JP4232210B2 - 繊維強化プラスチック製圧力容器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、各種の圧力容器、特に繊維強化プラスチック(FRP)からなる耐圧ボンベに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にCNGタンク(Compressed Natural Gas Tank)と呼ばれる天然ガス自動車搭載用の圧力容器を軽量/高性能化するために、スチールやアルミニウムなどの金属製のライナー、ポリエチレンなどのプラスチック製のライナーの外側に、ガラス繊維や炭素繊維などの高強度繊維と樹脂からなる繊維強化プラスチック(以下FRPと略す)を形成した圧力容器が米国を中心に開発・市販されている。また、病院などで使用したり、消防士が使用する空気呼吸器においても軽量のFRP製圧力容器が市販されている。
【0003】
これら容器は、定められた環境下で使用することが義務付けられているが、自然環境というものは使用者、時には設計者の予測を超える過酷なものとなることがありうる。
【0004】
通常容器には、温度や湿度等を記録する仕組みはないため、設計上考慮されていない条件下に晒された容器は不慮の事態を引き起こすことは完全には否定できない。
【0005】
ガス漏れや容器の破裂による災害を防いで、容器の安全性を確保するために、定期的な容器の検査が義務づけられて(例えば、高圧ガス保安協会の保守基準HKS−S016)はあるものの、不慮の事態をより確実に防ぐためには、容器の環境を一定に保つことが必要といえる。
【0006】
容器の環境を一定に保つには、容器を温度コントロールした部屋(いわゆる温調室)に閉じこめておく方法があるが、自動車の場合そういった対策を講ずる、空間的および経済的余地余裕がないばかりか、軽量という利点も犠牲になりかねない。
【0007】
容器自体が容器の温度、湿度を自動調節し、さらには、万が一容器が不慮の事態につながる損傷を生じた可能性がある場合には、容器自体がそのことを使用者などに知らせる(音や光などのなんらかの形で提示する)ことができれば、安全上非常に好ましい容器であり、社会から望まれている発明といえる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の圧力容器の上述した問題点を解決し、軽量であるのは勿論のこと、圧力容器の温度、湿度を調節することを可能とした信頼性・安全性に優れる圧力容器を提供することにある。また、もう一つの目的は、容器の検査が容易で、さらにはオンタイムで容器の損傷状態や残存寿命を使用者に知らせることを可能とした圧力容器を提供することにある。
【0009】
また、この発明の他の目的は、そのような圧力容器を低コストで製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、少なくとも1つの開口部と、金属またはプラスチック製の内殻と、繊維強化プラスチック(以下FRP)製の外殻とを有してなる圧力容器であって、前記外殻を構成する繊維強化プラスチック中には、金属繊維、または、金属メッキ、金属塗装、もしくは金属コーティングされている繊維からなる通電用の導電繊維が含まれているとともに、前記導電繊維および/または前記補強繊維には絶縁体が被覆されている圧力容器を提供する。
【0011】
また、この発明は、そのような圧力容器を製造する方法として、内殻の周りに、フィラメントワインド法またはテープワインド法を用いて、導電繊維を全部または一部巻き付けて外殻を形成することを特徴とする、ボンベの製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の圧力容器に充填されるガスの種類としては、特に限定されず、前述のごとき天然ガスの他、水素、窒素、酸素、アルゴンガス、アセチレンガス、ヘリウムガス、有機ガス等が挙げられる。
【0013】
