JP4367039B2 - Induction hardened gear with excellent fatigue characteristics and method of manufacturing the same - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に高周波焼入れによる硬化層をそなえる、自動車の動力伝達装置などに用いる、疲労特性に優れたギアならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の動力伝達装置において、1つの軸から他の軸に動力を伝える機械要素として用いられるギアは、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、この種用途として重要な特性である疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部材に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部材の疲労強度の一層の向上が要求されている。
【0003】
疲労強度を向上させるためには、例えば高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径を微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照のこと)。
【0004】
上記の特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オーステナイト粒径の微細化を図るものであるため、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。
また、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。
【0005】
さらに、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品の半径Rとの比(CD/R)を 0.3〜0.7 に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト結晶粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1 までの平均ビッカース硬さHfおよび高周波焼入れ後の軸中心部の平均ビッカース硬さHcで規定される値Aを、C量に応じて所定の範囲に制御することによってねじり疲労強度を向上させた機械構造用軸物部品が提案されている。
しかしながら、この部品では、焼入れ硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径に考慮が払われていないため、やはり近年の疲労強度に対する要求には十分に応えることができない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕)
【特許文献2】
特開平8−53714 号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来よりも疲労強度を一層向上させたギアを、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、疲労強度を効果的に向上させるべく、鋭意検討を行った。その結果、以下に述べるように、ギアの素材の化学組成、組織、焼入れ条件および焼入れ後の表面硬化層全厚にわたる旧オーステナイト粒径を最適化することにより、優れた疲労強度が得られるとの知見を得た。
【0009】
(1) 適正な化学組成に調整したギアに、焼入れを施し、焼入れ後の表面硬化層全厚にわたる旧オーステナイト粒径を12μm 以下とすることによって、疲労強度が顕著に向上する。具体的には、化学組成に関しては、特にSiおよびMoを適正な範囲で添加することで、高周波焼入れ加熱時におけるオーステナイトの核生成サイト数が増加し、またオーステナイト粒の成長が抑制されることにより、表面硬化層の粒径が効果的に微細化し、その結果疲労強度が顕著に向上する。特に、Siを0.30mass%以上添加することにより、高周波焼入れ後に、表面硬化層全厚にわたり粒径:10μm 以下の表面硬化層が得られる。
【0010】
(2) ギアの母材組織、すなわち焼入れ前の組織を、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織が特定の分率で含有された組織にすると、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織がフェライト−パーライト組織に比べて炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトであるフェライト/炭化物の界面の面積が増えて、生成したオーステナイトが微細化する。その結果、表面硬化層の粒径が微細となり、これにより粒界強度が向上し、疲労強度が増加する。
【0011】
(3)上記したように、化学組成および組織を調整したギアに対する、高周波焼入れ条件(加熱温度、時間、焼入れ回数)を適正に制御することで、硬化層粒径が顕著に微細化し、粒界強度が向上する。具体的には、加熱温度:800 〜1000℃、加熱時間:5秒以下とすることにより、表面硬化層全厚にわたり粒径:10μm 以下の微細粒を安定して得ることができる。さらに、上記条件での焼入れ処理を2回以上繰り返すことにより、1回の焼入れに比べてさらに微細な表面硬化層粒径が得られる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.少なくとも歯および歯底に表面硬化層を有するギアであって、
C:0.35〜0.7 mass%、
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.07 mass%(但し、0.05mass%以上を除く)、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
を、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、母材組織が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10%以上であり、さらに高周波焼入れによる表面硬化層の旧オーステナイト粒径が該表面硬化層全厚にわたり10μm 以下であることを特徴とする、疲労特性に優れたギア。
【0013】
2.上記1において、前記ギアが、さらに
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れたギア。
【0014】
3.C:0.35〜0.7 mass%、
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.07 mass%(但し、0.05mass%以上を除く)、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
を、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、熱間加工し、その後0.2 ℃/s以上の速度で冷却し、次いで切削加工によって歯を刻んだのち、1回または複数回の高周波焼入れを、最終の焼入れ時の加熱温度:800 〜1000℃、該加熱温度範囲での加熱時間:5秒以下の条件下で高周波焼入れを行って、少なくとも歯および歯底に表面硬化層を形成することを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。
【0015】
4.上記3において、前記鋼素材が、さらに
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。
【0016】
5.上記3または4において、前記切削後に、高周波焼入れを複数回繰り返し、前記複数回の高周波焼入れの全てについて、高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃、該加熱温度範囲での加熱時間を1回の高周波焼入れ当たり5秒以下とすることを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。
【0018】
7.上記3〜6のいずれかにおいて、前記加熱温度範囲での加熱時間を、1回の高周波焼入れ当たり5秒以下とすることを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
すなわち、図1に代表的なギア1を示すように、ギア1はその周面に多数の歯2を刻んで成るのが通例である。そして、本発明のギアでは、図2に示すように、多数の歯2とこれら歯2相互間の歯底3との表層部分に、高周波焼入れによる表面硬化層4を有し、この表面硬化層4における旧オーステナイト粒径が該表面硬化層全厚にわたり12μm 以下であることを特徴とする。なお、図示例では、歯2および歯底3の表層部分に表面硬化層4を形成したが、その他の部分、例えば各種駆動軸が差し込まれる軸穴5の内周面に表面硬化層を設けることも可能である。
【0020】
かようなギアについて、まず、その成分組成を上記の範囲に限定した理由から説明する。
C:0.35〜0.7 mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.35mass%に満たないと必要とされる疲労強度を確保するためには焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.35mass%以上を添加する。一方、0.7 mass%を超えて含有させると粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度が低下し、また切削性、冷間鍛造性および耐焼き割れ性も低下する。このためCは、0.35〜0.7 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.4〜0.6 mass%の範囲である。
【0021】
Si:0.30〜1.1 mass%
Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させると共に、オーステナイトの粒成長を抑制し、焼入れ硬化層の粒径を微細化する作用を有する。また、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。さらに、ベイナイト組織の生成にも有用な元素であり、これらのことにより疲労強度を向上させる。
このように、Siは、本発明において非常に重要な元素であり、0.30mass%以上の含有を必須とする。というのは、Si量が0.30mass%に満たないと、製造条件および焼入れ条件をいかように調整しても硬化層全厚にわたって粒径が12μm 以下の微細粒とすることができないからである。しかしながら、Si量が 1.1mass%を超えると、フェライトの固溶硬化により硬さが上昇し、切削性および冷間鍛造性の低下を招く。従って、Siは、0.30〜1.1 mass%の範囲に限定した。好ましくは0.40〜1.0 mass%の範囲である。
【0022】
Mn:0.2 〜2.0 mass%
