方向Yが、誘電体部22に含まれる第1誘電体部25の、伝播方向Xに垂直な断面における長手方向であり、厚さ方向Zが、誘電体部22に含まれる第1誘電体部25の、伝播方向Xに垂直な断面における短手方向である。
本発明の実施の形態では、第1誘電体部25は変化部から成り、たとえばBa(1−x)SrxTiO3(略称BST)、Mg(1−x)CaxTiO3、Zn(1−x)SnxTiO3、BaO−PbO−Nd2O3−TiO3、またはBi1.5Zn1.0Nb1.5O7などによって形成される。第1誘電体部25は、印加電界が大きくなるに連れて、すなわち印加される電界強度が高くなるに連れて、誘電率が小さくなる。第1誘電体部25は、直方体形状に形成され、誘電体部22の伝播方向Xの両端部間および幅方向Yの両端部間にわたって形成される。
第2誘電体部26は、第1誘電体部25を挟んで第1誘電体部25の両側にそれぞれ積層される。第1誘電体部26は、第1誘電体部25を挟んで対称に形成される。第2誘電体部26は、第1誘電体部25の厚さ方向Zの両側に設けられる。第2誘電体部26は、略直方体形状を有する。第2誘電体部26は、その誘電率が第1誘電体部25の誘電率よりも低い物質によって形成される。第2誘電体部26の誘電率は、第1誘電体部25の誘電率が変化し、最も誘電率が小さくなったときの第1誘電体部25の誘電率未満に選ばれる。
第2誘電体部26は、ガラス、単結晶、セラミックスまたは樹脂などによって形成される。ガラスとしては、石英ガラス、結晶化ガラスなどが用いられる。単結晶としては、水晶、サファイア、MgOまたはLaAlO3などが用いられる。セラミックスとしては、アルミナ、フォルステライトまたはコーディライトなどが用いられる。樹脂としては、エポキシ樹脂または含フッ素樹脂、液晶ポリマーなどが用いられる。第2誘電体部26は空気によって形成されてもよいが、第1誘電体部25を機械的に保持することができ、また空気よりも誘電率が高い前述した固体物質によって形成されるのが好ましい。
また前記固体物質によって形成される第2誘電体部26を設けることによって、第1誘電体部22を伝播する電磁波の、第1および第2平板導電体部23a,23bに挟まれる部分のうち第1誘電体部25を除く部分における波長を、空気中における波長と比較して短縮することができ、これによって移相器20を小形に形成することができる。また第2誘電体部26によって第1および第2平板導電体部23a,23bが機械的に支持されるので、機械的な強度を向上させることができ、また第1および第2平板導電体部23a,23bを薄膜形成技術、厚膜印刷技術またはシート状セラミック技術などを用いて製造することができるようになり、製造においても小型化に適した移相器を実現することができる。
第1および第2平板導電体部23a,23bは、誘電体部22における電磁波の伝播方向Xならびに第1および第2誘電体部25,26の積層方向である厚さ方向Zに、互いに垂直な方向である幅方向Yにおいて、誘電体部22に密着して誘電体部22を挟持して設けられ、すなわち第1および第2誘電体部25,26の両側に設けられる。第1および第2平板導電体部23a,23bは、導電性を有し、板状に形成されて、誘電体部22に臨む面が相互に平行に設けられる。第1および第2平板導電体部23a,23bは、誘電体部22の幅方向Yの端面にそれぞれ積層され、この幅方向Yの端面の全面にわたって形成される。
第1および第2平板導電体部23a,23bは、低い抵抗率の金属、誘電体部22と高温での同時焼成が可能な金属、半田、または導電性ペーストによって形成される。低い抵抗率の金属としては、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)およびクロム(Cr)からなる群から選ばれる。第1および第2平板導電体部23a,23bは、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)およびクロム(Cr)からなる群から選ばれるいずれか1つ、もしくは少なくとも2つを含む合金またはこれらの積層体によって形成されてもよい。誘電体部22と高温での同時焼成が可能な金属としては、タングステン(W)などが用いられる。導電性ペーストとしては、金属フィラーとこの金属フィラーを結合するバインダ樹脂を含むものが用いられる。第1および第2平板導電体部23a,23bは、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化錫、酸化イリジウム、SrRuO3などの酸化物導電体によって形成されてもよい。第1および第2平板導電体部23a,23bは、低い抵抗率の金属によって形成されるのが好ましい。第1および第2平板導電体部23a,23bの厚さ、すなわち幅方向Yの厚さは、誘電体部22を伝播する電磁波の周波数に対する表皮厚さよりも大きく選ばれる。
第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔L1は、誘電体部22を伝播させるべき電磁波の波長によって選ばれ、かつ第2誘電体部26中を伝播する電磁波の波長の2分の1以下に選ばれる。このように前記間隔L1を選ぶことによって、誘電体部22および第1および第2平板導電体部23a,23bとによって、伝送線路である非放射性誘電体線路(NRDガイド)が構成され、第1誘電体部25を伝播する電磁波が、第1および第2平板導電体部23a,23bの間から漏れることがなく、非放射となるので損失を低減することができる。
第1および第2電極24a,24bは、前記誘電体部22に埋設されて設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部25と第2誘電体部26との間に設けられる。第1および第2電極24a,24bは、厚さ方向Zに垂直な仮想一平面に関して面対称に設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部25を挟持し、第1誘電体部25の厚さ方向Zの両端面上にそれぞれ積層して設けられる。第1および第2電極24a,24bは、伝播方向Xにおいて第1誘電体部25の両端部間にわたって設けられ、第1および第2平板導電体部23a,23bにそれぞれ予め定める距離L2離間して設けられる。第1および第2電極24a,24bは、直方体形状に形成され、誘電体部22のうち幅方向Yの両端部を除き、第2誘電体部26の幅方向Yの両端面から予め定める距離L2の範囲を除いて、第1誘電体部25に積層される。予め定める距離L2は、第1および第2電極24a,24bと第1および第2平板導電体部23a,23bとが接触しない程度に選ばれ、たとえば1μm〜50μmに選ばれる。
第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部25に電界を印加するための電極である。第1および第2電極24a,24bは、前述した第1および第2平板導電体部23a,23bと同様な物質によって形成されるか、またはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)および砒化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、あるいは窒化タンタルおよびNiCr合金などの高抵抗材料を用いて形成される。
第1および第2電極24a,24bは、その厚さL3が、第1誘電体部25を伝播させるべき電磁波の周波数に対する表皮厚さ未満に選ばれる。表皮厚さを「δ」とし、透磁率を「μ」とし、導電率を「σ」とし、角周波数を「ω」としたとき、表皮厚さは、式1で表される。なお、ω=2πf(fは、周波数)である。導体内に電磁波が進入すると、前記表皮厚さのところで振幅が1/eになる。
これによって、第1および第2電極24a,24bを誘電体部22に埋設したときに、第1および第2電極24a,24bによる損失を低減することができる。また第1および第2電極24a,24bの間隔を近づけて設けることができるので、低電圧で移相器20を駆動することができる。本実施の形態における第1および第2電極24a,24bの体積抵抗率は、10−5Ω・m以上、好ましくは10−4Ω・m以上に選ばれる。ただし、第1および第2電極24a,24bを薄くし過ぎると、第1および第2電極24a,24bにおいて電荷が移動しにくくなり、第1および第2電極24a,24bの全体にわたって均一に電界がかかりにくくなるので、第1および第2電極24a,24bにおける電荷の移動を妨げとなることがなく、第1および第2電極24a,24bの全体にわたって均一に電界を印加することができるような予め定める厚さ以上に形成される。
第2誘電体部22に埋設される第1および第2電極24a,24bの抵抗率は、10−5Ω・m以上かつ108Ω・m以下に選ばれるのが好ましい。第1および第2電極24a,24bの抵抗率が10−5Ω・m未満になると、電極中の電磁波の減衰が大きくなり、損失が大きくなって好ましくない。第1および第2電極24a,24bの抵抗率が10−5Ω・mよりもさらに小さくなると所望のモードがカットオフになって伝播しなくなってしまう。逆に第1および第2電極24a,24bの抵抗率が108Ω・mを超えて大きくなりすぎると、第1および第2電極24a,24bによって挟まれる誘電体との抵抗率の差が小さくなり、電圧降下のために所望の電圧が誘電体に印加できなくなってしまう。
第1および第2電極24a,24bの厚さは、第1および第2電極24a,24bに用いる材質の抵抗率によって決定され、厚すぎると損失が大きくなり、さらに厚くなると所望のモードがカットオフになって伝送しなくなってしまう。薄すぎると電圧降下のために所望の電圧が誘電体に印加できなくなってしまう。たとえば第1および第2電極24a,24bとして、抵抗率が1×10−4(Ω・m)のもの(材質としてTaNを用いる場合を想定)および抵抗率が1×10−3(Ω・m)のものを想定した場合において、電磁界解析をそれぞれ行ったときの、77GHzの電磁波に対する1mmあたりの電極による損失を、表1に示す。
表1および表2に示す電磁界解析の結果から、電極の抵抗率が1×10−4(Ω・m)の場合で実用上は、電極の厚さを30nm以下とするのが好ましく、電極の抵抗率が1×10−3(Ω・m)の場合で実用上は、電極の320nm以下とするのが好ましい。ここでは、実用上好ましいという基準を損失3dBとしている。
移相器20は、さらに電圧印加手段19を含んで構成される。電圧印加手段19は、一対の第1および第2電極24a,24b間に予め定める範囲の電圧を印加する電気回路によって実現される。電圧印加手段19は、第1および第2電極24a,24bに接続されて、それぞれの電極に所定の電位を与えて、第1および第2電極24a,24b間に電圧を与える。これによって、第1および第2電極24a,24bに挟まれる第1誘電体部25に電界が印加される。電圧印加手段19は、たとえば分圧器を含んで構成され、分圧器によって分圧された電圧を第1および第2電極24a,24bに与える。電圧印加手段19は、複数段階の電圧を前記第1および第2電極24a,24bに印加することができる。電圧印加手段19は、伝播する電磁波の周波数よりも低い周波数の交流電圧、または直流電圧を第1および第2電極24a,24bに印加する。電圧印加手段19は、シフトすべき位相量に応じた電圧を第1および第2電極24a,24bに印加する。
電圧印加手段19によって、第1および第2電極24a,24b間に電圧を印加し、また印加する電圧の大きさを予め定める範囲で変化させることによって、誘電体部22を導波する電磁波の位相を、印加する電圧の大きさ、すなわち印加電界の大きさに応じて変化させることができる。第1誘電体部25を形成する誘電体は、印加電界が大きくなると誘電率が小さくなり、これによって誘電体部22を導波する電磁波の位相を変化させることができる。
移相器20における、誘電体部22および第1および第2平板導電体部23a,23bによって形成される非放射性誘電体線路のカットオフ周波数fcは、第1誘電体部25を形成する誘電体の誘電率および第1誘電体部25のサイズ(伝播方向Xに垂直な断面の寸法)、第1および第2電極24a,24bの間隔L4、平板導電体部23a,23bの間隔L1、および第2誘電体部26を形成する誘電体の誘電率で決まる。カットオフ周波数が、伝播させるべき電磁波の周波数(使用周波数)未満になるように、第1誘電体部25のサイズのサイズは選ばれる。第1および第2電極24a,24bに所定の電圧を印加して第1誘電体部25の誘電率が小さくなったときのカットオフ周波数をfcとし、使用周波数、すなわち誘電体部22を伝播させる電磁波の周波数をfとしたとき、1.03<f/fc<1.5となるように、好ましくは、1.03<f/fc<1.2となるように第1誘電体部25のサイズ、第1および第2電極24a,24bの間隔L4、第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔L1および第2誘電体部26を形成する誘電体を設定する。移相器20を作製するとき、まず第1誘電体部25を形成する誘電体材料および第2誘電体部26を形成する誘電体材料を決定し、次に第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔L1を決定した後、第1誘電体部25のサイズを決定し、これに伴って第1および第2電極24a,24bの間隔L4が決定する。
第1および第2電極24a,24bによって電界が印加される第1誘電体部25の伝播方向Xの長さL5は、必要な位相変化が得られる長さに選ばれ、たとえば誘電体部22を伝播する電磁波の波長の(2m−1)/4(mは自然数)に選ばれる。これによって、伝播方向Xに沿って他の伝送線路から移相器20へ入射する接続界面で反射する反射波と移相器20を通過して移相器20から他の伝送線路へ出力する接続界面で反射して他の伝送線路へ戻っていく反射波との位相差を、π(rad)として、反射波を打ち消すことができ、移相器20と他の伝送線路との界面における反射が低減され、挿入損失を低減することができる。
