JP4137410B2 - 走査型露光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバグレーティングを作製する走査型露光装置に係るものであり、特に高速繰り返し走査によってアポダイゼーションを実現する走査型露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバグレーティングは、光ファイバコアの長手方向に一定の周期的な屈折率変化を与えることによって得られるものであり、屈折率変化の周期に応じて特定波長の光のみを反射するデバイスである。この光ファイバグレーティングの作製方法としては、いわゆる二光束干渉法などの他に、位相マスク法(例えば米国特許5367588号)が良く知られている。この位相マスク法による光ファイバグレーティング作製の骨子は、例えば特開平11−326669号公報などに詳述されている。
【0003】
位相マスクを用いた光ファイバグレーティングの作製方法では、ゲルマニウムを添加した石英ガラスへ紫外光を照射すると、この照射量に応じて屈折率が上昇する現象を利用している。この材料をコア主成分とする光ファイバの上面に複数スリットを一定間隔で形成した位相マスクを設置し、位相マスク上面に対して垂直に紫外光を照射する。すると位相マスク下面では、直進する0次光が抑制され、±1次回折光による干渉縞が形成されて、この干渉縞によって紫外光の強度が周期的に変化する結果、周期的な屈折率変化を光ファイバのコア上に形成できる。
【0004】
作製方法として重要な点は、図14に示すように、光ファイバの長手方向に対して実効的屈折率を台形形状に変化させることである。両サイドの屈折率変調を抑制するこの手法は、アポダイゼーション(Apodization,アポダイズ法)と呼ばれるものであり、光ファイバクレーティングのフィルタ特性におけるサイドモード(反射スペクトルメインローブ両側のサイドローブ)を抑制できるとともに、反射帯域やフラットトップ部におけるリップルを抑制できることが知られている。
【0005】
光ファイバグレーティングの作製時にアポダイゼーションを行う方法として、次の(A)〜(C)が挙げられる。
【0006】
(A) 光ファイバおよび位相マスクの移動
走査位置を固定し、照射強度を変化させた紫外光に対して光ファイバと位相マスクとを光ファイバ長手方向に移動する。
(B) 紫外光の移動
その照射強度を変化させながら紫外光を光ファイバに沿って移動する。
(C) 遮蔽板の移動
紫外光または位相マスク直前に置いた遮蔽板を移動する。
【0007】
しかしながら、(A)の場合には、光ファイバと位相マスクとを移動させるので、光ファイバおよび位相マスクが駆動機構の振動による相対的な位置ズレの影響を受けやすいという欠点がある。また、位置ズレを避けるために光ファイバ・位相マスクを比較的低速で移動させる必要があり、光ファイバや位相マスク上でレーザ光低速照射にともなう局所加熱による膨張が発生し、この膨張のために書き込む回折格子の幅に誤差が生じてしまうという問題もある。さらに、使用するレーザ光の長期的な強度変動(ドリフト)の影響を受けやすいことも問題になっている。
【0008】
(C)は特開平9−304638号公報に開示されている。この遮蔽板の移動は、(A)の光ファイバ・位相マスクを移動する場合と比較すると、反射鏡が軽量なので高速走査が期待できる。また、位相マスクと光ファイバとが固定されているため駆動機構の振動による位置ズレが発生しにくいという利点も持っている。しかしながら、レーザ光の光束径以下に走査幅が制限されること、開口による回折の影響を受けること、単位面積当たりの照射パワーが減少するため照射時間を長く取る必要があること、などの欠点がある。
【0009】
(B)の紫外光を移動させてアポダイゼーションを行なう場合には、例えば特開平11−326669号公報に開示されているように、反射鏡を走査方向に移動させ、かつ移動速度をアポダイズ領域で増大するように速度変調して、照射強度分布を小さくしている。あるいは、反射鏡を一定速度で移動させつつレーザ光強度を変化させて、狙った目標照射強度分布を実現させる方法もある。
【0010】
これらの方法は、(A)の光ファイバ・位相マスクの移動と比べて、反射鏡が軽量であるため高速走査が期待できる。また、光ファイバと位相マスクとが固定されているため、駆動機構の振動による位置ズレも発生しにくい。さらに、光束径を広げる必要がないので、(C)の遮蔽板の移動と比較して照射時間を短縮することができる。
【0011】
しかしながら、走査速度変調については、一例として速度分布が定性的に記載されているだけであり、走査速度の算出方法の詳細については特開平11−326669号公報には明記されていない。また、レーザ光の強度ドリフトや低速照射による局所過熱の影響を回避するためには、1回の走査を高速に完了することのみならず、高速走査をさらに繰り返すことが望まれるが、この従来例は、高速繰り返し走査に関しては次の点から不適当である。
【0012】
すなわち、速度変調を加える例では、走査位置の両端では高速の移動速度が、走査位置の中央では低速の移動速度がそれぞれ必要であり、その上、両端で移動方向を反転させる必要があるため、速度変化が無限大となってしまうからである。また、一定速度で走査する場合にも、走査位置の両端で走査方向を反転させる必要があり、やはり同様に走査速度の変化が無限大となってしまう。
【0013】
実現できる走査速度の変化は有限であり、特に反転時は速度がゼロとなるため、繰り返し走査を行う場合は、走査位置両端で本来ゼロとなるべき照射強度に誤差が生じる問題があった。以上、この従来例では、走査位置両端での速度変化についての考慮がなされていなかった。
【0014】
別の繰返し走査の従来例として、光源を固定し、光ファイバと位相マスクとを往復運動させて繰り返し露光を行なう手法が、特開平10−319255号公報に開示されている。しかしながらこれは光ファイバ・位相マスクを移動させる手法であり、前述したように、移動で生じる振動に対して弱く、また走査速度を低く(1Hz以下)する必要があるため局所加熱の問題が生じてしまう。
【0015】
一方、パルスレーザ光を用いて走査する場合には、走査周期とパルス周期とに整数倍の関係があると、照射強度分布内に周期的な強度分布が発生する。この周期的な強度分布は走査を繰り返した場合でも残存してしまうものであり、狙った照射強度分布を正確に実現する際の障害となる。同文献にはパルスレーザ使用時のパルス周期について、100Hzよりも高いレートとの記載があるだけで、この周期性についての考慮はなされていなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来の走査型露光装置は以上のように構成されているので、レーザ光の高速走査を繰り返すことができず、レーザの強度ドリフトの影響と、低速照射によって発生してしまう局所加熱の影響とを最小化することができないという課題があった。
【0017】
また、従来の走査型露光装置は、アポダイゼーションなどの目標照射強度分布を実現するための走査制御が明らかにされていないという課題があった。
【0018】
さらに、従来の走査型露光装置は、パルスレーザ光によって照射を行なう場合に発生する周期的な強度分布を抑制することができないという課題があった。
【0019】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、レーザ光の高速走査を繰り返すことができ、レーザの強度ドリフトの影響と、低速照射によって発生してしまう局所加熱の影響とを最小化することが可能な走査型露光装置を構成することを目的とする。
【0020】
また、この発明は、アポダイゼーションなどの目標照射強度分布を実現するための走査制御を明らかにした走査型露光装置を構成することを目的とする。
【0021】
さらに、この発明は、パルスレーザ光によって照射を行なう場合に発生する周期的な強度分布を抑制することが可能な走査型露光装置を構成することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る走査型露光装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源が出射したレーザ光を所定の偏向角で偏向して出射する偏向手段と、偏向角を補償して偏向手段が出射したレーザ光を出射する偏向角補償手段と、偏向角を制御し、偏向角補償手段が出射したレーザ光を走査方向へ走査する走査制御手段と、偏向角補償手段が出射したレーザ光を回折させる位相変調型の透過型回折格子を有する位相マスクと、偏向角補償手段と位相マスクとの間に設けられ、偏向角補償手段が出射したレーザ光を位相マスクへ通過する開口部を有する遮光手段とを備え、走査制御手段は、偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査区間が遮光手段に収まる範囲で、レーザ光を開口部よりも大きく走査して走査区間の両端に遮光領域を存在させるとともに、レーザ光が遮光領域を走査する期間に、レーザ光の走査速度の助走または反転を行ない、光ファイバにグレーティングを形成する際にアポダイゼーションを行うようにしたものである。
