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JP4217517B2 - 織編物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、編物に関するものであり、さらに詳しくは、捲縮糸の持つふくらみ感、ストレッチ性、軽量性と、非捲縮糸の持つ表面タッチに加え、双方の相乗効果による繊細な表面感を兼ね備えた織編物関するものである。
【0002】
【従来の技術】
織編物にふくらみ感を付与する方法は種々提案されている。たとえば、混繊糸を構成する糸条の収縮差を利用した異収縮混繊糸を用いる方法がある。異収縮混繊糸を用いた織編物は、染色加工時の受熱により糸長差を生じ、収縮率の低い糸条が織編物の表面に浮き出る形となり、ふくらみ感を付与することができる。しかしながら、この方法では、十分な糸長差を得るためには収縮の大なる糸条の収縮率を大きくする必要があり、このため風合いが硬くなるという欠点を有している。
【0003】
この欠点を解消する方法として、特開平7−316939号公報には、芯糸に熱処理により収縮する糸条を、鞘糸に自発伸長する糸条を用いた混繊糸が提案され、一応の効果を奏している。しかしながら、自発伸長を示す糸条は、伸度が高く、強度が低いことから抗ピリングや抗スナッギング性に劣るという欠点を有しており、また織物においてはストレッチ性に乏しいものであった。
【0004】
一方、古くから織編物にふくらみ感とストレッチ性を付与する方法として、仮撚加工糸を使用する方法があるが、この方法では、得られる織編物の表面タッチが硬く、合成繊維特有のがさついた風合いとなる欠点を有している。この欠点を解消するために、特開昭59−163433号公報には先撚り仮撚加工糸が提案されているが、先撚を施した糸条は、取り扱いが難しく、またコストが高くなるという欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況を鑑みて行われたものであり、捲縮糸の持つふくらみ感、ストレッチ性、軽量性と、非捲縮糸の持つ表面タッチに加えて、双方の相乗効果による繊細な表面感を兼ね備えた織編物提供することを技術的な課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次の構成を有するものである。
(イ)少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸Aと少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント非捲縮糸Bとからなり下記式(1)、(2)を満足し、かつ、交絡度が60〜100個/m、非捲縮糸Bの割合が30質量%以下であるリエステル複合糸を製編織、染色して得られる織編物であって、非捲縮糸Bは捲縮糸Aに比べて糸長が1〜5%大きく、かつ、非捲縮糸Bが織編物の表面に浮き出た構造であることを特徴とする織編物。
ただし、
a:捲縮糸Aの糸長に対する非捲縮糸Bの糸長の割合
x:捲縮糸Aの熱水収縮率(%)
y:非捲縮糸Bの熱水収縮率(%)
(ロ)非捲縮糸Bの強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とする上記(イ)記載の織編物
【0007】
【発明の実施形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るポリエステル複合糸は、第1の要件として捲縮糸Aと非捲縮糸Bの熱処理後の糸長の関係を示す前記(1)式を満足することが必要である。すなわち、〔(100 −y)a−(100 −x)〕/(100 −x)の値は0.01〜0.05であることが必要であり、この値が0.01未満になると、織編物にしたとき非捲縮糸Bが表面に出る割合が低く、捲縮糸特有の硬い表面タッチになり、加えて視覚的にも単調な表面感となる。一方、前記の数値が0.05を超えると、非捲縮糸Bが織編物表面に浮き出しすぎるため、抗スナッギング性が著しく低下するので、好ましくは0.03以下とすることが必要である。
【0008】
第2の要件は、前記(2)式のように捲縮糸Aの糸長に対する非捲縮糸Bの糸長の割合aが0.90〜1.02の範囲であることが必要である。aが0.90未満になると、後述するように非捲縮糸Bの割合が30質量%以下の場合、整経等その後の加工工程で受ける張力により非捲縮糸Bが伸ばされやすく、単糸切れが生じやすくなる。また、aが1.02を超えると、低張力下での複合糸の形態は、捲縮糸Aの顕在捲縮により非捲縮糸Bが交絡間に浮き出した提灯状を呈するものとなり、製織時に経糸毛羽の原因になるなど、その後の加工工程での取り扱いが困難となる。