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化深さを確保する上で不可欠の成分であるため、積極的に添加するが、含有量が 0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2 mass%以上とした。好ましくは 0.3mass%以上である。一方、Mn量が 2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは 2.0mass%以下とした。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2 mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは 1.0mass%以下である。
【0023】
Al:0.005 〜0.25mass%
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が 0.005mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは 0.005〜0.25mass%の範囲に限定した。好ましくは0.05〜0.06mass%の範囲である。
【0024】
Ti:0.005 〜0.07 mass%(但し、0.05mass%以上を除く)
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、少なくとも 0.005mass%の含有を必要とするが、0.07 mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くので、Tiは 0.005〜0.07 mass%の範囲に限定した。さらに、Nを確実に固定して、Bによる焼入れ性向上により、ベイナイトとマルテンサイト組織を得る観点からは、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42を満足させる。
【0025】
Mo:0.05〜0.6 mass%
Moは、ベイナイト組織の生成を促進することにより、焼入れ加熱時のオーステナイト粒径を微細化し、表面硬化層の粒径を細粒化する作用がある。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイトの粒成長を抑制することにより、表面硬化層の粒径を微細化する作用がある。さらに、焼入れ性の向上に有用な元素であるため、焼入れ性を調整するために用いられる。加えて、Moは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を有効に阻止する元素でもある。
このように、Moは、本発明において非常に重要な元素であり、含有量が0.05mass%に満たないと、製造条件や焼入れ条件をいかように調整しても表面硬化層全厚にわたって粒径が12μm 以下の微細粒とすることができない。しかしながら、 0.6mass%を超えて含有させると、圧延材の硬さが著しく上昇し、加工性の低下を招く。従って、Moは0.05〜0.6 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.1〜0.6 mass%の範囲である。
【0026】
B:0.0003〜0.006 mass%
Bは、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織の生成を促進する効果を有する。またBは、微量の添加によって焼入れ性を向上させ、焼入れ時の焼入れ深さを高めることにより強度を向上させる効果もある。さらにBは、粒界に優先的に偏析して、粒界に偏析するPの濃度を低減し、粒界強度を向上させ、もって疲労強度を向上させる作用もある。
このため、本発明では、Bを積極的に添加するが、含有量が0.0003mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.006mass%を超えて含有させるとその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招くため、Bは0.0003〜0.006 mass%の範囲に限定した。好ましくは0.0005〜0.004 mass%の範囲である。
【0027】
S:0.06mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.06mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.06mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
【0028】
P:0.020 mass%以下
Pは、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、疲労強度を低下させる。また、焼割れを助長する弊害もある。従って、Pの含有は極力低減することが望ましいが、0.020 mass%までは許容される。
【0029】
Cr:0.2 mass%以下
Crは、炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、0.2 mass%までは許容できる。好ましくは0.05mass%以下である。
【0030】
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:1.0 mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。また炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が 1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0 mass%以下の添加とする。なお好ましくは0.5 mass%以下である。
【0031】
Ni:3.5 mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、3.5 mass%を超えて添加するとギアのコストが上昇するので、3.5 mass%以下の添加とする。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。好ましくは 0.1〜1.0 mass%である。
【0032】
Co:1.0 mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、強度および疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0 mass%を超えて添加するとギアのコストが上昇するので、1.0 mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.02〜0.5 mass%である。
【0033】
Nb:0.1 mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC, Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1 mass%を上限とする。なお、0.005%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005 mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.01〜0.05mass%である。
【0034】
V:0.5 mass%以下
Vは、鋼中でC, Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5 mass%以下とする。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.03〜0.3 mass%である。
【0035】
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分であり、母材組織の調整も重要である。
すなわち、本発明においては、ギアの母材組織、すなわち焼入れ前の組織(高周波焼入れ後の表面硬化層以外の組織に相当)が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率を体積分率( vol%)で10%以上とする必要がある。この理由は、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織は、フェライト−パーライト組織に比べて炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトである、フェライト/炭化物界面の面積が増加し、生成したオーステナイトが微細化するため、焼入れ後の表面硬化層の粒径を微細化するのに有効に寄与するからである。そして、表面硬化層の粒径の微細化により、粒界強度が上昇し、疲労強度が向上する。
ここに、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率は20 vol%以上とすることがより好ましい。
【0036】
なお、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織以外の残部組織は、フェライト、パーライト等いずれでもよく、特に規定しない。
また、焼入れ後の表面硬化層の粒径の微細化に関しては、マルテンサイト組織もベイナイト組織と同程度の効果を有するが、工業的な観点からは、マルテンサイト組織に比べてベイナイト組織の方がより合金元素の添加量が少なくて済み、また低冷却速度で生成させることが可能であるため、製造上有利となる。
【0037】
また、本発明のギアでは、高周波焼入れ後の表面硬化層に関し、その全厚にわたって旧オーステナイト粒径を10μm 以下とする必要がある。というのは、表面硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径が10μm を超えると、十分な粒界強度が得られず、満足いくほどの疲労強度の向上が望めないからである。なお、好ましくは5μm 以下である。
【0038】
ここに、表面硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径の測定は、次のようにして行う。
高周波焼入れ後の本発明のギアでは、高周波焼入れした歯および歯底の最表層は面積率で 100%のマルテンサイト組織を有する。そして、表面から内部にいくに従い、ある深さまでは 100%マルテンサイト組織の領域が続くが、ある深さから急激にマルテンサイト組織の面積率が減少する。
本発明では、高周波焼入れした部分について、ギア表面から、マルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域を表面硬化層と定義する。
そして、この表面硬化層について、表面から硬化層厚の 1/5位置、1/2 位置および4/5 位置それぞれの位置における平均旧オーステナイト粒径を測定し、いずれの平均旧オーステナイト粒径も10μm 以下である場合に、表面硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径が10μm 以下であるとする。
