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JP4123810B2 - Threaded joint for steel pipes with excellent seizure resistance and its surface treatment method - Google Patents

Threaded joint for steel pipes with excellent seizure resistance and its surface treatment method Download PDF

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JP4123810B2
JP4123810B2 JP2002109040A JP2002109040A JP4123810B2 JP 4123810 B2 JP4123810 B2 JP 4123810B2 JP 2002109040 A JP2002109040 A JP 2002109040A JP 2002109040 A JP2002109040 A JP 2002109040A JP 4123810 B2 JP4123810 B2 JP 4123810B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属粉を含むコンパウンドグリスを塗布せずに使用できるようにするために、油井管といった鋼管用ねじ継手の表面に、耐焼付き性、耐摩耗性、密着性に優れた固体潤滑被膜を形成するための表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油井掘削に用いられる鋼管である油井管は、鋼管用ねじ継手で締結される。このねじ継手は、雄ねじを備えたピンと、雌ねじを備えたボックスとから構成される。図1に模式的に示すように、通常は鋼管Aの両端の外面に雄ねじ3Aを形成してピン1とし、別部材のスリーブ型の継手部材Bの内面に両側から雌ねじ3Bを形成してボックス2とする。図1に示す通り、鋼管Aは、その一方の端部に予め継手部材Bを締付けた状態で出荷されるのが普通である。
【0003】
鋼管用ねじ継手には、鋼管と継手の重量に起因する軸方向引張力や地中での内外面圧力などの複合した圧力に加え、地中での熱が作用するので、このような環境下でも破損せずに気密性 (シール性) を保持することが要求される。また、油井管の降下作業時には、一度締込んだ継手を緩め、再度締直して締結することがある。そのため、API (米国石油協会) では、チュービング継手においては10回の、ケーシング継手においては3回の締付け (メイクアップ) 、緩め (ブレークアウト) を行っても、ゴーリングと呼ばれる焼付きの発生が無く、気密性が保持されることを求めている。
【0004】
近年では、気密性向上の観点から、金属対金属接触によるメタルシールが可能な特殊ねじ継手が一般に使用されるようになっている。この種のねじ継手では、ピンとボックスのいずれも、雄ねじまたは雌ねじからなるねじ部に加えて、ねじ無し金属接触部を有しており、この両部分が接触表面となる。ピンとボックスのねじ無し金属接触部同士が当接して、金属−金属接触によるメタルシール部が形成され、気密性が向上する。
【0005】
このようなねじ継手では、特に金属接触部の焼付きを防止するため、コンパウンドグリスと呼ばれる高潤滑のグリスが使用されてきた。液体潤滑剤であるこのグリスを、締付け前にピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に塗布する。しかし、このグリスには有害な重金属が多量に含まれており、締付けに伴って周囲にはみ出たグリスを洗浄液で洗浄するが、この作業でコンパウンドグリスやその洗浄液が海洋や土壌に流出して環境汚染を引き起こすことが問題視されるようになった。また、締付けを繰り返すたびに必要となるグリス塗布と洗浄が、現場での作業効率を低下させるという問題もあった。
【0006】
そこで、コンパウンドグリスの塗布が不要な鋼管用ねじ継手として、特開平8−103724号、特開平8−233163号、特開平8−233164号、特開平9−72467 号各公報には、ねじ部やねじ無し金属接触部 (即ち、接触表面) に、表面処理によって、樹脂と固体潤滑剤である二硫化モリブデンまたは二硫化タングステンとからなる固体潤滑被膜を形成したねじ継手が開示されている。
【0007】
これらの公報には、固体潤滑被膜と基材との密着性を高めるために、燐酸マンガン系化成処理被膜層、窒化層と燐酸マンガン系化成処理被膜層、5〜40μmの凹凸を設けることも開示されている。特開平8−103724号公報には、固体潤滑被膜を形成する際の加熱ベーキング処理を 150〜300 ℃の温度範囲で20〜30分の加熱により実施することが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
表面処理により固体潤滑被膜を形成して接触表面に潤滑性を付与したねじ継手を使用すると、コンパウンドグリスの塗布が不要となり、前述した環境問題や作業効率の問題は解消できるはずである。
【0009】
しかし、上述した従来の表面処理により形成された固体潤滑被膜では、コンパウンドグリスを塗布した場合に得られるような高い焼付き防止効果が得られず、依然として締付け・緩めを数回繰り返すだけでゴーリングと呼ばれる焼付き疵を生じることがあり、焼付き防止効果が不十分であった。
【0010】
さらに、近年、従来より高温の 250〜300 ℃の使用環境下で用いる高温油井や、原油回収効率を高める目的で臨界温度にも達する高温蒸気(350℃)を注入する蒸気注入油井に使用するため、耐熱性の鋼管用ねじ継手が要求されている。従って、鋼管用ねじ継手には、継手締結後に350 ℃前後の温度で耐熱試験を実施した後、緩め−再締結の作業を行っても、耐焼付き性や気密性が保証される性能が要求されるようになってきた。上述した従来の固体潤滑被膜は、特にこのような耐熱性継手に要求される性能を確保することが難しかった。
【0011】
本発明は、耐熱性の鋼管用ねじ継手においても繰り返しの締付け・緩めの際の焼付きの発生を効果的に抑制することができる、耐焼付き性に優れた固体潤滑被膜を形成することができる、鋼管用ねじ継手の表面処理方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋼管用ねじ継手の接触表面に形成した従来の固体潤滑被膜の耐焼付き性が不十分である原因が、被膜の硬度不足にあり、その硬度不足は、塗膜の乾燥が不十分であることに起因することを突き止めた。
【0013】
ねじ継手の固体潤滑被膜は、一般に、揮発性の溶媒中に樹脂と潤滑性粉末 (例、二硫化モリブデン) とを含有させた塗布液をねじ継手の接触表面に塗布し、加熱して塗膜を乾燥 (ベーキング、焼付け) するという表面処理により形成される。従来技術のように 150〜300 ℃に加熱して塗膜を乾燥するだけでは、たとえ加熱時間を延長しても、溶媒を完全に蒸散させることができず、微量の溶媒や水分が被膜内に封じ込められ、これが内部欠陥となるため、十分な被膜の硬質化と耐摩耗性が得られないことがわかった。このような状態の固体潤滑被膜では、ねじ継手の締付けと緩めを繰り返すうちに、固体潤滑被膜が摩耗により消耗し、遂には被膜切れを起こして、金属−金属間接触を生じるに至り、焼付きを発生するのである。
【0014】
そこで、固体潤滑被膜を完全に乾燥させ、より硬質で耐摩耗性が改善された被膜を形成する手段について探求した結果、乾燥を少なくとも2段階で実施し、まず低温で一次加熱を行った後、それより高温で二次加熱を行うことにより、従来技術のように一定温度で加熱する場合より硬度が高く、耐摩耗性と耐焼付き性に優れた固体潤滑被膜が形成されことを究明し、本発明に到達した。
【0015】
本発明は、1側面において、
ねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接触表面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成される鋼管用ねじ継手の表面処理方法であって、
溶媒中に樹脂と潤滑性粉末とを含む塗布液を、ピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に塗布する工程、および
塗膜を、70℃〜150℃の温度範囲での一次加熱と150℃超〜380℃の範囲での二次加熱とから少なくとも構成される多段加熱により乾燥させて、該表面にJIS−K7202(但し、被着材厚みは2mm)に準拠して測定されたロックウェルMスケールで70〜140である固体潤滑被膜を形成する工程
を含むことを特徴とする、鋼管用ねじ継手の表面処理方法である。
【0016】
本発明の方法の1態様では、塗布工程の前に、塗布される接触表面を50〜200 ℃の温度に加熱する工程をさらに含む。
本発明の方法によれば、形成された固体潤滑被膜は、硬度がロックウェルMスケールで70〜140 となり、SAICAS法 (表面−界面切削法) により求めた付着強度が500 N/m 以上となることができる。
【0017】
本発明によれば、ねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接触表面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成される鋼管用ねじ継手において、ピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンからなる固体潤滑性粉末を樹脂中に含む固体潤滑被膜を備え、この固体潤滑被膜は、その硬度がJIS−K7202(但し、被着材厚みは2mm)に準拠して測定されたロックウェルMスケールで70〜140 であり、かつ、少なくとも2つの異なる温度での多段加熱により乾燥されたものであることを特徴とする、鋼管用ねじ継手もまた提供される。この固体潤滑被膜は、SAICAS法により求めた付着強度が500 N/m 以上であることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図2は、代表的な鋼管用ねじ継手の構成を模式的に示す概要図である。符号1はピン、2はボックス、3はねじ部、4はねじ無し金属接触部、5はショルダー部を示す。以下、ねじ無し金属接触部を単に金属接触部ともいう。
【0019】
図2に示したように、典型的なねじ継手は、鋼管端部の外面に形成された、ねじ部3(即ち、雄ねじ部)及びねじ無し金属接触部4を有するピン1と、ねじ継手部材の内面に形成された、ねじ部3(即ち、雌ねじ部)およびねじ無し金属接触部4を有するボックス2とで構成される。ただし、ピンとボックスは図示のものに制限されない。例えば、継手部材を使用せず、鋼管の一端をピン、他端をボックスとしたり、あるいは継手部材をピン (雄ねじ) として、鋼管の両端をボックスとすることも可能である。
【0020】
ピン1とボックス2のそれぞれに設けたねじ部3と (ねじ無し) 金属接触部4がねじ継手の接触表面である。この接触表面、中でも、より焼付きの起こりやすい金属接触部には、耐焼付き性が要求される。従来は、そのために、重金属粉を含有するコンパウンドグリスを接触表面に塗布していたが、前述したように、コンパウンドグリスの使用には環境面と作業効率の面で問題が多い。
【0021】
この問題を解決するため、特開平8−103724号公報に開示されるように、溶媒中に樹脂と潤滑性粉末とを含む塗布液をピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に塗布し、塗膜を 150〜300 ℃の温度に加熱して接触表面に固体潤滑被膜を形成した、コンパウンドグリスの塗布が不要なねじ継手が開発された。しかし、従来のこの種のねじ継手では、前述したように、固体潤滑被膜の耐摩耗性、特に高温での耐摩耗性が十分ではなく、締付け・緩めを繰り返す間に被膜が消耗してしまい、焼付き防止効果 (耐焼付き性) が不十分であった。
