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JP4374816B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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JP4374816B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オンデマンド方式インクジェット記録装置に係り、特にマルチノズルによるライン記録型の高速インクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置に用いられるインクとして、水を主成分とする水性インクが広く用いられているが、このようなインクは記録中の非吐出時にノズル近傍において蒸発、凝集し、吐出時の安定な吐出を妨げるだけでなく、ひいては目詰まりを起こし吐出しなくなってしまう。この問題は、常にインクをノズルから吐出し続ける連続方式インクジェット記録装置では発生しないが、必要なときだけ吐出するオンデマンド方式インクジェット記録装置では重大な問題となる。
【0003】
特開昭57−61576号公報に開示されている従来の装置では、この点を配慮し、インク消費をともなうことなく目詰まりを防止する方法として、非吐出時にインク液滴を吐出させるに必要な駆動エネルギーより小さなエネルギーで圧電素子を駆動させることが提案されている。ここではこの方法をインク揺動とよぶ。この方法によりノズル近傍におけるインクが揺動され、前記凝集がおこりにくくなり、その結果目詰まりがおきにくくなる。しかし、インクの蒸発そのものは進むため、非吐出状態が長く続くノズルでは、インクはいずれ高粘度化して、ビーム曲がり等の吐出不良や、吐出不能に至ってしまう。
【0004】
特開平9−29996号公報に開示されている従来の装置では、この点を配慮し、前記インクの揺動に加え、印字領域から記録ヘッドを退避した位置において、ノズルメニスカス近傍におけるインク自体を吐出し、排出する方法が示されている。この方法をここではインクリフレッシュとよぶ。インクリフレッシュは、凝集しかけたインク自体をなくし、新しいインクを供給することから、吐出能力維持効果は当然インク揺動より大きい。
【0005】
しかし、記録用紙上ではインクリフレッシュできないため、記録を一時中断し記録ヘッドを退避した上でインクリフレッシュしなければならない。記録速度を低下させないためにも、また、インクリフレッシュで消費されるインクを節約するためにも、どうしてもインクリフレッシュの間にはある程度以上の時間間隔が必要である。しかし、間隔をあけすぎれば、その間にインク凝集による吐出不良が起こる可能性が増加する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、インクジェット記録装置の高速化にはノズルのアレイ化が有効であることは言うまでもない。更にアレイ化が進み、記録用紙幅に匹敵する長さのアレイヘッドができると、従来のように記録用紙を停止させ、用紙送り方向と垂直な方向にヘッドをスキャン(移動)させるシリアル記録方式ではなく、ヘッドを移動させずに、記録用紙を連続的に搬送しながら記録するライン記録方式の構成が可能になる。
【0007】
このようなライン記録方式のインクジェット記録装置で、前記インクリフレッシュをする場合、記録しながらではインクリフレッシュできないため、一旦記録を停止し、記録ヘッドを用紙から退避した上でしなければならない。高速の記録装置では用紙搬送を一時停止させるだけでも大変であるし、記録ヘッドを退避するにもかなり時間がとられる。もちろん、用紙がカット紙の場合は、その間隙においてインクリフレッシュすることもできるが、ここでは連続紙を使うことを想定する。
【0008】
例えば、記録速度が100ppm(page/minute)程度の、高速のインクジェット記録装置の場合、動き出したら少なくとも10分(1000ページ)以上は停止せずに記録を続けることが期待される。従って、10分間、インクリフレッシュなしのインク揺動だけで、吐出不良を抑え続けなければならない。
【0009】
一般に、インク揺動だけで非吐出ノズルの吐出状態を正常に保てる吐出能力維持時間は数秒〜数十秒と言われているし、また、ラインヘッドは、通常何万ノズルもあるため、その全てのノズルを保証することを考えると、これは極めて難しい課題といわざるをえない。
【0010】
本発明の目的は、一旦記録を停止し、記録ヘッドを用紙から退避させることなく、且つ、非吐出ノズルにおいてインクが凝集して吐出不良や吐出不能が起こらないオンデマンド方式インクジェット記録装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、インク液滴を吐出するため、各ノズルにそれぞれ与えられるデジタル吐出信号を発生するデジタル吐出信号発生手段と、複数のノズルに共通に与えられるアナログ駆動信号を発生するアナログ駆動信号発生手段と、それらによって各ノズルの圧電素子を駆動する圧電素子ドライバと、前記ノズル近傍に設置され、ノズル内に保持されるインクと同電位の回収電極と、記録媒体の背面に設けられた背面電極と、前記回収電極と背面電極間へ電圧を印加して電界を発生させる電圧印加手段と、前記記録媒体の対向面に設けられ、前記電界によって偏向されたインク液滴を回収するインク回収手段と、1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、インク液滴を吐出するため、各ノズルにそれぞれ与えられるデジタル吐出信号を発生するデジタル吐出信号発生手段と、複数のノズルに共通に与えられるアナログ駆動信号を発生するアナログ駆動信号発生手段と、それらによって各ノズルの圧電素子を駆動する圧電素子ドライバと、前記ノズル近傍に設置され、ノズル内に保持されるインクと同電位の回収電極と、記録媒体の背面に設けられた背面電極と、前記回収電極と背面電極間へ電圧を印加して電界を発生させる電圧印加手段と、前記記録媒体の対向面に設けられ、前記電界によって偏向されたインク液滴を回収するインク回収手段と、1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する第1の設定手段と、1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インク揺動のための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する第2の設定手段とを備え、前記第1の設定手段はnライン周期で設定され、前記第2の設定手段は第1の設定手段が設定されていないラインにおいて設定されることを特徴とする。
【0015】
