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JP4231430B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents

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JP4231430B2
JP4231430B2 JP2004035991A JP2004035991A JP4231430B2 JP 4231430 B2 JP4231430 B2 JP 4231430B2 JP 2004035991 A JP2004035991 A JP 2004035991A JP 2004035991 A JP2004035991 A JP 2004035991A JP 4231430 B2 JP4231430 B2 JP 4231430B2
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Toyota Motor Corp
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Description

本発明は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルに反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、操舵ハンドルの操作に応じて転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
近年、この種のステアリングバイワイヤ方式を採用した操舵装置の開発は、積極的に行われるようになった。そして、例えば下記特許文献1は、操舵角および車速を検出し、操舵角の増加に従って減少するとともに車速の増加に従って増加する伝達比を計算し、この伝達比で操舵角を除算することにより前輪の転舵角(ラック軸の変位量)を計算して、同計算した転舵角に前輪を転舵するようにした操舵装置が示されている。また、この操舵装置においては、検出ハンドル操舵角を時間微分した操舵速度に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、前輪の転舵応答性・追従性を高めるようにしている。さらに、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて目標ヨーレートを計算し、この計算した目標ヨーレートと検出した実ヨーレートとの差に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、車両の挙動状態を考慮した転舵制御を実現するようになっている。
また、下記特許文献2には、操舵トルクおよびハンドル操舵角を検出し、操舵トルクおよびハンドル操舵角の増加に従って増加する2つの転舵角をそれぞれ計算し、これらの計算した両転舵角を加算した転舵角に前輪を転舵するようにした転舵装置が示されている。この操舵装置においては、車速も検出し、この検出車速により前記両転舵角を補正して、転舵特性を車速に応じて変更するようになっている。
しかしながら、上記従来の装置のいずれにおいても、車両を操舵するための運転者による操舵ハンドルに対する操作入力値である操舵角および操舵トルクを検出し、これらの検出した操舵角および操舵トルクを用いて前輪の転舵角を直接的に計算して、この計算した転舵角に前輪を転舵するようにしている。しかし、これらの前輪の転舵制御は、従前の操舵ハンドルと転舵輪との機械的な連結を外してはいるものの、操舵ハンドルの操作に対する前輪の操舵の応答性としては、操舵ハンドルの操作位置または操作力に対応させて前輪の転舵角を決定するという基本的な技術思想は全く同じであり、これらの転舵方法では、人間の感覚特性に対応して前輪の転舵角が決定されていないので、車両の運転操作が難しかった。
すなわち、上記従来の装置においては、運転者が知覚し得ない転舵角が操舵ハンドルの操作に対応させて直接的に決定され、同転舵角に応じた前輪の転舵によって車両が旋回する。そして、運転者はこの車両の旋回に起因した車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率を触覚または視覚により感じ取り、操舵ハンドルの操作にフィードバックして車両を所望の態様で旋回させていた。言い換えれば、運転者による操舵ハンドルの操作に対する前輪の転舵角は人間の知覚し得ない物理量であるので、運転者の操舵操作に対して直接的に決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、これが車両の運転を難しくしていた。
また、上記従来の装置においては、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて計算した目標ヨーレートと、検出した実ヨーレートとの差に応じて決定転舵角を補正するようにしているが、これは車両の挙動状態を考慮した転舵角の単なる補正であって、操舵ハンドルの操作により運転者が知覚するであろうヨーレートに応じて転舵角を決定しているわけではない。したがって、この場合も、運転者の操舵操作に対して決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、車両の運転を難しくしていた。
また、上記従来の装置においては、検出車速に応じて操舵角と転舵角との比を表す伝達比を連続的に可変することにより、低速領域から高速領域までの走行に適した操舵特性が得られるようにしている。ところで、例えば、車両を車庫に駐車する場合や縦列駐車する場合などにおいては、運転者が車両を低速(微速)で移動させながら操舵ハンドルを操作する。このように、車両が低速(微速)で移動している場合には、運転者は視覚から得られる周囲の状況に基づき操舵ハンドルを操作して人間の知覚し得ない前輪の転舵角を決定しなければならず、車両の運転が難しくなる。このため、車両が低速(微速)で移動している場合には、操舵ハンドルの操舵操作に対して前輪(転舵輪)が応答性よく転舵することが望まれる。
特開2000−85604号公報 特開平11−124047号公報
本発明者等は、上記問題に対処するために、運転者による操舵ハンドルの操作に対して、人間の知覚特性に合わせて車両を操舵することができる車両の操舵装置の研究に取り組んだ。このような人間の知覚特性に関し、ウェーバー・ヘフナー(Weber-Fechner)の法則によれば、人間の感覚量は与えられた刺激の物理量の対数に比例するといわれている。言い換えれば、人間の操作量に対して人間に与えられる刺激の物理量を指数関数的に変化させれば、操作量と物理量との関係を人間の知覚特性に合わせることができる。本発明者等は、このウェーバー・ヘフナーの法則を車両の操舵装置に適用し、次のようなことを発見した。
車両の運転にあたっては、操舵ハンドルの操作によって車両は旋回し、この車両の旋回によって横加速度、ヨーレート、旋回曲率などの車両の運動状態量が変化し、運転者はこの車両の運動状態量を触覚および視覚により感じ取るものである。したがって、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作に対して、運転者が知覚し得る車両の運動状態量を指数関数的に変化させるようにすれば、運転者の操舵ハンドルの操作に対して運転者の知覚特性に合わせて車両を運転操作できることになる。
本発明は、上記発見に基づくもので、その目的は、運転者による操舵ハンドルの操作に対して、人間の知覚特性に合わせて車両を操舵させることにより、車両の運転をやさしくするとともに、低速時にて転舵の応答性を良好とすることができる車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルに反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサと、前記検出された変位量を前記操舵ハンドルに付与される操作力に変換する操作力変換手段と、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運転状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量を、前記変換された操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、車両の車速を検出する車速検出手段と、前記検出された車速が所定の車速以下であるか否かを判定する車速判定手段と、前記車速判定手段によって車両の車速が所定の車速以下であると判定すると、前記操舵ハンドルに対する変位量と予め定めた線形関係にある転舵角を、前記検出された変位量を用いて計算する線形転舵角計算手段と、前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段とで構成したことにある。
