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JP4230581B2 - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

重荷重用空気入りラジアルタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、重荷重用空気入りラジアルタイヤ、より詳細にはトラック及びバスなどの重車両の使途に供するタイヤに関し、特に、ベルトの耐セパレーション性、コーナリング性能などの諸性能を優位に保持した上で、トレッド部の耐カット性、なかでもベルトの耐カット性を向上させ、悪路走行での耐久性を高めた長寿命な重荷重用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
トラック及びバスなどの重車両に使用する重荷重用空気入りラジアルタイヤは、図7に示すように、一般に、トレッド部13のベルト20は4層のゴム被覆コード層21〜24により構成し、カーカス5に最も近く位置する第一コード層21のコードは、タイヤ赤道面Eに対して比較的大きな傾斜角度で配列し、第二コード層22及び第三コード23それぞれのコードは、タイヤ赤道面Eを挟んで交差する配列とし、この故をもって第二コード層22及び第三コード23はコード交差層25と呼び、コード交差層25各層のコードはタイヤ赤道面Eに対し比較的小さな傾斜角度で配列し、そして第四コード層24のコードは、第三コード層23のコードと同じ向きの配列とし、かつ傾斜角度も第三コード層23のコードとほぼ同じとする。なおベルト20のコード層21〜24のコードにはスチールコードを適用するものであり、以下同じである。
【0003】
比較的小さな傾斜角度でコードが交差するコード交差層を有するベルトを備えるタイヤは、悪路、例えば砕石や小岩石などが散在する悪路乃至不整地を荷重負荷の下で転動すると、トレッド部は、砕石や小岩石などの鋭い角縁部を踏みつけ、砕石や小岩石などによりベルトに達するカット傷を受け易い。そのため、カットによるベルト損傷が致命傷となるのを少しでも回避することを狙い、ベルトのカット受傷を最外コード層の第四コード層で止めるようにと、上記のベルト20のように、第四コード層24のコードを第三コード層23のコードと同方向配列とし、第四コード層の主たる役割を保護層とする構成が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のベルト20を備えるタイヤについて実際に検証した結果、この種のタイヤのベルト20は、交差コード層25を形成する第二コード層22と第三コード層23とのコード交差角度が小さいため、タイヤに所定内圧を充てんした際、第二及び第三コード層22、23の各層のコードには大きな張力が作用するのみならず、第四コード層24のコードの張力負担も大きく、そのため、第四コード層24のコードの、砕石や小岩石などの異物によるカット入力に対抗する余力が著しく減少し、その結果、第四コード層24は、異物進入に対しコード切れを十分に抑制することができず、保護層としての役目を十分に果たすことができないことが分かった。
【0005】
以上述べたように、悪路や不整地を走行する重荷重用空気入りラジアルタイヤは、ベルトの耐久性やコーナリング性能を必要なレベルに保持するため、砕石又は岩石などの比較的小さな異物による耐カット性の不足問題を抱えているのが現状である。
【0006】
従って、この発明の請求項1〜に記載した発明は、ベルトを4層のコード層で構成することを前提とし、ベルトの耐セパレーション性、コーナリング性能などタイヤに求められる諸性能は従来タイヤと同等以上の優れたレベルを保持した上で、悪路走行におけるベルトの耐カット性と、ベルトの最外コード層コードの耐疲労性との双方を同時に大幅に向上させることができる、長寿命な重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この出願の請求項1に記載した発明は、一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア相互間にわたり一対のサイドウォール部とトレッド部とを補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードになるカーカスと、カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトは4層のゴム被覆コード層を有する重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