【0023】
この発明に係る走査型露光装置は、時系列制御信号にしたがって偏向角を走査制御手段が制御し、走査制御手段が所定の走査周期で時系列制御信号を繰り返すようにしたものである。
【0024】
この発明に係る走査型露光装置は、時系列制御信号にしたがって偏向角を走査制御手段が制御し、偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査速度とアポダイゼーションの目標照射強度分布とを逆比例の関係にして計算した走査位置−時間ダイヤグラムを走査制御手段が時系列制御信号とするようにしたものである。
【0025】
この発明に係る走査型露光装置は、連続発振するレーザ光をレーザ光源が出射するようにしたものである。
【0026】
この発明に係る走査型露光装置は、所定のパルス周期で発振するパルスレーザ光をレーザ光源が出射するとともに、時系列制御信号の走査周期とパルス周期との整数比の最小公倍数が大きくなるように、走査制御手段が走査周期を定めるようにしたものである。
【0027】
この発明に係る走査型露光装置は、走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第1反射鏡を偏向手段とするとともに、第1反射鏡の揺動角度と絶対値が等しく逆方向に、走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第2反射鏡を偏向角補償手段とし、第1反射鏡および第2反射鏡を順次反射させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射するようにしたものである。
【0028】
この発明に係る走査型露光装置は、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第1ウェッジと、第1ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第2ウェッジとから偏向手段が構成されるとともに、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第3ウェッジと、第3ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第4ウェッジとから偏向角補償手段が構成され、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジおよび第4ウェッジを順次透過させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射するようにしたものである。
【0029】
この発明に係る走査型露光装置は、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジおよび第4ウェッジが同一形状で同一材料によってそれぞれ構成され、第1ウェッジと位相差を有することなく、第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第2ウェッジが制御され、第1ウェッジと180°の位相差を有し、第1ウェッジの回転角速度で第3ウェッジが制御され、第2ウェッジと180°の位相差を有し、第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第4ウェッジが制御されるようにしたものである。
【0030】
この発明に係る走査型露光装置は、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジまたは第4ウェッジの少なくともいずれか1つがその回転軸と直交する平面形状の入射面または出射面を有するようにしたものである。
【0031】
この発明に係る走査型露光装置は、第3ウェッジおよび第4ウェッジの回転走査に同期して、第3ウェッジおよび第4ウェッジを走査制御手段が走査方向へ並進走査するようにしたものである。
【0032】
この発明に係る走査型露光装置は、第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えるようにしたものである。
【0033】
この発明に係る走査型露光装置は、第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えるとともに、第3ウェッジおよび第4ウェッジの並進走査とともに、走査制御手段がシリンドリカルレンズを走査方向へ並進走査するようにしたものである。
【0034】
この発明に係る走査型露光装置は、その光軸に対して所定の入射角で偏向手段からレーザ光が入射すると、入射角を光軸からの距離に変換してレーザ光を出射するFθ光学系を偏向角補償手段とするようにしたものである。
【0035】
この発明に係る走査型露光装置は、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御され、回転軸と平行に設けられた複数の平面鏡によってレーザ光源が出射したレーザ光をFθ光学系へ反射する多面体反射鏡を偏向手段とするようにしたものである。
【0036】
この発明に係る走査型露光装置は、その回転軸と直交する平面によって切断された切断面形状が正多角形となるように、複数の平面鏡を多面体反射鏡が備えるようにしたものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による走査型露光装置の構成を示す図である。
図1において、1は単一波長のレーザ光(紫外光)を出射するレーザ光源、2はレーザ光源1から出射したレーザ光の偏向角を変化(偏向)させる偏向手段、3は偏向手段2で偏向したレーザ光の偏向角を補償・相殺してレーザ光を出射する偏向角補償手段である。
【0038】
また、図1において、4は時系列制御信号を記憶する信号記憶手段(走査制御手段)、5は信号記憶手段4に記憶された時系列制御信号を一定の走査周期で繰り返し発生する信号発生手段(走査制御手段)、6は信号発生手段5からの時系列制御信号にしたがって偏向手段2の偏向動作を駆動する駆動手段(走査制御手段)、7は位相変調型の透過型回折格子によって隣接して透過するレーザ光の光路長(位相変化量)に差を生じさせる位相マスク、8は位相マスク7の下面に設置された露光対象としての光ファイバ、9は偏向角補償手段3と位相マスク7との間に設けられ、その中心に開口部を有する遮光手段である。図1では、紙面に平行に光ファイバ8を設置しており、図1の上下方向が光ファイバ8の長手方向に対応する。
【0039】
次に動作について説明する。
レーザ光源1から出射したレーザ光は、偏向手段2によってその進行方向が偏向する。この偏向手段2で偏向したレーザ光の偏向角は、信号発生手段5からの時系列制御信号を受ける駆動手段6によって駆動されている。信号発生手段5は、信号記憶手段4に記憶された時系列制御信号を読み出し、この時系列制御信号を一定の走査周期で繰り返し発生する。
【0040】
偏向手段2によって偏向したレーザ光は、偏向手段2から離れた場所にある偏向角補償手段3によって偏向角が補償され、偏向手段2と偏向角補償手段3との距離で決定される位置へと走査される。偏向角を一軸方向に連続的に変化させることにより一次元走査を行なうことができる。この発明では、一次元走査方向を光ファイバ8の長手方向に一致させている。
【0041】
偏向手段2,偏向角補償手段3としては、例えば各1枚の反射鏡(それぞれ第1反射鏡、第2反射鏡)をそれぞれ用いて、これらの反射鏡を走査方向へ揺動させるとともに、絶対値が等しくかつ符号が逆になるように両者の揺動角度を制御することで、偏向手段2の偏向動作、偏向角補償手段3の偏向角補償動作が実現可能である。この場合、第1反射鏡、第2反射鏡を順次反射してレーザ光源1からのレーザ光が遮光手段9へ出射するようになり、光の反射現象のみを利用しているため、レーザ光源1に波長広がりがある場合に色収差の影響による走査位置誤差が生じないという利点がある。
【0042】
偏向角補償手段3から出射したレーザ光のうち、位相マスク7の直前に設置された遮光手段9の開口部を通過したレーザ光だけが位相マスク7の上面へ入射し、位相マスク7の位相変調型の透過型回折格子によって±1次回折光同士の干渉が発生し、下面の光ファイバ8上に強度分布が形成される。
【0043】
次に速度変調によるアポダイゼーション実現方法について述べる。
図2は目標照射強度分布とこの目標照射強度分布を実現するための走査位置−時間ダイヤグラムとを示す図である。
図2(a)は目標照射強度分布の一例であり、中央部が平坦で、両端部がベル型のアポダイゼーションの分布形状を持っている。縦軸は走査位置、横軸はレーザ照射強度をそれぞれ表している。また、図2(b)は1走査周期分の走査位置−時間ダイヤグラムを示しており、縦軸は図2(a)と対応した走査位置、横軸は時間である。