以上のように移相器20によれば、電磁波は、第1および第2平板導電体部23a,23bおよび第2誘電体部26に挟まれる第1誘電体部25を主に伝播する。第1誘電体部25の誘電率が変化することによって、電磁波の位相の変化に与える影響を大きくして、必要な位相変化を得るための線路長を短くすることができ、移相器20を小形に形成することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い移相器を実現することができる。
また第1および第2電極24a,24bは、誘電体部22に埋設されて設けられ、かつ第1誘電体部25を伝播する電磁波の周波数に対する表皮厚さよりも薄く形成される。これによって、第1および第2電極24a,24bを第1誘電体部25に接触して設けても、伝播する電磁波が、第1および第2電極24a,24bを透過することができるので、カットオフになることなく電磁波を伝播することができ、導波モードに影響を与えることがない。また第1および第2電極24a,24bを埋設することによる伝送損失を抑制した状態で、第1および第2電極24a,24bによって第1誘電体部25に大きな電界強度の電界を印加することができ、電磁波の位相を安定に変化させることができる。したがって、第1誘電体部25に電界を印加するために第1および第2電極24a,24bに与える電圧を小さくしても、第1誘電体部25に大きな電界強度の電界が与えられ、また伝送線路の線路長が短くても、第1誘電体部25に大きな電界強度の電界が与えられるので、伝送線路の線路長の単位長さあたりの位相変化量を大きくして、小型で、かつ低電圧で動作させることができる移相器20を実現することができる。
また移相器20では、誘電体部22を伝播する電磁波の周波数を、カットオフ周波数付近に選ぶことによって、カットオフ周波数付近では短い線路長でも大きな位相変化が得られるので、移相器20を小形に形成することができる。
本実施の形態では、第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔は、第2誘電体部26中を伝播する電磁波の波長の2分の1以下としたが、本発明のさらに他の実施の形態では、第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔は、第2誘電体部26中を伝播する電磁波の波長の2分の1よりも大きくしてもよい。この場合には、第1および第2平板導電体部23a,23bおよび誘電体部22によってHガイドが構成され、図1に示す実施の形態の移相器20よりも伝送損失は大きくなるが、同様の効果を達成することができる。
また本実施の形態では、第1および第2電極24a,24bは伝播方向Xにおいて第1入出力端22aから第2入出力端22bにわたって形成されるが、第1および第2電極24a,24bは、伝播方向Xにおいて、不連続に形成されてもよい。
また前述した実施の形態の移相器20では、第1誘電体部25は、誘電率が変化する物質から成るが、本発明の実施のさらに他の形態において、第1誘電体部25は、誘電率が変化する物質から成る変化部を含む構成であればよい。前記変化部は、電界強度が高くなる部分に形成されるのが好ましく、たとえば幅方向Yおよび厚さ方向Zの中央部に形成される。このような構成にすると、第1誘電体部25のうち変化部が占める割合と、第1誘電体部25のうち変化部が形成される領域とに応じて、同じ大きさで移相器を作製したときに得られる位相変化量が決定され、第1誘電体部25全体が誘電率が変化する物質から成る場合よりも、位相変化量は小さくなるが、前述の実施の形態と同様に、小型な移相器を提供することができる。
図2は、本発明の実施の他の形態の移相器30を模式的に示す断面図である。移相器30は、誘電体部22と、一対の第1および第2平板導電体部23a,23bと、一対の第1および第2電極24a,24bと、電圧印加手段19とを含んで構成される。本発明の実施の形態の移相器30は、略直方体形状に形成される。移相器30における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器30の前記伝播方向Xの両端部にわたって同形状である。
本実施の形態の移相器30は、前述した図1に示す移相器20と類似し、電極の構成および電極が設けられる位置が異なるのみであるので、前述の実施の形態と同様の構成には、同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
移相器30は、誘電体部22と、第1および第2平板導電体部23a,23bと、複数の電極T1,T2,…,Tn−1,Tnと、電圧印加手段19とを含んで構成される。前述した実施の移相器20では、第1および第2誘電体部25,26の間に、第1および第2電極24a,24bが設けられるが、本実施の形態の移相器30では、第1誘電体部25に複数の電極T1,T2,…,Tn−1,Tn(記号nは2以上の自然数)が埋設されて設けられる。以下、各電極T1,T2,…,Tn−1,Tnを総称する場合、および各電極T1,T2,…,Tn−1,Tnのうち不特定のものをさす場合、「電極T」という。第2誘電体部26は、第1誘電体部25を挟持し、すなわち厚さ方向Zにおいて第1誘電体部25の両側に設けられる。
電極Tは、前記厚さ方向Zに相互に所定の間隔L6をあけて設けられる。また電極Tの厚さL7は、第1および第2電極24a,24bと同様に選ばれる。電極Tは、前述した第1および第2電極24a,24bと同様な形状および同様な物質によって形成される。電極Tは、その厚さが前記厚さ方向Zに平行となるように設けられる。
厚さ方向Zに相互に隣接する電極Tは、第1および第2平板導電体部23a,23bのうち異なる平板導電体部に接続される。すなわち電極Tのうち、厚さ方向Zの第1方向に向かって奇数番目の電極T1,T3,…,Tm−2,Tm(記号mは正の奇数)は、第1平板導電体部23aに接続され、厚さ方向Zの第1方向に向かって偶数番目の電極T2,T4,…,Tk−2,Tk(記号kは正の偶数)は、第2平板導電体部23bに接続される。
このように電極Tを、第1または第2平板導電体部23a,23bに接続することによって、第1または第2平板導電体部23a,23bに電圧を印加すると、隣接する電極Tに電位差が生じ、第1誘電体部25に電界を印加することができる。電極Tを多数形成しても、第1および第2平板導電体部23a,23bに電圧を印加するだけで、相互に隣接する電極Tによって電圧を印加することができ、各電極Tに電圧を印加するための配線を個別に形成する必要がない。
電極Tの数は、多くしたほうが、第1誘電体部25に印加することができる電界強度が高くなり、位相変化を大きくすることができるので好ましいが、多過ぎると損失が増加する。損失は、電極Tの厚さL7の総和によって決定される。電極Tの抵抗率が1×10−4(Ω・m)の場合で実用上は、電極Tの厚さL7の総和が30nm以下とするのが好ましく、電極Tの抵抗率が1×10−3(Ω・m)の場合で実用上は、電極Tの厚さLの総和が320nm以下とするのが好ましい。
また電極Tは、この電極Tが接続されない第1または第2平板導電体部23a,23bに予め定める距離L8離間して設けられる。すなわち前記電極T1,T3,…,Tm−1,Tmは、幅方向Yにおいて第2平板導電体部23bに、予め定める距離L8離間して設けられ、電極T2,T4,…,Tk−1,Tk(記号kは正の偶数)は、幅方向Yにおいて第1平板導電体部23aに、予め定める距離L8離間して設けられる。予め定める距離L8は、電極Tと、第1および第2平板導電体部23a,23bとが接触しない程度に選ばれ、たとえば1μm〜50μmに選ばれる。
移相器30によれば、電極Tは、第1誘電体部25に埋設されるので、第1誘電体部25に効果的に電界を印加することができ、また電極Tの間隔をより近づけることによって、より大きな電界強度を第1誘電体部25に与えることができ、より小型かつ低電圧で動作させることができる。
また第1および第2平板導電体部23a,23bに電圧を印加するだけで、相互に隣接する電極Tによって電圧を印加することができ、各電極Tに電圧を印加するための配線を個別に形成する必要がなく、回路基板に簡単に実施することができる。
図3は、移相器30の製造工程を示すフローチャートであり、図4(1)〜図4(3)は、移相器30の製造工程を示す模式図である。移相器30の製造工程を開始すると、ステップs1からステップs2に移る。ステップs2では、基板31の第1表面31aに積層して、所定の誘電率を有する誘電体から成る第1誘電体膜32を形成し、ステップs3に移る。基板31は、たとえばMgO単結晶によって形成される。
ステップs3では、第1誘電体膜32に積層して、予め定める電磁波の周波数(使用周波数)に対する表皮厚さよりも薄い電極膜33、および前記第1誘電体膜32よりも誘電率が高く、かつ印加電圧の大きさに応じて、誘電率が変化する第2誘電体膜34を交互に積層して成る積層体35を形成する。ステップs3では、各電極膜33が積層される方向に相互に隣接する電極膜33を、その一部が重なるように形成する。電極膜33は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)および砒化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、あるいは窒化タンタルおよびNiCr合金などの高抵抗材料を用いて形成される。また第2誘電体膜34は、たとえばBa(1−x)SrxTiO3(略称BST)、Mg(1−x)CaxTiO3、Zn(1−x)SnxTiO3、BaO−PbO−Nd2O3−TiO3、またはBi1.5Zn1.0Nb1.5O7などによって形成される。
図5は、ステップs3において電極膜33および第2誘電体膜34を複数積層するときの様子を示す平面図である。電極膜33を形成する際には、矩形状の貫通孔を有するメタルマスクを用い、その貫通孔に対応する部位にのみ電極膜33が付着するように成膜する。これによって電極膜33の成膜と同時に、パターン形成を行うことができる。電極膜33を形成した後、この電極膜33を覆って積層部分の全面にわたって第2誘電体膜34が形成され、第2誘電体膜34に積層して再び電極膜33が形成される。電極膜33を形成する際、各電極膜33が積層される方向に相互に隣接する電極膜33を、その一部が重なるように、電極膜33および第2誘電体膜34が積層される方向に垂直な所定の方向Fにおいて第1方向F1寄りおよび第2方向F2寄りに形成位置を変える。各電極膜33の大きさは等しいので、隣接する電極膜33を形成する際に、メタルマスクを所定の方向Fの第1方向F1または第2方向F2にずらして電極膜33を形成することによって、積層される方向に一部が重なった複数の電極膜33を形成することができる。図5に、相互に隣接する電極膜33が重なる部分を斜線で示している。
次にステップs4に移り、ステップs4では、積層体35に第2誘電体膜34よりも誘電率が低い第3の誘電体膜36を形成する。第3の誘電体膜36は、第1の誘電体膜32と同じ物質によって形成され、ガラス、単結晶、セラミックスまたは樹脂によって形成される。また第1誘電体膜32と第3誘電体膜36とは、同じ膜厚に形成される。ステップs4が終了すると、図4(1)に示される積層体を得ることができる。
次にステップs5に移り、ステップs5では、第1誘電体膜32、積層体35および第3誘電体膜36をエッチングして、図4(2)に示される凸部37を形成する。凸部37は、第1誘電体膜32、積層体35および第3誘電体膜36の一部分をそれぞれ含んで形成される。凸部37は、電極膜33および第2誘電体膜32が積層される方向において相互に対向する一対の端面38a,38bのうちの第1端面38aから、所定の方向Fの第1方向F1寄りに形成された電極膜33が露出し、かつ相互に対向する一対の端面38a,38bのうち第2端面39bから、所定の方向Fの第2方向F2寄りに形成された電極膜33が露出するように形成される。エッチングにはケミカルドライエッチング、リアクティブイオンエッチングまたはウェットエッチングなどの周知のエッチング方法を用いることができる。電極膜33よりも第2誘電体膜34のエッチングレートが高くなるように、電極膜33の材質および第2誘電体膜34の材質を予め選択しておく。これによって、前記凸部37第1および第2端面38a,38bに電極膜33の端部を露出させることができる。たとえば、図4の仮想線39で示す領域外をエッチングによって除去する。これによって、第1方向F1の端面に露出し、かつ第2方向F2の端面には露出しない電極Taと、第1方向F1の端面に露出せず、かつ第2方向F2の端面には露出する電極Tbとが形成される。
次にステップs6に移り、ステップs6では、前記凸部の、前記第1および第2端面38a,38bに、第1および第2平板導電体部23a,23bを形成して、図4(3)に示すように移相器30を形成する。第1および第2平板導電体部23a,23bは、前記凸部37を覆って導電性膜を形成し、フォトリソグラフィによって前記導電性膜のうち、前記第1および第2端面38a,38bを除く部分を除去することによって形成される。ステップs6が終了すると、ステップs7に移り、製造工程を終了する。第1〜第3誘電体膜32,34,36は、電極膜33の作製には、真空蒸着、スパッタリングまたはCVD(Chemical Vapor Deposition)などの周知の薄膜形成方法を使用することができる。
以上のような工程を経て、電極膜33の積層方向において、偶数番目の電極Tと、奇数番目の電極Tとが、異なる平板導電体部に接続された移相器30を実現することができる。このような製造工程によって、積層された電極膜33を第1端面38aおよび第2端面38bに精度良く確実に引き出すことができ、従来から用いられている半導体プロセスに適した製造方法で移相器30を形成することができるので、小型で、かつ精度が良く、特性の安定した移相器を量産性良く製造することができる。
また複数の貫通孔が形成されたフォトマスクを用いて電極膜33を形成することによって、基板31上に複数の移相器30を形成することができる。隣接する移相器30の間の基板31の境界部をダイシングして、個別に切り出してもよい。
