JP4220707B2 - レーザ加工ヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工装置に使用されるレーザ加工ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ加工は、レーザ光の照射により被加工物を加工する技術である。レーザ加工の例としては、切断、溶接、表面処理などが挙げられる。
【0003】
レーザ加工を行う際、被加工物のレーザ光照射箇所(加工箇所)の温度を測定することがある。これは、レーザ出力の制御や加工不良の検出のためである。この温度は、加工箇所から輻射される光の強度に基づいて求めることができる。
【0004】
輻射光を利用して加工箇所の温度を測定するレーザ加工装置の一例は、特開平5−261576号公報に開示されている。この装置は、レーザ光を集光する投光レンズと、輻射光を集光する受光レンズを備えている。投光レンズは、被加工物に対して鉛直下方にレーザ光を照射する。受光レンズは、被加工物の表面から斜めに輻射する光を集光してイメージファイバに導く。この輻射光は、イメージファイバによってCCDへ伝送される。CCDの出力は、データ処理装置に送られる。データ処理装置は、CCDの出力を用いて加工箇所の温度を算出する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この装置では、加工箇所の高さが変わると、受光レンズの向きや位置を調節しなければならない。加工箇所の高さは、被加工物が3次元形状を有している場合、被加工物表面の凹凸に応じて変化する。受光レンズは、加工箇所から斜めに輻射された光を受光するため、加工箇所の高さが変化すると、集光された輻射光が向かう方向も変化する。この結果、輻射光をイメージファイバの入射端面に集光できなくなる。この場合、イメージファイバに入射するのは、加工箇所とは異なる箇所から発した光である。したがって、加工箇所とは別の箇所の温度が測定されてしまう。これを防ぐためには、受光レンズの向きや位置の調節が必要になる。しかし、この調節は非常に難しい。
【0006】
そこで、本発明は、被加工物に凹凸がある場合でも、受光レンズの調節をせずに加工箇所の温度を測定できるレーザ加工ヘッドを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のレーザ加工ヘッドは、(a)レーザ光を集光するための投光レンズと、(b)投光レンズによって集光されたレーザ光を反射して被加工物に照射するダイクロイックミラーと、(c)被加工物のレーザ光照射箇所から発する輻射光としての赤外光を集光する受光レンズと、(d)投光レンズ、ダイクロイックミラーおよび受光レンズを収容する筐体と、を備えている。ダイクロイックミラーは、受光レンズの光軸に沿ってレーザ光を被加工物に照射する。ダイクロイックミラーは、受光レンズの光軸の方向に放射される被加工物からの輻射光を透過させる。受光レンズは、ダイクロイックミラーを透過した輻射光を集光する。受光レンズによって集光された輻射光は、輻射光の所定波長を用いて被加工物のレーザ光照射箇所の温度を測定する放射温度計に導かれる。
【0008】
ダイクロイックミラーが、受光レンズの光軸に沿ってレーザ光を被加工物に照射するので、レーザ光照射箇所(すなわち、加工箇所)は、常に受光レンズの光軸上に位置する。加工箇所から発する輻射光のなかには、受光レンズの光軸方向に放射される光線が必ず含まれる。したがって、被加工物からの輻射光は、受光レンズによって必ず受光される。加工箇所にレーザ光が合焦していなくても、また、どのような角度でレーザ光を照射しても、輻射光を受光できる。受光レンズの光軸上の位置から輻射光を温度測定装置(例えば、放射温度計)に導けば、加工箇所の温度を求められる。加工箇所の表面に対するレーザ光の照射角度や加工箇所の高さが変化する場合でも輻射光を受光できるので、被加工物の凹凸に応じて受光レンズの位置や向きを調節する必要はない。
【0009】
第1態様のレーザ加工ヘッドは、筐体内にレーザ吸収体(例えば、ビームストップ)を備えていてもよい。このレーザ光吸収体は、ダイクロイックミラーを挟んで投光レンズと対向するように配置される。レーザ光の一部がダイクロイックミラーを透過しても、レーザ光吸収体に吸収される。したがって、筐体内でのレーザ光の乱反射が抑えられる。これにより、レーザ光と輻射光の混在が防止され、温度測定の精度が高まる。
【0012】