この場合、前記予め定めた線形関係は、運転者の前記操舵ハンドルに入力し得る最大の変位量に対して転舵角が前記転舵輪の転舵し得る最大の転舵角となる線形関係であるとよい。また、前記運動状態量変更手段によって計算される見込み運動状態量は、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つであるとよい
上記のように構成した本発明において、まず、車両が所定の車速よりも大きな車速で走行している場合(通常走行時)には、操舵ハンドルに対する運転者の操作が、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運動状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量(横加速度、ヨーレート、旋回曲率など)に変換される。そして、この変換された見込み運動状態量に基づいて、同見込み運動状態量で車両が運動するために必要な転舵輪の転舵角が計算されて、この計算された転舵角に転舵輪が転舵される。したがって、転舵輪の転舵によって車両が旋回すると、この旋回により、運転者には、前記ウェーバー・ヘフナーの法則による「与えられた刺激の物理量」として前記見込み運動状態量が与えられる。そして、この見込み運動状態量は、操舵ハンドルへの操作に対してべき乗関係で変化するものであるので、運転者は、人間の知覚特性に合った運動状態量を知覚しながら、操舵ハンドルを操作できる。なお、横加速度およびヨーレートについては、運転者が車両内の各部位との接触により触覚的に感じ取ることができる。また、旋回曲率については、運転者が車両の視野内の状況の変化により視覚的に感じ取ることができる。その結果、本発明によれば、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドルを操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、車両が所定の車速以下で移動している場合、例えば、運転者が車庫入れや縦列駐車を行うために車両を低速(微速)で移動させている場合においては、運転者による操舵ハンドルの変位量と予め定めた線形関係に基づいて転舵角を計算し、この計算した転舵角に転舵輪が転舵される。これにより、車両が低速(微速)で移動している場合に要求される、運転者の操舵ハンドルの変位量に対する転舵動作の良好な応答性を確保することができる。すなわち、予め定めた線形関係に基づいて、運転者による操舵ハンドルの変位量に対する転舵角を計算することにより、操舵ハンドルの変位量に対して転舵輪の転舵角をリニアに変化させることができる。これにより、運転者は、操舵ハンドルに対する変位量に基づいて転舵角を容易に推定することができるため、車両が低速(微速)で移動している場合であっても、運転が簡単になる。
また、車両が低速(微速)で移動している場合において、通常走行時のようにウェーバー・ヘフナーの法則に基づいて転舵角が計算された場合には、上述したように操作力に対する転舵角の変化がべき乗関係となる。このため、運転者が入力した変位量によっては、運転者の要求する転舵角よりも小さな転舵角が計算される場合がある。これに対して、予め定めた線形関係、特に、運転者による操舵ハンドルの変位量の最大値に対して転舵輪の転舵角が最大値となる線形関係、に基づいて転舵角を計算することによって、同一の変位量にて通常走行時に比して大きな転舵角で転舵輪を転舵することができる。したがって、運転者の操舵ハンドル操作量が低減されるとともに転舵輪を応答性よく(素早く)転舵させることができ、低速(微速)移動時における車両の運転が簡単になる。
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端は電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ13に接続されている。反力アクチュエータ13は、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与する。
また、この操舵装置は、電動モータおよび減速機構からなる転舵アクチュエータ21を備えている。この転舵アクチュエータ21による転舵力は、転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24を介して左右前輪FW1,FW2に伝達される。この構成により、転舵アクチュエータ21からの回転力は転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24を軸線方向に変位させて、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
次に、これらの反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33および横加速度センサ34を備えている。
操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出して操舵角θとして出力する。転舵角センサ32は、転舵出力軸22に組み付けられて、転舵出力軸22の中立位置からの回転角を検出して実転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。なお、操舵角θおよび実転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転角を正の値で表すとともに、右方向の回転角を負の値でそれぞれ表す。車速センサ33は、車速Vを検出して出力する。横加速度センサ34は、車両の実横加速度Gを検出して出力する。なお、実横加速度Gも、左方向の加速度を正で表し、右方向の加速度を負で表す。
これらのセンサ31〜34は、電子制御ユニット35に接続されている。電子制御ユニット35は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、プログラムの実行により反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動をそれぞれ制御する。そして、ROMには、後述する操舵特性変更プログラムが予め記憶されており、電子制御ユニット35(詳しくは、CPU)は、同プログラムの各ステップを実行し、車速Vに応じて操舵特性を変更する。電子制御ユニット35の出力側には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21を駆動するための駆動回路36,37がそれぞれ接続されている。駆動回路36,37内には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流を検出するための電流検出器36a,37aが設けられている。電流検出器36a,37aによって検出された駆動電流は、両電動モータの駆動を制御するために、電子制御ユニット35にフィードバックされている。
次に、上記のように構成した本実施形態の転舵装置に関し、まず、同装置の転舵動作について、電子制御ユニット35内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて説明する。電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11への反力付与を制御するための反力制御部40と、操舵ハンドル11の回動操作に基づいて運転者の感覚特性に対応した左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを決定するための感覚適合制御部50と、目標転舵角δdに基づいて左右前輪FW1,FW2を転舵制御するための転舵制御部60とからなる。
運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、操舵角センサ31によって操舵ハンドル11の回転角である操舵角θが検出されて、同検出された操舵角θを反力制御部40および感覚適合制御部50にそれぞれ出力する。反力制御部40においては、変位−トルク変換部41が、下記式1を用いて、操舵角θの指数関数である反力トルクTzを計算する。
Tz=To・exp(K1・θ) …式1
ただし、前記式1中のTo,K1は定数であり、これらの値に関しては後述する感覚適合制御部50の説明時に詳しく説明する。また、前記式1中の操舵角θは前記検出操舵角θの絶対値を表しているものとし、検出操舵角θが正であれば定数Toを負の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数Toを前記負の定数Toと同じ絶対値を有する正の値とする。ここで、前記式1の演算に代えて、操舵角θに対する反力トルクTzを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、反力トルクTzを計算することも可能である。このため、本明細書にて後に詳述する操舵特性変更プログラムの説明においては、この変換テーブルを用いて説明する。
