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JP4293806B2 - 抗菌性付与用ガラス組成物、及びそれを用いた抗菌性高分子複合材料 - Google Patents

抗菌性付与用ガラス組成物、及びそれを用いた抗菌性高分子複合材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、抗菌性付与用ガラス組成物、及びそれを用いた抗菌性高分子複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、無機系抗菌剤、例えば銀を担持させたリン酸ジルコニウム、銀ゼオライト、溶解性ガラス等を使用した抗菌樹脂製品が水周り製品等として多く普及している。
【0003】
特に、溶解性ガラスは、制御された溶解速度を持つように、ガラスの物理的、化学的特性を考慮して組成を調整したガラスの総称であり、抗菌性を有する銀、銅、亜鉛化合物等を含有させたものは、数時間から数年の任意の期間にわたって定められた一定速度で、前記銀、銅、亜鉛イオンを溶出させることができるものとして知られている。そして、溶出した銀、銅、亜鉛イオンは、細菌や微生物の細胞壁へ吸着したり、細胞内に濃縮したりして、いわゆるオリゴジナミー作用によって細菌や微生物の成育を阻害し、抗菌作用を発揮するものである。この溶解性ガラスは、抗菌剤を使用するあらゆる分野で利用されており、合成樹脂製品や繊維製品等に複合させることも行われている。複合方法は、さまざまに開発されており、成形前の材料から練り込んで製品化したり、製品に後加工で抗菌性の溶解性ガラスを付着させたりすることも行われている。
【0004】
このような溶解性ガラスとしては、SiO、Bを主成分とするホウケイ酸系とPを主成分とするリン酸系とが知られている。特にリン酸系溶解性ガラスでは、ガラス中で銀、銅、亜鉛イオンが非常に安定で、多量に含有させることが可能であることから、広く用いられている。例えば、特許文献1〜4には、銀イオン(Agイオン)を含有させたリン酸系溶解性ガラスを用いた抗菌剤が開示されている。特に、特許文献4では、抗菌性付与用ガラス組成物を高分子材料と複合させた抗菌性高分子複合材料が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平07−300339号公報
【特許文献2】
特開平08−012512号公報
【特許文献3】
特開平08−048539号公報
【特許文献4】
特開2001−247336号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような抗菌剤を高分子材料、又は無機フィラーを含む高分子材料(例えば、人工大理石等に使われる材料)等に添加して得られる成形品は、理由は定かではないが、抗菌効果が得られにくいという問題点があった。そのため、多量の抗菌成分の添加が必要とされるが、添加量を多くすると、今度はコスト面における問題が生ずるだけでなく、無機系抗菌剤に含有される銀等による変色が起こりやすくなり、製品の外観を損ねてしまうという問題もあった。
【0007】
そこで本発明の課題は、少量の抗菌成分の添加でも、高い抗菌性能、及び抗菌性能の十分な持続性を備える抗菌性付与用ガラス組成物、及びそれを用いた抗菌性高分子複合材料を提供することにある。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の抗菌性付与用ガラス組成物では、Pを30〜60mol%、KO、NaO、LiOから選択される一種又は二種以上のものを1〜15mol%、MgO、CaO、ZnOから選択される一種又は二種以上のものを35〜55mol%、La、Yから選択される一種又は二種以上のものを0.01〜3mol%含有するガラス組成物に、AgOが0.1〜5.0重量%含有され、かつAl を含まないことを特徴とする。
【0009】
上記構成のガラス組成物は、一般的に溶解性ガラスであって、このような溶解性ガラスを含有する抗菌性付与用ガラス組成物からは、ガラス組成物(溶解性ガラス)中に含まれるAgイオン成分が任意の期間にわたって定められた一定速度で溶出され、Agイオン成分により、樹脂等の抗菌性付与対象材料に対して高い抗菌性を付与することが可能となる。
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、高分子材料、又は無機フィラーを含む高分子材料(例えば、人工大理石等に使われる材料)等に、前述した従来のガラス組成物を添加した場合に、抗菌効果が得られない原因が、一般にガラスの耐水性を大きく上げる成分として用いられるAlにあることを突き止めた。その理由については未だ定かではないが、おそらくAlが溶解性ガラス中のAgイオンを捕捉してしまうため、Agイオンの溶出が妨げられているものと考えられる。
【0011】
そこで、本発明の上記抗菌性付与用ガラス組成物においては、Alの代わりに、耐水性を向上させるための成分として、La、Yから選択される1種又は2種以上のものを含有させている。これにより、溶解性ガラスの耐水性を従来のものと同様程度に維持しつつ、少量の抗菌成分の添加でも、高い抗菌性能、及び抗菌性能の十分な持続性を備える抗菌性付与用ガラス組成物を得ることが可能となった。La、Yの溶解性ガラス中の割合は、0.01〜3mol%で、0.01mol%未満ではガラスの耐水性が十分に得られない場合があり、3mol%を超えると耐水性が上がりすぎ少量での効果が得られなくなる場合がありコスト高になる。好ましくは、0.1〜2.5mol%、さらに好ましくは、0.5〜2.0mol%とするのがよい。
