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JP4129969B2 - 放電励起レーザ装置 - Google Patents

放電励起レーザ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電によってレーザ媒質を励起する放電励起レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、放電によりレーザ媒質を励起する放電励起レーザ装置において、主電極の消耗に伴ってレーザ光の断面形状(これをビームプロファイルと言う)が変動するという問題が知られている。これを解決するための技術の一例が、特開平4−101476号公報に開示されている。
図10は、同公報に開示されたエキシマレーザ装置を表している。図10において、エキシマレーザ装置1は、レーザガスを所定の圧力比で密封したレーザチャンバ2を備えている。レーザチャンバ2の内部には、アノード5A及びカソード5Bからなる主電極5A,5Bが図中紙面と垂直方向に対向して配設されている。そして、図示しない高圧電源からこの主電極5A,5Bに高電圧を印加して放電を起こし、レーザ媒質を励起してレーザ光11を発振させている。
【0003】
レーザチャンバ2内で発生したレーザ光11は、リアウィンドウ9から後方(図中左方)に出射し、グレーティング23によって発振波長のスペクトル幅が細くなるように狭帯域化される。狭帯域化されたレーザ光11は、リアウィンドウ9からレーザチャンバ2に再入射し、フロントウィンドウ7及びフロントミラー8を通ってエキシマレーザ装置1から出射し、図示しないステッパ等の半導体加工装置の加工用光源となる。
このとき、レーザチャンバ2の前後には、開口部45を有するスリット48が配設されている。このスリット48によって、レーザ光11のビーム幅を開口部45の幅に制限し、レーザ光11を狭帯域化した場合の発振スペクトルがより細くなるようにしている。
【0004】
図11に、同公報に開示された電極の詳細図を示す。図11において、上下方向に対向して設置されたカソード5Bとアノード5Aとの間に、図示しない高圧電源から高電圧を印加し、主放電35を起こしてレーザ光11を発振させる。主放電35の起きる領域を、放電空間16と呼ぶ。このときガス流36は、左から右へ流れるものとする。
このとき、カソード5B及びアノード5Aの少なくとも一方の電極の両側方には、金属電極46Aと、その周囲を覆うアルミナセラミック等のセラミック材46Bとからなる電界緩和バー46が設置されている。金属電極46Aは、主電極5A,5Bと同電位になって静電的に電位を保持し、主電極5A,5Bが消耗した場合にも放電空間16内の電気力線47が略平行になるように電界を均一化する。この電界緩和バー46により、主電極5A,5Bの消耗によって放電空間16が図中左右方向に膨張するのを軽減し、ビームプロファイルを安定化している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
即ち、近年の半導体の高集積化要求に伴って、半導体加工装置の解像度を向上させ、さらに微細な加工を行なうことが求められている。そのためには、加工用光源であるレーザ光11のビームプロファイルを、さらに精度よく安定化させる必要がある。
このような、高精度のビームプロファイルの安定化のためには、電界緩和バー46によって主電極5A,5Bの消耗時の放電空間16の膨張を防止するだけでは不十分であり、さらなる安定化技術が必要とされている。
【0006】
また、放電空間16の膨張や変動は、主電極5A,5Bの消耗によるばかりではなく、例えばレーザガスの放電による劣化や、これに伴う主電極5A,5B間に印加される高電圧の変動等によっても起こる。そのため、電界緩和バー46のみでは、放電空間16の膨張や変動を抑えきれない場合がある。
さらには、放電空間16は、ガス流36の流れる方向に移動することがあり、これによって、フロントミラー8等の光学部品に対するレーザ光11のアライメントがずれ、レーザ光11のパワーが低下する。電界緩和バー46によっては、このような放電空間16の移動の防止は困難である。
【0007】
また、半導体加工装置の解像度を向上させるために、レーザ光11の発振スペクトル幅をより細くすることが求められている。そのためには、スリット48によってビーム幅を制限してレーザ光11のビーム幅を狭くし、ビーム発散角を狭める必要がある。