この計算された反力トルクTzは、駆動制御部42に供給される。駆動制御部42は、駆動回路36から反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータに反力トルクTzに対応した駆動電流が流れるように駆動回路36をフィードバック制御する。この反力アクチュエータ13内の電動モータの駆動制御により、同電動モータは、操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11に反力トルクTzを付与する。したがって、運転者は、この操舵角θに対して指数関数的に変化する反力トルクTzを感じながら、言い換えればこの反力トルクTzに等しい操舵トルクを操舵ハンドル11に加えながら、操舵ハンドル11を回動操作することになる。この操舵角θと反力トルクTzの関係も上述したウェーバー・ヘフナーの法則に従うものであり、運転者は、操舵ハンドル11から人間の知覚特性に合った感覚を受けながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。
一方、感覚適合制御部50に入力された操舵角θは、変位−トルク変換部51にて前記式1と同様な下記式2に従って操舵トルクTdを計算する。
Td=To・exp(K1・θ) …式2
この場合も、前記式2中のTo,K1は、前記式1と同様な定数である。ただし、前記式2中の操舵角θは前記検出操舵角θの絶対値を表しているものであるが、検出操舵角θが正であれば定数Toを正の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数Toを前記正の定数Toと同じ絶対値を有する負の値とする。ここで、この場合も、前記式2の演算に代えて、操舵角θに対する操舵トルクTdを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、操舵トルクTdを計算するようにしてもよい。このため、本明細書にて後に詳述する操舵特性変更プログラムの説明においては、この変換テーブルを用いて説明する。
この計算された操舵トルクTdは、トルク−横加速度変換部52に供給される。トルク−横加速度変換部52は、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込み横加速度Gdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式3のように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式4に従って操舵トルクTdのべき乗関数である見込み横加速度Gdを計算する。
Gd=0 (|Td|<To) …式3
Gd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式4
ただし、式4中のC,K2は定数である。また、前記式4中の操舵トルクTdは前記式2を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式3,4の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み横加速度Gdを記憶した図4に示すような特性の変換テーブルを用いて、操舵トルクTdを計算することも可能である。このため、本明細書にて後に詳述する操舵特性変更プログラムの説明においては、この変換テーブルを用いて説明する。
ここで、前記式4について説明しておく。前記式2を用いて操舵トルクTdを消去すると、下記式5に示すようになる。
Gd=C(To・exp(K1・θ))K2=C・ToK2・exp(K1・K2・θ)=Go・exp(K1・K2・θ)…式5
前記式5において、Goは定数C・ToK2であり、式5は、運転者による操舵ハンドル11の操舵角θに対して見込み横加速度Gdが指数関数的に変化していることを示す。そして、この見込み横加速度Gdは、車内の所定部位への運転者の体の一部の接触によって運転者が知覚し得る物理量であり、前述したウェーバー・ヘフナーの法則に従ったものである。したがって、運転者が、この見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、操舵ハンドル11の回動操作と車両の操舵との関係を人間の知覚特性に対応させることができる。
このように、前記式4(すなわち式5)に示された見込み横加速度Gdは操舵ハンドル11の操作量である操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、人間の知覚特定に合ったものである。さらに、運転者による操舵ハンドル11の回動操作にとって最も簡単な方法は操舵ハンドル11を一定速度ω(θ=ω・t)で回動することであり、この回動操作によれば、見込み横加速度Gdは下記式6に示すように時間tに対して指数関数的に変化する。したがって、これからも、前記見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、運転者の操舵ハンドル11の回動操作が簡単になることがわかる。
Gd=Go・exp(K0・ω・t) …式6
ただし、K0は、K0=K1・K2の関係にある定数である。
また、前記式3に示されるように、操舵トルクTdが所定値To未満である場合、見込み横加速度Gdは「0」に保たれている。これは、操舵角θが「0」のとき、すなわち操舵ハンドル11が中立位置に保たれる場合でも、前記式2の演算により、操舵トルクTdは正の所定値Toになり、この操舵トルクTd(=To)を前記式4の演算に適用してしまうと、見込み横加速度Gdは正の値C・ToK2になって、これは現実的でない。しかしながら、前述のように、操舵トルクTdが所定値To未満であれば、見込み横加速度Gdは「0」であるので、この問題は解決される。
また、この場合、運転者が知覚し得る最小操舵トルクを前記所定値Toとし、運転者が知覚し得る最小感知横加速度をGoとし、かつ所定値ToがGo=C・ToK2の関係になるようにすれば、操舵トルクTdが所定値Toになるまで、すなわち運転者が操舵ハンドル11の操作によって車両が旋回して運転者が車両に発生する横加速度を感じるまで、車両の見込み横加速度Gdが「0」に保たれる。これによれば、最小操舵トルクTo以上で操舵ハンドル11を操舵したときのみ、見込み横加速度Gdを発生させるために必要な転舵角だけ左右前輪FW1,FW2は転舵制御され、この転舵制御が車両の操舵に的確に対応したものとなる。
次に、前記式1〜6で用いたパラメータK1,K2,C(所定値K1,K2,C)の決め方について説明しておく。なお、このパラメータK1,K2,Cの決め方についての説明では、前記式2〜6の操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdについては、操舵トルクTおよび横加速度Gとして扱う。前述したウェーバー・ヘフナーの法則によれば、「人間の知覚できる最小の物理量変化ΔSとその時点での物理量Sとの比ΔS/Sは、物理量Sの値によらず一定となり、その比ΔS/Sをウェーバー比という」ことになっている。本発明者等は、操舵トルクおよび横加速度に関し、前記ウェーバー・ヘフナーの法則が成立することを確認するとともに、ウェーバー比を決定するために、次のような実験を、男女、年齢、車両の運転履歴などの異なる種々の人間に対して行った。
操舵トルクに関しては、車両の操舵ハンドルにトルクセンサを組み付け、操舵ハンドルに検査用のトルクを外部から付与するとともに同検査用トルクを種々の態様で変化させながら、この検査用トルクに抗して人間が操舵ハンドルに操作力を加えて同操舵ハンドルを回転させないように調整する人間の操舵トルク調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での検出操作トルクをTとし、同検出操舵トルクTからの変化を知覚し得る最小の操舵トルク変化量をΔTとしたときの比の値ΔT/Tすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験結果によれば、操舵ハンドルの操作方向、操舵ハンドルを把持する手の状態、検査用トルクの大きさおよび方向によらず、ウェーバー比ΔT/Tはほぼ一定の0.03程度であった。
横加速度に関しては、運転席の側方に壁部材を設けて同壁部材に人間の肩の押圧力を検出する力センサを組み付け、人間に操舵ハンドルを把持させるとともに壁部材の力センサに方を接触させ、壁部材に検査用の力を人間に対して横方向に外部から付与するととともに同検査用の力を種々の態様で変化させながら、この検査用の力に抗して人間が壁部材を押して壁部材が移動しないように調整する、すなわち姿勢を維持する人間の横力調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での外部からの横力に耐えて姿勢を維持する検出力をFとし、同検出力Fからの変化を知覚し得る最小の力変化量ΔFとしたときの比の値ΔF/Fすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験の結果によれば、壁部材に付与される基準力の大きさおよび方向によらず、ウェーバー比ΔF/Fはほぼ一定の0.09程度の値であった。
