JP4221550B2 - リチウム二次電池用電解液及びそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池は、正極および負極で起きる酸化還元反応を利用して化学エネルギーを電気エネルギーへと変換して取り出したり、または電気エネルギーを化学エネルギーへと変換して貯蔵するものであり、各種の装置において電源として利用されている。
【0003】
近年、携帯電子機器の急速な普及に伴い、軽量かつ大容量の電池に対する要求が高まっている。そして、この要求に応えるために、単位電荷当たりの質量が小さいアルカリ金属を用いた電池が開発されている。これらの中でも、特にリチウムを用いる二次電池が、充放電特性に優れた大容量電池として種々の携帯機器に利用されている。このようなリチウム二次電池は、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極活物質として炭素材料を用いており、これらの活物質に対するリチウムイオンのドープ反応および脱ドープ反応を利用して充放電を行っている。
【0004】
しかし、このような二次電池において、電子機器の電源回路や充電装置の故障、もしくは電子機器の誤使用により、電池が過充電状態になった場合、正極から過剰なリチウムが放出され正極活物質が熱的に不安定になることがある。正極活物質が熱的に不安定になると、電解液との急激な発熱反応が生じ、その程度が著しい場合は電池の破損や発火に至ることが懸念される。そのため電池の過充電を防止し安全性を確保することが重要な課題になっている。
【0005】
過充電時における安全性確保のため、これまでポリスイッチ、PTC素子、温度ヒューズ、電流ヒューズ等の保護素子、及び過充電防止回路等が提案されてきた。しかし保護素子や保護回路の利用は、電池パックの小型化、低コスト化に大きな制約を与えるため、これらの保護素子や保護回路を用いないで電池の安全性を確保することがより望ましい。
【0006】
このような課題を解決するために、電池内に過充電時の安全性を高める添加剤を含有させることが提案されている。
【0007】
例えば特開平7−302614号公報および特開平9−50822号公報には、負極にリチウムを主体とする金属材料またはリチウムをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料を用い、正極にリチウムと遷移金属の複合酸化物を用いた非水電解液二次電池において、非水電解液に、分子量500以下であり、満充電時の正極電位よりも貴な電位に可逆性酸化還元電位を有するようなπ電子軌道を持つベンゼン類化合物(アニソール誘導体、キシレン誘導体等)やビフェニル化合物(ジメトキシビフェニル誘導体)を含有させることが開示されている。このような芳香族化合物を電解液に添加することにより、過充電反応が防止され電池の安全性や信頼性が向上すると記載されている。
【0008】
また、特開平9−106835号公報には、正極にリチウム挿入化合物を用い、負極に炭素質化合物を用いた非水系のリチウム電池において、電解液に、ビフェニル、3−クロロ−チオフェン、フランなどの芳香族添加剤を含有させることが開示されている。これらの添加剤が、電池の最大動作電圧以上の電池電圧で重合することによって、電池の内部電圧を高くし、過充電時に電池が保護されると記載されている。
【0009】
また、特開2001−15155号公報には、有機溶媒にリチウム塩を溶解したリチウム二次電池用電解液において、フェニル基に隣接する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体またはシクロアルキルベンゼン誘導体を含有させることが開示されている。これらの添加剤は、過充電状態において重合して再溶解の起きにくい重合物を生成し、この重合物は抵抗体として作用すると記載されている。また、電池内部のガス圧力が所定圧力以上になると充電を遮断する電流遮断封口体を備えた電池において、過充電状態にてこれらの添加剤の分解により水素ガスが発生し、電流遮断封口体が作動し過充電が防止できると記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−302614号公報に記載のアニソール誘導体や特開平9−50822号公報及び特開平9−106835号公報に記載のビフェニル化合物は、充電レートが低く、またこれら公報に記載の芳香族化合物は長時間に渡り過充電状態が続いた場合の安全性の確保が不十分であった。また、3−クロロ−チオフェン、フランなどの芳香族添加剤はその取り扱いが難しいものがあったり、酸化分解性等による電池特性への悪影響がある。またアニソール誘導体やビフェニル化合物を電解液に添加することにより、電池のサイクル特性や低温特性が低下するという問題も生じた。また特開2001−15155号公報に記載のアルキルベンゼン誘導体を電解液に添加した場合もサイクル特性が低下するという問題があった。
【0011】
以上に述べたように、過充電された電池の安全性を向上させる電解液への添加剤がいくつか提案されているが、電池特性に悪影響を及ぼさず、過充電時の電池の安全性の確保できる添加剤は未だ得られていない。
【0012】
そこで本発明の目的は、過充電時の安全性に優れ、かつ低温特性やサイクル特性等の電池特性に優れた電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を電解液に添加することにより、電池特性を悪化させることなく、過充電時における電池の安全性を向上できることを見出した。本発明によれば、このような特定のジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を、電解液中に含有させることにより、過充電に対する安全性および電池特性に優れた電池を提供することができる。
【0014】
本発明は、電解液の溶媒が有機溶媒であり、リチウム塩が溶解されているリチウム二次電池用の電解液であって、一般式(1)で示される、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液に関する。
【0015】
【化3】
【0016】
[式中、n、m、n’及びm’はそれぞれ独立に0以上の整数を示す。また、ジアジン環とベンゼン環との縮合の順序は交互であってもランダムであってもよい。また、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアシル基を示す。ただし、nが2以上の場合、Ra及びRbはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n’が2以上の場合、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、これらの置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよく、また置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
また本発明は、電解液の溶媒が有機溶媒であり、リチウム塩が溶解されているリチウム二次電池用の電解液であって、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液に関する。
【0017】
【化4】
【0018】
