JP4232387B2 - ハードコートフィルム用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種ディスプレイに用いられる耐擦過性を有するハードコート層を設けたフィルム用の基材フィルムとしてのポリエステルフィルムに関する。
【0002】
更に詳しくは、ハードコート層を設けたフィルム(ハードコートフィルムという)を高機能でかつ安価に提供しうる基材フィルムとしての高透明ポリエステルフィルムに関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ブラウン管や液晶ディスプレイなどの表示板や化粧板等の表面には、使用時の表面の擦過等による見栄えの劣化を防止する等の目的で、ハードコートフィルムを貼り合わせることが行われている。
【0004】
例えばブラウン管の場合、従来品の主流は外表面(前面)が曲面であったために、ハードコートフィルムを貼り合わせようとするとフィルムにシワが入りやすく、そのため、フィルムを貼るよりは直接ブラウン管にハードコート処理を行うことの方が主流であった。しかし、近年、ブラウン管外表面をフラット化することが普及してきたことにより、簡便でかつ歩留まりが良くフィルムを貼り合わせることができるようになり、ブラウン管破損時のガラス片の飛散防止を兼ね備えるためにブラウン管外表面にハードコートフィルムを貼り合わせることが主流となってきつつある。
【0005】
また、単に表面保護の目的のためだけにハードコートフィルムを貼り合わせるのではなく、反射防止機能をもつフィルムを貼り合わせたり、透明電極機能をもつフィルムを貼り合わせてタッチキーとしたり、また、紫外線や赤外線の吸収機能や帯電防止機能をもつフィルムを貼り合わせたりするように、高機能化のための手法としてもフィルム貼り合わせが行われてきている。
【0006】
上述したハードコートフィルムに関する技術開発としては、様々な機能性を発現し得る機能性樹脂の開発や加工方法等のハードコート関係の開発が中心であった。もちろん、ハードコートフィルムの元来有すべき耐擦過性についても機能性樹脂の改良により進歩してきたが、反面、要求される耐擦過性レベルも高まってきたために、耐擦過性のバラツキを抑えつつ、要求レベルのフィルムを安定して供給するためには、ハードコート層の膜厚をある一定値以上にすることが必要であると考えられてきた。
【0007】
また、ハードコート層の膜厚を薄くすることに関しては、ハードコート樹脂の設計や塗工方法の面から検討がされてきた。しかし、基材に用いられるフィルムの面からの検討としては、機能性樹脂との密着性付与(特開昭62−64003号公報、特開昭63−158250号公報、特開平8−244187号公報、特開平8−244186号公報、特開平9−314775号公報)、透明性の追求(特開昭61−162337号公報、特開昭61−216203号公報、特開昭62−70046号公報、特開昭62−135350号公報、特開昭63−120646号公報、特開平5−18692号公報)、表面欠点の撲滅(特開昭64−41108号公報、特開平9−183201号公報)などの検討が重点的になされてきたものの、ハードコート層の薄膜化のために基材フィルムを改良することは検討されていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況であったため、ハードコート層の膜厚を下げることで以下の利点が生じるにもかかわらず、膜厚を薄くすることは困難と考えられてきた。
【0009】
(1)ハードコート層のコーティング剤の乾燥時間が短縮できるので加工速度アップが図れコストダウンにつながる。
【0010】
(2)ハードコート層の単位面積あたりの樹脂使用量が減ることによりコストダウンが可能になる。
【0011】
(3)ハードコート層と基材フィルムの熱膨張係数の違いに起因するハードコート後フィルムのカールが抑えられ、製品の歩留まりが向上する。
【0012】
そこで、本発明は、ハードコートフィルムの主要特性である耐擦過性をハードコート層の膜厚を低減させても良好に維持することが可能な基材フィルムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のため、本発明のハードコートフィルム用ポリエステルフィルムは、主として次のいずれかの構成を有する。すなわち、少なくともハードコート形成側表面片面に、主材が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有してなり、かつ、メラミン系架橋剤またはオキサゾリン系架橋剤を含有した積層膜が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであって、該フィルムのハードコート形成側表面の表面硬度が0.35GPa以上、0.38GPa以下であり、かつ、フィルムのヘイズが0.2〜2.0%であることを特徴とするハードコートフィルム用ポリエステルフィルム、である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルフィルムのポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であり、好ましいポリエステルは、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものである。これら構成成分は、1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが特に好ましい。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0016】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが、ハードコートフィルムの用途に応じて適宜選択して添加されていてもよい。
【0017】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0018】
二軸延伸したポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0019】