【0009】
第3の要件として、本発明の複合糸は、交絡度が60〜100個/mの範囲で絡合されていることが必要である。交絡度が60個/m未満では、染色加工等での受熱後に発現する捲縮糸Aと非捲縮糸Bとの糸長差により、非捲縮糸Bが織編物表面に浮き出すぎる形となり、抗スナッギング性が悪くなる。また、100個/mを超えると、絡合性が強固になりすぎてフィラメント間の空隙が減少し、目的とするふくらみ感と表面タッチが得られない。
【0010】
すなわち、第1と第3の要件を同時に満足することで、捲縮糸Aの持つクリンプの凹凸と非捲縮糸Bの浮き出る割合がバランスよく織編物表面に現れるので、所望する風合い、表面タッチと、良好な抗スナッギング性が得られるのである。しかし、このとき非捲縮糸Bの割合が30質量%を超えると、織編物表面での捲縮糸Aの割合が少なくなり、繊細な表面感が得られなくなる。そのため、本発明の複合糸を構成する非捲縮糸Bの割合は、30質量%以下でなくてはならない。
【0011】
また、本発明における複合糸を構成する非捲縮糸Bの強度は、耐摩耗性を考慮すると3.0cN/dtex以上であることが好ましい。非捲縮糸Bの強度が3.0cN/dtex未満になるとピリングが発生しやすくなり、さらに強度が低下すると、発生したピリングは脱落しやすいので抗ピリング性としての欠点にはならないが、ピリングが脱落した部分は、捲縮糸Aのみが表面に出るため、繊細な表面感が損なわれやすい。
【0012】
以上、詳細に説明したように、本発明におけるポリエステル複合糸を製編織し、染色等の熱処理を施すと、少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸Aと少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント非捲縮糸Bからなり、非捲縮糸Bの割合が30%以下の複合糸で構成した織編物であり、非捲縮糸Bは捲縮糸Aに比べて糸長が1〜5%大きく、かつ、非捲縮糸Bが織編物の表面に浮き出た構造の織編物となる。
この織編物は、捲縮糸の持つふくらみ感、ストレッチ性、軽量性と、非捲縮糸の持つ表面タッチに加えて、双方の相乗効果による繊細な表面感を兼ね備えたものである。
【0013】
次に、本発明におけるポリエステル複合糸の製造方法の一例を図1により説明する。図1において、供給糸Y1は、第1給糸ローラ1と第1引き取りローラ4との間で、第1ヒータ2と仮撚ディスク3とで延伸仮撚加工が施されて、捲縮糸Aとなる。
一方、供給糸Y2は、第2給糸ローラ5と第2引き取りローラ7との間で第2ヒータ6により弛緩熱処理が施されて熱収縮率の低い非捲縮糸Bとなる。
【0014】
次いで、捲縮糸Aと非捲縮糸Bは空気交絡装置8で交絡を施されて目的とするポリエステル複合糸となり、第3引き取りローラ9を介し捲き取り機10により引き取られる。このとき、捲縮糸Aと非捲縮糸Bの空気交絡装置への給糸量は、所望の糸長差が得られるように調整する。
【0015】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各特性の測定と評価は、次の方法で行った。
(1) 捲縮糸Aの糸長に対する非捲縮糸Bの糸長の割合と非捲縮糸Bの構成割合
適当な長さの複合糸を取り出し、糸条自体が伸びないように注意して単糸1本1本に分解する。捲縮のある単糸群と捲縮のない単糸群に分類し、各々の単糸群の質量を測定する。次に、単糸を捲縮やくせがなくなる程度に伸ばして長さを測定し、次式により算出する。
a=I´/I
非捲縮糸Bの構成割合(質量%)={M´/(M+M´)}×100
ただし、aは捲縮糸Aの糸長に対する非捲縮糸Bの糸長の割合、Iは捲縮のある単糸群の平均長(mm)、I´は捲縮のない単糸群の平均長(mm)、Mは捲縮のある単糸群の質量(g)、M´は捲縮のない単糸群の質量(g)を表す。
(2) 熱水収縮率
JIS L―1013 8.18.1 A法に準じて測定を行い、次式で熱水収縮率を算出した。
熱水収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100
たたし、L1は熱水処理前の試料長(mm)、L2は熱水処理、風乾後の試料長(mm)を表す。
(3) 交絡度
JIS L―1013 8.15に準じて測定を行い、次式で交絡度を算出した。