【0044】
いま、単位時間あたりのレーザ照射強度をi(x,t),走査位置(変調パラメータ)をx,時間をt,走査周期をτとすると、1走査周期τあたりのレーザ強度分布I(x)は次の式(1)で表される。
【0045】
【数1】
【0046】
一方、走査位置xに関する荷重関数W(x)を用いると、レーザ強度分布I(x)は式(2)のように記述することもできる。
【0047】
【数2】
【0048】
さて、図2(a)に示す目標照射強度分布において、x<0の走査区間ではレーザ強度分布I(x)は単調増加関数であり、x>0の走査区間ではレーザ強度分布I(x)は単調減少関数となっている。したがって、走査区間毎に式(1)を変形すると、式(3),式(4)がそれぞれ得られる。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】
また同様に、式(2)のレーザ強度分布I(x)も走査区間毎のレーザ強度分布I1 (x),I2(x)に分離することができる。この結果を次の式(5)に示す。
【0052】
【数5】
【0053】
ここで、W1(x),W2(x)はそれぞれ走査区間x<0,0<xにおける荷重関数W(x)である。式(3),式(4)と式(5)とを比較すると、走査位置xで時間tを微分した滞在時間(∂t/∂x)は荷重関数W(x)に比例することが分かる。滞在時間(∂t/∂x)は走査速度の逆数なので、上の考察結果は走査速度(∂x/∂t)が荷重関数W(t)に逆比例することを意味している。
【0054】
以上の式(3),式(4)と式(5)との比較・考察によって、走査位置xを独立変数とする時間の関数t(x)を次の式(6a),式(6b)のように表すことができる。
【0055】
【数6】
【0056】
この式(6a)および式(6b)を用いて、目標照射強度分布を表す荷重関数W(x),つまりW1(x)とW2(x)とから時間t(x)のダイヤグラムを求めることができる。
【0057】
図2(a)のアポダイゼーションの目標照射強度分布を実現するための走査位置−時間ダイヤグラムを式(6a),式(6b)で算出すると図2(b)のようになる。図2(b)を見ると分かるように、走査位置の両端に対応する部分では、ダイヤグラムの微分係数の大きさが急激に増大しており、アポダイゼーションを実現するには走査位置の両端で走査速度を大きく増大させる必要のあることが理解できる。理論的には、照射強度をゼロとするために走査速度を無限大にする必要がある。
【0058】
繰り返し走査を行なう場合についても考察する。
図3は繰り返し走査を行なう場合の走査位置−時間ダイヤグラムの例を示す図であり、図3(a)は時間に対して走査位置が常に単調増加する場合、図3(b)は時間に対して走査位置が単調増加と単調減少とを繰り返す場合である。
【0059】
図3(a),図3(b)いずれの場合も、走査位置の両端で走査方向(または走査速度)を反転する必要のあることが分かる。この反転を行なうときに走査速度はゼロとなるのだが、上で述べたように、走査位置の両端ではアポダイゼーション実現のために走査速度は増大して最大速度となっているので、最大速度のまま走査方向を反転することは困難である。
【0060】
この困難を解決するために、この発明では、位相マスク7の直前に遮光手段9を設けるようにしている。遮光手段9は中央に矩形の開口部を持っており、この開口部は偏向角補償手段3からのレーザ光を通過し(通光領域)、開口部以外の部分はレーザ光を遮蔽するようになっている(遮光領域)。この遮光手段9の働きについて次に説明する。
【0061】
図4はこの発明の実施の形態1による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。
図4(a)は図1の偏向角補償手段3,遮光手段9,位相マスク7および光ファイバ8を拡大した図、図4(b)はアポダイゼーションの目標照射強度分布であり、遮光手段9の開口部が通光領域、開口部以外が遮光領域にそれぞれ対応している。図4(c)はこの実施の形態1による繰り返し走査の走査位置−時間ダイヤグラムである。
【0062】
この実施の形態1では、図4(a)に示すように、遮光手段9の大きさ以下の範囲で、遮光手段9の開口部よりもレーザ光の走査区間を大きく設定しており、走査区間の両端には遮光手段9によってレーザ光が遮られる2つの遮光領域が存在する。このことによって、レーザ光の1走査周期の間には、レーザ光が開口部を通過し、位相マスク7を介して光ファイバ8を照射する期間(照射期間)と、開口部以外の部分でレーザ光が遮られ、光ファイバ8を照射しない期間(非照射期間)とが作り出される。
【0063】
そして、図4(c)に示すように、アポダイゼーションの目標照射強度分布を実現するダイヤグラムを照射期間中に行なうようにし、レーザ光の走査速度を大きく増大させる動作や走査速度の減速・反転、次の走査に要する初期走査速度までの加速(助走)を行なうダイヤグラムを非照射期間に割り当てるようにしている。
【0064】
これにより、走査速度を無限大とする必要があるとともに、走査方向を反転しなければならない走査位置の両端部は図4(b)の遮光領域に相当することになり、遮光手段9によって遮光されるため光ファイバ8へレーザ光が照射されることはなく、このときの照射強度をゼロにすることができる。したがって、レーザ光が開口部を通過して光ファイバ8を照射する図4(b)の通光領域において、目標照射強度分布を実現させつつ、レーザ光走査を繰り返すことができるようになる。
【0065】
なお、以上の説明では、レーザ光源1として連続発振レーザ(CWレーザ)の光源を想定している。この場合、どのような走査周期で走査しても目標照射強度分布を実現できる。
【0066】
一方、レーザ光源1からパルスレーザ光を出射する場合には、繰り返しの走査周期とパルスレーザ光のパルス周期との整数比の最小公倍数を大きくするように、各周期の組み合わせを決定するようにする。このことにより、走査を多数回繰り返した場合に照射強度分布内に意図しない周期的な強度分布(リップル)の発生を防ぐことができる。次の計算例によってこれを説明する。
【0067】
図5はパルスレーザ光によって繰り返し走査を行なった場合の照射強度分布の計算例を示す図であり、走査周期を20msecとし、パルスレーザ光のパルス周期をそれぞれ図5(a)0.90msec,図5(b)1.00msecとした場合に、1024回のGaussianビーム(ビーム半値幅1mm)をパルス照射した場合の計算値である。走査周期とパルス周期との整数比は、図5(a)が200:9,図5(b)が20:1であり、各周期比の最小公倍数はそれぞれ、図5(a)が1800,図5(b)が20に対応する。
【0068】
これを見ると、各周期の整数比の最小公倍数が小さい図5(b)の計算例では、照射強度分布に周期的な強度分布が生じている。この強度分布は照射パルス数を増加させた場合でも残存してしまい、光ファイバグレーティングの性能を劣化させる要因になる。
【0069】
一方、各周期の整数比の最小公倍数が大きい図5(a)の計算例では、照射強度分布に周期的な強度分布は現れておらず、理想に近いアポダイゼーションが実現できている。図5(b)で若干存在しているリップルは、パルス照射回数を増加させることにより、さらに減少させることができる。
【0070】
以上のように、この実施の形態1によれば、レーザ光を出射するレーザ光源1と、レーザ光源1が出射したレーザ光を所定の偏向角で偏向して出射する偏向手段2と、偏向角を補償して偏向手段2が出射したレーザ光を出射する偏向角補償手段3と、偏向角を制御し、偏向角補償手段3が出射したレーザ光を走査方向へ走査する信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6と、走査方向に沿ってその下面に設置された光ファイバ8に対して位相変調型の透過型回折格子を介してレーザ光を照射する位相マスク7とを備えるようにしたので、レーザ光を高速走査することができるようになり、レーザの強度ドリフトの影響と、低速照射によって発生してしまう局所加熱の影響とを最小化することができるという効果が得られる。
【0071】
また、この実施の形態1によれば、時系列制御信号にしたがって偏向角を駆動手段6が制御し、信号発生手段5が所定の走査周期で時系列制御信号を繰り返すようにしたので、レーザ光を高速繰り返し走査することができるという効果が得られる。
【0072】
さらに、この実施の形態1によれば、時系列制御信号にしたがって偏向角を駆動手段6が制御し、偏向角補償手段3が出射したレーザ光の走査速度(∂x/∂t)と目標照射強度分布W(x)とを逆比例の関係にして計算した走査位置−時間ダイヤグラムを信号記憶手段4が時系列制御信号とするようにしたので、アポダイゼーションなどの目標照射強度分布W(x)を実現することができるという効果が得られる。
【0073】