【0022】
本発明によれば、塗膜の乾燥を少なくとも二段階で行う。即ち、まず低い温度範囲で一次加熱を行って、塗膜に流動性がある間に、溶媒や水分を確実に蒸散させる。その後、一次加熱より高い温度範囲で二次加熱を行って、溶媒や水分を蒸散させると、高硬度で耐摩耗性の高い固体潤滑被膜を形成することができる。
【0023】
具体的には、塗膜の乾燥を、70〜150 ℃の温度範囲での一次加熱と、150 ℃超〜380 ℃の温度範囲での二次加熱、とから少なくとも構成される多段加熱により行う。加熱時間(温度保持時間)は、ねじ継手のサイズや形状に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは、各段階とも20分以上、より好ましくは30〜60分である。
【0024】
一次加熱の温度が70℃未満では、溶媒と水分を被膜内部から十分に蒸発させる効果が少なく、一方、150 ℃を超えると、溶媒と水分を被膜内部に残したまま固化するため、被膜の十分な硬質化と耐摩耗性を得ることができない。二次加熱の温度が150 ℃以下では、溶媒と水分を完全に被膜からに追い出すことができず、一方、380 ℃を超えると、固体潤滑被膜自体の耐熱性の関係から、逆に十分な硬度が得られなくなる。
【0025】
溶媒や水分の蒸散性の観点から、一次加熱の温度範囲は80〜140 ℃であることが好ましい。被膜硬度の観点から、二次加熱の温度範囲は 180〜350 ℃であることが好ましい。
【0026】
塗膜乾燥のための加熱は、少なくとも一次加熱と二次加熱から構成する。図3に、一次加熱と二次加熱とから構成される2段加熱の温度プロファイル (ヒートパターン) の例を示すが、図示のように、一次加熱の後、一旦冷却してから、二次加熱しても良いし、一次加熱の後、引き続き二次加熱を行っても良い。
【0027】
さらに、一次加熱および/または二次加熱をそれ自体多段加熱とすることにより、3段階以上の温度で加熱を行うことも可能である。しかし、経済性の観点からは一次加熱と二次加熱から構成される2段加熱が望ましい。
【0028】
また、一次加熱と二次加熱の両方、特に一次加熱については、図示のように、一定温度に温度保持するのではなく、温度をゆっくり上昇させながら加熱を実施してもよい。この場合、一次加熱については、70℃から150 ℃までの昇温に要した時間が20分以上であれば、本発明による一次加熱であると判定される。例えば、従来技術のように 150〜300 ℃の温度で加熱する場合、70℃から150 ℃への昇温に要する時間は一般に5分以内であり、本発明との相違は明らかである。
【0029】
本発明に係る方法で固体潤滑被膜を形成するのに用いる塗布液は、溶媒中に結合剤となる樹脂と潤滑性粉末とを含有させた分散液である。樹脂は、使用する溶媒中に溶解するものが好ましいが、分散するものでもよい。
【0030】
樹脂は、結合剤としての役割を果たすものであれば特に限定されない。耐熱性と適度な硬さと耐摩耗性を有するものが好適である。そのような樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、尿素(ウレア)樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにポリアミドイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を例示できる。
【0031】
本発明で用いる潤滑性粉末は、潤滑性を有する粉末であれば特に限定されないが、高負荷が加わることを考慮すると、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、窒化硼素、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)から選ばれた1種または2種以上の粉末を使用することが望ましい。これらのうち、特に好ましいのは、減摩効果の高い二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの粉末、あるいはこれに他の潤滑性粉末を混合した混合粉末である。
【0032】
潤滑性粉末の平均粒径は、特に限定するものではないが、 0.5〜60μmの範囲が好ましい。0.5 μm未満では、粉末同士が凝集し易くなり、塗布液中での均一分散が難くなり、潤滑性粉末が均一に分散した固体潤滑被膜が形成されず、耐焼付き性が不足することがある。一方、60μmを超えると、固体潤滑被膜の強度が低下するため、焼付きの発生を抑制できないことがある。
【0033】
樹脂と潤滑性粉末との配合比も特に制限されないが、通常は、樹脂と潤滑粉末の合計量に基づく質量%で、樹脂が10〜80%、潤滑性粉末が20〜90%の範囲内である。
【0034】
塗布液の形成に用いる溶媒としては、炭化水素系(例、トルエン)、アルコール系(例、イソプロピルアルコール)をはじめとする、各種の低沸点溶媒を単独あるいは混合して用いることができる。本発明で用いる溶媒の沸点は150 ℃以下であることが好ましい。
【0035】
固体潤滑被膜を形成するための塗布液は、溶媒、樹脂、および潤滑性粉末以外の成分を含有することができる。例えば、防錆剤その他として、亜鉛粉、クロム顔料、シリカ、アルミナ顔料の1種もしくは2種以上を添加することができる。また、着色剤を含有させて、形成された固体潤滑被膜を着色してもよい。また、分散剤、消泡剤、増粘剤等の1種または2種以上の添加剤を適宜含有させることができる。
【0036】
上記の塗布液をピンとボックスの少なくとも一方の接触表面 (ねじ部とねじ無し金属接触部) に塗布する。塗布方法は、刷毛塗り、浸漬処理、エアースプレー法等の公知の適当な方法でよい。
【0037】
塗布は、乾燥後の厚み (即ち、形成された固体潤滑被膜の膜厚) が5μm以上、50μm以下となるように行うことが望ましい。固体潤滑被膜に含まれる潤滑性粉末は、高い摺動面圧を受けて摩耗粉として接触面全体に広がり、優れた耐焼付き性を発揮するものであるが、その膜厚が5μm未満では、潤滑性粉末の含有量が少なくなり、潤滑性向上の効果が少ないことがある。一方、膜厚が50μmより大きくなると、締付け量が不十分となり、気密性が不足したり、気密性を確保するために面圧を高めると焼付きが発生し易くなったり、潤滑被膜が剥離し易くなることがある。
【0038】
塗布液が塗布されるピンおよび/またはボックスの接触表面は、本発明の効果を一層高めるため、表面粗さRmax が、機械切削後の粗さ(3〜5μm)より大きな5〜40μmとなるように粗面化しておくことが望ましい。塗布表面のRmax が5μm未満では、固体潤滑被膜の密着性が低下し、一方、40μmを超えると、摩擦が高くなり、固体潤滑被膜の摩耗を早め、繰り返しの締付け・緩めに耐えられないことがある。しかし、上記範囲でなくとも本発明の効果は得られることは言うまでもない。
【0039】
粗面化の方法としては、サンドまたはグリッドを投射する方法、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸などの強酸液に浸漬して肌を荒らす方法といった、鋼表面それ自体を粗面化する方法に加え、鋼表面より粗面の下地処理層を形成して、塗布面を粗面化する方法も可能である。
【0040】
このような下地処理の例としては、リン酸塩、蓚酸塩、硼酸塩等の化成処理被膜(生成する結晶の成長に伴い、結晶表面の粗さが増す)を形成する方法、銅めっきまたは鉄めっきのような金属の電気めっき (凸部が優先してめっきされるため、僅かであるが表面が粗くなる)を施す方法、鉄芯に亜鉛または亜鉛−鉄合金等を被覆した粒子を遠心力またはエアー圧を利用して投射し、亜鉛または亜鉛−鉄合金を被膜を形成させる投射めっき法、窒化層を形成する軟窒化法(例えば、タフトライド)、金属中に固体微粒子を分散させた多孔質被膜を形成する複合金属被覆法などが挙げられる。
【0041】
固体潤滑被膜の密着性の観点からは、多孔質被膜、特にリン酸塩化成処理(リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸鉄マンガン、リン酸亜鉛カルシウム)や、投射めっきによる亜鉛または亜鉛−鉄合金の被膜が好ましい。密着性の観点からリン酸マンガン被膜、防錆性の観点から亜鉛または亜鉛−鉄合金の被膜がより好ましい。リン酸塩系化成処理被膜や投射めっきによって形成された亜鉛または亜鉛−鉄合金の被膜は、いずれも多孔質な被膜であるため、その上に固体潤滑被膜を形成すると、固体潤滑被膜の密着性が高まる。
【0042】
下地処理層を形成する場合、その厚みに特に制約はないが、防錆性と密着性の観点から5〜40μmであることが好ましい。5μm未満では、十分な防錆性が確保できないことがある。一方、40μmを超えると、固体潤滑被膜との密着性が低下することがある。
【0043】
塗布液の塗布を行う前に、形成される固体潤滑被膜の密着性を高める目的で、塗布する接触表面 (塗布基材) を、50〜200 ℃の温度に加熱 (予熱) しておくことが望ましい。この加熱温度が50℃未満では、密着性改善効果がほとんど得られない。一方、200 ℃を超えると、塗布された塗布液 (塗膜) の粘度が低下し、必要な厚みの固体潤滑被膜を形成しにくくなるほか、密着性もかえって低下するようになる。加熱保持時間は、鋼管ねじ継手のサイズに応じて適宜設定すればよいが、塗布作業の間、基材温度が上記範囲に保持されるようにすることが好ましい。塗布直前の基材温度が上記温度範囲であり、その後は温度保持せずに塗布を行うのでも、密着性の改善効果はある。
【0044】
基材の加熱は、雰囲気炉や熱風等の公知の一般的な方法により実施できる。ボックスの加熱は、雰囲気炉内にボックスをいれて、表面を所定温度にするのが効率的かつ経済的である。ピンの加熱は、管端のねじ部のみを雰囲気炉内に入れるか、熱風で表面を所定温度に加熱すればよい。
【0045】
前記塗布液を塗布した後の塗膜の乾燥は、前述したように、少なくとも一次加熱と二次加熱とから構成される多段加熱により行う。この加熱も、上記の予熱と同様の手段により実施できるが、一定温度範囲内での温度管理が必要であるので、熱風より、雰囲気炉での加熱が好ましい。炉の雰囲気は特に制限されないが、大気雰囲気で十分である。
【0046】
本発明によれば、上記のように多段加熱により塗膜を乾燥することにより、硬質化した固体潤滑被膜を形成することができる。本発明における固体潤滑被膜は、JIS-K7202 に規定されるロックウェルMスケールの硬度(以下、単にロックウェルM硬度という)で70〜140 の範囲の硬度を持つことが好ましい。被膜のロックウェルM硬度が70未満では、繰り返しの締付け・緩めの際の摺動摩擦によって被膜の摩耗が速く、耐焼付き性が不足することがある。一方、この硬度が140 を超えると、摩耗が少なすぎ、接触界面に焼付きを防止するに十分な潤滑性粉末を供給することができないことがある。耐摩耗性の観点から、被膜硬度のロックウェルM硬度は、より好ましくは90〜140 の範囲である。
【0047】
潤滑性粉末として二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを使用した固体潤滑被膜は、従来の一段加熱による乾燥法では、ロックウェルM硬度が50程度であった。本発明によれば、潤滑性粉末が二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを含有する固体潤滑被膜を有する鋼管用ねじ継手において、被膜硬度がロックウェルM70〜140 のものを提供することが可能となる。
【0048】