なお、平均旧オーステナイト粒径の測定は、光学顕微鏡により、400 倍(1視野の面積:0.25mm×0.225 mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、各位置毎に5視野観察し、画像解析装置により平均粒径を測定することにより行う。
【0039】
ここで、本発明のギアにおいては、高周波焼入れによる表面硬化層厚みは0.1mm以上であれば、ギアに求められる性能を確保することができるが、本発明に従って表面硬化層の厚みを1〜2mm、さらには2mm以上にすることも可能である。
【0040】
次に、本発明のギアを製造する条件について説明する。
まず、所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延または熱間鍛造後、必要に応じて冷間圧延または冷間鍛造を経て、切削加工を施して歯を刻んだのち、高周波焼入れを歯および歯底の表層に施して、製品とする。
【0041】
本発明では、母材組織を、上述したベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10 vol%以上の組織とするために、高周波焼入れを施す前の素材については、圧延・鍛造等の熱間加工により所定の形状に加工したのち、0.2 ℃/s以上の速度で冷却する必要がある。というのは、冷却速度が0.2 ℃/s未満の場合には、ベイナイトあるいはマルテンサイト組織が得られ難くなり、これら組織の合計の組織分率が10 vol%に達しない場合が生じるからである。熱間加工後の冷却速度の好適範囲は 0.3〜30℃/sである。
【0042】
なお、熱間加工は 900℃超〜1150℃の温度範囲で行うことが好ましい。900 ℃以下では、必要なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織が得られず、一方1150℃超では加熱コストが大きくなるため、経済的に不利となるからである。
【0043】
次に、本発明では、上述した表面硬化層を得るために高周波焼入れを施すが、この高周波焼入れ時の加熱温度範囲は 800〜1000℃とする必要がある。というのは、加熱温度が 800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、上述した表面硬化層組織の生成が不十分となる結果、十分な疲労強度を確保することができず、一方、加熱温度が1000℃超えの場合、オーステナイト粒の成長が促進されて粗大となり、表面硬化層の粒径が粗大となるため、やはり疲労強度の低下を招くからである。より好ましい加熱温度範囲は 800〜950 ℃である。
【0044】
上記した高周波焼入れを複数回繰り返す場合には、少なくとも最終の高周波焼入れを、加熱温度:800 〜1000℃として行えばよい。ここに、高周波焼入れを複数回繰り返す場合には、全ての高周波焼入れについて、加熱温度:800 〜1000℃とすることが最も望ましい。そして、2回以上の繰り返し焼入れを行うことで、1回焼入れに比べてさらに微細な表面硬化層粒径を得ることができる。
【0045】
なお、高周波焼入れを複数回繰り返す場合、少なくとも最終の高周波焼入れによる焼入れ深さは、それ以前の高周波焼入れによる焼入れ深さと同等またはそれ以上とすることが好ましい。というのは、表面硬化層の結晶粒径は、最後の高周波焼入れに一番強く影響されるので、最後の高周波焼入れによる焼入れ深さが、それ以前の高周波焼入れによる焼入れ深さよりも小さいと、表面硬化層全厚にわたる平均結晶粒径がむしろ大きくなり、かえって疲労強度が低下する傾向にあるからである。
【0046】
また、本発明においては、高周波焼入れは、上記加熱温度範囲における加熱時間を5秒以下とする。というのは、加熱時間を5秒以下とした場合には、5秒を超える場合に比べて、オーステナイトの粒成長をさらに抑制することができ、非常に微細な表面硬化層粒径を得ることができる。より好ましい加熱時間は3秒以下である。
【0047】
【実施例】
表1に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは 300×400mm であった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150 mm角ビレットに圧延したのち、90mmφの棒鋼に圧延した。圧延の仕上温度はベイナイトあるいはマルテンサイト組織生成の観点から好適な温度として 900℃超とした。圧延後の冷却は表2に示す条件とした。
【0048】
ついで、この棒鋼から、下記のギアを切削加工により作製した。
記
小径ギア:外径75mm、モジュール2.5 、歯数28、基準ピッチ円直径70mm
大径ギア:外径85mm、モジュール2.5 、歯数32、基準ピッチ円直径80mm
【0049】
このギアに、周波数:200kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表2に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて 180℃×2hの条件で焼もどしを行い、その後ギア実体疲労試験を行った。
ギア実体疲労試験は、小径および大径のギアを噛み合わせて、回転速度3000rpm および負荷トルク245 N・m の条件で回転させ、いずれかのギアが破損するまでのトルク負荷回数で評価した。
得られた結果を表2に併記する。
【0050】
また、同じ条件で作製したギアについて、その母材組織、焼入れ後の表面硬化層厚み、表面硬化層の全厚にわたって得られる平均旧オーステナイト粒径を、光学顕微鏡を用いて測定した。
表2には、これらの結果も併記する。
ここで、表面硬化層厚みについては、前述したように、ギアの歯および歯底の表面からマルテンサイト組織の面積率が98%に減少する深さまでとした。また、高周波焼入れを複数回実施したものについては、それぞれの焼入れ後の表面硬化層厚みを測定した。さらに、表面硬化層粒径については、表面から硬化層厚の 1/5位置、1/2 位置および4/5 位置それぞれの位置における平均旧オーステナイト粒径を測定し、それらの最大値を示した。なお、高周波焼入れを複数回実施したものについては、最終焼入れ後の平均旧オーステナイト粒径を測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表2から明らかなように、本発明で規定した成分組成範囲を満足し、かつ本発明の高周波焼入れ条件を満たす条件で製造したギアはいずれも、表面硬化層の旧オーステナイト粒径が全厚にわたって10μm 以下を満たしており、その結果トルク負荷回数100 ×104 回以上の優れた疲労特性を得ることができた。
なお、表2中のNo.1と2あるいはNo.4と5を比較すると、焼入れ回数を1回から2回に増やすことで、表面硬化層の粒径が微細化し、疲労特性がさらに向上することが分かる。
【0054】
また、No.8, No.37, No.38を比較すると、焼入れ回数を1回から2回に増やした場合において、2回目の焼入れ深さの方が浅い場合(No.37)には、1回しか施さなかった場合よりも疲労特性はむしろ劣化するのに対し、2回目の焼入れ深さを深くした場合(No.38)には、1回しか施さなかった場合に比べてねじり疲労強度は大幅に向上した。No.38 では、硬化層厚方向で、表面から硬化層厚の 4/5位置で最も旧オーステナイト粒径が大きく、3.5 μm であったが、表層近傍(表面から硬化層厚の 1/5位置)では旧オーステナイト粒径は 2.6μm であり、表層の粒径が微細化していることが、疲労特性の向上に寄与したものと考えられる。
【0055】
これに対し、No.11 は、加工後の冷却速度が小さいため、ベイナイトとマルテンサイトの合計組織分率が10%未満となっており、その結果、表面硬化層粒径が粗大となり、疲労特性が悪い。
No.24 は、表面硬化層粒径は微細であるものの、C含有量が本発明の範囲より高いため、粒界強度の低下を招き、そのため疲労特性が劣っている。
No,25, 26, 27 は、それぞれC, Si, Moの含有量が本発明の適正範囲よりも低いため、表面硬化層粒径が粗大となり、疲労特性が劣っている。
No.28 はB含有量が低く、またNo.29 はMn含有量が、No.30 はSおよびP含有量が、No.31 はCr含有量が、それぞれ本発明の適正範囲を超えているため、いずれも粒界強度の低下を招き、疲労特性が劣っている。
No.32 は、Ti含有量が本発明の適正範囲を超えているため、疲労特性が劣っており、逆にNo.35 はTi含有量が低いため、表面硬化層粒径が粗大となり、疲労特性が劣っている。
No.33 は、高周波焼入れ時の加熱温度が高すぎるため表面硬化層の粒径が粗大となり、一方No.34 は、高周波焼入れ時の加熱温度が低すぎるため表面硬化層が形成されず、いずれも疲労特性に劣っている。
No.36 は、Si量が本発明の下限に満たない0.28mass%の場合であるが、この例のように、Si量が本発明の下限をわずかでも下回る場合には、表面硬化層全厚にわたって12μm 以下の粒径を得ることができず、その結果、疲労特性に劣っている。
【0056】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、優れた疲労特性を有するギアを安定して得ることができ、その結果、自動車用部材の軽量化の要求に対し偉功を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ギアの斜視図である。
【図2】 ギアの歯および歯底における表面硬化層を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ギア
2 歯
3 歯底
4 表面硬化層
5 軸穴[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
TECHNICAL FIELD The present invention relates to a gear having a hardened layer formed by induction hardening on its surface and used for a power transmission device of an automobile and the like, and a method for manufacturing the same.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, in a power transmission device of an automobile, a gear used as a mechanical element for transmitting power from one shaft to another shaft is subjected to hot forging, further cutting, cold forging, and the like on a hot rolled steel bar. In general, the fatigue strength, which is an important characteristic for this kind of application, is ensured by performing induction hardening and tempering after processing into the shape.
