図lは本発明に従う現像装置を用いた画像記録装置の概略構成図である。本実施形態の画像記録装置は、転写式電子写真プロセスを利用した、トナーリサイクルプロセス(クリーナレスシステム)のレーザプリンタである。本形態においては、ドラムクリーナを廃し、転写残トナーをリサイクルしている。その際、転写残トナーが、帯電などのほかのプロセスに悪影響を及ぼさないようにトナーを循環させ、現像器に回収する。
(1)画像記録装置の全体的な概略構成
1は被現像体である感光ドラムであり、この感光ドラム1は矢印の時計方向に一定速度をもって回転駆動される。
2は感光ドラム1の帯電手段である帯電部材であり、21は帯電ローラである。この帯電ローラ21は導電性の弾性ローラであり、感光ドラム1に所定の押圧力で圧接させて感光ドラム1との間に帯電部nを形成させてある。本例では帯電ローラの駆動を行っている。帯電ローラの表面の速度と感光ドラムの表面速度(プロセススピード)が同じになるように帯電ローラの回転数を調整する。また、帯電ローラには、帯電ローラのトナー汚れを防止する目的から帯電ローラ当接部材22を備える。帯電ローラを駆動することにより、帯電ローラは感光体及び当接部材22と確実に接触し、トナーをマイナスに(正規の極性)に帯電する。帯電ローラがその帯電極性と逆極性(プラス極性)のトナーで汚れた場合であっても、トナーの電荷をプラスからマイナスへと帯電し、帯電ローラから速やかに吐き出し現像器にて回収することが可能となる。
S1は帯電ローラ21に帯電バイアスを印加する帯電電源である。本例ではこの帯電電源S1から帯電ローラ21との間の接触部に放電開始電圧以上の直流電圧を印加する。
3はレーザダイオード・ポリゴンミラー等を含むレーザビームスキャナ(露光装置)である。このレーザビームスキャナ3は、目的の画像情報の時系列電気ディジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザ光を出力し、該レーザ光で上記回転感光ドラム1の一様帯電面を走査露光Lする。この走査露光Lにより回転感光ドラム1の面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
5は接触転写手段としての中抵抗の転写ローラであり、感光ドラム1に所定に圧接させて転写ニップ部bを形成させてある。この転写ニップ部bに不図示の給紙部から所定のタイミングで被記録体としての転写材Pが給紙され、かつ転写ローラ5に転写バイアス印加電源S3から所定の転写バイアス電圧が印加されることで、感光ドラム1側のトナー像が転写ニップ部bに給紙された転写材Pの面に順次に転写されていく。
本例で使用の転写ローラ5は、例えば芯金5bに中抵抗発泡層5aを形成したものである。転写ニップ部bに導入された転写材Pはこの転写ニップ部bを挟持搬送されて、その表面側に回転感光ドラム1の表面に形成担持されているトナー画像が順次に静電気力と押圧力にて転写されていく。
6は熱定着方式等の定着装置である。転写ニップ部bに給紙されて感光ドラム1側のトナー画像の転写を受けた転写材Pは回転感光ドラム1の面から分離されてこの定着装置6に導入され、トナー画像の定着を受けて画像形成物(プリントコピー)として装置外へ排出される。
そして、感光ドラム1は再度帯電装置20により帯電され、繰り返して画像形成に用いられる。
400は現像装置(現像器)である。トナー410、tは一定の摩擦帯電を帯び、現像バイアス印加電源S2によりトナー担持体と感光ドラム1との間に印加された現像バイアスにより現像領域aにおいて感光ドラム1上の静電潜像を顕像化する。
440はマグネットロール442cを内包させた、現像剤担持搬送部材としての現像スリーブである。現像スリーブ440はアルミシリンダー442b上に非磁性の導電弾性層442aを形成して構成され、感光ドラム1に対し一定の加圧量をもって当接されている。感光ドラムと現像スリーブ間の圧力は、引抜き圧で制御した。引抜き圧とは、現像スリーブと感光ドラムとの間に、厚さ30μmの2枚の板で挟んだ同じく30μmのSUS板を挟み、そのSUS板を引抜くときの力をSUS板の長さ1mあたりに換算した線圧相当値である。現像スリーブ440の製造方法は、材料を混練し、押出し成形して作製した。
ここで、現像スリーブ440のマイクロ硬度は40未満では、規制部材、像担持体等との摺接により弾性層の表面の削れや傷跡が著しく現れ、ガサツキなどの画像不良が生じやすい。さらに、長期間の押圧によりセット跡も発生しやすく、40以上が好ましい。一方、95を超えると、感光ドラムとの摺接により今度は像担持体の削れや傷跡が発生し、ベタ白画像不良などを生じやすくなる。また、現像スリーブ軸方向に均一に当接させることも難しくなり、画像上左右の濃度差が発生しやすいため、95以下が好ましい。
また、弾性層442aの厚みは50μm以上2000μm以下が好ましく、従来のものと比較してかなり薄いものを使用している。但し、50μm未満では像担持体と押圧し接触する際に像担持体表面の削れ、傷つき等が生じ、画像不良が発生する場合があり、場合によっては、長い磁気穂の摩擦帯電量が高くなりガサツキを生じることがある。一方、2000μmを超えると、内包する固定の磁界発生装置からの像担持体表面に及ぼす磁力が弱まり、カブリに不利な傾向となったり、良好な画像を形成するのに十分な現像剤の供給性を満足することが出来ない場合もある。また、クリーナレスシステムにおいては回収不良ゴーストが見られる場合もある。
本発明において、マイクロ硬度計によって測定される表面硬度の測定は、マイクロ硬度計(アスカーMD−1 F360A:高分子株式会社製)を用いて行った。表面粗さの測定器には小坂研究所(株)製、サーフコーダSE3400に接触検出ユニットPU−DJ2Sを用い、測定条件は測定長2.5mm、垂直方向倍率2000倍、水平方向倍率100倍、カットオフ0.8mm、フィルタ設定2CR、レベリング設定をフロントデータで行った。
マグネット442cはスリーブ上の各場所における磁力を発生するための磁場発生手段としての固定磁石である。現像部、層規制部、供給部、捕集部の各場所にピーク密度の絶対値で、500Gの磁束密度を発生する。本発明における磁束密度の測定はベル社製のガウスメータのシリーズ9900、プローブA−99−153を用いて行った。同ガウスメータはガウスメータ本体に接続された棒状のアキシャルプローブを有する。現像スリーブを水平に固定し、内部のマグネットは回転自在に取付ける。この現像スリーブに対し若干の間隔を開けて水平姿勢のプローブを直角に配置し、現像スリーブの中心とプローブの中心が略同一水平面上に位置するようにして固定し、その状態で磁束密度を測定する。マグネットは現像スリーブと略同心の円筒体であり、現像スリーブとマグネットとの間の間隔はどこでも等しいと考えてよい。従って磁石ローラ442cを回転しながら、現像スリーブの表面位置及び表面位置における法線方向の磁束密度を測定することにより、現像スリーブ440の周方向について全ての位置で測定したものに代えることができる。得られた週方向の磁束密度データより各位置のピーク強度を求めた。