本発明のレーザ加工ヘッドでは、投光レンズの光軸とその受光レンズの光軸とが直交していてもよい。また、ダイクロイックミラーは、その鏡面が投光レンズの光軸と受光レンズの光軸との交点を含むように配置されていてもよい。ダイクロイックミラーの鏡面と投光レンズの光軸とがなす鋭角が45度で、かつダイクロイックミラーの鏡面と受光レンズの光軸とがなす鋭角が45度であってもよい。このような構成のレーザ加工ヘッドは、投光レンズ、受光レンズおよびダイクロイックミラーを位置決めしやすいので、製造が容易である。
【0013】
本発明のレーザ加工ヘッドは、受光レンズとダイクロイックミラーの間に、レーザ光を遮断するフィルタを更に備えていてもよい。この場合、レーザ光と輻射光の混在が防止され、温度測定の精度が高まる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態のレーザ加工装置100の構成を示す模式図である。レーザ加工装置100は、レーザ光を用いて被加工物10を加工する。レーザ加工装置100は、レーザ加工ヘッド110、レーザダイオード(LD)160、および2色式放射温度計170を備えている。
【0016】
レーザ加工ヘッド110は、加工用レーザ光および被加工物10からの輻射光の光路を適切に定める。レーザ加工ヘッド110は、LD160からのレーザ光を被加工物10に照射する。これにより、被加工物10が加工される。また、レーザ加工ヘッド110は、被加工物10のレーザ光照射箇所(加工箇所)から輻射される光を2色式放射温度計170に導く。これにより、加工箇所の温度が測定される。
【0017】
LD160は、加工用レーザ光の光源である。LD160の発信波長は、810nmである。LD160は、光ファイバ150を用いてレーザ加工ヘッド110に光学的に接続されている。LD160から出射したレーザ光は、光ファイバ150内を伝搬してレーザ加工ヘッド110内に入射する。
【0018】
2色式放射温度計170は、被加工物10の加工箇所の温度を測定する。2色式放射温度計170は、二つの測定中心波長を有している。第1に1800nmであり、第2に2000nmである。放射温度計170は、これら二つの波長における放射エネルギーの比率から温度を求める。放射温度計170は、光ファイバ152を用いてレーザ加工ヘッド110に光学的に接続されている。レーザ加工ヘッド110は、被加工物10の加工箇所からの輻射光を光ファイバ152に導く。この輻射光は、光ファイバ152内を伝搬して放射温度計170に入射する。
【0019】
レーザ加工ヘッド110は、主たる構成要素として、投光レンズ120、ダイクロイックミラー125、および受光レンズ130を有している。レーザ加工ヘッド110は、このほかにビームトラップ180も有している。これらは、筐体112内に収容されている。
【0020】
筐体112は、中心部112aと、そこから水平方向に延びる側方延長部112bおよび112c、ならびに鉛直方向に延びる上方延長部112dを有している。側方延長部112bおよび112cは、中心部112aから互いに反対方向に延びている。中心部112aは、ダイクロイックミラー125を収容している。中心部112aの下壁には、開口116が設けられている。この開口116からレーザ光が出射する。側方延長部112bは、投光レンズ120を収容している。側方延長部112bの先端には、レーザ光入射口114が設けられている。レーザ光入射口114は、投光レンズ120の光軸190上に位置する。レーザ光入射口114には、光ファイバ150の端部が挿入される。このファイバ端部の光軸は、投光レンズ120の光軸190とほぼ一致する。側方延長部112cは、ビームトラップ180を収容している。上方延長部112dは、受光レンズ130を収容している。上方延長部112dの先端には、輻射光出射口118が設けられている。輻射光出射口118は、受光レンズ130の光軸192上に位置する。輻射光出射口118には、光ファイバ152の端部が挿入される。このファイバ端部の光軸は、受光レンズ130の光軸192とほぼ一致する。
【0021】
投光レンズ120は、LD160からのレーザ光を集光してダイクロイックミラー125に導く。LD160から出射したレーザ光は、光ファイバ150によって筐体112内に伝送される。レーザ光は、レーザ光入射口114で光ファイバ150から出射し、投光レンズ120に向かう。投光レンズ120は、光軸190を中心としてレーザ光を集光する。集光されたレーザ光は、ダイクロイックミラー125に向かう。
【0022】