ところが、スリット48の開口部45の幅に比較して放電空間16が広い場合には、開口部45の幅よりも外側の、レーザ発振に寄与しない放電空間16が大きくなり、エキシマレーザ装置1のエネルギー効率が低下する。これを防ぐために、幅の細い主電極5A,5Bを使用して狭い放電空間16内で主放電35を行なわせることが行なわれている。
しかしながら、このように幅の細い主電極5A,5Bを使用すると、電界緩和バー46のみの働きによっては、放電空間16が主電極5A,5Bの幅よりも広がるのを抑えることが困難である。そのため、主放電35のために投入したエネルギーのうちレーザ光11の発振に寄与するエネルギーが低くなり、エネルギー効率が低下するという問題がある。
さらには、電界緩和バー46によって放電空間16の幅を抑制することが困難であるため、ビームプロファイルが不安定になりやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、放電空間の形状を安定化して、安定なビームプロファイルを得ることが可能な放電励起レーザ装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために本発明は、放電空間を挟んで対向して配置され、互いの間で主放電を起こしてレーザ媒質を励起する主電極と、主放電の前に予備放電を起こして、放電空間を予め電離させる予備電離電極とを備えた放電励起レーザ装置において、放電空間の側方に、主電極と長手方向に略平行に電界制御電極を配置し、前記電界制御電極に負の電界制御電圧を印加し、放電空間の電子を反発させて、レーザビームのプロファイルが所望のものとなるように整形している。
これにより、放電空間を移動する電子が反発力によって放電空間内に押し込められ、放電空間が左右方向に広がるのが抑制される。これにより、ビームプロファイルの変動がより小さくなり、安定なビームプロファイルが得られる。またこれにより、放電空間の幅を、発振したレーザ光のビーム幅とほぼ変わらない大きさにすることが可能である。即ち、レーザ光のビーム幅よりも外側の、発振に寄与しない放電空間が小さくなるので、レーザ光の発振に寄与するエネルギーの割合が増え、レーザ装置の効率が高くなる。特に、幅の狭い主電極を使用した場合には放電空間の幅が広がりやすいので、それを抑えることにより、エネルギー効率を向上させる効果が大きい。
【0010】
また本発明は、放電空間を挟んで対向して配置され、互いの間で主放電を起こしてレーザ媒質を励起する主電極と、主放電の前に予備放電を起こして、放電空間を予め電離させる予備電離電極と、主電極間及び予備電離電極に電圧を印加する高圧電源とを備えた放電励起レーザ装置において、放電空間の側方に主電極と長手方向に略平行に配置された電界制御電極と、電界制御電極に負の電界制御電圧をかける外部電源とを備えている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。尚、各実施形態において、前記従来技術の説明に使用した図、及びその実施形態よりも前出の実施形態の説明に使用した図と同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0012】
まず、第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係るエキシマレーザ装置の平面図、図2はそのA−A視断面図を示している。
尚、以下の説明において、図2における紙面と垂直な方向を長手方向、長手方向に垂直でガス流の流れる図中左右方向を左右方向、長手方向及びガス流方向に垂直で、図中上下方向を上下方向と言う。
【0013】
図1、図2において、エキシマレーザ装置1は、例えばフッ素(F2)、クリプトン(Kr)、及びネオン(Ne)を含むレーザガスが所定の圧力比で密封された、レーザチャンバ2を備えている。
レーザチャンバ2の内部には、アノード5A及びカソード5Bからなる主電極5A,5Bが、放電空間16を挟んで上下方向に対向して配設されている。
レーザガスは、主電極5A,5B間の主放電35によって放電空間16で励起され、長手方向にレーザ光11を発生する。
【0014】
発生したレーザ光11は、リアウィンドウ9から後方(図1中左方)に出射し、レーザチャンバ2の外部後方に設けられた狭帯域化ユニット20に入射する。レーザ光11は、その内部でプリズム22,22によってビーム幅を広げられ、グレーティング23によって発振波長のスペクトル幅を狭帯域化される。