ハードコートフィルム用ポリエステルフィルムは、ハードコートフィルムを製造する際に基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムであり、本発明の場合、特定の二軸延伸ポリエステルフィルムからなる。ここで、二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステルからなる二軸延伸フィルムの表面に積層膜が形成されたものでも、また、形成されていないものでもよい。このように、本発明においては、積層膜の形成されている場合も含めて、二軸延伸ポリエステルフィルムと総称する。
【0020】
本発明のハードコートフィルム用ポリエステルフィルムは、そのハードコート形成側表面について、当該表面の表面硬度が0.35GPa以上、0.38GPa以下であることが必要である。従来より、ハードコート層による耐擦過性の善し悪しは、ハードコート層の樹脂組成や膜厚に依存するとされ、基材フィルムの善し悪しについては注目されていなかった。しかし、本発明者らは、ハードコート層の膜厚を低減するに従い基材フィルムの表面硬度や押し込み回復率の影響で耐擦過性に優劣が生じることを見出した。即ち、ハードコートを形成すべき側の表面の、表面硬度が0.35GPa未満であるとともに、押し込み回復率が65%未満である場合に、ハードコート層を設けると、ハードコート層の膜厚の低減とともに耐擦過性が急激に悪化し、しかも、耐擦過性のバラツキも大きくなり、ハードコート層の膜厚低減が実用上不可能となる。一方、ポリエステルフィルムの表面硬度が0.35GPa以上であれば、ハードコート層の膜厚低減による耐擦過性への影響が緩やかとなるばかりかバラツキも抑えられる。
【0021】
表面硬度や押し込み回復率の上限を特に設定していないのは、表面硬度や押し込み回復率が高いほど耐擦過性が向上するからであるが、二軸延伸ポリエステルフィルムである以上、安定して製膜を行う上から自ずと限界はある。ポリエステルフィルムの表面硬度や押し込み回復率の上限はその数値として表すことは困難であるが、製膜安定性の点からの指標として、厚み方向の屈折率で表すことができる。即ち、製膜安定性の点から、厚み方向の屈折率が1.490〜1.500であることが好ましく、さらに好ましくは1.491〜1.495である。
【0022】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜300μm、最も好ましくは30〜210μmである。また、製膜して得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたポリエステルフィルムであってもよい。
【0023】
ハードコート層は、本来的に、鉛筆やシャープペンシルの先端、爪などの接触や、表面を拭いて清浄化する際の擦過によるキズの発生を抑えるためのものであり、従来は、この厚さは一般に 5μm未満では十分な表面硬度が得られないとされているため常用範囲は 5〜20μmとされてきた。ところが、本発明のハードコート用ポリエステルフィルムを用いると、より薄い膜厚でも所望の表面硬度を得ることが可能となるので、本発明のポリエステルフィルムを用いたハードコートフィルムにおけるハードコート層の膜厚は、5μm未満とすることも可能である。従って、本発明のポリエステルフィルムを用いた場合のハードコート層の膜厚は、3〜20μm程度が好ましい。この膜厚の上限を超えるほどに厚過ぎる場合にはフィルム全体としての柔軟性がなくなりクラック、カール等の問題が生じ易くなるため好ましくない。
【0024】
ハードコート層の構成成分としては、ポリ有機シロキサン、シリカ、アルミナなどの無機酸化物系あるいは有機アクリル系など、高硬度皮膜が得られる物質であればいずれでもよく、形成方法としては、真空蒸着方式、溶液の塗布・乾燥によるウェットコーティング方式などのいずれの技術を用いてもよいが、アクリル系の活性線硬化性樹脂が塗工時の粘度調整や塗工膜厚をコントロールしやすいことから好ましく用いられる。
【0025】
本発明のハードコート用ポリエステルフィルムには、少なくともハードコート形成側表面に積層膜が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。積層膜は、基材となるポリエステルフィルムの表面に積層構造的に形成されて存在する膜状のものであり、この膜自体は、単一層であっても複数層からなるものであってもよい。また、積層膜の最表面は、ハードコート層との接着性が優れたものであることが好ましい。
【0027】
この積層膜を構成する樹脂は、基材となるポリエステルフィルムとの接着性、およびハードコート層との接着性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を用い、また、異なる2種の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、積層膜の構成成分として好適に用いられるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものである。
【0029】
このポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。積層膜の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸成分が、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上を占めるポリエステルを用いるのがよい。脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0030】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0031】
また、これらポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。
【0032】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
また、積層膜に用いることができるポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども使用可能である。
