JP4108889B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車両等に制動力を付与するのに好適に用いられるディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両に設けられるディスクブレーキは、ディスクの周方向に離間して該ディスクを軸方向に跨ぐ一対の腕部を有し、前記各腕部には凹溝状のパッド案内部とトルク受部とが設けられた取付部材と、該取付部材の各パッド案内部内に挿入される凸部を有し、キャリパによって前記ディスクの表面に押圧されることによりディスクに制動力を付与する一対の摩擦パッドと、該各摩擦パッドを取付部材の各腕部間で弾性的に支持すべく、取付部材の各腕部側に取付けられた一対のパッドスプリングとを含んで構成されている(例えば、特開平8−226470号公報等)。
【0003】
この種の従来技術によるディスクブレーキは、車両の運転者等がブレーキ操作を行ったときに、キャリパのインナ側に設けたピストンを外部からの液圧供給によりディスク側に摺動させ、インナ側の摩擦パッドをディスクに押圧する。そして、キャリパは、このときの反力で取付部材に対して摺動変位し、そのアウタ爪部とピストンとの間で各摩擦パッドをディスクの両面に押圧することにより、ディスクに両面側から制動力を付与するものである。
【0004】
ここで、取付部材の各腕部にはトルク受部が設けられ、該トルク受部は、ブレーキ操作時に摩擦パッドが当接することによってディスクからの回転力を受承するものである。そして、トルク受部は、凹溝からなるパッド案内部に隣接してディスクの周方向に突出し、パッド案内部の周壁の一部を構成している。
【0005】
また、パッドスプリングは、例えばばね性を有する金属板等をプレス加工することにより形成されている。そして、パッドスプリングは、腕部のパッド案内部内に嵌合するようにコ字状に折曲げて形成され前記摩擦パッドの凸部を前記パッド案内部と共にディスクの軸方向に案内する案内板部と、該案内板部の端部側から前記トルク受部側に向けて折曲げられることにより形成され前記トルク受部との間で摩擦パッドを受承するパッド受板部と、該パッド受板部の先端側から前記摩擦パッド側に向けてさらに折曲げられることにより形成され前記摩擦パッドを弾性的に押圧するパッド押圧板部とを有している。
【0006】
そして、パッドスプリングは、コ字状をなす案内板部が腕部のパッド案内部内に嵌合され、この状態でパッド押圧板部により摩擦パッドを押圧してその凸部を案内板部に弾性的に摺接させることにより、摩擦パッドを弾性的に支持しつつ軸方向に案内するものである。
【0007】
この場合、従来技術のパッドスプリングは、腕部から取外して自由状態としたときに、そのパッド受板部が案内板部の端部側に対してほぼ90°の角度で折曲げられることにより形成されている。そして、パッドスプリングの取付時には、その案内板部を腕部のパッド案内部内に嵌合すると、パッド受板部は、トルク受部の表面に沿って延びるように配置される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、パッドスプリングのパッド受板部を自由状態で案内板部に対してほぼ90°の角度で折曲げることにより形成し、腕部への取付時には、パッドスプリングの案内板部を腕部のパッド案内部内に嵌合し、パッド受板部をトルク受部の表面上に配置する構成としている。
【0009】
しかし、パッドスプリングを摩擦パッドと共に腕部に取付けた状態では、そのパッド押圧板部が摩擦パッドからの反力を受けるため、この反力がパッド受板部に伝わることにより、パッド受板部は、トルク受部の表面から部分的に浮上がるように弾性変形することがある。
【0010】
そして、この状態でブレーキ操作時を行うと、ディスクの回転力等が摩擦パッドを介してパッドスプリングに付加されることにより、パッドスプリングの案内板部は取付部材のパッド案内部から外れる方向に位置ずれし易くなる。
【0011】