一方、前記式2を微分するとともに、同微分した式において式2を考慮すると、下記式7が成立する。
ΔT=To・exp(K1・θ)・K1・Δθ=T・K1・Δθ …式7
この式7を変形するとともに、前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとすると、下記式8が成立する。
K1=ΔT/(T・Δθ)=Kt/Δθ …式8
また、最大操舵トルクをTmaxとすれば、前記式2より下記式9が成立する。
Tmax=To・exp(K1・θmax) …式9
この式9を変形すれば、下記式10が成立する。
K1=log(Tmax/To)/θmax …式10
そして、前記式8および式10から下記式11が導かれる。
Δθ=Kt/K1=Kt・θmax/log(Tmax/To) …式11
この式11において、Ktは操舵トルクTのウェーバー比であり、θmaxは操舵角の最大値であり、Tmaxは操舵トルクの最大値であり、Toは前記したように人間が知覚し得る最小操舵トルクに対応するものであり、これらの値Kt,θmax,Tmax,Toはいずれも実験およびシステムによって決定される定数であるので、前記微分値Δθを前記式11を用いて計算できる。そして、この微分値Δθをウェーバー比Ktを用いて、前記式8に基づいて所定値(係数)K1も計算できる。
また、前記式4を微分するとともに、同微分した式において式4を考慮すると、下記式12が成立する。
ΔG=C・K2・TK2-1ΔT=G・K2・ΔT/T …式12
この式12を変形し、かつ前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとするとともに、横加速度に関するウェーバー比ΔF/FをKaとすると下記式13,14が成立する。
ΔG/G=K2・ΔT/T …式13
K2=Ka/Kt …式14
この式14において、Ktは操舵トルクに関するウェーバー比であるとともに、Kaは横加速度に関するウェーバー比であって、共に定数として与えられるものであるので、これらのウェーバー比Kt,Kaを用いて、前記式14に基づいて係数K2も計算できる。
また、横加速度の最大値をGmaxとし、操舵トルクの最大値をTmaxとすれば、前記式4から下記式15が導かれる。
C=Gmax/TmaxK2 …式15
そして、この式15においては、GmaxおよびTmaxは実験およびシステムによって決定される定数であり、かつK2は前記式14によって計算されるものであるので、定数(係数)Cも計算できる。
以上のように、操舵角θの最大値θmax、操舵トルクTの最大値Tmax、横加速度Gの最大値Gmax、最小操舵トルクTo、最小感知横加速度Go、操舵トルクTに関するウェーバー比Ktおよび横加速度に関するウェーバー比Kaを、実験およびシステムによって決定すれば、前記式1〜5における係数K1,K2,Cを予め計算により決定しておくことができる。したがって、変位−トルク変換部41,51およびトルク−横加速度変換部52においては、前記式1〜5を用いて、運転者の知覚特性に合った反力トルクTz、操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdを計算できる。
ふたたび、図2の説明に戻ると、トルク−横加速度変換部52にて計算された見込み横加速度Gdは、転舵角変換部53に供給される。転舵角変換部53は、見込み横加速度Gdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図5に示すように車速Vに応じて変化して見込み横加速度Gdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと横加速度Gとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部53は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み横加速度Gdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている横加速度G(見込み横加速度Gd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、転舵角変換部53から供給される見込み横加速度Gdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式16に示すように車速Vと横加速度Gの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式16の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・Gd/V2 …式16
ただし、前記式16中のLは車両のホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部61に供給される。転舵角補正部61は、トルク−横加速度変換部52から見込み横加速度Gdを入力するとともに、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gをも入力しており、下記式17の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K3・(Gd−G) …式17
ただし、係数K3は予め決められた正の定数であり、これにより実横加速度Gが見込み横加速度Gdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実横加速度Gが見込み横加速度Gdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値は小さくなる側に補正される。この補正により、見込み横加速度Gdに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdがより精度よく確保される。
この計算された補正目標転舵角δdaは、駆動制御部62に供給される。駆動制御部62は、転舵角センサ32によって検出された実転舵角δを入力し、左右前輪FW1,FW2が補正目標転舵角δdaに転舵されるように転舵アクチュエータ21内の電動モータの回転をフィードバック制御する。また、駆動制御部62は、駆動回路37から転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流も入力し、同電動モータに転舵トルクに対応した大きさの駆動電流が適切に流れるように駆動回路37をフィードバック制御する。この転舵アクチュエータ21内の電動モータの駆動制御により、同電動モータの回転は、転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23によりラックバー24を軸線方向に変位させる。そして、このラックバー24が軸線方向に変位することにより、左右前輪FW1,FW2は補正目標転舵角δdaに転舵される。
次に、電子制御ユニット35が車速センサ33から入力した車速Vに基づいて、操舵特性を変更する操舵特性変更プログラムについて、図6に示すフローチャートを用いて以下に詳細に説明する。この操舵特性変更プログラムは、運転者によって図示しないイグニッションスイッチが”ON”状態とされると、ステップS10にてその実行を開始し、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。
そして、電子制御ユニット35は、車速センサ33から車両の車速Vを入力し、ステップS11にて、現在の車速Vが所定の車速よりも大きいか否かを判定する。すなわち、ステップS11にて、現在の車両の車速Vが所定の車速よりも大きければ、「Yes」と判定して、ステップS12以降の各ステップを実行し、通常走行時における運転者の操舵感覚特性に適合する操舵特性を維持する。なお、通常走行時における操舵特性は、上述したウェーバー・ヘフナーの法則に従う操舵特性であるため、以下に示すステップS12〜ステップS14までの詳細な説明については省略する。
ステップS12においては、電子制御ユニット35は、操舵角センサ31によって検出された操舵ハンドル11の操舵角θに対する操舵トルクTd(反力トルクTz)を計算する。すなわち、電子制御ユニット35は、図3に示した変換テーブルを用いて、操舵角θに対する操舵トルクTd(反力トルクTz)を計算し、ステップS13に進む。ステップS13においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS12にて計算した操舵トルクTdに基づき、運転者が見込んでいる見込み横加速度Gdを計算する。すなわち、電子制御ユニット35は、図4に示した変換テーブルを用いて、操舵トルクTdに対する見込み横加速度Gdを計算し、ステップS14に進む。