トナーtは、マグネットロール442cによる磁気力を受けながら現像スリーブ440上を搬送される過程において、規制ブレード420で層厚規制及び電荷付与を受ける。430は現像容器450内のトナー410の循環を行い順次スリーブ周辺の磁力到達範囲内にトナーを搬送する撹拌部材である。
本現像装置では現像スリーブの表面粗さ、現像ロールと規制ブレード420間の引抜き圧、及びブレード長を適切に設定し、本発明の特徴の1つである現像スリーブ上のトナーコート量Mの厳密な制御を行っている。なお、ブレード自由長とは、ブレードとスリーブの接触部を支点とした時の自由端の長さを意味する。本発明でのトナーコート量Mは5.0g/m2以上16.0g/m2以下に制御される必要がある。5.0未満では充分な画像濃度が得られない。一方、16.0を超えると、トナーの磁気穂が長くなり、ガサツキが目立つと共に、感光体と現像スリーブ間で強く押圧されるため、ベタ白中画像不良を生じる。15.0g/m2以下に制御すれば、この効果はより顕著に発揮される。
現像スリーブ440にコートされたトナーtはスリーブ442bの回転により、感光ドラム1とスリーブ440の対向部である現像部位(現像領域部)aに搬送される。またスリーブ440には現像バイアス印加電源S2よりDC電圧にAC電圧を重畳した現像バイアス電圧が印加される。
本実施例において、感光ドラム周速に対する現像スリーブ周速の周速比は、1.01以上2.00以下で駆動されることが好ましい。1.01未満では現像スリーブから感光ドラムへと転移するトナーの絶対量が少ないため、十分な画像濃度が得にくい場合がある。また、2.00を超えると、耐久と共に現像剤の劣化による画像濃度低下やカブリの悪化が顕著となる。後に述べる本実施例においては、この条件で感光ドラム1側の静電潜像がトナーtにより反転現像される。
ここで、本発明のもう1つの特徴として、トナーtの平均円形度は0.945以上に制御されている。
球形状トナーは不定形トナーに比べて、摩擦帯電時の表面電荷保持状態が均一であり、磁性現像方式においては、個々の磁気穂の長さが均一となる。従って感光ドラムと現像スリーブの接触部においても個々の磁気穂は均一に押圧されるため摩擦帯電量のバラツキが無く、高画像濃度でガサツキの無い高精彩画像が安定して得られる。平均円形度が0.945未満の場合、摩擦帯電量が高くなりやすい低湿下においては長期間の使用と共に摩擦帯電量のバラツキが生じる。従って、トナーコート量Mを5.0g/m2以上に制御するだけでは高画像濃度を維持することが難しく、また、トナーコート量Mを16.0g/m2以下に制御するだけではハーフトーン画像上のガサツキを良好に保つことも非常に難しい。好ましくは平均円形度が0.950以上であれば、更に高画質画像を得ることができ、0.955以上であればより一層好ましい。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものであり、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
具体的な測定方法としては、界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mlに現像剤約5mgを分散させて分散液を調整し、超音波(20KHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして、前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群の平均円形度を求める。
本発明における平均円形度とは、現像剤の凹凸の度合いの指標であり、現像剤が完全な球形の場合1.000を示し、現像剤の表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないからである。
磁性トナーの平均円形度を0.945以上とする手段としては、原材料を予備混合した後、混練、粉砕、分級してトナーを製造する際、粉砕後あるいは分級後に、スプレードライ法又はメカノケミカル法などの球形化処理を施す方法が好ましいが、表面改質の工程は複雑であり、その制御も簡単ではない。よって、特殊な粉砕装置による粉砕手段を採用することが工程の簡略化にもつながり好ましい。具体的粉砕装置としては、川崎重工業(株)製粉砕機KTM、ターボ工業(株)製ターボミルなどを挙げることができ、これらの装置をそのまま、あるいは適宜改良して使用することが好ましい。そして粉砕後の粒子の平均円形度の程度に応じて表面改質を行う。
本発明のさらなる特徴としては、前記トナーtの残留磁化をσr(Am2/kg)としたとき、
1.0≦σr≦6.0
とし、トナーコート量Mとの関係を、
1.4≦M/σr≦15
と制御する点にある。
σrが6.0を超えると、現像スリーブ周りでのトナーの凝集性が悪化し、トナーコート量の厳密な制御が難しくなるためガサツキやベタ白画像不良の抑制が困難になることに加え、現像ローラとの磁気力も強くなるため画像濃度も低下する。一方、σrが1.0未満では磁性現像の特徴が弱まり、カブリの悪化が見られる場合があると共に、クリーナレスシステムを採用した場合、転写残トナーの回収性が低下して回収不良ゴーストが見られる。
また、画像濃度を重視してトナーコート量Mを高めに設定する場合、摩擦帯電量の制御が難しくなるためカブリの抑制が重要となり、σrを大きくする必要がある一方で、ガサツキやベタ白画像不良の抑制を重視する場合はMを小さめに設定する必要があり、その場合画像濃度を高めるためにσrも小さめに設定する必要がある。即ち、Mとσrには比例関係が必要であり、本発明者等の検討によれば、比例定数M/σrの範囲として上記範囲内に制御する必要があることが分かった。M/σrが1.4未満では十分な画像濃度が得られず、M/σrが15を越えてしまうとカブリの抑制が困難となり、また、クリーナレスシステムを採用した場合、回収不良ゴーストが見られる。
本発明において、磁性トナーの残留磁化の測定は振動磁力計VSM−3S−15(東英工業製)により1Kエルステッド(79.58kA/m)磁場下で行った。