狭帯域化されたレーザ光11は、リアウィンドウ9からレーザチャンバ2に再入射し、フロントウィンドウ7及びフロントミラー8から出射する。
このとき、レーザチャンバ2の前後には、開口部45を有するスリット48,48が配設されている。これにより、発振するレーザ光11のビーム幅を開口部45の幅にまで細くし、レーザ光11の発散角を小さくすることにより、狭帯域化した場合の発振スペクトルがより細くなるようにしている。
【0015】
図2に示すように、レーザチャンバ2の内部には、レーザガスをレーザチャンバ2内部で循環させて放電空間16に送り込む貫流ファン14と、放電によって熱を与えられたレーザガスを冷却するための熱交換器3とが、それぞれ所定位置に設置されている。このときのレーザガスのガス流36は矢印で表され、放電空間16を図中左から右に流れている。放電空間16に対する図中左側を上流側、右側を下流側とそれぞれ呼ぶ。
アノード5Aの側方には、銅等でできた棒状の内部導電体26と、この外周を包囲する誘電体27とで構成された、予備電離電極18が配設されている。
そして、主電極5A,5B間の上下方向略中間位置の、ガス流36に対して上流側及び下流側には、銅等からなる棒状の導電体によって構成された電界制御電極37,37が、長手方向に主電極5A,5Bに略平行に配置されている。
【0016】
図3に、エキシマレーザ装置の充放電回路図を、図4に放電空間近傍の拡大図を示す。図3において充放電回路は、高圧電源13、可飽和リアクトルL、コンデンサC2、主放電コンデンサCp1、及び予備放電コンデンサCp2を備えている。
そして、アノード5Aは高圧電源13の接地側(GND)に、カソード5Bは高圧電源13の高圧側(−V)に、また内部導電体26は予備放電コンデンサCp2を介して高圧電源13の高圧側(−V)に、それぞれ接続されている。
また、電界制御電極37,37は、外部電源44のマイナス側高電圧(−VE)に接続されている。外部電源44は、例えば直流電源であり、常にこの電界制御電極37,37にマイナスの電界制御電圧(−VE)を印加し続けている。外部電源44の接地側と高圧電源13の接地側とは同電位となっている。
【0017】
高圧電源13内部の図示しないスイッチが短絡されると、コンデンサC2に電荷が蓄積され、可飽和リアクトルLの両端に電圧が印加されて、所定時間後に可飽和リアクトルLが低インピーダンスになって、コンデンサC2の電荷が主放電コンデンサCp1に移行する。そして、主放電コンデンサCp1の両極間の電圧が所定の値に達すると、図4に示すようにアノード5Aと内部導電体26との間に予備放電19が起き、ほぼ同時に、アノード5Aとカソード5Bとの間に主放電35が起きる。
予備放電19により、図示しない紫外線光が発生し、放電空間16のレーザガスを予めイオン化(予備電離)する。これにより、主放電35がアーク放電となるのを防ぎ、主放電35が放電空間16全域にわたって、均一にかつ安定に行なわれるようにしている。
【0018】
この予備放電19の際に、内部導電体26からアノード5Aに電子が移動する。このとき、マイナスの電荷を有している電子は、左右の電界制御電極37に印加されているマイナスの電界制御電圧(−VE)によって反発力を受け、放電空間16の内側へと押し込まれる。
これにより、予備放電19の起きる領域が左右方向に狭まるため、レーザガスが予備電離される範囲も左右方向に狭まる。レーザガスは予備電離された範囲が優先的に主放電35に寄与するので、これによって主放電35の起きる範囲が狭まり、放電空間16の左右方向における膨張を抑えることができる。
【0019】
さらに主放電35の際にも、電子はカソード5Bからアノード5Aに流れる間に左右の電界制御電極37,37から反発力を受け、左右両側から放電空間16の内部へと押し込められる。これにより、主放電35の起きる範囲が狭まって、放電空間16の左右方向における膨張を抑えることができる。
【0020】
以上説明したように本実施形態によれば、放電空間16の両側に電界制御電極37を設け、これにマイナスの電界制御電圧(−VE)を印加している。これにより、電子が放電空間16の内側へと押し込まれ、放電空間16の膨張が防止され、ビームプロファイルが安定化する。