鋼管用ねじ継手における固体潤滑被膜は、締付け・緩め時に高荷重下でせん断応力を受けるため、密着性が低いと剥離してしまい、焼付き防止効果を十分に発揮することができないので、密着性に優れていることが求められる。
【0049】
被膜の密着性の評価方法には多様な方法がある。簡便でよく知られた方法は、いわゆる碁盤目試験である。しかし、ねじ継手の固体潤滑被膜には、碁盤目試験で測定できるよりずっと高い密着性が求められるので、この試験法は採用できない。
【0050】
本発明者らは、ねじ継手に施す固体潤滑被膜の密着性(耐剥離性)が、「塗装技術」1995年4月号 123〜135 頁に詳述されているSAlCAS法 [表面−界面切削法(Surface and Interfacial Cutting Analysis System] により測定される付着強度によって定量的に把握でき、この値が一定以上であれば、被膜硬度が高くても、締付け・緩め中の固体潤滑被膜の剥離が防げることを見い出した。
【0051】
SAICAS法では、被膜が付着している基体を水平方向に移動させながら、鋭利な切刃を荷重下で被膜表面に押し付けて、被膜を表面から基体との界面まで斜めに切断し、界面に達した後は荷重を調整して切刃を水平に界面移動させる。この界面移動時の剥離幅 (切刃の幅) 当たりの剥離力(N/m) として被膜の付着強度を求めることができる。SAICAS法のための測定装置は、ダイプラ・ウィンテス社よりSAICASなる商品名で市販されている。
【0052】
本発明の好適態様においては、基材であるねじ継手の接触表面に形成された固体潤滑被膜は、SAICAS法により測定して500 N/m 以上の付着強度を有する。基材への付着強度が500 N/m 未満では、十分な焼付き防止効果を発揮することができないことがある。
【0053】
本発明に従って多段加熱により乾燥させた固体潤滑被膜は、従来の乾燥法によるものに比べて、付着強度も改善される傾向があるが、必要であれば、前述した基材の粗面化および/または予熱を行うと、形成された付着強度をさらに改善することができる。
【0054】
固体潤滑被膜は、ピンとボックスの一方の接触表面に形成するだけでも本発明の目的は十分に達成できるので、コスト面からは、これらのいずれか一方だけに形成することが有利である。その場合、ボックスの方が被膜の形成作業、特に加熱が容易である。固体潤滑被膜を形成しない他方の部材(好ましくはピン)の接触表面は、未被覆のままでもよい。特に、図1のように、組立て時にピンとボックスが仮に締付けられる場合には、他方の部材、例えば、ピンの接触表面が裸(切削加工まま)でも、組立て時にボックスの接触表面に形成された被膜と密着するので、ピンの接触表面の錆びも防止できる。固体潤滑被膜は接触表面の一部だけ、好ましくは金属接触部だけに形成してもよい。
【0055】
しかし、組立て時に鋼管の一方の端部のピンだけにボックスが取り付けられると、他端のピンは露出したままとなる。そのため、特にこのような露出するピンに対して防錆性、あるいは防錆性と潤滑性を付与するために、適当な表面処理を施して被膜を形成することができ、および/またはプロテクタで保護することもできる。もちろん、他方の接触表面が露出しない場合でも、この表面に被膜を形成してもよい。
【0056】
本発明に従って表面処理した鋼管用ねじ継手は、コンパウンドグリスを塗布せずに締付けられるが、所望により、固体潤滑被膜または相手部材のねじ部およびねじ無し金属接触部に油を塗布してもよい。その場合、塗布する油に特に制限はなく、鉱物油、合成エステル油、動植物油などのいずれも使用できる。この油には、防錆添加剤、極圧添加剤といった、潤滑油に慣用の各種添加剤を添加することができる。また、それらの添加剤が液体である場合、それらの添加剤を単独で油として使用し、塗布することもできる。
【0057】
防錆添加剤としては、塩基性金属スルホネート、塩基性金属フェネート、塩基性金属カルボキシレートなどが用いられる。極圧添加剤としては、硫黄系、リン系、塩素系、有機金属塩など公知のものが使用できる。その他、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤なども油に添加することができる。
【0058】
【実施例】
表1に示す炭素鋼A、Cr−Mo鋼B、13%Cr鋼Cまたは高合金鋼Dからなる鋼管(外径:7インチ<178 mm>、肉厚:0.408 インチ<10.4 mm>)のねじ継手のピンおよびボックスの接触表面に、表2に示す番号1〜5のいずれかの表面処理 (下地処理と場合により固体潤滑被膜の形成) を施した。本例では、下地処理はピンとボックスの両方の接触表面に行い、固体潤滑被膜はピンまたはボックスの一方の接触表面だけに形成した。
【0059】
固体潤滑被膜の形成に用いた塗布液は、溶媒に樹脂を溶解した樹脂溶液に潤滑性粉末を分散させた分散液であり、溶媒は、ポリアミドイミド樹脂ではエタノール/トルエン(50/50) 、フェノール樹脂ではN−メチル−2−ピロリドン/キシレン(65/35) 、エポキシ樹脂ではテトラヒドロフラン/シクロヘキサン(50/50) であった。塗布前の基材の予熱および塗布後の乾燥はいずれも雰囲気炉を用いて大気雰囲気で実施した。採用した表面処理の番号、基材の予熱温度 (塗布前の基材温度) および塗布後の塗膜乾燥のための加熱条件 (一次加熱と二次加熱の温度×時間) を表3に示す。
【0060】
別に、鋼管と同じ材質の鋼板(10 mm×50 mm 、厚み2 mm) を用いて、表2に示したのと同じ組合わせで下地処理と固体潤滑被膜の形成を行った。即ち、下地処理は、固体潤滑被膜を形成した方の部材 (即ち、No.1〜4 ではボックス、No.5ではピン) の接触表面に対して実施したのと同じものであった。形成された固体潤滑被膜の付着強度と硬度を測定した。付着強度は、ダイプラ・ウィンテス社製SAICAS BN-1 を用いて測定した。被膜硬度は、JIS-K7202 に準拠して、ロックウェルMスケールによる硬度を測定した。これらの測定結果も表3に併せて示す。
【0061】
上記の通りに表面処理を施したねじ継手を用いて、表4に示す要領で最大20回の締付け・緩めの作業を行って、その間の焼付き発生状況を調査した。即ち、表4に示すように、1〜4回目、6〜14回目、16〜20回目は常温にて締付け・緩めを行い、5回目と15回目は、常温にて締付けた後、350 ℃で24時間の加熱処理を行い、その後冷却して、常温で緩めを実施した。この締付け・緩め状況は耐熱性継手における使用状況に対応したものである。締付け速度は10 rpm、締付けトルクは10340 ft・lbs であった。表5に焼付き発生状況を示す。
【0062】
(実施例1)
表1に示す記号Aの炭素鋼製ねじ継手に下記の表面処理を施した。
ボックスの接触表面は、60番のサンドを吹き付け、表面粗さを31μmとする下地処理の後、ボックスを60℃に予熟し、その上に潤滑性粉末として二硫化モリブデンを含有するポリアミドイミド樹脂からなる、厚さ30μmの固体潤滑被膜を形成した。固体潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化モリブデン4の質量割合で含有する被膜である。塗布後の乾燥は、100 ℃で30分の一次加熱と、常温まで冷却した後、260 ℃で30分の二次加熱とにより行った。
【0063】
ピンの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとした。
表5に示すように、締付け・緩め試験では、20回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生は無く、気密性も保たれ、極めて良好であった。
【0064】
(実施例2)
実施例1を繰り返したが、塗布前のボックスの予熱温度を60℃から100 ℃に変更し、さらに塗布後の加熱条件を、100 ℃で30分の一次加熱の後、冷却せずに続けて260 ℃で30分の二次加熱を実施するように変更した。
【0065】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、20回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生は無く、気密性も保たれ、極めて良好であった。表3に示すように、実施例1と比べると、予熱温度が高い本例では、被膜硬度が若干低下し、被膜の付着強度は向上した。
【0066】
(実施例3)
表1に示す記号BのCr−Mo鋼製のねじ継手に下記の表面処理を施した。
ボックスの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)の後、その表面に厚さ15μmのリン酸マンガン化成処理被膜(表面粗さ20μm)を形成することにより下地処理した。その後、ボックスを130 ℃に予熱してから、その上に潤滑性粉末として二硫化モリブデンと黒鉛を含有するエポキシ樹脂からなる、厚さ28μmの固体潤滑被膜を形成した。固体潤滑被膜は、エポキシ樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化モリブデンと黒鉛 (質量比=9:1) を合計量で4.0 の質量割合で含有する被膜である。塗布後の乾燥は、100 ℃で30分の一次加熱と、常温まで冷却した後の、230 ℃で30分の二次加熱とにより行った。
【0067】
ピンの接触表面は機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとした。
表5に示すように、締付け・緩め試験では、20回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生は無く、気密性も保たれ、極めて良好であった。
【0068】
(実施例4)
実施例3を繰り返したが、塗布後の一次加熱温度を、実施例3の100 ℃から70℃に変更した。
【0069】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、16回目までは焼付きの発生は無い。17回以降は軽度の焼付きが発生したが手入れにより20回まで締付け・緩めができた。気密性に問題はなかった。一次加熱温度が100 ℃と高い実施例3の方が、被膜の乾燥がより完全となり、実施例4より高硬度で、付着強度も高い固体潤滑被膜となることがわかる。
【0070】
(実施例5)
表1に示す記号Cの13%Cr鋼製のねじ継手に下記の表面処理を施した。
ボックスの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)後、電気めっきにより厚さ10μmの銅めっき(表面粗さ11μm)を形成することにより下地処理した。その後、ボックスを180 ℃に予熱してから、その上に潤滑性粉末として二硫化タングステンを含有するフエノール樹脂からなる、厚さ32μmの固体潤滑被膜層を形成した。固体潤滑被膜は、フェノール樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化タングステンを4.0 の質量割合で含有する被膜である。塗布後の乾燥は、80℃で20分の一次加熱と、常温まで冷却した後の、170 ℃で60分の二次加熱とにより行った。
【0071】
ピンの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとした。
表5に示すように、締付け・緩め試験では、14回目までは焼付きの発生は無い。15回目以降は軽度の焼付きが発生したが手入れにより20回まで締付け・緩めができた。気密性に問題はなかった。本例で軽度の焼付きが15回目以降に発生したのは、ねじ継手の材質が焼付き易いものであるためである。ねじ継手の材質がAまたはBであれば、焼付きは発生しないものと推定される。
【0072】
(実施例6)