このため、従来技術では、ブレーキ操作時に案内板部が取付部材の腕部に対して位置ずれし、パッドスプリング全体が腕部に対して傾くように摩擦パッド側へと変位するばかりでなく、この状態では摩擦パッドとパッドスプリングとの間の摺動抵抗が増大してしまい、ブレーキ操作を解除したときに摩擦パッドがディスクから十分に離れずにブレーキの「引き摺り」等が生じ易くなるという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、パッドスプリングの案内板部を腕部のパッド案内部内に安定して嵌合させることができ、ブレーキ操作時にパッドスプリングが腕部に対して変位するのを抑え、ブレーキの引き摺り等を抑制できるようにしたディスクブレーキを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、ディスクの周方向に離間して該ディスクを軸方向に跨ぐ一対の腕部を有し、前記各腕部には凹溝状のパッド案内部とトルク受部とが設けられた取付部材と、該取付部材の各パッド案内部内に挿入される凸部を有し、キャリパによって前記ディスクの表面に押圧される摩擦パッドと、該摩擦パッドを前記取付部材の各腕部間で弾性的に支持すべく、前記取付部材の各腕部側に取付けられた一対のパッドスプリングとからなるディスクブレーキに適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、パッドスプリングは、前記腕部のパッド案内部内に嵌合するようにコ字状に折曲げて形成され前記摩擦パッドの凸部をディスクの軸方向に案内する案内板部と、該案内板部の端部側から前記トルク受部側に向けて折曲げられることにより形成され前記トルク受部との間で摩擦パッドを受承するパッド受板部と、該パッド受板部の先端側から前記摩擦パッド側に向けてさらに折曲げられることにより形成され前記摩擦パッドを弾性的に押圧するパッド押圧板部とを有し、パッド受板部は案内板部に対する折曲げ角度を、前記パッドスプリングを腕部から取外して自由状態としたときに、90°よりも大きく100°以下となる角度に設定する構成としたことにある。
【0015】
このように構成することにより、パッドスプリングを摩擦パッドと共に腕部に取付けた状態では、摩擦パッドからの反力がパッドスプリングのパッド押圧板部を介してパッド受板部に加わると、パッド受板部は弾性変形することによりトルク受部の外側にほぼ全長に亘って当接(面接触)した状態となる。このため、摩擦パッドからの反力によりパッドスプリングのパッド受板部がトルク受部から部分的に浮上がるように変形するのを防止できる。そして、ブレーキ操作時にあっても、案内板部をパッド案内部内で安定した嵌合状態に保持でき、摩擦パッドとパッドスプリングとの摺動抵抗を小さく抑えることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による車両用のディスクブレーキを、添付図面に従って詳細に説明する。
【0017】
1は車両の車輪と共に図1中の矢示A方向に回転するディスク、2は該ディスク1のインナ側に設けられる取付部材で、該取付部材2は、図1、図2に示す如く、ディスク1の回転方向(周方向)に離間してディスク1の外周を跨ぐように軸方向に延びた一対の腕部2A,2Aと、該各腕部2Aの基端側を連結して設けられ、車両の非回転部分に固定される連結部2B等とから構成されている。
【0018】
そして、各腕部2Aの先端側には、これらの間を連結する弓形状の補強ビーム2Cが一体形成されている。また、各腕部2Aには、図3に示す如く、後述する摺動ピン7用のピン穴2Dがそれぞれ設けられている。また、腕部2Aには、ディスク1が回転可能に配置されるディスクパス部3が設けられ、その上側壁面3Aはディスク1の周方向に沿って切欠くように形成されている。さらに、腕部2Aには、後述のパッド案内部4とトルク受部5とが設けられている。
【0019】
