JP4119962B2 - 内燃機関用エアクリーナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入口を有するケースと空気出口を有するキャップとからなるハウジングと、周縁シール部が前記ケースの周縁部とキャップの周縁部とにより挟まれる構造のエレメントと、前記エレメントの周縁シール部が前記ケース及びキャップの周縁部に挟持された状態で挟持力を付与する挟持機構とを有する内燃機関用エアクリーナに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の内燃機関用エアクリーナとしては特開平7−247923号公報に記載のものが知られている。
前記内燃機関用エアクリーナ60は、図8(A)に示すように、空気入口61を有するケース62と空気出口63を有するキャップ64とからなるハウジング60hを備えている。キャップ64とケース62とはヒンジ機構65によって開閉可能な状態で連結されており、そのヒンジ機構65の反対側にキャップ64の周縁部とケース62の周縁部とをクランプしてハウジング60hを閉じるクランプ装置67が設けられている。ハウジング60h内にはエレメント66がセットされ、そのエレメント66の周縁シール部66eがキャップ64の周縁部とケース62の周縁部との間に挟持される。クランプ装置67は、キャップ64、ケース62の周縁部とエレメント66の周縁シール部66eとの間のシール性を確保するため、一般的に、板バネ等を使用してキャップ64及びケース62の周縁部を堅固にクランプしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した内燃機関用エアクリーナ60は、板バネ等を使用してキャップ64の周縁部とケース62の周縁部とを堅固にクランプする構造のため、例えば、内燃機関のバックファイヤ圧力が空気出口63を介してハウジング60h内に加わった場合に、その過大圧力の逃げ場がほとんどない。このため、バックファイヤ圧力により、キャップ64やケース62が破損したり、クランプ装置67が破壊されるなどのトラブルが生じることがある。
【0004】
これに対して、図8(B)に示すように、キャップ73の中央部分をスプリング72によって軸方向から押え、そのキャップ73がケース74に対してスプリング72の変形分だけ軸方向に変位可能な構造にしたエアクリーナ70がある(実開昭57−171171号公報)。しかし、前記エアクリーナ70の場合、中央における一個のスプリング72の力でキャップ73の周縁部とケース74の周縁部との間をシールする構造のため、必要なシール性能を確保するためには大きなバネ定数のスプリング72を使用する必要がある。このため、バックファイヤ圧力でスプリング72が動作(変位)する以前に、キャップ73等の周縁部が先に破損、変形するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、バックファイヤ圧力によりキャップやケース等が破損、変形しないようにするとともに、バックファイヤ等が発生した後もそのまま内燃機関の運転を継続できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、空気入口を有するケースと空気出口を有するキャップとからなるハウジングと、周縁シール部が前記ケースの周縁部とキャップの周縁部とにより挟まれる構造のエレメントと、前記エレメントの周縁シール部を挟持する前記ケース及びキャップの周縁部に挟持力を付与する挟持機構とを有する内燃機関用エアクリーナであって、前記挟持機構の挟持力は、前記ハウジング内にバックファイヤ圧力が加わることで、前記キャップの周縁部と前記ケースの周縁部との間に働く離隔力よりも小さく設定されており、前記ケースと前記キャップとの間には、前記離隔力により変位した前記キャップを元の位置まで導くことができるガイド機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、挟持機構の挟持力は、ハウジング内にバックファイヤ圧力が加わることで、キャップの周縁部とケースの周縁部との間に働く離隔力よりも小さく設定されている。このため、ハウジング内にバックファイヤ圧力が加わると、キャップの周縁部は挟持機構の挟持力に抗してケースの周縁部から離れ、そのハウジングが開放される。これによって、過大なバックファイヤ圧力がハウジングの外に逃がされ、ケースやキャップの破損あるいは変形を防止できる。
