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JP4343467B2 - 硫酸アルミニウムの製造方法 - Google Patents

硫酸アルミニウムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は硫酸アルミニウム製造方法に関するものである
【0002】
【従来の技術】
硫酸アルミニウムは、下水や工場排水、上水等の排水処理剤(無機凝集剤)として使用されたり、紙用サイズ剤、皮革のなめしや油脂の清澄剤、各種触媒等として広く使用されている工業用薬品である。
【0003】
この硫酸アルミニウムは、通常、耐熱、耐酸性材よりなる反応槽に硫酸を仕込み、これに水酸化アルミニウムを投入して加熱し、得られた濃厚硫酸アルミニウム溶液を反応槽で水希釈して貯蔵し、冷却後濃度調整して製品とすることにより製造される(特開昭54-106098、特公平7-25541)。
【0004】
しかしながら、このような従来の方法では、約100〜130℃に加熱を行い、数十分から2時間程度の熟成時間が必要とされていた。あるいは、試薬レベルの高濃度(90〜98重量%)の硫酸を用いることで反応の促進化を図っていた。通常、半導体工場から排出される廃硫酸における硫酸の濃度は、約70〜90重量%であるため、この廃硫酸の有効利用を考えた場合、低濃度の硫酸から効率よく硫酸アルミニウムを製造することができる方法の出現が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低濃度の硫酸から加熱源を必要とせずとも効率よく低温かつ短時間で硫酸アルミニウムを製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、予想外にも硫酸と水酸化アルミニウムから硫酸アルミニウムを製造する際に、過酸化水素水を存在させることで反応が促進されることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
〔1〕 硫酸と水酸化アルミニウムとを過酸化水素水の存在下に反応させて硫酸アルミニウムを製造するに際し、水の添加下前記過酸化水素水を反応系に対して0.1重量%以上存在させ、かつ外部より強制加熱することなしに、前記反応を行い、得られた反応液に更に水を添加することを特徴とする、硫酸アルミニウムの製造方法、
〔2〕 過酸化水素水を0.2重量%以上含有する硫酸と水酸化アルミニウムとを反応させる、前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法、
〔3〕 硫酸濃度が50〜90重量%の硫酸を用いる、前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法、
〔4〕 硫酸がすでにある目的で使用された硫酸である、前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法、
〔5〕 過酸化水素水がすでにある目的で使用された過酸化水素水である、前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法、
〕 前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法に基づいて、過酸化水素水を使用することによって反応収率を向上させる方法、
〕 前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法によって得られる硫酸アルミニウムを含有する工業用組成物、
〕 排水処理剤である、前記〔〕に記載の工業用組成物、
〕 前記〔1〕に記載の硫酸アルミニウムの製造方法によって得られる硫酸アルミニウムを含有する工業用組成物を搭載した排水処理装置
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される硫酸は、濃度に関しては特に限定はなく、約90重量%以下の濃度においても十分使用可能であり、通常は約50重量%以上が好ましい。なお、従来法では、硫酸の濃度は90重量%以上が標準的であった。また、本発明に使用される硫酸の品質としては、工業用や試薬グレードのもの、または、半導体工業等で利用される高純度品であってもよいし、各種部品や製品の洗浄液として使用されたもの、特に、半導体の製造工程でレジスト剥離や洗浄液として利用されたものであってもよい。また、発煙硫酸や無水硫酸もしくはこれらの廃液であってもよい。なお、資源の有効利用、コストダウンの観点から、一度ある目的に使用された廃硫酸を用いることが望ましい。