【0012】
次に、上記抗菌性付与用ガラス組成物に含有される他の成分の臨界的意味を以下に説明する。
【0013】
はガラス組成物(溶解性ガラス)においてガラス形成の主成分となる。30mol%未満ではガラス化が困難になる場合がある。60mol%を越えると、ガラス組成物の耐水性が著しく低下したり、当該抗菌性付与用ガラス組成物を樹脂等の抗菌性付与対象材料に微粉砕化して複合化させる場合に、微粉砕化させる工程において吸湿性が生じ、2次凝集により微粉砕が不可能となる場合がある。好ましくは35〜55mol%、さらに好ましくは40〜51mol%とするのがよい。
【0014】
O、NaO、LiOから選択される1種又は2種以上のものは、ガラス組成物(溶解性ガラス)のガラス化を容易にする成分である。1mol%未満ではガラス化が容易にいかない場合がある。15mol%を超えると銀によりガラスが着色する場合があり、またガラス組成物(溶解性ガラス)の水に対する溶解速度が速くなり、抗菌性持続効果が低下する場合がある。好ましくは1〜12mol%、さらに好ましくは2〜8mol%とするのがよい。
【0015】
MgO、CaO、ZnOから選択される1種又は2種以上のものは、ガラス組成物(溶解性ガラス)の耐水性を向上させるための成分である。35mol%未満ではガラス組成物(溶解性ガラス)の耐水性が十分に得られなくなり、該溶解性ガラスの溶解速度が速過ぎて、抗菌性持続効果が低下する場合がある。55mol%を超えるとガラス化が困難になり、また溶解性ガラスの水に対する溶解速度が遅くなり、当該抗菌性付与用ガラス組成物の少量添加での抗菌効果が見込めなくなる場合がある。好ましくは40〜55mol%、さらに好ましくは40〜49mol%とするのがよい。
【0016】
AgOは抗菌作用を示す主たる成分である。0.1重量%未満では当該抗菌性付与用ガラス組成物の抗菌性付与対象材料への少量添加での抗菌効果が得られなくなる場合がある。5.0重量%を超えると抗菌性付与用材料(複合化された結果としての抗菌性製品)に着色が生じる場合がある。好ましくは1.0〜5.0重量%、さらに好ましくは1.3〜4.5重量%とするのがよい。なお、抗菌性を示す成分としては、幅広い抗菌スペクトルを有する銀イオンがより好ましいが、銅イオンや亜鉛イオンであっても構わないので、銅化合物や亜鉛化合物等を含有させてもよい。
【0017】
次に、本発明の抗菌性付与用高分子複合材料では、高分子材料に上記記載の抗菌性付与用ガラス組成物を複合することを特徴とする。これにより高分子複合材料に上記のような優れた抗菌性を付与することができる。高分子材料には、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる合成樹脂材料を好適に用いることができる。合成樹脂材料は加工性に優れているので成形品が得られ易い。さらに、成形品の得られ易さの観点からするとポリプロピレン、ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0018】
また、本発明の抗菌性付与用高分子複合材料では、無機フィラーを含む高分子材料に上記記載の抗菌性付与用ガラス組成物を複合させたことを特徴とする。これにより高分子複合材料に上記のような優れた抗菌性を付与することができる。高分子材料には、人工大理石用の材料として用いられるアクリル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。また、高分子材料中に添加される無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、カオリン、セピオライト、モンモリオナイト、トルマリン、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、マイカ、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、酸化亜鉛、ハイドロタルサイトなどがある。
【0019】
さらに、抗菌性付与用高分子複合材料からの銀及び/又は亜鉛の溶出量が以下の範囲であるときが好ましいことが判明した。抗菌成分を添加した高分子材料の表面に1ccの蒸留水を滴下し、4×4cmに整えられたポリエチレン製フィルムを被せ、35℃のインキュベーターで24時間静置させた後、ICPプラズマ発光分光分析法で液中の銀の量を定量分析した(JIS Z 2801:2000に基づく抗菌性試験を行った)ときに、0.5〜10ng/cm/dayとなる範囲である。さらには1〜6ng/cm/dayの範囲であることが好ましく、特には1〜4ng/cm/dayの範囲であることが好ましい。上記の範囲の限定理由としては、下限を下回ると抗菌性が得られない場合があり、また上限を超えると変色などの外観不良が生じる場合があるからである。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験について記述する。
まず、P、KO、NaO、LiO、MgO、CaO、ZnO、La、Yを表1及び2に示す各組成比(mol%)となるようにそれぞれ混合し、さらに、これにAgOを表1及び2に示す各重量比(重量%)にて混合し、これを電気炉にて1250〜1350℃で1時間溶融した。その後、電気炉から取り出し、カーボン板上に流しだして放冷させた。その後、ロールクラッシャー、ボールミルを用いて平均粒径が約10μmとなるように微粉砕化し、本発明による抗菌性付与用ガラス組成物用サンプルA〜F(表1)、及び比較例用サンプルG〜J(表2)を得た。