この発明を一実施態様に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1において、内殻1を覆うように設けた耐圧性の外殻2を有し、全体としては、胴部9と、それに続く鏡板部10と、開口部としてノズル取付部3とを有し、ノズル取付部には、ノズル取付金具4が装着され、そのノズル取付金具4にノズル5が取り付けられている。外殻2を構成するFRPは、補強繊維7と導電繊維8を含む。
【0015】
圧力容器に天然ガスの他、水素、窒素、酸素、アルゴンガス、アセチレンガス、ヘリウムガス、有機ガス等が、常圧(約1気圧)から700気圧で貯蔵されており、ノズルを通して定常あるいは非定常の流量で使用される。天然ガス自動車の場合などは、電磁弁により微妙な流量調節を行う。
【0016】
上記において、内殻1は、ガス漏れを防ぐ機能および耐圧の一部(特に軸方向の耐圧)を負担する機能をもち、金属、プラスチック、あるいはこれらの複合物からなる。
【0017】
内殻1の金属としては、例えばスチールや、アルミニウム合金、あるいはマグネシウム合金、チタン合金等の軽合金で作られている。金属製の内殻の厚みは、ガス漏れを防ぐ目的の場合は数mm程度の厚みでよいが、耐圧を負担することを目的とする場合には有限要素法(FEM)などによる応力計算により、負担させたい応力に応じた肉厚とすることが通常である。
【0018】
内殻1のプラスチックとしては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれら樹脂の複合層で作られていても良い。
【0019】
内殻1のプラスチックは、プラスチック製ライナーとしてガスバリア性を求められることがあるので、ガスの種類によって樹脂の種類を選定する。
【0020】
金属性の内殻の製造法としては、鋳造、鍛造の他、円筒部(胴部)と半球部(ドーム部)を溶接したり、深絞り加工した後スピニング加工してドーム部を形成したりする公知の製造法のいずれを用いても良い。
【0021】
プラスチック製の内殻の製造法としては、ブロー成形、回転成形、射出成形、熱融着成形などこれもまた公知のいずれの製造法を用いても差し支えない。
【0022】
後述する外殻中に存在する導電繊維との関連では、電気漏れを避けるために、樹脂製の内殻であることが好ましいが、金属製の内殻においても外殻との間に非電導性の層を設ける(例えば、ガラスやアラミド繊維の補強FRP層、ゴム、紙などの絶縁層を設ける)たり、塗装、メッキ等を施すことで回避できる。
【0023】
一方、外殻2は、高強度、高弾性率である、補強繊維として用いられる炭素繊維および樹脂からなる繊維強化プラスチック(FRP)であり、通電用の導電繊維をライナーとの境界部、FRPの内部、またはFRPの表面に含んでいる。
【0025】
これは、軽量化という点では炭素繊維が最も優れるためである。
【0027】
また、上記補強繊維には、後述する樹脂との接着を向上させるために、表面処理やサイジング剤が付与されていると好ましい。
【0028】
次に、補強繊維の伸度は、3%以下であることが好ましい。伸度がこれ以上だと後述する導電繊維が衝撃などにより補強繊維より先に破損する可能性があるからである。
【0029】
炭素繊維は、実質的に炭素元素だけからなる繊維状の炭素材料であり、原料であるポリアクリルニトリルを加熱焼成して得られるPAN系炭素繊維と、ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維がある。中でも、PAN系の炭素繊維は比強度が高く好ましい。通常、単糸を6000本から200000本からなるストランドを3〜10本束ねて(合糸して)使用する。
【0030】
尚、補強繊維が炭素繊維であるので、後述する金属繊維などの導電繊維との電気的な短絡を避ける目的で、炭素繊維をナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維などの絶縁性の繊維で被覆したカバリング糸とすること、絶縁性の塗料を塗布する、メッキを施すなどにより絶縁体を被覆する処理を行う。この場合、軽量化効果は著しく向上する。
【0031】