ベルトのカーカスプライ側3層のコード層のうち、互いに隣接する2層はコード交差層から成り、該コード交差層の各層のコードは、タイヤ赤道面に対し10〜25°の範囲内の傾斜角度を有し、
ベルトのコード交差層を除く残余の2層のコード層は、該層に最も近く位置する側のコード交差層のコードの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面に対し45〜115°の範囲内のコード傾斜角度を有するとともに、
上記コード交差層が、カーカスプライから数えて第一番目のコード層と第二番目のコード層であり、ベルトの第四番目の最外コード層は、該層と隣接する側のコード交差層のコードの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面に対し45〜115°の範囲内のコード傾斜角度を有することを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤである。
【0008】
請求項1に記載した発明を実施するに当り、実際上の好適ベルト構成のその一は、請求項2に記載した発明のように、上記コード交差層が、カーカスプライから数えて第一番目のコード層と第二番目のコード層であり、ベルトの第四番目の最外コード層は、該層と隣接する側のコード交差層のコードの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面に対し45〜115°の範囲内のコード傾斜角度を有するタイヤである。
【0009】
また、実際上の好適ベルト構成のその二は、請求項3に記載した発明のように、上記コード交差層が、カーカスプライから数えて第二番目のコード層と第三番目のコード層とするタイヤである。
【0010】
また、請求項に記載した発明に関し、タイヤ生産性に寄与するベルト構成として、請求項に記載した発明のように、カーカスプライから数えて第三番目のコード層と、第四番目の最外コード層とのコード傾斜角度が同一であるのが良い。
【0011】
請求項1および2に記載した発明に共通して、請求項に記載した発明のように、ベルトの第四番目の最外コード層のコード被覆ゴムは、200kgf/cm2以上の圧縮弾性率を有することが好ましい。
【0012】
ここに上記の圧縮弾性率は以下に述べる方法に従い算出した値を用いるものとする。
すなわち、図9に示すように、直径dが14mm、高さhが28mmの円柱状の空洞部をもつ金属製、例えばスチール製の治具33の空洞部にゴム試験片34を隙間なく充てんし、この治具33を、図10に示すように、圧縮試験機35にセットし、ゴム試験片34の上下面に対し速度0.6mm/分で荷重Wを負荷させ、このときのゴム試験片34の変位量をレーザー変位計36で測定し、荷重Wと変位との関係から圧縮弾性率を算出する。
【0013】
また、コード交差層の耐セパレーション性を向上させるには、請求項に記載した発明のように、上記コード交差層の少なくとも一方のコード層端部は、該端部を包み込むシート状エンドカバーゴムを有し、該エンドカバーゴムを有するコード層端部の内外両面の少なくとも一方面は、コードの存在位置で山部を形成し、かつ隣り合うコード間位置で谷部を形成する波状面を有し、山谷相互間の高低差が0.05〜0.25mmの範囲内にあるものとする。
【0014】
また、他の手段でコード交差層の耐セパレーション性を向上させるには、請求項に記載した発明のように、上記コード交差層の少なくとも一方のコード層の幅端面と全周にわたり接合するゴム層を有し、該ゴム層の幅が0.05〜5.00mmの範囲内にあるものとする。
【0015】
前述のカーカスのプライコード及びベルト各層のコードはいずれもスチールコードが適合する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態例を図1〜図3に基づき説明する。
図1は、この発明による重荷重用空気入りラジアルタイヤの回転軸線を含む平面による断面図であり、
図2は、図1に示すタイヤのトレッドゴムを切り取り、ステップダウンカットを施したベルト展開図であり、
図3は、図1、2に示すベルトとは異なる構成を有する、図2同様のベルト展開図であり、
図4は、ベルトのコード交差層のいずれか一方の層端部の斜視図であり、
図5は、ベルトのコード交差層のいずれか一方の層端部の拡大断面図であり、
