JP4361265B2 - トナー用結着樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像の現像に用いられるトナーの結着樹脂として用いられ得る結晶性樹脂、該結晶性樹脂を含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真の大きな課題である低温定着の改善のため、結晶性ポリエステルと非晶質樹脂を結着樹脂として含有したトナーが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来の結晶性ポリエステルは溶融時の貯蔵弾性率が非常に低いため、特に、トナーを溶融混練法により製造する際には、非晶質樹脂への分散が困難であり、それにより、着色剤や荷電制御剤の分散不良による画像濃度の低下や帯電立ち上がり不良が生じやすく、その改善が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−222138号公報(請求項1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トナーの結着樹脂として用いられた際に、低温定着性に優れ、かつ画像濃度が高く、帯電立ち上がり性の良好なトナーが得られる結晶性樹脂、該結晶性樹脂を含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 炭素数が2〜6の脂肪族ジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と炭素数が2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上含有したカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステルであって、170℃における貯蔵弾性率が10〜10000Pa、融解熱の最大ピーク温度が55〜150℃、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルと、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.3より大きく4.0以下である非晶質ポリエステルとを含有してなるトナー用結着樹脂、並びに
(2) 前記結着樹脂を含有してなるトナー
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性樹脂は、特定の粘弾性を有する点に特徴を有する。結晶性樹脂の貯蔵弾性率は、溶融混練時に樹脂にかかるせん断力を反映していると推測され、他の樹脂や着色剤等の添加剤等とともに溶融混練する際、貯蔵弾性率が10Pa未満であると分散不良が生じ、10000Paを超えると混練が困難となり、やはり分散不良となる。そこで、これらの観点から、本発明の結晶性樹脂の貯蔵弾性率(G’)は、170℃において、10〜10000Paであり、好ましくは50〜7000Pa、より好ましくは100〜5000Paである。
【0008】
本発明において、「結晶性」とは、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.1であることをいい、また「非晶質」とは、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.3より大きく4.0以下、好ましくは1.5〜3.0であることをいう。また、軟化点とは、高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)をいう。
【0009】
本発明の結晶性樹脂の融解熱の最大ピーク温度は、定着性、保存性及び耐久性の観点から、55〜150℃、好ましくは60〜130℃、より好ましくは70〜120℃である。
【0010】
結晶性樹脂としては、ポリエステル、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等の縮重合系樹脂、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ長鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステル、立体規則性を有するポリプロピレンやポリスチレン等の付加重合系樹脂及びこれらのウレタン、エポキシ等による変性樹脂であってもよいが、本発明の効果がより顕著に発揮される点から、縮重合系樹脂が好ましく、ポリエステル及び変性ポリエステルがより好ましく、ポリエステルが特に好ましい。なお、変性樹脂における変性構成成分の含有量、即ち変性率は、本発明の効果がより顕著に発揮される点から、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、未変性樹脂であるのが特に好ましい。
【0011】
本発明における結晶性ポリエステルは、炭素数が2〜6、好ましくは4〜6の脂肪族ジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と炭素数が2〜8、好ましくは4〜6、より好ましくは4の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上含有したカルボン酸成分を縮重合させて得られた樹脂が好ましい。
【0012】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等が挙げられ、特にα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールがより好ましく、1,6−ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0013】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールは、アルコール成分中に、60モル%以上、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有されているのが望ましい。特に、その中の1種の脂肪族ジオールが、アルコール成分中の50モル%以上、好ましくは60モル%以上を占めているのが望ましい。なかでも、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオールがアルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、特に好ましくは80〜100モル%含有されているのが望ましい。
【0014】
アルコール成分には、炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分が含有されていてもよく、該多価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物等の2価の芳香族アルコールやグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