次に、本発明の圧力容器のFRP外殻を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、変性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂、ゴム材などを用いることができる。特に、導電繊維を含む場合には、通電に伴う発熱による熱劣化の少ない、ガラス転移温度が80℃以上の樹脂であることが好ましい。また、熱伝導率が0.1W/mK〜100W/mKの範囲内である樹脂が好ましい。
【0032】
また、熱伝導率を向上させるために樹脂内にアルミニウムなどの金属粉やカーボンブラックなど熱導電性を高める無機粒子などを混入させても差し支えない。
【0033】
ところで、内圧によって生ずる圧力容器の軸方向における引張張力と周方向における引張張力との比は、ほぼ1:2になる。内殻が厚肉の金属製であり軸方向の耐圧に耐える場合には、補強繊維の配列角度(巻き角度)は、内殻の胴部に圧力容器の軸方向に対して、±75゜〜±105゜、好ましくは±85゜〜±100゜の角度で配することが好ましい。
【0034】
また、内殻がプラスチック製であったり、薄肉の金属であるような軸方向の耐圧ができないような場合には、外殻が軸方向の耐圧もカバーしなくてはならないので、補強繊維は圧力容器の軸方向に対して、少なくとも±5゜〜±50゜の角度で配された補強繊維の層と、±75゜〜±105゜、好ましくは±85゜〜±100゜の角度で配された補強繊維の層という構成を有するのが好ましい。
【0035】
勿論これら巻き角度以外の巻き構成を、衝撃などの特性をさらに向上させるために用いても差し支えない。
【0036】
なお、胴部と鏡板部との境界部分は内圧による曲げ応力が作用するから、少し厚く構成しておくのが好ましい。
【0037】
また、各層の層間に上述した補強繊維のマットや不織布と樹脂とのFRP層を介在させたり、同様のFRP層を最外層として形成しておくと、衝撃エネルギーを分散させることができるようになって衝撃性能や耐擦過性能、耐溶剤性能が一層向上するようになる。同様に、最外層を、耐衝撃性に優れたガラス繊維や有機繊維と樹脂とのFRP層として形成したり、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等による樹脂層として形成することもできる。
【0038】
次に、本発明の通電用の導電繊維としては、スチールワイア、アルミニウム素線、銅線、ニクロム線、鋼線をはじめとする各種の金属繊維、あるいは、表面にニッケルや銀などの金属をメッキ、塗装あるいはコーティングした有機繊維およびセラミック繊維、炭素繊維などの無機繊維などを使用する。ここで、導電繊維は、導電性ワイヤまたはケーブルも含む。
【0039】
なお、本発明の通電用の導電繊維とは、導電繊維が電気的に連続して連なってる状態にあり、導電繊維を通じて通電できるものである。これら導電繊維は後述する通電用ターミナル(電極)に接続されており、通電することで発熱させて容器を昇温させたり、乾燥させたり、抵抗値などの電気特性を測定して容器の損傷を検出したりすることに利用できる。
【0040】
発熱/乾燥用の繊維として好ましい金属繊維は、断面積が1×10-5mm2〜100mm2の範囲にある白金、タングステン、モリブデン、銀、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、銅、鋼、及びこれらの合金、Ni−Cr合金(ニクロム合金とも呼ばれる)、Ni−Cr−Fe合金、Fe−Cr−Al合金、Fe−Cr−Al−Co合金、銅−銀合金、銅−ニッケル系合金、銅−マグネシウム系合金、銅−アルミニウム系合金等からなる丸線状、帯状、扁平状、平繊状の金属繊維あるいは金属ワイヤあるいは金属ケーブルである。
【0041】
断面積が上記範囲内である理由は、これ以下だと発熱が不十分となる可能性があり、これ以上であると軽量性を損ねる可能性があるからである。これら繊維状金属は単線として使用しても撚りあわせるなどして複線として使用しても差し支えない。
【0042】
また、同一金属あるいは異種の金属繊維をよりあわせたり、メッシュ状、織物状などの面状、シート状にしても差し支えない。
【0043】