[式中、n、m、n’及びm’はそれぞれ独立に0以上の整数を示す。また、ジアジン環とベンゼン環との縮合の順序は交互であってもランダムであってもよい。また、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアシル基を示す。ただし、nが2以上の場合、Ra及びRbはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n’が2以上の場合、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、これらの置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよく、また置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
また本発明は、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物又はオリゴマー若しくはポリマー化合物が、少なくともその一部が電解液に溶解していることを特徴とする上記のリチウム二次電池用電解液に関する。
【0020】
また本発明は、正極および負極、並びに上記のリチウム二次電池用電解液を有するリチウム二次電池に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の二次電池用電解液は、電解液中に、一般式(1)で示される、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物、又はその化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物(以下、適宜これらの化合物を「ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物」という)を含有する。本発明の二次電池用電解液の好ましい形態の一つは、その溶媒が有機溶媒であり、リチウム塩が溶解されたものである。このような電解液は、過充電時の安全性が特に要求されているリチウム二次電池に好適に用いることができる。
【0023】
また、本発明の二次電池は、正極および負極、並びに上記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を含有する電解液を有するものである。正極と負極がセパレータを介して積層され、その積層体が前記電解液とともに容器内へ収容され、封止された構成をとることができる。本発明の二次電池としては、電池容量の点から、電解質カチオンとしてリチウムイオンを含有するリチウム二次電池が好ましく、例えば、負極活物質にはリチウムを主体とする金属または炭素材料が用いられ、正極活物質にはリチウム含有遷移金属酸化物が用いられた構成をとることができる。
【0024】
図1に本発明の二次電池の一実施形態の構成を示す。図1に示す電池は、正極及び負極にそれぞれ正極タブ2、負極タブ3が設けられ、これらの電極をセパレータを介して重ね合わせてこれを巻き回してなる電極素子1を有し、この電極素子1と電解液を外装体であるラミネートフィルム4に収納した構成を有している。
【0025】
以下、本発明の二次電池用電解液およびそれに用いた二次電池について項目ごとに説明する。
【0026】
[1]電解液
[1-1]ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物
本発明の電解液に含有されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物には、上記一般式(1)で表されるジアジン化合物(一般式(1)においてn+m+n’+m’=0を満たすもの)やポリアセン型化合物(一般式(1)においてn+m+n’+m’≧1を満たすもの)や、これらの化合物の環に二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を挙げることができる。これらのジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、その一種単独または二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記一般式(1)において、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0028】
また置換または非置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0029】
また置換または非置換のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0030】
また置換または非置換のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0031】
また置換または非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0032】
また置換または非置換の芳香族複素環基としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0033】
また置換または非置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0034】
また置換または非置換のアミノ基は、−NX1X2で表される基であり、置換基X1およびX2は、それぞれ独立に、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0035】
また置換または非置換のアルコキシ基および置換または非置換のアルコキシカルボニル基は、それぞれ−OX3および−COOX4で表される基であり、置換基X3およびX4としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0036】
また置換または非置換のアリールオキシ基および置換または非置換のアリールオキシカルボニル基は、それぞれ−OX5および−COOX6で表される基であり、置換基X5およびX6としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0037】
また置換または非置換のアシル基は、−C(=O)X7で表される基であり、置換基X7としては、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換アルケニル基、置換または非置換シクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換アラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0038】
また環を形成する2価基の例としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2'−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3'−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4'−ジイル基、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0039】