図6は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器40を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器40における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器40の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器40は、非放射性誘電体線路(NRDガイド)を形成する。誘電体部42と、第1および第2平板導電体部23a,23bと、第1および第2電極24a,24bと、電圧印加手段19とを含んで構成される。誘電体部42は直方体形状に形成される。
誘電体部42は、第1誘電体部44および第2誘電体部45を含んで構成され、第1および第2電極24a,24bが埋設されて形成される。第1誘電体部44は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部45は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成される。
誘電体部42は、第1および第2平板導電体部23a,23bに挟持されて設けられる。誘電体部42と第1および第2平板導電体部23a,23bとの積層方向Zおよび電磁波の伝播方向Xに垂直な幅方向Yにおいて、誘電体部42は、第1および第2平板導電体部23a,23bの端部から予め定める距離離間して設けられる。
前記積層方向Zの中央部に第1誘電体部44が設けられる。第1誘電体部44の前記積層方向Zの両側には、第2誘電体部45が設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部44の厚さ方向Zの両端面上に積層して設けられ、第1誘電体部44を挟持して、第1および第2誘電体部44,45の間に埋設されて設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部44の厚さ方向Zの両端面上にわたって形成される。
第2誘電体部46は、第1誘電体部45を挟んで対象に形成され、第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部45を挟んで対象に形成される。第1誘電体部45の厚さ方向Zの寸法L9は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L9が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L9が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。またL9を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
第1および第2電極24a,24bには、電圧印加手段19が接続され、移相器40を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図7は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器50を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器50における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器50の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器50は、イメージ線路を形成する。移相器50は、接地導体板51と、誘電体部52と、電極53とを含んで構成される。接地導体板51は、直方体形状に形成され、厚さ方向Zの第1表面51aが平面に形成される。第1表面51aには、誘電体部52が積層して設けられる。
誘電体部52は、第1誘電体部54および第2誘電体部55を含んで構成され、電極53が埋設されて形成される。第1表面51aに第1誘電体部54が積層され、第1誘電体部25に電極53が積層され、電極53に第2誘電体部26が積層される。第1誘電体部54、電極53および第2誘電体部55の積層体56は、直方体形状に形成され、伝播方向Xにおいて接地導体板51の両端部間にわたって形成される。前記積層体56は、電磁波の伝播方向Xおよび前記厚さ方向Zに垂直な幅方向Yの中央に形成され、接地導体板51の幅方向Yの端部から所定の距離離間して設けられる。
第1誘電体部54は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部55は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質または第2誘電体部26と同様の物質によって形成され、電極53は、前述した実施の形態の第1および第2電極24a,24bと同様の物質で、かつ同様の厚さに形成され、接地導体板51は、前述した実施の形態の平板導電体部23a,23bと同様の物質によって形成される。
第1誘電体部54の厚さ方向Zの寸法L10は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L10が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L10が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L10を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。第2誘電体部55の厚さ方向の寸法L11は、電極53と接地導体板51の間に所定の電圧を印加して第1誘電体部54の誘電率が小さくなったときのカットオフ周波数をfcとし、使用周波数、すなわち誘電体部52を伝播させる電磁波の周波数をfとしたとき、1.03<f/fc<1.5となるように、好ましくは、1.03<f/fc<1.2となるように選ばれる。
電極53および接地導体板51には、電圧印加手段19が接続され、移相器40を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図8は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器60を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器60における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器60の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器60は、イメージ線路を形成する。移相器60は、接地導体板51と、誘電体部61と、電極63とを含んで構成される。
誘電体部61は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、直方体形状に形成され、伝播方向Xにおいて接地導体板51の両端部間にわたって形成される。前記誘電体部61は、電磁波の伝播方向Xおよび接地導体板51の厚さ方向Zに垂直な幅方向Yの中央に形成され、接地導体板51の幅方向Yの端部から所定の距離離間して設けられる。
誘電体部61には、電極63が埋設されて形成される。電極63は、前記厚さ方向Zに予め定める間隔L32をあけて形成される第1電極63aと第2電極63bから構成される。予め定める間隔L32は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。L32を小さくしたほうが、誘電体部61に印加することができる電界強度が高くなり、位相変化を大きくすることができるので好ましいが、小さくし過ぎると損失が増加する。L32を大きくし過ぎると誘電体部61に印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。
誘電体部61は、直方体形状でかつ板状に形成され、誘電体部61の伝播方向Xの両端部間にわたって形成される。第1電極63aおよび第2電極63bのそれぞれの厚さは、前述した第1および第2電極24a,24bと同様に選ばれる。また第1電極63aの幅方向Yの長さは、第2電極63bに接触しない範囲で、可及的に大きくなるように選ばれる。
誘電体部61は、伝播方向Xに垂直な断面において、幅方向Yに蛇行しながら厚さ方向Zに延びるように形成される。
第2電極63bの厚さ方向Zにおける接地導体板51側の端部は、接地導体板51に接続される。
第1および第2電極63a,63bには、電圧印加手段19が接続され、移相器60では、前述した各移相器と同様に、伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図9は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器70を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器70における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器70の前記伝播方向Xの端面と同形状である。移相器70は、直方体形状に形成される。
移相器70は、ストリップ線路を形成する。移相器70は、ストリップ導体部71と、誘電体部72と、第1および第2電極24a,24bと、第1および第2平板導電体部23a,23bとを含んで構成される。
ストリップ導体部71は、導電体によって形成され、直方体形状に形成される。ストリップ導体部71は、前述した第1および第2平板導電体部23a,23bと同様の物質によって形成される。ストリップ導体部71は、誘電体部72に埋設されて形成される。
誘電体部72は、直方体形状に形成される。誘電体部72には、前記ストリップ導体部71が、誘電体部72の端面からストリップ導体部71の延在方向の両端部を露出させた状態で埋設される。すなわちストリップ導体部71の延在方向は、電磁波の伝播方向Xである。ストリップ導体部71は、誘電体部72の、前記電磁波の伝播方向Xに相互に垂直な幅方向Yおよび厚さ方向Zの中央部に形成される。
誘電体部72の前記厚さ方向Zの両端面には、第1および第2平板導電体部23a,23bがそれぞれ設けられ、誘電体部72は第1および第2平板導電体部23a,23bに挟まれて挟持される。ストリップ導体部71は、第1および第2平板導電体部23a,23bに平行に形成される。ストリップ導体部71の前記厚さ方向Zの寸法は、前記幅方向Yの寸法よりも小さく形成される。
誘電体部72は、第1および第2誘電体部74,75を含んで構成される。第1誘電体部74は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部75は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質および同様の厚さに形成される。
第1誘電体部74は、ストリップ導体部71の厚さ方向Zの両側にそれぞれ設けられ、ストリップ導体部71を挟持して設けられる。第1誘電体部74は、ストリップ導体部71の厚さ方向Zの両端面上の全面にわたって形成され、第1誘電体部74とストリップ導体部71との積層体76は直方体形状に形成される。
第2誘電体部75は、前記積層体76を外囲して設けられる。第1および第2誘電体部74,75の間に第1および第2電極24a,24bがそれぞれ埋設されて形成される。第1および第2電極24a,24bは、前記積層体76の厚さ方向Zの両側にそれぞれ設けられ、積層体76を挟持して設けられる。第1および第2電極24a,24bは、積層体76の前記厚さ方向Zの端面上の全面にわたって形成される。
第1誘電体部74の厚さ方向Zの寸法L12は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L12が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L12が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。またL12を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
ストリップ導体部71と第1および第2電極24a,24bとには、電圧印加手段19が接続され、ストリップ導体部71と第2電極24aとの間に電圧を印加し、またストリップ導体部71と第2電極24bとの間に電圧を印加することによって、移相器70を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図10は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器80を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器80は、直方体形状に形成される。移相器80における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器80の前記伝播方向Xの端面と同形状である。移相器80は、直方体形状に形成される。
移相器80は、ストリップ線路を形成する。移相器80は、ストリップ導体部71と、誘電体部82と、第1および第2電極24a,24bと、第1および第2平板導電体部23a,23bとを含んで構成される。
誘電体部82は、直方体形状に形成される。誘電体部82には、前記ストリップ導体部71が、誘電体部82の端面からストリップ導体部71の延在方向の両端部を露出させた状態で埋設される。すなわちストリップ導体部71の延在方向は、電磁波の伝播方向Xである。ストリップ導体部71は、誘電体部82の、前記電磁波の伝播方向Xに相互に垂直な幅方向Yおよび厚さ方向Zの中央部に形成される。
誘電体部82の前記厚さ方向Zの両端面には、第1および第2平板導電体部23a,23bがそれぞれ設けられ、誘電体部82は第1および第2平板導電体部23a,23bに挟まれて挟持される。ストリップ導体部71は、第1および第2平板導電体部23a,23bに平行に形成される。ストリップ導体部71の前記厚さ方向Zの寸法は、前記幅方向Yの寸法よりも小さく形成される。