【0035】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸から選ばれる酸成分を用い、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれるグリコール成分を用いて重合された共重合体などであるが、耐水性が必要とされる場合は、酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを用いて重合された共重合体なども好適に用いることができる。
【0036】
また、積層膜に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、特に限定されないが、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、最も好ましくは0.4dl/g以上である。
【0037】
積層膜の構成成分としてウレタン樹脂を用いる場合、アニオン性基を有する水溶性あるいは水分散性のウレタン樹脂であれば特に限定されずに用いることができる。ウレタン樹脂は、主要構成成分としてポリオール、ポリイソシアネートを用い、これら成分を共重合して得られるものである。
【0038】
該ウレタン樹脂としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、または硫酸半エステル塩基により水への親和性が高められたものなどを用いることができる。カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、または硫酸半エステル塩基などの含有量は、0.5〜15重量%が好ましい。
【0039】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、アクリル系ポリオールなどを用いることができる。
【0040】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
【0041】
ここで、ウレタン樹脂を製造する際の主要な構成成分としては、上記ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物の他に、鎖長延長剤、架橋剤などを含んでいてもよい。鎖長延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを用いることができる。
【0042】
アニオン性基を有するウレタン樹脂は、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤などの他にアニオン性基を有する化合物を用いて共重合する方法、生成したウレタン樹脂の未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、ウレタン樹脂の活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法などを用いて製造することができるが、特に限定されるものではない。
【0043】
また、分子量300〜20000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤、及び、イソシアネート基と反応する基、及びアニオン性基を少なくとも1個有する化合物から重合されてなる樹脂が好ましい。
【0044】
ウレタン樹脂中のアニオン性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩が好ましく、特に好ましくは、スルホン酸塩基である。ポリウレタン樹脂中のアニオン性基の量は、0.05重量%〜8重量%が好ましい。0.05重量%未満では、ウレタン樹脂の水分散性が悪くなる傾向があり、8重量%を越えると、樹脂の耐水性や耐ブロッキング性が劣る傾向がある。
【0045】
積層膜の構成成分としてアクリル樹脂を用いる場合、該アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。更に、これらは他種のモノマーと併用することができる。
【0046】
他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを用いることができる。
【0047】
また、本発明において積層膜に用いることができるアクリル樹脂としては、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども可能である。
【0048】
本発明において用いられるアクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は特に限定されるものではないが、好ましくは0〜90℃、より好ましくは10〜80℃である。Tgが低いアクリル樹脂を用いる場合は耐熱接着性が劣る傾向があり、逆に高すぎる場合は造膜性が劣ることがあり好ましくない。また、該アクリル樹脂の分子量は10万以上が好ましく、より好ましくは30万以上とするのが接着性の点で望ましい。
【0049】
本発明において用いられる好ましいアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、アクリル酸から選ばれる成分からの共重合体などがある。
【0050】
該アクリル樹脂を用いて積層膜を形成する際には、水に溶解、乳化、あるいは懸濁した水系液にして用いることが、環境汚染や塗布時の防爆性の点で好ましい。このような水系液にし得るアクリル樹脂は、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合や、反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合などの方法によって作成することができる。
【0051】
本発明における積層膜においては、上記した樹脂に各種の架橋剤を併用することにより、耐熱接着性を向上させ、さらに耐湿接着性も飛躍的に向上させる。特に、積層膜に用いる樹脂が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂に架橋性官能基が共重合されている樹脂である場合、該架橋剤を併用する。
【0052】