また上述の置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよい。硫黄原子で置換された基としては、例えば、上述のヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシル基等の酸素含有基の酸素原子が硫黄原子で置き換えられた置換基を挙げることができる。その置換基の例としては、メルカプト基、ジチオカルボキシル基、ヒドロキシ(チオカルボニル)基、メルカプトカルボニル基、メチルチオ基、メトキシチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、メチルジチオカルボキシル基、フェニルチオ基、フェノキシチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、フェニルジチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、等が挙げられる。ケイ素原子で置換された基としては、例えば、上述のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アラルキル基の炭素原子がケイ素原子で置き換えられた置換基を挙げることができる。その置換基の例としては、シリル基、メチルシリル基、シリルメチル基、エチルシリル基、(メチルシリル)メチル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、等が挙げられる。リン原子で置換された基としては、例えば、上述のアミノ基の窒素原子がリン原子で置き換えられた置換基が挙げられる。その置換基の例としては、ホスフィノ基、トリメチルホスフィノ基、トリフェニルホスフィノ基、等が挙げられる。ホウ素原子で置換された基としては、例えば、上述のアミノ基の窒素原子がホウ素原子で置き換えられた置換基が挙げられる。その置換基の例としては、ジメチルボリル基、ジフェニルボリル基、等が挙げられる。
【0040】
ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物の分子量については、電解液への溶解性等の点からは低分子量であることが好ましく、ポリアセン型化合物についてはn+m+n'+m'が20以下であることが好ましく、n+m+n'+m'が10以下であることがより好ましく、オリゴマー又はポリマー化合物についてはGPCによる重量平均分子量(標準試料:ポリスチレン)として20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。
【0041】
本発明におけるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、対応するジアジン化合物を過酸化物あるいは過酸を用いて酸化するなどの既知の合成法により製造することができる。例えば過酸化尿素を用いた合成法については、シンレット、1990年9月、533〜535頁(Synlett, P533-535, September 1990)に記載されている。また、例えば下記式(8)で表される化合物ならば、テトラメチルピラジンのジクロロメタン溶液に、メタクロロ過安息香酸のジクロロメタン溶液を添加し室温で攪拌し、その後、炭酸ナトリウムの飽和水溶液を加えて中和し、常法に従って精製することによって得ることができる。
【0042】
オリゴマー又はポリマー型のジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、例えば次のようにして製造することができる。縮合環内にジアジン環(ピラジン環)をもつ縮合環化合物の縮合環内に二つの結合手をもつ二価の基を構造単位として含有するオリゴマー又はポリマー化合物を、過酸化物と反応させ、縮合環内の窒素原子をN−オキシド化することによって得ることができる。他の方法として、ポリアセン型のジアジンN,N'−ジオキサイド化合物の縮合環の置換基の二つがハロゲンであるジハライド化合物を、有機溶媒中において、ゼロ価ニッケル化合物を加えて脱ハロゲン化して得ることできる。
【0043】
本発明におけるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、過充電電圧で酸化反応し、過充電容量を消費する。このため、過充電状態で正極から過剰なリチウムが放出され負極上に析出して正負極が熱的に不安定状態になることを抑制する。この効果により過充電状態における電池の安全性が確保される。
【0044】
本発明における前記電解液中に含まれるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%の範囲であり、最も好ましくは1〜5質量%の範囲である。電解液中の上記化合物の含有量が少なすぎると、過充電時の安全性の確保が不十分になり、逆に多すぎると、低温特性やサイクル特性等の電池特性が低下する。
【0045】
本発明の電解液中のジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、電解液に溶解した状態であっても、あるいは化合物微粒子が分散した状態であっても良いが、より好ましいのは電解液に溶解した状態である。電解液にジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を溶解することにより過充電時に酸化反応が速やかに進行し安全性をより向上させることができる。
【0046】
本発明におけるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の具体例として、以下の式(2)〜(22)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
【化15】
【0058】
【化16】
【0059】
【化17】
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
【化20】
【0063】
【化21】
【0064】
【化22】
【0065】
【化23】
【0066】
【化24】
【0067】
【化25】
【0068】
なお、本発明の電池の製造時において、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物自体をそのまま電解液に含有させてもよいし、電気化学反応によってジアジンN,N’−ジオキサイド化合物に変換され得る化合物(前駆体化合物)を用いてもよい。
【0069】
[1-2]電解質および溶媒
本発明における電解液は、電極間の荷電担体輸送を担うものであり、一般的に室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導性を有していることが望まく、電解質塩を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。
【0070】
本発明の電解液に用いられる電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等のリチウム化合物などの従来公知の材料を用いることができる。
【0071】
本発明の電解液に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。なお、本発明では、これらの溶媒を一種単独または二種以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0072】
[2]活物質材料
本発明の電池の活物質としては、以下に挙げる従来公知の材料を用いることができる。
