JP4178762B2 - リッツ線コイルを用いた磁気刺激装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リッツ線を用いたコイルにパルス電流が給電されることにより、生体に渦電流を誘起させる変動磁場を発生して磁気的治療を行うためのコイル刺激装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気的な尿失禁用の治療装置として、刺激用電極を患者に装着し、電気的パルスを与えて尿失禁を治療する周知の電気刺激装置に代えて、本願出願人は、先に出願した特開平9−276418号公報(アメリカ特許第5,984,854)により、磁気刺激による尿失禁治療装置を提案した。この装置は、室内に据え置かれるコイル据え付け具に磁気刺激コイルが取り付けられたものであって、そのコイルに繰り返しパルス状の磁束を発生させ、その磁束が患者の腰から下肢に至る範囲の部位に及ぶようにして、骨盤底筋群、陰部神経等を渦電流で刺激するものである。また、本出願人は、同じく先に、特開平10−234870号公報に示すような磁気刺激式尿失禁治療用コイルを提案した。
その他にも、磁気的治療として種々のコイル装置が近年開発されてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のコイルは、一般電線あるいは銅製パイプ(ホローコンダクタ)が用いられた。このため、従来のコイルの交流実効抵抗は大きく、電気的損失が大きかった。この結果、使用の回数がわずかであっても装置の使用を続けているうちにコイルの発熱が大きくなり、コイル温度が上昇し火傷の危険があった。そこで従来のコイルは大容量の冷却装置が必要であった。
【0004】
本発明の目的は、種々の磁気的治療部位または診断部位を低消費電力で効率良く刺激することができる実用的な磁気刺激装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0028】
請求項1の磁気刺激装置は、変動磁場を患者の体内に発生させ治療するため磁気的に刺激する磁気刺激装置において、変動する電流が供給されることにより磁界を発生し、防音材または吸音材で絶縁層を形成し、インダクタンスが10〜50μHであるリッツ線コイルと、前記リッツ線コイルに変動する電流を供給する電源と、前記電流の交流周波数が1.0〜10kHz、前記電流のパルス幅が100μs〜1ms、前記電流のコイル電流ピーク値が1000〜8000A、刺激周波数が1Hz〜100Hzの範囲で前記リッツ線コイルを駆動する駆動制御部と、を有することを特徴とする。これにより、コイルに発生する熱を抑え、安全に駆動することができるほか、コイル部分同士の衝突による騒音を防止することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の筋肉、神経系への磁気的な治療用のリッツ線コイル部を説明する。図1にリッツ線コイル6の断面図を示す。素線1は、導体部2を絶縁層3で被覆されて成るものである。第1のリッツ線4は、素線1を7本撚り合わせ、その外周を絶縁層11によって被覆して形成したものである。第2のリッツ線5は、第1のリッツ線4を7本撚り合わせ、その外周を絶縁層12によって被覆して形成したものである。リッツ線コイル6は、第2のリッツ線5を7本撚り合わせ、その外周を絶縁層13によって被覆して形成したものである。絶縁層11、12、13は、ガラス繊維のテープ、プラスチックテープあるいはゴム系のテープが用いられる。また、テープ類の代わりに絶縁性のチューブを採用しても良いし、シリコーン等の柔軟性のある接着剤で形成しても良い。なお、絶縁層11および12は省略が可能である。
【0030】
一般に導線は、高周波電流を流したとき、表皮効果が生じ、電流が表面に集中し、実効抵抗が増大し、電気的損失が増加する。表皮の深さδは次式で示されるように、電流の周波数で決まり、周波数が大きいほどその深さは小さくなる。
δ={1/(πfμσ)}1/2
μ;透磁率、 σ;電気伝導度、 f;周波数
【0031】
そして、実効抵抗は導線の半径がδ以上で甚だしく増大すること、およびコイルを巻回する空間の大きさによって、上記関係式を参照しながら、リッツ線コイル6の素線1の導体部2の直径、リッツ線コイル6の断面積等を決定してゆくのがよい。
【0032】