本発明に係わる磁性トナーの残留磁化σrを1.0以上6.0以下に制御する手段としては、トナー中の磁性体含有量の調整、磁性体のσrの調整など、いずれも可能である。
磁性体含有量によりトナーのσrを調整する場合、好ましい磁性体含有量はトナー中の結着樹脂100重量部に対して30重量部以上150重量部以下である。磁性体含有量が30重量部未満の場合、低湿下での摩擦帯電量の制御が難しい場合があり、磁性体含有量が150重量部を超えると、トナーの定着性に悪影響を及ぼすことがある。
また、本発明に係わる磁性トナーの重量平均粒径をD4(μm)としたとき、
0.14≦M/(σr×D4)≦4.0
と制御して用いることも非常に有効な使用形態の1つである。
例えば前述のように、トナーコート量Mを高めに設定する場合、カブリの抑制が重要となるが、その抑制方法としてはトナーのσrの制御に加えて、トナー粒径を大きくする手段も挙げられる。即ち、磁性体含有量が一定であれば、トナー粒径を大きくした方が粒子1個当りの磁性体含有量が増加し、粒子1個当りの磁気特性も増加するからである。このことは言い換えると、カブリの改善の手段としては、上述したσrの効果と同様、MとD4にも適正な比例関係が必要ということである。そこで本発明者等が適正なM/(σr×D4)の範囲も検討したところ、0.14以上4.0以下に制御することによって、十分な画像濃度を得つつ、カブリとガサツキ及びベタ白画像不良を良好に抑制でき、クリーナレスシステムを採用しても回収不良ゴーストを一層防止しやすくなることが分かった。
次に、本発明に係わるトナーについて説明する。
本発明のトナーに係る樹脂組成物は、保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜80℃、好ましくは50〜70℃であり、Tgが45℃より低いと高温雰囲気下でのトナーの劣化や定着時でのオフセットの原因となる。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
本発明の樹脂のガラス転移温度を測定する方法として、示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)や、EXSTAR6000、SSC/5200(セイコーインスツルメンツ社製)、DSC2920MDSC(TAインスツルメンツ社製)等を用い、下記の条件にて測定することができる。
<樹脂のガラス転移温度測定方法>
試料:0.5〜2mg、好ましくは1mg
温度曲線:昇温I(20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I(180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
測定法:試料をアルミパン中にいれ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。吸熱ピークが出る前と出た後のべースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をガラス転移点Tgとした。
本発明に用いる結着樹脂成分は、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量において、Mn(数平均分子量)が3000〜20000、また、Mw(重量平均分子量)が50,000〜500,000の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば定着性と耐久性のバランスが非常に良い。
これらの結着樹脂成分は、磁性トナーの製造に際し、予めワックス成分を混合、分散させておくこともできる。予めワックス成分を混合しておくことで、ミクロ領域での相分離が緩和され、良好な分散状態が得られる。
本発明において、トナー又は結着樹脂の、THF(テトラハイドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料のTHF溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製、或いは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良い。例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせを挙げることができる。
試料は以下のようにして作製する。
試料をTHFに入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への試料の放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンス ジャパン社製等が利用できる)を通過させたものを、GPCの測定試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
本発明における結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
本発明における結着樹脂は、1〜100mgKOH/gの範囲で酸価を有することが好ましい。とくに好ましくは、1〜70mgKOH/gの酸価を有する樹脂である。70mgKOH/gより大きくなると、高湿下での摩擦帯電量が不十分となり、1mgKOH/gより小さいと、低湿下での摩擦帯電速度が遅くなる。
結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合し、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価値をコントロールする上で好ましい。
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類などが挙げられる。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成している全モノマー100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部添加すればよい。
本発明の結着樹脂の合成方法として本発明に用いることの出来る重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。