表1に示す成分記号Dの高合金製のねじ継手に下記の表面処理を施した。
ボックスの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)後、乾式衝撃めっきにより厚さ7μmの亜鉛−鉄合金層(表面粗さ18μm)を形成することにより下地処理した。その後、ボックスを100 ℃に加熱してから、その上に潤滑性粉末として二硫化モリブデンを含有するポリアミドイミド樹脂からなる、厚さ20μmの固体潤滑被膜層を形成した。固体潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化モリブデン4の質量割合で含有する被膜である。塗膜の乾燥は、80℃で30分の一次加熱と、常温まで冷却した後、170 ℃で40分の二次加熱とにより行った。
【0073】
ピンの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)のみとした。
表5に示すように、締付け・緩め試験では、14回目までは焼付きの発生は無い。15回以降は軽度の焼付きが発生したが手入れにより20回まで締付け・緩めができた。気密性に問題はなかった。本例でもねじ継手の材質が焼付きの起こり易い高合金鋼であるために15回目以降に軽度の焼付きが発生したが、材質がAまたはBであれば20回まで焼付きは発生しないであろう。
【0074】
(実施例7)
表1に示す記号Aの炭素鋼製ねじ継手に下記の表面処理を施した。
ボックスの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)後、その表面に厚さ10μmのリン酸マンガン化成処理被膜(表面粗さ10μm)を形成する下地処理のみを行った。
【0075】
ピンの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)後、その表面に厚さ15μmのリン酸亜鉛化成処理被膜(表面粗さ20μm)を形成する下地処理を行った。その後、ピン部のみを雰囲気炉内に入れて100 ℃に予熱してから、その上に潤滑性粉末として二硫化モリブデンを含有するポリアミドイミド樹脂からなる、厚さ28μmの固体潤滑被膜を形成した。固体潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化モリブデン4の質量割合で含有する被膜である。塗膜の乾燥は、ピン部のみを雰囲気炉内に入れて140 ℃で20分の一次加熱と、一旦常温まで冷却した後、280 ℃で30分の二次加熱とにより行った。
【0076】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、20回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生は無く、気密性も保たれ、極めて良好であった。
(比較例1)
表1に示す記号Aの炭素鋼製のねじ継手に下記の表面処理を施した。
【0077】
ボックスの接触表面は機械研削仕上げ(表面粗さ4μm)後、厚さ15μmのリン酸マンガン化成処理被膜(表面粗さ20μm)を形成する下地処理を行った。その後、ボックスを175 ℃に予熱してから、その上に潤滑性粉末として二硫化モリブデンと黒鉛を含有するエポキシ樹脂からなる、厚さ28μmの固体潤滑被膜を形成した。該固体潤滑被膜は、エポキシ樹脂1に対し潤滑性粉末の二硫化モリブデンと黒鉛の合計量を4の質量割合で含有する被膜である。塗膜の乾燥は、150 ℃で50分の1段加熱により行った。
【0078】
ピンの接触表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとした。
表5に示すように、締付け・緩め試験では、1回目に軽度の焼付きが発生し、手入れした後、2回目の締付け・緩めを行ったが、緩めができないほどの激しい焼付きを発生したため、試験を終了した。
【0079】
本例は、本発明における一次加熱のみを行った場合に相当するが、固体潤滑被膜内からの溶媒や水分の蒸散はある程度起こるものの、二次加熱がないため、完全には蒸散せず、硬さの低い被膜となった。また、予熱を行っても、付着強度も不十分であった。このように固体潤滑被膜の硬度と付着強度が不十分であるため、焼付きが早期に発生したものと考えられる。
【0080】
(比較例2)
実施例1を繰り返したが、予熱温度を180 ℃と高くし、塗布後の加熱は240 ℃で50分の一段加熱により行った。
【0081】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、4回目まで焼付きの発生は無かった。しかし、5回目に軽度の焼付きが発生し、手入れにより6回まで締付け・緩めが可能であったが、6回目で激しい焼付きを発生したため、試験を終了した。
【0082】
本例は、従来の加熱方法であり、本発明における二次加熱のみを行った場合に相当する。低温での一次加熱がないため、未乾燥の塗膜が急激に固化し始め、被膜内部に溶媒や水分が閉じ込められるため、形成された固体潤滑被膜の硬度や基材への付着強度に大きなバラツキを生じた。その結果、容易に焼付きを発生したものと考えられる。
【0083】
(比較例3)
比較例1を繰り返したが、予熱温度を130 ℃と低くし、塗布後の加熱を、50℃で30分の一次加熱と、常温まで冷却した後、230 ℃で30分の二次加熱とにより行った。
【0084】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、6回目までは焼付きの発生は無かった。7回目に軽度の焼付きが発生し、手入れにより締付け・緩めを続けたが、9回目で激しい焼付きを発生したため、試験を終了した。一次加熱の温度が低すぎたため、固化しつつある固体潤滑被膜内からの溶媒、水分の蒸散が不十分となり、比較例2の従来法に相当する場合と同様に、被膜の硬度および付着強度に部分的なバラツキを生じ、焼付きを発生したものと推定される。
【0085】
(比較例4)
実施例1を繰り返したが、下地処理したボックスの予熱を実施せず、塗布後の加熱を、100 ℃で20分の一次加熱と、常温まで冷却した後、410 ℃で30分の二次加熱とにより実施した。
【0086】
表5に示すように、締付け・緩め試験では、1回目に軽度の焼付きが発生し、手入れ2回目まで締付け・緩めを行ったが、緩めができないほどの激しい焼付きを発生したため、試験を終了した。これは、二次加熱の温度が高すぎたため、固体潤滑被膜内からの溶媒、水分の蒸散が不十分なことに加えて、固体潤滑被膜自体が軟化してしまったため、固体潤滑被膜が1回目の締付けの際に一気に剥離してしまったためと考えられる。
【0087】
【表1】

Figure 0004123810
【0088】
【表2】
Figure 0004123810
【0089】
【表3】
Figure 0004123810
【0090】
【表4】
Figure 0004123810
【0091】
【表5】
Figure 0004123810
【0092】
【発明の効果】
本究明によれば、コンパウンドグリスなどの重金属粉を含む液体潤滑剤を用いることなく、鋼管用ねじ継手の表面に耐焼付き性、耐摩耗性、密着性に優れた固体潤滑被膜を形成することができ、繰返し行われる締付け・緩め時の焼付き発生を顕著に抑制することができる。特に、高深度、高温油井、あるいは蒸気注入油井等の高温環境下の原油採掘で使用されるねじ継手において、従来の固体潤滑被膜を形成したねじ継手に比べ格段に優れた高温耐摩耗性を有した固体潤滑被膜を形成できるため、顕著な耐焼付き性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1 】鋼管出荷時の鋼管とねじ継手部材の組立構成を模式的に示す概要図である。
【図2 】本発明の鋼管用ねじ継手の締付け部を模式的に示す概要図である。
【図3 】本発明の鋼管用ねじ継手の表面処理方法における一次加熱と二次加熱のヒートパターン (温度プロファイル) の例を示す概要図である。
【符号の説明】
A:鋼管、B:ねじ継手部材、
1:ピン、2:ボックス、
3:ねじ部、4:ねじ無し金属接触部、
5:ショルダー部、[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention provides a solid lubricant film excellent in seizure resistance, wear resistance and adhesion on the surface of a threaded joint for steel pipes such as oil well pipes so that it can be used without applying a compound grease containing heavy metal powder. The present invention relates to a surface treatment method for forming a film.
[0002]
[Prior art]
An oil well pipe, which is a steel pipe used for oil well drilling, is fastened with a threaded joint for a steel pipe. This threaded joint is composed of a pin having a male thread and a box having a female thread. As shown schematically in FIG. 1, a male screw 3A is usually formed on the outer surface of both ends of a steel pipe A to form a pin 1, and a female screw 3B is formed from both sides on the inner surface of a separate sleeve-type joint member B. 2. As shown in FIG. 1, the steel pipe A is usually shipped with a joint member B fastened in advance at one end thereof.
[0003]
In steel pipe threaded joints, heat in the ground acts in addition to combined pressure such as axial tensile force due to the weight of the steel pipe and joints and pressure inside and outside the ground. However, it is required to maintain airtightness (sealability) without damage. Further, when the oil well pipe is lowered, the joint once tightened may be loosened, retightened, and tightened. Therefore, in API (American Petroleum Institute), there is no seizure called goling even if tightening (make-up) and loosening (breakout) are 10 times for tubing joints and 3 times for casing joints. , Seeks to maintain airtightness.