さらに、この実施の形態1によれば、偏向角補償手段3と位相マスク7との間に設けられ、偏向角補償手段3が出射したレーザ光が通過する開口部を有する遮光手段9を備え、偏向角補償手段3が出射したレーザ光の走査区間が遮光手段9に収まる範囲で、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6がレーザ光を開口部よりも大きく走査して走査区間の両端に遮光領域を存在させるとともに、レーザ光が遮光領域を走査する期間に、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6がレーザ光の走査速度の助走または反転を行なうようにしたので、レーザ光の走査区間の両端では、遮光手段9によってレーザ光が遮光されてこのときの照射強度をゼロにすることができるようになり、レーザ光が開口部を通過して光ファイバ8を照射するときに目標照射強度分布を実現することができるという効果が得られる。
【0074】
さらに、この実施の形態1によれば、連続発振するレーザ光をレーザ光源1が出射するようにしたので、走査周期に依存することなく、目標照射強度分布を実現することができるという効果が得られる。
【0075】
さらに、この実施の形態1によれば、所定のパルス周期で発振するパルスレーザ光をレーザ光源1が出射するとともに、時系列制御信号の走査周期とパルス周期との整数比の最小公倍数が大きくなるように、信号発生手段5が走査周期を定めるようにしたので、パルスレーザ光によって繰り返し走査を行う際に、周期的な照射強度分布の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0076】
さらに、この実施の形態1によれば、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって走査方向の揺動角度が制御される第1反射鏡を偏向手段2とするとともに、第1反射鏡の揺動角度と絶対値が等しく逆方向に、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって走査方向の揺動角度が制御される第2反射鏡を偏向角補償手段3とし、第1反射鏡および第2反射鏡を順次反射させて、レーザ光源1が出射したレーザ光を遮光手段9へ出射するようにしたので、レーザ光源1に波長広がりがある場合に色収差の影響による走査位置誤差を防ぐことができるという効果が得られる。
【0077】
なお、この発明の走査型露光装置は高速繰り返し走査に限定されるわけではなく、信号発生手段5が1走査周期分だけ時系列制御信号を発生するようにしても良い。
【0078】
また、時系列制御信号は式(6)を用いて計算した走査位置−時間ダイヤグラムに限定されるものではなく、この他にも任意に定めることができる。
【0079】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図である。図1と同一符号は相当する構成要素である。
図6の偏向手段2において、符号10および11はそれぞれ同一の回転軸周りの回転角速度が駆動手段6によって制御される第1ウェッジおよび第2ウェッジである。また、図6の偏向角補償手段3において、符号12および13はそれぞれ同一の回転軸周りの回転角速度が駆動手段6によって制御される第3ウェッジおよび第4ウェッジである。レーザ光源1から出射したレーザ光は、第1〜第4ウェッジ10〜13を順次透過して遮光手段9へ入射する。
【0080】
図6では、第1ウェッジ10の回転方向と第2ウェッジ11の回転方向、第3ウェッジ12の回転方向と第4ウェッジ13の回転方向はそれぞれ互いに逆方向になるように駆動手段6によって駆動されている。第1〜第4ウェッジ10〜13の形状は特に限定されるものではないが、これらのうち少なくとも1つの入射面または出射面を回転軸と直交する平面形状にすることで、レーザ光の光路追跡が容易になり、また入射するレーザ光の入射角の誤差に対する偏向動作精度の劣化を抑制することができ、走査制御の精度に対するレーザ光の入射角依存性を軽減することができるようになる。
【0081】
まず、偏向手段2の第1ウェッジ10,第2ウェッジ11について、走査機能を説明する。x軸方向を光ファイバ8の長手方向、レーザ光源1の光軸およびx方向と垂直にy軸方向をとり、レーザ光源1の光軸上に原点に取る。第1,第2ウェッジ10,11によって生じるレーザ光の偏向角を偏向手段2から出射するレーザ光とレーザ光源1の光軸とのなす角で定義し、x軸方向の偏向角をθx ,y軸方向の偏向角をθyとすると、偏向角θx,θyは式(7a),式(7b)でそれぞれ表される。
【0082】
【数7】
【0083】
ここでδ1,δ2は第1,第2ウェッジ10,11による光線の偏角、φ1,φ2は第1,第2ウェッジ10,11の回転角速度、ψは第1,第2ウェッジ10,11間の位相差である。
いま、同一材料、同一形状で作られた第1,第2ウェッジ10,11を用いると、偏角δ1,δ2の関係はδ1=δ2=δとなり、第1,第2ウェッジ10,11の回転角速度φ1,φ2を同じ速さで逆方向に回転(φ1=−φ2=φ)させて位相差ψ=0とすれば、次の式(8a),式(8b)がそれぞれ得られ、x方向、つまり光ファイバ8の長手方向にのみレーザ光を走査できることがわかる。
【0084】
【数8】
【0085】
一方、偏向角補償手段3の第3,第4ウェッジ12,13については、第3ウェッジ12の初期位相を第1ウェッジ10に対して180°だけ進め、第4ウェッジ13の初期位相を第2ウェッジ11に対して180°だけ進めると、第3,第4ウェッジ12,13間の位相差ψ=0°となる。
【0086】
そして第1,第2ウェッジ10,11と同様に、同一材料、同一形状で作られた第3,第4ウェッジ12,13を用いると偏角δ1=δ2=δとなり、回転角速度φ1=−φ2=φなので(第3ウェッジ12の回転角速度φ3=φ1,第4ウェッジ13の回転角速度φ4=φ2)、式(7a),(7b)はそれぞれδcos[φ+180°]+δcos[−(φ+180°)],δsin[φ+180°]+δsin[−(φ+180°)]となって式(9a),式(9b)が得られ、偏向角が補償されることが分かる。
【0087】
【数9】
【0088】
したがって、第4ウェッジ13から距離Lの位置に第3ウェッジ12を置き、かつθ=−θxの偏向を与える場合、第1ウェッジ10へ入射して第4ウェッジ13から出射するレーザ光のレーザ光源1の光軸からの走査位置xは式(10)により求めることができる。
【0089】
【数10】
【0090】
式(10)を見ると、第1〜第4ウェッジ10〜13の回転角速度φに応じて走査位置を往復制御できることが分かる。走査位置xは回転角速度φに対して一般的に線形変化しないが、回転角速度φの角度範囲を限定し、偏角δを最適に選ぶことで線形近似が可能である。走査位置xが回転角速度φに近似的に線形となる例を次の図7に示す。
【0091】
図7はウェッジの回転角速度φと走査位置絶対誤差(線形性からのズレ)との関係を示す図であり、偏角δと距離Lとをパラメータとして、式(10)の線形性からのズレを計算している。図7の横軸は回転角速度φ[deg.],縦軸は走査位置xの絶対誤差[mm]である。この図7に示すように、回転角速度φの範囲を±30°に制限した場合において、φ=±30°間の範囲で常に誤差をゼロとする偏角δ,距離Lの組が存在し、図7の例ではδ=21.2deg.,L=51.6mmが最適値と分かる。
【0092】
いま、この回転角速度φに対して走査位置xが近似的に線形変化する線形近似回転角範囲を実施の形態1で説明した照射期間に割り当て、この線形近似回転角範囲以外の角度範囲を非照射期間に割り当てることを考える。図8は照射期間および非照射期間に対するウェッジ回転角度の割り当てを示す図であり、ウェッジの上面から見た回転角度範囲を示している。なお説明を簡単にするため、4枚の第1〜第4ウェッジ10〜13全てを90°回転させた位置を回転角度の基準に取り直している。
【0093】
それでは、繰り返し走査について説明する。
図9はこの発明の実施の形態2による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。図9(a)は目標照射強度分布、図9(b)はこの実施の形態2による走査位置−時間ダイヤグラム、図9(c)はこの実施の形態2によるウェッジの回転角速度―時間ダイヤグラム、図9(d)はこの実施の形態2によるウェッジの回転角度―時間ダイヤグラムをそれぞれ示している。
【0094】
実施の形態1と同様に、照射期間内で走査速度を目標照射強度分布に逆比例させて時系列制御信号を計算している。また、図9(a),図9(b)に示すように、走査位置両端には遮光手段9によって2つの遮光領域を設け、レーザ光の走査速度を大きく増大させる動作や走査速度の減速、次の走査に要する初期走査速度までの加速をこの遮光領域中の非照射期間に行なう。
【0095】