On the other hand, in recent years, there is a strong demand for weight reduction of automobile members due to environmental problems, and further improvement in fatigue strength of automobile members is required from this viewpoint.
[0003]
In order to improve the fatigue strength, for example, it is conceivable to increase the quenching depth by induction hardening. However, even if the quenching depth is increased, the fatigue strength is saturated at a certain depth.
Further, improvement of the grain boundary strength is also effective for improving the fatigue strength. From this viewpoint, a technique for refining the prior austenite grain size by dispersing TiC has been proposed (for example, see Patent Document 1). thing).
[0004]
In the technique described in Patent Document 1 described above, since fine TiC is dispersed in a large amount during induction quenching heating, the prior austenite grain size is refined, so that TiC is solutionized before quenching. It is necessary to adopt a process of heating to 1100 ° C or higher in the hot rolling process. Therefore, there is a problem that it is necessary to increase the heating temperature during hot rolling, resulting in poor productivity.
Further, even with the technique disclosed in the above-mentioned Patent Document 1, there is still a problem in that it cannot sufficiently meet the recent demand for fatigue strength.
[0005]
Further, in
However, in this component, since the prior austenite grain size over the entire thickness of the hardened hardened layer is not taken into consideration, the demand for fatigue strength in recent years cannot be sufficiently met.
[0006]
[Patent Document 1]
JP 2000-154819 A (Claims, paragraph [0008])
[Patent Document 2]
JP-A-8-53714 (Claims)
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
The present invention has been developed in view of the above-described present situation, and an object thereof is to propose a gear having further improved fatigue strength as compared with the conventional manufacturing method.
[0008]
[Means for Solving the Problems]
Now, the inventors diligently studied in order to effectively improve the fatigue strength. As a result, as described below, excellent fatigue strength can be obtained by optimizing the chemical composition, structure, quenching conditions, and prior austenite grain size over the entire thickness of the hardened surface layer after quenching. Obtained knowledge.
[0009]
(1) When the gear adjusted to an appropriate chemical composition is quenched and the prior austenite grain size over the entire thickness of the hardened surface layer after quenching is 12 μm or less, the fatigue strength is significantly improved. Specifically, regarding the chemical composition, the addition of Si and Mo in an appropriate range increases the number of austenite nucleation sites during induction hardening and suppresses the growth of austenite grains. The particle size of the surface hardened layer is effectively refined, and as a result, the fatigue strength is remarkably improved. In particular, by adding Si in an amount of 0.30 mass% or more, a surface hardened layer having a particle size of 10 μm or less can be obtained over the entire thickness of the surface hardened layer after induction hardening.
[0010]
(2) When the base material structure of the gear, that is, the structure before quenching, is a structure in which the bainite structure and / or the martensite structure is contained in a specific fraction, the bainite structure or the martensite structure is compared with the ferrite-pearlite structure. Since the carbide has a finely dispersed structure, the area of the ferrite / carbide interface, which is an austenite nucleation site, is increased during quenching heating, and the generated austenite is refined. As a result, the particle size of the surface hardened layer becomes fine, thereby improving the grain boundary strength and increasing the fatigue strength.
[0011]
(3) As described above, by appropriately controlling the induction hardening conditions (heating temperature, time, number of times of quenching) for gears whose chemical composition and structure are adjusted, the hardened layer particle size is remarkably refined and the grain boundary Strength is improved. Specifically, by setting the heating temperature to 800 to 1000 ° C. and the heating time to 5 seconds or less, fine particles having a particle size of 10 μm or less can be stably obtained over the entire thickness of the surface hardened layer. Furthermore, by repeating the quenching process under the above conditions twice or more, a finer surface hardened layer particle size can be obtained as compared with one quenching.
The present invention is based on the above findings.
[0012]
That is, the gist configuration of the present invention is as follows.
1. A gear having a hardened surface layer on at least the teeth and the roots,
C: 0.35-0.7 mass%
Si: 0.30 to 1.1 mass%,
Mn: 0.2-2.0 mass%
Al: 0.005 to 0.25 mass%,
Ti: 0.005 to 0.07 mass% (excluding 0.05 mass % or more) ,
Mo: 0.05-0.6 mass%,
B: 0.0003 to 0.006 mass%,
S: 0.06 mass% or less,
P: 0.02 mass% or less and
Cr: 0.2 mass% or less is contained under Ti (mass%) / N (mass%) ≧ 3.42 , the balance is composed of Fe and inevitable impurities, and the base material structure is bainite structure and / or martensite. It has a site structure, and the total structure fraction of these bainite structure and martensite structure is 10% or more, and the prior austenite grain size of the hardened surface layer by induction hardening is 10 μm or less over the entire thickness of the hardened surface layer. A gear with excellent fatigue characteristics.