ステップS14においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS13にて計算した見込み横加速度Gdと車速センサ33から入力した車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。すなわち、電子制御ユニット35は、図5に示した変換テーブルを用いて、見込み横加速度Gdに対する目標転舵角δdを計算してステップS16に進み、操舵特性変更プログラムの実行を一旦終了する。そして、電子制御ユニット35は、計算した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算し、実転舵角δが補正目標転舵角δdaとなるように、左右前輪FW1,FW2を転舵制御する。
一方、前記ステップS11にて、現在の車速Vが所定の車速以下であれば、電子制御ユニット35は「No」と判定して、ステップS15に進み、操舵特性を微速領域に適した操舵特性に変更する。以下、このステップS15の操舵特性変更処理について詳細に説明する。
車両が所定の車速以下の微速領域で移動している場合は、例えば、運転者が車両の車庫入れや縦列駐車を行っている場合が考えられる。このように車両を移動しているときに要求される操舵特性としては、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2が運転者の操舵ハンドル11の操作に対して応答性よく(所謂、素早く)転舵する操舵特性である。言い換えれば、微速領域においては、運転者が操舵ハンドル11を介して入力した操舵角θに対し、実転舵角δが通常走行時の実転舵角δよりも大きくなる操舵特性が要求される。
このため、微速領域で車両が移動しているときに、通常走行時の操舵特性を適用すると、運転者の操舵感覚に適合しない操舵特性となる。すなわち、通常走行時の操舵特性は、ウェーバー・ヘフナーの法則に従い、実転舵角δが操舵角θに対してべき乗関数的(または指数関数的)に変化する操舵特性であるため、微速領域においては、運転者が要求する実転舵角δよりも小さくなり、運転者の操舵感覚に適合しなくなる。具体的に説明すると、通常走行時における目標転舵角δdは、上記式16および図5から明らかなように、べき乗関数的(または指数関数的)に変化するとともに車速Vが小さくなるに従って大きくなる特性を有している。
このため、目標転舵角δdに基づいて計算される補正目標転舵角δda(実転舵角δ)もべき乗関数的(または指数関数的)に変化するとともに車速Vが小さくなるに従って大きくなる特性を有する。そして、ある車速Vよりも小さい低速領域(微速領域も含む)において、実転舵角δは、図7に示すように、操舵ハンドル11に操舵角の最大値θmax(以下、この最大値を最大操舵角θmaxという)が入力されると、実転舵角の最大値δmax(以下、この最大値を最大実転舵角δmaxという)を得ることができる。しかしながら、運転者が操舵ハンドル11を最大操舵角θmaxとなるまで回動すれば、左右前輪FW1,FW2が最大実転舵角δmaxとなるように転舵制御されるものの、最大操舵角θmaxよりも小さい操舵角θ1が入力された場合には、べき乗関数的(指数関数的)に小さい実転舵角δ1となる。
このため、電子制御ユニット35は、現在の車速Vが低速領域、特に、微速領域であると判定すると、操舵角θと実転舵角δとが線形関係となる比例マップを採用する。この比例マップは、操舵角θが大きくなるに従って実転舵角δが大きくなる特性を有しており、δ=Kθと表すことができる。ここで、比例定数Kは、操舵ハンドル11が最大操舵角θmaxまで回動したときに、左右前輪FW1,FW2が最大実転舵角δmaxとなるように転舵されるため、K=δmax/θmaxで表される。これにより、操舵角θが最大操舵角θmaxまで操舵ハンドル11が回動されるに伴って実転舵角δが最大実転舵角δmaxまでリニアに変化する操舵特性を得ることができる。
また、この比例マップを採用することにより、操舵角θ1が入力された場合には、実転舵角δは、実転舵角δ1よりも大きな実転舵角δ2とすることができる。ここで、図7に示すように、仮に車速Vが微速領域にあるときに、通常走行時の操舵特性を適用すると、実転舵角δを実転舵角δ2とするためには、操舵角が操舵角θ1より大きな操舵角θ2となるまで操舵ハンドル11を回動する必要がある。したがって、微速領域にて比例マップを採用することにより、通常走行時に比して同一操舵角θに対する転舵角δを大きくすることができ、微速領域において運転者の要求する操舵特性を得ることができる。さらに、運転者の操舵ハンドル11操作量を少なくすることもできる。
このように、電子制御ユニット35は、ステップS15にて、比例マップを採用すると、ステップS16にて、操舵特性変更プログラムの実行を一旦終了する。そして、電子制御ユニット35は、採用した比例マップに基づいて、運転者の入力した操舵角θに対して線形関係にある実転舵角δを計算し、左右前輪FW1,FW2を計算した実転舵角δとなるように転舵制御する。
すなわち、電子制御ユニット35は、操舵角センサ31から操舵角θを入力すると、比例マップに基づいて実転舵角δを決定する。そして、電子制御ユニット35は、左右前輪FW1,FW2が決定した実転舵角δまで転舵されるように、駆動回路37を介して転舵アクチュエータ21を作動させる。この転舵アクチュエータ21の作動に伴って、同アクチュエータ21の回転力が転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24に伝達され、左右前輪FW1,FW2が実転舵角δとなるように転舵される。
以上の説明からも理解できるように、本実施形態によれば、通常走行時において、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−横加速度変換部52によって見込み横加速度Gdに変換され、転舵角変換部53、転舵角補正部61および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。
この場合、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生する実横加速度Gも知覚し得る物理量であるとともに、この実横加速度Gは見込み横加速度Gdに等しくなるように制御される。さらに、この見込み横加速度Gdも運転者が入力した操舵角θに対してべき乗関数的(式4を式5に変形することにより指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部61は、車両に実際に発生している実横加速度Gが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両には操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実横加速度Gが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合った横加速度を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がより簡単になる。
また、車両が所定の車速以下で移動している場合には、予め定めた線形関係すなわち比例マップに基づいて、運転者が入力した操舵角θに対する転舵角δを計算することができる。これにより、入力された操舵角θに対して、左右前輪FW1,FW2の転舵角δをリニアに変化させることができる。これにより、運転者は、操舵ハンドル11に入力した操舵角θに基づいて転舵角δを容易に推定することができるため、微速領域における車両の運転が簡単になる。
また、比例マップは、操舵ハンドル11を回動し得る最大操舵角θmaxに対して左右前輪FW1,FW2を転舵し得る最大転舵角δmaxとなるように定められているため、同一の操舵角θにて通常走行時に比して大きな転舵角δで左右前輪FW1,FW2を転舵することができる。したがって、運転者の操舵ハンドル11操作量が低減されるとともに、左右前輪FW1,FW2を応答性よく転舵させることができ、車両の微速移動時の運転を簡単にすることができる。
第1変形例
上記実施形態における操舵特性変更プログラムは、運動状態量としての横加速度を採用した操舵装置に適用して実施した。これに代えて、運動状態量としてのヨーレートを採用した操舵装置に操舵特性変更プログラムを適用して実施することも可能である。以下、この第1変形例について説明する。この第1変形例においては、操舵装置は、図1に破線で示すように、上記実施形態における横加速度センサ34に代えて、運転者が知覚し得る運動状態量である実ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ38を備えている。他の構成については、上記実施形態と同じであるが、転舵操作に関し、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムは上記実施形態の場合とは若干異なる。また、この第1変形例に係るヨーレートを運動状態量とする操舵装置に適用される操舵特性変更プログラムは、上記実施形態の操舵特性変更プログラムと同一であるため、その詳細な説明を省略する。