投光レンズ120は、二枚の単レンズ121、122から構成されている。レンズ121、122は、例えば、双方とも平凸レンズであってもよい。レンズ121、122の表面には、それぞれ反射防止膜(ARコート)が付されている。このARコートは、LD160の発振波長の光のみを透過対象とする。96%以上という高い透過率が実現可能である。
【0023】
ダイクロイックミラー125は、投光レンズ120によって集光されたレーザ光を反射する。ダイクロイックミラー125は、LD160の発振波長の光を99%以上の反射率で反射する。反射されたレーザ光は、開口116から出射する。これにより、被加工物10にレーザ光を照射できる。
【0024】
被加工物10のレーザ光照射箇所(加工箇所)からは、赤外光が輻射される。輻射光の一部は、開口116を通過して、レーザ加工ヘッド110に入射する。ダイクロイックミラー125は、この輻射光を透過させる。
【0025】
受光レンズ130は、ダイクロイックミラー125を透過した輻射光を集光する。ダイクロイックミラー125は、被加工物10の表面で反射されたレーザ光を透過させない。したがって、受光レンズ130は、被加工物10からの輻射光のみを受光できる。受光レンズ130によって集光された輻射光は、輻射光出射口118で光ファイバ152に入射する。
【0026】
受光レンズ130は、二つの複合レンズ140および145から構成されている。複合レンズ140は、コリメート用のアクロマティクレンズである。これは、二枚の単レンズ141、142から構成されている。複合レンズ145は、フォーカス用のアクロマティクレンズである。これは、三枚の単レンズ146、147、148から構成されている。アクロマティクレンズ140、145は、双方とも、2色式放射温度計170の二つの測定中心波長に関して色収差が補正されている。これにより、これらの波長の輻射光を効率良く集光できる。
【0027】
集光された輻射光は、光ファイバ152によって2色式放射温度計170まで伝送される。放射温度計170は、この輻射光を用いて、被加工物10の加工箇所の温度を測定する。
【0028】
ビームトラップ180は、ダイクロイックミラー125を挟んで投光レンズ120と対向している。ビームトラップ180は、LD160からのレーザ光を吸収するレーザ光吸収体である。投光レンズ120によって集光されたレーザ光のなかには、ダイクロイックミラー125を透過するものもわずかに存在する。ダイクロイックミラー125を透過したレーザ光は、ビームトラップ180によって吸収され、減衰する。これにより、筐体112内でのレーザ光の乱反射が抑えられる。
【0029】
投光レンズ120の光軸190は、受光レンズ130の光軸192と直交している。したがって、レーザ加工ヘッド110の向きを調節して投光レンズの光軸190を水平方向に向けると、受光レンズの光軸192は鉛直方向を向く。
【0030】
ダイクロイックミラー125は、その鏡面が光軸190と光軸192との交点を含むように配置されている。鏡面の向きは、鏡面で反射されたレーザ光が受光レンズ130から遠ざかるように、すなわち開口116に向かって進むように定められている。また、この鏡面は、光軸190および光軸192とそれぞれ45度の角度で交差する。
【0031】
ダイクロイックミラー125は、投光レンズ120の光軸190上を進行するレーザ光を、受光レンズ130の光軸192上に反射する。このため、レーザ光は、投光レンズ120により光軸190を中心として集光され、その後、ダイクロイックミラー125で反射されると、受光レンズ130の光軸192を中心として集光される。つまり、レーザ加工ヘッド110は、レーザ光を受光レンズ130の光軸192に沿って集光しながら被加工物10に照射する。したがって、光軸192は、常に被加工物10の加工箇所を通る。
【0032】
レーザ加工ヘッド110は、以下の五つの利点を有する。
【0033】
第1に、レーザ加工ヘッド110は、加工箇所の表面に対するレーザ光の照射角度や加工箇所の高さが変化する場合でも、受光レンズ130の向きや位置を調節することなく加工箇所の温度を測定できる。ダイクロイックミラー125は、受光レンズ130の光軸192に沿ってレーザ光を照射するから、加工箇所は常に光軸192上に位置する。加工箇所から発する輻射光のなかには、光軸192の方向に放射される光線が必ず含まれるので、被加工物10からの輻射光は、受光レンズ130によって必ず受光される。したがって、加工箇所にレーザ光が合焦していなくても、また、どのような角度でレーザ光を照射しても、輻射光は常に光軸192に沿って受光レンズ130に集光される。この結果、光軸192上に位置する輻射光出射口118から輻射光を効率良く取り出し、この輻射光を用いて温度を測定できる。したがって、被加工物10に凹凸がある場合でも、受光レンズ130の向きや位置を調節する必要はない。