【0015】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中ではフマル酸及びアジピン酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。なお、脂肪族ジカルボン化合物とは、前記の如く、脂肪族ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0016】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物は、カルボン酸成分中に、60モル%以上、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%含有されているのが望ましい。特に、その中の1種の脂肪族ジカルボン酸化合物が、カルボン酸成分中の60モル%以上、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%を占めているのが望ましい。なかでも、フマル酸が、カルボン酸成分中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは80〜100モル%含有されているのが望ましい。
【0017】
カルボン酸成分には、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸成分が含有されていてもよく、該多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明に規定の貯蔵弾性率と結晶性を保持する点から、フマル酸とアルコール成分中に最も多量に含有されているアルコールモノマーの総含有量が、アルコール成分及びカルボン酸成分を含む全原料モノマー中、60モル%以上であるのが好ましく、70モル%以上であるのがより好ましい。また、カルボン酸成分とアルコール成分を構成する原料モノマー種の数は、それぞれ2種又は3種が好ましい。
【0019】
なお、結晶性ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、製造安定性の観点、すなわち低沸点のアルコール成分を減圧反応時に蒸発により除去し、樹脂を高分子量化することにより、本発明に規定する貯蔵弾性率を容易に調整できることから、0.9以上1.0未満が好ましく、0.95以上1.0未満がより好ましい。
【0020】
アルコール成分とカルボン酸成分は、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で反応させること等により縮重合させることができる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。なお、本発明の特定の貯蔵弾性率を有する結晶性ポリエステルを得るにはより高分子量化することが好ましく、反応液粘度が高くなるまで反応させるのが特に好ましい。高分子量化した結晶性ポリエステルを得るためには、前記のようにカルボン酸成分とアルコール成分のモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を選択すればよい。なお、高出力のモーターを用いて、高分子量化した本発明のポリエステルを製造することもできるが、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
【0021】
なお、結晶性樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した結晶性樹脂であるのが望ましい。
【0022】
さらに、本発明では、本発明の結晶性樹脂を含有したトナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有したトナーを提供する。
【0023】
本発明の結着樹脂における結晶性樹脂の含有量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは10〜30重量%であり、本発明の結着樹脂には、さらに非晶質樹脂が含有されているのが好ましい。
【0024】
非晶質樹脂としては、非晶質ポリエステル、非晶質ポリエステルポリアミド、非晶質スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、2種以上の樹脂成分が部分的に化学結合したハイブリッド樹脂、これらの混合物等が挙げられ、これらの中では、結晶性樹脂として結晶性ポリエステルを含有している場合、定着性や結晶性ポリエステルとの相溶性の観点から、非晶質ポリエステル及び非晶質ポリエステル成分とビニル系樹脂成分とを有するハイブリッド樹脂が好ましく、非晶質ポリエステルがより好ましい。
【0025】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様にして製造することができる。ただし、非晶質ポリエステルとするためには、
▲1▼ 炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸化合物等の樹脂の結晶化を促進するモノマーを用いる場合は、これらのモノマーを2種以上併用して結晶化を抑制する、即ちアルコール成分及びカルボン酸成分のいずれにおいても、これらのモノマーの1種が各成分中10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%を占め、かつこれらのモノマーが2種以上、好ましくは2〜4種用いられていること、又は
▲2▼ 樹脂の非結晶化を促進するモノマー、好ましくはアルコール成分ではビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、またはカルボン酸成分ではアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたコハク酸が、アルコール成分中又はカルボン酸成分中、好ましくは両成分のそれぞれにおいて30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%用いられていること
が好ましい。
【0026】
また、非晶質ポリエステルポリアミドは、前記の多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分に加えてさらに、アミド成分を形成するために、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン、6−アミノカプロン酸、ε−カプロラクタム等のアミノカルボン酸類、プロパノールアミン等のアミノアルコール等が原料モノマーとして用いられ、これらの中ではヘキサメチレンジアミン及びε−カプロラクタムが好ましい。