【0009】
上記のすでにある目的で使用された硫酸とは、硫酸を含有する廃液、廃硫酸等を含む。
【0010】
本発明で使用される水酸化アルミニウムとしては、アルミニウム塩、陶磁器、ガラス、耐火物、触媒もしくは触媒担体、樹脂、ゴム、紙の難燃剤、人工大理石等の原料として工業用に用いられているものであってもよいし、ICや光学用ガラス原料、高純度アルミニウム化合物原料、触媒用、医薬用に用いられている高純度水酸化アルミニウムであってもよいし、水酸化アルミニウムを含有するこれらの廃材(使用済みのもの)であってもよい。なお、コスト面と資源の有効利用面の観点から、工業用水酸化アルミニウムや一度他の目的に使用された水酸化アルミニウムを原料として用いることがより好ましい。
【0011】
上記のすでにある目的で使用された水酸化アルミニウムとは、水酸化アルミニウムを含有する廃材等を含む。
【0012】
本発明で使用される過酸化水素水は、濃度や品質は試薬グレードや工業グレードのいずれのものであってよいし、一度ある目的に使用された過酸化水素水を含む廃液であってもよい。例えば、半導体製造工場でレジスト剥離等の洗浄液として使用された硫酸廃液中に含有される過酸化水素水であってもよい。なお、資源の有効利用、コストダウンの観点から、この廃硫酸中に含まれる過酸化水素水を原料として用いることがより望ましい。
【0013】
上記のすでにある目的で使用された過酸化水素水とは、過酸化水素水を含有する廃液、廃硫酸中に含まれる過酸化水素水等を含む。
【0014】
以上に示した原料である硫酸、水酸化アルミニウムおよび過酸化水素水以外に、所望に応じて他の添加物、例えば水を反応系に存在させて硫酸アルミニウムの製造を行うこともできる。反応方法としては、過酸化水素水を反応系に存在させる以外は公知の硫酸アルミニウムの製造に従って行われてよく、硫酸に水酸化アルミニウムを粉末状で添加してもよいし、水酸化アルミニウムを水とでスラリー化したものを硫酸に添加してもよい。または、水酸化アルミニウムと水のスラリーに硫酸を加えてもよい。また、過酸化水素水は、反応前や反応途中のどちらで添加してもよいし、硫酸や水、水酸化アルミニウムと水のスラリー中に予め添加した状態で使用してもよい。本発明の反応は、好ましくは水酸化アルミニウムと過酸化水素水の混合物に撹拌下硫酸を滴下することにより行われる。
【0015】
同反応系への過酸化水素水の添加量としては、反応系のトータル重量(ただし、水希釈前の状態で)に対して0.1重量%以上である。過酸化水素水の添加量がこれより少ないと反応の促進効果が得られにくくなり、またあまり多すぎると経済的に不利となる。
【0016】
また、過酸化水素水を含有する硫酸を原料として用いる場合は、硫酸中の過酸化水素水の濃度は0.2重量%以上が好ましい。この場合も、添加量がこれより少ないと反応の促進効果が十分に得られにくくなり、またあまり多すぎると経済的に不利となる。
【0017】
なお、過酸化水素水入りの硫酸を用いた上で、さらに反応系に過酸化水素水を添加してもい。
【0018】
過酸化水素水を反応系に0.1重量%以上存在させることで、過酸化水素水の分解反応(H22→H2O+1/2O2↑+98.4kJ)が反応中に誘発され、反応系中の液温度を向上させることに貢献する。これにより、反応速度の向上が図れると共に、加熱源を用いずとも反応を完結させることができる。そのため反応温度は、仕込み時は室温からスタートし、硫酸の水和熱や硫酸と水酸化アルミニウムとの反応熱、および、過酸化水素水の分解熱を利用することで約70〜110℃にまで到達し、あとはこの温度で保温/熟成することで求める硫酸アルミニウムを効率よく製造することができる。
【0019】
また、同反応のさらなる効率アップを図るためさらに硝酸、発煙硝酸またはこれらを含有する廃液を反応系に添加してもよい。
【0020】
反応時間は、通常は約1分〜1時間で終了する。滴下時間は約1〜20分、熟成時間は約1〜20分で完結する場合が多い。
【0021】
また、硫酸に対する水酸化アルミニウムの添加量は、約1.0〜1.2倍モルが好ましい。
【0022】
なお、反応終了後は、例えば水による希釈で所定の濃度に調整した液状物としてもよいし、固化床に流し完全に固化するまで冷却した後、これを粉砕して包装して製品としてもよい。
【0023】
以上に示したように、硫酸と水酸化アルミニウムとの反応から硫酸アルミニウムを製造する際に、過酸化水素水を存在させることで同反応の効率が向上し、処理能力が向上し、反応速度がアップし、低温で反応が進むため省エネが可能となり、また低濃度の廃硫酸の利用が可能となり省資源・資源の有効利用が促進されることになる。
