JP4100255B2 - コネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイドリテーナを備えたコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リテーナ付きのコネクタは、端子金具を収容可能な複数のキャビティを貫通させたハウジングと、このハウジングの側面に設けられた窓孔と、この窓孔から装着されて端子金具を抜け止め状態で係止するリテーナとを備えて構成されている。この種のコネクタのなかには、リテーナを略門型状に形成し、リテーナがハウジングを跨いで装着されるようにしたものがある(例えば、以下の特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−138783号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、リテーナが略門型状に形成される場合には、ハウジングの側壁の板厚にリテーナの側片の板厚が加算されてハウジングの横幅が増大するおそれがあるから、ハウジングの側壁の対応する部分を切除することでリテーナの側片にハウジングの側壁を兼用させるようにし、もってハウジングの横幅をなるべく小さくすることが考えられる。しかしこうすると、図13に示すように、ハウジング1に設けられた窓孔2は、リテーナ3の挿入側およびそれに直交する両側の3方に開放されてしまうから、リテーナ3が装着されていないときに窓孔2の幅寸法を狭めるような同図矢印方向の圧縮力が作用すると、ハウジング1全体として撓み変形するといった強度的な弱さが懸念される。
また、リテーナ3は、端子金具の挿抜を許容する仮係止位置と、この仮係止位置よりも深い挿入位置で端子金具を係止する本係止位置との間を変位可能とされているが、端子金具が挿入されていないときに、衝撃等の僅かな力によってもリテーナ3が仮係止位置から本係止位置へと落ち込むことが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジングの強度を確保することを目的とする。また、他の目的は、リテーナが不用意に仮係止位置から本係止位置に落ち込まないようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具が収容されるキャビティが設けられたハウジングと、このハウジングに穿孔されて前記キャビティを横切るように形成された溝部と、この溝部に差し込まれて前記端子金具を抜け止め状態で係止するリテーナとを備えたコネクタにおいて、前記溝部は、前記ハウジングにおいて前記リテーナの差し込まれる面とそれに略直交する両側面にかけて開口されることで、前記ハウジングを貫通しつつ前記リテーナの差し込まれる側及びそれと略直交する側の3方に開放されており、この両側面には、前記溝部の開口と交差するようにブリッジ部が架設され、さらに、前記リテーナは、押し部とその両端部に設けられた一対のアーム部とを備えて前記ハウジングに跨って装着され、前記端子金具が挿入されていないときには前記アーム部が前記ハウジング側に仮係止されることで前記端子金具の挿抜を許容する仮係止位置に留め置かれ、前記端子金具が挿入されたときには前記アーム部の開き動作を伴いつつ前記ハウジング側との仮係止状態を解いて前記端子金具を係止する本係止位置に至るようになっており、前記ブリッジ部の内側面には摺動部が設けられており、前記押し部に対して正規の押し込み力を与えたときに、前記アーム部の根元側に前記ブリッジ部の前記摺動部が摺動することで前記アーム部の根元側からの開き動作が規制される一方、前記アーム部の先端側が外側に拡開変形されることにより、前記リテーナが前記仮係止位置から前記本係止位置に移動するようになっている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
ハウジングは、リテーナの差し込まれる面とそれに略直交する両側面とにかけて開口されることでハウジングを貫通しつつリテーナの差し込まれる側及びそれと略直交する側の3方に開放されているから、リテーナが装着されていないときに溝部の幅を狭めるような圧縮力が作用すると撓み変形することが懸念される。しかるに本発明においては、溝部の開口と交差するようにブリッジ部が架設されているから、溝幅を狭めるような圧縮力が作用しても、このブリッジ部が圧縮力に対して突っ張るよう作用しハウジングの撓み変形を阻止する。