しかし、添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤を単独で、あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間の分解温度を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01乃至5質量部、好ましくは0.1乃至3質量部の範囲で用いることが好ましい。
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることができる。しかし、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法は、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで、所望の分子量の重合体を温和な条件で容易に得ることができるので好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(E)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また、(F)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また架橋成分として働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
また、本発明における三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
本発明に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
本発明の着色剤としては磁性粒子を単独で用いても良く、カーボンブラックなど他の着色剤を併用しても良い。磁性粒子としては、マグネタイト,マグヘマイト,フェライト等の酸化鉄が用いられ、酸化鉄表面あるいは内部に非鉄元素を含有するものも好ましい。
非鉄元素含有量としては、鉄元素基準で異種元素を0.05〜10質量%含有することが好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
これら異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウから選択される元素であることが好ましい。また、以下の、リチウム,ベリリウム,ボロン,ゲルマニウム,チタン,ジルコニウム,錫,鉛,亜鉛,カルシウム,バリウム,スカンジウム,バナジウム,クロム,マンガン,コバルト,銅,ニッケル,ガリウム,カドミウム,インジウム,銀元素,パラジウム,金,水銀,白金,タングステン,モリブデン,ニオブ,オスミウム,ストロンチウム,イットリウム,テクネチウム等の金属も挙げられる。
これらの磁性酸化鉄は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性酸化鉄はBET比表面積は2〜40m2/g(より好ましくは、4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは、70〜100Am2/kg)、残留磁化が1.5〜25Am2/kg(より好ましくは、2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは、2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。
また、場合により、本発明の磁性トナーに用いる磁性酸化鉄は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、チタネート、アミノシラン等で処理しても良い。
本発明のトナーは荷電制御剤を含有することが好ましい。
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
中でも、下記式(I)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Sc,Ti,V,Cr,Co,Ni,Mn又はFe等が挙げられる。Arはアリール基であり、フェニル基、ナフチル基の如きアリール基であり、置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基及び炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基がある。X,X’,Y及びY’は−O−,−CO−,−NH−,−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。C
+はカウンターイオンを示し、水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、脂肪族アンモニウム或いはそれらの混合イオンを示す。〕
特に中心金属としてはFe又はCrが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。カウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物が挙げられる。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。下記式(II)
〔式中R
1はH又はCH
3を示し、R
2及びR
3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、C1〜C4)を示す〕
で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合、この単重合体及び共重合体は荷電制御剤としての機能と、結着樹脂(の全部または一部)としての機能を有する。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、先述の装置により機械的に粉砕し、粉砕粉を分級することによってトナーを得る方法が好ましい。他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。更に必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とを混合機により前述した各種方法を用いて十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
本発明に係わるトナーは、少なくとも2種類の無機微粉体を表面に担持していることが好ましく、それらは平均粒径が5nm以上25nm以下のもの(無機微粉体A)と平均粒径が30nm以上3μm以下のもの(無機微粉体B)であることが好ましい。