図6は、ベルトのコード交差層のいずれか一方の別の層端部の斜視図である。
【0017】
図1において、重荷重用空気入りラジアルタイヤ(以下タイヤという)は、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有する。また、タイヤは、一対のビード部1内に埋設したビードコア4相互間にわたり一対のビード部1、一対のサイドウォール部2及びトレッド部3を補強する1プライ以上、図示例は1プライのゴム被覆ラジアル配列スチールコード(以下コードという)のカーカス5と、カーカス5の外周でトレッド部3を強化するベルト6とを備える。なお図1に示す符号7はビード部1を補強するスティフナーゴムである。
【0018】
図1〜図3において、ベルト6は4層のゴム被覆スチールコード(以下コードという)層により構成し、これら4層のコード層は、カーカス5のプライから数えて第一番目の層をコード層6−1、第二番目の層をコード層6−2、第三番目の層をコード層6−3、そして第四番目の最外コード層をコード層6−4と名付ける。
【0019】
ここで、ベルト6のカーカス5のプライ側3層のコード層6−1、6−2、6−3のうち、互いに隣接積層する2層はコード交差層を形成するものとし、図2に示すベルト6は、第一番目のコード層6−1と第二番目のコード層6−2とでコード交差層を形成し、図3に示すベルト6は、第二番目のコード層6−2と第三番目のコード層6−3とでコード交差層を形成する。
ここにコード交差層とは、タイヤ赤道面Eを挟み、隣接2層それぞれのコードが異なる方向、すなわち、タイヤ正面からみて、右上がり方向(以下R方向という)と左上がり方向(以下L方向という)に配列され、互いに交差する積層構成と定義する。
【0020】
ここに、ベルト6におけるコード交差層の各層のコードは、タイヤ赤道面Eに対し10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内の傾斜角度α、βを有することを要する。
【0021】
これを図2、3に基づき詳述すれば、
図2に示すコード交差層の一方を形成する第一番目のコード層6−1のコード6−1a及び図3に示すコード交差層の一方を形成する第二番目のコード層6−2のコード6−2aは、タイヤ赤道面Eに対し、傾斜角度αが10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内にあるということ、そして
図2に示すコード交差層の他方を形成する第二番目のコード層6−2のコード6−2a及び図3に示すコード交差層の他方を形成する第三番目のコード層6−3のコード6−3aも、タイヤ赤道面Eに対し、傾斜角度βが10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内にある、ということである。
【0022】
これに対し、ベルト6のコード交差層を除く残余の2層のコード層は、この残余2層に最も近く位置する側のコード交差層のコード傾斜角度α、βを測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面Eに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内のコード傾斜角度γ、δを有するものとする。
【0023】
これを、前記同様に図2、3に基づき詳述すれば、
まず図2において、ベルト6のコード交差層を除く残余の2層のコード層は、第三番目のコード層6−3と第四番目のコード層6−4であり、第三番目のコード層6−3及び第四番目のコード層6−4のいずれの層に対しても最も近く位置するコード交差層は第二番目のコード層6−2であり、よって、第三番目のコード層6−3のコード6−3aのタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度γと、第四番目のコード層6−4のコード6−4aのタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度δとは、いずれも、第二番目のコード層6−2のコード6−2a傾斜角度βを測る向き(矢印方向)と同じ向き(矢印方向)に測って、45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内にある、ということである。
【0024】