また、リテーナは、押し部に対して正規の押し込み力が付与されたときに、ブリッジ部の内側面に設けられた摺動部と摺動することにより、アーム部の根元側からの開き動作が規制される一方でこのアーム部の先端側の拡開が許容されて仮係止位置から本係止位置へと移動するようになっているから、不用意に仮係止位置から本係止位置へと落ち込むことがない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図12に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の雌型コネクタを示すものであり、この雌型コネクタを構成する雌側ハウジング(以下、単にハウジング10という)は、合成樹脂により一体に形成されて相手側となる雄型コネクタの雄側ハウジング(図示せず)と嵌合可能とされている。なお、以下の説明においては、雌雄の両ハウジングの嵌合面側を前方とする。
【0011】
ハウジング10は、図2に示すように、小型の端子金具と大型の端子金具とを混在させて収容するハイブリッド型と称されるものであり、幅方向の中央部に小型の端子金具を挿入可能な小キャビティ11が上下2段に分かれて配され、その両側に大型の端子金具を挿入可能な大キャビティ12が上下2段に分かれて配されている。ハウジング10の上面のうち小キャビティ11に対応する部分には凹部13が設けられ、この凹部13の底面には撓み可能なロックアーム14が片持ち状に形成されている。このロックアーム14は、雌雄の両ハウジングの嵌合時に、相手側のロック受け部(図示せず)と係合して両ハウジングをロック状態となすものである。そして、ロックアーム14の先端両側には張出し片14Aが突出して形成されている。ハウジング10の上面のうちロックアーム14を間に挟んだ両側にはロックアーム14と平行して保護壁15が立設されており、この保護壁15の先端には規制壁15Aが内側に突出して形成されている。この規制壁15Aは、ロックアーム14が過度撓みしたときに張出し片14Aと係合してロックアーム14の過度撓みを阻止している。
ハウジング10の下面における幅方向の中央部には、凹部13の凹み分だけ下方に突出する凸部16が設けられている。また、ハウジング10においてキャビティ11,12を構成する内壁には、撓み可能なランス20が片持ち状に形成されている。このランス20は、端子金具30と係合して端子金具30を抜け止め状態で係止するものである。
【0012】
端子金具30は、図1に示すように、前方に箱形の本体部31を備えた雌型端子金具であり、本体部31の内側には、相手側の雄型端子金具(図示せず)との接点部32を備えた弾性接触片33が折り曲げにより形成されている。本体部31の底壁にはランス20が係入可能な係止孔34が貫通して設けられ、また、本体部31の後端には後述するリテーナ50と係合可能なスタビライザ39及び顎部35が形成されている。端子金具30がハウジング10の後方からキャビティ11,12内に挿入されると、端子金具30の係止孔34にランス20が嵌まり込んで一次係止される。その後、さらに端子金具30のスタビライザ39及び顎部35にリテーナ50が係合して二次係止され、もって端子金具30の戻り方向への移動が確実に阻止されるようになっている。なお、図1では、小型の端子金具30を図示し、大型の端子金具は図示していないが大型の端子金具も大きさの違いを除けば基本構造は同じである。
【0013】
また、ハウジング10には、下面に開口するとともに両側面にも開口し、かつ各キャビティ11,12を横切るような溝部40が形成されている。溝部40にはリテーナ50がほぼ緊密に差し込まれるようになっている。具体的に溝部40は、ハウジング10の長さ方向の略中央部に設けられた一定幅の帯状溝として構成され、リテーナ50挿入側及びそれと略直交する側の3方に開放されている。ハウジング10の下面には、図3に示すように、斜めに切り欠かれて終端が溝部40に開口する治具誘い部18が設けられている。この冶具誘い部18に図示しない冶具が誘い込まれると、溝部40に装着されたリテーナ50が容易に取り外せるようになっている。そして、溝部40の内側には、ハウジング10の外縁と段状に連なるリテーナ支持部19が形成されている。リテーナ支持部19の両側壁には、リテーナ50の仮係止部51及び本係止部52(後述する)と係合可能な被係止部60が突設されている。被係止部60の上下両面はテーパ状に形成されており、リテーナ50がこの被係止部60を乗り越えるときの案内面となっている。
【0014】