[0004]
In recent years, from the viewpoint of improving airtightness, special threaded joints capable of metal sealing by metal-to-metal contact are generally used. In this type of threaded joint, both the pin and the box have an unthreaded metal contact portion in addition to a thread portion made of a male screw or a female screw, and both portions serve as contact surfaces. The unthreaded metal contact portions of the pin and the box come into contact with each other to form a metal seal portion by metal-metal contact, and the airtightness is improved.
[0005]
In such a threaded joint, highly lubricated grease called compound grease has been used to prevent seizure of the metal contact portion. This grease, which is a liquid lubricant, is applied to at least one contact surface of the pin and the box before tightening. However, this grease contains a large amount of harmful heavy metals, and the grease that protrudes to the surrounding area with the cleaning liquid is washed with the cleaning liquid. In this operation, the compound grease and the cleaning liquid flow into the ocean and soil and the environment. It has become a problem to cause contamination. In addition, there has been a problem that the grease application and cleaning required each time the tightening is repeated reduces the work efficiency at the site.
[0006]
Therefore, as threaded joints for steel pipes that do not require the application of compound grease, JP-A-8-103724, JP-A-8-233163, JP-A-8-233164, and JP-A-9-72467 disclose threaded portions and A threaded joint is disclosed in which a solid lubricating film composed of a resin and molybdenum disulfide or tungsten disulfide, which is a solid lubricant, is formed on the unthreaded metal contact portion (that is, the contact surface) by surface treatment.
[0007]
These publications also disclose that a manganese phosphate-based chemical conversion coating layer, a nitride layer and a manganese phosphate-based chemical conversion coating layer, and irregularities of 5 to 40 μm are provided in order to improve the adhesion between the solid lubricating coating and the substrate. Has been. Japanese Patent Application Laid-Open No. 8-103724 discloses that a heat baking process for forming a solid lubricant film is performed by heating at a temperature range of 150 to 300 ° C. for 20 to 30 minutes.
[0008]
[Problems to be solved by the invention]
If a threaded joint is used in which a solid lubricant film is formed by surface treatment to impart lubricity to the contact surface, it is not necessary to apply compound grease, and the above-mentioned environmental problems and work efficiency problems should be solved.
[0009]
However, the solid lubricating film formed by the conventional surface treatment described above does not provide the high seizure-preventing effect that is obtained when compound grease is applied. The seizure flaw called may occur, and the anti-seizure effect was insufficient.
[0010]
Furthermore, in recent years, it is used for high temperature oil wells used in a higher temperature environment of 250-300 ° C than in the past, and steam injection wells for injecting high temperature steam (350 ° C) that reaches the critical temperature for the purpose of improving crude oil recovery efficiency. There is a demand for heat-resistant threaded joints for steel pipes. Therefore, threaded joints for steel pipes are required to have a performance that guarantees seizure resistance and airtightness even after loosening and re-fastening after a heat resistance test at a temperature of around 350 ° C after fastening. It has come to be. The conventional solid lubricating coating described above has been difficult to ensure the performance required for such heat-resistant joints.
[0011]
The present invention can form a solid lubricant film excellent in seizure resistance that can effectively suppress the occurrence of seizure during repeated tightening and loosening even in a heat-resistant threaded joint for steel pipes. Another object of the present invention is to provide a surface treatment method for a threaded joint for steel pipes.
[0012]
[Means for Solving the Problems]
The present inventor has found that the cause of the insufficient seizure resistance of the conventional solid lubricant coating formed on the contact surface of the threaded joint for steel pipes is the insufficient hardness of the coating. I found out that it was enough.
[0013]
In general, a solid lubricant film for threaded joints is applied to a contact surface of a threaded joint by applying a coating solution containing a resin and a lubricating powder (e.g., molybdenum disulfide) in a volatile solvent, followed by heating. It is formed by surface treatment of drying (baking, baking). Even if the heating time is extended and the heating time is extended, the solvent cannot be completely evaporated even if the heating time is extended as in the prior art. It has been found that since it is contained and this becomes an internal defect, sufficient hardness of the coating and wear resistance cannot be obtained. In such a solid lubricant film, the solid lubricant film is consumed due to wear as the screw joint is repeatedly tightened and loosened, eventually causing the film to break, resulting in metal-metal contact and seizure. Is generated.
[0014]
Therefore, as a result of exploring means for completely drying the solid lubricant film and forming a harder and more wear-resistant film, the drying was performed in at least two stages, and after first performing primary heating at a low temperature, By conducting secondary heating at a higher temperature, it was found that a solid lubricant film with higher hardness and superior wear resistance and seizure resistance was formed than when heated at a constant temperature as in the prior art. The invention has been reached.
[0015]
  In one aspect, the present invention provides:
  A surface treatment method for a threaded joint for steel pipes comprising a pin and a box each having a contact surface including a threaded portion and an unthreaded metal contact portion,
  Applying a coating liquid containing a resin and a lubricating powder in a solvent to at least one contact surface of the pin and the box; and
  The coating film is dried by multi-stage heating composed of at least primary heating in the temperature range of 70 ° C. to 150 ° C. and secondary heating in the range of more than 150 ° C. to 380 ° C.The Rockwell M scale measured according to JIS-K7202 (however, the thickness of the adherend is 2 mm) is 70 to 140.Process for forming a solid lubricant film
It is the surface treatment method of the threaded joint for steel pipes characterized by including these.
[0016]
In one embodiment of the method of the present invention, the method further includes heating the contact surface to be applied to a temperature of 50-200 ° C. prior to the application step.
According to the method of the present invention, the formed solid lubricating film has a hardness of 70 to 140 on the Rockwell M scale, and an adhesion strength determined by the SAICAS method (surface-interface cutting method) is 500 N / m or more. be able to.
[0017]
  According to the present invention, in a threaded joint for a steel pipe composed of a pin and a box each having a contact surface including a threaded portion and an unthreaded metal contact portion, at least one contact surface of the pin and the box has molybdenum disulfide and / or Or a solid lubricating film comprising a solid lubricating powder made of tungsten disulfide in a resin,This solid lubricating coating isHardnessMeasured according to JIS-K7202 (however, the thickness of the adherend was 2 mm)70-140 on Rockwell M scaleAnd dried by multistage heating at at least two different temperaturesA threaded joint for steel pipes is also provided. This solid lubricating coating has an adhesion strength determined by the SAICAS method of 500 N / m or more.preferable.
[0018]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
FIG. 2 is a schematic view schematically showing the configuration of a typical threaded joint for steel pipes. Reference numeral 1 is a pin, 2 is a box, 3 is a threaded portion, 4 is a non-threaded metal contact portion, and 5 is a shoulder portion. Hereinafter, the screwless metal contact portion is also simply referred to as a metal contact portion.
[0019]
As shown in FIG. 2, a typical threaded joint includes a pin 1 having a threaded part 3 (ie, a male threaded part) and an unthreaded metal contact part 4 formed on the outer surface of a steel pipe end, and a threaded joint member. And a box 2 having a threaded portion 3 (that is, a female threaded portion) and an unthreaded metal contact portion 4. However, the pins and boxes are not limited to those shown in the figure. For example, without using a joint member, one end of the steel pipe can be a pin and the other end can be a box, or the joint member can be a pin (male thread) and both ends of the steel pipe can be a box.
[0020]
The threaded portion 3 provided on each of the pin 1 and the box 2 and the (non-threaded) metal contact portion 4 are contact surfaces of the threaded joint. The contact surface, particularly the metal contact portion where seizure is more likely to occur, requires seizure resistance. Conventionally, for this purpose, compound grease containing heavy metal powder has been applied to the contact surface. However, as described above, the use of compound grease has many problems in terms of environment and work efficiency.
[0021]
In order to solve this problem, as disclosed in JP-A-8-103724, a coating liquid containing a resin and a lubricating powder in a solvent is applied to at least one contact surface of a pin and a box, and a coating film is formed. A threaded joint that has been heated to a temperature of 150 to 300 ° C. to form a solid lubricating film on the contact surface and that does not require the application of compound grease has been developed. However, in this type of conventional threaded joint, as described above, the wear resistance of the solid lubricating coating, particularly the wear resistance at high temperatures, is not sufficient, and the coating is consumed during repeated tightening and loosening, The anti-seizure effect (anti-seizure property) was insufficient.
[0022]
According to the present invention, the coating film is dried in at least two stages. That is, primary heating is first performed in a low temperature range, and the solvent and moisture are surely evaporated while the coating film is fluid. Thereafter, when secondary heating is performed in a temperature range higher than the primary heating to evaporate the solvent and moisture, a solid lubricant film having high hardness and high wear resistance can be formed.
[0023]
Specifically, the coating film is dried by multi-stage heating composed at least of primary heating in a temperature range of 70 to 150 ° C. and secondary heating in a temperature range of more than 150 ° C. to 380 ° C. The heating time (temperature holding time) may be appropriately set according to the size and shape of the threaded joint, but is preferably 20 minutes or more, more preferably 30 to 60 minutes at each stage.
[0024]
When the primary heating temperature is less than 70 ° C, the effect of sufficiently evaporating the solvent and moisture from the inside of the film is small.On the other hand, when the temperature exceeds 150 ° C, the solvent and moisture are solidified while remaining inside the film. Hardening and wear resistance cannot be obtained. If the temperature of the secondary heating is 150 ° C or less, the solvent and moisture cannot be completely expelled from the coating. On the other hand, if the temperature exceeds 380 ° C, the solid lubricating coating itself has a sufficient hardness due to the heat resistance. Cannot be obtained.
[0025]
From the viewpoint of transpiration of solvent and moisture, the temperature range of primary heating is preferably 80 to 140 ° C. From the viewpoint of coating hardness, the temperature range of secondary heating is preferably 180 to 350 ° C.
[0026]
The heating for drying the coating film comprises at least primary heating and secondary heating. FIG. 3 shows an example of a two-stage heating temperature profile (heat pattern) composed of primary heating and secondary heating. As shown in the figure, after the primary heating, once cooled, the secondary heating is performed. Alternatively, secondary heating may be continued after the primary heating.