次に図3において、ベルト6のコード交差層を除く残余の2層のコード層は、第一番目のコード層6−1と第四番目の最外コード層6−4であり、第一番目のコード層6−1に最も近く位置するコード交差層は第二番目のコード層6−2であり、よって、第一番目のコード層6−1のコード6−1aのタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度γは、第二番目のコード層6−2のコード6−2a傾斜角度αを測る向き(矢印方向)と同じ向き(矢印方向)に測って、45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内にある、ということであり、
第四番目の最外コード層6−4に最も近く位置するコード交差層は第三番目のコード層6−3であり、よって、第四番目のコード層6−4のタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度δは、第三番目のコード層6−3のコード6−3a傾斜角度βを測る向き(矢印方向)と同じ向き(矢印方向)に測って、45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内にある、ということである。
【0025】
さて、2層のコード交差層における各層コードのタイヤ赤道面Eにする傾斜角度α、βを10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内とする一方、コード交差層を除く残余2層のコード層は、該層に最も近く位置する側のコード交差層のコード傾斜角度測定方向と同方向に測って、タイヤ赤道面Eに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内のコード傾斜角度γ、δを有することにより、図2及び図3に示すように、タイヤに内圧を充てんした際にベルト6に生じるトレッド部3の周方向張力Fx(集中力として示す)は、タイヤ赤道面Eに対する傾斜角度α、βが小さなコード交差層が主として負担し、最外コード層6−4を含む残余2層のコード層が負担すべき張力を大幅に減少させることができる。
【0026】
このことにより、荷重負荷の下で転動するタイヤのトレッド部3が鋭利な角縁を有する砕石や小岩石などの異物に乗り上げたとき、たとえ角縁がトレッドゴム8(図1参照)を貫通してベルト6に達したとしても、最外コード層6−4のコード6−4aは、作用する張力が小さいため大きな残留切断抵抗力を有し、その結果コード6−4aは切れ難くなり、ベルト6の耐カット性は顕著に向上する。
【0027】
また、図2、3を参照して、タイヤに内圧を充てんしたとき、ベルト6に生じる張力Fxにより、ベルト6はタイヤの放射方向外側に張り出す傾向を有し、その結果ベルト6は全体として2個の矢印で示す幅方向内側に収縮し、ベルト6の各層6−1、6−2、6−3、6−4のコード6−1a、6−2a、6−3a、6−4aはそれぞれ、傾斜角度α、β、、γ、δが減少する方向へ変化しようとする。しかしこのベルト6の構成下では、コード交差層を除く残余2層のコードは、それら傾斜角度γ、δが、2層のコード交差層のコード傾斜角度α、βに比し著しく大きいため、傾斜角度減少度合いがコード交差層コードに比し極めて少なく、その結果、残余2層のコード層は幅方向への収縮が生じ難い傾向を示す。
【0028】
このことは、残余2層のコード層がコード交差層の幅方向収縮を抑制するように働くことに外ならず、それというのも残余2層のコードがコード交差層に対し、いわばつっかえ棒のような作用を及ぼしているからである。幅方向収縮を抑制されるコード交差層はトレッド部3の周方向剛性を増大させ、その結果、ベルト6を備えるタイヤは、コーナリングパワ(以下CPという)が向上して、従来の4層構成ベルト20(図7参照)を備えるタイヤと同等以上のコーナリング性能を発揮することができる。さらにコード交差層の周方向剛性増大は、タイヤへの内圧充てん時のタイヤの径成長を抑制し、この抑制はベルト6の端部、特にコード交差層端部の耐セパレーション性向上に大きく貢献する。
【0029】
なお2層のコード交差層それぞれのコードのタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度α、βは、互いにほぼ等しくするのが、2層のコードに均等に張力を負担させる上で好ましい。またコード交差層コードのタイヤ赤道面Eに対する傾斜角度を10〜25°の範囲内としたのは、傾斜角度が10°未満ではコード交差層端部に生じる層間せん断ひずみが大きくなり過ぎ、この端部にセパレーション故障を発生し易くする一方、コード傾斜角度が25°を超えると内圧充てんタイヤでベルト6に作用する張力Fxにより、残余2層のコード層の幅方向収縮抑制が十分に効果を発揮することができなくなり、コード交差層としての周方向剛性が著しく低下してCP特性の劣化と耐セパレーション性低下とをもたらすからである。