平均粒径が5nm以上25nm以下の無機微粉体Aは流動化剤として作用する。トナー粒子の流動性が不十分な場合、感光ドラムと現像スリーブの接触部でのトナーの動きが不十分となり、磁気穂ごとの摩擦帯電量のバラツキが大きくなりやすいため、ガサツキの改善が難しい場合が多々ある。無機微粉体Aの平均粒径が25nmを超えるとトナーに十分な流動性を付与できない。また、無機微粉体Aの平均一次粒径が5nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、一次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、やはり十分な流動性を付与できないことに加え、感光ドラムや現像スリーブを傷つけるなどして画像欠陥を生じ易くなる。
一方、平均粒径が30nm以上3μm以下の無機微粉体Bは、無機微粉体Aの埋め込み防止や転写助剤として以外に、トナー粒子間のスペーサーとしても作用する。接触現像方式において、感光ドラムと現像スリーブの接触部ではトナー粒子どうしの摺擦も起こっているが、粒子どうしの摩擦帯電ではどうしても正極性帯電の粒子と逆極性帯電の粒子が発生しやすい。トナー粒子どうしの摩擦帯電によって逆極性帯電のトナーが発生するとカブリや転写性が悪化してしまう。さらに、クリーナレスシステムでは、それはそのまま帯電部材の汚染につながる。しかしながら、無機微粉体Bがスペーサーとして作用することにより、トナー粒子どうしの直接の摺擦が回避されるため、逆極性帯電トナーの発生を抑制でき、こういった問題を防止できる。
無機微粉体Bの平均粒径が30nm未満では、トナー粒子どうしの直接の接触を回避することが難しい。また、3μmを超えてしまうと、トナー粒子表面から遊離しやすくなり、効果が得られにくい。
より好ましい範囲は40nm以上1μm以下であり、40nm以上0.5μm以下ならば一層好ましい。
このように平均粒径の異なる無機微粉体を2種類以上用いる効果は、特に磁性接触現像方式において顕著に現れるようである。
ここで、トナーに対する無機微粉体Aの添加量Aaと無機微粉体Bの添加量Bbとは、
0.5≦Aa/Bb≦10
という関係であることが好ましい。Aa/Bb<0.5では無機微粉体Aの流動化剤としての効果が不足し、ガサツキが見られる場合がある。10<Aa/Bbでは添加剤Bの添加効果が不十分な場合があり、クリーナレスシステムにおいては耐久と共に帯電部材の汚染によるカブリの悪化が発生する可能性がある。
本発明において、無機微粉体の平均一次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー表面に付着または遊離して存在している無機微粉体の一次粒子を100個以上測定し、個数平均粒径として求めることが出来る。
無機微粉体Aは、少なくともシリカ、酸化チタン、アルミナのいずれかから選ばれる1種であることが望ましい。粉体の形状や摩擦帯電特性により、トナーに流動性を付与しやすいからである。
例えば、シリカ、所謂ケイ酸微粉末の場合は、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉末の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
このような無機微粉体Aは、疎水化処理して用いることが高温高湿環境下での特性から好ましい。トナーと混合された無機微粉体が吸湿すると、トナーの摩擦帯電量が著しく低下し、トナー飛散が起こり易くなる。
疎水化処理の処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカッブリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物のような処理剤を単独でまたは併用して処理しても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時または処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものが、高湿環境下でもトナーの摩擦帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
無機微粉体の疎水化処理条件としては、以下のとおりである。例えば第一段反応としてシラン化合物でシリル化反応を行いシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成する。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10〜200,000mm2/sのものが、さらには3,000〜80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイルの処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。
あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は無機微粉体100質量部に対し1〜23質量部、好ましくは5〜20質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる。
無機微粉体A及びBの添加量はそれぞれ、トナーに対して0.1から3.0質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%を超えると定着性が悪くなる。
本発明に関わるトナーは、無機微粉体A、B以外に、さらに導電性の微粒子を添加して用いることも好ましい。磁気穂同士の電荷交換が促進され、摩擦帯電量のバラツキが一層改善される。
導電性微粒子の体積抵抗は1×10-1〜1×109Ωcmであることが好ましい。1×10-1Ωcm未満ではむしろ高湿下での摩擦帯電量の低下が懸念される。一方、1×109Ωcmを超えてしまうと、電荷交換の促進効果が低い。
導電性微粒子は、体積基準のメジアン径(D50;単位μm)が0.4μm以上4.0μm以下でトナーの重量平均粒径未満であることが好ましい。一般に粒子同士の相互作用による付着力は、粒子同士の粒径差が大きいほど強い。本発明での導電性微粒子の作用の一つは、磁気穂を形成するトナー粒子との接触による摩擦帯電特性の改良であり、トナー粒子への強い固着は好ましくない。数多くのトナー粒子との相互作用を可能とする導電性微粒子の適正なD50は0.4μm以上である。D50が0.4μm未満の金属化合物微粒子は1個のトナー粒子に固着しやすく、磁気穂間の電荷交換による摩擦帯電特性の改良が見込めない。