また、放電空間16の膨張が防止されるので、主電極5A,5Bから主電極5A,5B以外のレーザチャンバ2内の部品への放電(以下このような、電極間ではなく他の部品との間で行なわれ、レーザ発振に寄与しない放電を寄生放電と言う)が起きにくくなる。これにより、主放電35が安定するとともに、部品を主電極5A,5Bに近接させることが可能となり、エキシマレーザ装置1を小型化することも可能である。
【0021】
また、放電空間16の膨張がなくなるので、放電空間16の幅と開口部45の幅とをほぼ一致させることが可能となる。これにより、レーザ発振に寄与しない主放電35の割合が減って、放電空間16に投入されたエネルギーが効率良くレーザ発振に使用され、エキシマレーザ装置1のエネルギー効率が向上する。
また、主電極5A,5B間に高電圧を印加しても放電空間16が膨張することがないので、放電空間16に、より高密度のエネルギーを投入することができる。これにより、レーザ光11のパワーを上げることが可能となる。
尚、このような場合には、主電極5A,5B間に高電圧を印加するほど放電空間16が大きく膨張しようとするので、印加する高電圧が高いほど、電界制御電圧(−VE)を高くするのがよい。
【0022】
また、電子がカソード5Bからアノード5Aへほぼ直線的に移動するので、図4に示すように、放電空間16の電気力線47が左右方向に平行となって電界が均一となる。これにより、レーザ光11のビームプロファイルが整ったものになる。さらに、主電極5A,5Bが主放電35によって消耗しても、常に電気力線が平行であるために放電空間16の形状が一定となり、ビームプロファイルが変動せずに安定なレーザ発振を行なえる。
【0023】
また、電界制御電極37を金属の棒状にしているので構造が簡単である。しかも細い棒状にしているので、放電空間16には近接させながらも、主電極5A,5Bからは遠ざけることが可能である。従って、主電極5A,5Bと電界制御電極37の間で寄生放電が起きることがなく、主放電35が乱れることがない。また、これによって電界制御電極37に、より高い電界制御電圧(−VE)を印加できるので、放電空間16をより確実に狭めることが可能である。
【0024】
さらに、図5に示すように、主電極5A,5Bの少なくとも一側に幅の細い電極を使用する場合に、この電界制御電極37の効果は特に顕著である。
即ち、従来技術の項で述べたように、幅の細い主電極5A,5Bに対しては、放電空間16の幅は主電極5A,5Bの幅の数倍にも広がることがある。これに対して、電界制御電極37に電界制御電圧(−VE)を印加することにより、放電空間16の幅をスリット48の開口部45の幅に略一致させることができる。これによって、レーザ光11の幅と放電空間16の幅とが略一致し、投入したエネルギーが効率的にレーザ発振に利用され、高パワーのレーザ光11を得ることができる。
そして、このようにビーム幅を細くすることでレーザ光11を狭帯域化した場合の発振スペクトルが細くなる。従って、このレーザ光11を加工に使用した場合に、解像度が向上して、より微細な加工が可能となる。
【0025】
尚、予備放電及び主放電35の両方の放電が行なわれる間、常に電界制御電極37に電界制御電圧(−VE)を印加し続けるように説明したが、これに限られるものではなく、一方の放電のときにのみ電界制御電圧(−VE)を印加してもよい。或いは、外部電源44をパルス電源とし、予備放電19及び主放電35の少なくともいずれか一方が起きる際に、電界制御電圧(−VE)を印加するようにしてもよい。
また、高圧電源13と別個の外部電源44を設け、これによって電界制御電圧(−VE)を印加するように説明したが、これに限られるものではない。例えば、内部導電体26と電界制御電極37とを接続し、予備放電19の際に、電界制御電極37に電界制御電圧(−VE)がパルス状に印加されるようにしてもよい。或いは、電界制御電極37とカソード5Bとを接続し、主放電35の際に、電界制御電圧(−VE)がパルス状に印加されるようにしてもよい。このようにすれば、外部電源44が不要になって配線も単純化されるとともに、必要な場合にだけ電界制御電圧(−VE)を印加することが可能となり、効率よく電界制御電圧(−VE)を印加することができる。
尚、このように電界制御電極37を、内部導電体26又はカソード5Bと接続する場合には、何らかの電圧変換手段を用いて、電界制御電極37にかかる電界制御電圧(−VE)を所望の値に変更するのがよい。
【0026】
また、電界制御電極37,37に印加する電界制御電圧(−VE)を、放電空間16の上流側と下流側とで同一にするように説明したが、これに限られるものではない。