誘電体部82は、第1および第2誘電体部84,85を含んで構成される。第1誘電体部84は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部85は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成される。
第1誘電体部84は、ストリップ導体部71の厚さ方向Zの両側にそれぞれ、ストリップ導体部71から離間して設けられる。第1誘電体部84は、誘電体部82の幅方向Yおよび厚さ方向Zの両端部間にわたって形成される。第1誘電体部84は、ストリップ導体部71に関して厚さ方向Zにおいて等しい距離に設けられ、すなわちストリップ導体部71の軸線を含み厚さ方向Zに垂直な仮想一平面に関して面対称に形成される。各第1誘電体部84は、第2誘電体部85に挟まれて設けられる。
第1および第2電極24a,24bは、各第1誘電体部84の厚さ方向Zの両側にそれぞれ設けられ、第1誘電体部84を挟持して、すなわち第1誘電体部84の両側に設けられ、第1および第2誘電体部84,85の間に埋設されて設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部84の前記厚さ方向Zの端面上の全面にわたってそれぞれが形成される。
各第1誘電体部84の厚さは方向Zの寸法L13は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L13が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L13が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L13を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
また各誘電体部84,85は、厚さ方向Zにおいて、ストリップ導体部71と第1および第2平板導電体部23a,23bとの間で、伝播電磁波の電界強度の大きなストリップ導体部71寄りの位置に設けられる。
各第1および第2電極24a,24bには、それぞれ電圧印加手段19が接続され、移相器80を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図11は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器90を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器90における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器90の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器90は、マイクロストリップ線路を形成する。移相器90は、ストリップ導体部71と、接地導体板51と、誘電体部92と、電極93とを含んで構成される。誘電体部92は、直方体形状に形成される。
誘電体部92の厚さ方向Zの第1表面92a上には、ストリップ導体部71が積層されて設けられる。ストリップ導体部71は、伝播方向Xにおいて誘電体部92の両端部間にわたって、誘電体部92の幅方向Yの中央に形成され、誘電体部92の幅方向Yの端部から所定の距離離間して設けられる。誘電体部92の厚さ方向Zの第2表面92b上には、全面にわたって接地導体板51が積層して形成される。
誘電体部92は、第1誘電体部94および第2誘電体部95を含んで構成され、電極93が埋設されて形成される。第1誘電体部94は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部95は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成され、電極93は、前述した実施の形態の第1および第2電極24a,24bと同様の物質で、かつ同様の厚さに形成される。
第1誘電体部94は、誘電体部92のうち、ストリップ導体部71が積層される部分に形成される。第1誘電体部94は、直方体形状に形成され、その厚さ方向Zの端面は、ストリップ導体部71の厚さ方向Zの端面と同じ形状に形成され、第1誘電体部94とストリップ導体部71との積層体が直方体形状となるように形成される。第1誘電体部94の厚さ方向Zの寸法L14は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L14が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L14が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L14を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
電極93は、厚さ方向Zにおいて第1誘電体部94のストリップ導体部71が積層される第1端面94aとは反対側の第2端面94bに積層され、第1および第2誘電体部94,95との間に埋設されて設けられる。電極93は、第1誘電体部94の第2端面94bの全面にわたって積層して形成される。
電極93およびストリップ導体部71には、電圧印加手段19が接続され、移相器90を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器100を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器100は、直方体形状に形成される。移相器100における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器100の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器100は、マイクロストリップ線路を形成する。移相器100は、ストリップ導体部71と、接地導体板51と、誘電体部102と、第1および第2電極24a,24bを含んで構成される。
誘電体部102の厚さ方向Zの第1表面102a上には、ストリップ導体部71が積層されて設けられる。ストリップ導体部71は、伝播方向Xにおいて誘電体部102の両端部間にわたって、誘電体部102の幅方向Yの中央に形成され、誘電体部102の幅方向Yの端部から所定の距離離間して設けられる。誘電体部102の厚さ方向Zの第2表面102b上には、全面にわたって接地導体板51が積層して形成される。
誘電体部102は、第1誘電体部104および第2誘電体部105を含んで構成され、第1および第2電極24a,24bが埋設されて形成される。第1誘電体部104は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部105は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成される。
第1誘電体部104は、ストリップ導体部71と、接地導体板51との間で、ストリップ導体部71から離間して設けられる。第1誘電体部104は、誘電体部102の幅方向Yおよび厚さ方向Zの両端部間にわたって形成される。第1誘電体部104は、第2誘電体部105に挟まれて設けられる。
第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部104の厚さ方向Zの両側にそれぞれ設けられ、第1誘電体部104を挟持して設けられ、第1および第2誘電体部104,105の間に埋設されて設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部105の前記厚さ方向Zの端面上の全面にわたってそれぞれが形成される。
第1誘電体部104の厚さ方向Zの寸法L15は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L15が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L15が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L15を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
また第1誘電体部104は、厚さ方向Zにおいて、ストリップ導体部71と接地導体板51との間で、伝播電磁波の電界強度の大きなストリップ導体部71寄りの位置に設けられる。
第1および第2電極24a,24bには、それぞれ電圧印加手段19が接続され、移相器100を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器110を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器110における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器110の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器110は、コプレーナ線路を形成する。移相器110は、ストリップ導体部71と、グランド導体部111と、誘電体部112と、第1および第2電極24a,24bとを含んで構成される。誘電体部112は、直方体形状に形成される。
誘電体部112の厚さ方向Zの第1表面112a上には、ストリップ導体部71が積層されて設けられる。ストリップ導体部71は、伝播方向Xにおいて誘電体部112の両端部間にわたって、誘電体部112の幅方向Yの中央に形成され、誘電体部112の幅方向Yの端部から所定の距離離間して設けられる。第1表面112a上には、ストリップ導体部71の幅方向Yの両側に、ストリップ導体部71から予め定める距離L16離間して、グランド導体部111がそれぞれ形成される。グランド導体部111は、ストリップ導体部71に沿って形成される。グランド導体部111は、ストリップ導体部71と同様な厚さに形成され、誘電体部112の幅方向Yの端部にわたって形成される。
誘電体部112は、第1誘電体部114および第2誘電体部115を含んで構成され、第1および第2電極24a,24bが埋設されて形成される。第1誘電体部114は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部115は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成される。
第1誘電体部114は、ストリップ導体部71およびグランド導体部111から厚さ方向Zに離間して設けられる。第1誘電体部114は、誘電体部102の幅方向Yおよび厚さ方向Zの両端部間にわたって形成される。第1誘電体部114は、第2誘電体部115に挟まれて設けられる。
第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部114の厚さ方向Zの両側にそれぞれ設けられ、第1誘電体部114を挟持して設けられ、第1および第2誘電体部114,115の間に埋設されて設けられる。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部114の前記厚さ方向Zの端面上の全面にわたってそれぞれが形成される。
第1誘電体部114の厚さ方向Zの寸法L17は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L17が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L17が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L17を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
また第1誘電体部114は、厚さ方向Zにおいて、伝播電磁波の電界強度の大きなストリップ導体部71およびグランド導体部111からできるだけ近い位置に設けられる。
第1および第2電極24a,24bには、それぞれ電圧印加手段19が接続され、移相器110を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図14は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器120を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器120における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器120の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器120は、スロット線路を形成する。移相器20は、スロット導体部121と、誘電体部112と、第1および第2電極24a,24bとを含んで構成される。
誘電体部112の厚さ方向Zの第1表面112a上には、スロット導体部121が積層されて設けられる。スロット導体部121は、前述したストリップ導体部71と同様な物質によって形成され、同様の厚さに形成される。スロット導体部121は、誘電体部112の幅方向Yの中央部を除いて誘電体部112に積層される。スロット導体部121は、第1スロット導体部121a、および第2スロット導体部121bを有する。第1スロット導体部121aおよび第2スロット導体部121bは、前記幅方向Yに予め定める距離L18離間して設けられる。
第1および第2電極24a,24bには、それぞれ電圧印加手段19が接続され、移相器20を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図15は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器130を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器130における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器130の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器130は、誘電体導波管を形成する。移相器130は、第1および第2導波管形成部131a,131bと、誘電体部132と、複数の電極Tと、絶縁部135a,135bとを含んで構成される。