【0034】
第2に、レーザ加工ヘッド110は、レーザ光のパワーロスを最小限に抑えられる。これは、投光レンズ120と受光レンズ130を別個に設置したからである。一つのレンズ系が投光レンズと受光レンズを兼ねる構成ではないので、投光レンズ120を構成する単レンズの枚数は少なくて済む。このため、レンズ面での反射によるパワーロスが抑えられる。また、レーザ光の光路上に受光レンズ130が配置されていないので、レンズ透過によるパワーロスも抑えられる。
【0035】
第3に、レーザ加工ヘッド110は、筐体112内で発生する熱が少ない。これは、レーザ光のパワーロスが少ないからである。熱の発生が少ないことから、レーザ加工ヘッド110の信頼性が高まる。具体的には、被加工物10の温度測定の精度やレーザ加工ヘッド110の寿命が高まる。また、熱の発生が少ないことから、冷却機構も不要になる。
【0036】
第4に、レーザ加工ヘッド110は、放射温度計170の校正をする必要なく、レーザ光のスポット径を自由に変更できる。これは、投光レンズ120と受光レンズ130が別個に設けられており、投光光学系の変更が受光光学系に影響を与えないからである。レーザ光のスポット径は、投光レンズ120の倍率を変えると変更できる。
【0037】
第5に、レーザ加工ヘッド110は、加工箇所の温度を正確に測定できる。これは、ビームトラップ180によって、筐体112の内面で乱反射するレーザ光がほとんどなくなるからである。乱反射するレーザ光が少ないので、輻射光に混ざってレーザ光が放射温度計に入射するおそれも少ない。また、被加工物10で反射されたレーザ光は、ダイクロイックミラー125によって遮断される。この点からもレーザ光が放射温度計に入射するおそれが少ない。したがって、正確な温度測定を実行できる。
【0038】
(参考実施形態)
本発明の参考実施形態を説明する。図2は、本実施形態のレーザ加工装置200の構成を示す模式図である。レーザ加工装置200は、レーザ加工ヘッド210、レーザダイオード(LD)260、および2色式放射温度計270を備えている。
【0039】
レーザ加工ヘッド210は、加工用レーザ光および被加工物10からの輻射光の光路を適切に定める。LD260は、加工用レーザ光の光源である。LD260の発信波長は、810nmである。LD260は、光ファイバ250を用いてレーザ加工ヘッド210に光学的に接続されている。2色式放射温度計270は、被加工物10の加工箇所の温度を測定する。2色式放射温度計270は、二つの測定中心波長を有している。第1に1800nmであり、第2に2000nmである。放射温度計270は、これら二つの波長における放射エネルギーの比率から温度を求める。放射温度計270は、光ファイバ252を用いてレーザ加工ヘッド210に光学的に接続されている。
【0040】
レーザ加工ヘッド210は、投光レンズ220、ダイクロイックミラー225、および受光レンズ230を有している。これらは、筐体212内に収容されている。
【0041】
筐体212は、中心部212aと、そこから延びる上方延長部212bおよび側方延長部212cを有している。中心部212aは、ダイクロイックミラー225を収容している。中心部212aの下壁には、開口216が設けられている。この開口216からレーザ光が出射する。上方延長部212bは、投光レンズ220を収容している。上方延長部212bの先端には、レーザ光入射口214が設けられている。レーザ光入射口214は、投光レンズ220の光軸290上に位置する。レーザ光入射口214には、光ファイバ250の端部が挿入される。このファイバ端部の光軸は、投光レンズ220の光軸290とほぼ一致する。側方延長部212cは、受光レンズ230を収容している。側方延長部212cの先端には、輻射光出射口218が設けられている。輻射光出射口218は、受光レンズ230の光軸292上に位置する。輻射光出射口218には、光ファイバ252の端部が挿入される。このファイバ端部の光軸は、受光レンズ230の光軸292とほぼ一致する。
【0042】
投光レンズ220は、LD260からのレーザ光を集光してダイクロイックミラー225に導く。LD260から出射したレーザ光は、光ファイバ250によって筐体212内に伝送される。レーザ光は、レーザ光入射口214で光ファイバ250から出射し、投光レンズ220に向かう。投光レンズ220は、光軸290を中心としてレーザ光を集光する。集光されたレーザ光は、ダイクロイックミラー225に向かう。