【0027】
非晶質ポリエステルポリアミドも、非晶質ポリエステルと同様にして製造することができる。
【0028】
本発明において、ハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0029】
従って、ハイブリッド樹脂としては、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマー、好ましくは縮重合系樹脂の原料モノマーと付加重合系樹脂の原料モノマーを混合し、該二つの重合反応を行わせることにより得られる樹脂が好ましく、具体的には、特開平10−087839号公報に記載のハイブリッド樹脂が好ましい。
【0030】
縮重合系樹脂の代表例としては、ポリエステル、ポリエステルポリアミド、ポリアミド等が挙げられ、これらの中ではポリエステルが好ましく、前記付加重合系樹脂の代表例としては、ラジカル重合反応により得られるビニル系樹脂等が挙げられる。
【0031】
非晶質樹脂の軟化点は、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃、ガラス転移点は、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃である。なお、ガラス転移点は非晶質樹脂に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。
【0032】
非晶質樹脂の170℃における貯蔵弾性率(G’)は、10〜10000が好ましく、30〜5000がより好ましい。また、結晶性樹脂と非晶質樹脂の少なくとも1種の樹脂との170℃におけるG’の比(非晶質樹脂のG’/結晶性樹脂のG’)は0.001〜100が好ましく、0.1〜50がより好ましく、0.1〜10が特に好ましい。
【0033】
なお、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した物性を有する非晶質樹脂であるのが望ましい。特に、低温定着性と耐高温オフセット性の観点から、軟化点が70℃以上、120℃未満の低軟化点樹脂と軟化点が120℃以上、160℃以下の高軟化点樹脂とが、好ましくは20/80〜80/20の重量比(低軟化点樹脂/高軟化点樹脂)で併用されているのが好ましい。
【0034】
結晶性樹脂と非晶質樹脂の重量比(結晶性樹脂/非晶質樹脂)は、帯電性、保存性、低温定着性及び耐久性の観点から、1/99〜50/50が好ましく、5/95〜40/60がより好ましく、20/80〜40/60が特に好ましい。
【0035】
本発明のトナーには、本発明の結着樹脂に加えて、さらに、着色剤、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜含有されていてもよい。
【0036】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれにも使用することができる。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0037】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。
【0038】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して含有されていてもよい。一般に、優れた低温定着性を得るためには、カルナウバワックス等の比較的融点の低いワックスが併用されることが好ましいが、本発明のトナーでは、それらの低融点ワックスの含有量が少量であっても、優れた低温定着性が発揮される。
【0039】
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよいが、製造が容易であり、本発明の効果が顕著に発揮されることから、混練粉砕法により得られた粉砕トナーが好ましい。なお、混練粉砕法によりトナーを得る場合、結着樹脂、着色剤等をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。さらに、トナーの表面には、必要に応じて疎水性シリカ等の流動性向上剤等が外添されていてもよい。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0040】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができるが、本発明のトナーは耐久性に優れる点から、二成分系現像剤としての使用が好ましい。
【0041】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0042】
〔融解熱の最大ピーク温度及びガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定し、融解熱の最大ピーク温度を求める。また、ガラス転移点は、前記測定で最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで、最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0043】
〔樹脂の貯蔵弾性率〕
粘弾性測定装置「RDA II」(レオメトリックス社製)を用い、以下の測定条件にて測定する。
測定治具:キュレットを使用。上の筒(半径:15mm、長さ:32mm)、下の器(半径:25mm)、測定時の上の筒と器の底の距離0.5mm
測定試料:8g
測定周波数:2rad/sec
測定温度:170℃
測定歪:0.5%から10%まで0.5%刻みで20点を自動測定モードで測定。
測定値:20点の測定値から、最大値、最小値を除いた18点の平均値とする。
【0044】
結晶性ポリエステルの製造例
表1、2に示す原料モノマー、酸化ジブチル錫4g及びハイドロキノン2gを窒素雰囲気下、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに8.3kPaにて所望の軟化点の樹脂が得られるまで反応させて、樹脂a〜hを得た。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
非晶質樹脂の製造例
表3に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及び酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、220℃で8時間かけて反応させた後、さらに8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂A〜Cを得た。なお、樹脂Cの製造においては、220℃で8時間、さらに8.3kPaにて1時間反応させた後、210℃に昇温して、表3に示す無水トリメリット酸を添加した。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例1、3〜9、比較例1〜4