4,4,…は取付部材2の各腕部2Aに設けられたパッド案内部で、該各パッド案内部4は、図3に示す如く、ディスク1の軸方向に延びる断面略凹形状の溝部として形成され、ディスクパス部3の軸方向両側に位置して各腕部2Aの基端側(インナ側)および先端側(アウタ側)にそれぞれ配設されている。そして、パッド案内部4は、図3中の上,下に位置して平行に配設された上側壁面4A,下側壁面4Bを有し、これらの壁面4A,4B間で後述の摩擦パッド8をディスク1の軸方向に案内するものである。
【0020】
5,5,…は取付部材2の各腕部2Aに設けられたトルク受部で、該各トルク受部5は、各パッド案内部4の下側に隣接してそれぞれ配置され、ディスク1の周方向に突出すると共に、その上面側部位はパッド案内部4の下側壁面4Bとなっている。また、トルク受部5の突出端側となる表面5Aは、パッド案内部4の下側壁面4Bに対してほぼ直角な面として形成されている。
【0021】
そして、ブレーキ操作時には、摩擦パッド8がディスク1の回転力により引摺られて、ディスク1の回転方向出口側となるトルク受部5の表面5Aに当接し、これにより回転方向出口側のトルク受部5は、摩擦パッド8と後述するパッドスプリング10のパッド受板部16とを介してディスク1の回転力を受承するものである。
【0022】
6は取付部材2に摺動可能に支持されたキャリパで、該キャリパ6は、図1、図2に示す如く、ディスク1のインナ側に設けられたインナ脚部6Aと、取付部材2の各腕部2A間でディスク1の外周側を跨ぐように該インナ脚部6Aからディスク1のアウタ側へと延設されたブリッジ部6Bと、該ブリッジ部6Bの先端側からディスク1のアウタ側に延設され、先端側が三つ又状に分岐したアウタ脚部6Cとを含んで構成されている。
【0023】
ここで、インナ脚部6Aには、ピストンが摺動可能に挿嵌されるシリンダ(いずれも図示せず)が設けられている。また、インナ脚部6Aには、図2中の左,右に向けて一対の取付部6D,6Dが突設され、該各取付部6Dには、摺動ピン7がボルト7A等を用いてそれぞれ一体に設けられている。
【0024】
そして、キャリパ6は、各摺動ピン7の先端側が取付部材2の各ピン穴2D内に摺動可能に挿嵌されることにより、これらの摺動ピン7を介して取付部材2の各腕部2Aに取付けられ、ディスク1の軸方向に摺動可能となっている。
【0025】
8,8はディスク1の両面側に配設されたインナ側およびアウタ側の摩擦パッドで、該各摩擦パッド8は、図1ないし図3に示す如く、ディスク1の周方向に延びた略扇形の平板状に形成され、その裏面側には裏金9(一方のみ図示)が重なり合うように固着されている。
【0026】
また、裏金9の長さ方向両端側には凸部としての耳部9A,9Aが突設され、該各耳部9Aは、後述するパッドスプリング10の案内板部14を介して取付部材2の各パッド案内部4内に挿嵌されている。そして、各摩擦パッド8は、裏金9の各耳部9Aがパッド案内部4に沿って摺動可能に案内され、ブレーキの操作時には、ディスク1に制動力を付与すべく、キャリパ6によってディスク1の両面に押圧されるものである。
【0027】
10,10は取付部材2の各腕部2Aに取付けられた一対のパッドスプリングで、該各パッドスプリング10は、図3ないし図5に示す如く、従来技術とほぼ同様に、ばね性を有するステンレス鋼板等をプレス加工して折曲げることにより一体形成され、後述の連結部11、案内板部14,14、パッド受板部16,16、パッド押圧板部17,17等によって構成されている。
【0028】
しかし、本実施の形態によるパッドスプリング10は、図4、図5に示す如く取付部材2から取外して自由状態としたときに、案内板部14の下板14Bに対するパッド受板部16の折曲げ角度θ1 が、後述の如く従来技術よりも大きな角度となるように予め形成されている。
【0029】
11はパッドスプリング10の各案内板部14等を連結する連結部で、該連結部11は、取付部材2の腕部2A内側面に係合するように略「く」字状に屈曲して形成され、ディスク1の外周側を跨ぐように軸方向に延設されると共に、その長さ方向両端側には、ディスク1の径方向内向きに延びた一対の平板部12,12が一体形成されている。
【0030】