【0043】
投光レンズ220は、二枚の単レンズ221、222から構成されている。レンズ221、222は、例えば、双方とも平凸レンズであってもよい。レンズ221、222の表面には、それぞれARコートが付されている。このARコートは、LD260の発振波長の光のみを透過対象とする。投光レンズ220は、加工用レーザ光に対して96%以上の透過率を有している。
【0044】
ダイクロイックミラー225は、投光レンズ220によって集光されたレーザ光を透過させる。ダイクロイックミラー225を透過したレーザ光は、開口216から出射する。これにより、被加工物10にレーザ光を照射できる。
【0045】
被加工物10のレーザ光照射箇所(加工箇所)からは、赤外光が輻射される。輻射光の一部は、開口216を通過して、レーザ加工ヘッド210に入射する。ダイクロイックミラー225は、この輻射光のうち、2色式放射温度計270の二つの測定中心波長の光を反射する。
【0046】
受光レンズ230は、ダイクロイックミラー225で反射された輻射光を集光する。ダイクロイックミラー225は、被加工物10の表面で反射されたレーザ光を反射しない。したがって、受光レンズ230は、被加工物10からの輻射光のみを受光できる。受光レンズ130によって集光された輻射光は、輻射光出射口218で光ファイバ252に入射する。
【0047】
受光レンズ230は、二つの複合レンズ240および245から構成されている。複合レンズ240は、コリメート用のアクロマティクレンズである。これは、二枚の単レンズ241、242から構成されている。複合レンズ245は、フォーカス用のアクロマティクレンズである。これは、三枚の単レンズ246、247、248から構成されている。アクロマティクレンズ240、245は、双方とも、2色式放射温度計270の二つの測定中心波長に関して色収差が補正されている。これにより、これらの波長の輻射光を効率良く集光できる。
【0048】
集光された輻射光は、光ファイバ252によって2色式放射温度計270まで伝送される。放射温度計270は、この輻射光を用いて、被加工物10の加工箇所の温度を測定する。
【0049】
投光レンズ220の光軸290は、受光レンズ230の光軸292と直交している。したがって、レーザ加工ヘッド210の向きを調節して投光レンズの光軸290を鉛直方向に向けると、受光レンズの光軸292は水平方向を向く。この場合、レーザ光は鉛直方向に照射される。このとき、投光レンズの光軸290は被加工物10の加工箇所を通る。加工箇所からの輻射光は、光軸290を中心として発散し、ダイクロイックミラー225に向かう。
【0050】
ダイクロイックミラー225は、その鏡面が光軸290と光軸292との交点を含むように配置されている。鏡面の向きは、鏡面で反射された輻射光が受光レンズ230に向かうように定められている。また、この鏡面は、光軸290および光軸292とそれぞれ45度の角度で交差する。
【0051】
ダイクロイックミラー225は、投光レンズ220の光軸上290を進行する輻射光を、受光レンズ230の光軸292上に反射する。このため、輻射光は、投光レンズ220の光軸290を中心として発散しながらダイクロイックミラー225に向かい、その後、ダイクロイックミラー225で反射されると、受光レンズ230の光軸292を中心として発散しながら受光レンズ230に向かう。したがって、受光レンズ230は、その光軸292を中心として輻射光を集光する。
【0052】
上記の構成により、レーザ加工ヘッド210は、以下の六つの利点を有する。第1〜第5の利点は、第1実施形態のレーザ加工ヘッド110と共通する。第6の利点は、レーザ加工ヘッド210においてのみ得られる。
【0053】
第1に、レーザ加工ヘッド210は、加工箇所の表面に対するレーザ光の照射角度や加工箇所の高さが変化する場合でも、受光レンズ230の向きや位置を調節することなく加工箇所の温度を測定できる。ダイクロイックミラー225は、レーザ光と同軸に放射された輻射光を受光レンズ230の光軸292上に導く。加工箇所から発する輻射光のなかには、レーザ光と同軸に放射される光線が必ず含まれるので、被加工物10からの輻射光は、受光レンズ230によって必ず受光される。したがって、加工箇所にレーザ光が合焦していなくても、また、どのような角度でレーザ光を照射しても、輻射光は常に受光レンズの光軸292に沿って集光される。この結果、光軸292上に位置する輻射光出射口118から輻射光を効率良く取り出し、この輻射光を用いて温度を測定できる。したがって、被加工物に凹凸がある場合でも、受光レンズ230の向きや位置を調節する必要はない。