特に限定されるものではないが、さらに前述したように、各ウェッジの回転角速度φに対して走査位置xが近似的に線形変化する線形近似回転角範囲を照射期間に割り当てようにすれば、各ウェッジの回転角速度φを等間隔で変化させたときに走査位置xも等間隔に制御できるので、制御性を向上することができる。
【0096】
以上により、図9(d)の各ウェッジの回転角度―時間ダイヤグラムで示すように、第1〜第4ウェッジ10〜13を0から360°まで1回転させる間に2回分の照射期間が割り当てられ、1往復の走査が完了する。このウェッジ回転角制御を連続的に行うことで、位置走査を高速に繰り返すことができる。
【0097】
特に実施の形態1と比較すると、この実施の形態2では、図9(c)の回転角速度―時間ダイヤグラムに示すように、第1〜第4ウェッジ10〜13の回転方向を非照射期間内で反転させる必要がなく、回転角速度の高低変化だけで済むようになっている。これにより、駆動手段6に加わる電気的・機械的負荷を軽減することができる。
【0098】
さて、ここまでの説明では、第1〜第4ウェッジ10〜13の回転だけでレーザ光の走査を実現したが、偏向角補償手段3の第3,第4ウェッジ12,13を光ファイバ8の長手方向へ並進走査するようにしても良い。
【0099】
図10はこの発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図であり、図1,図6と同一符号は相当する構成要素である。
図10において、符号14は第3,第4ウェッジ12,13を備えた偏向角補償手段であり、この偏向角補償手段14の第3,第4ウェッジ12,13は、第3,第4ウェッジ12,13の回転運動に同期して光ファイバ8の長手方向へ駆動手段6によって並進走査されるようになっている。
【0100】
この図10における位置走査に位置精度は必要なく、偏向手段2の第1,第2ウェッジ10,11によって偏向したレーザ光が偏向角補償手段14の第3,第4ウェッジ12,13のウェッジ内へ蹴られることなく入射しさえすれば良い。位置走査を併用することで、第3,4ウェッジ12,13の有効径を小さくできるため、第3,第4ウェッジ12,13の面精度の向上、駆動手段6の小型化、コスト軽減などの効果がある。
【0101】
さらに図11に示すように、シリンドリカルレンズを設置することで、ウェッジ走査によって第4ウェッジ13の回転軸方向および走査方向と直交する方向に走査位置誤差が発生した場合でもこれを補償することができる。
【0102】
図11はこの発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図であり、図1,図6と同一符号は相当する構成要素である。また、図11では、レーザ光源1〜第3ウェッジ12の図示を省略している。
図11において、符号15は第4ウェッジ13と遮光手段9との間に設けられたシリンドリカルレンズである。
【0103】
シリンドリカルレンズ15は、第4ウェッジ13の回転軸方向および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有しており、図11中の第4ウェッジ13の出射側で走査位置誤差が生じた走査軌跡16を補償して、走査位置誤差の抑制された走査軌跡17にレンズ作用で変換する。
【0104】
このシリンドリカルレンズ15は全走査区間をカバーするように、光ファイバ8の長手方向(走査方向)へ全走査区間以上に長くなった形状を採用しても良いが、偏向角補償手段14の第3,第4ウェッジ12,13と同時に並進走査を行うようにしても良い。これによりシリンドリカルレンズ15も小型化することが可能になり、またコスト低減できる。
【0105】
一方、シリンドリカルレンズ15による副次的な作用として、第4ウェッジ13の回転軸方向および走査方向と直交する方向へビーム形状を引き伸ばすことがあげられる。これにより、第4ウェッジ13の回転軸方向・走査方向と直交する方向へのビーム変位の影響を低減できるだけでなく、シリンドリカルレンズ15のレンズ作用の方向へ光ファイバ8と位相マスク7とを複数本平行に並べた場合、複数本の光ファイバ8に対する同時露光が可能となる。複数本の光ファイバ8への同時露光は、生産効率を向上させるだけではなく、同一のロットで照射条件や温度条件を等しくできるため、作製する光ファイバグレーティングのフィルタ特性に高い均質性を確保することができる。
なお、図9から図11で説明した第1〜第4ウェッジ10〜13を偏向手段2,偏向角補償手段3としてそれぞれ用いる手法は、遮光手段9を備えていない場合の走査型露光装置に適用しても良い。
【0106】
以上のように、この実施の形態2によれば、回転軸周りの回転角速度が信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって制御される第1ウェッジ10と、第1ウェッジ10と共有する回転軸周りの回転角速度が信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって制御される第2ウェッジ11とから偏向手段2が構成されるとともに、回転軸周りの回転角速度が信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって制御される第3ウェッジ12と、第3ウェッジ12と共有する回転軸周りの回転角速度が信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって制御される第4ウェッジ13とから偏向角補償手段3が構成され、第1ウェッジ10,第2ウェッジ11,第3ウェッジ12および第4ウェッジ13を順次透過させて、レーザ光源1が出射したレーザ光を遮光手段9へ出射するようにしたので、偏向手段2および偏向角補償手段3に対して揺動による走査が必要なくなり、走査の速度変化を小さくすることができるという効果が得られ、また偏角の制御精度を向上することができるという効果が得られ、さらに光学系の光軸調整を容易に行なうことができるという効果が得られる。
【0107】
また、この実施の形態2によれば、第1ウェッジ10,第2ウェッジ11,第3ウェッジ12および第4ウェッジ13が同一形状で同一材料によってそれぞれ構成され、第1ウェッジ10と位相差を有することなく、第1ウェッジ10の回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第2ウェッジ11が制御され、第1ウェッジ10と180°の位相差を有し、第1ウェッジ10の回転角速度で第3ウェッジ12が制御され、第2ウェッジ11と180°の位相差を有し、第1ウェッジ10の回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第4ウェッジ13が制御されるようにしたので、各ウェッジの回転角速度の制御が容易になり、駆動手段6の負荷を軽減することができるという効果が得られる。
【0108】
さらに、この実施の形態2によれば、第1ウェッジ10,第2ウェッジ11,第3ウェッジ12または第4ウェッジ13の少なくともいずれか1つがその回転軸と直交する平面形状の入射面または出射面を有するようにしたので、走査制御の精度に対するレーザ光の入射角依存性を軽減することができるという効果が得られる。
【0109】
さらに、この実施の形態2によれば、第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の回転走査に同期して、第3ウェッジ12および第4ウェッジ13を信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6が走査方向へ並進走査するようにしたので、並進走査させる分だけ第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の小型化が可能になって、第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の高速回転を行なうことができるようになり、走査速度を高速化できるという効果が得られ、また小型化の分だけ第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の面精度を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果が得られる。
【0110】
さらに、この実施の形態2によれば、第4ウェッジ13と遮光手段9との間に設けられ、第4ウェッジ13の回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズ15を備えるようにしたので、第4ウェッジ13の回転軸およびレーザ光の走査方向と直交する方向へビーム形状を伸ばすことができるようになり、複数の光ファイバ8への同時露光が可能になって生産効率を向上することができるという効果が得られ、また同一のロットで照射条件や温度条件を等しくできるため作製する光ファイバグレーティングのフィルタ特性に高い均質性を確保することができるという効果が得られ、さらに第4ウェッジ13の回転軸および走査方向と直交する方向へのビーム変位の影響を低減できるという効果が得られる。