【0073】
正極の活物質としては、遷移金属酸化物、ジスルフィド化合物、導電性高分子等を用いることができる。遷移金属酸化物としては、LiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウムもしくはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、MnO2、LiCoO2、LiNiO2、LixV2O5(0<x<2)等が挙げられ、ジスルフィド化合物としては、ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等が挙げられ、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられる。これらの正極活物質は一種単独または二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0074】
一方、負極の活物質としては、グラファイト、非晶質カーボン、リチウム金属、リチウム合金、リチウムイオン吸蔵炭素、導電性高分子等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
なお、活物質の形状は特に限定されるものではなく、例えば、リチウム金属やリチウム合金では薄膜状のもの以外に、バルク状のもの、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等を使用することができる。
【0076】
[3]導電補助材およびイオン伝導補助材
本発明では、電極を形成する際に、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材やイオン伝導補助材を混合させてもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。また、イオン伝導補助材としては、ゲル電解質、固体電解質が挙げられる。
【0077】
[4]結着剤
本発明では、電極の各構成材料間の結びつきを強めるために、電極材料に結着剤を混合してもよい。このような結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂バインダーが挙げられる。
【0078】
[5]触媒
本発明では、過充電時における安全性をより高めるために、電解液中の添加剤の反応を促進させる触媒を電池内に含有してもよい。このような触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物、ならびに金属イオン錯体等が挙げられる。
【0079】
[6]集電体およびセパレータ
本発明では、負極集電体および正極集電体として、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス等の金属箔や金属平板、メッシュ状電極、炭素電極等を用いることができる。また、このような集電体に触媒効果を持たせたり、活物質と集電体とを化学結合させてもよい。また、負極集電体と正極集電体との電気的接触を防ぐ目的で、両者の間にプラスティック樹脂等からなる絶縁パッキンを配置した構成としてもよい。
【0080】
正極と負極との接触を防ぐために用いられるセパレータとしては、多孔質フィルムや不織布を用いることができる。
【0081】
[7]電池の形状
本発明の電池の形状および外観については特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。すなわち、このような電池形状としては、例えば、電極積層体または巻回体を、金属ケース、樹脂ケース、もしくはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムとからなるラミネートフィルム等によって封止したものが挙げられる。また、電池の外観としては、円筒型、角型、コイン型、シート型等が挙げられる。
【0082】
[8]電極の積層形態
本発明では、正極および負極の積層形態についても特に限定されるものではなく、任意の積層形態を採用することができ、多層積層体、集電体の両面に積層したものを組み合わせた形態、さらにこれらを巻回した形態とすることができる。
[9]電極および電池の製造方法
本発明では、電極および電池の製造方法について特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0083】
電極の製造方法としては、例えば、電極の構成要素に溶剤を加えスラリー状にして電極集電体に塗布する方法、電極の構成要素にバインダ樹脂を加えて圧力をかけて固める方法、電極の構成要素に熱をかけて焼き固める方法などが挙げられる。
【0084】
電池の製造方法としては、作製した電極をセパレータを介して対極と積層し、あるいはさらにこれを巻回し、得られたものを外装体で包み、電解液を注入して封止する方法等が挙げられる。
【0085】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により制限されるものではない。
【0086】
(実施例1)
1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、式(2)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を3質量%添加混合して電解液を調製した。
【0087】
LiCoO2と導電付与剤(アセチレンブラックと人造黒鉛)とポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに分散混練したものをアルミニウム箔上に塗布して正極とした。天然黒鉛とポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに分散混練したものを銅箔上に塗布して負極とした。セパレータにはポリプロピレン不織布を用いた。
【0088】
電極にタブをつけた後、これらの正極及び負極をセパレータを介して重ね合わせて巻回し、電極素子を作製した。この電極素子と前記電解液を、アルミラミネートフィルムからなる外装体に収納し封止して角型電池を作製した。
【0089】
(実施例2)
実施例1で用いた電解液および正極に代えて、以下の電解液および正極を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0090】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、式(3)で表されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を3質量%添加混合して得られた電解液、
正極:LiNiO2と導電付与剤(アセチレンブラックと人造黒鉛)とポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに分散混練したものをアルミニウム箔上に塗布して得られた電極。
【0091】
(実施例3)
実施例1で用いた電解液および正極に代えて、以下の電解液および正極を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0092】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、式(4)で表されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を3重量%添加混合して得られた電解液、