[0013]
2. In the above 1, the gear further includes
Cu: 1.0 mass% or less,
Ni: 3.5 mass% or less,
Co: 1.0 mass% or less,
A gear excellent in fatigue characteristics, characterized by having a composition containing one or more selected from Nb: 0.1 mass% or less and V: 0.5 mass% or less.
[0014]
3. C: 0.35-0.7 mass%
Si: 0.30 to 1.1 mass%,
Mn: 0.2-2.0 mass%
Al: 0.005 to 0.25 mass%,
Ti: 0.005 to 0.07 mass% (excluding 0.05 mass % or more) ,
Mo: 0.05-0.6 mass%,
B: 0.0003 to 0.006 mass%,
S: 0.06 mass% or less,
P: 0.02 mass% or less and
Cr: 0.2 mass% or less is contained under Ti (mass%) / N (mass%) ≧ 3.42, and the remainder is hot-worked with a steel material having a composition of Fe and inevitable impurities, and then 0.2 ° C. After cooling at a speed of at least / s and then cutting the teeth by cutting, one or more induction quenching, final heating temperature: 800-1000 ° C, heating time in the heating temperature range : A method for producing a gear excellent in fatigue characteristics, characterized by performing induction hardening under conditions of 5 seconds or less to form a hardened surface layer at least on the teeth and the bottom of the teeth.
[0015]
4). In the above 3, the steel material is further
Cu: 1.0 mass% or less,
Ni: 3.5 mass% or less,
Co: 1.0 mass% or less,
A method for producing a gear excellent in fatigue characteristics, characterized in that the composition contains one or more selected from Nb: 0.1 mass% or less and V: 0.5 mass% or less.
[0016]
5. In 3 or 4 above, after the cutting, induction hardening is repeated a plurality of times, and for all of the plurality of induction hardenings, the heating temperature during induction hardening is 800 to 1000 ° C., and the heating time in the heating temperature range is once. A method for producing a gear excellent in fatigue characteristics, characterized in that it is 5 seconds or less per induction hardening .
[0018]
7). Any one of the above 3 to 6, wherein the heating time in the heating temperature range is 5 seconds or less per induction hardening, and the method for producing a gear having excellent fatigue characteristics.
[0019]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be specifically described.
That is, as shown in FIG. 1, a typical gear 1 is usually formed by cutting a large number of
[0020]
Such a gear will first be described for the reason that its component composition is limited to the above range.
C: 0.35-0.7 mass%
C is an element having the greatest influence on the hardenability, and increases the hardness and depth of the hardened hardened layer and effectively contributes to the improvement of fatigue strength. However, in order to ensure the required fatigue strength when the content is less than 0.35 mass%, the quench hardening depth must be dramatically increased, in which case the occurrence of quench cracks becomes significant, and the bainite structure Therefore, 0.35 mass% or more is added. On the other hand, if the content exceeds 0.7 mass%, the grain boundary strength is lowered, and accordingly, the fatigue strength is lowered, and the machinability, cold forgeability and fire cracking resistance are also lowered. For this reason, C was limited to the range of 0.35 to 0.7 mass%. Preferably it is the range of 0.4-0.6 mass%.
[0021]
Si: 0.30 to 1.1 mass%
Si has the effect of increasing the number of nucleation sites of austenite during quenching heating, suppressing the grain growth of austenite, and reducing the grain size of the quenched hardened layer. Moreover, carbide | carbonized_material production | generation is suppressed and the fall of the grain boundary strength by carbide | carbonized_material is suppressed. Furthermore, it is an element useful for the formation of a bainite structure, and these improve the fatigue strength.
Thus, Si is a very important element in the present invention, and it is essential to contain 0.30 mass% or more. This is because if the Si amount is less than 0.30 mass%, fine particles having a particle diameter of 12 μm or less cannot be obtained over the entire thickness of the cured layer, regardless of how the manufacturing conditions and quenching conditions are adjusted. However, if the Si content exceeds 1.1 mass%, the hardness increases due to the solid solution hardening of ferrite, leading to a decrease in machinability and cold forgeability. Therefore, Si was limited to the range of 0.30 to 1.1 mass%. Preferably it is the range of 0.40-1.0 mass%.
[0022]
Mn: 0.2 to 2.0 mass%
Mn is an essential component for improving the hardenability and ensuring the hardening depth during quenching, so it is actively added, but if the content is less than 0.2 mass%, the effect of addition is poor, so 0.2% More than mass%. Preferably it is 0.3 mass% or more. On the other hand, when the amount of Mn exceeds 2.0 mass%, the retained austenite after quenching increases, and on the contrary, the surface hardness decreases, and consequently the fatigue strength decreases. Therefore, Mn is set to 2.0 mass% or less. It should be noted that if the content of Mn is large, the base material is hardened, which may be disadvantageous in machinability. More preferably, it is 1.0 mass% or less.
[0023]
Al: 0.005 to 0.25 mass%
Al is an element effective for deoxidation. Moreover, it is an element useful also in refine | miniaturizing the particle size of a hardening hardening layer by suppressing the austenite grain growth at the time of quenching heating. However, if the content is less than 0.005 mass%, the effect of addition is poor. On the other hand, even if the content exceeds 0.25 mass%, the effect is saturated, and rather, a disadvantage that causes an increase in the component cost occurs. Limited to a range of ~ 0.25 mass%. Preferably it is the range of 0.05-0.06 mass%.
[0024]
Ti: 0.005 to 0.07 mass% (excluding 0.05 mass % or more)
Ti combines with N mixed as an unavoidable impurity to prevent B from becoming BN and the effect of improving the hardenability of B to disappear, and has the effect of sufficiently exerting the effect of improving the hardenability of B. . In order to obtain this effect, the content of at least 0.005 mass% is required. However, if it exceeds 0.07 mass%, a large amount of TiN is formed. Ti is limited to the range of 0.005 to 0.07 mass% because it causes a significant decrease. In addition, secured at N, by improving hardenability by B, and the viewpoint of obtaining a bainite and martensite, Ti (mass%) / N (mass%) Ru is satisfied ≧ 3.42.
[0025]
Mo: 0.05-0.6 mass%
Mo promotes the formation of a bainite structure, thereby reducing the austenite grain size during quenching and heating, and reducing the grain size of the surface hardened layer. Moreover, it has the effect | action which refines | miniaturizes the particle size of a surface hardening layer by suppressing the grain growth of austenite at the time of quenching heating. Furthermore, since it is an element useful for improving hardenability, it is used for adjusting hardenability. In addition, Mo is an element that suppresses the formation of carbides and effectively prevents a decrease in grain boundary strength due to carbides.