図1に示すリッツ線6の素線1は、銀メッキ、すずメッキあるいは金メッキされた軟銅線、あるいは無酸素銅線あるいは銀線が用いられる。リッツ線6の絶縁層3,11,12,13の絶縁材料は、特に多孔質PTFEあるいは発泡FEPがよい。電線被覆材料も、多孔質材料あるいは発泡材料を用いるのがよく、例としては多孔質PTFEあるいは発泡FEPがよい。あるいは、絶縁材料は、一般絶縁材料であるPTFE、多孔質PTFE、PFA、FEP、発泡FEP、ETFE、PVdF、ミレンフィルムおよびポリイミドフィルムで絶縁した素線を、さらに多孔質PTFEあるいは発泡FEPで覆った複合絶縁材料を用いても良い。あるいは被覆材料を一般電線被覆材料であるポリエチレン、ナイロン、塩化ビニルまたはポリウレタンとし、その上あるいは下を多孔質PTFEあるいは発泡FEPで覆った複合絶縁材料を用いても良い。リッツ線コイル6を巻回してなるコイル部のパルス電流による駆動時には、コイルとコイルとの間に生じる引き寄せ合う力によりコイル6同士が衝突し、その際に騒音が生じる。その騒音を軽減・防止するため、リッツ線の素線1の絶縁層3を0.025〜2.0mm、第1のリッツ線4の絶縁層11を0.05〜3mm、第2のリッツ線5の絶縁層12を0.1〜5mm、さらにはリッツ線コイル6の絶縁層13を0.2〜10mmとし、それらに、防音材あるいは吸音材を用いてもよい。
【0033】
なお、防音効果のレベルによっては、適宜、特定の素線あるいは絶縁層についての防音材あるいは吸音材の使用を省略してもよい。リッツ線コイル6の素線1を含む導体部2の直径は、0.2〜1.5mmが良い。さらには、磁束の集中と素線1の断線の危険性の回避の観点からは0.3mm程度がよい。
【0034】
絶縁層3,11,12,13に用いられる防音材・吸音材の材料としては、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、シリコーン、ポリサルファイド系、アクリル系、変性ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ブチルゴム系、SBR系、ガラスウール系、ロックウール、フェルト、ビニルシート、帆布カンバスなどを用いることができる。性状は多孔性、有孔性にしてもよい。なお、漏電の危険性を避けるため、乾式が良い。
【0035】
リッツ線コイル6を巻回してなるコイル部を利用した神経系の治療用コイル駆動方式の第1の方式としては、交流周波数1.0〜3.3kHz、インダクタンス10〜50μH、パルス幅300μs〜1ms、コイル電流ピーク値2500〜8000A、刺激周波数15〜50Hzを条件とした駆動方式がある。この第1の駆動方式は、主に筋肉トレーニング効果による治療を目的とし、特に、尿失禁治療として腹圧性尿失禁、混合性尿失禁の治療によい。
この方式によれば、ピーク値が大きいコイル電流を流しても、リッツ線を使用することにより表皮効果を低減でき、大幅にコイル部からの発熱を低減できる。
【0036】
腹圧性尿失禁、混合性尿失禁の治療では、コイル装置を臀部下側に配置し、骨盤底筋群、仙骨神経、陰部神経に磁束が集中するようを刺激する。
【0037】
リッツ線コイル6を巻回してなるコイル部を利用した神経系の治療用コイル駆動方式の第2の方式としては、交流周波数1.0〜3.3kHz、インダクタンス10〜50μH、パルス幅300μs〜1ms、コイル電流ピーク値1000〜5000A、刺激周波数50〜100Hzを条件とした駆動方式がある。この第2の駆動方式は、主に筋肉トレーニング効果による治療あるいは温熱効果による治療を目的とし、特に、変形性膝関節症、腰痛、疼痛、肩こり、痙性、腫瘍(ガン)、前立腺肥大症、歩行困難、骨癒合促進、関節の治療に良い。
この方式によれば、より刺激周波数を大きくすることで筋肉の強縮が起こりやすくなり、また上記パルス幅の範囲で大きくすることにより筋肉刺激がより強くなる。また、刺激周波数を増すことは生体内に電流が流れる単位時間当たりの回数を増すことになり、パルス幅を大きくすることは生体内に電流が流れる時間を増すことになるので、生体の抵抗によって電流が消費されて発熱するため、この発熱により温熱効果も得られる。筋肉の収縮、弛緩の繰り返しにより筋肉の強化ができる。
なお、筋肉トレーニングは、強縮による筋疲労を避けるためにバースト状磁気刺激により行ってもよい。
【0038】
変形性膝関節症治療では、コイル装置を膝頭あるいは膝頭周囲に緊切して配置して連続あるいはバースト磁気刺激を加えると、痛みが無くなる、あるいは軽減する。
【0039】
腰痛治療では、コイル装置を腰の周囲に近接して配置して、連続あるいは、バースト磁気刺激を加えることにより、痛みを無くす、あるいは軽減できる。
腰痛の原因は様々であるが、一般的な原因は、整形外科領域、と内科領域および加齢老化あるいは姿勢の悪さによるもの等に分けられる。磁気刺激を加えることにより、血液循環の促進、筋緊張の軽減、疼痛の軽減効果がある。
【0040】
疼痛治療では、コイル装置を痛みが生じている部位またはそれに効く指圧ポイントに当て、連続あるいはバースト磁気刺激を加えることにより、痛みがなくなる、あるいは軽減する。
