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JP4209022B2 - イソシアノ酢酸アルキルエステル類の製造法 - Google Patents

イソシアノ酢酸アルキルエステル類の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、有機合成品などの原料として広く使われているイソシアノ酢酸アルキルエステル類の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−ホルミルグリシンアルキルエステルを脱水してイソシアノ酢酸アルキルエステル類を製造する方法、例えばN−ホルミルグリシンエチルエステルを脱水してイソシアノ酢酸エチルエステルを製造する方法としては、オキシ塩化リンを用いる方法(オーガニック シンセシス(Organic Synthesis)Col Vol.VI.,620)及びホスゲンを用いる方法(アンゲワント ヘミー(Angew.Chem.)77 p492(1965))が考えられるが、有毒で窒息性のあるホスゲンを用いる方法は、工業化に際し危険の多い方法であることから、オキシ塩化リンを用いる方法が実用的である。
【0003】
しかし、従来の合成法では高収率を得るために低温条件下(0℃以下)短時間で反応を行う必要があり、量産時にその条件を満たすことは困難である。すなわち、前記のオーガニック シンセシスCol Vol.VI.,620の方法(以下、O.S.法という)はトリエチルアミンとN−ホルミルグリシンエチルエステルの混合ジクロロメタン溶液にオキシ塩化リンを0℃を保ちながら15〜20分で滴下する方法であるが、この方法では発熱が激しい。従って、量産時には、オキシ塩化リンを短時間で滴下することは反応缶の冷却効率の問題から不可能である。その結果オキシ塩化リンを2〜3時間かけて滴下することとなり、その際のエチルイソシアノアセテートの収率は大幅に低下する(約60%)。これらのことから、反応温度および時間に影響されない量産可能な合成法が望まれる。
又、上記の方法では反応液をアルカリ水で処理して目的物を取得する工程においても、低温かつ短時間での操作が必要という難点がある。
【0004】
本発明は、反応温度および反応時間に影響されない、工業的規模においても高収率の生成物をえることが可能なイソシアノ酢酸アルキルエチル類の製造法を提供しようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来のO.S.法とは逆に、トリエチルアミンとN−ホルミルグリシンアルキルエステルの溶液をオキシ塩化リン溶液に添加することにより、−20〜70℃、30分〜6時間という幅広い条件下での反応ができ、かつアルカリ水処理においてアルカリ水に該反応液を添加することで、0〜50℃、1分〜6時間という穏やかな条件下で後処理ができ、従来法よりも高収率でイソシアノ酢酸アルキルエステルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、N−ホルミルグリシンアルキルエステルをトリエチルアミンの存在下にオキシ塩化リンで脱水してイソシアノ酢酸アルキルエステル類を製造するにあたり、該オキシ塩化リン溶液中に該トリエチルアミン及び該N−ホルミルグリシンアルキルエステルの溶液を添加して反応を行い、次いで該反応液をアルカリ水溶液に添加した後、イソシアノ酢酸アルキルエステル類を取得することを特徴とするイソシアノ酢酸アルキルエステル類の製造法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、まずオキシ塩化リン(以下POCl3という)溶液に、トリエチルアミン(以下、TEAという)とN−ホルミルグリシルアルキルエステル(以下、NFEという)の溶液を添加(滴下)することが特徴である。POCl3溶液に、TEAとNFEは混合溶液として添加(滴下)しても、又NFE溶液及びTEA溶液を別々に添加(滴下)してもよい。
本発明の方法で使用されるNFEのアルキルエステル種としては、メチル、エチル、n−プロピル、iSO−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が例示される。
【0008】
NFE、脱水剤であるPOCl3およびTEAの使用モル比はNFE/POCl3/TEA=1.0/0.9/1.8〜1.0/1.5/4.0であり、好ましくは1.0/1.0/2.0〜1.0/1.3/3.0である。
【0009】
本発明の方法において添加(滴下)溶液及び添加(滴下)される溶液の双方に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、n−ヘキサン、ジクロロメタン、四塩化炭素または1,2−ジクロロエタン(以下、EDCという)などが使用可能であるが、取り扱い易さ及び良好な収率をもたらすという点から、EDCがとくに好ましい。
溶媒の使用モル比は、NFE1モルに対してPOCl3用溶媒が3.0〜30.0モル、好ましくは6.0〜15.0、TEA及びNFE用溶媒が2.0〜20.0、好ましくは4.0〜10.0である。
【0010】
本発明の方法は、溶媒に溶解したNFEおよびTEAの溶液を(混合溶液または単独溶液を同時に)、溶媒に溶解したPOCl3の溶液に、滴下時間30分〜6時間、好適には30分〜3時間で滴下させながら、反応温度−20〜70℃、好適には0〜50℃にて反応させることにより実施される。その結果、O.S.法よりも高収率でエチルイソシアノアセテートが得られる。そのなかでも最も好ましい条件は、20℃前後で1.5時間の滴下である。
【0011】
滴下終了後、15〜25℃で1時間程度熟成を行う。
本発明のもう一つの特徴はこの反応液を炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液に滴下する点である。
これにより脱水反応が完結する。