用いられる架橋剤は、特に、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤を、樹脂との相溶性、接着性などの点から用いる。
【0053】
本発明において用いられるメラミン系架橋剤は、特に限定されないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などがある。その中でも、イミノ基型メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂が好ましく、最も好ましくは、イミノ基型メラミン樹脂である。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を併用してもよい。
【0054】
本発明において用いられるオキサゾリン系架橋剤は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであれば特に限定されるものではないが、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
【0055】
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
【0056】
オキサゾリン系架橋剤において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーとしては、オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであれば、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン−α,β−不飽和モノマー類、スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0057】
本発明における積層膜においては、樹脂と架橋剤は任意の比率で混合して用いることができるが、積層膜を設けたことによる効果をより顕著に発揮させるには、架橋剤は、樹脂100重量部に対し0.2〜30重量部添加が常態下での接着性向上の点で好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部添加、最も好ましくは1〜10重量部添加である。架橋剤の添加量が、0.2重量部未満添加の場合、その添加効果が小さく、また、20重量部添加を越える場合は、接着性が低下する傾向がある。
【0058】
また、積層膜中には本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。
【0059】
特に、積層膜中に無機粒子を添加したものは、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので更に好ましい。この場合、添加する無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、平均粒径0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.01〜3μm、最も好ましくは0.05〜2μmであり、積層膜中の樹脂に対する混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0060】
本発明で用いる積層膜を設けた二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するための好ましい方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程中に基材フィルム上に積層膜を設け、基材フィルムと共に延伸する方法が好適である。中でも、生産性を考慮すると、製膜工程中に、塗布方法で積層膜を設ける方法が最も好適である。
【0061】
例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、一軸延伸されたフィルムに連続的に塗液を塗布する。塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍程度延伸される。更に、連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)によって得ることができる。
【0062】
本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面(上記例の場合では、一軸延伸フィルム)にコロナ放電処理などを施し、該基材フィルム表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、積層膜の基材フィルムとの接着性を向上させるために好ましい。
【0063】
積層膜の厚みは、特に限定されないが、通常は0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05μm〜0.5μmである。積層膜の厚みが薄すぎると接着性不良となる場合がある。
【0064】
基材フィルム上へ積層膜用塗液を塗布する方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0065】
また、本発明のハードコートフィルム用ポリエステルフィルムのヘイズは0.2〜2.0%であることが必要である。ポリエステルフィルムのヘイズが2.0%を越えるとハードコート層を設けたフィルムを介して見た画像の曇りが人の目で視認できるほどに悪化する。またポリエステルフィルムのヘイズが0.2%未満であると視認性は良好だが、フィルムの滑り性が悪化するため取り扱いが困難となりハードコート形成の歩留まりが極端に悪化する。ポリエステルフィルムのヘイズの好ましい範囲としては0.3〜1.6%、更に好ましくは0.4〜1.5%である。
【0066】
さらに、本発明のポリエステルフィルムにハードコート層を設けた後のヘイズは視認性の観点から1.8%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.0%以下である。ハードコート層を設けることでポリエステルフィルムよりヘイズが低下する設計であることが好ましい。また、ポリエステルフィルムの基材中に粒子を添加しないかあるいは最小限の添加に止め、滑り性を確保するための積層膜に粒子を添加することが好ましく採用される。