また、前記デジタル吐出信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号、またはインク揺動のための前記デジタル吐出信号とを発生することを特徴とする。
【0016】
また、前記アナログ駆動信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記アナログ駆動信号、またはインク揺動のための前記アナログ駆動信号を発生することを特徴とする。
【0017】
また、前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号は、ノズルの吐出速度に応じたインクリフレッシュのための前記アナログ駆動信号が発生する時に吐出するように発生されることを特徴とする。
【0018】
また、前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号は、前記アナログ駆動信号が供給されるノズルのうちの1つだけが吐出するようになっており、その時の、前記インクリフレッシュのためのアナログ駆動信号は、前記1つだけ吐出するノズルの吐出速度に応じた前記アナログ駆動信号となるように発生されることを特徴とする。
【0019】
更に、前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号発生手段、または前記インク揺動のためのデジタル吐出信号発生手段は、周囲の空気の湿度に応じて、インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号、または前記インク揺動のためのデジタル吐出信号の、断続または発生周期を変更する手段を備えることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1〜16に基づいて説明する。
【0021】
本発明を適用するオンデマンド方式インクジェット記録装置のノズルは、圧電素子を用いた公知のインクジェットノズルであるが、まずこれについて図1〜6を使って説明する。
【0022】
図3に、本発明のインクジェット記録装置におけるノズル構造の例を示す。301はオリフィス(ノズル孔)、302は加圧室、303は振動板、304は圧電素子、305は信号入力端子、306は圧電素子固定基板、307は共通インク供給路308と加圧室302とを連結し、加圧室302へのインク流量を制御するリストリクタ、309は振動板303と圧電素子304とを連結する弾性材料(例えばシリコン接着剤など)、310はリストリクタ307を形成するリストリクタプレート、311は加圧室302を形成する加圧室プレート、312はオリフィス(ノズル孔)301を形成するオリフィスプレート、313は振動板を補強する支持板である。振動板303、リストリクタプレート310、加圧室プレート311、支持板313は夫々、例えば、ステンレス材から作られ、オリフィスプレート312はニッケル材から作られている。また、圧電素子固定基板306は、セラミックス、ポリイミドなどの絶縁物から作られている。
【0023】
インクは、上から下に向かって共通インク供給路308、リストリクタ307、加圧室302、オリフィス301の順に流れる。圧電素子304は信号入力端子305に電圧が印加されているときに伸縮し、されなくなれば変形しないように取り付けれらている。信号入力端子305には、後述するアナログ駆動信号がつながれており、吐出タイミングに従って電圧が印加され、加圧室302内のインクの一部がオリフィス301(ノズル孔)から吐出される。
【0024】
次に、前記インクジェットノズル128個を一列に並べて作ったノズルモジュールについて説明する。図4に、本発明で用いるノズルモジュール構造を示す。前記ノズルがノズルモジュール401の内部に128個、一直線上に格納されており、ノズル孔301のピッチは75ノズル/インチになっている。このノズルモジュール401に対し、圧電素子ドライバ402が接続されている。公知の前記圧電素子ドライバ402にはアナログスイッチ403、ラッチ404、シフトレジスタ405が内蔵されている。シフトレジスタ405にはデジタル吐出信号407およびシフトクロックS−CLKが入力される。
【0025】
デジタル吐出信号407は、128個それぞれのノズル孔301に対応する128bitシリアルデータである。ここでは論理1の時吐出、論理0の時非吐出と定義する。ラッチ404には、前記シフトレジスタ405からの128bitパラレルデータおよびラッチクロックL−CLKが入力される。
【0026】
128個のアナログスイッチ403のスイッチ端子には、前記ラッチ404からの出力が、アナログスイッチ403の入力端子には、アナログ駆動信号406が入力される。アナログスイッチ403は、スイッチ端子に論理1が印加されているときは、入力端子のアナログ駆動信号406をそのまま出力端子に出力し、論理0が印加されているときは、出力端子を開放する。アナログスイッチ403の出力端子は、各ノズル301の信号入力端子305の片側に出力される。前記信号入力端子305のもう片側は接地されている。
【0027】
従って、アナログ駆動信号406は、ノズルモジュール401内のノズルからインクを吐出するための圧電素子へ送られ、128個のノズルに共通の駆動信号である。ここでは、次に示す電圧24Vの台形波形とするが、この他に種々の駆動波形が公知になっている。
【0028】
図2に、圧電素子ドライバ402のタイミングチャートを示す。デジタル吐出信号407は、シフトクロックS−CLKに応じて、順次、シフトレジスタ405に格納され、128個そろったところで今度はラッチクロックL−CLKに応じて一括してラッチ404に格納され、アナログスイッチ403のスイッチ端子に出力される。ラッチクロックL−CLKは、後述する用紙位置同期信号109に基づいて作成されるが、本例では用紙位置同期信号109がそのままラッチクロックL−CLKとなっている。前記デジタル吐出信号407が保持されている間に、前記アナログ駆動信号406が入力される。結果として、デジタル吐出信号407が論理1になっているノズルからインクが吐出され、論理0になっているノズルからは吐出されない。
【0029】
次に、前記ノズルモジュール401を20個並べて作ったライン記録ヘッドについて説明する。図5に、本発明例における記録ヘッド501の構造、具体的には用紙搬送方向に対する記録ヘッド501の吐出面の構成を簡単化して示す。吐出面には、説明用として図のようにxy直交座標軸を定めており、y方向が用紙送り方向となっている。
【0030】
前記ノズルモジュール401は、記録ヘッド501の内部に20個、図に示すように用紙送り(y)方向に対し傾けた状態で、用紙幅(x)方向に真直ぐ並べて配置されている。吐出面にはノズルが複数ならんでおり、各ノズル孔301の中心の座標はxy座標で表現される(nx,ny)。
【0031】