金属および合金の好ましい比抵抗(あるいは体積抵抗率ともいう)は、2μΩ・cm〜200μΩ・cmの範囲のものが好ましい。急速で高温の昇温が必要な場合は比抵抗が80〜200μΩ・cmの範囲の金属が、比較的低速の昇温が必要な場合は2〜80μΩ・cmの範囲のものが好ましい。比抵抗が上記範囲より小さいと昇温に時間がかかりすぎ、大きいと大電圧が必要となるからである。尚、体積抵抗率はJIS C2525により測定する。
【0044】
比較的低速の昇温で好ましいのは、銅合金およびニクロム合金であり、中でも特開昭52−120222に開示されている銅−アルミニウム合金系発熱体は、適当な可とう性と比抵抗を与えるので好ましい。
【0050】
また、前記した補強繊維は炭素繊維であるので、導電繊維との電気的短絡を防止する目的で、通電用の導電繊維をセラミックや高分子からなる絶縁体で被覆、塗装したり、絶縁性の繊維やフィルムで覆うことにより絶縁体を被覆する処理を行っても良い。
【0051】
これら導電繊維は、容器の外殻内面、外殻内部、外殻表面、あるいはこれらのいずれかにまたがって配置させることができる。
【0052】
外殻内面、外殻内部、外殻表面とは容器の肉厚を1/3等分した場合の、内殻側からの呼び名で、外殻内面に導電繊維を配置させると内殻も短時間に昇温でき、外殻内部に導電繊維を配置させると補強繊維で導電保護をでき、外殻表面に配置させると導電繊維を補修することができるという特徴を有する。導電繊維の配列のさせ方は、補強繊維と同じようにすると、成形効上最も効率がよいが、特定の方向の昇温、乾燥、損傷を検出したい場合には、補強繊維と異なる方向に配列させてもよい。
【0053】
導電繊維は1本の長繊維であってもよいし、メッシュや織物などの面状となって互いに交差していても差し支えない。
【0054】
通常、容器全体をくまなく昇温することが必要であるので、導電繊維は容器の表面積の半分以上を覆っていることが好ましいが、昇温したい箇所が容器全体ではなく、一部であり、あらかじめ分かっている場合には、その箇所に、導電繊維を高密度に配列させておくとよい。例えば、口金部付近を昇温したい場合には、口金付近に導電繊維を高密度で配置し、胴部を加熱・乾燥したい場合には胴部に均等あるいは、粗密を持たせて配列する。尚、導電繊維は重ねて配列されていてもかまわない。
【0055】
容器を乾燥させるという目的の場合も、容器の表面積の半分以上を覆っていることが好ましい。さらに、外殻の表面付近(外殻の厚みを1/3等分した場合の外側表面)に位置させると吸湿を抑制するという点でより好ましい。さらに、アルミニウム箔などの金属箔をはじめとする面状体を乾燥用発熱体として併用すると、水分の進入をより効果的に抑制することができて好ましい。
【0056】
容器の損傷具合を検出する場合には、導電繊維には伸度が補強繊維よりも小さい繊維を含むことが好ましい。特に限定されるものではないが、導電繊維の伸度は、補強繊維の伸度の80%以下であることが好ましい。補強繊維よりも伸度が小さいことで、補強繊維よりも先に破断し、導電繊維の抵抗値などの電気特性がより敏感に変化するからである。
【0057】
また、内殻付近に導電繊維を多く巻き付けると、この付近は径方向、周方向応力ともに大きい領域であり、初期の損傷を一速く検出できてガス漏れを防止できる。外殻表層付近に多く巻き付けると、異物による衝撃などの外部からの損傷を早期に検出できる。
【0058】
次に、通電用のターミナル(電極あるいは端子ともいう)は、銅(銅合金を含む)、銀、スチール、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)などからなり、導電繊維とはハンダなどの合金や導電性ポリマーで結節されたり、ネジやバネやかしめなどにより機械的に圧締することで連結されている。
【0059】
ターミナルの形状は、プラグ、ピン、棒等の凸状、ソケットなどの凹状でもよいし、起伏のない面状、起伏を有する面状であったりする。通電を専用の用具などを使用せず、不定期あるいは臨時に行う場合には、突起状がクリップなどで通電できるので好ましい。
【0060】
より具体的には、汎用のテスターなどによるモニターを可能にするため、市販のバナナ端子などの汎用端子が接続しやすいようにバナナメス端子規格径の金属端子などを接続してもよいし、ワニ口クリップが接続し易いようにクリップが挟める厚みの部分を設けても良い。また、ネジを切っておいて、ネジ式で他の部品との接続を可能とするようにしておいてもよい。面状である場合は占有空間が少なくて済むので好ましい。