【0067】
次に、本発明のハードコートフィルム用ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0068】
例えば、極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作成する。この未延伸フィルムを70〜100℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に延伸速度2000〜5000%/秒で180〜400%に延伸する。このときのロール温度と延伸速度、延伸倍率は、得られる表面硬度が所望水準となるように最適化する。次にこのフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に必要により積層膜形成塗液を塗布する。この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き200〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中において、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦・横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦・横延伸後、縦・横いずれかの方向に表面硬度アップのため再延伸してもよい。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
(1)フィルムの表面硬度と押し込み回復率
ポリエステルフィルムを10mm×20mmに切断したサンプルを測定ステージに瞬間接着剤で貼り付け、このサンプル表面について、CSIRO/ASI社製の超微小硬度計UMIS−2000を用いて荷重−押し込み深さ線図を求めた。この線図から、式1、式2、式3を用いて表面硬度(H)を求めた(n=10の平均値)。また式4を用いて押し込み回復率(K)を求めた(n=10の平均値)。
【0069】
式1 H=P/A
(P:荷重、A:押し込み後に弾性変形分が回復し残存する圧痕の投影面積)
式2 A=kh2
(k:圧子の幾何学形状から求まる定数で24.56、h:有効接触深さ)
式3 h=h0−εP/(dP/dh)
(h0:全変位量、dP/dh:荷重−押し込み深さ線図における除荷時の初期勾配、ε:圧子の幾何学形状から求まる定数で0.75)
式4 K=100×L1/L2
(L1:押し込み除荷5分後の残存押し込み深さ、L2:押し込み時の最大押し込み深さ)
測定条件 (1)使用圧子:ダイヤモンド製正三角錐圧子(陵間角度:115゜)
(2)負荷モード:押し込み負荷/除荷
(3)最大荷重:150mN
(4)測定雰囲気:25±1℃、65±5%RH
(5)測定n数:10
(2)フィルムのヘイズ
スガ試験器製、ヘイズメーターを使用し、JIS K 7105に従って測定した。
(3)積層膜の膜厚
PTA染色超薄膜切片法、RuO4染色超薄膜切片法にて調整したサンプル断面を、日立(株)製のH−7100FA型透過型電子顕微鏡にて積層膜の膜厚を測定した。
(4)フィルムの屈折率
アタゴ製、アッベ屈折計を使用し、JIS K 7105に従って、屈折率を測定した。
(5)ハードコート層表面の鉛筆硬度
JIS K 5400にしたがい、3Hの鉛筆をハードコート層の表面に垂直にあて、荷重1kgで5回引っ掻き、キズの発生本数により4段階評価(◎:キズなし、○:キズ発生1本、△:キズ発生2本、×:キズ発生3〜5本)した。◎および○が硬度良好の水準である。
(6)ハードコート層の接着性
ハードコート層を設けたポリエステルフィルムのハードコート層上に2mm2のクロスカットを25個入れ、ニチバン(株)製のセロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(◎:25、○:20〜24、△:10〜19、×:0〜9)した。◎および○が接着性良好の水準である。
(7)ハードコートフィルムのカール性
ハードコート層を設けたポリエステルフィルムをA4サイズに裁断して、平らなガラス板上にハードコート層が上になるように置き、1時間放置後、各頂点のガラス板からの浮き上がり高さを測定し、最大高さを3段階評価(○:最大高さが5mm以下、△:最大高さが5mmを越え10mm以下、×:最大高さが10mmを越える)した。○および△がカール性良好の水準である。
【0070】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
実施例1
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。
【0071】
この未延伸フィルムを95℃に加熱して長手方向に延伸速度3000%/秒で210%延伸(3.1倍延伸)し一軸延伸フィルムとした。このフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルム表面の濡れ張力を50mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を両面に塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、100℃で乾燥後、引き続き連続的に110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.7倍延伸し、更に225℃の加熱ゾーンで熱処理を施した後、幅方向に5%弛緩処理し、結晶配向の完了した本発明のポリエステルフィルムを得た。このとき、基材PETフィルム厚みが188μm、積層膜の厚みが0.08μmであった。
【0072】
積層膜形成塗液は次のとおり調製した。
【0073】
ポリエステルエマルジョンとして、下記酸成分とジオール成分とを共重合して得られたポリエステル共重合体のエマルジョンを準備した。
【0074】
・酸成分
テレフタル酸 90モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 10モル%
・ジオール成分
エチレングリコール 96モル%
ネオペンチルグリコール 3モル%
ジエチレングリコール 1モル%