また、ハウジング10の両側壁には、図4に示すように、溝部40によって隔てられた前後の側壁間を架け渡すようにして左右で2本のブリッジ部70が設けられている。具体的にブリッジ部70は、リテーナ50を内側に配した状態で溝部40の上方を略直角に横切って一体形成されており、ハウジング10の外壁より外部側方へ少しだけ突出している。ブリッジ部70のうち溝部40と対向する中間部は、図3に示すように、リテーナ50の逃し用に薄肉化された薄肉部75とされている。一方、薄肉部75を挟んだブリッジ部70の両端部は、厚肉化されてハウジング10に一体に繋がっている。そして、ブリッジ部70の薄肉部75の内側面には、リテーナ50が移動する際にリテーナ50のアーム部53(後述する)と摺動可能な摺動部71が設けられている。また、ブリッジ部70の上端には、嵌合凹部72が切り欠きにより形成されており、この嵌合凹部72には、リテーナ50のロック部54(後述する)が嵌入可能とされている。
【0015】
次にリテーナ50について説明すると、リテーナ50は、図5に示すように、押し部55とこの押し部55の両端部に突出する一対のアーム部53とで略門型状に形成されてハウジング10に跨って装着される外枠56と、この外枠56に連成されてハウジング10内のキャビティ11,12を横切るように配された内枠57とからなる。リテーナ50の装着時に外枠56は、周りのハウジング10の側壁とほぼ面一をなし、ハウジング10の壁面を兼用するようになっている。内枠57には端子金具30の顎部35と係合して端子金具30を抜け止め保持する係止突部58が設けられている。また、内枠57は、図10の(B)に示すように、外枠56の板厚方向に関する前半部に形成されており、外枠56の板厚方向に関する後半部には、ハウジング10のリテーナ支持部19に載置される差込部59が形成されている。この差込部59がリテーナ支持部19に当て止めされることでリテーナ50の本係止位置(後述する)より奥への挿入が規制されるようになっている。
【0016】
リテーナ50のアーム部53には、このリテーナ50の差し込み方向に沿って順に仮係止部51と本係止部52とが貫設されている。仮係止部51は、リテーナ50が溝部40に浅く差し込まれたときにハウジング10の被係止部60と係合することでリテーナ50をそこに留め置き(図10の(A)、(B)及び図7に示される状態)、この仮係止位置における端子金具30のキャビティ11,12内への挿抜を許容している。一方、本係止部52は、リテーナ50が正規の押し込み力で押し込まれたときに仮係止部51に代って被係止部51と係合することでリテーナ50をそこに留め置き(図11の(A)、(B)及び図9に示される状態)、この本係止位置においてキャビティ11,12に挿入された端子金具30を抜け止め状態で係止している。
【0017】
また、リテーナ50のアーム部53の外壁には、ロック部54が突設されている。このロック部54は、リテーナ50が仮係止位置に留め置かれたときにブリッジ部70の下縁と当接してリテーナ50が仮係止位置から本係止位置へ不用意に移動するのを規制する一方、リテーナ50が本係止位置に至ったときにブリッジ部70の上縁における嵌合凹部72に嵌まり込むように構成されている。そして、ロック部54が嵌合凹部72に嵌まり込むと、ロック部54の上縁とブリッジ部70の上縁とがほぼ面一となるように設定されており、かくして両ハウジングの嵌合時にはロック部54が相手側の雄側ハウジングと干渉せずに円滑な嵌合動作が行われるようにしてある。
【0018】
本実施形態は以上のような構成であり、続いてその作用を説明する。
まず、リテーナ50をハウジング10の溝部40に軽く差し込み、その状態で押し部55を押し込んでリテーナ50の仮係止部51をハウジング10の被係止部60に嵌め込み、もってリテーナ50を仮係止状態とする。
次に、端子金具30をキャビティ11,12内に挿入する。このとき、端子金具30は、リテーナ50の係止突部58とは干渉せずに挿入され、正規位置まで挿入されるとランス20により一次係止される(図10(A)、(B)及び図7参照)。
【0019】
さらに押し部55に正規の押し込み力を与えてリテーナ50を奥へ押し込み、仮係止部51を被係止部60から抜出させる。リテーナ50が仮係止位置から本係止位置へ向けて移動する間、リテーナ50のアーム部53は、図8に示すように、ロック部54がブリッジ部70の摺動部71と摺動することで内側に撓んで開き動作が規制される一方、ロック部54より先端側が被係止部60に乗り上がることで拡開変形されるようになっている。ロック部54がブリッジ部70との係合を解き、かつ本係止部52が被係止部60に嵌め込まれるとリテーナ50が本係止状態とされる。リテーナ50の装着が完了した後、雌雄の両ハウジングを嵌合させると、ハウジング10に設けられたブリッジ部70は、雄側ハウジングのガイド溝(図示せず)に嵌まって案内される。すなわち、ブリッジ部70は、ハウジング10を正規の嵌合位置へ案内する役割をも有している。
【0020】