【0111】
さらに、この実施の形態2によれば、第4ウェッジ13と遮光手段9との間に設けられ、第4ウェッジ13の回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズ15を備えるとともに、第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の並進走査とともに、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6がシリンドリカルレンズ15を走査方向へ並進走査するようにしたので、第4ウェッジ13の回転軸およびレーザ光の走査方向と直交する方向へビーム形状を伸ばすことができるようになり、複数の光ファイバ8への同時露光が可能になって生産効率を向上することができるという効果が得られ、また同一のロットで照射条件や温度条件を等しくできるため作製する光ファイバグレーティングのフィルタ特性に高い均質性を確保することができるという効果が得られ、さらに第4ウェッジ13の回転軸および走査方向と直交する方向へのビーム変位の影響を低減することができるという効果が得られるとともに、並進走査させる分だけ第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の小型化が可能になって、第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の高速回転を行なうことができるようになり、走査速度を高速化できるという効果が得られ、また小型化の分だけ第3ウェッジ12および第4ウェッジ13の面精度を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果が得られる。
【0112】
実施の形態3.
図12はこの発明の実施の形態3による走査型露光装置の構成を示す図である。図1と同一符号は相当する構成要素である。
図12において、18はレーザ光源1からのレーザ光の光路を折り曲げる反射鏡、19は反射鏡18からのレーザ光を反射する偏向手段2としての多面体反射鏡(ポリゴンミラー)、20は多面体反射鏡19からのレーザ光にレンズ作用を与えて遮光手段9へ出射する偏向角補償手段3としてのFθ光学系である。
【0113】
多面体反射鏡19は、図12の紙面垂直方向に回転軸を有し、回転軸の周りの回転角速度が駆動手段6によって制御されており、側面に複数の反射面(平面鏡)を回転軸と平行に備えた多面体柱である。多面体反射鏡19の形状は特に限定されるものではないが、回転軸と直交する平面によって切断した多面体反射鏡19の断面形状が正多角形(図12では正8角形)となるように複数の反射面を等分割に形成すれば、走査制御の精度を向上することができ、また多面体反射鏡19の製造が容易になって製造性を向上することができる。このとき、多面体反射鏡19によって走査可能な偏向角範囲は、反射面の等分割数をNとすれば±180°/Nとなる。
【0114】
一方、Fθ光学系20は入射レーザ光の入射角を出射レーザ光の光軸からの距離に変換するレンズ作用を有する光学系で、Fθ光学系20自身の光軸と入射角θをなしてレーザ光が入射するものとし、Fθ光学系20固有の焦点距離をFとすると、Fθ光学系20から出射するレーザ光の走査位置xは式(11)のようになる。
【0115】
【数11】
【0116】
式(11)にしたがって、Fθ光学系20から出射するレーザ光の走査区間を目標照射強度分布の照射範囲よりも大きくなるように、Fθ光学系20へ入射するレーザ光の入射角θの範囲を選び、これに合わせてFθ光学系20の光学的特性を設計し、かつ遮光手段9の開口幅を照射範囲と一致させるようにする。このことにより、偏向角補償手段3をパッシブに構成することができ、偏向角補償手段3に対する駆動系を不要にすることができる。なお、このFθ光学系20は、実施の形態1や実施の形態2の偏向手段2に適用しても良い。
【0117】
それでは、多面体反射鏡19を用いた走査型露光装置の繰り返し走査について説明する。
図13はこの発明の実施の形態3による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。図13(a)はアポダイゼーションの目標照射強度分布、図13(b)は実施の形態3による繰り返し走査の走査位置−時間ダイヤグラム、図13(c)は実施の形態3による繰り返し走査の多面体反射鏡19の回転角速度−時間ダイヤグラムである。なお、図13(b)の走査位置−時間ダイヤグラムは実施の形態1や実施の形態2と同様に考えることができる。
【0118】
上述のように、Fθ光学系20から出射するレーザ光の走査区間の両端部は、遮光手段9の開口部以外の部分によって遮光されるため、照射強度に寄与しない2つの遮光領域ができ、その遮光領域に対応する非照射期間が存在する。
【0119】
実施の形態2と同様に、照射に寄与しない時間を助走期間に割り当て、この助走期間において多面体反射鏡19の回転角速度を高速に維持させる。図13(c)に示す回転角速度―時間ダイヤグラムを見ると、照射期間の開始時と終了時とにおいて走査速度を最大とすることができる。以上の回転角速度制御を連続的に繰り返すことで偏向動作・繰り返し走査が可能になる。
【0120】
また、図13(c)の回転角速度―時間ダイヤグラムを見ると、実施の形態2と同様に、多面体反射鏡19の回転方向を時間的に反転させる必要のないことが分かり、回転角速度の高低変化だけで済むようになっている。これにより、駆動手段6に対する電気的・機械的負荷を軽減することができ、駆動手段6を小型化できる。
【0121】
さらに、実施の形態1,2と異なり、駆動手段6による多面体反射鏡19の駆動系統は1つだけ有れば良く、多面体反射鏡19の回転駆動の方向も1方向で済むので、駆動系統数や駆動方向が低減されて信頼性を向上できるとともに、コスト低減が可能になる。
【0122】
以上のように、この実施の形態3によれば、その光軸に対して所定の入射角で偏向手段2からレーザ光が入射すると、入射角を光軸からの距離に変換してレーザ光を出射するFθ光学系20を偏向角補償手段3とするようにしたので、信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6による制御を必要とすることなく偏向角補償手段3を実現することができ、駆動手段6の負荷を軽減することができるという効果が得られ、また走査型露光装置の信頼性を向上することができるという効果が得られる。
【0123】
また、この実施の形態3によれば、回転軸周りの回転角速度が信号記憶手段4・信号発生手段5・駆動手段6によって制御され、回転軸と平行に設けられた複数の平面鏡によってレーザ光源1が出射したレーザ光をFθ光学系20へ反射する多面体反射鏡19を偏向手段2とするようにしたので、駆動系統数や駆動方向数が低減されて、駆動手段6に要する電気的・機械的負荷を軽減することができるという効果が得られ、また駆動手段6を小型化することができるという効果が得られ、さらに走査型露光装置の信頼性を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果が得られる。
【0124】
さらに、この実施の形態3によれば、その回転軸と直交する平面によって切断された切断面形状が正多角形となるように、複数の平面鏡を多面体反射鏡19が備えるようにしたので、走査制御の精度を向上することができるという効果が得られ、また多面体反射鏡19の製造が容易になって製造性を向上することができるという効果が得られる。
【0125】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源が出射したレーザ光を所定の偏向角で偏向して出射する偏向手段と、偏向角を補償して偏向手段が出射したレーザ光を出射する偏向角補償手段と、偏向角を制御し、偏向角補償手段が出射したレーザ光を走査方向へ走査する走査制御手段と、偏向角補償手段が出射したレーザ光を回折させ、光ファイバに照射する位相変調型の透過型回折格子を有する位相マスクと、偏向角補償手段と位相マスクとの間に設けられ、偏向角補償手段が出射したレーザ光を位相マスクへ通過する開口部を有する遮光手段とを備え、走査制御手段は、偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査区間が遮光手段に収まる範囲で、レーザ光を開口部よりも大きく走査して走査区間の両端に遮光領域を存在させるとともに、レーザ光が遮光領域を走査する期間に、レーザ光の走査速度の助走または反転を行ない、光ファイバにグレーティングを形成する際にアポダイゼーションを行うように構成したので、レーザ光を高速走査することができるようになり、レーザの強度ドリフトの影響と、低速照射によって発生してしまう局所加熱の影響とを最小化することができるという効果がある。