メラミン系架橋剤として、イミノ基型メチル化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(10/90(重量比))で希釈した液を準備した。
【0075】
上記したポリエステル樹脂エマルジョン100重量部に対し、メラミン系架橋剤の希釈液を5重量部、平均粒径が0.1μmのコロイダルシリカ粒子を1重量部添加したものを積層膜形成塗液とした。
実施例2
実施例1で用いた積層膜形成塗液の代わりに下記のウレタン樹脂水分散体を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
【0076】
ウレタン樹脂水分散体を次のとおり調製した。
【0077】
エチレンオキシドのポリエーテルをスルホン化したスルホン酸ナトリウムを含むポリエーテル(スルホン酸基含有量:8重量%)192重量部、ポリテトラメチレンアジペート1013重量部、ポリプロピレンオキシドポリエーテル248重量部を混合し、減圧下、100℃で脱水後、該混合物を70℃とし、イソホロンジイソシアネート178重量部とヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート244重量部との混合物を加え、更に該生成混合物をイソシアネート含有量が5.6重量%になるまで80〜90℃の範囲で攪拌した。得られたプレポリマーを60℃に冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルと水1モルから得られるビウレットポリイソシアネート56重量部とイソホロンジアミンとアセトンから得られるビスケチミン173重量部とを順次加えた。次いで、ヒドラジン水和物の15重量部を溶解した50℃の水溶液をこの混合物に攪拌しながら加え、ウレタン樹脂水分散体とした。
比較例1
長手方向の延伸を延伸速度1500%/秒で210%延伸(3.1倍延伸)とした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。なお、該フィルム表面の押し込み回復率は63%であった。
実施例3
長手方向の延伸を延伸速度3400%/秒で250%延伸(3.5倍延伸)とした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
参考例1
積層膜形成塗液の塗布を行わなかった以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
実施例5
実質的に粒子を含有しないPETペレットの極限粘度を0.68dl/gとし、長手方向の延伸を延伸速度1500%/秒で210%延伸(3.1倍延伸)とした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
【0078】
次に実施例1〜5および比較例1で得られたポリエステルフィルムの片面に、ハードコート層を2種類の塗工方法で塗工し、ハードコートフィルムを製造した。
(塗工方法1)
硬化後の膜厚が2μm、3μm、5μm、10μmとなるように、下記の活性線硬化性樹脂溶液をダイコーターを用いて均一に塗布した。なお、塗布は活性線硬化性樹脂をトルエン/酢酸エチルの1:1混合溶媒で50重量%に希釈して行い、乾燥は80℃のオーブン中で2分間行った。次に塗布面より9cmの高さにセットした照射強度80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を15秒間照射し、活性線硬化型樹脂を硬化させハードコート層を設けたポリエステルフィルムを得た。
【0079】
活性線硬化性樹脂溶液は次の成分を混合して調製した。
【0080】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70重量部
N−ビニルピロリドン 30重量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部
(塗工方法2)
硬化後の膜厚が2μm、3μm、5μmとなるように、上記塗工方法1において用いたのと同じ活性線硬化性樹脂をダイコーターを用いて均一に塗布した。なお、塗布は活性線硬化性樹脂をトルエン/酢酸エチルの1:1混合溶媒で50重量%に希釈して行い、乾燥は100℃のオーブン中で1分間行った。次に塗布面より9cmの高さにセットした照射強度140W/cmの高圧水銀灯で紫外線を8秒間照射し、活性線硬化型樹脂を硬化させハードコート層を設けたポリエステルフィルムを得た。
【0081】
実施例1〜4および比較例1の特性結果を表1に、実施例5の特性結果を表2に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】
ハードコート層を設けたフィルムの主要特性である耐擦過性が、ハードコート層の膜厚を低減させても良好に維持することが可能となるので、ハードコートの機能を低下させずにハードコート層の塗工速度アップと塗工量低減とを図ることができ、ハードコートフィルムのコストダウンが可能となる。
Claims (3)
- 少なくともハードコート形成側表面片面に、主材が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有してなり、かつ、メラミン系架橋剤またはオキサゾリン系架橋剤を含有した積層膜が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであって、該フィルムのハードコート形成側表面の表面硬度が0.35GPa以上、0.38GPa以下であり、かつ、フィルムのヘイズが0.2〜2.0%であることを特徴とするハードコートフィルム用ポリエステルフィルム。
- 厚み方向の屈折率が1.490〜1.500であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム用ポリエステルフィルム。
- 請求項1または2に記載のハードコートフィルム用ポリエステルフィルムのハードコート形成側表面に、ハードコートを形成することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
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