誘電体部132は、直方体形状に形成され、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成される。誘電体部132には、この誘電体部132の電磁波の伝播方向Xの両端面を除いて、電磁波の伝播方向Xに沿う軸線A1まわりに、第1および第2導波管形成部131a,131bが形成される。第1および第2導波管形成部131a,131bは、誘電体部132に密着して設けられる。
第1および第2導波管形成部131a,131bは、誘電体部132の前記伝播方向Xにおける両端部間にわたって形成される。第1および第2導波管形成部131a,131bは、前記軸線A1に関して回転対称に形成される。本発明の実施の形態では、第1および第2導波管形成部131a,131bは、伝播方向Xに垂直な断面が略U字形状に形成される。第1導波管形成部131aは、誘電体部132の厚さ方向Zにおける第1端部132c側から誘電体部132を覆い、厚さ方向Zにおける中間部まで延びる。第2導波管形成部131bは、誘電体部132の厚さ方向Zにおける第2端部132d側から誘電体部132を覆い、厚さ方向Zにおける中間部まで延びる。第1および第2導波管形成部131a,131bは、相互に接触しないように独立して形成され、誘電体部132の外表面に沿って前記軸線A1まわりに、予め定める距離L18離間して形成される。前記予め定める距離L18は、第1および第2導波管形成部131a,131bの間から誘電体部22を伝播する電磁波の漏れないように選ばれ、第1および第2導波管形成部131a,131bによって形成される導波管の内寸法の長辺(厚さ方向Zの大きさ)の長さの2分の1以下に選ばれる。
誘電体部132には、この誘電体部132と一体に形成される絶縁部135a,135bが設けられる。絶縁部135a,135bは、前記誘電体部132と同じ物質によって形成される。絶縁部135a,135bは、前記軸線A1まわりに第1および第2導波管形成部131a,131bの間に設けられ、隣接する第1および第2導波管形成部131a,131bが接触してしまうことを防止する。絶縁部135a,135bは、誘電体部132の前記伝播方向Xの両端部間にわたって設けられ、それぞれ第1および第2導波管形成部131a,131bに接触して設けられる。
前記絶縁部135a,135bは、誘電体部132の表面から幅方向Yに、予め定める距離L19突出する。予め定める距離L19は、誘電体部132に積層される第1および第2導波管形成部131a,131bの幅方向Yにおける厚さに等しく選ばれる。前記予め定める距離L19は、誘電体部132中を導波する平面波の波長の(2n−1)/4(nは自然数)に選ばれる。予め定める距離L18,L19を前述のように選ぶことによって、軸線A1まわりに第1および第2導波管形成部131a,131bが離間していても、この第1および第2導波管形成部131a,131bが離間する部分、すなわち絶縁部135a,135bから、誘電体部132を伝播させる電磁波の漏洩を防止することができる。
電極Tは、幅方向Yに相互に所定の間隔L6をあけて、誘電体部132に埋設されて形成される。電極Tは、誘電体部132の電磁波の伝播方向Xの両端部間にわたって形成される。電極Tは、伝播方向Xに沿って相互に平行に形成される。幅方向Yに相互に隣接する電極Tは、第1および第2導波管形成部131a,131bのうち異なる導波管形成部に接続される。すなわち電極Tのうち、幅方向Yの第1方向に向かって奇数番目の電極T1,T3,…,Tm−2,Tm(記号mは正の奇数)は、第1導波管形成部131aに接続され、厚さ方向Zの第1方向に向かって偶数番目の電極T2,T4,…,Tk−2,Tk(記号kは正の偶数)は、第1導波管形成部131bに接続される。
第1および第2導波管形成部131a,131bには、それぞれ電圧印加手段19が接続され、移相器130を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
図16は、本発明の実施のさらに他の形態の移相器140を模式的に示す斜視図である。本実施の形態において、前述した各実施の形態の構成と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。移相器140における電磁波の伝播方向Xに垂直な断面は、移相器140の前記伝播方向Xの端面と同形状である。
移相器140は、誘電体導波管を形成する。移相器140は、導波管141と、誘電体部142と、第1および第2電極24a,24bとを含んで構成される。
導波管141は、前記第1および第2平板導電体部23a,23bと同様の物質によって形成され、筒状に形成される。誘電体部142は、伝播方向Xの両端面を露出させた状態で導波管141によって外囲される。誘電体部142と導波管141の内周面とは、密着する。
誘電体部142は、第1誘電体部145および第2誘電体部146を含んで構成され、第1および第2電極24a,24bが埋設されて形成される。第1誘電体部145は、前述した実施の形態の第1誘電体部25と同様の物質によって形成され、第2誘電体部146は、前述した実施の形態の第2誘電体部26と同様の物質によって形成される。
第1誘電体部145は、誘電体部142の厚さ方向Zの中央部に形成され、厚さ方向Zにおいて第2誘電体146に挟まれて設けられる。第1誘電体部145は、導波管141の伝播方向Xに垂直な断面における短手方向Yに沿って、誘電体部22の前記短手方向Yの両端部間にわたって形成される。第1および第2電極24a,24bは、第1誘電体部145の厚さ方向Zの両端面に積層して設けられ、第1誘電体部145を挟持して、第1誘電体部145と第2誘電体部146との間に設けられる。第1および第2電極24a,24bは、電磁波の伝播方向Xに沿って、誘電体部142の両端部間にわたって形成される。第1および第2電極24a,24bは、幅方向Yにおいて導波管141から離間して設けられる。第1誘電体部94の厚さ方向Zの寸法L20は、たとえば0.1μm〜50μmのように選ばれる。寸法L20が0.1μmよりも小さいと誘電率の変化する部分が小さくなるため所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。寸法L20が50μmよりも大きいと印加できる電界強度が小さくなって所望の位相変化を得るのに必要な線路長が長くなり、移相器が大きくなってしまう。また寸法L20を大きくして、前述したように電極を積層構造にすると、電極による損失が大きくなってしまう。
第1および第2電極24a,24bには、電圧印加手段19が接続され、移相器140を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述の実施の形態の各移相器と同様の効果を達成することができる。
前述した各実施の形態の移相器のうち、カットオフ周波数を有する移相器30,40,50,60,130,140では、第1および第2電極24a,24bあるいは電極Tに電圧を印加したときのカットオフ周波数をfcとし、各移相器30,40,50,60,130,140を、伝播する電磁波の周波数をfとしたとき、fcとfとは、1.03<f/fc<1.5、好ましくは1.03<f/fc<1.2となるように形成される。
図17は、移相器20とマイクロストリップ線路231との接続構造230を模式的に示す斜視図である。以下、移相器20とマイクロストリップ線路231との接続構造230を、単に「接続構造230」という。図18は、移相器20の伝播方向Xに沿う軸線A2を含み、厚さ方向Zに垂直な仮想一平面における接続構造230の断面図であり、図19は、移相器20の伝播方向Xに沿う軸線A2を含み、幅方向Yに垂直な仮想一平面における接続構造230の断面図である。
接続構造230では、第1誘電体部25の幅方向Yおよび厚さ方向Zの寸法は、伝播方向Xに垂直な断面において、短辺の長さに対する長辺の比を、LSMモードがカットオフとなり、LSEモードのみが伝播する状態となるまで大きくし、LSEモードがカットオフ付近で伝播するように選ばれる。またLSEモードのカットオフ周波数が、第1誘電体部25を伝播させる電磁波の周波数未満になるように選ばれる。
LSEモードでは、LSMモードに比べて第1誘電体部25の厚さ方向Zの長さを小さくすることができるので、第1および第2電極24a,24bをより近接して設けることができ、所定の位相変化を得るために必要な電圧をより低減することができる。
移相器20の第1入出力端22aまたは第2入出力端22bの少なくともいずれか一方に、平面線路であるマイクロストリップ線路231が接続される。ここでは、移相器20の第1入出力端22aにマイクロストリップ線路231が接続される場合について示すが、移相器20の第2入出力端22bにマイクロストリップ線路231が接続される場合についても、同様である。接続構造230では、移相器20における電磁波の伝播方向の第1端面と、マイクロストリップ線路231における電磁波の伝播方向の第1端面とが突き合わされて接続される。
マイクロストリップ線路231は、マイクロストリップ誘電体部232と、マイクロストリップ誘電体部232に設けられるストリップ導体部233と、接地導体部234とを含んで構成される。ストリップ導体部233と接地導体部234とは、所定の間隔をあけて設けられる。ストリップ導体部233と接地導体部234とは、前述した第1および第2平板導電体部23a,23bと同様の物質によって形成される。
マイクロストリップ誘電体部232は、前述した第2誘電体部26と同様の物質によって形成され、第2誘電体部26の誘電率に等しい誘電率を有する誘電体によって形成される。マイクロストリップ誘電体部232を第2誘電体部26の誘電率に等しい誘電率を有する誘電体によって形成することによって、反射の小さい接続構造とすることができる。マイクロストリップ誘電体部232は、厚さ方向Zの両面が平面に形成され、本発明の実施の形態では直方体形状を有する。マイクロストリップ誘電体部232の厚さ方向Zの第1表面部235には、幅方向Yの中央部236にストリップ導体部233が積層して形成される。ストリップ導体部233は、直方体形状を有する。ストリップ導体部233は、前記伝播方向Xに沿って延びる。ストリップ導体部233の幅方向Yの長さL20は、第1誘電体部25の幅方向Yの長さ、すなわち第1および第2平板導電体部23a,23bの間隔L1未満に選ばれる。
マイクロストリップ誘電体部232の厚さ方向Zの第2表面部238には、接地導体部234が形成される。接地導体部234は、第2表面部238の全面にわたって形成される。
ストリップ導体部233の電磁波の伝播方向Xにおける端面のうち、移相器20に臨む端面241と、前記第1入出力端22aの第1誘電体部25の端面242とを突き合わせて、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路、およびストリップ導体部233とが結合される。マイクロストリップ線路231は、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路のLSEモードに結合する。ストリップ導体部233の移相器20に臨む端面241の中央は、第1誘電体部25の端面242の中央に連なる。マイクロストリップ誘電体部232の幅方向Yの寸法は、移相器20の幅方向Yにおける第1および第2平板導電体部23a,23bの外表面間の長さに等しく選ばれる。
ストリップ導体部233の伝播方向Xに垂直な断面における長手方向と、第1誘電体部25の伝播方向Xに垂直な断面における長手方向とが一致するように、ストリップ導体部233、マイクロストリップ誘電体部232および接地導体部234の積層方向と、第1および第2誘電体部25,26の積層方向とを揃えて、ストリップ導体部233と第1誘電体部25とが接続される。これによって、ストリップ導体部233の設計の自由度を向上させることができる。
マイクロストリップ誘電体部232は、前記第1入出力端22aに接触して設けられる。接地導体部234は、第1および第2平板導電体部23a,23bに接触して設けられる。接地導体部234は、第1および第2平板導電体部23a,23bに非接触となるように設けられる。ストリップ導体部233は、第1および第2電極24a,24bには接触しない。
ストリップ導体部233の幅方向Yの長さL23および厚さ方向Zの長さL21は、マイクロストリップ線路231の特性インピーダンスが、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路の特性インピーダンスと整合するように選ばれる。
以上のような構成とすれば、マイクロストリップ線路231の高周波の電磁界分布が、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路のLSEモードの電磁界分布に近似するので、マイクロストリップ線路231と移相器20との接続部において、電磁界が円滑に移行する。したがって、マイクロストリップ線路231と移相器20との接続損失を低減することができる。またLSEモードの高周波信号をマイクロストリップ線路231に良好に取り出すことができるので、移相器20と、基板に実装されて、移相器20を通過する高周波信号を利用する電子回路との電気的な接続の信頼性を向上させることができる。
前記接続構造230において、前記移相器20および前記マイクロストリップ線路231を一体に形成して、マイクロストリップ線路付の移相器を構成してもよい。
また前述した移相器30についても移相器20の場合と同様に、マイクロストリップ線路231と接続して用いてもよい。
図20は、移相器20とストリップ線路251との接続構造250を模式的に示す斜視図である。以下、移相器20とストリップ線路251との接続構造250を、単に「接続構造250」という。図21は、移相器20の伝播方向Xに沿う軸線A2を含み、厚さ方向Zに垂直な仮想一平面における接続構造250の断面図であり、図22は、移相器20の伝播方向Xに沿う軸線A2を含み、幅方向Yに垂直な仮想一平面における接続構造250の断面図である。図23は、図21の切断面線XXIII−XXIIIから見た断面図である。