Thus, Mo is a very important element in the present invention, and if the content is less than 0.05 mass%, the particle size over the entire thickness of the surface hardened layer is adjusted no matter how the manufacturing conditions and quenching conditions are adjusted. However, it cannot be made fine particles of 12 μm or less. However, if the content exceeds 0.6 mass%, the hardness of the rolled material is remarkably increased, and the workability is reduced. Therefore, Mo is limited to the range of 0.05 to 0.6 mass%. Preferably it is the range of 0.1-0.6 mass%.
[0026]
B: 0.0003 to 0.006 mass%
B has an effect of promoting the formation of a bainite structure or a martensite structure. B also has the effect of improving the hardenability by adding a small amount and improving the strength by increasing the quenching depth during quenching. Further, B preferentially segregates at the grain boundary, reduces the concentration of P segregating at the grain boundary, improves the grain boundary strength, and thus has the effect of improving fatigue strength.
For this reason, in the present invention, B is positively added, but if the content is less than 0.0003 mass%, the effect of addition is poor. On the other hand, if the content exceeds 0.006 mass%, the effect is saturated, rather the component In order to raise the cost, B is limited to the range of 0.0003 to 0.006 mass%. Preferably it is the range of 0.0005-0.004 mass%.
[0027]
S: 0.06 mass% or less S is a useful element that improves the machinability by forming MnS in steel, but if it exceeds 0.06 mass%, it segregates at the grain boundary and lowers the grain boundary strength. , S was limited to 0.06 mass% or less. Preferably it is 0.04 mass% or less.
[0028]
P: 0.020 mass% or less P segregates at the grain boundaries of austenite and reduces the fatigue strength by lowering the grain boundary strength. In addition, there is a harmful effect that promotes burning cracks. Therefore, it is desirable to reduce the P content as much as possible, but it is allowed up to 0.020 mass%.
[0029]
Cr: 0.2 mass% or less
Cr stabilizes carbides and promotes the formation of residual carbides, lowers the grain boundary strength, and degrades fatigue strength. Therefore, it is desirable to reduce the Cr content as much as possible, but up to 0.2 mass% is acceptable. Preferably it is 0.05 mass% or less.
[0030]
The basic components have been described above. However, in the present invention, other elements described below can be appropriately contained.
Cu: 1.0 mass% or less
Cu is effective in improving the hardenability, and also dissolves in ferrite, and this solid solution strengthening improves fatigue strength. Further, by suppressing the formation of carbides, the decrease in grain boundary strength due to carbides is suppressed, and the fatigue strength is improved. However, if the content exceeds 1.0 mass%, cracking occurs during hot working, so 1.0 mass% or less is added. In addition, Preferably it is 0.5 mass% or less.
[0031]
Ni: 3.5 mass% or less
Since Ni is an element that improves hardenability, Ni is used when adjusting hardenability. Moreover, it is an element which suppresses the production | generation of a carbide | carbonized_material and suppresses the fall of the grain boundary strength by a carbide | carbonized_material, and improves fatigue strength. However, Ni is an extremely expensive element, and adding more than 3.5 mass% increases the cost of the gear. In addition, since the effect of improving hardenability and the effect of suppressing the decrease in grain boundary strength are small when added at less than 0.05 mass%, it is desirable to add 0.05 mass% or more. Preferably it is 0.1-1.0 mass%.
[0032]
Co: 1.0 mass% or less
Co is an element that suppresses the formation of carbides, suppresses the decrease in grain boundary strength due to carbides, and improves the strength and fatigue strength. However, Co is an extremely expensive element, and adding more than 1.0 mass% increases the cost of the gear, so the addition is made 1.0 mass% or less. In addition, since addition of less than 0.01 mass% has a small effect of suppressing the decrease in grain boundary strength, it is desirable to add 0.01 mass% or more. Preferably it is 0.02-0.5 mass%.
[0033]
Nb: 0.1 mass% or less
Nb not only has an effect of improving hardenability, but also combines with C and N in steel and acts as a precipitation strengthening element. It is also an element that improves tempering and softening resistance, and these effects improve fatigue strength. However, since the effect is saturated even if it contains exceeding 0.1 mass%, 0.1 mass% is made an upper limit. In addition, if less than 0.005% is added, the effect of improving precipitation strengthening and tempering softening resistance is small, so adding 0.005 mass% or more is desirable. Preferably it is 0.01-0.05 mass%.
[0034]
V: 0.5 mass% or less V combines with C and N in steel and acts as a precipitation strengthening element. It is also an element that improves tempering and softening resistance, and these effects improve fatigue strength. However, since the effect is saturated even if it contains exceeding 0.5 mass%, it shall be 0.5 mass% or less. In addition, since the improvement effect of fatigue strength is small when added less than 0.01 mass%, it is desirable to add 0.01 mass% or more. Preferably it is 0.03-0.3 mass%.
[0035]
The preferred component composition range has been described above. However, in the present invention, it is not sufficient to limit the component composition to the above range, and adjustment of the matrix structure is also important.
That is, in the present invention, the gear base material structure, that is, the structure before quenching (corresponding to the structure other than the surface hardened layer after induction hardening) has a bainite structure and / or a martensite structure, and these bainite structures. And the total tissue fraction of the martensite organization needs to be 10% or more in volume fraction (vol%). This is because the bainite structure or martensite structure is a structure in which carbides are finely dispersed compared to the ferrite-pearlite structure, so the area of the ferrite / carbide interface, which is an austenite nucleation site during quenching heating, increases. This is because the generated austenite is made finer, and thus contributes effectively to making the grain size of the hardened surface hardened layer finer. And grain boundary intensity | strength rises and fatigue strength improves by refinement | miniaturization of the particle size of a surface hardened layer.
Here, the total structure fraction of the bainite structure and the martensite structure is more preferably 20 vol% or more.
[0036]
The remaining structure other than the bainite structure or martensite structure may be ferrite, pearlite, or the like, and is not particularly defined.
Further, regarding the refinement of the grain size of the hardened surface layer after quenching, the martensite structure has the same effect as the bainite structure, but from an industrial point of view, the bainite structure is better than the martensite structure. Since the amount of the alloy element added is smaller and it can be produced at a low cooling rate, it is advantageous in production.
[0037]
In the gear of the present invention, the prior austenite grain size needs to be 10 μm or less over the entire thickness of the surface hardened layer after induction hardening. This is because if the prior austenite grain size over the entire thickness of the surface hardened layer exceeds 10 μm, sufficient grain boundary strength cannot be obtained, and satisfactory improvement in fatigue strength cannot be expected. In addition, Preferably it is 5 micrometers or less.