[0027]
Furthermore, it is also possible to perform heating at a temperature of three or more stages by making the primary heating and / or the secondary heating itself multistage heating. However, from the viewpoint of economy, two-stage heating composed of primary heating and secondary heating is desirable.
[0028]
Further, both primary heating and secondary heating, particularly primary heating, may be performed while slowly raising the temperature instead of keeping the temperature constant as shown in the figure. In this case, regarding the primary heating, if the time required for the temperature increase from 70 ° C. to 150 ° C. is 20 minutes or more, it is determined that the primary heating is performed according to the present invention. For example, when heating at a temperature of 150 to 300 ° C. as in the prior art, the time required for raising the temperature from 70 ° C. to 150 ° C. is generally within 5 minutes, and the difference from the present invention is clear.
[0029]
The coating liquid used for forming the solid lubricating film by the method according to the present invention is a dispersion containing a resin serving as a binder and a lubricating powder in a solvent. The resin is preferably dissolved in the solvent used, but may be dispersed.
[0030]
The resin is not particularly limited as long as it plays a role as a binder. What has heat resistance, moderate hardness, and abrasion resistance is suitable. Such resins include epoxy resins, polyimide resins, polycarbodiimide resins, polyethersulfone, polyetheretherketone resins, phenolic resins, furan resins, urea (urea) resins, thermosetting resins such as acrylic resins, and Examples thereof include thermoplastic resins such as polyamideimide resin, polyethylene resin, silicone resin, and polystyrene resin.
[0031]
The lubricating powder used in the present invention is not particularly limited as long as it is a powder having lubricity, but considering that a high load is applied, molybdenum disulfide, tungsten disulfide, graphite, boron nitride, PTFE (polytetrafluoroethylene) It is desirable to use one or more powders selected from Among these, a powder of molybdenum disulfide and / or tungsten disulfide having a high antifriction effect or a mixed powder obtained by mixing other lubricating powders with this is particularly preferable.
[0032]
The average particle size of the lubricating powder is not particularly limited, but is preferably in the range of 0.5 to 60 μm. If it is less than 0.5 μm, the powders tend to aggregate, making it difficult to uniformly disperse them in the coating solution, and forming a solid lubricating film in which the lubricating powder is uniformly dispersed may not be formed, resulting in insufficient seizure resistance. On the other hand, when the thickness exceeds 60 μm, the strength of the solid lubricating film is lowered, and thus the occurrence of seizure may not be suppressed.
[0033]
The mixing ratio of the resin and the lubricating powder is not particularly limited, but is usually in the range of 10% to 80% for the resin and 20% to 90% for the lubricating powder based on the total amount of the resin and the lubricating powder. is there.
[0034]
As the solvent used for forming the coating solution, various low-boiling solvents such as hydrocarbon (eg, toluene) and alcohol (eg, isopropyl alcohol) can be used alone or in combination. The boiling point of the solvent used in the present invention is preferably 150 ° C. or lower.
[0035]
The coating liquid for forming the solid lubricating film can contain components other than the solvent, the resin, and the lubricating powder. For example, one or more of zinc powder, chromium pigment, silica, and alumina pigment can be added as a rust inhibitor. Moreover, you may color the solid lubricant film formed by containing a coloring agent. Moreover, 1 type, or 2 or more types of additives, such as a dispersing agent, an antifoamer, and a thickener, can be contained suitably.
[0036]
Apply the above coating solution to at least one contact surface of the pin and the box (screw part and unthreaded metal contact part). The application method may be a known appropriate method such as brush coating, dipping treatment, or air spray method.
[0037]
The application is desirably performed so that the thickness after drying (that is, the thickness of the formed solid lubricating film) is 5 μm or more and 50 μm or less. The lubricating powder contained in the solid lubricating coating spreads over the entire contact surface as a wear powder under high sliding surface pressure, and exhibits excellent seizure resistance. However, if the film thickness is less than 5 μm, the lubricating powder The content of the conductive powder is reduced, and the effect of improving the lubricity may be small. On the other hand, when the film thickness is larger than 50 μm, the tightening amount becomes insufficient, the airtightness is insufficient, the seizure is likely to occur when the surface pressure is increased to ensure the airtightness, or the lubricating coating is peeled off. May be easier.
[0038]
In order to further enhance the effect of the present invention, the surface roughness Rmax of the contact surface of the pin and / or box to which the coating solution is applied is 5 to 40 μm, which is larger than the roughness after machining (3 to 5 μm). It is desirable to roughen the surface. If the Rmax of the coated surface is less than 5 μm, the adhesion of the solid lubricant film will be reduced. On the other hand, if it exceeds 40 μm, the friction will be high, the wear of the solid lubricant film will be accelerated, and it will not be able to withstand repeated tightening and loosening. is there. However, it goes without saying that the effects of the present invention can be obtained even if the above range is not satisfied.
[0039]
In addition to the method of roughening the steel surface itself, such as a method of projecting sand or a grid, or a method of roughening the skin by immersing it in a strong acid solution such as sulfuric acid, hydrochloric acid, nitric acid or hydrofluoric acid. A method of roughening the coated surface by forming a rough surface treatment layer from the steel surface is also possible.
[0040]
Examples of such a base treatment include a method of forming a chemical conversion treatment film (such as phosphate, oxalate, borate, etc.) (copper plating or iron) Electroplating of metal such as plating (Since the convex part is preferentially plated, the surface becomes slightly rough), centrifugal force is applied to particles coated with zinc or zinc-iron alloy on the iron core Or projection using air pressure to form a coating film of zinc or zinc-iron alloy, soft nitriding method to form a nitride layer (eg, tuftride), porous with solid fine particles dispersed in metal Examples thereof include a composite metal coating method for forming a film.
[0041]
From the viewpoint of the adhesion of the solid lubricating coating, porous coating, especially phosphate conversion treatment (manganese phosphate, zinc phosphate, iron manganese phosphate, zinc calcium phosphate), zinc or zinc-iron by projection plating Alloy coatings are preferred. From the viewpoint of adhesion, a manganese phosphate film is more preferable, and from the viewpoint of rust prevention, a zinc or zinc-iron alloy film is more preferable. Since the zinc-based or zinc-iron alloy coating formed by the phosphate chemical conversion coating or the projection plating is a porous coating, if a solid lubricating coating is formed thereon, the adhesion of the solid lubricating coating Will increase.
[0042]
When the base treatment layer is formed, the thickness is not particularly limited, but is preferably 5 to 40 μm from the viewpoint of rust prevention and adhesion. If it is less than 5 micrometers, sufficient rust prevention property may not be securable. On the other hand, when it exceeds 40 μm, the adhesion to the solid lubricating film may be lowered.
[0043]
Before applying the coating solution, the contact surface (coating substrate) to be applied must be heated (preheated) to a temperature of 50 to 200 ° C in order to improve the adhesion of the solid lubricant film to be formed. desirable. If this heating temperature is less than 50 ° C., the effect of improving adhesion is hardly obtained. On the other hand, when the temperature exceeds 200 ° C., the viscosity of the applied coating solution (coating film) decreases, it becomes difficult to form a solid lubricating film having a required thickness, and the adhesion is also decreased. The heating and holding time may be appropriately set according to the size of the steel pipe threaded joint, but it is preferable to keep the substrate temperature within the above range during the coating operation. Even if the substrate temperature immediately before coating is in the above temperature range and coating is performed without maintaining the temperature thereafter, there is an effect of improving adhesion.
[0044]
The substrate can be heated by a known general method such as an atmospheric furnace or hot air. For heating the box, it is efficient and economical to place the box in an atmospheric furnace to bring the surface to a predetermined temperature. For the heating of the pin, only the threaded portion at the tube end may be placed in the atmosphere furnace, or the surface may be heated to a predetermined temperature with hot air.
[0045]
As described above, the coating film after applying the coating solution is dried by multistage heating including at least primary heating and secondary heating. This heating can also be carried out by the same means as the above preheating. However, since it is necessary to control the temperature within a certain temperature range, heating in an atmospheric furnace is preferable to hot air. The atmosphere of the furnace is not particularly limited, but an air atmosphere is sufficient.
[0046]
According to the present invention, a hardened solid lubricating coating can be formed by drying the coating by multi-stage heating as described above. The solid lubricating coating in the present invention preferably has a hardness of 70 to 140 in terms of Rockwell M scale hardness (hereinafter simply referred to as Rockwell M hardness) defined in JIS-K7202. When the Rockwell M hardness of the coating is less than 70, the coating wears quickly due to sliding friction during repeated tightening and loosening, and seizure resistance may be insufficient. On the other hand, if the hardness exceeds 140, there is too little wear and it may not be possible to supply sufficient lubricating powder to prevent seizure at the contact interface. From the viewpoint of wear resistance, the Rockwell M hardness of the coating hardness is more preferably in the range of 90 to 140.
[0047]
A solid lubricating film using molybdenum disulfide and / or tungsten disulfide as the lubricating powder has a Rockwell M hardness of about 50 in the conventional drying method by one-step heating. According to the present invention, it is possible to provide a threaded joint for steel pipes having a solid lubricant coating containing molybdenum disulfide and / or tungsten disulfide as the lubricant powder and having a coating hardness of Rockwell M70 to 140. Become.
[0048]
Solid lubrication coatings in threaded joints for steel pipes are subject to shear stress under high loads when tightening or loosening, so they will peel off if adhesion is low, and will not fully exhibit seizure prevention effects. It is required to be excellent.
[0049]
There are various methods for evaluating the adhesion of the coating. A simple and well-known method is the so-called cross-cut test. However, this test method cannot be adopted because the solid lubricant film of the threaded joint is required to have much higher adhesion than can be measured by the cross cut test.
[0050]
The inventors of the present invention have reported that the adhesiveness (peeling resistance) of the solid lubricant film applied to the threaded joint is the SAlCAS method [surface-interface cutting method, which is described in detail in “Coating Technology” April 1995, pages 123-135. (Surface and Interfacial Cutting Analysis System) can be quantitatively grasped by the bond strength measured by the surface and interfacial cutting analysis system, and if this value is above a certain level, even if the film hardness is high, it is possible to prevent the solid lubricant film from peeling during tightening and loosening. I found out.