また、レーザ光の走査区間の両端では、遮光手段によってレーザ光が遮光されてこのときの照射強度をゼロにすることができるようになり、レーザ光が開口部を通過して光ファイバを照射するときに目標照射強度分布を実現することができるという効果がある。
【0126】
この発明によれば、時系列制御信号にしたがって偏向角を走査制御手段が制御し、走査制御手段が所定の走査周期で時系列制御信号を繰り返すようにしたので、レーザ光を高速繰り返し走査することができるという効果がある。
【0127】
この発明によれば、時系列制御信号にしたがって偏向角を走査制御手段が制御し、偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査速度とアポダイゼーションの目標照射強度分布とを逆比例の関係にして計算した走査位置−時間ダイヤグラムを走査制御手段が時系列制御信号とするようにしたので、アポダイゼーションなどの目標照射強度分布を実現することができるという効果がある。
【0128】
この発明によれば、連続発振するレーザ光をレーザ光源が出射するようにしたので、走査周期に依存することなく、目標照射強度分布を実現することができるという効果がある。
【0129】
この発明によれば、所定のパルス周期で発振するパルスレーザ光をレーザ光源が出射するとともに、時系列制御信号の走査周期とパルス周期との整数比の最小公倍数が大きくなるように、走査制御手段が走査周期を定めるようにしたので、パルスレーザ光によって繰り返し走査を行う際に、周期的な照射強度分布の発生を抑制することができるという効果がある。
【0130】
この発明によれば、走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第1反射鏡を偏向手段とするとともに、第1反射鏡の揺動角度と絶対値が等しく逆方向に、走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第2反射鏡を偏向角補償手段とし、第1反射鏡および第2反射鏡を順次反射させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射するようにしたので、レーザ光源に波長広がりがある場合に色収差の影響による走査位置誤差を防ぐことができるという効果がある。
【0131】
この発明によれば、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第1ウェッジと、第1ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第2ウェッジとから偏向手段が構成されるとともに、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第3ウェッジと、第3ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第4ウェッジとから偏向角補償手段が構成され、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジおよび第4ウェッジを順次透過させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射するようにしたので、偏向手段および偏向角補償手段に対して揺動による走査が必要なくなり、走査の速度変化を小さくすることができるという効果が得られ、また偏角の制御精度を向上することができるという効果が得られ、さらに光学系の光軸調整を容易に行なうことができるという効果がある。
【0132】
この発明によれば、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジおよび第4ウェッジが同一形状で同一材料によってそれぞれ構成され、第1ウェッジと位相差を有することなく、第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第2ウェッジが制御され、第1ウェッジと180°の位相差を有し、第1ウェッジの回転角速度で第3ウェッジが制御され、第2ウェッジと180°の位相差を有し、第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で第4ウェッジが制御されるようにしたので、各ウェッジの回転角速度の制御が容易になり、走査制御手段の負荷を軽減することができるという効果がある。
【0133】
この発明によれば、第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジまたは第4ウェッジの少なくともいずれか1つがその回転軸と直交する平面形状の入射面または出射面を有するようにしたので、走査制御の精度に対するレーザ光の入射角依存性を軽減することができるという効果がある。
【0134】
この発明によれば、第3ウェッジおよび第4ウェッジの回転走査に同期して、第3ウェッジおよび第4ウェッジを走査制御手段が走査方向へ並進走査するようにしたので、並進走査させる分だけ第3ウェッジおよび第4ウェッジの小型化が可能になって、第3ウェッジおよび第4ウェッジの高速回転を行なうことができるようになり、走査速度を高速化できるという効果が得られ、また小型化の分だけ第3ウェッジおよび第4ウェッジの面精度を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果がある。
【0135】
この発明によれば、第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えるようにしたので、第4ウェッジの回転軸およびレーザ光の走査方向と直交する方向へビーム形状を伸ばすことができるようになり、複数の光ファイバへの同時露光が可能になって生産効率を向上することができるという効果が得られ、また同一のロットで照射条件や温度条件を等しくできるため作製する光ファイバグレーティングのフィルタ特性に高い均質性を確保することができるという効果が得られ、さらに第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向へのビーム変位の影響を低減できるという効果がある。
【0136】
この発明によれば、第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えるとともに、第3ウェッジおよび第4ウェッジの並進走査とともに、走査制御手段がシリンドリカルレンズを走査方向へ並進走査するようにしたので、第4ウェッジの回転軸およびレーザ光の走査方向と直交する方向へビーム形状を伸ばすことができるようになり、複数の光ファイバへの同時露光が可能になって生産効率を向上することができるという効果が得られ、また同一のロットで照射条件や温度条件を等しくできるため作製する光ファイバグレーティングのフィルタ特性に高い均質性を確保することができるという効果が得られ、さらに第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向へのビーム変位の影響を低減することができるという効果が得られるとともに、並進走査させる分だけ第3ウェッジおよび第4ウェッジの小型化が可能になって、第3ウェッジおよび第4ウェッジの高速回転を行なうことができるようになり、走査速度を高速化できるという効果が得られ、また小型化の分だけ第3ウェッジおよび第4ウェッジの面精度を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果がある。
【0137】
この発明によれば、その光軸に対して所定の入射角で偏向手段からレーザ光が入射すると、入射角を光軸からの距離に変換してレーザ光を出射するFθ光学系を偏向角補償手段とするようにしたので、走査制御手段による制御を必要とすることなく偏向角補償手段を実現することができ、走査制御手段の負荷を軽減することができるという効果が得られ、また走査型露光装置の信頼性を向上することができるという効果がある。
【0138】
この発明によれば、回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御され、回転軸と平行に設けられた複数の平面鏡によってレーザ光源が出射したレーザ光をFθ光学系へ反射する多面体反射鏡を偏向手段とするようにしたので、駆動系統数や駆動方向数が低減されて、走査制御手段に要する電気的・機械的負荷を軽減することができるという効果が得られ、また走査制御手段を小型化することができるという効果が得られ、さらに走査型露光装置の信頼性を向上することができるという効果が得られ、さらにコスト低減が可能になるという効果がある。
【0139】
この発明によれば、その回転軸と直交する平面によって切断された切断面形状が正多角形となるように、複数の平面鏡を多面体反射鏡が備えるようにしたので、走査制御の精度を向上することができるという効果が得られ、また多面体反射鏡の製造が容易になって製造性を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による走査型露光装置の構成を示す図である。