また、連結部11の長さ方向中間部には、図3に示す如く、ディスクパス部3の上側壁面3Aに沿って略「く」字状に折曲げられた係合板部13が一体形成されている。そして、係合板部13は、ディスクパス部3に係合されることにより、パッドスプリング10を取付部材2の対してディスク1の軸方向に位置決めしている。
【0031】
14,14は連結部11の両端側に各平板部12を介して設けられた案内板部で、該各案内板部14は、平板部12の先端側から略コ字状に折曲げられることにより形成されている。そして、案内板部14は、パッド案内部4の上側壁面4A,下側壁面4Bに係合する上板14A,下板14Bと、これらの上板14Aと下板14Bとの間を連結する中間板14Cとからなり、パッド案内部4内に嵌合されている。
【0032】
また、各案内板部14には、図4に示す如く、その上板14Aから中間板14Cに亘って略コ字形状の切込みを入れることにより、下板14Bと中間板14Cとの間の角隅側から上板14A側に向けて延びる舌片部15が設けられている。そして、舌片部15の先端部15Aは略L字状に屈曲した自由端となり、パッド案内部4の上側壁面4Aに締代をもって弾性的に係合している。
【0033】
これにより、舌片部15の先端部15Aは、図6に示す如く、パッド案内部4の上側壁面4Aを付勢力F2 をもってほぼ垂直に付勢し、その反力によって案内板部14の下板14Bをパッド案内部4の下側壁面4Bに向けて強く押付け、案内板部14をパッド案内部4に当接状態で固定するものである。
【0034】
16,16は案内板部14の下板14Bに一体形成されたパッド受板部で、該各パッド受板部16は、基端側16Aが下板14Bの端部側からトルク受部5側に向けて折曲げられることにより形成され、先端側16Bがトルク受部5の表面5Aに沿って延びている。そして、ブレーキ操作時には、ディスク1の回転方向出口側に位置するパッドスプリング10のパッド受板部16がトルク受部5との間で摩擦パッド8を受承する構成となっている。
【0035】
ここで、パッド受板部16は、図4、図5に示す如く、パッドスプリング10を取付部材2から取外して自由状態としたときに、案内板部14の下板14Bに対し所定の折曲げ角度θ1 をもって形成されている。
【0036】
そして、この折曲げ角度θ1 は、例えば90°よりも大きく100°以下となる角度(90<θ1 ≦100)、好ましくは93〜99°の範囲内となる角度(93≦θ1 ≦99)として定められ、後述の図7中に比較例として示す従来技術の折曲げ角度θ1 ′(90°)よりも大きく設定されている。
【0037】
これにより、パッドスプリング10を取付部材2の腕部2Aに取付けたときには、図6に示す如く、パッド受板部16が摩擦パッド8からの反力F1 により弾性変形し、このときパッド受板部16は、基端側16Aと先端側16Bとの間でほぼ全長に亘ってトルク受部5の表面5Aに当接(面接触)した状態となっている。
【0038】
17,17はパッド受板部16の先端側16Bから摩擦パッド8側に向けて折曲げられることにより形成されたパッド押圧板部で、該パッド押圧板部17は、図3に示す如く、その先端側が裏金9の端面に弾性的に当接し、裏金9の耳部9Aを案内板部14の上板14A側に押圧している。
【0039】
そして、パッドスプリング10は、パッド押圧板部17の押圧力等によって裏金9の各耳部9Aを案内板部14に対し弾性的に摺接させ、この状態で案内板部14が各耳部9Aをパッド案内部4内で摺動可能に支持することにより、摩擦パッド8をディスク1の軸方向に案内するものである。
【0040】
本実施の形態によるディスクブレーキは上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0041】
まず、ブレーキの操作時には、キャリパ6のインナ脚部6A内に設けられたピストンが外部からの液圧供給によりディスク1側に摺動変位すると、このピストンによりインナ側の摩擦パッド8がディスク1に押圧される。そして、このときキャリパ6はディスク1からの反力を受けてインナ側に変位し、アウタ脚部6Cがアウタ側の摩擦パッド8をディスク1に押圧することにより、該ディスク1に制動力を与える。そして、ブレーキ操作を解除したときには、ピストンへの液圧供給が停止することにより、各摩擦パッド8がディスク1から離間する。