【0030】
さらに、図11にベルト6を備えるタイヤと、従来の4層構成のベルト20(図7参照)を備えるタイヤのCP特性の比較線図を示すように、ベルト6の最外コード層6−4のコード6−4aの傾斜角度δを種々に変えたとき、従来タイヤのCPを100とする指数で示すレベル以上のCP指数を示す傾斜角度δが適正範囲であり、この適正傾斜角度δは45〜115°の範囲内であることが分かる。
【0031】
傾斜角度δが45°未満でも傾斜角度δが115°を超えても従来タイヤよりCP特性が低下するので不可である。このことから、最外コード層6−4のコード6−4aが、コード交差層の幅方向収縮に対しつっかえ棒状の役を果し、コード交差層の周方向剛性を高めていることが裏付けられる。同じことが残余2層のうち、図2に示す第三番目のコード層6−3のコード6−3aの傾斜角度γについても、図3に示す第一番目のコード層6−1のコード6−1aの傾斜角度γについても言えることを確かめている。よって、図2に示すベルト6の残余2層のコード層6−3、6−4のコード6−3a、6−4aの傾斜角度γ、δは同方向、同角度とするのが生産性の点で有利である。
【0032】
また、第四番目の最外コード層6−4のコード6−4aの被覆ゴム6−4bは、200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率を有するのが適合する。この圧縮弾性率は先に述べた測定方法に従い求めた値である。
【0033】
以下、圧縮弾性率の値が200kgf/cm2 以上である作用効果を説明する。
すなわち、図8に荷重負荷の下で転動する従来のタイヤ(図7に断面を示すタイヤ)の正面の一部を模式図として示すように、タイヤのトレッド部13が路面30上に存在する、ある程度大きな砕石又は岩石などの突起異物31に乗り上げたとき、ベルト20には矢印32の向きの曲げ力が作用する結果、最外コード層である第四コード層28のコードは局部的な座屈(バックリング)現象が生じ、このコード座屈が繰り返し生じる結果、コードの疲労が進み、結局コード折れに至る故障も見られる。
【0034】
比較的大きな砕石や岩石などの異物が散在する路面上をタイヤが転動し、これら大きな異物に乗り上げたとき、図8に基づき説明したように、ベルト6の最外コード層6−4は大きな曲率での曲げ変形が強いられる結果、局所的に大きな圧縮力が作用し、最外コード層6−4のコード6−4aには座屈が生じるところ、最外コード層6−4のコード6−4aの被覆ゴム6−4bには200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率をもつゴムを適用することにより、被覆ゴム6−4bの圧縮抵抗力を増大させ、最外コード層6−4のコード6−4aの座屈変形を回避させることが可能となる。
【0035】
その結果、タイヤが比較的大きな砕石や岩石などの異物にしばしば乗り上げても、最外コード層6−4のコード6−4aの座屈疲労による故障発生を阻止することができる。圧縮弾性率が200kgf/cm2 未満ではこの効果が不十分であり、不可である。
【0036】
また、200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率をもつゴムを最外コード層6−4のコード6−4aの被覆ゴム6−4bに適用することにより、トレッド部3の接地面におけるベルト6の接地面内曲げ剛性が増加し、その結果、CP特性の向上に貢献する。
【0037】
また好適実施形態として、図4及び図5に示すように、コード交差層6−1、6−2(図2参照)及びコード交差層6−2、6−3(図3参照)の少なくとも一方のコード層の幅方向端部に、これを包み込むシート状エンドカバーゴム10を配設する。エンドカバーゴム10を備えるコード交差層端部のタイヤ半径方向(以下半径方向という)内面11a及び半径方向外面11bの少なくとも一方面、図示例は両内外面11a、11bは、コード6−1a、6−2a、6−3aの存在位置で山部を形成し、層内で互いに隣り合うコード6a、7a間位置で谷部を形成する。
【0038】