作成したノズルモジュール401のノズルピッチは75ノズル/インチと低いため、図のようにノズルモジュール401を斜めに配置し解像度を上げた。しかし、ノズルモジュール401の全ノズル301の吐出タイミングは、アナログ駆動信号406が共通のため、全ノズル301位置がxy座標で示される記録すべき格子点上に乗らなければならない。そこで、傾きθをtanθ=4とし、xy方向の解像度がいずれも309dpiになるように設定した。
【0032】
記録ヘッド501は、ノズルモジュール401が20個あるため、合計2560ノズルとなり、用紙の印字幅は約8.3インチになるため、A4短辺を横幅に持つ連続紙へのライン記録が可能になる。また、ノズルモジュールの用紙送り方向の幅は、約42mmである。カラー印刷の場合、この記録ヘッド501がCMYK用に4本、あるいはそれ以上並ぶことになるが、ここでは簡単のため、1本の記録ヘッド501として説明する。複数本並べたときの他の記録ヘッドについても同様の構成である。
【0033】
次に、この記録ヘッド501を搭載した用紙搬送系について説明する。図6に、本発明における用紙搬送系601の構造を簡単化して示す。連続記録用紙602はガイド603に沿って記録ヘッド501の直下に導かれ、記録される。記録後、搬送用駆動ローラ604を巻いて排紙される。搬送用駆動ローラ604には駆動用モータの他に、位置検出用のロータリエンコーダ605が取り付けられている。
【0034】
次に、図1において、本発明を適用したプリンタシステムの全体構成を示す。本装置では、まず図示しないコンピュータシステム等からビットマップデータ101を入力する。そこで、このビットマップデータ101について説明する。
【0035】
ユーザは一般に、図示しないコンピュータシステムを用い、記録すべき文書を作成する。前記文書はいろいろな種類のページ記述言語で記述されているが、前記文書をプリンタシステムで記録する場合、最終的にはプリンタシステムの解像度等仕様に合わせたビットマップデータに展開されて、プリント処理に入る。そこで、ここでは前記ビットマップデータをプリンタシステムの入力101とする。
【0036】
前記ビットマップデータにも、ビット情報に種々の定義があるが、ここでは1が記録、0が非記録のモノクロ1ビットのビットマップデータとして説明する。カラーやマルチビットのビットマップデータに対しては、従来の拡張方法を適用することによって本発明システムでも容易に拡張できるので、ここでは説明しない。
【0037】
記録が開始すると、1ジョブ分(複数ページ)の前記ビットマップデータ101が順次入力され、全てバッファメモリ102に一時格納される。格納中あるいは格納が終了後、CPU等のデータ処理装置103が、前記格納されたビットマップデータ101を本プリンタシステムの吐出仕様に合わせた吐出データ104に順次変換し、吐出データメモリ105に格納する。格納が終了すると、用紙制御装置106が前記用紙搬送系601に稼働指示107を出し、用紙搬送を開始する。前記用紙搬送系601にはロータリエンコーダ605がついており、用紙位置パルス108を用紙制御装置106に返す。
【0038】
用紙制御装置106は、用紙位置が適当な記録位置に達すると、記録装置の解像度に合わせた用紙位置同期信号109を発生し、該用紙位置同期信号109は前記吐出データメモリ105の他、アナログ駆動信号発生装置110、デジタル吐出信号発生装置111、及び図示しないが、図4、7に示したラッチクロックL−CLKとして前記圧電素子ドライバ402にも送られる。
【0039】
本例における装置の解像度は309dpiであるから、用紙が1/309インチ進む度に用紙位置同期信号109が発生する。従って、時間間隔は1ラインを記録する時間に相当するが、用紙搬送速度むらによって若干変動する。
【0040】
アナログ駆動信号発生装置110は、前記20個の圧電素子ドライバ402にアナログ駆動信号406を供給する。本例では、同一のアナログ駆動信号406を前記20個全ての圧電素子ドライバ402に供給する。各ノズルモジュール401の特性が異なる場合は、各々に対応するアナログ駆動信号406を作り供給することもできる。
【0041】
デジタル吐出信号発生装置111は、吐出データメモリ105と圧電素子ドライバ402に図示しないクロックを送り、吐出データ104を入力し、それをデジタル吐出信号407として各圧電素子ドライバ402に供給する。圧電素子ドライバ402のシフトクロックS−CLKは、このクロックである。以上で、本発明の前提となる従来のインクジェット記録装置の説明を終える。
【0042】
次に、本発明に特有の部分について、図1及び図7〜図16を使って説明する。図8に、共通電界形成手段の例を示す。図8は、図4に示したノズルモジュール401を、ノズル列の方向に垂直な平面で切った図面である。従って、ノズル孔301は、紙面手前から奥に向かって128個同じように並んでいる。
【0043】
図3に示したオリフィスプレート312表面上のノズル孔301のすぐ脇(約0.3mm)のところにインク回収電極801が貼り付いている。インク回収電極801はオリフィスプレート312と同じく電気的に接地されている。その表面は金属メッシュ802が貼り付けてある。インク回収電極801はノズル列方向に伸びた1枚の電極であり、ノズルモジュール401の全128ノズルに対し同じ様な位置関係になっている。金属メッシュ802は、インク回収電極801端からはみ出ており、その端部にビニール管803が取り付けてある。ビニール管803は図示しないポンプで空気を吸引している。一方、記録用紙602の背面にも、用紙背面電極805が設けられており、こちらは電気的に絶縁されている。用紙背面電極805もノズル列方向に伸びた1枚の電極であり、ノズルモジュール401の全128ノズルに対し同じ様な位置関係になっている。本例では、ノズル孔301から背面電極805表面までは1.5mm、インク回収電極801厚みは0.4mm、ノズル孔301からの距離は0.2mmである。
【0044】
図1に戻り、引き続き共通電界形成手段を説明する。共通電界形成装置112は前記用紙位置同期信号109に同期して共通電界信号113を発生する。共通電界形成高圧電源114は、共通電界信号113に基づいて高電圧を発生し、前記用紙背面電極805に印加する。これにより、接地しているオリフィスプレート312及びインク回収電極801と、用紙背面電極805との間に電界が発生する。
【0045】