【0042】
また、これらのブレーキ操作時、解除時には、摩擦パッド8がパッドスプリング10のパッド押圧板部17によって押圧され、その耳部9Aが案内板部14の上板14Aと摺接した状態に保持されるため、摩擦パッド8は、案内板部14に沿ってディスク1の軸方向へと円滑に案内される。
【0043】
この場合、ブレーキの操作時には、ディスク1の回転力等が摩擦パッド8を介してパッドスプリング10に伝わり易いが、パッドスプリング10は、図6に示す如く、案内板部14が舌片部15の付勢力F2 によってパッド案内部4内に強く嵌合されているため、取付部材2の腕部2Aに安定して取付けられた状態を保持する。
【0044】
一方、ディスクブレーキの組立時には、まず取付部材2の各腕部2Aにパッドスプリング10をそれぞれ取付けた後に、これらのパッドスプリング10間に摩擦パッド8を組付ける。
【0045】
この場合、まずパッドスプリング10の取付作業では、案内板部14をパッド案内部4内に嵌合させ、舌片部15をパッド案内部4内に弾性的に係合させる。このとき、パッドスプリング10は、摩擦パッド8を組付ける前の状態であるため、図6中に仮想線で示す如く、パッド受板部16とパッド押圧板部17とがほぼ自由状態を保持し、パッド受板部16は、その折曲げ角度θ1 に対応して例えば最大で約10°以下の傾斜角θ2 (θ2 =θ1 −90°)をもってトルク受部5の表面5Aから各腕部2A間へと斜めに突出している。
【0046】
次に、摩擦パッド8の組付時には、まずパッドスプリング10のパッド受板部16とパッド押圧板部17とをトルク受部5側に弾性変形させ、この状態で摩擦パッド8を各腕部2A間に配置する。そして、裏金9の耳部9Aをパッドスプリング10の案内板部14内に嵌合し、パッドスプリング10のパッド押圧板部17を裏金9の端面に当接させる。
【0047】
この結果、パッド押圧板部17には、図6中に実線で示す如く、摩擦パッド8からの反力F1 が加わるため、パッド受板部16は、基端側16Aがパッド押圧板部17から伝わる反力F1 によって案内板部14の下板14Bに対し約90°の角度で屈曲するように弾性変形し、基端側16Aと先端側16Bとの間でほぼ全長に亘ってトルク受部5の表面5Aに当接した状態となる。
【0048】
そして、パッドスプリング10には、摩擦パッド8からの反力F1 によりパッド受板部16を中心とした回転モーメントが発生し、このときの回転モーメントは、パッド受板部16とトルク受部5とが面接触することにより、パッド受板部16の基端側16A近傍を中心とした回転モーメントMaと、先端側16B近傍を中心とした回転モーメントMbとに分散される。また、舌片部15の先端部15Aには、回転モーメントMaによって押圧力Faが加わり、回転モーメントMbによって押圧力Fbが加わるようになる。
【0049】
このため、舌片部15は、これらの押圧力Fa,Fbのうち上側壁面4Aに対し垂直な方向の成分により生じる付勢力F2 をもってパッド案内部4の上側壁面4Aをほぼ垂直に付勢し、これにより案内板部14は、舌片部15の付勢力F2 に応じた摩擦抵抗をもってパッド案内部4内に強く嵌合された状態となる。
【0050】
また、案内板部14には、舌片部15への押圧力Fa,Fbのうち上側壁面4Aに沿った水平方向の成分によって外力F3 も加わるようになり、この外力F3 は案内板部14をパッド案内部4から取外す方向に作用する。しかし、この外力F3 を従来技術のものと比較して確実に小さくできるものである。
【0051】
この場合、例えば特開平8−226470号公報に記載の従来技術のパッドスプリングでは、図7に示す比較例のように、パッドスプリング100が、連結部、平板部101、案内板部102、舌片部103等を有し、図7中に仮想線で示す自由状態では、パッド受板部104が案内板部102の下板に対して約90°の折曲げ角度θ1 ′をもって屈曲している(θ1 ′=90°)。
【0052】