即ち、放電空間16は、ガス流36によって下流側により大きく膨らむ傾向があるので、例えば下流側に配置した電界制御電極37に印加する電界制御電圧(−VE)を、上流側よりも大きくすることにより、さらにきめ細かに放電空間16を制御することが可能となる。
また、印加する電界制御電圧(−VE)の値は、主放電35の状況やビームプロファイルを観察して決定するのがよい。
【0027】
また、電界制御電極37を、放電空間16の上流側及び下流側の双方に設けるように説明したが、これに限られるものではなく、例えば下流側のみに配置してもよい。上述したように放電空間16は下流側に大きく膨らむので、電界制御電極37を下流側に設置することにより、放電空間16が膨らむのをより効果的に抑制することができる。さらに、電界制御電極37が放電空間16のガス流36を乱すことがなく、主放電35が好適に行なわれる。
また、例えば上流側にのみ設置すれば、電界制御電極37と主電極5A,5Bとの間で寄生発振が起きにくくなり、電界制御電極37を放電空間16により近づけたり、より強い電界制御電圧(−VE)を印加したりすることができ、放電空間16を抑制する力が大きくなる。
【0028】
以下、本実施形態に係る電界制御電極37の形状の他の例を示す。
図6は第2の形状の例であり、電界制御電極37を網状としている。これにより、電界制御電極37がガス流36を妨げる度合いが小さくなり、例えば一部の領域で極端にガス流速が低下するようなことがないので、レーザ光11のパワーや発振周波数を上げることが可能である。さらに、放電空間16に対して一様に電界制御電圧(−VE)を印加できるので、主放電35によって放電空間16を移動する電子が確実に内側へ押し込められ、放電空間16をより効率良く狭めることが可能となる。また、カソード5Bを出たばかりのところから電子が押し込め力を受けるので、電子がより垂直に近い動きをする。従って、放電空間16の形状がより長方形に近づき、ビームプロファイルが整ったものになる。
尚、他の応用例として、棒状の細い電界制御電極37を複数本、主電極5A,5Bに平行に上下方向に並べるようにしてもよい。
【0029】
図7は第3の形状の例であり、電界制御電極37を流線形の、例えば水滴状としている。これにより、電界制御電極37がガス流36を妨げる度合いがさらに小さくなり、ガス流速が低下しないので、発振周波数を上げることが可能である。
図8は第4の形状の例であり、電界制御電極37を、棒状の導電体39の周囲を、誘電体チューブ38で覆った形状とし、導電体39に電界制御電圧(−VE)を印加している。これにより、電界制御電極37と、主電極5A,5Bや他のレーザチャンバ2内の部品との間で寄生放電が起きるようなことがなく、主放電35が安定する。
【0030】
次に、第2実施形態について説明する。図9に、本実施形態に係る電極の詳細図を示す。図9において、外部電源44と高圧電源13とは、いずれもエキシマレーザ装置1をコントロールするレーザコントローラ4に接続され、その指示に基づいて電圧を印加するようにしている。尚、図9において予備電離電極は図示を省略する。
レーザコントローラ4は、例えば図示しない加工機からの指令に基づき、レーザ光11の発振周波数を決定する。そして、レーザコントローラ4は発振周波数を高圧電源13に指示し、高圧電源13は主放電35を行なってレーザ光11を発振周波数でパルス発振させている。
【0031】
このとき、レーザコントローラ4は外部電源44にも指令信号を出力し、電界制御電圧(−VE)の値を適切な値に定めている。例えば、放電空間16が下流側に向かって移動するようであれば、下流側に配置した電界制御電極37Bに印加する電界制御電圧(−VE)を、上流側よりも高くする。これにより、発振周波数の変化に基づく放電空間16の移動を防止し、放電空間16の位置を常に一定として、ビームプロファイル及びレーザ光11のパワーの安定化を実現している。
また、放電空間16は、発振周波数に応じて膨張の度合いが変わることもある。従ってレーザコントローラ4は、外部電源に出力する指令信号の値を、例えば放電空間16が大きく広がるような発振周波数であれば強めの電界制御電圧(−VE)を、さほど広がらない発振周波数であれば弱めの電界制御電圧(−VE)を、それぞれ印加するようにしている。これにより、常に一定の形状の放電空間16が得られ、ビームプロファイルが安定する。