【0061】
尚、非通電時などにおいて、ターミナル部の損傷や汚れによる電気的な障害の発生を防ぐために、ターミナル部は布やプラスッチクのカバーなどで保護しておけるようにしておくことが好ましい。ネジを切った場合などは、ゴムやプラスッチク製などの蓋を装着して置くようにすることが好ましい。
【0062】
通電ターミナルは、口金付近に設けるとノズルや口金やバルブの点検時に同時に点検できるので好ましいが、ターミナルを複数にしておいて、それら全部に同時に通電して全体を組まなく昇温してもよいし、複数のターミナルのうちのいくつかに通電して局部的に昇温、あるいは乾燥させても差し支えない。この場合、ターミナルの位置は容器の開口部以外に分散させてもかまわない。また、ノズル取り付け金具にネジを切ったり、端子接続用の構造にしてこれをターミナルとしても差し支えない。
【0063】
尚、損傷検出の場合には、2カ所以上のターミナルを組み合わせて利用することで、損傷検出の精度が向上する。
【0064】
通電の仕方としては、一定電圧をかける方法(定圧法)、一定の電流を流す方法(定電法)、パルス状やサイン波状に周期的に電圧をかけたり電流を流す方法がある。
【0065】
バイメタル方式やサーモスタット式などの機械的方式により、容器温度の変化に伴って、一定の電圧あるいは電流をながす方法も有効であるが、温度センサーと連動させて通電量をコンピュータ制御する方が、より容器の温度を狭い範囲でコントロールすることができて好ましい。
【0066】
尚、温度センサーとしては、熱電対、サーミスタ測温体、光ファイバーを使用する方法、赤外線センサー等の非接触温度センサーを利用する方法などがある。また、通電用の導電繊維の抵抗値も温度に依存するので、これを利用してもかまわない。
【0067】
尚、オンラインで昇温、乾燥、損傷を検出する場合は、自動車搭載のバッテリーあるいは、専用の電源から通電し、抵抗値あるいは通電量(電流)を表示する計器を容器の一部として取り付けるか、運転席のインパネなどの車内、ガス充填口などの車外からでもモニター及びコントロールができるようにすることができる。モニターだけでなく、警告のブザーがなるようにしたり、警告のランプが点灯するようにすると、さらに好ましい。さらに好ましくは、警告のランプを多段階とし、損傷の程度が一目でわかるようにしてもよい。
【0068】
次に、導電繊維をFRP中に埋設する場合には、補強繊維の巻き付け時と同時に行うか、あるいは、補強繊維の巻き付け工程を1度以上中断して導電繊維のみを配列させてもかまわない。補強繊維と同時に巻き付ける場合には、導電繊維は補強繊維と同等以上の工程通過性などが必要であり、補強繊維と導電繊維をあらかじめ(巻き付け工程以前に)合糸するなどして、一体化させておいても差し支えない。導電繊維が織物あるいはメッシュ構造の場合などでは、縦糸、あるいは/および横糸の一部を補強繊維にしても差し支えない。
【0069】
また、損傷検出という観点からは導電繊維の破断伸度は、補強繊維の破断伸度と同じかそれ以下であることが望ましい。補強繊維と同時または、それ以前に導電繊維が破断し、より安全サイドでボンベの損傷を検出できるからである。
【0070】
使用する導電繊維の量は、外殻を主として構成するFRPの補強繊維よりも少なくするのが好ましいが、昇温したい箇所、乾燥したい箇所、検出したい箇所/領域が多いほど増える。容器外殻の補強繊維が炭素繊維である場合には、FRPの補強繊維全てが炭素繊維であってもよい。この場合容器の重量は極めて軽量化する事ができる。補強繊維と導電繊維を兼ねる場合を除き、通常、導電繊維の量は補強繊維の20%以下であることが好ましい。
【0071】
次に、本発明の容器を成形する方法としては、フィラメントワインド法、テープワインド法、プルワインド法など公知のあらゆる成形法を用いることができる。導電繊維は、形態によって、補強繊維と同一のプロセスで配置することも、オフラインで配置させることもできる。
【0072】