また、ケースとキャップとの間には、前記離隔力により変位した前記キャップを元の位置まで導くことが可能なガイド機構が設けられている。このため、バックファイヤ圧力が外部に逃げた後は、挟持機構の挟持力で前記キャップは元の位置まで戻される。これによって、ハウジングのシール性が再び確保され、バックファイヤが発生した後もそのまま内燃機関の運転を継続することができる。
【0008】
請求項2の発明によると、ガイド機構と挟持機構は複数セット設けられており、それらのガイド機構と挟持機構とがハウジングの周方向においてほぼ等間隔に配置されている。このため、バックファイヤ圧力がハウジングの周方向における任意の位置に局部的に加わった場合でもそのバックファイヤ圧力を確実に外部に逃がすことができる。
請求項3の発明によると、ケースとキャップとはヒンジ機構によって連結されており、そのケースとキャップとの回動自由端側にガイド機構と挟持機構とが設けられている。このため、ヒンジ機構を備える内燃機関用エアクリーナについてもガイド機構及び挟持機構を有効に使用できるようになる。
【0009】
ここで、請求項4に示すように、ケースとキャップとの相対移動方向に延びる棒体と、前記棒体に対してその棒体の軸方向に移動可能な可動部材とからガイド機構を構成し、前記棒体の先端部分に形成された第1バネ受けと、前記可動部材に形成された第2バネ受けと、前記棒体の周囲に装着されて、前記第1バネ受けと第2バネ受けとを離す方向に付勢されており、挟持力を発生させるバネ材とから挟持機構を構成すれば、ガイド機構と挟持機構との部品を共用でき、コスト的に好ましい。
また、請求項5に示すように、棒体を所定角度だけ傾斜可能な状態でケースあるいはキャップに取付けるようにすれば、キャップとケースとが例えばヒンジ機構で連結されている場合でも、キャップ等の移動と共に棒体が傾斜し、可動部材が棒体によってスムーズにガイドされる。
また、請求項6に示すように、バネ材のバネ定数を3〜5N/mmに設定し、キャップの周縁部とケースの周縁部とにより挟持されるエレメントの周縁シール部の面圧を1kPa〜100kPaに設定するのが設計上好ましい。
【0010】
【発明の実施形態】
[実施形態1]
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施形態1に係る内燃機関用エアクリーナについて説明する。図1は内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図等、図2は図1(A)のIIA部及びIIB部拡大図、図3はバックファイヤ圧力が加わったときの内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図、図4は図3のIV部拡大図である。また、図5は挟持&ガイド機構のスプリング特性を表すグラフである。
内燃機関用エアクリーナ1(以下、エアクリーナ1という)は、図1(A)に示すように、空気入口12を有するケース11と、空気出口14を有するキャップ13とからなるハウジング10を備えている。
【0011】
ケース11は、ハウジング10の略下半分を構成する部材であり、上部開放型の容器状に成形されている。ケース11には、上部開口11hの周縁に後記するエレメント30の周縁シール部32を支持するエレメント支持部11uが、図1(B)、図2(A)に示すように、一定幅で形成されている。そして、そのエレメント支持部11uのほぼ中央に上部開口11hの縁に沿って突条11tが形成されている。ここで、図1(B)は、図1(A)のB矢視拡大図、図2(A)は図1(A)のIIA矢視拡大図である。
【0012】
キャップ13は、ハウジング10の略上半分を構成する部材であり、下部開放型の容器状に成形されている。キャップ13には、下部開口13hの周縁にエレメント30の周縁シール部32を上方から押えるとともに、その周縁シール部32の位置決めを行なう押え溝13dが一定幅で形成されている。また、押え溝13dの外壁13xは、下部開口13hの位置よりも一定寸法だけ下方に突出しており、その外壁13xの突出部分の内側にケース11のエレメント支持部11uが収納されるようになっている。
ハウジング10を構成するケース11及びキャップ13は、例えば、合成樹脂により形成される。
【0013】