ここで、仮に、リテーナ50が装着されていない状態で溝部40の溝幅を狭めるような図4の矢印方向に示す圧縮力が作用したとしても、本実施形態においては、ハウジング10の両側面に溝部40の開口と略直交するブリッジ部70が架設されているから、ブリッジ部70がこうした圧縮力に抗して突っ張るよう作用してハウジング10の撓み変形が阻止される。この結果、ハウジング10が塑性変形する事態を回避できる。
【0021】
また、図12に示すように、仮に、ハウジング10にブリッジ部70がない場合に押し部55に対して正規の押し込み力より軽い押し込み力が与えられると、リテーナ50は、アーム部53が根元側から拡開することに起因して容易に仮係止位置から本係止位置へと落ち込んでしまう。しかし、本実施形態の場合、上記のように押し部55に対して軽い押し込み力が与えられても、アーム部53の根元側にブリッジ部70の摺動部71が係合してアーム部53の根元側からの開き動作が規制されるようにしてあるから、リテーナ50は、不用意に仮係止位置から本係止位置へと落ち込むことがない。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0023】
(1)上記実施形態では雌側ハウジングの例を示したが、本発明においては、雄側ハウジングに適用しても構わない。
(2)上記実施形態ではリテーナ側に仮係止部と本係止部とを設け、ハウジング側に被係止部を設けていたが、本発明においては、リテーナ側に被係止部を設け、ハウジング側に仮係止部と本係止部とを設けても構わない。
(3)上記実施形態では仮係止部と本係止部とを貫設し、被係止部を突設していたが、本発明においては、仮係止部と本係止部とを突設し、被係止部を貫設もしくは凹設しても構わない。
【0024】
(4)上記実施形態ではブリッジ部が溝部の開口と略直交して架設されていたが、本発明においては、ブリッジ部が溝部の開口と交差して架設されていればよい。
(5)本発明においては、リテーナにロック部が設けられていなくてもよい。
(6)ブリッジ部の本数は、任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタの分解側面図
【図2】ハウジングの正面図
【図3】ハウジングの底面図
【図4】ハウジングの側面図
【図5】リテーナの前面図
【図6】リテーナの背面図
【図7】リテーナが仮係止位置にあるときのコネクタの縦断面図
【図8】リテーナが仮係止位置から本係止位置に至る途中のコネクタの縦断面図
【図9】リテーナが本係止位置にあるときのコネクタの縦断面図
【図10】(A)リテーナが仮係止位置にあるときのコネクタの側面図
(B)X−X断面図
【図11】(A)リテーナが本係止位置にあるときのコネクタの側面図
(B)Y−Y断面図
【図12】ブリッジ部がないときを想定した参考例としてのコネクタの縦断面図
【図13】従来の参考例としてのコネクタの分解側面図
【符号の説明】
10…ハウジング
11,12…キャビティ
20…ランス
30…端子金具
40…溝部
50…リテーナ
53…アーム部
55…押し部
70…ブリッジ部
71…摺動部
Claims (1)
- 端子金具が収容されるキャビティが設けられたハウジングと、このハウジングに穿孔されて前記キャビティを横切るように形成された溝部と、この溝部に差し込まれて前記端子金具を抜け止め状態で係止するリテーナとを備えたコネクタにおいて、
前記溝部は、前記ハウジングにおいて前記リテーナの差し込まれる面とそれに略直交する両側面とにかけて開口されることで、前記ハウジングを貫通しつつ前記リテーナの差し込まれる側及びそれと略直交する側の3方に開放されており、この両側面には、前記溝部の開口と交差するようにブリッジ部が架設され、さらに、
前記リテーナは、押し部とその両端部に設けられた一対のアーム部とを備えて前記ハウジングに跨って装着され、前記端子金具が挿入されていないときには前記アーム部が前記ハウジング側に仮係止されることで前記端子金具の挿抜を許容する仮係止位置に留め置かれ、前記端子金具が挿入されたときには前記アーム部の開き動作を伴いつつ前記ハウジング側との仮係止状態を解いて前記端子金具を係止する本係止位置に至るようになっており、
前記ブリッジ部の内側面には摺動部が設けられており、前記押し部に対して正規の押し込み力を与えたときに、前記アーム部の根元側に前記ブリッジ部の前記摺動部が摺動することで前記アーム部の根元側からの開き動作が規制される一方、前記アーム部の先端側が外側に拡開変形されることにより、前記リテーナが前記仮係止位置から前記本係止位置に移動するようになっていることを特徴とするコネクタ。
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