一方、D50が大きくなるとトナーとの相互作用が弱くなり、摩擦帯電特性などの改良効果が低下する。導電性微粒子のD50が4.0μmを超えてしまうと、電荷交換による効果が得られにくいことに加え、現像電界下では電極として作用してしまい、トナーの動きをむしろ阻害するようになるため、カブリが悪化したり、解像力が低下したりする。従って4.0μm以下が好ましく、トナーの質量平均粒径以下がより好ましい。この理由から粒径の大きい粒子も少なくする必要があり、粒度分布の指標として体積基準でのD10、D90を用いれば、D90は6.0μm以下が好ましい。
加えてD10が3.5μm未満なら更に好ましい。また上述したように、導電性微粒子の粒度分布において、粒径の非常に細かい粒子も少ない方が好ましく、D10としては0.3μm以上が好ましい。
こういった導電性微粒子は、トナー全体に対し通常0.1質量%以上3.0質量%以下の添加量で用いられる。
ここで、導電性微粒子のD10、D50、D90は以下のようにして測定する。
レーザ回折式粒度分布測定装置「LS−230型」(コールター社製)にリキッドモジュールを取り付けて0.04〜2000μmの粒径を測定範囲とし、得られる体積基準の粒度分布により粒子のD10、D50、D90を算出する。測定は、メタノール10mlに粒子を約10mg加え、超音波分散機で2分間分散した後、測定時間90秒間、測定回数1回の条件で測定を行う。
導電性微粒子に適正な表面処理を施して使用することも高湿下での吸湿性制御の観点で好ましい。表面処理の処理剤としては、ケイ素化合物のような撥水性を持つものが好ましい。
無機微粉体あるいは導電性微粒子の添加処理用の装置としては、例えばヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)、などが挙げられる。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。尚、以下の配合においては部数は全て質量部である。
[トナーの製造例1]
材料構成
・結着樹脂 100部
(スチレン−アクリル樹脂(DSC測定によるガラス転移温度Tgが58℃、酸価23.0mgKOH/g、GPCによるMn(数平均分子量)7000、Mw(重量平均分子量)450000、モノマー比:スチレン72.5部、n−ブチルアクリレート20部、モノ−n−ブチルマレート7部、ジビニルベンゼン0.6部))
・磁性酸化鉄 95部
(平均粒径:0.20μm、BET比表面積:8.0m2/g、抗磁力:5.2kA/m、飽和磁化:83.6Am2/kg、残留磁化:6.0Am2/kg)
・ポリプロピレンワックス 4部
(融点143℃、25℃における針入度0.5mm)
・荷電制御剤 2部
(アゾ化合物(I)の鉄錯体;但しX=X’=Y=Y’=O、Arはアニリド基を置換基とするナフチル基、C+は水素イオン及びアンモニウムイオンの混合物、をそれぞれ表す)
上記化合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕した。その後の微粉砕にはターボミル(ターボ工業社製)を用い、機械式粉砕を行った。得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で、超微粉および粗粉を厳密に分級除去して黒色粉を得た。
次に、
・上記黒色粉 100部
・一次粒径8nmのシリカ
(ジメチルシリコーンオイルとヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された、BET120m2/gのもの) 0.8部
・一次粒径50nmのシリカ
(ヘキサメチルジシラザンで表面処理された、BET40m2/gのもの) 0.5部
上記の材料をヘンシェルミキサーFM10C/l(三井鉱山株式会社製)にて90秒間混合処理を行い、トナー1を得た。得られたトナー1の諸物性を表1に示す。
<実施例1>
本実施例の画像形成装置の概略構成として、図1に示したものを用いた。
感光ドラム1としては、φ24mmの回転ドラム型の負極性OPC感光ドラムを用いた。この感光ドラム1は矢印の時計方向に周速度85mm/sec(=プロセススピードPS、印字速度)の一定速度をもって回転駆動される。
当接部材22としては、100μmのポリイミドのフィルムを使用し、線圧10(N/m)以下で帯電ローラに当接している。ポリイミドはトナーに対し負電荷を与える摩擦帯電特性を有していることから使用した。
S1からの帯電バイアスとしては−1300Vの直流電圧を印加し、感光ドラム1面を帯電電位(暗部電位)−700Vに一様に接触帯電させている。
また本実施例においては、感光ドラム1の一様帯電処理面をレーザ光で全面露光した場合、感光ドラム面の電位が−150Vになるようにレーザーパワーは調整されている。
転写ローラ5としては、ローラ抵抗値が5×108Ωのものを用い、+2.0kVの電圧を芯金5bに印加して転写を行なった。
感光ドラムと現像スリーブ間の圧力は、引抜き圧で200N/mになるよう調整した。
現像スリーブ440は、厚さ500μmの導電弾性層をアルミスリーブ442b上に接着後研摩して作成した。また、マイクロ硬度は90度であり、表面粗さはRzで3.8μm、Raで0.6μmであった。
またスリーブ440には現像バイアス印加電源S2よりDC電圧―350VにAC電圧として、1.2kHz、矩形波、Vpp300Vを重畳した現像バイアス電圧を印加している。
さらに本実験においては、現像スリーブは、感光ドラムに対し1.20倍の周速度で駆動されている。
本実施例においては磁性トナーとしてトナー1を用い、本現像装置において所望のトナーコート量を得るため、規制ブレード420を引抜き圧約50(N/m)、ブレード自由長約0.5mmに設定している。その結果、トナーコート量Mは14.0g/m2に制御されている。
本現像装置にトナー1を100g充填し、常温低湿(20℃/10%)下において、印字面積比率約1%の横ラインのみからなる画像パターンを一枚間欠で1000枚プリントし、耐久試験を行った。転写材としては75g/m2のA4コピー紙を用いた。
各実施例及び比較例の評価方法
以下の各種画像評価a)乃至e)は、1000枚印字後に行った。測定f)のみ初期から100枚印字後に行った。
a)カブリ評価
紙上カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。カブリの数値は、べた白画像で下記の式より算出した。紙上カブリは、2.0%以下であれば良好な画像である。