【0054】
第2に、レーザ加工ヘッド210は、レーザ光のパワーロスを最小限に抑えられる。これは、投光レンズ220と受光レンズ230を別個に用意したからである。この点は、第1実施形態と共通である。
【0055】
第3に、レーザ加工ヘッド210は、筐体212内で発生する熱が少ない。これは、レーザ光のパワーロスが少ないからである。この点は、第1実施形態と共通である。
【0056】
第4に、レーザ加工ヘッド210は、放射温度計270の校正をする必要なく、レーザ光のスポット径を自由に変更できる。これは、投光レンズ220と受光レンズ230が別個に設けられており、投光光学系の変更が受光光学系に影響を与えないからである。この点は、第1実施形態と共通である。
【0057】
第5に、レーザ加工ヘッド210は、加工箇所の温度を正確に測定できる。これは、ダイクロイックミラー225がレーザ光を反射しないからである。レーザ光の光路上に筐体212の内面は存在しないので、筐体212の内面で乱反射するレーザ光はほとんどなくなる。このため、輻射光に混ざってレーザ光が放射温度計に入射するおそれも少ない。また、被加工物10で反射されたレーザ光は、ダイクロイックミラー125で反射されないので、受光レンズ230に向かわない。この点からもレーザ光が放射温度計に入射するおそれが少ない。したがって、正確な温度測定を実行できる。
【0058】
第6に、レーザ加工ヘッド210は、レーザ光の乱反射を抑えるためにビームトラップ180を要しない。これも、ダイクロイックミラー225がレーザ光を反射しないからである。
【0059】
(比較例)
上記実施形態のレーザ加工装置100、200と比較するためのレーザ加工装置300を説明する。図3は、このレーザ加工装置300の構成を示す模式図である。
【0060】
レーザ加工装置300は、レーザ加工ヘッド310、レーザダイオード(LD)360、および2色式放射温度計370を備えている。LD360は、光ファイバ350を用いてレーザ加工ヘッド310に接続されている。放射温度計370は、光ファイバ352を用いてレーザ加工ヘッド310に接続されている。
【0061】
レーザ加工ヘッド310は、集光レンズ320およびダイクロイックミラー325を有している。これらは、筐体312内に収容されている。筐体312の下壁には、開口316が設けられている。この開口316からレーザ光が出射する。筐体312の側壁には、レーザ光入射口314が設けられている。レーザ光入射口314には、光ファイバ350の端部が挿入される。筐体312の上壁には、輻射光出射口318が設けられている。輻射光出射口318は、集光レンズ320の光軸390上に位置する。輻射光出射口318には、光ファイバ252の端部が挿入される。このファイバ端部の光軸は、受光レンズ320の光軸390とほぼ一致する。
【0062】
レーザ加工ヘッド310は、集光レンズ320がレーザ光の投光レンズと輻射光の受光レンズを兼ねる点で、投光レンズと受光レンズを独立に備えるレーザ加工ヘッド110、210と異なっている。
【0063】
集光レンズ320は、フォーカス用のアクロマティクレンズ330と、コリメート用のアクロマティクレンズ335を備えている。フォーカス用アクロマティクレンズ330は、二枚の単レンズ331、332から構成されている。コリメート用アクロマティクレンズ335は、三枚の単レンズ336、337、338から構成されている。これらのアクロマティクレンズ330、335は、双方とも、2色式放射温度計370の二つの測定中心波長に関して色収差が補正されている。
【0064】
LD360からのレーザ光は、光ファイバ350を通ってレーザ加工ヘッド310に入射する。このレーザ光は、レーザ光入射口314で光ファイバ350から出射し、ダイクロイックミラー325に向かう。ダイクロイックミラー325は、99%以上の反射率でレーザ光を反射する。反射されたレーザ光は、集光レンズ320によって光軸390を中心として集光される。光軸390を鉛直方向に向けると、レーザ光は鉛直下方に照射される。
【0065】
集光レンズ320は、レーザ光を集光するだけでなく、被加工物10からの輻射光を光軸390を中心として集光する。集光された輻射光は、ダイクロイックミラー325に送られる。ダイクロイックミラー325は、輻射光を透過させる。この後、輻射光は、光ファイバ352に入射する。光ファイバ352は、輻射光を放射温度計370まで伝送する。放射温度計370は、輻射光に基づいて被加工物10の加工箇所の温度を求める。