そして、このパッドスプリング100を摩擦パッド8と共に取付部材2に取付けた状態では、摩擦パッド8からの反力F1 ′がパッド押圧板部105に加わると、パッド受板部104の基端側104A等は、図7中に実線で示す如く、トルク受部5の表面5Aから浮上がるように弾性変形し、離間した状態となり易い。
【0053】
この結果、摩擦パッド8からの反力F1 ′は、パッド受板部104の先端側104Bを中心とし案内板部102等から離れた位置で回転モーメントMb′を発生させ、この回転モーメントMb′により舌片部103に加わる押圧力Fb′は、パッド案内部4の上側壁面4Aに対する傾き角が小さくなる。これにより、舌片部103の先端部103Aでは、上側壁面4Aとほぼ垂直な方向に付勢する付勢力F2 ′が小さくなり、上側壁面4Aにほぼ沿った外力F3 ′が大きくなる。
【0054】
これに対し、本実施の形態では、パッドスプリング10を自由状態としたときに、その案内板部14の下板14Bに対するパッド受板部16の折曲げ角度θ1 を、例えば90°よりも大きく100°以下の角度で、好ましくは93〜99°の範囲内となるように設定する構成としている。
【0055】
これにより、パッドスプリング10を摩擦パッド8と共に取付部材2に取付けたときには、そのパッド受板部16をほぼ全長に亘ってトルク受部5の表面5Aに広く面接触させることができ、摩擦パッド8からの反力F1 によって舌片部15等に回転モーメントが加わるときには、この回転モーメントをパッド受板部16によって回転モーメントMa,Mbに分散させることができる。
【0056】
そして、摩擦パッド8からの反力F1 によりパッド受板部16の基端側16Aを中心として案内板部14等に近い位置で回転モーメントMaを発生でき、この回転モーメントMaによってパッド案内部4の上側壁面4Aに対して傾き角の大きな押圧力Faを発生することができる。
【0057】
この結果、舌片部15による付勢力F2 を回転モーメントMa(押圧力Fa)によって増大させ、従来技術のパッドスプリング100と比較して、案内板部14をより強くパッド案内部4に嵌合させることができる。また、回転モーメントMbを、上側壁面4Aに対する傾き角の大きな回転モーメントMaに分散することによって低減でき、これにより案内板部14をパッド案内部4から取外す方向に加わる外力F3 を従来技術よりも抑制することができる。
【0058】
従って、本実施の形態によれば、パッドスプリング10の案内板部14を取付部材2のパッド案内部4内に安定して嵌合させることができる。これにより、摩擦パッド8から加わる反力F1 やブレーキ操作時に摩擦パッド8を介して伝わるディスク1の回転力等によって案内板部14がパッド案内部4内で位置ずれしたり、パッドスプリング10が取付部材2の腕部2Aに対し傾くように変位するのを確実に防止でき、ブレーキの引き摺り等を抑制してブレーキ性能を向上させることができる。
【0059】
また、パッド受板部16の折曲げ角度θ1 を自由状態で、例えば90°よりも大きく100°以下の角度としたので、摩擦パッド8を各パッドスプリング10間に組付けるときには、これらの間に突出するパッド受板部16等の傾斜角θ2 (図6参照)を最大で10°以下に小さく抑えることができ、パッド組付け時の作業性を高めることができる。
【0060】
なお、実施の形態では、パッドスプリング10の舌片部15を、案内板部14の下板14B側から上板14A側に向けて延設し、パッド案内部4の上側壁面4Aに当接させる構成としたが、本発明はこれに限らず、例えば図8に示す変形例のように、パッドスプリング10′の舌片部15′を、案内板部14′の上板14A′側から下板14B′側に向けて延設し、パッド案内部4の下側壁面4Bに当接させる構成としてもよい。
【0061】