【0032】
また、他の応用例としては、次のようなものがある。
主放電35を長期間続けると、レーザガスの劣化に伴って、レーザ光11のパワーが低下する。これに伴い、レーザコントローラ4はレーザ光11のパワーをモニターし、パワーが下がると主電極5A,5Bに印加する高電圧を上げるようにしている。
このとき、レーザガスが劣化すると、放電空間16が変動してビームプロファイルが変動する。これを防止するため、上記高電圧に基づいてレーザガスの劣化度を推定し、この劣化度に応じて電界制御電極37A,37Bに印加する電界制御電圧(−VE)を制御するようにすれば、放電空間16の位置及び幅を常に一定に保つすることが可能となる。
【0033】
また、主電極5A,5Bは主放電35を長時間行なうにつれて次第に消耗し、ビームプロファイルが変動することが知られている。これを防止するため、主放電35を行なった時間又はパルス放電数に応じて、レーザコントローラ4から外部電源44に指令を送り、電界制御電極37に印加する電界制御電圧(−VE)を制御することにより放電空間16の形状を安定化することが可能である。
或いは、エキシマレーザ装置1から発振したビームプロファイルをビームプロファイル検出器等で常にモニターし、このビームプロファイルの変動に基づいて電界制御電圧(−VE)を制御するようにしてもよい。
このようにすれば、ビームプロファイルの変動を抑制し、常に安定したビームプロファイルを得ることが可能となる。
【0034】
尚、本発明はエキシマレーザについて説明したが、放電励起のレーザ装置すべてについて応用可能であり、特にフッ素レーザについてはエキシマレーザとまったく同様に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るエキシマレーザ装置の平面図。
【図2】図1のA−A視断面図
【図3】エキシマレーザ装置の充放電回路図。
【図4】放電空間近傍の拡大図。
【図5】細い主電極を使用した場合の電極の詳細図。
【図6】電界制御電極の第2形状の例。
【図7】電界制御電極の第3形状の例。
【図8】電界制御電極の第4形状の例。
【図9】第2実施形態に係る電極の詳細図。
【図10】従来技術に係るエキシマ装置の平面図。
【図11】電極の詳細図。
【符号の説明】
1:エキシマレーザ、2:レーザチャンバ、3:熱交換器、4:レーザコントローラ、5:主電極、7:フロントウィンドウ、8:フロントミラー、9:リアウィンドウ、11:レーザ光、13:高圧電源、14:貫流ファン、16:放電空間、18:予備電離電極、22:プリズム、23:グレーティング、35:主放電、36:ガス流、37:電界制御電極、38:誘電体チューブ、39:導電体、44:外部電源、45:開口部、46:電界緩和バー、48:スリット。

Claims (2)

  1. 放電空間(16)を挟んで対向して配置され、互いの間で主放電(35)を起こしてレーザ媒質を励起する主電極(5A,5B)と、
    主放電 (35) の前に予備放電 (19) を起こして、放電空間 (16) を予め電離させる予備電離電極 (18) を備えた放電励起レーザ装置において、
    放電空間(16)の側方に、主電極(5A,5B)と長手方向に略平行に電界制御電極(37)を配置し、
    前記電界制御電極 (37) に負の電界制御電圧 (-VE) を印加し、放電空間 (16) の電子を反発させて、レーザビームのプロファイルが所望のものとなるように整形する
    ことを特徴とする放電励起レーザ装置。
  2. 放電空間 (16) を挟んで対向して配置され、互いの間で主放電 (35) を起こしてレーザ媒質を励起する主電極 (5A,5B) と、
    主放電 (35) の前に予備放電 (19) を起こして、放電空間 (16) を予め電離させる予備電離電極 (18) と、
    主電極 (5A,5B) 間及び予備電離電極 (18) に電圧を印加する高圧電源 (13) と、
    を備えた放電励起レーザ装置において、
    放電空間 (16) の側方に主電極 (5A,5B) と長手方向に略平行に配置された電界制御電極 (37) と、
    電界制御電極 (37) に負の電界制御電圧 (-VE) をかける外部電源 (44) とを備えた
    ことを特徴とする放電励起レーザ装置。
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