接続構造250は、図17に示す接続構造230に類似し、同様の構成を有するので、同様の部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
移相器20の第1入出力端22aおよび第2入出力端22bの少なくともいずれか一方に、ストリップ線路251が接続される。ここでは、移相器20の第1入出力端22aにストリップ線路251が接続される場合について示すが、移相器20の第2入出力端22bにストリップ線路251が接続される場合についても、同様である。接続構造250では、移相器20における電磁波の伝播方向の第1端面と、ストリップ線路251における電磁波の伝播方向の第1端面とが突き合わされて接続される。
ストリップ線路251は、ストリップ誘電体部252と、ストリップ誘電体部252に設けられるストリップ導体部233と、接地導体部254とを含んで構成される。ストリップ導体部233と接地導体部234とは、所定の間隔をあけて設けられる。
ストリップ誘電体部252は、前述したマイクロストリップ誘電体部232と同様の物質によって形成され、接地導体部254は、前述した接地導体部234と同様の物質によって形成される。ストリップ誘電体部252は、直方体形状を有する。ストリップ誘電体部252の厚さ方向Zおよび幅方向Yの表面部には、接地導体部254が形成される。接地導体部254は、伝播方向Xに延びる軸線まわりにストリップ誘電体部252を外囲する。
ストリップ導体部233は、ストリップ誘電体部252に埋設されて設けられる。ストリップ導体部233は、幅方向Yおよび厚さ方向Zにおいてストリップ誘電体部252の中央部に設けられる。ストリップ導体部233は、伝播方向Xにおいてストリップ誘電体部252の両端部間にわたって形成される。
ストリップ導体部233は、ストリップ誘電体部252の移相器20に接触する端面255よりも、移相器20側に突出する突出部256を有する。第1誘電体部25のストリップ線路251に臨む端部257には、前記突出部256が挿入される挿入孔258が形成される。挿入孔258は、突出部256と同じ大きさに形成される。突出部256は、前記挿入孔258に挿入して設けられる。突出部256および挿入孔258の伝播方向Xに沿う方向の長さL22は、伝播する電磁波の、突出部256における波長の約(2n−1)/4(nは自然数)に選ばれる。これによって、第1入出力端22aとストリップ線路251との界面で反射した電磁波と、突出部256の先端と第1誘電体部25との界面で反射した電磁波との位相差を、π(rad)として、反射波を打ち消すことができ、移相器20とストリップ線路251との界面における反射が低減され、損失を低減することができる。
ストリップ誘電体部252と第1および第2誘電体部25,26とは接触して接続される。接地導体部254は、第1および第2平板導電体部23a,23bに接触して設けられる。また接地導体部254は、第1および第2電極24a,24bと非接触に設けられる。
ストリップ線路251は、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路のLSEモードに結合する。ストリップ導体部233と、第1誘電体部25とは、同軸に設けられる。ストリップ線路251の幅方向Yの寸法は、移相器20の幅方向Yにおける第1および第2平板導電体部23a,23bの外表面間の長さに等しく選ばれ、ストリップ線路251の厚さ方向Yの寸法は、移相器20の厚さ方向Zにおける外表面間の長さに等しく選ばれる。
ストリップ導体部233の伝播方向Xに垂直な断面における長手方向と、第1誘電体部25の伝播方向Xに垂直な断面における長手方向とが一致するように、ストリップ導体部233と第1誘電体部25とが接続される。これによって、ストリップ導体部233の設計の自由度を向上させることができる。
ストリップ導体部233の幅方向Yの長さL20および厚さ方向Zの長さL21は、ストリップ線路251の特性インピーダンスが、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路の特性インピーダンスと整合するように選ばれる。
以上のような構成とすれば、ストリップ線路251の高周波の電磁界分布が、誘電体部22と第1および第2平板導電体部23a,23bとによって形成される非放射性誘電体線路のLSEモードの電磁界分布に近似するので、ストリップ線路251と移相器20との接続部において、電磁界が円滑に移行するので接続損失を低減することができる。またLSEモードの高周波信号をストリップ線路251に良好に取り出すことができるので、移相器20と、基板に実装されて、移相器20を通過する高周波信号を利用する電子回路との電気的な接続の信頼性を向上させることができる。
本発明のさらに他の実施の形態において、前記移相器20と前記ストリップ線路251とを一体形成して、ストリップ線路付の移相器を構成してもよい。
また前述した移相器30についても移相器20の場合と同様に、前記ストリップ線路251と接続して用いてもよい。
前述した図17に示す接続構造において、ストリップ導体部233に前記突出部256を設けて、前記突出部256を第1誘電体部25に設けられる挿入孔258に挿入して構成してもよい。
図24は、本発明の実施の一形態の高周波送信器260の構成を示す模式図である。高周波送信器260は、前述した図1に示す実施の形態の移相器20と、高周波発振器261と、伝送線路262と、送信用アンテナ263と、スタブ264とを含んで構成される。以下、高周波伝送線路を、伝送線路という。高周波発振器261は、ガンダイオードを利用したガン発振器、またはインパットダイオードを利用したインパット発振器またはFET(Field Effect Transistor)などを利用したMMIC(Microwave Monolithic
Integrated Circuit)発振器などを含んで構成され高周波信号を発生する。伝送線路262は、マイクロストリップ線路またはストリップ線路によって構成される。伝送線路262の高周波信号の伝送方向の第1端部262aは高周波発振器261に接続され、伝送線路262の高周波信号の伝送方向の第2端部262bは送信用アンテナ263に接続される。送信用アンテナ263は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。高周波信号の伝送方向は、電磁波の伝播方向である。
移相器20は、前述したマイクロストリップ線路231、または前述したストリップ線路251を介して高周波信号が誘電体部22を通過するように、伝送線路262に挿入される。スタブ264は、たとえばオープンスタブによって実現され、高周波発振器261の特性調整回路として機能する。スタブ264は、高周波信号の伝送方向における移相器20の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記伝送線路262に設けられる。
さらに具体的に述べると、伝送線路262は、第1および第2伝送線路268,269を含んで構成される。第1伝送線路268の高周波信号の伝送方向における第1端部268aは、高周波発振器261に接続され、第1伝送線路268の高周波信号の伝送方向における第2端部268bは、移相器20の第1入出力端22aに接続される。第2伝送線路269の高周波信号の伝送方向における第1端部269aは、移相器20の第2入出力端22bに接続され、第2伝送線路269の高周波信号の伝送方向における第2端部269bは、送信用アンテナ263に接続される。
高周波発振器261で発生した高周波信号は、第1伝送線路268、移相器20の誘電体部22、第2伝送線路268を通過して、送信用アンテナ263に与えられ、送信用アンテナ263から電波として放射される。
高周波送信器260では、高周波発振器261と送信用アンテナ263の途中にはスタブ264が設けられ、高周波発振器261の伝送線路262への接続部や送信用アンテナ263の伝送線路262への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な発振特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力が得られる。ただし、スタブ264を設けても、たとえば高周波発振器261を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路262の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。高周波送信器260では、伝送線路262に、伝送線路262を伝送される高周波信号の電磁波が誘電体部22を通過するように、前記移相器20が挿入されるので、たとえば高周波発振器261を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路の配線幅のばらつきなどによって伝送線路262に起因して発生する位相のずれを個々に調整して整合をとることができ、安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送信器260を実現することができる。また移相器20を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器20を設けても高周波送信器260を小型に形成することができ、また移相器20に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
高周波送信器260では、移相器20を用いているが、前記移相器20に変えて、前述した実施の形態の移相器30など、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また高周波送信器260において、前記伝送線路262は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図25は、本発明の実施の一形態の高周波受信器270の構成を示す模式図である。図24に示す前述した実施の形態の高周波送信器260と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。
高周波受信器270は、前述した実施の形態の移相器20と、高周波検波器271と、伝送線路262と、スタブ264と、受信用アンテナ273とを含んで構成される。高周波検波器271は、たとえば、ショットキーバリアダイオード検波器、ビデオ検波器またはミキサMMICなどによって実現される。
伝送線路262の高周波信号の伝送方向の第1端部262aは、高周波検波器271に接続され、伝送線路262の高周波信号の伝送方向の第2端部262bは、受信用アンテナ273に接続される。受信用アンテナ273は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。
移相器20は、高周波信号が誘電体部22を通過するように、伝送線路262に挿入される。スタブ264は、高周波信号の伝送方向における移相器20の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記伝送線路262に設けられる。
受信用アンテナ273によって外部から到来する電波を捕捉すると、受信用アンテナ273は電波に基づく高周波信号を伝送線路262に与え、移相器20の誘電体部22を通過して、高周波検波器271に受信した高周波信号が与えられる。高周波検波器271は、高周波信号を検波して、高周波信号に含まれる情報を検出する。
高周波受信器270では、受信用アンテナ273によって捕捉した高周波信号は、伝送線路262に伝送されて高周波検波器271によって検波される。受信用アンテナ273と高周波検波器271の途中にはスタブ264が設けられ、高周波検波器271の伝送線路262への接続部や受信用アンテナ273の伝送線路262への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な検波特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力が得られる。スタブ264を設けても、たとえば高周波検波器271を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路262の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。高周波受信器270では、伝送線路262には、伝送線路262を伝送される高周波信号の電磁波が前記誘電体部22を通過するように、前記移相器20が挿入されるので、たとえば高周波検波器271を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路の配線幅のばらつきなどによって伝送線路262に起因して発生する位相のずれを個々に調整して、整合をとることができ、安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波受信器270を実現することができる。また移相器20を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器20を設けても高周波受信器270を小型に形成することができ、また移相器20に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
高周波受信器270では、移相器20を用いているが、前記移相器20に変えて、前述した実施の形態の移相器30など、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また高周波受信器270において、前記伝送線路262は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図26は、本発明の実施の一形態の高周波送受信器280を備えるレーダ装置290の構成を示す模式図である。レーダ装置290において、図24および図25に示す前述した実施の形態の高周波送信器260および高周波受信器270と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。レーダ装置290は、高周波送受信器280と、距離検出器291を含んで構成される。