アルカリ水溶液を反応液に添加すると、添加時間の僅かな長短や処理温度の僅かな高低で目的物の収率が大きく変動し、著しい時は実用にならない程に収率低下がおこり易いので、工業的規模での実施に当たって極めて厳密な工程管理が必要となる欠点がでる。
この際、用いられるアルカリの使用量はNFE1モルに対して1.5〜3.0モル、好ましくは1.7〜2.0モルである。その後、加水して系内の結晶を溶かし分液し、分液した水層をEDCで洗浄したのち、EDC層をひとまとめにして水洗後に濃縮する。
【0012】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はもとよりこれらに限定されるものではない。
【0013】
実施例1
1,2−ジクロロエタン500gにオキシ塩化リン73.61g(0.48モル)を溶解し、該溶液を反応缶に入れ20℃に保った。
次に1,2−ジクロロエタン250gにトリエチルアミン99.75g(0.98モル)とN−ホルミルグリシンエチルエステル60.30g(0.40モル)を加えた混合溶液を上記反応缶に1.5時間かけて滴下した。この間反応温度は20〜22℃に保った。
滴下終了後、20℃前後に保ったまま1時間攪拌した。この反応液を、水320gに無水炭酸ナトリウム80g(0.75モル)を溶解した水溶液中に、30℃、1時間で滴下した。アルカリ処理後1時間攪拌し、その後水700mlを加え、反応液中の結晶を完全に溶解させた。水層と1,2−ジクロロエタン層の2層に分離し、それらを分液した後、水層を1,2−ジクロロエタン330gで洗浄した。1,2−ジクロロエタン層をひとまとめにし、水130gで洗浄し、分液後1,2−ジクロロエタン層をエバポレーターで濃縮した。
【0014】
濃縮後分析を行った結果、37.67g(純度79.7%)のイソシアノ酢酸エチルエステルがえられ、収率は85.8%であった。
分析値を以下に示す。
【0015】
IR(cm-1
1780(カルボニル基)
2200(イソニトリル基)
1H−NMR(溶媒;重水素化クロロホルム、基準;テトラメチルシラン)
δ=1.3(t、3H) −CH2 CH 3
δ=4.25(s、2H) CN−CH 2
δ=4.28(q、2H) −CH 2CH3
【0016】
実施例2〜8
実施例1において反応条件を0〜50℃の間で種々変更して実験を行った。結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004209022
【0018】
実施例9
実施例1におけるN−ホルミルグリシンエチルエステルに変えてN−ホルミルグリシンt−ブチルエステルを使用して同様の実験を行った。(但し反応温度は10℃とした)
イソシアノ酢酸t−ブチルエステルが収率88.4%でえられた。
分析値を以下に示す。
【0019】
IR(cm-1
1780(カルボニル基)
2200(イソニトリル基)
1H−NMR(溶媒;重水素化クロロホルム、基準;テトラメチルシラン)
δ=1.5(s、9H) t−Bu
δ=4.1(s、2H) CN−CH 2
【0020】
比較例1(オーガニック シンセシス Col Vol.VI.,620の方法)
N−ホルミルグリシンエチルエステル65.5g(0.5モル)と、トリエチルアミン125.0g(1.234モル)及び500mlのジクロロメタンを反応缶に仕込んだ。
その反応缶を氷塩浴で0〜2℃に冷却した。オキシ塩化リン76.5g(0.498モル)を15〜20分で反応器内を0℃に保ちながら滴下した。
滴下後0℃のまま1時間熟成した。水400mlに無水炭酸ナトリウム100gを溶解した溶液を前記反応缶に滴下した。
その際、反応器を水浴につけ25〜30℃に保った。2層系の反応液となるがそれを30分攪拌し、その後水層が1リットルになるまで水を加えた。水槽を分液したのち、ジクロロメタン250mlで2回抽出し、ジクロロメタン層をひとまとめにし、飽和食塩水で洗浄し、無水炭酸カルシウムで脱水した。その後減圧濃縮し、44g(収率78%)のイソシアノ酢酸エチルエステルをえた。
【0021】
比較例2
溶媒をジクロロメタンのかわりに1,2−ジクロロエタンとしたほかは比較例1と同様の実験を行った結果、イソシアノ酢酸エチルエステルの収率は84.9%であり、1,2−ジクロロエタンを使用することで従来法より収率が向上することがわかった。
【0022】
比較例3
オキシ塩化リンの滴下時間を3時間(工業的な実施における常識的な滴下時間)としたほかは比較例2と同様の実験を行った。その結果、イソシアノ酢酸エチルエステルの収率は62.0%と比較例2よりも低下し、従来の滴下方法では、オキシ塩化リンは短時間で仕込む必要があることがわかった。
【0023】
比較例4
反応温度を5℃、オキシ塩化リンの滴下時間を20分として比較例2と同様の実験を行った。その結果、イソシアノ酢酸エチルエステルの収率は76.9%と比較例2よりも低下し、従来の滴下方法では、反応温度は0℃に保つ必要があることがわかった。
【0024】
比較例5
実施例1においてアルカリ水溶液を反応液に滴下した以外は同じ実験を行った。
イソシアノ酢酸エチルエステルの収率は0.5%に低下した。
【0025】
これらの例から、本発明の方法では反応温度、滴下時間の影響をほとんど受けず、しかも従来法よりも高収率であることがわかる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、反応時間および反応温度の影響を受けることなく、工業的規模において高収率にイソシアノ酢酸エステル類が得られる。

Claims (1)

  1. N−ホルミルグリシンアルキルエステルをトリエチルアミンの存在下にオキシ塩化リンで脱水してイソシアノ酢酸アルキルエステル類を製造するにあたり、該オキシ塩化リン溶液中に該トリエチルアミンおよび該N−ホルミルグリシンアルキルエステルを添加して反応を行い、次いで該反応液をアルカリ水溶液に添加した後、イソシアノ酢酸アルキルエステル類を取得することを特徴とするイソシアノ酢酸アルキルエステル類の製造法。
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