カブリ(反射率)(%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
なお、以降述べる他の画像欠陥が生じた場合は、その個所を避けて測定し、カブリを純粋に評価できるよう配慮した。
b)画像濃度
全面に黒を印字するベタ黒画像を出力し、マクベス社製濃度計RD−1255により光学反射濃度を測定した。画像濃度は1.3以上であれば問題無い。
c)ガサツキ
ガサツキの評価は、600dpiレーザスキャナを使用し、中間調画像を出力して画像の欠陥数から評価を行った。本評価において中間調画像とは主走査方向の1ラインを記録し、その後2ラインを非記録とする縞模様を意味し、全体として中間調の濃度を表現している。
本発明では中間調画像中の1ラインを選択し、0.2mm以上の欠陥の個数で評価した。
×:中間調画像1ライン中に直径0.2mm以上の欠陥が5点以上存在する。
△:中間調画像1ライン中に直径0.2mm以上の欠陥が1〜4点存在する。
○:中間調画像1ライン中に直径0.2mm以上の欠陥が存在しない。
d)ベタ白画像不良
画像評価はベタ白中に、現像スリーブあるいは現像ローラ周期で生じる画像欠陥で行った。プロセススピード及び感光ドラムと現像スリーブの周速比などを加味して現像周期を正確に計算し、同周期の画像不良を抽出して評価した。画像欠陥の大きさは、短軸長さ2〜3mm、長軸長さ3〜10mm程度で、部分的な光学濃度は0.3から1ほどであり、他の画像欠陥とは区別して評価した。評価は欠陥の有り無しで明確に判別可能であり、以下の基準で評価した。
×:画像欠陥有り
○:画像欠陥無し
評価は、ベタ白画像を20枚ほど連続的に印字し評価した。
e)回収不良ゴースト
回収不良ゴーストは先端に20mm四方のパッチ画像を印字した中間調画像で評価した。感光ドラムの周速度とプロセススピードを考慮し、画像中間調部において、感光ドラム周期で現れるゴースト画像対応部の画像濃度と、それ以外の中間調部の画像濃度を測定し、両者の差を求めた。回収性が良好なほど、両者の差が小さい。また、両者の濃度差が0.20を超えるとゴースト画像が顕著となり、実用上問題がある。
f)現像ローラ上のトナーコート量Mの測定
現像スリーブあるいは現像ローラ上のトナーコート量の測定には、概ね図2に示すように構成された吸引装置を用いた。吸引口m1を現像ローラに押し当てながらトナーを吸引し、内筒のフィルタm2にトナーを採集する。このとき内筒は絶縁性であり、静電気によるトナー飛散などを防ぐためアースに接続されている。吸引された現像剤の質量mをフィルタの質量増加分より算出し、吸引した面積:s(m2)も計測する。このときスリーブ上の現像剤のコート量M(g/m2)はm/sより求まる。測定は、ベタ白印字中に記録装置本体を停止し、現像前の現像ローラ上のトナーについて行った。
トナー1についての結果を表2に示す。表から分かるように良好な結果が得られた。
<実施例2、3及び比較例1、2>
トナー1を用い、規制ブレード420の引抜き圧及びブレード自由長を調整することによりトナーコート量Mを適宜変更して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[トナーの製造例2]
トナー製造例1において、用いる磁性酸化鉄として残留磁化3.0Am2/kgのものを50部と変更し、外添剤として一次粒径8nmの表面処理シリカを0.95部、一次粒径50nmの表面処理シリカを0.6部用いてトナー2を得た。
[トナーの製造例3]
トナー製造例1において、残留磁化12.7Am2/kgの磁性酸化鉄を用いて、トナー3を得た。
[トナーの製造例4]
トナー製造例1において、用いる磁性酸化鉄として残留磁化3.0Am2/kgのものを40部と変更し、外添剤として一次粒径8nmの表面処理シリカを1.0部、一次粒径50nmの表面処理シリカを0.6部用いてトナー4を得た。
[トナーの製造例5]
トナー製造例1において、残留磁化15.1Am2/kgの磁性酸化鉄を用いて、トナー5を得た。
[トナーの製造例6]
トナー製造例1において、残留磁化7.0Am2/kgの磁性酸化鉄を用いて、トナー6を得た。
[トナーの製造例7]
トナー製造例6と同様に、残留磁化7.0Am2/kgの磁性酸化鉄を用いて溶融混練し、混練物をハンマーミルで粗粉砕した。この粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、トナー製造例1と同様に多分割分級装置で超微粉および粗粉を厳密に分級除去して黒色粉を得た。その後トナーの製造例1と同様に外添処理してトナー7を得た。
[トナーの製造例8]
トナーの製造例7で得られた微粉砕粉に対し機械的衝撃力により表面改質を行った後、トナーの製造例7と同様に多分割分級装置で超微粉および粗粉を厳密に分級除去して黒色粉を得た。その後トナーの製造例7と同様に外添処理してトナー8を得た。
[トナーの製造例9]
トナーの製造例6と同様にして得られた微粉砕物に対し機械的衝撃力により表面改質を行った後、超微粉および粗粉を厳密に分級除去して黒色粉を得た。その後トナーの製造例6と同様に外添してトナー9を得た。
[トナーの製造例10]
トナーの製造例2において、微粉砕条件及び分級条件を変更して黒色粉を得た。その後、外添剤として一次粒径8nmの表面処理シリカを2.0部、一次粒径50nmの表面処理シリカを1.0部用いてトナー10を得た。
[トナーの製造例11]
トナーの製造例3において、微粉砕条件及び分級条件を変更して黒色粉を得た。その後、外添剤として一次粒径8nmの表面処理シリカを0.5部、一次粒径50nmの表面処理シリカを0.3部用いてトナー11を得た。
[トナーの製造例12乃至16]
トナーの製造例1で得られた黒色粉に対し、外添条件を変更してトナー12乃至16を得た。
トナー2乃至16の外添条件及び粉体物性を表1に示す。
<実施例4乃至15>
トナー2、3、6、8乃至16を用いて実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例3、4>
トナー2、3を用い、規制ブレード420の引抜き圧及びブレード自由長を調整することによりM/σrを適宜変更して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例5乃至7>
トナー4、5、7を用いて実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