エレメント30は、吸入空気を濾過する部材であり、一般に不織布によりエレメント本体31が形成されている。そして、そのエレメント本体31の外周縁に、不織布で一体に成形された軟質の周縁シール部32が設けられている。エレメント30は、周縁シール部32がケース11のエレメント支持部11uとキャップ13の押え溝13dとの間に挟み込まれることで、ハウジング10内においてほぼ水平に保持されるとともに、ケース11とキャップ13との間をシールする。
即ち、ケース11のエレメント支持部11uが本発明のケースの周縁部に相当し、キャップ13の押え溝13dが本発明のキャップの周縁部に相当する。
【0014】
ハウジング10の周方向には、複数セット(一般的には四セット)の挟持&ガイド機構40がほぼ等間隔で設けられている。
挟持&ガイド機構40は、ケース11のエレメント支持部11uとキャップ13の押え溝13dとに対してほぼ一定の挟持力を付与するとともに、前記挟持力以上の離隔力を受けてキャップ13がケース11から瞬間的に離れた後、そのキャップ13を元の位置まで戻す働きをする。
【0015】
挟持&ガイド機構40は、図2に示すように、長軸ボルト41と、ナット42と、コイルバネ47とを備えている。長軸ボルト41は軸部41jを有しており、その軸部41jの上端部にコイルバネ47の上端を受けるフランジ状の第1バネ受け41bが形成されている。また、軸部41jの下端には小径軸部41sが設けられており、その小径軸部41sの外周面に雄ねじ41nが形成されている。
【0016】
ナット42は、同軸に設けられた頭部42hと筒部42tとを備えており、その筒部42tの内壁面に長軸ボルト41の雄ねじ41nが螺合される雌ねじ42wが形成されている。ここで、ナット42の筒部42tの外径寸法は、長軸ボルト41の軸部41jの外径寸法とほぼ等しい値に設定されている。このため、雌ねじ42wと雄ねじ41nとが限界位置まで螺合した状態で、長軸ボルト41の軸部41jの外周面とナット42の筒部42tの外周面とは連続した状態となる。
【0017】
ナット42は、ケース11に形成されたナット支持部43に上向きに支持されている。ナット支持部43は、図2に示すように、ケース11のエレメント支持部11uの外側に形成されており、ナット42の筒部42tを通す貫通孔43k(図2(B)参照)と、そのナット42の頭部42hを収納する凹部43eとを上下に備えている。ナット42は、筒部42tの先端が貫通孔43kから若干上方に突出する状態で、ナット支持部43に保持されている。この状態で、ナット42の雌ねじ42wに対して長軸ボルト41の雄ねじ41nが螺合されると、その長軸ボルト41はナット42を介してケース11に連結された状態で、そのケース11のエレメント支持部11uに対してぼぼ直角に立設される。
【0018】
長軸ボルト41の軸部41jは、キャップ13に形成されたボルト受け部45の孔部45kに通される。ボルト受け部45は、キャップ13の押え溝13dの外側に形成されており、前述の孔部45kと、その孔部45kの周囲でコイルバネ47の下端を受ける第2バネ受け45rと、コイルバネ47の略下半分を周方向から支えるガイド壁45wとから構成されている。ここで、孔部45kは、長軸ボルト41の軸部41jの軸心とその孔部45kの軸心とが若干捩じれても、両者45k,41jが軸方向に相対移動可能なように、下側が若干拡開している(図示されていない)。また、ガイド壁45wは、所定強度を確保した状態で薄肉化を実現するため、薄い二枚の壁体を部分的に繋ぎ合わせる構造となっている。
【0019】
次に、エアクリーナ1の組付け手順を簡単に説明する。
先ず、エレメント30の周縁シール部32がケース11のエレメント支持部11u上にセットされた状態で、キャップ13がケース11に被せられる。このとき、キャップ13の押え溝13dの外壁13xがケース11のエレメント支持部11uを周方向から覆うことで、ケース11に対してキャップ13が位置決めされる。また、キャップ13の押え溝13dによってエレメント30の周縁シール部32の位置決めが行なわれ、エレメント30の周縁シール部32は、ケース11のエレメント支持部11uとキャップ13の押え溝13dとの間に挟まれる。
【0020】