交絡度(個/m)=1000/L
ただし、Lはフックが降下した距離(mm)を表す。
(4) 強度
JIS L―1013 8.5.1 に準じて測定を行い、次式で強度を算出した。
強度(cN/dtex)=SD/F
ただし、SDは切断時の応力(cN)、Fは試料の正量繊度(dtex)を表す。
(5) 抗ピリング性と抗スナッギング性
抗ピリング性は、JIS L―1058 7.4及び8に準じて、抗スナッギング性は、JIS L―1076 6.1及び7に準じて試験と判定を行った。
【0016】
実施例1、2
複屈折率が40×10-3のカチオン染料可染性ポリエステル高配向未延伸糸250dtex/48fを捲縮糸側供給糸とし、実施例1では紡糸速度3000m/分のポリエチレンテレフタレートスピンドロー糸50dtex/24fを、実施例2では紡糸速度3000m/分のポリエチレンテレフタレートスピンドロー糸60dtex/144fを非捲縮糸側供給糸として用い、図1のような装置を用い、表1に示す条件で加工を行った。
得られた加工糸の特性を表2に示す。
【0017】
比較例1
捲縮糸側供給糸は実施例1,2と同じものを使用し、非捲縮糸側供給糸として紡糸速度3000m/分のポリエチレンテレフタレートスピンドロー糸110dtex/48fを使用して、表1に示す条件で加工を行った。
得られた加工糸の特性を表2に示す。
【0018】
比較例2
実施例1と同じ供給糸を使用し、表1に示す条件で加工を行った。得られた加工糸の特性を表2に示す。
得られた加工糸の特性を表2に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
次に、実施例1,2及び比較例1〜2で得られたポリエステル複合糸にそれぞれS方向に150T/Mの追撚を施した糸条を使用し、経糸密度103本/2.54cm、緯糸密度68本/2.54cmの経二重織物を製織し、次いで常法により染色加工を行い、織物製品を得た。
得られた織物製品の特性を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
表3から明らかなように、実施例1、2のポリエステル複合糸から得られた織物は、優れた表面感に加え、良好な抗ピリング性と抗スナッギング性を有するものであった。
これに対し、比較例1のポリエステル複合糸から得られた織物は、抗ピリングと抗スナッギング性は問題のないレベルであるが、非捲縮糸の構成割合が大きいため、表面感の乏しいものであった。また、比較例2のポリエステル複合糸から得られた織物は、捲縮糸に対する非捲縮糸の糸長割合が大きいため、非捲縮糸が織物表面に浮いてしまい、抗スナッギング性が著しく悪いものであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明におけるポリエステル複合糸を製編織すれば、捲縮糸の持つふくらみ感、ストレッチ性、軽量性と、非捲縮糸の持つ表面タッチに加えて、双方の相乗効果による繊細な表面感を兼ね備えた織編物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル複合糸の製法例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 第1給糸ローラ
2 第1ヒータ
3 仮撚ディスク
4 第1引き取りローラ
5 第2給糸ローラ
6 第2ヒータ
7 第2引き取りローラ
8 空気交絡装置
9 第3引き取りローラ
10 捲き取り機
Y1、Y2 供給糸

Claims (2)

  1. 少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸Aと少なくとも1本のポリエステルマルチフィラメント非捲縮糸Bとからなり下記式(1)、(2)を満足し、かつ、交絡度が60〜100個/m、非捲縮糸Bの割合が30質量%以下であるリエステル複合糸を製編織、染色して得られる織編物であって、非捲縮糸Bは捲縮糸Aに比べて糸長が1〜5%大きく、かつ、非捲縮糸Bが織編物の表面に浮き出た構造であることを特徴とする織編物。
    ただし、
    a:捲縮糸Aの糸長に対する非捲縮糸Bの糸長の割合
    x:捲縮糸Aの熱水収縮率(%)
    y:非捲縮糸Bの熱水収縮率(%)
  2. 非捲縮糸Bの強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1記載の織編物
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