これに合わせ、エンドカバーゴム10の表面12も山12aと谷12bとの波状面を有する。山12aはコード6−1a、6−2a、6−3aの存在位置13に対応し、谷12bは互いに隣り合うコード6−1a、6−2a、6−3a間位置14に対応する。山12aと谷12bとの相互間高低差Hは0.05〜0.25mmの範囲内とする。この高低差Hを設けることにより、コード交差層を形成するコード層6−1、6−2(図2参照)及びコード層6−2、6−3(図3参照)6それぞれの端部のセパレーション発生を抑制することに大きく寄与する。ここで、エンドカバーゴム10の50%モジュラスは、ベルト6のコード層の被覆ゴムの50%モジュラスより大きく、好適には1.2倍以上である。
【0039】
エンドカバーゴム10の表面における山12aと谷12bとの高低差Hを0.05〜0.25mmの範囲内としたのは、高低差Hが0.05mm未満ではコード交差層9端部のセパレーション発生の抑制効果が実用上殆どなく、高低差Hが0.25mmを超えるようにすると、未加硫タイヤ成型時において、ベルトのコード層部材を互いに張合わせるとき、製品タイヤで谷12bとなる凹部に多量の空気を包み込み、この空気包み込み部分は未加硫タイヤの加硫成型によっても互い接着せず、この部分からセパレーションが発生するので、いずれも不可である。
【0040】
コード交差層端部の内面11a及び外面11bと、エンドカバーゴム10の表面12とを波形にくせ付けする方法は、例えば、ベルト6のコード交差層となる未加硫コード層部材の長尺コード層部材をカレンダロールにより製造する際に用いるスチールコードを配列方向に並べ揃える櫛ロールと同様なロールを用い、所定寸法に切り揃えた未加硫ゴム被覆コード層部材の少なくとも端部をその少なくとも一方面を押圧するか、又はコード6−1a、6−2a、6−3aの未加硫被覆ゴムのゲージを薄くするか、いずれかで波形を形成する。なお後者の方法を用いる場合、被覆ゴムゲージが薄過ぎると未加硫部材段階で6−1a、6−2a、6−3aが露出し易くなるため、これを考慮してゲージを設定する。
【0041】
また、図6に示すように、エンドカバーゴム10の代わりに、2層から成るコード交差層の少なくとも一方のコード層の幅端面に、コード層全周にわたるゴム層15を接合させる。このゴム層15を設けることによりコード交差層のコード6−1a端、6−2a端、6−3a端のトレッドゴム8内への突出を解消することができ、コード交差層端部の耐セパレーション性向上に寄与させる。このときゴム層15の幅aは0.05〜5.00mmの範囲内とする。
【0042】
ゴム層15の幅aを0.05〜5.00mmの範囲内とするのは、幅aが0.05mm未満ではセパレーション故障発生の抑制効果が小さくなり過ぎ、幅aが5.00mmを超えるようにしようとすれば、未加硫タイヤ成型に当り、2層のコード交差層の未加硫コード層部材を成型ドラム上に供給するための送り出し装置から未加硫コード層部材を送りだすとき、ゴム層15となるべき未加硫ゴム部材が垂れ下がり、又は捲れ上がりなど、作業性を損ねる問題が発生するので、いずれも不可である。
【0043】
ゴム層15を設ける場合にはエンドカバーゴム10を配設せずとも良いが、ゴム層15とエンドカバーゴム10の双方を適用することもできる。双方適用の場合には、必ずしも先に述べたエンドカバーゴム10の表面12を波状表面12a、12bとする必要はない。なお生産性の点でゴム層15は、コード交差層のコード被覆ゴムと同一配合組成ゴムとするのが好ましい。この場合ゴム層15によりコード交差層のコード6−1a端、6−2a端、6−3a端を同一ゴムで保護することができ、耐セパレーション性向上の点で有利である。
【0044】
【実施例】
トラック及びバス用ラジアルプライタイヤで、サイズが11R22.5(チューブレス)であり、第一番目のコード層6−1と第二番目のコード層6−2との幅関係が異なる他は図1に示す構成に従い、図2に示すベルト6の構成を有する実施例1〜14のタイヤを準備した。
【0045】
カーカス5は1プライであり、このカーカスプライは、(3+9+15)×0.175のスチールコードのラジアル配列のゴム被覆になり、ベルト6は4層のコード層6−1、6−2、6−3、6−4の構成に成り、実施例1〜14のタイヤは、第一番目のコード層6−1と第二番目のコード層6−2とでコード交差層を形成する。
コード層6−1、6−2、6−3、6−4のコード6−1a、6−2a、6−3a、6−4aはいずれも1×0.34+6×0.34のスチールコードであり、コード打込数は18.0本/50mmである。