図9に、圧電素子ドライバ402及び共通電界形成手段のタイミングチャートを示す。用紙位置同期信号109が来ると、デジタル吐出信号発生装置111は、始めの80μsで従来の記録用デジタル吐出信号407(128bit)を、続く80μsでインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901(128bit)を、それぞれシフトクロックS−CLKに同期して送る。用紙位置同期信号109の周期はほぼ200μsなので、その後40μs空くが、これは用紙位置同期信号109の周期変動に備えたマージンである。ラッチクロックL−CLKは、用紙位置同期信号109と同時に1回目のラッチクロック902を発生し、その前の用紙位置同期信号109の周期で送られたインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901をラッチする。その40μs後に、2回目のラッチクロック903を発生し、その直前に送られた記録用のデジタル吐出信号407をラッチする。
【0046】
一方、アナログ駆動信号406は、1回目のラッチクロック902が来てから40μsまでの間に、インクリフレッシュ用アナログ駆動信号904を発生し、2回目のラッチクロック903が来てから40μsまでの間に、従来の記録用アナログ駆動信号406を発生する。
【0047】
最後に、共通電界信号113は、通常は偏向電圧(ここでは正の高電圧、+1.5KV)に対応する信号になっており、時刻tsを中心に約10μsの時間だけ、荷電電圧(ここでは負の高電圧、−1.5KV)に対応する信号になっている。この時刻tsをここではインク液滴切断時刻tsと呼ぶ。
【0048】
図10に、アナログ駆動信号発生装置110及び共通電界形成装置112の具体的な構成を示す。実際には、両者は共通の装置となっており、ラインアドレス発生装置1001、ライン内アドレス発生装置1002、メモリ装置1003、デジタル−アナログ変換器(DAC)1004、増幅器1005からなる。ラインアドレス発生装置1001及びライン内アドレス発生装置1002は、バイナリカウンタで構成されており、前者は、図示しない記録開始信号でリセットされ、ライン毎に発生する用紙位置同期信号109を計数し、ラインアドレス1006を発生する。本例の場合は一例として、128までで繰り返す(0,1,2,...,127,0,1,..)ラインアドレスとしてある。後者は、用紙位置同期信号109でリセットされ、高周波クロック1007を計数し、ライン内アドレス1008を発生する。本例の場合は、高周波クロック1007は4Mhzであり、用紙位置同期信号109の間隔は約200μsだから、およそ0から800までを計数し、それを繰り返す。
【0049】
メモリ装置1003は、アドレスを入力してデータを出力する通常のメモリである。本例では、前記7bitのラインアドレス1006及び10bitのライン内アドレスが入力され、10bitのデータ1009と2bitの共通電界信号113が、時間刻み250nsで出力される。10bitのデータ1009は、デジタル−アナログ変換器(DAC)1004及び増幅器1005を通して、アナログ駆動信号406になる。
【0050】
本例では、ラインアドレス発生装置1001は使われないので、メモリ装置103にはライン内アドレス1008だけが入力されており、ラインアドレス1006は0固定になっている。メモリ装置1003には、図9に示したアナログ駆動信号406(リフレッシュ用駆動信号904と記録用駆動信号406)が実現できるようなデータが予め格納されている。
【0051】
次に、図8を用いて図9のタイミングチャートにともなう、インク液滴の動作を説明する。用紙位置同期信号109に引き続き、インクリフレッシュ用アナログ駆動信号904が発生すると、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901によって、ノズルモジュール401の中の128個のノズルはインクリフレッシュするものとしないものとに分かれる。しない場合は何も吐出されないが、以下、する場合について説明する。
【0052】
インクリフレッシュ用アナログ駆動信号904が圧電素子304に加えられると、インクリフレッシュ用インク液滴806の吐出が始まる。始めに、インク液滴806は図のようにノズル孔301からつながったまま伸びて出てくる。しかし、インク液滴806の長さがある程度になると、やがてノズル孔301付近で伸びたインク液滴806が切断される。この切断する瞬間の時刻が前記インク液滴切断時刻tsである。この時刻は、インク液滴速度や環境変化により、あまり変動しないで安定していることが一般に知られている。また、導電性のインクを使った場合、インク液滴切断時刻tsに電界をかけておくと、インク液滴内で即座に電荷が分極し、切断により吐出されたインク液滴を荷電できることが、連続方式のインクジェットプリンタで既に知られている。
【0053】
本例では、図9に示すように、インク液滴切断時刻tsに用紙背面電極805に荷電電圧(−1.5KV)を掛ける。その時切断仕掛けたインク液滴806には電界E1がかかる。電界E1は、回収電極801の側面の影響で少し紙面で左側を向くが、インク液滴806はオリフィス面312付近なので、ほとんど紙面で下向きの方向になる。
【0054】
従って、インク液滴806は正に荷電される。その後時刻tsにインク液滴806が切断し、電荷が拘束された後、今度は用紙背面電極805に、偏向電圧(+1.5KV)を掛ける。その時、用紙602に向かって飛翔中のインク液滴806には電界E2がかかる。電界E2は、ほとんど紙面で上向きの方向であり、正に荷電されたインク液滴806はどんどん減速し、そのうち速度方向が逆転し記録ヘッド501側に戻るようになる。
【0055】
但し、この時、回収電極801の側面の影響で電界E2が少し紙面で右側を向くが、インク液滴806の着地点はノズル孔301よりもインク回収電極801側になり、インク回収電極801上の金属メッシュ802に捕獲され、毛細現象でビニール管803まで浸透して行き、排出される。インク液滴806がどこでUターンするかは、簡単な近似によれば次のようになる。
【0056】
l=m×v /(2×q×E)
但し、lはノズル孔301から用紙背面電極805方向への最大距離
mはインク液滴806質量
はインク液滴速度
qはインク液滴荷電量
Eは電界E2のノズル孔301から用紙背面電極805方向の成分。
【0057】
本例では、v=4.0m/sになるようにインクリフレッシュ用アナログ駆動信号904が決められており、そのとき、l=1.1mmとなる。
【0058】
次に、記録用インク液滴806の挙動について説明する。こちらも、吐出するかしないかは記録用デジタル吐出信号407によって決まるが、以下では吐出する場合について説明する。
【0059】
記録用アナログ駆動信号406が圧電素子304に加えられると、記録用インク液滴806の吐出が始まる。前記同様インク液滴806は長さがある程度になると、切断が起こる。この記録用インク液滴806の切断時刻では、荷電しないように電界を掛けないほうがよいが、本例ではインクリフレッシュ用インク液滴806のUターンをできるだけ早めるため、切断時刻でも偏向電圧を掛けっぱなしとする。
【0060】