この第1変形例においては、転舵動作に関し、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図8の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部50において、変位−トルク変換部51は上記実施形態と同様に機能するが、上記実施形態のトルク−横加速度変換部52に代えてトルク−ヨーレート変換部54が設けられている。
このトルク−ヨーレート変換部54は、変位−トルク変換部51にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込みヨーレートγdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式18のように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式19に従って計算する。
γd=0 (|Td|<To) …式18
γd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式19
ただし、式19中のC,K2は、上記実施形態と同じく定数である。また、この場合も、前記式19中の操舵トルクTdは上記式2を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合、前記式18,19の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込みヨーレートγdを記憶した図9に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込みヨーレートγdを計算するようにしてもよい。
また、転舵角変換部55は、見込みヨーレートγdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図10に示すように車速Vに応じて変化して見込みヨーレートγdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δとヨーレートγとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部55は、このテーブルを参照して、前記入力した見込みヨーレートγdと車速センサ33から入力した検出車速Vに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されているヨーレートγ(見込みヨーレートγd)と目標転舵角δdは、いずれも正であるが、転舵角変換部55から供給される見込みヨーレートγdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式20に示すように車速Vとヨーレートγの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式20の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・γd/V …式20
ただし、前記式20においても、Lはホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部63に供給される。転舵角補正部63は、トルク−ヨーレート変換部54から見込みヨーレートγdを入力するとともに、ヨーレートセンサ38によって検出された実ヨーレートγをも入力しており、下記式21の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K4・(γd−γ) …式21
ただし、係数K4は予め決められた正の定数であり、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込みヨーレートγdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
この第1変形例においても、図6に示す操舵特性変更プログラムが実行され、車速Vが所定の車速以下であれば、ステップS15にて、電子制御ユニット35は、比例マップを採用する。ここで、運動状態量としてヨーレートを採用した場合には、通常走行時における目標転舵角δdは、上記式20および図10から明らかなように、べき乗関数的(指数関数的)に変化するとともに車速Vが大きくなるに従って大きくなる特性を有しており、上記実施形態の目標転舵角δdの特性と異なる。しかしながら、ステップS11にて車両が微速領域であると判定することにより、ステップS15にて、比例マップを採用するため、微速領域にて決定される実転舵角δは、通常走行時の目標転舵角δdの特性に関係しない。したがって、この第1変形例においても、上記実施形態と同様の操舵特性変更プログラムを実行することができる。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。そして、図8の機能ブロック図において、上記実施形態の図2と同一の符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第1変形例においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−ヨーレート変換部54によって見込みヨーレートγdに変換され、転舵角変換部55、転舵角補正部63および駆動制御部62により左右前輪FW1,FW2は見込みヨーレートγdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生するヨーレートγも知覚し得る物理量であるとともに、このヨーレートγは見込みヨーレートγdに等しくなるように制御され、さらに、この見込みヨーレートγdも操舵角θに対してべき乗関数的(上記実施形態の式4から式5への変形と同様に式19を変形することにより指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従ったヨーレートを感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、上記実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部61は、車両に実際に発生している実横加速度Gが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両には操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実横加速度Gが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合った横加速度を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がより簡単になる。
また、車両が所定の車速以下で移動している場合には、予め定めた線形関係すなわち比例マップに基づいて、運転者が入力した操舵角θに対する転舵角δを計算することができる。これにより、入力された操舵角θに対して、左右前輪FW1,FW2の転舵角δをリニアに変化させることができる。これにより、運転者は、操舵ハンドル11に入力した操舵角θに基づいて転舵角δを容易に推定することができるため、微速領域における車両の運転が簡単になる。
また、比例マップは、操舵ハンドル11を回動し得る最大操舵角θmaxに対して左右前輪FW1,FW2を転舵し得る最大転舵角δmaxとなるように定められているため、同一の操舵角θにて通常走行時に比して大きな転舵角δで左右前輪FW1,FW2を転舵することができる。したがって、運転者の操舵ハンドル11操作量が低減されるとともに、左右前輪FW1,FW2を応答性よく転舵させることができ、車両の微速移動時の運転を簡単にすることができる。
第2変形例
上記実施形態における操舵特性変更プログラムは、運動状態量としての横加速度を採用した操舵装置に適用して実施した。また、上記第1変形例における操舵特性変更プログラムは、運動状態量としてのヨーレートを採用した操舵装置に適用して実施した。これらに代えて、運動状態量としての旋回曲率を採用した操舵装置に適用して実施することも可能である。以下、この第2変形例について説明する。この第2変形例においても、操舵装置は、上記実施形態と同様に図1に示すように構成されている。ただし、転舵動作に関し、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが上記実施形態の場合とは若干異なる。また、この第2変形例に係る旋回曲率を運動状態量とする操舵装置に適用される操舵特性変更プログラムは、上記実施形態の操舵特性変更プログラムと同一であるため、その詳細な説明を省略する。
この第2変形例においては、転舵動作に関し、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図11の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部50において、変位−トルク変換部51は上記実施形態と同様に機能するが、上記実施形態のトルク−横加速度変換部52に代えてトルク−旋回曲率変換部56が設けられている。