正極:LiNiO2と導電付与剤(アセチレンブラックと人造黒鉛)とポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに分散混練したものをアルミニウム箔上に塗布したもの。
【0093】
(実施例4、5)
実施例1で用いた電解液に代えて、それぞれ以下の電解液を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0094】
1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、実施例4では式(5)で表されるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物、実施例5では式(6)で表されるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物をそれぞれ2質量%添加混合して電解液を調製した。
【0095】
(実施例6,7)
実施例1で用いた電解液に代えて、それぞれ以下の電解液を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0096】
1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、実施例6では式(7)で表されるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物、実施例7では式(8)で表されるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物をそれぞれ4質量%添加混合して電解液を調製した。
【0097】
(比較例1)
実施例1で用いた電解液に代えて、以下の電解液を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0098】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))。
【0099】
(比較例2)
実施例1で用いた電解液および正極に代えて、以下の電解液および正極を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0100】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))、
正極:LiNiO2と導電付与剤(アセチレンブラックと人造黒鉛)とポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに分散混練したものをアルミニウム箔上に塗布したもの。
【0101】
(比較例3)
実施例1で用いた電解液に代えて、以下の電解液を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0102】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、ジフルオロアニソールを4質量%添加混合して調整したもの。
【0103】
(比較例4)
実施例1で用いた電解液に代えて、以下の電解液を用いた以外は実施例1と同様な電池を作製した。
【0104】
電解液:1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))に、ビフェニルを4質量%添加混合して調整したもの。
【0105】
[過充電試験]
実施例2および比較例2の電池は、120mA(0.2C)の定電流で4.1Vになるまで充電し、その後4.1Vの定電圧で2.5時間充電し、満充電状態とした。その他の電池は120mA(0.2C)の定電流で4.2Vになるまで充電し、その後4.2Vの定電圧で2.5時間充電し、満充電状態とした。
【0106】
これらの満充電状態とした電池に120mA(0.2C)の充電電流で、最大で7.5時間充電し、過充電を行った。その際、上限電圧は12Vとし、電池電圧が12Vを超えた場合は充電を中止した。過充電中の各電池の最高温度を測定した。
【0107】
[低温特性試験]
上述の二次電池を20℃で充電し、−20℃及び20℃で放電させた。放電電流値は600mA(1C)とした。20℃、600mA(1C)の放電条件における電池容量に対する−20℃、600mA(1C)の放電条件における電池容量の割合を求めた。
【0108】
[サイクル試験]
上述の二次電池を20℃で充放電させた。初回の放電容量に対する300サイクル後の放電容量の割合を求めた。
【0109】
[試験結果]
上述の試験結果を表1に示す。添加剤を含まない電解液を用いた比較例1及び2の電池は、過充電において発火もしくは破裂したのに対して、実施例1〜7の電池は過充電における最高温度が100℃以下であった。このことから、ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物が電解液に含有されると過充電時の安全性が高くなることが分かる。
【0110】
また実施例1〜7の電池の低温特性およびサイクル特性は、比較例1及び2の電池と同等の特性を示したのに対して、比較例3及び4の電池の低温特性およびサイクル特性は比較例1及び2の電池より劣っていた。このことから、ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物が電解液に含有されても、電池の低温特性やサイクル特性に悪影響を及ぼさないことが分かる。
【0111】
【表1】
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも正極、負極および電解液を構成要素とする電池において、当該電解液中に前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を含有させることにより、過充電時の安全性に優れ、かつ低温特性やサイクル特性等の電池特性にに優れた電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池の構成の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電極素子
2 正極タブ
3 負極タブ
4 ラミネートフィルム
Claims (4)
- 電解液の溶媒が有機溶媒であり、リチウム塩が溶解されているリチウム二次電池用の電解液であって、一般式(1)で示される、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
- 電解液の溶媒が有機溶媒であり、リチウム塩が溶解されているリチウム二次電池用の電解液であって、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用電解液。
- 前記ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物又はオリゴマー若しくはポリマー化合物は、少なくともその一部が電解液に溶解していることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電解液。
- 正極および負極、並びに請求項1、2又は3に記載のリチウム二次電池用電解液を有するリチウム二次電池。
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