【0066】
レーザ加工ヘッド310では、加工箇所の表面に対するレーザ光の照射角度や加工箇所の高さが変化する場合でも、集光レンズ320の向きや位置を調節する必要はない。この点は、上記実施形態のレーザ加工ヘッド110、210と同じである。集光レンズ320の光軸は常に加工箇所を通過するので、輻射光は常に光軸390に沿って集光される。この結果、光軸390上に位置する輻射光出射口318から輻射光を効率良く取り出し、この輻射光を用いて温度を測定できる。したがって、被加工物に凹凸がある場合でも、集光レンズ320の向きや位置を調節する必要はない。
【0067】
しかし、レーザ加工ヘッド310は、上記実施形態のレーザ加工ヘッド110、210と比較して以下の五つの点で劣っている。
【0068】
第1に、レーザ光のパワーロスが大きい。これは、集光レンズ320が、レーザ光の投光レンズと輻射光の受光レンズを兼ねているからである。集光レンズ320を受光レンズとして考えると、温度測定の精度を高めるためには、色収差の少ないレンズ構成が必要となる。このため、集光レンズ320を構成する単レンズの枚数が多くなる。したがって、集光レンズ320のレンズ面で反射されるレーザ光も増加する。これが、レーザ光のパワーロスを高める。
【0069】
第2に、筐体312内で発生する熱が大きい。これは、集光レンズ320で失われたレーザ光のパワーの一部が熱に変わるからである。この熱は、ダイクロイックミラー325の特性を変化させる。また、この熱により発生する赤外線が放射温度計に入射すると、ノイズが発生する。これらの現象は、温度測定の精度を低下させる。この熱は、集光レンズ320の寿命低下をまねくおそれもある。
【0070】
第3に、集光レンズ320のレンズ面で反射されたレーザ光が放射温度計370に入射してノイズを発生させる可能性が高い。これは、集光レンズ320が多数枚のレンズから構成されているからである。レンズ面での反射光は、筐体の内面で乱反射され、光ファイバ352に入射して放射温度計370まで伝送されることがある。集光レンズ320は、投光レンズと受光レンズを兼ねているため、レンズ面の数が多く、それだけレーザ光の乱反射を促進しやすい。
【0071】
第4に、レーザ光のスポット径を変更すると、放射温度計370を校正する必要が生じる。これは、集光レンズ320が、レーザ光の投光レンズと輻射光の受光レンズを兼ねているからである。レーザ光のスポット径は、集光レンズ320の倍率を変えれば変更できる。しかし、集光レンズ320の倍率を変えれば、輻射光の受光光学系も変化してしまう。このため、放射温度計370の校正が必要になる。
【0072】
第5に、集光レンズ320の製造が難しい。これは、波長の異なるレーザ光と輻射光の双方に対して透過率の高いレンズを集光レンズ320として製造しなければならないからである。
【0073】
これらの欠点は、レーザ光の投光レンズと輻射光の受光レンズを単一のレンズ系320で兼ねていることに起因する。上記実施形態のレーザ加工ヘッド110、210は、レーザ光の投光レンズと輻射光の受光レンズを別個に備えることでこれらの欠点を解消している。
【0074】
ここまで、本発明をその実施形態に基づいて具体的に説明してきた。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。
【0075】
例えば、放射温度計にレーザ光が入射する可能性をさらに低減するために、ダイクロイックミラーと受光レンズとの間に遮断フィルタを設けてもよい。こうすると、より高い精度で加工箇所の温度を測定できる。現在の連続波の大出力レーザは、ほとんどが赤外線である。このため、加工箇所の温度を測定するために輻射赤外光を検出する場合、加工用レーザ光はノイズの発生原因となる。実際、温度測定のために検出される光量は、通常、1μW以下であるのに対し、加工用レーザ光のパワーは1W以上である。このため、加工用レーザ光の反射光であっても、それが放射温度計に入射すると、充分に大きなノイズとなる。したがって、加工用レーザ光を遮断することは重要である。
【0076】
加工用レーザ光のような強い光は、できるだけ放射温度計から遠い位置で遮断することが好ましい。このため、レーザ加工ヘッド内で遮断すべきである。上記実施形態のレーザ加工ヘッド110、210では、ダイクロイックミラーと受光レンズとの間に遮断フィルタを設けられる。これは、投光レンズと受光レンズとが光軸を異にして別個に設けられているからである。