【0021】
なお、比較例用サンプルG〜Jは、サンプルを構成する成分が本発明の請求項1に記載の請求範囲に該当しないものであるが、各々についてそれを詳細に説明する。比較例用サンプルGはLa+Y成分が請求範囲に該当しないものである。比較例用サンプルHはAgO成分が請求範囲に該当しないものである。比較例用サンプルIはMgO+CaO+ZnO成分が請求範囲に該当しないものである。また、比較例用サンプルJについては、P、及びMgO+CaO成分が請求範囲内になく、ガラス化しなかったためこの時点で除外した。
【0022】
【表1】
Figure 0004293806
【0023】
【表2】
Figure 0004293806
【0024】
その後、表1及び2に示す各サンプルA〜Iとポリプロピレン樹脂とを表3に示す配合量にて混合し、その後、射出成形機にて抗菌試験用サンプルを作製し、表3に示す実施例1〜6、及び比較例1〜3を得た。また、表1及び2に示す各サンプルA〜Iと無機フィラーとして炭酸カルシウムを添加した不飽和ポリエステル樹脂を表4に示す配合量にて混合し、その後、抗菌試験用サンプルを作製し、表4に示す実施例7〜12、及び比較例4〜6を得た。なお、このときのサンプル形状は、長さ100mm、幅50mm、厚さ2mmとした。
【0025】
以上の実施例及び比較例について、抗菌性の評価を行った。結果を表3及び4に示す。抗菌性の評価方法としての抗菌性試験はJIS Z 2801:2000に基づいて行った。具体的には、抗菌成分を添加した高分子材料の表面に1ccの蒸留水を滴下し、4×4cmに整えられたポリエチレン製フィルムを被せ、35℃のインキュベーターで24時間静置させた後、ICPプラズマ発光分光分析法で液中の銀の量を定量分析した。表3及び4中の抗菌性の評価結果はJISZ 2801:2000に基づいて、抗菌活性値が2.0以上のとき○で表し、2.0未満のとき×で表している。
【0026】
抗菌試験の前処理としての耐久処理は抗菌製品技術協議会の定める抗菌加工製品の抗菌力持続性試験法2001年度版に基づいて行い、ポリプロピレンの試験サンプル(実施例1〜6及び比較例1〜3)については耐水ランク2(50℃の温水に16時間浸漬)の処理を、不飽和ポリエステルの試験サンプル(実施例7〜12及び比較例4〜6)については耐水ランク3(90℃の温水に16時間浸漬)の処理を耐久性処理として行った。
【0027】
【表3】
Figure 0004293806
【0028】
【表4】
Figure 0004293806
【0029】
以上に示された評価結果によると、実施例1〜12は、初期の抗菌性、耐久処理後の抗菌性のいずれにおいても良好な結果を示した。それに対して比較例1〜6は、いずれかの試験において劣な結果を示した。以下、各々の比較例の評価結果について説明を行う。比較例1及び4については、比較例用サンプルGにガラス組成としてLa、Yを含んでいなかったため十分な耐久性が得られなかったものと思われる。比較例2及び5については、比較例用サンプルHにガラス組成としてAgOの量が多いためと思われるが変色してしまった。比較例3及び6については、比較例用サンプルIにガラス組成としてMgOの量が少ないため十分な耐久性が得られなかったものと思われる。このように、本発明の請求範囲に該当する実施例は、それに該当しない比較例と比べて、優れた耐光変色、初期の抗菌性、及び耐久処理後の抗菌性を有することが分かった。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明の抗菌性付与用ガラス組成物、及びそれを用いた抗菌性高分子複合材料は、ガラスを構成する成分を所定の含有比としたため、少量の抗菌成分の添加でも、高い抗菌性能、及び抗菌性能の十分な持続性を備える。

Claims (6)

  1. を30〜60mol%、KO、NaO、LiOから選択される一種又は二種以上のものを1〜15mol%、MgO、CaO、ZnOから選択される一種又は二種以上のものを35〜55mol%、La、Yから選択される一種又は二種以上のものを0.01〜3mol%含有するガラス組成物に、AgOが0.1〜5.0重量%含有され、かつAl を含まないことを特徴とする抗菌性付与用ガラス組成物。
  2. 高分子材料に請求項1記載の抗菌性付与用ガラス組成物を複合させた抗菌性付与用高分子複合材料。
  3. 前記高分子材料は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる合成樹脂材料である請求項2記載の抗菌性付与用高分子複合材料。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABSのいずれかである請求項3に記載の抗菌性付与用高分子複合材料。
  5. 無機フィラーを含む高分子材料に請求項1記載の抗菌性付与用ガラス組成物を複合させた抗菌性付与用高分子複合材料。
  6. 前記無機フィラーを含む高分子材料における該高分子材料は、アクリル樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂である請求項5記載の抗菌性付与用高分子複合材料。
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