[0051]
In the SAICAS method, a sharp cutting blade is pressed against the coating surface under load while moving the substrate to which the coating is adhered in a horizontal direction, and the coating is cut obliquely from the surface to the interface with the substrate to reach the interface. After that, the load is adjusted to move the cutting edge horizontally. The adhesion strength of the coating can be determined as the peel force (N / m) per peel width (width of the cutting edge) during this interface movement. A measuring device for the SAICAS method is commercially available from Daipura Wintes Co. under the trade name SAICAS.
[0052]
In a preferred embodiment of the present invention, the solid lubricating film formed on the contact surface of the threaded joint as a base material has an adhesion strength of 500 N / m or more as measured by the SAICAS method. If the adhesion strength to the substrate is less than 500 N / m, sufficient seizure prevention effect may not be exhibited.
[0053]
The solid lubricating coating dried by multi-stage heating according to the present invention tends to improve the adhesion strength as compared with the conventional drying method. Alternatively, pre-heating can further improve the formed adhesion strength.
[0054]
Since the object of the present invention can be sufficiently achieved only by forming the solid lubricant film on one contact surface of the pin and the box, it is advantageous to form only one of them from the viewpoint of cost. In this case, the box is easier to form a film, particularly heated. The contact surface of the other member (preferably pin) that does not form a solid lubricating coating may remain uncoated. In particular, as shown in FIG. 1, when the pin and the box are temporarily tightened at the time of assembly, the coating formed on the contact surface of the box at the time of assembly even if the contact surface of the other member, for example, the pin is bare (cut as it is) Since it adheres closely to the pin, rusting of the contact surface of the pin can also be prevented. The solid lubricating coating may be formed on only a part of the contact surface, preferably only on the metal contact portion.
[0055]
However, if the box is attached only to the pin at one end of the steel pipe during assembly, the pin at the other end remains exposed. Therefore, in order to give rust prevention, or rust prevention and lubricity, especially to such exposed pins, a coating can be formed by appropriate surface treatment and / or protected by a protector. You can also Of course, even if the other contact surface is not exposed, a film may be formed on this surface.
[0056]
The threaded joint for steel pipes surface-treated according to the present invention is tightened without applying compound grease. However, if desired, oil may be applied to the solid lubricating coating or the threaded part of the mating member and the unthreaded metal contact part. In that case, there is no restriction | limiting in particular in the oil to apply | coat, Any of mineral oil, synthetic ester oil, animal and vegetable oil etc. can be used. Various additives commonly used in lubricating oils such as rust preventive additives and extreme pressure additives can be added to this oil. Moreover, when those additives are liquids, these additives can be used alone as an oil and applied.
[0057]
As the anticorrosive additive, basic metal sulfonate, basic metal phenate, basic metal carboxylate and the like are used. As the extreme pressure additive, known ones such as sulfur, phosphorus, chlorine, and organic metal salts can be used. In addition, antioxidants, pour point depressants, viscosity index improvers, and the like can be added to the oil.
[0058]
【Example】
Screws of steel pipe (outer diameter: 7 inches <178 mm>, wall thickness: 0.408 inches <10.4 mm>) consisting of carbon steel A, Cr-Mo steel B, 13% Cr steel C or high alloy steel D shown in Table 1 The contact surface of the pin and the box of the joint was subjected to any one of the surface treatments of Nos. 1 to 5 shown in Table 2 (primary treatment and optionally formation of a solid lubricating film). In this example, the base treatment was performed on the contact surface of both the pin and the box, and the solid lubricating film was formed only on one contact surface of the pin or the box.
[0059]
The coating liquid used to form the solid lubricating film is a dispersion in which a lubricating powder is dispersed in a resin solution in which a resin is dissolved in a solvent. The solvent is ethanol / toluene (50/50) or phenol for polyamide-imide resin. The resin was N-methyl-2-pyrrolidone / xylene (65/35), and the epoxy resin was tetrahydrofuran / cyclohexane (50/50). Both the preheating of the substrate before coating and the drying after coating were performed in an air atmosphere using an atmosphere furnace. Table 3 shows the number of the surface treatment employed, the preheating temperature of the substrate (substrate temperature before coating), and the heating conditions for drying the coating film after coating (temperature of primary heating and secondary heating × time).
[0060]
Separately, using a steel plate (10 mm × 50 mm, thickness 2 mm) made of the same material as that of the steel pipe, a base treatment and a solid lubricating film were formed in the same combination as shown in Table 2. That is, the surface treatment was the same as that performed on the contact surface of the member on which the solid lubricant film was formed (that is, the box for No. 1 to 4 and the pin for No. 5). The adhesion strength and hardness of the formed solid lubricant film were measured. The adhesion strength was measured using SAICAS BN-1 manufactured by Daipura Wintes. The film hardness was measured according to Rockwell M scale according to JIS-K7202. These measurement results are also shown in Table 3.
[0061]
Using the threaded joint that had been surface-treated as described above, tightening and loosening was performed up to 20 times in the manner shown in Table 4, and the occurrence of seizure during that time was investigated. That is, as shown in Table 4, tightening / loosening is performed at room temperature for the first to fourth, sixth to fourteenth, and sixteenth to twentieth, and the fifth and fifteenth are tightened at room temperature and then 350 ° C. Heat treatment was performed for 24 hours, then cooled and loosened at room temperature. This tightening / loosening situation corresponds to the use situation in heat-resistant joints. The tightening speed was 10 rpm and the tightening torque was 10340 ft · lbs. Table 5 shows the occurrence of seizure.
[0062]
Example 1
The following surface treatment was performed on the carbon steel threaded joint of symbol A shown in Table 1.
From the polyamide-imide resin containing molybdenum disulfide as a lubricating powder on the contact surface of the box, after spraying sand of No. 60 and pre-treating the surface roughness to 31 μm, pre-ripening the box to 60 ° C. A solid lubricant film having a thickness of 30 μm was formed. The solid lubricating coating is a coating containing a mass ratio of molybdenum disulfide 4 as a lubricating powder to the polyamideimide resin 1. Drying after coating was performed by primary heating at 100 ° C. for 30 minutes and cooling to room temperature, followed by secondary heating at 260 ° C. for 30 minutes.
[0063]
The contact surface of the pin was only a mechanical grinding finish (surface roughness 3 μm).
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred and airtightness was maintained in 20 times of tightening / loosening.
[0064]
(Example 2)
Example 1 was repeated, but the preheating temperature of the box before coating was changed from 60 ° C. to 100 ° C., and the heating conditions after coating were further continued without heating after primary heating at 100 ° C. for 30 minutes. It changed so that the secondary heating for 30 minutes could be implemented at 260 degreeC.
[0065]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred and airtightness was maintained in 20 times of tightening / loosening. As shown in Table 3, as compared with Example 1, in this example having a high preheating temperature, the film hardness was slightly lowered and the adhesion strength of the film was improved.
[0066]
Example 3
The following surface treatment was applied to a threaded joint made of Cr-Mo steel of symbol B shown in Table 1.
The contact surface of the box was ground-treated by forming a 15 μm-thick manganese phosphate conversion coating (surface roughness 20 μm) on the surface after mechanical grinding (surface roughness 4 μm). Thereafter, the box was preheated to 130 ° C., and a solid lubricant film having a thickness of 28 μm made of an epoxy resin containing molybdenum disulfide and graphite as a lubricating powder was formed thereon. The solid lubricating coating is a coating containing a lubricating powder of molybdenum disulfide and graphite (mass ratio = 9: 1) in a total amount of 4.0 with respect to the epoxy resin 1. Drying after coating was performed by primary heating at 100 ° C. for 30 minutes and secondary heating at 230 ° C. for 30 minutes after cooling to room temperature.
[0067]
The contact surface of the pin was only a mechanical grinding finish (surface roughness 3 μm).
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred and airtightness was maintained in 20 times of tightening / loosening.
[0068]
Example 4
Example 3 was repeated, but the primary heating temperature after coating was changed from 100 ° C. in Example 3 to 70 ° C.
[0069]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred until the 16th time. After 17 times, slight seizure occurred, but it could be tightened and loosened up to 20 times by maintenance. There was no problem with airtightness. It can be seen that Example 3, which has a high primary heating temperature of 100 ° C., results in a more complete drying of the coating, a solid lubricant coating with higher hardness and higher adhesion strength than Example 4.
[0070]
(Example 5)
The following surface treatment was applied to a threaded joint made of 13% Cr steel of symbol C shown in Table 1.
The contact surface of the box was subjected to ground processing by forming a copper plating (surface roughness 11 μm) having a thickness of 10 μm by electroplating after mechanical grinding (surface roughness 4 μm). Thereafter, the box was preheated to 180 ° C., and a solid lubricating coating layer having a thickness of 32 μm and made of phenol resin containing tungsten disulfide as a lubricating powder was formed thereon. The solid lubricant film is a film containing tungsten powder disulfide, which is a lubricating powder, with respect to phenol resin 1 at a mass ratio of 4.0. Drying after coating was performed by primary heating at 80 ° C. for 20 minutes and secondary heating at 170 ° C. for 60 minutes after cooling to room temperature.
[0071]
The contact surface of the pin was only a mechanical grinding finish (surface roughness 3 μm).
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred until the 14th time. After the 15th time, slight seizure occurred, but it could be tightened and loosened up to 20 times by maintenance. There was no problem with airtightness. In this example, the slight seizure occurred after the 15th time because the material of the threaded joint is easily seized. If the material of the threaded joint is A or B, it is estimated that seizure does not occur.
[0072]
Example 6
The following surface treatment was applied to the threaded joint made of high alloy having the component symbol D shown in Table 1.
The contact surface of the box was ground-treated by forming a zinc-iron alloy layer (surface roughness 18 μm) having a thickness of 7 μm by dry impact plating after mechanical grinding (surface roughness 4 μm). Thereafter, the box was heated to 100 ° C., and a solid lubricating coating layer having a thickness of 20 μm and made of polyamideimide resin containing molybdenum disulfide as a lubricating powder was formed thereon. The solid lubricating coating is a coating containing a mass ratio of molybdenum disulfide 4 as a lubricating powder to the polyamideimide resin 1. The coating film was dried by primary heating at 80 ° C. for 30 minutes and cooling to room temperature, followed by secondary heating at 170 ° C. for 40 minutes.