このトルク−旋回曲率変換部56は、変位−トルク変換部51にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込み旋回曲率ρdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式22にように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式23に従って計算する。
ρd=0 (|Td|<To) …式22
ρd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式23
ただし、式23中のC,K2は、上記実施形態と同じく定数である。また、この場合も、前記式23中の操舵トルクTdは上記式2を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合、前記式22,23の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み旋回曲率ρdを記憶した図12に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込み旋回曲率ρdを計算するようにしてもよい。
また、転舵角変換部57は、見込み旋回曲率ρdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図13に示すように車速Vに応じて変化して見込み旋回曲率ρdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと旋回曲率ρとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部57は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み旋回曲率ρdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている旋回曲率ρ(見込み旋回曲率ρd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、トルク−旋回曲率変換部56から供給される見込み旋回曲率ρdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式24に示すように車速Vと旋回曲率ρの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式24の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・ρd …式24
ただし、前記式24においても、Lはホイールベースを表す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部64に供給される。転舵角補正部64は、トルク−旋回曲率変換部56から見込み旋回曲率ρdを入力するとともに、旋回曲率計算部65から実旋回曲率ρも入力する。旋回曲率計算部65は、横加速度センサ34によって検出された横加速度Gまたはヨーレートセンサ38によって検出されたヨーレートγと、車速センサ33によって検出された車速Vとを用いて、下記式25の演算の実行により実旋回曲率ρを計算して転舵角補正部64に出力する。
ρ=G/V2またはρ=γ/V …式25
そして、転舵角補正部64は、下記式26の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K5・(ρd−ρ) …式26
ただし、係数K5は予め決められた正の定数であり、実旋回曲率ρが見込み旋回曲率ρdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実旋回曲率ρが見込み旋回曲率ρdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込み旋回曲率ρdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
この第2変形例においても、図6に示す操舵特性変更プログラムが実行され、車速Vが所定の車速以下であれば、ステップS15にて、電子制御ユニット35は、比例マップを採用する。ここで、運動状態量として旋回曲率を採用した場合には、通常走行時における目標転舵角δdは、上記式24および図13から明らかなように、べき乗関数的(指数関数的)に変化するとともに車速Vが大きくなるに従って大きくなる特性を有しており、上記実施形態の目標転舵角δdの特性と異なる。しかしながら、ステップS11にて車両が微速領域であると判定することにより、ステップS15にて、比例マップを採用するため、微速領域にて決定される実転舵角δは、通常走行時の目標転舵角δdの特性に関係しない。したがって、この第2変形例においても、上記実施形態と同様の操舵特性変更プログラムを実行することができる。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。そして、図11の機能ブロック図において、上記実施形態の図2と同一の符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第2変形例においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−旋回曲率変換部56によって見込み旋回曲率ρdに変換され、転舵角変換部57、転舵角補正部64および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み旋回曲率ρdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵による旋回曲率も視覚によって知覚し得る物理量であるとともに、この旋回曲率ρは見込み旋回曲率ρdに等しくなるように制御され、さらに、この見込み旋回曲率ρdも操舵角θに対してべき乗関数的(上記実施形態の式4から式5への変形と同様に式23を変形することにより指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った旋回曲率を視覚により知覚しながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は上記実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部64は、車両に実際に発生している実旋回曲率ρが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両は操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実旋回曲率ρで旋回する。その結果、運転者は、人間の知覚特性にさらに正確に合った旋回曲率を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がさらに簡単になる。さらに、具体的な作用効果についても、上記実施形態の横加速度を旋回曲率に換えた点を除けば、同じである。
また、転舵角補正部61は、車両に実際に発生している実横加速度Gが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両には操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実横加速度Gが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合った横加速度を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がより簡単になる。
また、車両が所定の車速以下で移動している場合には、予め定めた線形関係すなわち比例マップに基づいて、運転者が入力した操舵角θに対する転舵角δを計算することができる。これにより、入力された操舵角θに対して、左右前輪FW1,FW2の転舵角δをリニアに変化させることができる。これにより、運転者は、操舵ハンドル11に入力した操舵角θに基づいて転舵角δを容易に推定することができるため、微速領域における車両の運転が簡単になる。
また、比例マップは、操舵ハンドル11を回動し得る最大操舵角θmaxに対して左右前輪FW1,FW2を転舵し得る最大転舵角δmaxとなるように定められているため、同一の操舵角θにて通常走行時に比して大きな転舵角δで左右前輪FW1,FW2を転舵することができる。したがって、運転者の操舵ハンドル11操作量が低減されるとともに、左右前輪FW1,FW2を応答性よく転舵させることができ、車両の微速移動時の運転を簡単にすることができる。
第3変形例