従って、記録用インク液滴806は正に帯電され、加速されながら用紙602上に着弾する。その際、回収電極801のためいくぶん紙面で左側に偏向するが、インク液滴速度が速い(ここでは8m/s)ため、電界の影響を受けにくく、その偏向量もわずかである。
【0061】
図7に、デジタル吐出信号発生装置111から発生される、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例を、もしもインクリフレッシュ用粒子が回収されずに用紙上に着弾したと想定し、記録された画像で示す。図は記録用紙602上を示し、記録ヘッド501に対し紙面上方向に用紙602が搬送されるものとする。図中、黒部分がインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901「1」で、白部分が「0」を示す。横はノズルモジュール401中のノズル孔301番号であり、本例の場合、1モジュールで0から127までであり、これがモジュール数分繰り返される。縦方向は、記録画像のライン番号であり、0から309dpi毎に振られている。インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901は、用紙搬送方向に対し垂直な1ドット幅の直線で、nドットおき(繰返し周期)に定期的に発生する(図では繰返し周期n=4)。
【0062】
本記録装置のノズル配列は、図5に示したように用紙搬送方向に対し傾斜しているため、図7に示すような横(用紙搬送方向と垂直な方向)一列のパターンでも実際は全ノズルが同時に吐出するわけではなく、分散して吐出することになる。これは、ノズルの相互干渉により、インクリフレッシュ用インク液滴の吐出が不安定になることを防止する効果がある。
【0063】
図16に、デジタル吐出信号発生装置111から発生される、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の別の一例を、前記同様に用紙上に記録されたと仮定した画像で示す。
【0064】
ここでは繰返し周期n=8の例を示す。この場合は、前記例のように横一列のパターンでなく、図のようにランダムな分布になる。本例によると、用紙が浮き上がるなどの異常時に、インクリフレッシュ用粒子が回収されずに用紙上に不時着してしまった場合でも、一時的かつ部分的であれば記録品質を著しく劣化させることを防げるという効果がある。もしも、前記例のように横一列のパターンでは、記録された文字や図表の一部と誤解される可能性がある。
【0065】
図15に、デジタル吐出信号発生装置111の具体的な構成の一例を示す。デジタル吐出信号メモリ装置1501には、図10のメモリ装置1003と同様にラインアドレス1006と用紙位置同期信号109等の同期信号が入力されており、メモリ装置1003内部には、各ノズル301に対する、ライン番号が前記繰り返し周期nで繰り返されるインクリフレッシュ用デジタル吐出信号1506が予め格納されている。図7で示した例の場合は前記nドットおきの横一列の直線で吐出できるような、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号1506が、また図16で示した例の場合は、前記nドットおきの分散するパターンで吐出できるようなインクリフレッシュ用デジタル吐出信号1506が格納されている。
【0066】
同時に、前記吐出データメモリ105から読み出された吐出データ104が入力されるが、その反転論理信号1503とデジタル吐出信号メモリ装置1501の出力との論理積1504をとることによりインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901をえる。
【0067】
一方、吐出データ104は、一時メモリ装置1502にも導かれ、始めのL−CLKが来ると、一時メモリ装置1502に一列分の吐出データ104が格納される。次にL−CLKが来ると、今度はそれを記録用デジタル吐出信号901として出力する。データセレクタ1505は、L−CLKで仕切られる始めの吐出期間においては、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901を選択し、次のL−CLK以降の吐出期間では記録用デジタル吐出信号901を選択し、出力する。
【0068】
これにより、あるライン記録時間内において、もしも記録用デジタル吐出信号901が1の場合は、自動的にインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901は強制的に0になる。従って、記録とインクリフレッシュは、同時に実施することはない。同時に実施すると吐出周波数が2倍になるため、ノズルの安定な吐出が損なわれる。記録用吐出をしていれば、それ以上にインクリフレッシュをすれ必要ばないので、合理的な装置である。
【0069】
但し、図1に示したプリントシステムの構成上、記録する前に時間がとれる別の例の場合では、データ処理装置103において、ソフトウエアによって前記デジタル吐出信号メモリ装置1501に格納される内容を作成するようになっている。この場合、前例で示したデジタル吐出信号発生装置111は、ただ単にデータを圧電素子ドライバ402に転送するだけになる。つまりインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901も記録用デジタル吐出信号407と同じように扱われる。
【0070】
本例によれば、データ処理装置103において、吐出データ104を参照しながら、それにあったインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901を作成できるため、これまで説明した例の効果の他に、次のような効果が特に発生する。
【0071】
用紙が浮き上がるなどの異常時に、インクリフレッシュ用粒子が回収されずに用紙上に不時着してしまった場合を考慮し、誤解されやすい細かい文字や図表の内部あるいは正確な白色度が要求される部分では、インクリフレッシュを停止または頻度を調節することが可能となる。
【0072】
また、一般にインクの蒸発、凝集による目詰まりは、周囲の空気が乾燥しているときに起こりやすいので、乾燥しているときは繰返し周期nの値を小さくする。一例では、湿度が70%以上でn=2048、60〜69%でn=1024、50〜59%でn=512、49%以下ではn=256〜128となる。この設定は、ユーザが行う場合と、公知の温度湿度センサからの信号で行う場合とがある。
【0073】
また、起動時等インク回収電極801が乾いているときは、始め繰返し周期nを小さくして早めに回収電極801をぬらし、ノズル孔301付近の湿度を高湿に保つようにする。これにより目詰まりの発生率を低減できる。
【0074】
本例によれば、記録しながらそれとは独立にインクリフレッシュが実施できるので、一旦記録を停止し、記録ヘッドを用紙から退避させることなく、非吐出ノズルにおいてインクが凝集して吐出不良や吐出不能が起こらないオンデマンド方式インクジェット記録装置が提供できる。