[0038]
Here, the measurement of the prior austenite particle size over the entire thickness of the hardened surface layer is performed as follows.
In the gear of the present invention after induction hardening, the outermost layer of the induction-hardened tooth and the bottom of the tooth has a martensite structure of 100% in area ratio. And as it goes from the surface to the inside, the area of 100% martensite structure continues at a certain depth, but the area ratio of the martensite structure decreases rapidly from a certain depth.
In the present invention, the depth region from the gear surface until the area ratio of the martensite structure is reduced to 98% is defined as the surface hardened layer in the induction-hardened portion.
Then, this surface hardened layer, 1/5 position of the hardened layer thickness from the surface, 1/2 Average measured prior austenite grain size at the position and 4/5 positions respectively positions, none of the average prior austenite grain size of 10 When it is not more than μm, it is assumed that the prior austenite grain size over the entire thickness of the surface hardened layer is not more than 10 μm.
The average prior austenite grain size is measured 400 times (1 field area: 0.25 mm x 0.225 mm) to 1000 times (1 field area: 0.10 mm x 0.09 mm) at each position using an optical microscope. This is done by observing 5 fields of view and measuring the average particle size with an image analyzer.
[0039]
Here, in the gear of the present invention, if the thickness of the surface hardened layer by induction hardening is 0.1 mm or more, the performance required for the gear can be secured, but according to the present invention, the thickness of the surface hardened layer is 1-2 mm. Furthermore, it is possible to make it 2 mm or more.
[0040]
Next, conditions for manufacturing the gear of the present invention will be described.
First, a steel material adjusted to a predetermined component composition is subjected to bar rolling or hot forging, then cold rolling or cold forging as necessary, and after cutting and cutting teeth, induction hardening is performed on the teeth and The product is applied to the surface layer of the tooth bottom.
[0041]
In the present invention, the base material structure has the above-described bainite structure and / or martensite structure, and the total structure fraction of these bainite structure and martensite structure is 10 vol% or more. The material before quenching needs to be cooled at a rate of 0.2 ° C / s or higher after being processed into a predetermined shape by hot working such as rolling and forging. This is because when the cooling rate is less than 0.2 ° C./s, it becomes difficult to obtain a bainite or martensite structure, and the total structure fraction of these structures may not reach 10 vol%. The preferable range of the cooling rate after hot working is 0.3 to 30 ° C./s.
[0042]
In addition, it is preferable to perform hot working in a temperature range of over 900 ° C. to 1150 ° C. If the temperature is 900 ° C. or lower, the necessary bainite structure and / or martensite structure cannot be obtained. On the other hand, if it exceeds 1150 ° C., the heating cost increases, which is economically disadvantageous.
[0043]
Next, in the present invention, induction hardening is performed in order to obtain the above-described hardened surface layer, and the heating temperature range during this induction hardening needs to be 800-1000 ° C. This is because when the heating temperature is less than 800 ° C., the austenite structure is not sufficiently generated, and the surface hardened layer structure described above is insufficiently generated. As a result, sufficient fatigue strength cannot be ensured. When the heating temperature exceeds 1000 ° C., the growth of austenite grains is promoted and becomes coarse, and the grain size of the surface hardened layer becomes coarse, so that the fatigue strength is also lowered. A more preferable heating temperature range is 800 to 950 ° C.
[0044]
When the above-described induction hardening is repeated a plurality of times, at least the final induction hardening may be performed at a heating temperature of 800 to 1000 ° C. Here, when induction hardening is repeated a plurality of times, it is most desirable to set the heating temperature to 800 to 1000 ° C. for all induction hardening. Further, by performing repeated quenching twice or more, a finer surface hardened layer particle size can be obtained as compared with the single quenching.
[0045]
When induction hardening is repeated a plurality of times, it is preferable that at least the final quenching depth by induction hardening be equal to or greater than the previous quenching depth by induction hardening. This is because the crystal grain size of the hardened surface layer is most strongly affected by the last induction hardening, so if the quenching depth by the last induction hardening is smaller than the previous quenching depth by induction hardening, the surface This is because the average grain size over the entire thickness of the hardened layer is rather increased, and the fatigue strength tends to decrease.
[0046]
In the present invention, induction hardening, you the heating time in the heating temperature range and less than 5 seconds. This is because when the heating time is set to 5 seconds or less, the austenite grain growth can be further suppressed as compared with the case where the heating time exceeds 5 seconds, and a very fine surface hardened layer particle size can be obtained. it can. A more preferable heating time is 3 seconds or less.
[0047]
【Example】
Steel materials having the composition shown in Table 1 were melted by a converter and cast into continuous slabs. The slab size was 300 × 400mm. The slab was rolled into a 150 mm square billet through a breakdown process, and then rolled into a 90 mmφ steel bar. The finishing temperature of rolling was over 900 ° C. as a suitable temperature from the viewpoint of bainite or martensite structure formation. Cooling after rolling was performed under the conditions shown in Table 2.
[0048]
Next, the following gears were produced from this steel bar by cutting.
Small gear: Outer diameter 75mm, Module 2.5, Number of teeth 28, Standard pitch circle diameter 70mm
Large diameter gear: outer diameter 85mm, module 2.5, number of teeth 32, standard pitch circle diameter 80mm
[0049]
This gear was hardened under the conditions shown in Table 2 using an induction hardening apparatus with a frequency of 200 kHz, then tempered under a condition of 180 ° C. × 2 h using a heating furnace, and then a gear body fatigue test. Went.
In the gear substantial fatigue test, small and large gears were meshed and rotated under the conditions of a rotational speed of 3000 rpm and a load torque of 245 N · m, and the number of torque loads until one of the gears was damaged was evaluated.
The obtained results are also shown in Table 2.
[0050]
Moreover, about the gear produced on the same conditions, the average old austenite particle size obtained over the base material structure | tissue, the thickness of the hardened surface layer after hardening, and the full thickness of the hardened surface layer was measured using the optical microscope.
Table 2 also shows these results.
Here, as described above, the thickness of the hardened surface layer was set from the surface of the gear teeth and the bottom of the gear to the depth at which the area ratio of the martensite structure was reduced to 98%. Moreover, about what performed induction hardening several times, the surface hardening layer thickness after each hardening was measured. Furthermore, for the surface hardened layer particle size, the average prior austenite particle size at each of the 1/5 position, 1/2 position and 4/5 position of the hardened layer thickness from the surface was measured and the maximum value was shown. . In addition, about what performed induction hardening several times, the average prior-austenite particle size after final hardening was measured.