高周波送受信器280は、前述した実施の形態の移相器20と、高周波発振器261と、第1〜第5伝送線路281,282,283,284,285と、分岐器286と、分波器287と、送受信用アンテナ288と、ミキサ289と、スタブ264とを含んで構成される。送受信用アンテナ288は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。第1〜第5伝送線路281,282,283,284,285は、前述した伝送線路262と同様の構成を有する。
第1伝送線路281の高周波信号の伝送方向の第1端部281aは、高周波発振器261に接続され、第1伝送線路281の高周波信号の伝送方向の第2端部281bは、分岐器286に接続される。移相器20は、高周波信号が誘電体部22を通過するように、第1伝送線路281に挿入される。スタブ264は、高周波信号の伝送方向における移相器20の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記第1伝送線路281に設けられる。
分岐器(切替器)286は、第1、第2および第3端子286a,286b,286cを有し、第1端子286aに与えられる高周波信号を、第2端子286bおよび第3端子286cに選択的に出力する。分岐器286は、たとえば高周波スイッチ素子によって実現される。分岐器286には、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1端子286aおよび第2端子286b、または第1端子286aおよび第3端子286cを選択的に接続する。また分岐器286は、たとえば方向性結合器によって実現される。レーダ装置290は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1端子286aおよび第2端子286bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子286bから出力させた後、第1端子286aおよび第3端子286cを接続して、高周波信号を第3端子286cから出力させる。第2端子286bには、第2伝送線路282の高周波信号の伝送方向の第1端部282aが接続される。前記第3端子286cには、第4伝送線路284の高周波信号の伝送方向の第1端部284aが接続される。
分波器287は、第4、第5および第6端子287a,287b,287cを有し、第4端子287aに与えられる高周波信号を第5端子287bに出力し、第5端子287bに与えられる高周波信号を第6端子287cに出力する。第2伝送線路282の高周波信号の伝送方向の第2端部282bは、前記第4端子287aに接続される。前記第5端子287bには、第3伝送線路283の高周波信号の伝送方向の第1端部283aが接続される。第3伝送線路283の高周波信号の伝送方向の第2端部283bは、送受信用アンテナ288に接続される。
前記第6端子288cには、第5伝送線路285の高周波信号の伝送方向の第1端部285aが接続される。第4伝送線路284の高周波信号の伝送方向の第2端部284bと、第5伝送線路285の高周波信号の伝送方向の第2端部285bとは、ミキサ289に接続される。分波器287は、ハイブリッド回路によって実現される。ハイブリッド回路は、方向性結合器であって、マジックT、ハイブリッドリングまたはラットレースなどによって実現される。
高周波発振器261で発生した高周波信号は、第1伝送線路281および移相器20の誘電体部22を通過して、分岐器286、第2伝送線路282、分波器287ならびに第3伝送線路282を介して送受信用アンテナ288に与えられ、送受信用アンテナ288から電波として放射される。また、高周波発振器261で発生した高周波信号は、第1伝送線路281および移相器20の誘電体部22を通過して、分岐器286ならびに第4伝送線路284を介してミキサ289にローカル信号として与えられる。
送受信用アンテナ288によって外部から到来する電波を受信すると、送受信用アンテナ288は電波に基づく高周波信号を第3伝送線路283に与え、分波器287、第5伝送線路285を介してミキサ289に与えられる。
ミキサ289は、第4および第5伝送線路284,285から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力する。ミキサ289から出力される中間周波信号は、距離検出器291に与えられる。
距離検出器291は、前述した高周波検波器271を含んで構成され、高周波送受信器280から放射され、測定対象物によって反射された電波(エコー)を受信して得られる前記中間周波信号に基づいて、高周波送受信器280から測定対象物までの距離、たとえば送受信用アンテナ288と測定対象物との間の距離を算出する。距離検出器291は、たとえばマイクロコンピュータによって実現される。
高周波送受信器280では、高周波信号が前記誘電体部22を通過するように、前記第1伝送線路281に、前記移相器20が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路262に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送受信器280を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波送受信器280を実現することができ、また、たとえばミキサ289によって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。また移相器20を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器20を設けても高周波送受信器280を小型に形成することができ、また移相器20に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
レーダ装置290では、前記高周波送受信器280からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出することができる。
前記分岐器286は、本実施の形態では方向性結合器によって実現されるので、この場合第1端子286aに与えられる高周波信号は、第2端子286bおよび第3端子286cに分岐して出力される。この場合には、後述するスイッチを用いた分岐器と比較して、送受信用アンテナ288から出力される電波の電力が低くなるが、分岐器286を制御する必要がないので装置の制御が簡単になる。
本実施の形態では、第1伝送線路281に移相器20が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、移相器20は、第1〜第5伝送線路281〜285の少なくともいずれか1つに、高周波信号が前記誘電体部22を通過するように挿入されてもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
また高周波送受信器280では、移相器20を用いているが、前記移相器20に変えて、移相器30など、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。
また本発明の実施のさらに他の形態では、前記分波器287は、サーキュレータによって実現されてもよく、この様な構成であっても、同様の効果を達成することができる。
図27は、本発明の実施の形態の移相器20を備えるアレイアンテナ装置399を含むレーダ装置400の構成を示す模式図である。本発明の形態において、前述実施の形態と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。レーダ装置400は、アレイアンテナ装置399と、高周波送受信器409と距離検出器291を含んで構成される。
アレイアンテナ装置399は、アンテナ素子401とこのアンテナ素子401に付加される移相器20とによって構成される移相器付アンテナ405が配列されて設けられるアンテナアレー体407と、各移相器付アンテナ405に接続される伝送線路402とを含んで構成される。本発明の実施の形態では、複数のアンテナ素子401は、放射方向を揃えて、一列に並べられる。アンテナ素子401は、配列方向Rに沿って、相互に等しい間隔をあけて設けられる。
アンテナ素子401は、たとえばスロットアンテナ、マイクロストリップアンテナ、ホーンアンテナまたは反射鏡アンテナによって実現される。本発明の実施の形態では、アンテナ装置400は、8つのアンテナ素子401と、8つの移相器20とを有する。
伝送線路402は、分岐器403を含んで構成され、入力部404から入力される高周波信号を分岐器403によって複数に分岐して、移相器付アンテナ405に与える。伝送線路402は、マイクロストリップ線路、ストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現される。
高周波送受信器409は、前述した各実施の形態の高周波送受信器280によって構成されてもよく、また高周波送受信器280において移相器を備えないものであってもよく、アレイアンテナ装置399に高周波信号を与え、かつアレイアンテナ装置399によって捕捉した高周波信号を受信する従来からの高周波送受信器によって構成されてもよい。
伝送線路402と、各移相器付アンテナ素子405のアンテナ素子401との間には、それぞれ移相器20が設けられる。伝送線路402を伝播する高周波信号は、移相器20の誘電体部22を通過してアンテナ素子401に与えられる。各移相器20によって、高周波信号の位相をずらすことによって、各アンテナ素子から放射される電波の位相を調整して、図27に示すように等位相面を配列方向Rの第1方向R1から第2方向R2に向かうにつれて、隣接するアンテナ素子401から放射される電波の位相を、Δφずつずらすことによって、放射ビーム406の方向を正面からアンテナ素子401の配列方向Rの第1方向R1または第2方向R2に角度θだけ傾けることができる。
移相器20は、小形でかつ低電圧で動作させることができるので、アンテナ装置400が大型化することない。アレイアンテナ装置399は、移相器20を備えることによって、放射ビームの方向を変更することができ、これによってアンテナ素子401を機械的に動作させることなく、放射ビームの方向を変更することができ、利便性を向上させることができる。
またレーダ装置400が大型化することなく、また放射ビームの方向を容易に変更することができるので、利便性の高いレーダ装置を実現することができる。
前記レーダ装置400において移相器20を、前述した移相器30または前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つに変えて構成してもよい。
本発明の実施の一形態の高周波スイッチは、前述した各実施の形態の移相器のうち、カットオフ特性を有する移相器、すなわち移相器20,30,40,50,60,130,140のうちのいずれかと同じ構成を有する。以下、「高周波スイッチ」を、単に「スイッチ」という。このようなスイッチでは、第1および第2電極24a,24bに電圧を印加することによって、誘電体部22におけるカットオフ周波数を変更することができる。
電圧印加手段19は、伝播する電磁波の周波数よりも低い周波数の交流電圧、または直流電圧を第1および第2電極24a,24bに印加する。電圧印加手段19が、第1および第2電極24a,24bに電圧を印加することによって、誘電体部22の誘電率が小さくなり、これによってスイッチのカットオフ周波数が高くなる。電圧印加手段19が、第1および第2電極24a,24bに電圧を印加しないときは、伝播させる電磁波の周波数(使用周波数)よりもスイッチのカットオフ周波数が低くなるようにスイッチが構成される。電圧印加手段19は、スイッチのカットオフ周波数が、前記使用周波数以上になるように第1および第2電極24a,24bに電圧を印加することができる。したがってスイッチは、電圧印加手段19によって、カットオフ周波数が、誘電体部22を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、カットオフ周波数が、誘電体部22を伝播する電磁波の周波数より高くなるカットオフ状態とを切り替え可能である。本発明の実施の形態では、使用周波数は、一定であり、したがって上記の切り替えによってON/OFF動作が可能である。
前記構成のスイッチでは、誘電体部22に印加される電界に応じて、誘電体部22におけるカットオフ周波数が、誘電体部22を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、前記電磁波の周波数より高くなるカットオフ状態とを切り替え可能であるので、第1および第2電極24a,24bに印加する電圧を変化させることによって、前記伝播状態と前記カットオフ状態とを容易に切り替えることができる。スイッチング態様がOFF状態の時は、カットオフ状態になるので、本質的に高いON/OFF比を得ることができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを実現することができる。また前記構成によって、低い電圧でカットオフ周波数を変化させることができるスイッチを実現することができる。また前記接続構造によって、LSEモードの高周波信号を、平面線路に良好に取り出すことができるので、平面回路基板上への実装性が良好である高周波スイッチを実現することができる。
また誘電体部22に電界を印加するために第1および第2電極24a,24bに与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また誘電体部22の線路長が短くても、カットオフ状態がOFF状態を実現するため高いON/OFF比を得ることができるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができるスイッチを実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチを実現することができる。