[0073]
The contact surface of the pin was only a mechanical grinding finish (surface roughness 4 μm).
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred until the 14th time. After 15 times, slight seizure occurred, but it could be tightened and loosened up to 20 times by maintenance. There was no problem with airtightness. Even in this example, since the material of the threaded joint is a high-alloy steel that tends to seize, mild seizure occurred after the 15th time, but if the material is A or B, seizure does not occur until 20 times. I will.
[0074]
(Example 7)
The following surface treatment was performed on the carbon steel threaded joint of symbol A shown in Table 1.
The contact surface of the box was mechanically ground (surface roughness 4 μm) and then was subjected only to a ground treatment for forming a 10 μm-thick manganese phosphate conversion coating (surface roughness 10 μm) on the surface.
[0075]
The contact surface of the pin was mechanically ground (surface roughness 4 μm), and then subjected to a ground treatment for forming a zinc phosphate conversion treatment film (surface roughness 20 μm) having a thickness of 15 μm on the surface. Thereafter, only the pin portion was placed in an atmosphere furnace and preheated to 100 ° C., and a solid lubricating film having a thickness of 28 μm made of polyamideimide resin containing molybdenum disulfide as a lubricating powder was formed thereon. The solid lubricating coating is a coating containing a mass ratio of molybdenum disulfide 4 as a lubricating powder to the polyamideimide resin 1. The coating film was dried by placing only the pin part in an atmospheric furnace and performing primary heating at 140 ° C. for 20 minutes and once cooling to room temperature, followed by secondary heating at 280 ° C. for 30 minutes.
[0076]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred and airtightness was maintained in 20 times of tightening / loosening.
(Comparative Example 1)
The following surface treatment was applied to the threaded joint made of carbon steel of symbol A shown in Table 1.
[0077]
The contact surface of the box was mechanically ground (surface roughness 4 μm) and then subjected to a ground treatment to form a manganese phosphate chemical conversion treatment film (surface roughness 20 μm) having a thickness of 15 μm. Thereafter, the box was preheated to 175 ° C., and a solid lubricating film having a thickness of 28 μm made of an epoxy resin containing molybdenum disulfide and graphite as a lubricating powder was formed thereon. The solid lubricating coating is a coating containing a total amount of molybdenum powder disulfide and graphite as a lubricating powder in a mass ratio of 4 with respect to the epoxy resin 1. The coating film was dried by one-step heating at 150 ° C. for 50 minutes.
[0078]
The contact surface of the pin was only a mechanical grinding finish (surface roughness 3 μm).
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, a slight seizure occurred at the first time, and after the maintenance, the second tightening / loosening was performed, but intense seizure that could not be loosened occurred. The test was finished.
[0079]
Although this example corresponds to the case where only the primary heating in the present invention is performed, the evaporation of the solvent and water from the solid lubricating film occurs to some extent, but since there is no secondary heating, it does not completely evaporate and the hard The film was thin. Moreover, even if preheating was performed, the adhesion strength was insufficient. Thus, it is considered that seizure occurred early because the hardness and adhesion strength of the solid lubricating coating were insufficient.
[0080]
(Comparative Example 2)
Example 1 was repeated, but the preheating temperature was increased to 180 ° C., and the heating after coating was performed by one-step heating at 240 ° C. for 50 minutes.
[0081]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred until the fourth time. However, mild seizure occurred at the fifth time, and it was possible to tighten and loosen up to six times by maintenance, but because the intense seizure occurred at the sixth time, the test was terminated.
[0082]
This example is a conventional heating method and corresponds to the case where only the secondary heating in the present invention is performed. Since there is no primary heating at a low temperature, the undried coating begins to solidify rapidly, and the solvent and moisture are trapped inside the coating, resulting in large variations in the hardness and adhesion strength of the formed solid lubricating coating. Produced. As a result, it is considered that seizure occurred easily.
[0083]
(Comparative Example 3)
Comparative Example 1 was repeated, but the preheating temperature was lowered to 130 ° C., and heating after coating was performed by primary heating at 50 ° C. for 30 minutes and cooling to room temperature, followed by secondary heating at 230 ° C. for 30 minutes. went.
[0084]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, no seizure occurred until the sixth time. Mild seizure occurred on the 7th time, and tightening and loosening were continued by care. However, the severed seizure occurred on the 9th time, so the test was terminated. Since the temperature of the primary heating was too low, the evaporation of the solvent and water from the solid lubricant film that was solidifying was insufficient, and the hardness and adhesion strength of the film were similar to the case corresponding to the conventional method of Comparative Example 2. It is presumed that partial variation occurred and seizure occurred.
[0085]
(Comparative Example 4)
Example 1 was repeated, but the pre-heated box was not preheated, and after the coating, the primary heating was performed at 100 ° C. for 20 minutes, and after cooling to room temperature, the secondary heating was performed at 410 ° C. for 30 minutes. And carried out.
[0086]
As shown in Table 5, in the tightening / loosening test, slight seizure occurred at the first time, and tightening / loosening was performed up to the second time of maintenance. finished. This is because the temperature of the secondary heating was too high, and in addition to insufficient evaporation of the solvent and water from the solid lubricant film, the solid lubricant film itself was softened, so the solid lubricant film was the first time. It is thought that it was peeled off at the time of tightening.
[0087]
[Table 1]
Figure 0004123810
[0088]
[Table 2]
Figure 0004123810
[0089]
[Table 3]
Figure 0004123810
[0090]
[Table 4]
Figure 0004123810
[0091]
[Table 5]
Figure 0004123810
[0092]
【The invention's effect】
According to this study, it is possible to form a solid lubricant film with excellent seizure resistance, wear resistance, and adhesion on the surface of a threaded joint for steel pipes without using a liquid lubricant containing heavy metal powder such as compound grease. It is possible to remarkably suppress the occurrence of seizure during repeated tightening and loosening. In particular, thread joints used in crude oil mining in high-temperature environments such as deep, high-temperature oil wells, or steam-injected wells, have much superior high-temperature wear resistance compared to conventional threaded joints with solid lubricant coatings. Since the solid lubricant film can be formed, it shows remarkable seizure resistance.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic view schematically showing an assembly configuration of a steel pipe and a threaded joint member at the time of shipment of the steel pipe.
FIG. 2 is a schematic view schematically showing a tightening portion of a threaded joint for steel pipes of the present invention.
FIG. 3 is a schematic diagram showing an example of a heat pattern (temperature profile) of primary heating and secondary heating in the surface treatment method for a threaded joint for steel pipes of the present invention.
[Explanation of symbols]
A: Steel pipe, B: Threaded joint member,
1: pin, 2: box,
3: Screw part, 4: Unthreaded metal contact part,
5: shoulder part,

Claims (5)

ねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接触表面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成される鋼管用ねじ継手の表面処理方法であって、溶媒中に樹脂と潤滑性粉末とを含む塗布液を、ピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に塗布する工程、および塗膜を、70℃〜150℃の温度範囲での一次加熱と150℃超〜380℃の範囲での二次加熱とから少なくとも構成される多段加熱により乾燥させて、該表面にJIS−K7202(但し、被着材厚みは2mm)に準拠して測定されたロックウェルMスケールで70〜140である固体潤滑被膜を形成する工程を含むことを特徴とする、鋼管用ねじ継手の表面処理方法。A surface treatment method for a threaded joint for steel pipes comprising a pin and a box each having a contact surface including a threaded portion and an unthreaded metal contact portion, wherein a coating liquid containing a resin and a lubricating powder in a solvent, The step of applying to the contact surface of at least one of the pin and the box, and the coating film are composed at least of primary heating in the temperature range of 70 ° C to 150 ° C and secondary heating in the range of more than 150 ° C to 380 ° C Including a step of drying by multi-stage heating to form a solid lubricating film of 70 to 140 on the Rockwell M scale measured according to JIS-K7202 (however, the thickness of the adherend is 2 mm) on the surface. A surface treatment method for a threaded joint for steel pipes. 塗布工程の前に、塗布される接触表面を50〜200℃の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項1記載の鋼管用ねじ継手の表面処理方法。The surface treatment method of the threaded joint for steel pipes of Claim 1 which further includes the process of heating the contact surface apply | coated to the temperature of 50-200 degreeC before an application | coating process. 形成された固体潤滑被膜のSAICAS法(表面−界面切削法)により求めた付着強度が500N/m以上である、請求項1または2記載の鋼管用ねじ継手の表面処理方法。The surface treatment method of the threaded joint for steel pipes of Claim 1 or 2 whose adhesion strength calculated | required by the SAICAS method (surface-interface cutting method) of the formed solid lubricating film is 500 N / m or more. ねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接触表面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成される鋼管用ねじ継手において、ピンとボックスの少なくとも一方の接触表面に、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンからなる固体潤滑性粉末を樹脂中に含む固体潤滑被膜を備え、当該固体潤滑被膜は、その硬度がJIS−K7202(但し、被着材厚みは2mm)に準拠して測定されたロックウェルMスケールで70〜140であり、かつ、少なくとも2つの異なる温度での多段加熱により乾燥されたものであることを特徴とする、鋼管用ねじ継手。In a threaded joint for steel pipes composed of a pin and a box each having a contact surface including a threaded portion and an unthreaded metal contact portion, at least one contact surface of the pin and the box is made of molybdenum disulfide and / or tungsten disulfide. A solid lubricating film including a solid lubricating powder in a resin is provided, and the solid lubricating film has a hardness of 70 on a Rockwell M scale whose hardness is measured in accordance with JIS-K7202 (however, the thickness of the adherend is 2 mm). A threaded joint for steel pipes, characterized by being -140 and dried by multistage heating at at least two different temperatures. 固体潤滑被膜のSAICAS法により求めた付着強度が500N/m以上である、請求項4記載の鋼管用ねじ継手。The threaded joint for steel pipes of Claim 4 whose adhesion strength calculated | required by the SAICAS method of the solid lubricating film is 500 N / m or more.
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