上記実施形態においては、通常走行時においても操舵ハンドル11の操作入力値として操舵角θを利用するように実施した。これに加えて、通常走行時の操舵ハンドル11の操作入力値として操舵トルクTを利用するように変形して実施することも可能である。以下、この第3変形例について説明する。この第3変形例においては、図1に破線で示すように、電子制御ユニット35に、操舵トルクセンサ39が接続されている。操舵トルクセンサ39は、操舵入力軸12に組み付けられていて、操舵ハンドル11に付与された操舵トルクTを検出して出力する。また、この第3変形例においては、転舵動作に関するコンピュータプログラムを表す図2の機能ブロック図において、変位−トルク変換部51は設けられておらず、トルク−横加速度変換部52が、上記実施形態における変位−トルク変換部51にて計算される操舵トルクTdに代えて、操舵トルクセンサ39によって検出された操舵トルクTを用いた式3,4の演算の実行により見込み横加速度Gdを計算する。なお、この場合も、式3,4の演算に代えて、図4に示す特性を表す変換テーブルを用いて見込み横加速度Gdを計算するようにしてもよい。なお、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。
この第3変形例によれば、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵トルクTがトルク−横加速度変換部52によって見込み横加速度Gdに変換され、転舵角変換部53、転舵角補正部61および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。そして、この場合も、操舵トルクTは運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵トルクTに対して見込み横加速度Gdはべき乗関数的(指数関数的)に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。したがって、この第3変形例においても、上記実施形態の場合と同様に、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができるので、上記実施形態と同様な効果が期待される。
また、通常走行時において、上記実施形態による車両の操舵制御と、前記第3変形例による車両の操舵制御とを切り替え可能にしてもよい。すなわち、操舵角センサ31と操舵トルクセンサ39の両方を備え、上記実施形態のように変位−トルク変換部51にて計算される目標転舵トルクTdを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合と、操舵トルクセンサ39によって検出された操舵トルクTを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合とを切り替えて利用可能とすることもできる。この場合、前記切り替えを、運転者の意思により、または車両の運動状態に応じて自動的に切り替えるようにするとよい。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態および各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
また、上記実施形態および各変形例においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
例えば、上記実施形態および各変形例においては、転舵アクチュエータ21を用いて転舵出力軸22を回転させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにした。しかし、これに代えて、転舵アクチュエータ21を用いてラックバー23をリニアに変位させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態および各変形例においては、人間が知覚し得る車両の運動状態量として、横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率をそれぞれ単独で用いるようにした。しかし、これらの車両の運動状態量を、運転者による選択操作により切り替え、または車両の走行状態に応じて自動的に切り替えて、車両の操舵制御を行うようにしてもよい。車両の走行状態に応じて自動的に切り替える場合、例えば、車両の低速走行時には前記運動状態量として旋回曲率を用い、車両の中速走行時には前記運動状態量としてヨーレートを用い、かつ車両の高速走行時には前記運動状態量として横加速度を用いるようにする。これによれば、車両の走行状態に応じて適切な車両の操舵制御がなされ、車両の運転がより易しくなる。
本発明の実施形態および各変形例に係る車両の操舵装置の概略図である。 本発明の実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵角と操舵トルクの関係を示すグラフである。 操舵トルクと見込み横加速度の関係を示すグラフである。 見込み横加速度と目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される操舵特性変更プログラムを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係り、操舵角と転舵角との線形関係を説明するためのグラフである。 本発明の第1変形例に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込みヨーレートの関係を示すグラフである。 見込みヨーレートと目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の第2変形例に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込み旋回曲率の関係を示すグラフである。 見込み旋回曲率と目標転舵角の関係を示すグラフである。
符号の説明
FW1,FW2…左右前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…反力アクチュエータ、21…転舵アクチュエータ、22…転舵出力軸、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、34…横加速度センサ、35…電子制御ユニット、38…ヨーレートセンサ、39…操舵トルクセンサ、40…反力制御部、50…感覚適合制御部、51…変位−トルク変換部、52…トルク−横加速度変換部、53,55,57…転舵角変換部、54…トルク−ヨーレート変換部、56…トルク−旋回曲率変換部、60…転舵制御部、61,63,64…転舵角補正部、

Claims (3)

  1. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルに反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、
    前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサと、
    前記検出された変位量を前記操舵ハンドルに付与される操作力に変換する操作力変換手段と、
    車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運転状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量を、前記変換された操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、
    前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、
    車両の車速を検出する車速検出手段と、
    前記検出された車速が所定の車速以下であるか否かを判定する車速判定手段と、
    前記車速判定手段によって車両の車速が所定の車速以下であると判定すると、前記操舵ハンドルに対する変位量と予め定めた線形関係にある転舵角を、前記検出された変位量を用いて計算する線形転舵角計算手段と、
    前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  2. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記予め定めた線形関係は、運転者の前記操舵ハンドルに入力し得る最大の変位量に対して転舵角が前記転舵輪の転舵し得る最大の転舵角となる線形関係であるステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    記運動状態量計算手段によって計算される見込み運動状態量は、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つであるステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
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