[0051]
[Table 1]
[0052]
[Table 2]
[0053]
As is clear from Table 2, all the gears manufactured under the conditions satisfying the component composition range defined in the present invention and satisfying the induction quenching condition of the present invention have the old austenite grain size of the surface hardened layer over the entire thickness. 10 [mu] m satisfies the following, it was possible to obtain excellent fatigue characteristics than the results torque load count 100 × 10 4 times.
When comparing No. 1 and 2 or No. 4 and 5 in Table 2, increasing the number of times of quenching from 1 to 2 makes the surface hardened layer finer and further improves fatigue characteristics. I understand that.
[0054]
In addition, when comparing No.8, No.37, and No.38, when the number of times of quenching was increased from 1 to 2 and the second quenching depth was shallower (No.37), Fatigue properties deteriorate rather than the case where it was applied only once, whereas the torsional fatigue strength was increased when the second quenching depth was increased (No. 38) compared to the case where it was applied only once. Improved significantly. In No. 38, in the thickness direction of the hardened layer, the oldest austenite grain size was 3.5 μm at the 4/5 position from the surface to the hardened layer thickness. ), The prior austenite grain size is 2.6μm, and the finer grain size of the surface layer is thought to have contributed to the improvement of fatigue properties.
[0055]
In contrast, No. 11 has a low cooling rate after processing, so the total structural fraction of bainite and martensite is less than 10%. As a result, the surface hardened layer has a coarse grain size and fatigue characteristics. Is bad.
No. 24 has a fine surface-hardened layer particle size, but its C content is higher than the range of the present invention, which leads to a decrease in grain boundary strength, and therefore fatigue properties are inferior.
In Nos. 25, 26, and 27, the contents of C, Si, and Mo are lower than the appropriate ranges of the present invention, respectively, so that the surface hardened layer particle size is coarse and fatigue characteristics are inferior.
No. 28 has a low B content, No. 29 has an Mn content, No. 30 has an S and P content, and No. 31 has a Cr content exceeding the proper range of the present invention. For this reason, both of them cause a decrease in grain boundary strength and inferior fatigue properties.
No.32 is inferior in fatigue characteristics because the Ti content exceeds the appropriate range of the present invention, and conversely No.35 has a low Ti content, resulting in a coarse surface hardened layer grain size and fatigue. The characteristics are inferior.
In No.33, the particle size of the surface hardened layer becomes coarse because the heating temperature during induction hardening is too high, while in No.34, the surface hardening layer is not formed because the heating temperature during induction hardening is too low. Is also inferior in fatigue properties.
No. 36 is the case where the Si amount is 0.28 mass% which is less than the lower limit of the present invention. However, when the Si amount is slightly below the lower limit of the present invention as in this example, the total thickness of the surface hardened layer is The particle size of 12 μm or less cannot be obtained over the entire range, and as a result, the fatigue properties are inferior.
[0056]
【The invention's effect】
Thus, according to the present invention, it is possible to stably obtain a gear having excellent fatigue characteristics, and as a result, there is a great achievement for the demand for weight reduction of automobile members.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a perspective view of a gear.
FIG. 2 is a cross-sectional view showing a hardened surface layer on a gear tooth and a tooth bottom;
[Explanation of symbols]
1
Claims (5)
C:0.35〜0.7 mass%、
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.07 mass%(但し、0.05mass%以上を除く)、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
を、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、母材組織が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10%以上であり、さらに高周波焼入れによる表面硬化層の旧オーステナイト粒径が該表面硬化層全厚にわたり10μm 以下であることを特徴とする、疲労特性に優れたギア。A gear having a hardened surface layer on at least the teeth and the roots,
C: 0.35-0.7 mass%
Si: 0.30 to 1.1 mass%,
Mn: 0.2-2.0 mass%
Al: 0.005 to 0.25 mass%,
Ti: 0.005 to 0.07 mass% (excluding 0.05 mass % or more) ,
Mo: 0.05-0.6 mass%,
B: 0.0003 to 0.006 mass%,
S: 0.06 mass% or less,
P: 0.02 mass% or less and
Cr: 0.2 mass% or less is contained under Ti (mass%) / N (mass%) ≧ 3.42 , the balance is composed of Fe and inevitable impurities, and the base material structure is bainite structure and / or martensite. It has a site structure, and the total structure fraction of these bainite structure and martensite structure is 10% or more, and the prior austenite grain size of the hardened surface layer by induction hardening is 10 μm or less over the entire thickness of the hardened surface layer. A gear with excellent fatigue characteristics.
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れたギア。2. The gear of claim 1, wherein the gear further
Cu: 1.0 mass% or less,
Ni: 3.5 mass% or less,
Co: 1.0 mass% or less,
A gear excellent in fatigue characteristics, characterized by having a composition containing one or more selected from Nb: 0.1 mass% or less and V: 0.5 mass% or less.
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.07 mass%(但し、0.05mass%以上を除く)、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
を、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、熱間加工し、その後0.2 ℃/s以上の速度で冷却し、次いで切削加工によって歯を刻んだのち、1回または複数回の高周波焼入れを、最終の焼入れ時の加熱温度:800 〜1000℃、該加熱温度範囲での加熱時間:5秒以下の条件下で高周波焼入れを行って、少なくとも歯および歯底に表面硬化層を形成することを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。C: 0.35-0.7 mass%
Si: 0.30 to 1.1 mass%,
Mn: 0.2-2.0 mass%
Al: 0.005 to 0.25 mass%,
Ti: 0.005 to 0.07 mass% (excluding 0.05 mass % or more) ,
Mo: 0.05-0.6 mass%,
B: 0.0003 to 0.006 mass%,
S: 0.06 mass% or less,
P: 0.02 mass% or less and
Cr: 0.2 mass% or less is contained under Ti (mass%) / N (mass%) ≧ 3.42, and the remainder is hot-worked with a steel material having a composition of Fe and inevitable impurities, and then 0.2 ° C. After cooling at a speed of at least / s and then cutting the teeth by cutting, one or more induction quenching, final heating temperature: 800-1000 ° C, heating time in the heating temperature range : A method for producing a gear excellent in fatigue characteristics, characterized by performing induction hardening under conditions of 5 seconds or less to form a hardened surface layer at least on the teeth and the bottom of the teeth.
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、疲労特性に優れたギアの製造方法。The steel material according to claim 3, further comprising:
Cu: 1.0 mass% or less,
Ni: 3.5 mass% or less,
Co: 1.0 mass% or less,
A method for producing a gear excellent in fatigue characteristics, characterized in that the composition contains one or more selected from Nb: 0.1 mass% or less and V: 0.5 mass% or less.
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