【0077】
図4は、遮断フィルタ410、420を設置できるようにしたレーザ加工ヘッド110を示している。遮断フィルタ410、420は、筐体112の上方延長部112d内に配置される。遮断フィルタ410、420は、上方延長部112dに設けられたスリットに着脱自在に挿入される。これにより、遮断フィルタ410、420は、ダイクロイックミラー125と受光レンズ130との間に配置される。遮断フィルタ410、420は、加工用レーザ光を遮断する。これにより、光ファイバ152および放射温度計170へのレーザ光の入射を防ぐことができる。したがって、より高精度の温度測定が可能である。
【0078】
同様に、レーザ加工ヘッド210でも、筐体の側方延長部212c内に遮断フィルタを配置できる。この遮断フィルタは、ダイクロイックミラー225と受光レンズ230との間に配置され、加工用レーザ光を遮断する。
【0079】
一方、図3のレーザ加工ヘッド310では、遮断フィルタを配置する空間がダイクロイックミラー325の上部にしかない。この位置には、集光レンズ320の表面や筐体312の内面で乱反射したレーザ光が多く存在する。このため、効果的にレーザ光を遮断することができない。より効果的な遮断のためには、より手前の光路上でレーザ光を遮断し、レーザ光の乱反射を抑えるべきである。
【0080】
【発明の効果】
本発明のレーザ加工ヘッドは、加工箇所の表面に対するレーザ光の照射角度や加工箇所の高さが変化する場合でも、被加工物からの輻射光を受光レンズの光軸に沿って集光できるように構成されている。したがって、被加工物に凹凸がある場合でも、受光レンズの向きや位置を調節せずに加工箇所の温度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態のレーザ加工ヘッドおよびレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図2】 参考実施形態のレーザ加工ヘッドおよびレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図3】 比較例のレーザ加工ヘッドおよびレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【図4】 レーザ加工ヘッドへの遮断フィルタの取付けを示す図である。
【符号の説明】
10…被加工物、100、200…レーザ加工装置、110、210…レーザ加工ヘッド、120、220…投光レンズ、125、225…ダイクロイックミラー、130、230…受光レンズ、150、152、250、252…光ファイバ、160、260…レーザダイオード、170、270…2色式放射温度計、180…ビームスプリッタ。
Claims (4)
- レーザ光を集光するための投光レンズと、
前記投光レンズによって集光されたレーザ光を反射して被加工物に照射するダイクロイックミラーと、
前記被加工物のレーザ光照射箇所から発する輻射光としての赤外光を集光する受光レンズと、
前記投光レンズ、ダイクロイックミラーおよび受光レンズを収容する筐体と、
を備えるレーザ加工ヘッドであって、
前記ダイクロイックミラーは、前記受光レンズの光軸に沿って前記レーザ光を前記被加工物に照射し、
前記ダイクロイックミラーは、前記受光レンズの光軸の方向に放射される前記輻射光を透過させ、
前記受光レンズは、前記ダイクロイックミラーを透過した前記輻射光を集光し、
前記受光レンズによって集光された前記輻射光は、前記輻射光の所定波長を用いて前記被加工物の前記レーザ光照射箇所の温度を測定する放射温度計に導かれる、
レーザ加工ヘッド。 - 前記投光レンズの光軸と前記受光レンズの光軸とが直交し、
前記ダイクロイックミラーは、その鏡面が前記投光レンズの光軸と前記受光レンズの光
軸との交点を含むように配置され、
前記ダイクロイックミラーの鏡面と前記投光レンズの光軸とがなす鋭角は45度であり、
前記ダイクロイックミラーの鏡面と前記受光レンズの光軸とがなす鋭角は45度である、
請求項1記載のレーザ加工ヘッド。 - 前記筐体内には、前記ダイクロイックミラーを挟んで前記投光レンズと対向するレーザ光吸収体が配置されている、請求項1記載のレーザ加工ヘッド。
- 前記受光レンズと前記ダイクロイックミラーの間に、前記レーザ光を
遮断するフィルタを更に備える請求項1記載のレーザ加工ヘッド。
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