表2中の実施例1、2及び比較例1の結果から分かるように、本システムにおいてはトナーコート量Mが5.0g/m2未満では画像濃度が不十分である。一方、実施例1、3、4、6、及び比較例2からわかるように、Mが16.0g/m2を超えると、ガサツキやベタ白中画像不良が目立つ。Mは5.0g/m2以上16.0g/m2以下に制御する必要があるが、15g/m2以下ならガサツキが一層良好となる。
実施例8、9、10、及び比較例7の結果より、本システムにおけるトナーの平均円形度は0.945以上の必要があり、0.950以上であればより好ましく、0.955以上なら一層好ましい。
実施例1、4、5、6、7、及び比較例5、6の結果より、本システムにおけるトナーの残留磁化σrが1.0Am2/kg未満ではカブリの悪化や回収不良ゴーストが見られ、6.0Am2/kgを超えると画像濃度の低下に加えガサツキやベタ白画像不良が見られる。
また、実施例1、4、5、7、及び比較例3、4の結果より、本システムにおいてM/σrが1.4未満では画像濃度が不十分であり、15を超えるとカブリや回収不良ゴーストが見られる。
また、トナーの重量平均粒径をD4(μm)とした時、本システムにおいてはM/(σr×D4)が0.14以上であれば、画像濃度は問題無く、実施例6の結果からは、4.0を超えると、特に問題にはならないレベルでカブリや回収不良ゴーストがやや悪化気味となることも分かる。
実施例1、11乃至15の結果より、本システムに係わるトナーは、平均粒径が5nm以上25nm以下のものと平均粒径が25nm以上3μm以下のものの少なくとも2種類の無機微粉体を表面に担持していることも好ましく、平均粒径が5nm以上25nm以下のものが、シリカ、酸化チタン、アルミナのいずれかから選ばれる1種であれば、良好な画像特性が得られる。
また、平均粒径が5nm以上25nm以下のものが疎水化処理されていればより好ましい結果となる。
[参考トナーの製造例1]
トナーの製造例1において、一次粒径8nmのシリカの添加量を0.8部に、一次粒径50nmのシリカの添加量を1.6部に変更し、参考トナー1を得た。得られた参考トナー1の諸物性を表3に示す。
[参考トナーの製造例2乃至7]
シリカの添加量あるいは一次粒径を変更して参考トナー2乃至7を得た。得られた参考トナー2乃至7の諸物性を表3に示す。
[参考トナーの製造例8]
トナーの製造例1において、2種類のシリカに加えて、導電性微粒子AとしてD10、D50、D90がそれぞれ0.3μm、0.4μm、0.9μmであり、さらに表面をアミノ変性シリコーンオイルで処理した酸素欠損型酸化錫(抵抗1×103Ωcm)を1.0部添加し、参考トナー8を得た。得られた参考トナー8の諸物性を表3に示す。
[参考トナーの製造例9、10]
参考トナーの製造例8において、粒径及び/又は表面処理剤を変更した導電性微粒子を添加して参考トナー9、10を得た。得られた参考トナー9、10の諸物性を表3に示す。
<参考例1>
実施例1と同様の装置を準備した。本現像装置にトナー1を80g充填し、23℃/5%の温湿度下において、印字面積比率約0.5%の横ラインのみからなる画像パターンを一枚間欠で1000枚プリントし、耐久試験を行った。
各画像評価の評価方法は実施例1に準ずるが、ベタ白画像不良の評価に関しては、ベタ白画像を100枚ほど連続的に印字した後に評価した。
結果を表4に示す。表4から分かるように満足できる結果が得られた。
<参考例2乃至13>
トナー12、14、参考トナー1乃至10を用い、参考例1と同様の条件で画像評価を行った。結果を表4に示す。
参考例1乃至13より、低湿環境における過酷な条件下でのクリーナレスシステムにおいて、本発明に係わるトナーはいずれも問題無い耐久性を示すことが分かる。
また、参考例表より以下のことが分かる。
無機微粉体A、Bの添加量比、Aa/Bbが小さくなるとガサツキが悪化気味となるが、Aa/Bbが0.5以上であれば問題無い。逆にAa/Bbが大きくなると耐久後の回収不良ゴーストが悪化気味となるが、Aa/Bbが10以下であれば問題無い。
無機微粉体Bの粒径が小さくなると、耐久後の画像濃度やカブリに劣化が見られやすくなるが、30nm以上であれば問題無く、40nm以上であれば良好である。逆に大きくなると添加効果が小さくなるが、3μm以下ならば効果は見られ、1μm以下なら効果がはっきりと現れ、500nm以下ならば一層好ましい効果が得られる。
さらにケイ素化合物で表面処理した導電性微粒子を添加することにより、画像特性が改良される。導電性微粒子の粒径が小さ過ぎる場合や大きすぎる場合は添加効果は小さいが、D10、D50、D90、がそれぞれ0.3μm、0.4μm、0.9μm以上、及び3.5μm、4.0μm、6.0μm以下であれば確実に添加効果が見られる。
<実施例16乃至19>
弾性層の厚みを20μm、50μm、2000μm、4000μm、に変更した現像スリーブを作製し、その他は実施例1と同様の条件で同様の評価を行った。但し耐久試験は行わず、初期から100枚印字後にのみ画像特性を評価した。
結果を表5に示す。
弾性層の厚みが50μm未満の場合、ガサツキがわずかに発生し、またベタ白画像上に感光ドラムの傷による極微小な黒ポチが見られた。また、2000μmを超えると、画像濃度が低下気味となり、カブリや回収不良ゴーストが若干見られた。但し、いずれの場合も実用上の問題は無い。
<実施例20乃至23>
弾性層のマイクロ硬度を10、40、95、200に変更した現像スリーブを作製し、その他は実施例1と同様の設定で現像装置を準備した。この現像装置を40℃の条件下で1週間放置した後、実施例1と同様の条件で100枚の印字を行い、同様の評価を行った。
結果を表6に示す。
弾性層のマイクロ硬度が40未満の場合、ガサツキがやや見られたことに加え、現像スリーブと感光ドラム間及び現像スリーブと規制ブレード間で発生したと思われるセット跡が画像上軽微に発生した。また、95を超えると、ベタ白画像上に極微小な黒ポチが見られ、その他の画像上において左右に若干の濃度差が発生した。但し、いずれの場合も実用上の問題は無い。
<実施例24>
実施例18において、スリーブ60aに印加する現像バイアスとして−350VのDC電圧のみを用い、実施例18と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
現像バイアスとしてDC電圧のみを用いる場合に比較して、AC電圧を重畳して用いる方がカブリ、画像濃度、ガサツキがやや有利であった。クリーナレスシステムにおける回収性もやや有利であった。但し、DC電圧のみの場合でも、実用上の問題は無い。