【0075】
以下、別の例について、図10から12を用いて説明する。
【0076】
前例装置では、インクリフレッシュ用インク液滴を確実に回収するためには、そのインク液滴速度を低速にしなければならなかった。
【0077】
例えば、記録用インク液滴速度が8m/sなのに対し、インクリフレッシュ用インク液滴速度は4m/sであった。一般にインク液滴速度が下がると吐出安定性が損なわれるため、4m/sのように比較的低速で吐出する場合、ノズルによる速度ばらつきを抑える必要がある。
【0078】
また、例えば、液的速度が2m/s位になると、ノズル付近のインクの付具合の微妙な変化から吐出方向が曲がったり、インクがノズル付近にたまって吐出を妨害したりしてますます不安定になり、しまいには吐出速度がさらに低下して周辺のノズルにもインクを巻き散らし、吐出不能に陥る。これを防ぐためには、全てのノズルからの液滴速度を精度良く4m/sに制御する必要がある。
【0079】
液滴速度を制御する最も簡単な方法はノズルの圧電素子304に流れる電流を調整することである。具体的には、アナログ駆動信号406の電圧を変えれば良いが、本例のように多数のノズルがある場合、一つのアナログ駆動信号406で多数のノズルを同時に駆動しているので、一般に構造的に個々のノズルに別々のアナログ駆動信号406を供給することは不可能である。しかし、リフレッシュ用アナログ駆動信号904の場合は、以下のようにノズル毎の速度調整が可能である。
【0080】
図11に、図9に対応する本例の圧電素子ドライバ402のタイミングチャートを示す。アナログ駆動信号406のインクリフレッシュ用駆動信号904は、各ライン毎に異なる信号波形となっている。これは、前記図10において説明した、ラインアドレス発生装置1001が稼働している場合であり、ラインアドレス1006は0から127まで増加し、また0に戻り、これを繰り返す。メモリ装置1003内には、128通りのインクリフレッシュ用駆動信号904−1から904−128が格納されており、これが順次読み出される。ここでは、駆動信号904−1から904−128は、徐々に電圧が大きくなるような波形とする。
【0081】
具体的には、平均的に液的速度4m/sになる電圧比を100%としたとき、電圧比を80%から120%まで上げた電圧波形とする。その間隔は、対応するノズル数に応じて調整する。
【0082】
次に、前記図7に示した、デジタル吐出信号発生装置111から発生される、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の本例での一例を示す。前記したようにインクリフレッシュ用の吐出周期は、記録用の吐出周期のおよそ1000倍であるから、各ノズルのインクリフレッシュするタイミングを、前記インクリフレッシュ用駆動信号904−1から904−128のどれかに選ぶことができる。
【0083】
例えば、電圧比100%駆動信号では速度が速すぎる場合、100%以下の電圧比を選ぶ。逆に、電圧比100%駆動信号では速度が遅すぎる場合、100%以上の電圧比を選ぶ。もちろん位置的に近いところにある多数のノズルを一度に吐出させると、前記相互干渉の問題があるので、できるだけ吐出タイミングをノズル毎で散らすようにする。
【0084】
図12に、ラインアドレス1006に対応したインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例を示す。本例ではインクリフレッシュの繰り返し周期n=1024の場合である。ノズルNo.0は吐出液滴速度が速いノズルであり、ラインアドレス1006が0の時、つまり電圧比80%の駆動信号904−1の時に、吐出するので、吐出液滴速度が抑えられる。また、そのとき同時に吐出するノズルは、同一ドライバ402では他にない。次のラインアドレス1006が1の時は、同一ドライバ402ではどのノズルからもインクリフレッシュ用の吐出はない。次のラインアドレス1006が2の時は、ノズルNo.2からだけインクリフレッシュ用の吐出がおこる。各ノズルの吐出周期は1024ライン毎であるため、ライン番号が1024になると、再びノズル0からインクリフレッシュ用の吐出が起こる。本例によると、インクリフレッシュ用の吐出の際の液滴速度のノズルばらつきを抑えることができるため、安定なインクリフレッシュが継続される。
【0085】
以下、別の例について、図13を用いて説明する。前記説明したように、インクの蒸発による吐出不良は、湿度が下がるほどその影響が大きくなる。低湿度環境下では、インクリフレッシュ周期を短くする例をすでに説明した。しかしインクリフレッシュ周期を短くすると、インクの浪費につながるため、一般に、n=128より短くはできない。インク回収系をつければ更に短くできるが、装置価格が大幅に増加してしまう。
【0086】
低湿度においてインクリフレッシュ周期が長すぎると、インク凝集によりインクリフレッシュ吐出そのものが不安定になってしまう。こうなると当然記録用吐出も不安定になってしまう。そこでインクリフレッシュ吐出をインク凝集からまもるために、インク揺動を組み合わせる例を以下に示す。
【0087】
図13に、図11に対応する本例の圧電素子ドライバ402のタイミングチャートを示す。アナログ駆動信号406のインクリフレッシュ用駆動信号904は、4ラインに1回の割合で発生する。図13に、ライン番号0、4における発生のようすを示すが、その後ライン番号4n(n=2,3,...)においても発生する。4ラインに3回の、その他の場合はインクリフレッシュ用駆動信号904の変わりに、インク揺動用駆動信号1301が発生する。図13のライン番号0〜3が一組になって、それ以後4ライン周期で繰り返される。インク揺動用駆動信号1301は、インクが吐出されない程度にインクを揺り動かす信号である。揺動波形には、吐出波形の電圧比を下げたものが採用されたり、または別の波形を用いることが公知となっているが、本発明では一例として、図示したような小型(低電圧)の台形状の波形としている。
【0088】
インクリフレッシュ用駆動信号904が4ラインに1回と減ったのでそれに応じて共通電界信号113も、荷電電圧に変化するのは4ラインに1回だけ(図13ではライン番号0,4,...)となる。このため、インクリフレッシュ粒子が飛行中に掛けられる偏向電圧の印加時間が長くなり、回収がより容易になるという効果がある。
【0089】
図14に、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例を示す。図の横方向にノズルNo.を示す。ここでは1ノズルモジュール401分を示し、ノズルNo.0〜127の128個のノズルが示されている。縦方向に前記ライン番号とラインアドレス1006を示す。本例ではラインアドレスは0〜511となり、これを繰り返す。ライン番号4n(n=0,1,...)では、全てのノズルに対するアナログ駆動信号406がインクリフレッシュ用駆動信号904となるため太線で囲ってある。それ以外のライン番号では、全てのノズルに対するアナログ駆動信号406がインク揺動用駆動信号1301となる。また、各ノズルに対するデジタル吐出信号901のうち、網掛けした部分が信号1であり、白い部分が0である。