表4に示す結着樹脂、カーボンブラック「MOGUL L」(キャボット社製)3.5重量部、荷電制御剤「T−77」(保土谷化学工業社製)1重量部、ポリプロピレンワックス「NP−055」(三井化学社製)1重量部及びカルナバワックス「カルナバワックスC1」(加藤洋行社製)1重量部をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、同方向回転二軸押出機(混練部分の全長:1560mm、スクリュー径:42mm、バレル内径:43mm)を用い、ロール回転速度を200回転/分、ロール内の加熱温度を120℃、混合物の供給速度を10kg/時に調整して溶融混練した。混練物の出口温度は約160℃、混合物の平均滞留時間は約18秒であった。得られた溶融混練物を、冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにより粉砕し分級して、体積平均粒子径が8.0μmの粉体を得た。得られた粉体100重量部に、外添剤として「アエロジル R−972」(日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0050】
実施例2
荷電制御剤として「T−77」の代わりに「LR−147」(日本カーリット社製)1重量部を、カーボンブラックの代わりに、シアン顔料「ECB−301」(大日精化社製)3.5重量部を、それぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0051】
試験例1〔低温定着性〕
トナー4重量部とシリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製、平均粒子径:90μm)96重量部とを10分間ターブラーミキサーにて混合して現像剤を得た。次いで、複写機「AR−505」(シャープ(株)製)を、装置外での定着が可能なように改造した装置に現像剤を実装し、トナー付着量を0.6mg/cm2 に調整して、2cm×12cmの未定着画像を得た。定着ロールの温度を90℃から240℃へと5℃づつ順次上昇させながら未定着画像を定着させ、定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF−70NA」(シャープ社製、75g/m2 )を用いた。
【0052】
各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定した。両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。結果を表4に示す。
【0053】
〔評価基準〕
◎ : 最低定着温度が130℃未満
○ : 最低定着温度が130℃以上、140℃未満
△ : 最低定着温度が140℃以上、150℃未満
× : 最低定着温度が150℃以上
【0054】
試験例2〔画像濃度の評価〕
試験例1と同様にしてトナーとキャリアを混合し、現像剤を得た。複写機「AR−505」(シャープ(株)製)に、現像剤を実装し、トナー付着量を0.6mg/cm2 、定着温度を160℃に調整して、画像を得た。透過型マクベス「TR−927」を用いて、画像濃度を測定し、以下の評価基準に従って評価した。即ち、画像濃度が高いほど、着色剤が均一に分散しているものと判断できる。結果を表4に示す。
【0055】
〔評価基準〕
◎ : 画像濃度が1.35以上
○ : 画像濃度が1.2以上、1.35未満
× : 画像濃度が1.2未満
【0056】
試験例3〔帯電立ち上がり性〕
非磁性一成分現像方式の「MICROLINE 703N3」(沖データ社製)を改造した装置にトナーを実装し、A4(210mm×297mm)紙一面にベタ画像を印字し160℃にて定着した際、印字30枚目の紙において、紙上部5cmにおける平均画像濃度と15cmにおける平均画像濃度を透過型マクベス「TR−927」を用いて測定し、以下の評価基準に従って、帯電立ち上がり性を評価した。即ち、紙の上端と中央での画像濃度の差が小さいほど、トナーの帯電立ち上がり性が良好であり、荷電制御剤が均一に分散しているものと判断できる。結果を表4に示す。
【0057】
〔評価基準〕
◎ : 0.1未満
○ : 0.1以上、0.2未満
△ : 0.2以上、0.25未満
× : 0.25以上
【0058】
【表4】
【0059】
以上の結果より、実施例では、いずれも低温定着性に優れ、画像濃度が高く、帯電立ち上がり性の良好なトナーが得られていることが分かる。これに対し、貯蔵弾性率は満足するが、融解熱の最大ピーク温度が低い結晶性ポリエステルを含有した比較例1のトナーは、低温定着性は良好であるものの、帯電立ち上がり性に欠けており、融解熱の最大ピーク温度が高い結晶性ポリエステルを含有した比較例2のトナーは、低温定着性に欠けているだけでなく、画像濃度と帯電立ち上がり性も不十分であり、融解熱の最大ピーク温度は満足するが、貯蔵弾性率が低い結晶性ポリエステルを含有した比較例3のトナーは、低温定着性は良好であるものの、画像濃度と帯電立ち上がり性が不十分である。また、結晶性ポリエステルを含有していない比較例4のトナーは、画像濃度と帯電立ち上がり性は良好であるものの、低温定着性が不十分である。
【0060】
【発明の効果】
本発明の結晶性樹脂をトナーの結着樹脂として用いることにより、低温定着性に優れ、かつ画像濃度が高く、帯電立ち上がり性の良好なトナーが得られるという優れた効果が奏される。
Claims (3)
- 炭素数が2〜6の脂肪族ジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と炭素数が2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上含有したカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステルであって、170℃における貯蔵弾性率が10〜10000Pa、融解熱の最大ピーク温度が55〜150℃、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3である結晶性ポリエステルと、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.3より大きく4.0以下である非晶質ポリエステルとを含有してなるトナー用結着樹脂。
- 結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとの170℃における貯蔵弾性率(G’)の比(非晶質ポリエステルのG’/結晶性ポリエステルのG’)が、0.001〜100である請求項1記載の結着樹脂。
- 請求項1又は2記載の結着樹脂を含有してなるトナー。
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