次に、図2に示すように、各々のキャップ13のボルト受け部45にコイルバネ47が上方からセットされ、そのコイルバネ47及びボルト受け部45の孔部45kに長軸ボルト41の軸部41jが通される。そして、長軸ボルト41の雄ねじ41nがケース11のナット支持部43に保持されたナット42の雌ねじ42wに螺合される。長軸ボルト41の雄ねじ41nとナット42の雌ねじ42wとが螺合すると、その螺合に伴って長軸ボルト41の第1バネ受け41bとボルト受け部45の第2バネ受け45rとの間の距離が減少し、コイルバネ47は軸方向に縮められる。
【0021】
そして、コイルバネ47が軸方向に縮められることにより生じたバネ力が、長軸ボルト41を介してケース11のエレメント支持部11uをキャップ13側に引付けるとともに、キャップ13の押え溝13dをケース11側に押圧する。即ち、コイルバネ47のバネ力がエレメント30の周縁シール部32を挟持するキャップ13の押え溝13dとケース11のエレメント支持部11uとに対して挟持力を付与する。そして、全ての長軸ボルト41がナット42に対してほぼ限界位置まで螺合された状態で、エアクリーナ1の組付けが終了する。
【0022】
ここで、エアクリーナ1の組付けが終了した段階(通常組付け状態)で、エレメント30の周縁シール部32の面圧が1kPa〜100 kPaになるように、挟持&ガイド機構40の設置数、コイルバネ47のバネ定数、及び通常組付け状態におけるコイルバネ47の縮み量が設定されている。コイルバネ47は、通常組付け状態からさらに約30mm縮み可能に構成されており、そのコイルバネ47のバネ定数は3〜5N/mmに設定されている。
【0023】
図5は、横軸にコイルバネ47の縮み量(通常組付け状態からの縮み量)、縦軸に通常組付け状態からのバネ力の増加量を表している。即ち、[バネ力の増加量]は、[縮み量]×[バネ定数]で表される。なお、通常組付け状態からコイルバネ47が縮んだ分だけキャップ13はケース11から離れるため、縮み量はキャップ13の移動量に等しくなる。
キャップ13及びケース11は、通常組付け状態からコイルバネ47が約30mm縮んだ状態(最大に縮んだ状態)でも、そのバネ力で破損あるいは変形しない強度を有している。
【0024】
即ち、挟持&ガイド機構40が本発明の挟持機構及びガイド機構に相当する。また、挟持&ガイド機構40の長軸ボルト41が本発明の棒体に相当し、挟持&ガイド機構40のボルト受け部45が本発明の可動部材に相当する。また、コイルバネ47が本発明のバネ材に相当する。
【0025】
次に、内燃機関の運転時にエアクリーナ1に対してバックファイヤ圧力が加わった場合におけるそのエアクリーナ1の動作説明を行なう。
バックファイヤは、燃焼が爆発サイクル中に完了せず、次のサイクルで吸気弁が開いた時まで継続する現象をいう。このため、バックファイヤが生じると過大圧力がエアクリーナ1の空気出口14を介してハウジング10内に加わる。一般的に、バックファイヤ圧力は約200kPa〜約400kPa程度であり、前記エアクリーナ1におけるエレメント30の周縁シール部32の面圧(1kPa〜100 kPa)よりも十分に大きい。このため、ハウジング10内にバックファイヤ圧力が加わることで、キャップ13の押え溝13dとケース11のエレメント支持部11uとの間に働く離隔力は、挟持&ガイド機構40の挟持力(コイルバネ47のバネ力)よりも大きくなる。
【0026】
このため、バックファイヤ圧力がハウジング10内に加わると、コイルバネ47のバネ力に抗してキャップ13の押え溝13dがケース11のエレメント支持部11uから離れ(最大で30mm離れ)、図3、図4に示すように、ハウジング10が開放される。このとき、キャップ13のボルト受け部45の孔部45kにはケース11の長軸ボルト41が通されているため、キャップ13はケース11と共にエレメント30の周縁シール部32を挟持する挟持位置(図1(A)に示す位置)からハウジング10を開放する離隔位置(図3に示す開放位置)まで長軸ボルト41に沿って移動する。これによって、過大なバックファイヤ圧力がハウジング10の外に逃がされ、ケース11やキャップ13の破損あるいは変形が防止される。
【0027】
さらに、バックファイヤ圧力が外部に逃げた後は、キャップ13はコイルバネ47のバネ力によって、前記離隔位置から前記挟持位置(元の位置)まで長軸ボルト41に沿って戻される。即ち、バックファイヤ圧力が外部に逃げた後は、エアクリーナ1はコイルバネ47のバネ力、ケース11の長軸ボルト41及びキャップ13のボルト受け部45の孔部45kの働きで、通常組付け状態に戻される。このため、バックファイヤが発生した後もそのまま内燃機関の運転を継続することができる。