【0046】
また、各実施例タイヤの性能評価のため、実施例1〜14のタイヤに対し従来例タイヤ及び比較例1〜5のタイヤを準備した。
従来例タイヤ及び各比較例タイヤは、比較評価対象の各実施例タイヤとベルト6の構成を除く他は全て合わせた。
【0047】
ベルト6の各コード層のコード傾斜角度α(°)、β(°)、γ(°)、δ(°)と配列方向(R、L)、最外コード層6−4のコード被覆ゴム6−4bの圧縮弾性率(kgf/cm2)、エンドカバーゴム10の高低差H(mm)及びゴム層15の幅a(mm)の値を、実施例1〜14のタイヤ、従来例タイヤ及び比較例1〜5のタイヤグループとして表に示す。
表1には、第一番目のコード層6−1を符号1Bで、第二番目のコード層6−2を符号2Bで、第三番目のコード層6−3を符号3Bで、そして第四番目の最外コード層6−4を符号4Bで簡略化して記載した。また傾斜角度の前にコード配列方向R、Lの符号を付した。
【0049】
【表1】
Figure 0004230581
【0050】
実施例1〜14のタイヤ、従来例のタイヤ及び比較例1〜5のタイヤをグループとして、ベルトのカット試験、最外コード層のコード折れ(折損)試験及びコード交差層の耐セパレーション性試験(耐久性試験)と、またCP測定によるコーナリング性能試験とを実施した。以下これらの試験方法を述べる。
【0051】
ベルトのカット試験;
タイヤの赤道面Eにもっとも近いトレッドゴム陸部に、90°の角度の先端部をもつスチール製の充てん物を噛み込ませて、いわゆる「石噛み状態」としたタイヤに、7.5kgf/cm2の内圧を充てんし、荷重2750kgf/本を負荷させた状態で2万km走行させ、その後、このタイヤを解剖し、最外コード層のコードが切断されているか否かを調べ、コード切断の有無で耐久性を評価した。表に「あり」、「なし」を記載した。
【0052】
最外コード層のコード折れ試験;
半径30mmの半球をドラム試験機のドラム表面に固着し、この半球を、充てん内圧7.5kgf/cm2、負荷荷重2750kgfのタイヤのほぼトレッド部中央のトレッドゴム陸部に位置させた状態で、1万km走行させた後、タイヤを解剖に付し、最外コード層のコードが折れているか否かを調べ、コード折れの有無で耐久性を評価した。表に「あり」、「なし」を記載した。
【0053】
コード交差層の耐久性試験;
充てん内圧7.5kgf/cm2、負荷荷重2750kgf、横力0.3g(重力加速度)を作用させた状態で1000km走行させた後、タイヤを解剖に付し、コード交差層の端部に発生している亀裂長さを測定し、亀裂長さの逆数により耐久性を評価した。表に評価結果を示す。なお表に示す数値は従来例タイヤ1の値を100とする指数であり、数値が大なるほど良い。
【0054】
コーナリング性能試験;
充てん内圧7.5kgf/cm2、負荷荷重2750kgfの条件としたタイヤ車輪(リムサイズは8.25)をドラム試験機のドラム上で走行させ、スリップ角度を1〜4°の範囲で1°宛増加させ、各角度で測定したコーナリングフォースからCPを算出し、CPの平均値からコーナリング性能を評価した。表に評価結果を示す。数値は従来例タイヤを100とする指数にてあらわし、数値は大なるほど良い。
【0055】
に示す結果から、実施例1〜14のタイヤ、試験A、Bでは最外コード層6−4のコード6−4aは切断も折損もなく健全な状態を保持しており、また試験Cでは従来例タイヤ1と同等以上の耐久性を有し、さらに試験Dでも従来例タイヤ1と同等以上のCP特性を有していることが分かる。
これに対し、従来例タイヤ1は、試験Aにて最外コード層のコード切断が生じ、比較例1〜5のタイヤでは、最外コード層のコードの切断又は折損、コード交差層の耐久性及びコーナリング性能の少なくとも一つの性能が従来例タイヤ1対比劣っていることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
この発明の請求項1〜に記載した発明によれば、ベルトの耐セパレーション性、コーナリング性能などタイヤに求められる諸性能は従来タイヤ同等以上の優れたレベルを保持して、悪路走行における、ベルトの耐カット性及びベルトコード層コードの耐折損性の双方を含めたタイヤ全体としてのベルトの耐久性を大幅に向上させることが可能な、長寿命重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による重荷重用空気入りラジアルタイヤ例の断面図である。