本発明の実施の一形態の減衰器は、前述した各実施の形態の移相器20,30,40,50,60,130,140のうちのいずれかと同じ構成を有する。このような減衰器では、第1および第2電極24a,24bに電圧を印加することによって、誘電体部22におけるカットオフ周波数を変更して、伝播特性を変化させることができる。誘電体部22に印加される電界に応じて、誘電体部22における伝播特性を変化させることによって、高周波信号を減衰することができ、また前記接続構造によって、LSEモードの高周波信号を、平面線路に良好に取り出すことができるので、平面回路基板上への実装性が良好である減衰器を実現することができる。減衰器は、前述した移相器と同様にカットオフ周波数をfcとし、使用周波数を周波数をfとしたとき、1.03<f/fc<1.5となるように、好ましくは、1.03<f/fc<1.2となるように形成される。このような減衰器は、第1および第2電極24a,24bに与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、またカットオフ周波数近傍の減衰特性を用いることから、伝送線路の線路長が短くても電磁波を十分に減衰させることができるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる減衰器を実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い減衰器を実現することができる。
図28は、本発明の実施の他の形態の高周波送信器360の構成を示す模式図である。高周波送信器360は、前述した図24の高周波送信器260の移相器20に代えて、高周波スイッチ361を設け、スタブ264を除いた構成であるので、同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。スイッチ361は、前述した各実施の形態の移相器のいずれかと同じ構成を有する。
スイッチ361は、前述したマイクロストリップ線路231、または前述したストリップ線路71を介して伝送線路262に挿入され、伝播状態とすることによって伝送線路262に伝送される高周波信号を透過し、カットオフ状態とすることによって伝送線路262に伝送される高周波信号を遮断する。
スイッチ361が伝播状態のとき、高周波発振器261が発生した高周波信号は、伝送線路262に伝送されて、スイッチ361の誘電体部22を通過して送信用アンテナ263に与えられ、電波として放射される。またスイッチ361がカットオフ状態のとき、高周波発振器261が発生した高周波信号は、スイッチ361を透過しないので送信用アンテナ263には伝送されない。スイッチ361の伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、送信用アンテナ263からパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いることによって、信頼性の高い高周波送信器360を実現することができる。電圧印加手段19が、所定の情報に基づいて、スイッチ361に電圧を印加して、スイッチ361をON/OFFすることによって、所定の情報に対応した電波を送信用アンテナ263から放射させることができる。
高周波送信器360において、前記伝送線路262は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図29は、本発明の実施の他の形態の高周波送受信器380を備えるレーダ装置390の構成を示す模式図である。高周波送受信器380は、前述した図26の高周波送受信器280の移相器20に代えて、高周波スイッチ361を設けた構成であるので、同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。
第1伝送線路281に挿入されるスイッチ361を伝播状態とすることによって、高周波発振器261が発生した高周波信号は、第1伝送線路281に伝送されて分岐器286の第1端子286aに与えられ、分岐器286の第2端子286bから第2伝送線路282に与えられ、分波器287の第4端子287aに与えられて、分波器287の第5端子287bから第3伝送線路283に与えられて、送受信用アンテナ288から放射される。また第1伝送線路281に挿入されるスイッチ361がカットオフ状態となると、高周波発振器261が発生した高周波信号はスイッチ361を透過しないので、遮断されて、送受信用アンテナ288からは放射されない。スイッチ361の伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、送受信用アンテナ288からパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ361を用いることによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。本実施の形態では、第1伝送線路281にスイッチ361が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、スイッチ361は、第1〜第3伝送線路281〜283の少なくともいずれか1つに、挿入されてもよい。このような構成であっても、第1〜第3伝送線路281〜283の少なくともいずれか1つに挿入されるスイッチ361を全て伝播状態とし、また第1〜第3伝送線路281〜283の少なくともいずれか1つに挿入されるスイッチ361のうち1つでもカットオフ状態とすることによって、送受信用アンテナ288からパルス信号波を放射することができ、前述のレーダ装置と同様の効果を達成することができる。
本発明の実施のさらに他の形態のレーダ装置は、前記各実施の形態のレーダ装置において、高周波送受信器280を構成する分岐器286を、2つのスイッチ361によって構成してもよい。
図30は、スイッチ361によって構成される分岐器286の構成を示す模式図である。2つのスイッチ361を、第1スイッチ361Aおよび第2スイッチ361Bという。第1スイッチ361Aは、伝播状態とすることによって第1端子286aおよび第2端子286b間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第1端子286aおよび第2端子286b間で高周波信号を遮断する。第2スイッチ361Bは、伝播状態とすることによって第1端子286aおよび第3端子286c間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第1端子286aおよび第3端子286c間で高周波信号を遮断する。第1および第2スイッチ361A,361Bの、電磁波の伝播方向Xにおける第1端部同士を接続して第1端子286aとする。また第1スイッチ361Aの電磁波の伝播方向Xにおける第2端部を第2端子386とする。また第2スイッチ361Bの電磁波の伝播方向Xにおける第2端部を第3端子386とする。
第1および第2スイッチ361A,361Bには、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1スイッチ361Aが伝播状態のときに、第2スイッチ361Bをカットオフ状態とし、第1スイッチ361Aがカットオフ状態のときに、第2スイッチ361Bを伝播状態とすることによって、第1端子286aから入力される高周波信号を、第2および第3端子286b,286cから選択的に出力することができる。レーダ装置390は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1および第2スイッチ361A,361Bを制御して、第1端子286aおよび第2端子286bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子286bから出力させた後、第1および第2スイッチ361A,361Bを制御して、第1端子286aおよび第3端子286cを接続して、高周波信号を第3端子286cから出力させる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ361を用いて分岐器286を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
本発明の実施のさらに他の形態のレーダ装置は、前記各実施の形態のレーダ装置において、高周波送受信器380を構成する分波器287を、2つのスイッチ361によって構成してもよい。
図31は、スイッチ361によって構成される分波器287の構成を示す模式図である。分波器287は、2つのスイッチ361を含んで構成される。2つのスイッチ361を、第3スイッチ361Cおよび第4スイッチ361Dという。第3スイッチ361Cは、伝播状態とすることによって第4端子287aおよび第5端子287b間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第4端子287aおよび第5端子287b間で高周波信号を遮断する。第4スイッチ361Dは、伝播状態とすることによって第5端子287bおよび第6端子287c間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第5端子287bおよび第6端子287c間で高周波信号を遮断する。第3スイッチ361Cの、電磁波の伝播方向Xにおける第1端部を、第4端子287aとする。また第3および第4スイッチ361C,361Dの、電磁波の伝播方向Xの第2端部同士を共通に接続して、第5端子287bとする。第4スイッチ361Dの電磁波の伝播方向Xの第1端部を、第6端子287cとする。
第3および第4スイッチ361C,361Dには、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第3スイッチ361Cが伝播状態のときに、第4スイッチ361Dをカットオフ状態とし、第3スイッチ361Cがカットオフ状態のときに、第4スイッチ361Dを伝播状態とすることによって、第1端子287aから入力される高周波信号を、第2端子287bから出力し、第2端子287bから入力される高周波信号を、第3端子287cから出力することができる。前記制御部は、第3および第4スイッチ361C,361Dを制御して、第1端子287aおよび第2端子287bを接続して、パルス状の高周波信号を送受信用アンテナ288に伝送した後、第3および第4スイッチ361C,361Dを制御して、第2端子287bおよび第3端子287cを接続して、送受信用アンテナ288によって捕捉した高周波信号を第3端子286cから出力させる。制御部は、第1および第3スイッチ361A,361Cが伝播状態となり、かつ第2および第4スイッチ361B,361Dがカットオフ状態となるように、または、第1および第3スイッチ361A,361Cがカットオフ状態となり、第2および第4スイッチ361B,361Dが伝播状態となるように、第1〜第4スイッチ361A〜361Dを制御する。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ361を用いて分波器287を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
本発明の実施のさらに他の形態の高周波送受信器は、前述した図26に示す実施の形態の高周波送受信器280において、移相器20を前述した減衰器に変えて高周波送受信器が実現される。第1伝送線路281に、前記減衰器が挿入されることによって、高周波信号の振幅を変化させて、振幅変調を行うことができ、高周波信号の周波数の変動および温度の変動によって発生する送信出力(送信される高周波信号)および中間周波信号の変動を調整して、信号変動の小さい安定な高周波送受信器を実現することができる。また減衰器を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、減衰器を設けても高周波送受信器を小型に形成することができ、また減衰器に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。また前記第1〜第5伝送線路281,282,283,284,285の少なくともいずれか1つに減衰器を同様に挿入して、高周波送受信器を構成してもよく、同様な効果を達成することができる。
本発明の実施のさらに他の形態の高周波送受信器は、前述した各実施の形態の高周波送受信器を組み合わせて構成されてもよく、たとえば伝送線路に移相器、スイッチおよび減衰器のうちのいずれか2つ以上が挿入される構成としてもよく、またたとえば第1〜第5伝送線路281〜285の少なくともいずれか1つに移相器が設けられ、第1〜第5伝送線路281〜285の少なくともいずれか1つにスイッチが設けられ、第1〜第5伝送線路281〜285の少なくともいずれか1つに減衰器が設けられる構成としてもよい。
前述した各実施の形態において、前記変化部は、印加電界に応じて寸法が変化する圧電素子によってされてもよい。印加電圧に応じて、電磁波の伝播方向において圧電素子の寸法が変化する、すなわち圧電素子の前記伝播方向における厚さが変化することによって、変化部を含む誘電体部を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述した実施の形態と同様の効果を達成することができる。圧電素子は、たとえば水晶、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、Pb(Zr,Ti)O3、BaTiO3、LiNbO3またはSbSIなどによって形成される。
以上の各実施の形態の移相器、スイッチおよび減衰器は、誘電体導波路デバイスである。
なお、本発明は以上の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。