【0024】
なお、本発明の工業用組成物とは本発明の製造方法により製造された硫酸アルミニウムを含むものである限りどのようなものであってもよい。
【0025】
また、本発明の工業用組成物は公知方法に従って、排水処理剤、紙用サイズ剤、皮革のなめし剤、油脂の清澄剤、各種触媒等として使用することが可能である。
【0026】
さらに、工業用組成物は従来の排水処理等の装置に搭載することが可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、硫酸アルミニウム中の酸化アルミニウムの定量分析は、JIS K1450-1996法に従って行った。
【0028】
保温材により反応釜外壁を覆った撹拌機付きの反応釜に水:18gと粉末状水酸化アルミニウム(試薬:和光純薬品):9.8gを加えて撹拌を行ったものに、80重量%の硫酸(試薬:和光純薬品を80重量%に調整):22.5gを撹拌下に室温下で5分かけて滴下した。滴下終了後5分間熟成を行った後、反応液に水:28gを加えて希釈を行った。得られた反応液をフィルターでろ過して、未反応の水酸化アルミニウムの分離を行い、硫酸アルミニウムを製造した。
【0029】
実施例1
硫酸を滴下する前に30重量%過酸化水素水(工業品)を反応釜に1.0g添加し、上記の方法で反応を行った。
【0030】
実施例2
過酸化水素水を0.2%含有した半導体工場からの廃硫酸(80重量%)を用いた以外は上記の方法で反応を行った。
【0031】
実施例3
硫酸を滴下する前に70重量%の硝酸(工業品):0.05gを反応系に添加した以外は実施例2と同じ方法で反応を行った。
【0032】
実施例4
98重量%硫酸に30重量%の過酸化水素水と水とを加えて硫酸濃度を80重量%、過酸化水素水濃度を0.5重量%とした以外は、実施例2と同じ方法で反応を行った。
【0033】
比較例
上記の方法で製造した硫酸アルミニウムを比較例とした。
【0034】
実施例1〜4、比較例について滴下終了後の反応液の反応温度、pH,Al(重量%)を評価した結果を表1にまとめて示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004343467
【0036】
表1の結果から分かるように、過酸化水素水が存在する実施例1〜4のほうが比較例よりも反応効率が向上し、酸化アルミニウムの収率が向上している。また、廃硫酸を用いても同様に、酸化アルミニウムの収率が向上している。さらに硝酸を添加すると、より酸化アルミニウムの収率が向上していることが分かる。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、半導体工場からの廃硫酸のように硫酸濃度50〜90重量%の硫酸を原料として硫酸アルミニウムを製造することが可能である。
【0038】
従来方法に比べると、反応系に対して0.1重量%以上の過酸化水素水の存在により、強制加熱なしに反応が促進され、短時間で反応系が最高温度に到達して反応が完結することになり、処理能力の向上、加熱に要するエネルギーの低減による省エネ、未反応物の低減による品質向上が可能となる。すなわち、反応系に所定濃度の過酸化水素水を存在させることで、硫酸アルミニウムの製造効率を上げることが可能となる。また、この場合、反応を水の添加下で行い、反応で得られた反応液に更に水を添加するのがよい。
【0039】
本発明の製造方法によって製造される硫酸アルミニウムは下水、工場廃水、上水等の排水処理剤、紙用サイズ剤、皮革のなめし剤や油脂の清澄剤、各種触媒等に工業用組成物として使用することが可能である。

Claims (5)

  1. 硫酸と水酸化アルミニウムとを過酸化水素水の存在下に反応させて硫酸アルミニウムを製造するに際し、
    水の添加下で、前記過酸化水素水を反応系に対して0.1重量%以上存在させ、かつ 外部より強制加熱することなしに、前記反応を行い、得られた反応液に更に水を添加す る
    ことを特徴とする、硫酸アルミニウムの製造方法。
  2. 過酸化水素水を0.2重量%以上含有する硫酸と水酸化アルミニウムとを反応させる、請求項1に記載の硫酸アルミニウムの製造方法。
  3. 硫酸濃度が50〜90重量%の硫酸を用いる、請求項1に記載の硫酸アルミニウムの製造方法。
  4. 硫酸がすでにある目的で使用された硫酸である、請求項1に記載の硫酸アルミニウムの製造方法。
  5. 過酸化水素水がすでにある目的で使用された過酸化水素水である、請求項1に記載の硫酸アルミニウムの製造方法。
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