【0028】
また、挟持&ガイド機構40は、ハウジング10の周方向においてほぼ等間隔に配置されているため、バックファイヤ圧力がハウジングの周方向における任意の位置に局部的に加わった場合でもそのバックファイヤ圧力を確実に外部に逃がすことができる。
また、バックファイヤが発生したときに、エアクリーナ1からの圧力放出が可能になるため、吸気系全体での過大圧力の影響を無くすことができ、例えば、キャップ13、ケース11の肉厚を薄くすることが可能になる。さらに、内燃機関のスロットルボディ等の部品へのダメージも少なくできる。
【0029】
[実施形態2]
以下、図6、図7に基づいて本発明の実施形態2に係る内燃機関用エアクリーナについて説明する。ここで、図6(A)は本実施形態に係る内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図、図6(B)は図6(A)のB矢視拡大図、図6(C)は図6(A)のC矢視拡大図である。また、図7(A)はバックファイヤ圧力が加わったときの内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図、図7(B)は図7(A)のB矢視拡大図である。
本実施形態に係る内燃機関用エアクリーナ100(以下、エアクリーナ100という)は、ケース11とキャップ13とをヒンジ機構120及び挟持&ガイド機構40により連結する構成であり、基本構成は実施形態1のエアクリーナ1と同様である。このため、実施形態1のエアクリーナ1と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
エアクリーナ100のヒンジ機構120は、キャップ13に形成された空気出口14の下側に配置されている。ヒンジ機構120は、図6(C)に示すように、キャップ13の押え溝13dの外側でその押え溝13dと平行に設けられた短軸122と、その短軸122をケース11のエレメント支持部11uの外側で軸回りに回転可能に支持する軸受け部124とから構成されている。これによって、キャップ13は、ケース11に対してヒンジ機構120の短軸122を中心に回動可能となる。
【0031】
ここで、ヒンジ機構120は、ケース11に対してキャップ13が閉じられた状態で、ケース11のエレメント支持部11uとキャップ13の押え溝13dとの間に挟まれるエレメント30の周縁シール部32に挟持力を付与できるように構成されている。
ケース11とキャップ13との回動自由端側には、挟持&ガイド機構40が配置されている。挟持&ガイド機構40はケース11とキャップ13との幅方向両側に設けられており、一方の挟持&ガイド機構40の下側にケース11の空気入口12が配置されている。
【0032】
挟持&ガイド機構40は、基本的には実施形態1で説明した挟持&ガイド機構40と同じ構造である。しかし、ケース11に対して長軸ボルト41を若干傾斜可能な状態で連結するために、ナット42の形状等に改良が加えられている。即ち、ナット42はその頭部42hの外周面が球面状に成形されている。また、ナット42を保持するケース11のナット支持部43は、貫通孔43kの内径寸法がナット42の筒部42tの外径寸法よりも若干大きな値に設定されている。これによって、ナット支持部43に保持されたナット42及びそのナット42に接続された長軸ボルト41の軸心をケース11に対して若干傾斜させることが可能となる。
【0033】
さらに、キャップ13のボルト受け部45は、長軸ボルト41の軸部41jが通される孔部45kが下側で拡開するようにテーパ状に形成されている。したがって、キャップ13のボルト受け部45は孔部45kのテーパ分だけ長軸ボルト41の軸心に対して傾斜することが可能となる。
このため、キャップ13がケース11に対してヒンジ機構120の短軸122を中心に回動する際、図7(B)に示すように、キャップ13の移動と共にケース11に対して長軸ボルト41が若干傾斜し、さらにその長軸ボルト41に対してキャップ13のボルト受け部45の孔部45kが若干傾斜することで、キャップ13のボルト受け部45はケース11の長軸ボルト41に沿ってスムーズに移動できるようになる。
【0034】
次に、内燃機関の運転時にエアクリーナ100に対してバックファイヤ圧力が加わった場合におけるそのエアクリーナ100の動作説明を行なう。