また、成形時に導電繊維に通電して樹脂の硬化を調節したり、内殻と外殻を融着接合させたりすることにも利用できる。
【0073】
具体的には、フィラメントワインド後のFRP外殻をオーブン(炉)などで硬化させる際に、外殻中に配した導電繊維に通電して、オーブン硬化で起こりがちな内外層差(樹脂の硬化度が内層と外層でことなること)、あるいは反応熱による樹脂の暴走反応を抑制することができる。
【0074】
また、内殻の材料に、外殻のFRPより線膨張係数が大きい材料、例えば、熱可塑プラスチックやアルミニウムを使用している場合には、外殻の硬化後の熱収縮による内殻と外殻の剥がれ/剥離が生じることがあるが、これを抑制するために、内殻に近い外殻の内部または外殻の内面に配した導電繊維に通電、発熱させて内殻と外殻を融着させることができる。この際、内殻と外殻の間に導電繊維の発熱により融解するあるいは内殻材および外殻材料と反応する接着剤、バインダー材、相溶剤等を挿入させておいてもよい。
【0081】
【発明の効果】
本発明の圧力容器は、少なくとも1つの開口部と、金属またはプラスチック製の内殻と、補強繊維として炭素繊維が用いられた繊維強化プラスチック製の外殻とを有してなる圧力容器であって、前記外殻を構成する繊維強化プラスチック中には、金属繊維、または、金属メッキ、金属塗装、もしくは金属コーティングされている繊維からなる通電用の導電繊維が含まれているとともに、前記導電繊維および/または前記補強繊維には絶縁体が被覆されていることから、容器の温度、湿度を調節でき、万が一容器が不慮の事態につながることを抑制できると共に、損傷を生じた可能性がある場合には、非破壊によりそのことを検知することができる、安全上非常に好ましい容器であり、社会から望まれている発明といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施態様に係わるボンベの概略縦断面図である。
【図2】 図1のA−A’での断面図である。
【符号の説明】
1:内殻
2:外殻
3:ノズル取付部(開口部)
4:ノズル取付金具
5:ノズル
6:ターミナル
7:補強繊維(束)
8:導電繊維
9:胴部
10:鏡板部
Claims (9)
- 少なくとも1つの開口部と、金属またはプラスチック製の内殻と、補強繊維として炭素繊維が用いられた繊維強化プラスチック製の外殻とを有してなる圧力容器であって、前記外殻を構成する繊維強化プラスチック中には、金属繊維、または、金属メッキ、金属塗装、もしくは金属コーティングされている繊維からなる通電用の導電繊維が含まれているとともに、前記導電繊維および/または前記補強繊維には絶縁体が被覆されている圧力容器。
- 導電繊維に通電するためのターミナルを2箇所以上有する、請求項1に記載の圧力容器。
- 通電用のターミナルが容器の開口部にある、請求項1ないし2に記載の圧力容器。
- 該金属繊維の断面積が1×10−5mm2〜100mm2の範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の圧力容器。
- 該金属繊維の体積固有抵抗が2μΩ・cm〜200μΩ・cmの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の圧力容器。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の圧力容器の導電繊維に通電することにより、該圧力容器の温度を制御する方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の圧力容器の導電繊維に通電することにより、該圧力容器を乾燥させる方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の圧力容器の導電繊維に通電することにより、該圧力容器の損傷状態をモニタする方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の圧力容器の導電繊維に通電することにより、該圧力容器の残存寿命を表示する方法。
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