【0090】
ライン番号及びラインアドレス0の時は、ノズルNo.0だけがデジタル吐出信号901が1となり、インクリフレッシュ粒子が吐出される。
【0091】
ライン番号及びラインアドレス1の時は、ノズルNo.1だけがデジタル吐出信号901が1となり、インク揺動が実施される。
【0092】
ライン番号及びラインアドレス2と3の時は、ノズルNo.1と2だけがデジタル吐出信号901が1となり、インク揺動が実施される。
【0093】
ライン番号及びラインアドレス4の時は、ノズルNo.1だけがデジタル吐出信号901が1となり、インクリフレッシュ粒子が吐出される。
【0094】
ライン番号及びラインアドレス5の時は、ノズルNo.2だけがデジタル吐出信号901が1となり、インク揺動が実施される。
【0095】
ライン番号及びラインアドレス6と7の時は、ノズルNo.2と3だけがデジタル吐出信号901が1となり、インク揺動が実施される。
【0096】
以後、これを図に示すようにライン番号及びラインアドレス511まで繰り返す。その後、ライン番号512ではラインアドレスは0に戻り、ラインアドレス0の時と同様になり、以後これを繰り返す。
【0097】
本例では、一般にラインアドレス4n(n=0,1,...)の時はノズルNo.nだけしかインクリフレッシュ粒子を吐出させない。よって、その時のインクリフレッシュ用駆動信号904−nは、ノズルNo.n専用の波形として定義できる。従って、事前に実験により各ノズルに対する、適切な(インク速度が一定になる)インクリフレッシュ用駆動信号904の電圧比R−1〜128を求めておき、それに対応するデータを予めメモリ装置1003のなかに、ノズルNo.n専用の波形として格納しておくことができる。
【0098】
従って、前例同様、本例によると、インクリフレッシュ用の吐出の際の、液滴速度のノズルばらつきを抑えることができるため、安定なインクリフレッシュが継続される。また、本例ではインクリフレッシュ粒子を吐出する直前に5回のインク揺動を実施している。例えば、ライン番号8で、ノズルNo.2がリフレッシュ粒子を吐出するが、ノズルNo.2はその直前のライン番号2、3、5、6、7においてインク揺動を実施している。ライン番号4はリフレッシュ用駆動信号904−が入るためにインク揺動は実施しない。
【0099】
本例では説明のため、リフレッシュ直前のインク揺動回数を5回としたが、実際は以下のような観点でインク揺動用デジタル吐出信号901を決定している。
【0100】
まず、インク揺動周波数(最大5KHz)とインク揺動回数に対する、ノズル吐出能力の保全効果を実験により確認した。それによるとインク揺動周波数については、ドット周波数の5KHzでよいが、インク揺動回数については、インクを吐出前に短すぎても長すぎてもよくなく、適当な回数において、効果が最大になる。長すぎて良くない理由は、揺動により蒸発が促進されると説明されている。
【0101】
本例の場合は、吐出前に5KHzで100回(20msec)程度やるのが効果的であるとなった。記録用の吐出の直前20msecにおいてインク揺動させることも、データ処理装置103でソフトウエアで処理すれば可能であるが、一般には難しい。そこで、本例では定期的に発生するインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の直前20msecにおいてインク揺動させた。インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901は繰り返し同じパターンで発生しているので、予測が容易で制御も簡単である。
【0102】
本例によれば、各ノズルの速度ばらつきを各ノズル専用のインクリフレッシュ用駆動信号904を作ることで抑えるだけでなく、リフレッシュ粒子を吐出する直前にインク揺動を実施することによりさらに安定なリフレッシュ吐出が実現される。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、オンデマンド方式インクジェット記録ヘッドを使用したライン走査型インクジェット記録装置において、一旦記録を停止し、記録ヘッドを用紙から退避させることなく、非吐出ノズルにおいてインクが凝集して吐出不良や吐出不能になることを防げるので、高速インクジェットプリンタにおいて信頼性を向上するとともに記録速度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したプリンタシステムの全体構成
【図2】 圧電素子ドライバ402のタイミングチャート
【図3】 本例におけるノズル構造
【図4】 本例におけるノズルモジュール構造
【図5】 本例における記録ヘッド501の構造
【図6】 本例における用紙搬送系601の構造
【図7】 デジタル吐出信号発生装置111から発生される、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例
【図8】 図4に示したノズルモジュール401を、ノズル列の方向に垂直な平面で切った図面
【図9】 圧電素子ドライバ402及び共通電界形成手段のタイミングチャート
【図10】 アナログ駆動信号発生装置110及び共通電界形成装置112の具体的な構成
【図11】 図9に対応する本例の圧電素子ドライバ402のタイミングチャート
【図12】 ラインアドレス1006に対応したインクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例
【図13】 図11に対応する本例の圧電素子ドライバ402のタイミングチャート
【図14】 インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の一例
【図15】 デジタル吐出信号発生装置111の具体的な構成の一例
【図16】 デジタル吐出信号発生装置111から発生される、インクリフレッシュ用デジタル吐出信号901の別の一例
【符号の説明】