バックファイヤ生じると、過大圧力がエアクリーナ100の空気出口14を介してハウジング10内に加わるため、ハウジング10内の圧力は空気出口14と対向する位置で最も大きくなる。空気出口14は、図6(A)等に示すように、ヒンジ機構120の上方において挟持&ガイド機構40側に向けられた状態で形成されているため、バックファイヤ圧力が加わった場合のハウジング10内の圧力は挟持&ガイド機構40の近傍で最も大きくなる。
【0035】
このため、内燃機関の運転時にバックファイヤが発生すると、図7(A)、(B)に示すように、挟持&ガイド機構40のコイルバネ47のバネ力に抗して、キャップ13がケース11に対してヒンジ機構120の短軸122を中心に上方に回動し、ハウジング10内の最も圧力が大きくなる部位が開放される。これによって、過大なバックファイヤ圧力がハウジング10の外に逃がされ、ケース11やキャップ13の破損あるいは変形を防止できる。このとき、ケース11に対して長軸ボルト41が若干傾斜し、その長軸ボルト41に対してキャップ13のボルト受け部45の孔部45kが若干傾斜することで、キャップ13のボルト受け部45はケース11の長軸ボルト41に沿ってスムーズに移動できるようになる。
【0036】
バックファイヤ圧力が外部に逃げた後は、キャップ13はコイルバネ47のバネ力によって、ヒンジ機構120の短軸122を中心に下方に回動し、前記離隔位置からエレメント30の周縁シール部32を挟持する挟持位置(元の位置)まで戻される。即ち、バックファイヤ圧力が外部に逃げた後は、エアクリーナ100はコイルバネ47のバネ力等の働きで、通常組付け状態に戻される。このため、バックファイヤが発生した後もそのまま内燃機関の運転を継続することができる。
【0037】
ここで、本実施形態では、ケース11の長軸ボルト41を傾斜可能にし、その長軸ボルト41に対してキャップ13のボルト受け部45をスムーズに沿わせるようにしたが、その長軸ボルト41をキャップ13の回動軌跡に合わせて予め湾曲させておくことも可能である。
また、実施形態1では挟持&ガイド機構40を四セット備えるエアクリーナ1を例示し、実施形態2では挟持&ガイド機構40を二セット備えるエアクリーナ100を例示したが、挟持&ガイド機構40の数はエアクリーナ1,100のサイズに応じて適宜変更可能である。
【0038】
また、実施形態1、2では、長軸ボルト41をケース11側、ボルト受け部45をキャップ13側に設ける例を示したが、長軸ボルト41をキャップ13側、ボルト受け部45をケース11側に設けることも可能である。
また、実施形態1、2では、挟持機構とガイド機構とを一体化した挟持&ガイド機構40を使用する例を示したが、挟持機構とガイド機構とを別体化することも可能である。
【0039】
なお、本実施の形態により把握される発明であって特許請求の範囲に記載されていない発明を以下に追記する。
(1) 請求項3に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
ヒンジ機構はバックファイヤ圧力が加わり難い位置に配置されており、ガイド機構及び挟持機構はバックファイヤ圧力が加わり易い位置に配置されていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。
このため、効率的にバックファイヤ圧力をハウジングの外に逃がすことができる。
(2) 請求項4に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
棒体は、ケース側に設けられており、
可動部材は、キャップ側に設けられており、前記棒体が通される孔部を有していることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。
(3) 請求項4に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
棒体は、ヒンジ機構によるキャップの回動軌跡に合わせて湾曲された状態で成形されていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。
【0040】
【発明の効果】
本発明によると、ハウジング内にバックファイヤ圧力が加わっても、過大なバックファイヤ圧力がハウジングの外に逃がされ、ケースやキャップの破損あるいは変形を防止できる。また、バックファイヤが発生した後も内燃機関の運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図(A図)及びA図のB矢視拡大図(B図)である。