【図2】 目標照射強度分布とこの目標照射強度分布を実現するための走査位置−時間ダイヤグラムとを示す図である。
【図3】 繰り返し走査を行なう場合の走査位置−時間ダイヤグラムの例を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。
【図5】 パルスレーザ光によって繰り返し走査を行なった場合の照射強度分布の計算例を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図である。
【図7】 ウェッジの回転角速度と走査位置絶対誤差との関係を示す図である。
【図8】 照射期間および加減速・助走期間に対するウェッジ回転角の割り当てを示す図である。
【図9】 この発明の実施の形態2による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。
【図10】 この発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図である。
【図11】 この発明の実施の形態2による走査型露光装置の構成を示す図である。
【図12】 この発明の実施の形態3による走査型露光装置の構成を示す図である。
【図13】 この発明の実施の形態3による走査型露光装置による繰り返し走査を説明するための図である。
【図14】 光ファイバの長手方向の位置に対するアポダイゼーションの実効的屈折率分布形状を説明するための図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源、2 偏向手段、3 偏向角補償手段、4 信号記憶手段(走査制御手段)、5 信号発生手段(走査制御手段)、6 駆動手段(走査制御手段)、7 位相マスク、8 光ファイバ、9 遮光手段、10 第1ウェッジ、11 第2ウェッジ、12 第3ウェッジ、13 第4ウェッジ、14 偏向角補償手段、15 シリンドリカルレンズ、16,17 走査軌跡、18 反射鏡、19 多面体反射鏡、20 Fθ光学系。
Claims (15)
- レーザ光を出射するレーザ光源と、
上記レーザ光源が出射した上記レーザ光を所定の偏向角で偏向して出射する偏向手段と、
上記偏向角を補償して上記偏向手段が出射した上記レーザ光を出射する偏向角補償手段と、
上記偏向角を制御し、上記偏向角補償手段が出射した上記レーザ光を走査方向へ走査する走査制御手段と、
上記偏向角補償手段が出射した上記レーザ光を回折させ、光ファイバに照射する位相変調型の透過型回折格子を有する位相マスクと、
上記偏向角補償手段と上記位相マスクとの間に設けられ、上記偏向角補償手段が出射したレーザ光を上記位相マスクへ通過する開口部を有する遮光手段とを備え、
上記走査制御手段は、
上記偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査区間が上記遮光手段に収まる範囲で、上記レーザ光を開口部よりも大きく走査して上記走査区間の両端に遮光領域を存在させるとともに、上記レーザ光が上記遮光領域を走査する期間に、上記レーザ光の走査速度の助走または反転を行ない、上記光ファイバにグレーティングを形成する際にアポダイゼーションを行うことを特徴とする走査型露光装置。 - 走査制御手段は、
時系列制御信号にしたがって偏向角を制御し、
所定の走査周期で上記時系列制御信号を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - 走査制御手段は、
時系列制御信号にしたがって偏向角を制御し、
偏向角補償手段が出射したレーザ光の走査速度とアポダイゼーションの目標照射強度分布とを逆比例の関係にして計算した走査位置−時間ダイヤグラムを上記時系列制御信号とすることを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - レーザ光源は、
連続発振するレーザ光を出射することを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - レーザ光源は、
所定のパルス周期で発振するパルスレーザ光を出射するとともに、
走査制御手段は、
時系列制御信号の走査周期と上記パルス周期との整数比の最小公倍数が大きくなるように、上記走査周期を定めることを特徴とする請求項2記載の走査型露光装置。 - 偏向手段は、
走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第1反射鏡とするとともに、
偏向角補償手段は、
上記第1反射鏡の揺動角度と絶対値が等しく逆方向に、上記走査制御手段によって走査方向の揺動角度が制御される第2反射鏡とし、
上記第1反射鏡および上記第2反射鏡を順次反射させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射することを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - 偏向手段は、
回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御される第1ウェッジと、
上記第1ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が上記走査制御手段によって制御される第2ウェッジとから構成されるとともに、
偏向角補償手段は、
回転軸周りの回転角速度が上記走査制御手段によって制御される第3ウェッジと、
上記第3ウェッジと共有する回転軸周りの回転角速度が上記走査制御手段によって制御される第4ウェッジとから構成され、
上記第1ウェッジ、上記第2ウェッジ、上記第3ウェッジおよび上記第4ウェッジを順次透過させて、レーザ光源が出射したレーザ光を遮光手段へ出射することを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - 第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジおよび第4ウェッジは、
同一形状で同一材料によってそれぞれ構成され、
上記第2ウェッジは、
上記第1ウェッジと位相差を有することなく、上記第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で制御され、
上記第3ウェッジは、
上記第1ウェッジと180°の位相差を有し、上記第1ウェッジの回転角速度で制御され、
上記第4ウェッジは、
上記第2ウェッジと180°の位相差を有し、上記第1ウェッジの回転角速度と絶対値が等しく逆方向の回転角速度で制御されることを特徴とする請求項7記載の走査型露光装置。 - 第1ウェッジ、第2ウェッジ、第3ウェッジまたは第4ウェッジの少なくともいずれか1つは、
その回転軸と直交する平面形状の入射面または出射面を有することを特徴とする請求項7記載の走査型露光装置。 - 走査制御手段は、
第3ウェッジおよび第4ウェッジの回転走査に同期して、上記第3ウェッジおよび上記第4ウェッジを走査方向へ並進走査することを特徴とする請求項7記載の走査型露光装置。 - 第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、上記第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを上記走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えることを特徴とする請求項7記載の走査型露光装置。
- 第4ウェッジと遮光手段との間に設けられ、上記第4ウェッジの回転軸および走査方向と直交する方向にのみレンズ作用を有し、レーザ光の走査区間以上の長さを上記走査方向に有するシリンドリカルレンズを備えるとともに、
走査制御手段は、
第3ウェッジおよび上記第4ウェッジの並進走査とともに、上記シリンドリカルレンズを上記走査方向へ並進走査することを特徴とする請求項10記載の走査型露光装置。 - 偏向角補償手段は、
その光軸に対して所定の入射角で偏向手段からレーザ光が入射すると、上記入射角を上記光軸からの距離に変換して上記レーザ光を出射するFθ光学系とすることを特徴とする請求項1記載の走査型露光装置。 - 偏向手段は、
回転軸周りの回転角速度が走査制御手段によって制御され、上記回転軸と平行に設けられた複数の平面鏡によってレーザ光源が出射したレーザ光をFθ光学系へ反射する多面体反射鏡とすることを特徴とする請求項13記載の走査型露光装置。 - 多面体反射鏡は、
その回転軸と直交する平面によって切断された切断面形状が正多角形となるように、複数の平面鏡を備えることを特徴とする請求項14記載の走査型露光装置。
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