101…ビットマップデータ、102…バッファメモリ、103…データ処理装置、104…吐出データ、105…吐出データメモリ、106…用紙制御装置、107…稼働指示、108…用紙位置パルス、109…用紙位置同期信号、110…アナログ駆動信号発生装置、111…デジタル吐出信号発生装置、112…共通電界形成装置、113…共通電界信号、114…共通電界形成高圧電源、212…駆動データ、213…高電圧の駆動信号、214…記録画像、215…液滴吐出制御装置、301…オリフィス(ノズル孔)、302…加圧室、303…振動板、304…圧電素子、305…信号入力端子、306…圧電素子固定基板、307…リストリクタ、309…弾性材料、310…リストリクタプレート、311…加圧室プレート、312…オリフィスプレート、313…支持板、401…ノズルモジュール、402…圧電素子ドライバ、403…アナログスイッチ、404…ラッチ、405…シフトレジスタ、406…アナログ駆動信号、407…デジタル吐出信号、501…記録ヘッド、601…用紙搬送系、602…連続記録用紙、603…ガイド、604…搬送用駆動ローラ、605…ロータリエンコーダ、801…インク回収電極、802…金属メッシュ、803…ビニール管、805…用紙背面電極、806…インク液滴、901…インクリフレッシュ用デジタル吐出信号、902…1回目のラッチクロック、903…2回目のラッチクロック、904…インクリフレッシュ用アナログ駆動信号、1001…ラインアドレス発生装置、1002…ライン内アドレス発生装置、1003…メモリ装置、1004…デジタル−アナログ変換器(DAC)、1005…増幅器、1006…ラインアドレス、1007…高周波クロック、1008…ライン内アドレス、1009…10bitのデータ、1101…フリップフロップ群、1102…NOR回路、1103…参照ドット信号、1301…インク揺動用駆動信号、1501…デジタル吐出信号メモリ装置、1502…一時メモリ装置、1503…反転論理信号、1504…論理積、1505…データセレクタ、1506…インクリフレッシュ用デジタル吐出信号である。

Claims (10)

  1. インク液滴を吐出するため、各ノズルにそれぞれ与えられるデジタル吐出信号を発生するデジタル吐出信号発生手段と、
    複数のノズルに共通に与えられるアナログ駆動信号を発生するアナログ駆動信号発生手段と、
    それらによって各ノズルの圧電素子を駆動する圧電素子ドライバと、
    前記ノズル近傍に設置され、ノズル内に保持されるインクと同電位の回収電極と、
    記録媒体の背面に設けられた背面電極と、
    前記回収電極と背面電極間へ電圧を印加して電界を発生させる電圧印加手段と、
    前記記録媒体の対向面に設けられ、前記電界によって偏向されたインク液滴を回収するインク回収手段と、
    1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記デジタル吐出信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号を発生することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記アナログ駆動信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記アナログ駆動信号を発生することを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号発生手段は、周囲の空気の湿度に応じて、インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号の断続または発生周期を変更する手段を備えることを特徴とする1ないし3のいずれか一項に記載のいずれかのインクジェット記録装置。
  5. インク液滴を吐出するため、各ノズルにそれぞれ与えられるデジタル吐出信号を発生するデジタル吐出信号発生手段と、
    複数のノズルに共通に与えられるアナログ駆動信号を発生するアナログ駆動信号発生手段と、
    それらによって各ノズルの圧電素子を駆動する圧電素子ドライバと、
    前記ノズル近傍に設置され、ノズル内に保持されるインクと同電位の回収電極と、
    記録媒体の背面に設けられた背面電極と、
    前記回収電極と背面電極間へ電圧を印加して電界を発生させる電圧印加手段と、
    前記記録媒体の対向面に設けられ、前記電界によって偏向されたインク液滴を回収するインク回収手段と、
    1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する第1の設定手段と、
    1ラインを記録する時間を複数の時間領域に時分割することにより、記録のためのデジタル吐出信号及びアナログ駆動信号と、インク揺動のための前記デジタル吐出信号及び前記アナログ駆動信号を、前記複数の時間領域に設定する第2の設定手段とを備え、
    前記第1の設定手段はnライン周期で設定され、前記第2の設定手段は第1の設定手段が設定されていないラインにおいて設定されることを特徴とするインクジェット記録装置。
  6. 前記デジタル吐出信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記デジタル吐出信号、またはインク揺動のための前記デジタル吐出信号を発生することを特徴とする請求項記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記アナログ駆動信号発生手段は、一定周期で繰り返すラインアドレスカウンタを備え、ラインアドレスカウンタ値に応じて予め設定されたインクリフレッシュのための前記アナログ駆動信号、またはインク揺動のための前記アナログ駆動信号を発生することを特徴とする請求項5または6記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号発生手段、または前記インク揺動のためのデジタル吐出信号発生手段は、周囲の空気の湿度に応じて、インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号、または前記インク揺動のためのデジタル吐出信号の、断続または発生周期を変更する手段を備えることを特徴とする5ないし7のいずれか一項に記載のいずれかのインクジェット記録装置。
  9. 前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号は、ノズルの吐出速度に応じたインクリフレッシュのための前記アナログ駆動信号が発生する時に吐出するように発生されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記インクリフレッシュのためのデジタル吐出信号は、前記アナログ駆動信号が供給されるノズルのうち1つだけがインク液滴を吐出するようになっており、その時の、前記インクリフレッシュのためのアナログ駆動信号は、前記1つだけ吐出するノズルのインク液滴の吐出速度に応じた前記アナログ駆動信号となるように発生されることを特徴とする1ないし9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
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