【図2】図1(A)のIIA矢視拡大図(A図)及び図1(A)のIIB矢視拡大図(B図)である。
【図3】バックファイヤ圧力が加わったときの内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図である。
【図4】図3のIV矢視拡大図である。
【図5】挟持&ガイド機構のスプリング特性を表すグラフである。
【図6】本発明の実施形態2に係る内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図(A図)、A図のB矢視拡大図(B図)及びA図のC矢視拡大図(C図)である。
【図7】バックファイヤ圧力が加わったときの内燃機関用エアクリーナの一部破断側面図(A図)及びA図のB矢視拡大図(B図)である。
【図8】従来の内燃機関用エアクリーナの縦断面図(A図、B図)である。
【符号の説明】
10 ハウジング
11 ケース
11u エレメント支持部(周縁部)
12 空気入口
13 キャップ
13d 押え溝(周縁部)
14 空気出口
10 ハウジング
30 エレメント
32 周縁シール部
40 挟持&ガイド機構(挟持機構、ガイド機構)
41 長軸ボルト(棒体)
41b 第1バネ受け
45 ボルト受け部(可動部材)
45r 第2バネ受け
47 コイルバネ(バネ材)
120 ヒンジ機構
Claims (6)
- 空気入口を有するケースと空気出口を有するキャップとからなるハウジングと、周縁シール部が前記ケースの周縁部とキャップの周縁部とにより挟まれる構造のエレメントと、前記エレメントの周縁シール部を挟持する前記ケース及びキャップの周縁部に挟持力を付与する挟持機構とを有する内燃機関用エアクリーナであって、
前記挟持機構の挟持力は、前記ハウジング内にバックファイヤ圧力が加わることで、前記キャップの周縁部と前記ケースの周縁部との間に働く離隔力よりも小さく設定されており、
前記ケースと前記キャップとの間には、前記離隔力により変位した前記キャップを元の位置まで導くことができるガイド機構が設けられていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。 - 請求項1に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
ガイド機構と挟持機構とは複数セット設けられており、それらのガイド機構と挟持機構とがハウジングの周方向においてほぼ等間隔に配置されていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。 - 請求項1に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
ケースとキャップとはヒンジ機構によって連結されており、そのケースとキャップとの回動自由端側にガイド機構と挟持機構とが設けられていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の内燃機関用エアクリーナであって、
ガイド機構は、ケースとキャップとの相対移動方向に延びる棒体と、前記棒体に対してその棒体の軸方向に移動可能な構成の可動部材とを有しており、
挟持機構は、前記棒体の先端部分に形成された第1バネ受けと、前記可動部材に形成された第2バネ受けと、前記棒体の周囲に装着されて、前記第1バネ受けと第2バネ受けとを離す方向に付勢されており、挟持力を発生させるバネ材とを有していることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。 - 請求項4に記載の内燃機関用エアクリーナであって、
棒体は、所定角度だけ傾斜可能な状態でケースあるいはキャップに取付けられていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。 - 請求項4又は請求項5のいずれかに記載の内燃機関用エアクリーナであって、
バネ材のバネ定数は3〜5N/mmに設定されており、キャップの周縁部とケースの周縁部とにより挟持されるエレメントの周縁シール部の面圧が1kPa〜100kPaに設定されていることを特徴とする内燃機関用エアクリーナ。
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