また、実施の形態では、パッドスプリング10をディスク1の外周側を跨ぐように略コ字状に形成したが、本発明はこれに限らず、例えばパッドスプリング10を連結部11で切離したような形状をもつ2個のパッドスプリングを、ディスク1のインナ側、アウタ側にそれぞれ配設する構成としてもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した通り請求項1の発明によれば、パッドスプリングを自由状態としたときに、その案内板部に対するパッド受板部の折曲げ角度が90°よりも大きく100°以下の角度となるように構成したので、パッドスプリングを腕部に取付けた状態では、そのパッド受板部をトルク受部に広く当接(面接触)させることができ、摩擦パッドからの反力によりパッド受板部を中心として案内板部側に加わる回転モーメントを、パッド受板部の長さ方向に沿って複数箇所に分散させることができる。従って、案内板部をパッド案内部内に安定して嵌合させることができ、摩擦パッドから加わる反力やブレーキ操作時に摩擦パッドを介して伝わるディスクの回転力等によって案内板部がパッド案内部内で位置ずれするのを確実に防止でき、ブレーキの引き摺り等を抑制してブレーキ性能を向上させることができる。また、パッド受板部の折曲げ角度を自由状態で100°以下の角度としたので、摩擦パッドを各パッドスプリング間に組付けるときの作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるディスクブレーキの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるディスクブレーキの平面図である。
【図3】図2中の矢示III − III方向からみた拡大断面図である。
【図4】パッドスプリングを単体で示す斜視図である。
【図5】パッドスプリングを一部破断して示す縦断面図である。
【図6】摩擦パッドからの反力によりパッドスプリングに加わる回転モーメントを示す図3中の要部拡大図である。
【図7】本発明の比較例として従来技術のディスクブレーキを図6と同様位置からみた要部拡大図である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例を示すパッドスプリングの断面図である。
【符号の説明】
1 ディスク
2 取付部材
2A 腕部
3 ディスクパス部
4 パッド案内部
5 トルク受部
5A 表面
6 キャリパ
8 摩擦パッド
9 裏金
9A 耳部(凸部)
10 パッドスプリング
11 連結部
12 平板部
13 係合板部
14 案内板部
15 舌片部
16 パッド受板部
17 パッド押圧板部
Claims (1)
- ディスクの周方向に離間して該ディスクを軸方向に跨ぐ一対の腕部を有し、前記各腕部には凹溝状のパッド案内部とトルク受部とが設けられた取付部材と、該取付部材の各パッド案内部内に挿入される凸部を有し、キャリパによって前記ディスクの表面に押圧される摩擦パッドと、該摩擦パッドを前記取付部材の各腕部間で弾性的に支持すべく、前記取付部材の各腕部側に取付けられた一対のパッドスプリングとからなるディスクブレーキにおいて、
前記パッドスプリングは、前記腕部のパッド案内部内に嵌合するようにコ字状に折曲げて形成され前記摩擦パッドの凸部を前記ディスクの軸方向に案内する案内板部と、該案内板部の端部側から前記トルク受部側に向けて折曲げられることにより形成され前記トルク受部との間で摩擦パッドを受承するパッド受板部と、該パッド受板部の先端側から前記摩擦パッド側に向けてさらに折曲げられることにより形成され前記摩擦パッドを弾性的に押圧するパッド押圧板部とを有し、
前記パッド受板部は案内板部に対する折曲げ角度を、前記パッドスプリングを腕部から取外して自由状態としたときに、90°よりも大きく100°以下となる角度に設定する構成としたことを特徴とするディスクブレーキ。
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JP33858199A JP4108889B2 (ja) | 1999-11-29 | 1999-11-29 | ディスクブレーキ |
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-
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