【図2】 図1に示すタイヤのステップダウンカットのベルトの展開図である。
【図3】 図2とは異なるタイヤのステップダウンカットのベルトの展開図である。
【図4】 この発明によるベルトのコード交差層1層の端部斜視図である。
【図5】 図4に示すコード交差層1層の端部拡大断面図である。
【図6】 この発明によるベルトの他のコード交差層1層の端部斜視図である。
【図7】 従来タイヤの要部左半断面図である。
【図8】 大きな異物に乗り上げたときのタイヤのベルト変形状態の説明図である。
【図9】 この発明によるゴムの圧縮弾性率測定用治具の斜視図である。
【図10】 図6に示す治具を装着した圧縮試験機の正面図である。
【図11】 この発明による最外コード層のコード傾斜角度とCPとの関係をあらわす線図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 ビードコア
5 カーカス
6 ベルト
6−1 第一番目のコード層
6−1a 第一番目コード層コード
6−2 第二番目のコード層
6−2a 第二番目コード層コード
6−3 第三番目のコード層
6−3a 第三番目コード層コード
6−4 最外コード層
6−4a 最外コード層コード
6−4b 最外コード層コード被覆ゴム
7 スティフナーゴム
8 トレッドゴム
10 エンドカバーゴム
11a エンドカバーゴム内面
11b エンドカバーゴム外面
12 エンドカバーゴム表面
12a エンドカバーゴム山
12b エンドカバーゴム谷
13 コード存在位置
14 コード間位置
15 ゴム層
E タイヤ赤道面
α、β、γ、δ ベルトコード層コードの傾斜角度
H エンドカバーゴム波の高低差
a ゴム層幅
Fx 張力

Claims (5)

  1. 一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア相互間にわたり一対のサイドウォール部とトレッド部とを補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードになるカーカスと、カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトは4層のゴム被覆コード層を有する重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
    ベルトのカーカスプライ側3層のコード層のうち、互いに隣接する2層はコード交差層から成り、該コード交差層の各層のコードは、タイヤ赤道面に対し10〜25°の範囲内の傾斜角度を有し、
    ベルトのコード交差層を除く残余の2層のコード層は、該層に最も近く位置する側のコード交差層のコードの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面に対し45〜115°の範囲内のコード傾斜角度を有するとともに、
    上記コード交差層が、カーカスプライから数えて第一番目のコード層と第二番目のコード層であり、ベルトの第四番目の最外コード層は、該層と隣接する側のコード交差層のコードの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って、タイヤ赤道面に対し45〜115°の範囲内のコード傾斜角度を有することを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ。
  2. カーカスプライから数えて第三番目のコード層と、第四番目の最外コード層とのコード傾斜角度が同一である請求項に記載したタイヤ。
  3. ベルトの第四番目の最外コード層のコード被覆ゴムは、200kgf/cm2以上の圧縮弾性率を有する請求項1もしくは2に記載したタイヤ。
  4. 上記コード交差層の少なくとも一方のコード層端部は、該端部を包み込むシート状エンドカバーゴムを有し、該エンドカバーゴムを有するコード層端部の内外両面の少なくとも一方面は、コードの存在位置で山部を形成し、かつ隣り合うコード間位置で谷部を形成する波状面を有し、山谷相互間の高低差が0.05〜0.25mmの範囲内にある請求項1〜のいずれか一項に記載したタイヤ。
  5. 上記コード交差層の少なくとも一方のコード層の幅端面と全周にわたり接合するゴム層を有し、該ゴム層の幅が0.05〜5.00mmの範囲内である請求項1〜のいずれか一項に記載したタイヤ。
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