疼痛の原因は、痛みが生じた部位に刺激が加わったり、損傷が生じたりした結果、発痛物質が生じるためといわれる。磁気刺激を加えることにより血流改善効果が生じ、これが治療につながる。
【0041】
肩こり治療では、コイル装置を肩に近接してまたは肩こりに効く指圧ポイントに磁気が当たるように配置することにより、肩こりを軽減させることができる。
【0042】
痙性とは、伸長反射が低閾値で、腱反射が亢進し、クローヌスが起こりやすい状態で、一般に錘体路障害に基づく。また、痙性は固縮とともに生じる。
痙性部位への磁気刺激による抑制効果は、相反神経支配の原理により説明される。治療条件は、痙性筋の拮抗期に対して最大収縮が起こる程度の磁気刺激強度で、80〜100Hzの磁気刺激を15〜30分程度、痙性筋に加える。パルス幅は100μs〜1msで選定されるとよい。痙性筋の拮抗筋にコイル装置により高頻度、連続あるいはバースト磁気刺激を加えることにより、痙性が緩和される。
なお、痙性には、錘体路障害によって両下肢筋、股内転筋に痙性が見られる痙性歩行などがある。
【0043】
腫瘍(ガン)の温熱治療では、生体のガン疾患組織に特異的に反応する薬剤に磁性体を結合させ、この磁性体結合薬剤を生体内に注入した状態で、ガン疾患部に連続あるいはバースト磁気刺激を加える。ガン細胞は熱に弱く、増殖能力を失うため、死滅する。
ガン細胞は一般的に熱に弱く、42〜45度、特に43度付近で加熱されると増殖能力を失い、やがて死滅するといわれる。そこで、周囲の組織の影響を可能な限り小さくして、ガン組織だけを選択的に加温して治療する。
体外から変動磁場を加えてガン組織のみ加温してガンの治療を行っても良い。この場合、生体深部にあるガン組織に導電性の良い金属(白金、金、銀、ステンレス等)を局所的に埋め込む。次に体外から変動磁場を加えてこの金属を加温する。加温時はサーミスタ等の温度センサを刺激部位に挿入する等して、加温温度を制御してもよい。この結果、ガン組織のみ加温することができ、ガンの治療を行うことができる。無侵襲の加温法としては超音波加温法がある。超音波加温法は表皮面を温めることなく、深部局所腫瘍を無侵襲で温めることができる。
しかし、超音波は音響インピーダンスが大きく異なる境界、例えば、空気ー軟組織または、骨ー軟組織界面などで、強い反射や屈折が起きる。このため、超音波加温法は、肺や消化器などのガスの多い部位や、近くに骨のある部位を温める方法としては適してはいない。
【0044】
前立腺肥大の原因は、加齢と睾丸にあるといわれている。これらの原因により体内のホルモン環境が変化し、前立腺肥大が発症すると考えられている。
前立腺肥大治療では、コイル装置から前立腺肥大部に、高頻度、連続あるいはバースト磁気刺激を与えることにより、肥大部分の温度を上昇させることができる。
治療により温める温度を45度以下にする温熱療法と、45度以上あるいは55度以上とする高温療法がある。
【0045】
歩行困難の治療用では、コイル装置より、腰部、大腿部、脚部、膝部、足首または足部等に、高頻度、連続あるいはバースト磁気刺激を加えることにより、歩行困難を解消あるいは軽減することができる。
【0046】
骨癒合促進、関節治療では、粉砕型開放骨折、骨粗しょう症による骨折、大腿骨頸部内側骨折、手舟状骨折、感染症偽関節、先天性偽関節などに適用でき、これら骨折部位、偽関節部位に、高頻度、連続あるいはバーストの磁気刺激を加えることにより骨癒合促進が可能である。
【0049】
リッツ線コイル6を巻回してなるコイル部を利用した神経系の治療用コイル駆動方式の第3の方式としては、交流周波数3.3〜10kHz、インダクタンス10〜50μH、パルス幅100μs〜300μs、コイル電流ピーク値2500〜8000A、刺激周波数1Hz〜10Hzを条件とした駆動方式がある。この第3の駆動方式は、主に神経刺激による治療または診断による治療を目的とし、特に、パーキンソン病の治療、経頭蓋脳刺激の診断、てんかんの治療、神経改善治療、切迫性尿失禁、血流改善の治療によい。本条件は、パルス幅が小さいため、神経刺激に適している。この方式によれば、第1および第2の駆動方式よりも、交流周波数がより高く、高いコイル電流ピーク値であっても、リッツ線を用いたことで表皮効果を低減し、コイル部の発熱を低減することができる。
【0050】
パーキンソン病の治療では、コイル装置を頭に近接して配置することにより、歩行動作を軽快させる等、パーキンソン病特有の症状を軽減できる。
パーキンソン病は、黒質線条体ニューロンが障害されて線条体での神経伝達物質であるドパミンの分泌が障害されることによって発症する。
その主因は、チロシン水酸化酵素低下によるドーパミン生合成障害であると考えられている。
【0051】
経頭蓋脳刺激用であることを特徴とするコア付コイル装置である。これによれば、コイル装置を頭に近接して配置することにより脳内の刺激したい部位以外悪影響を与えることなく、脳内の刺激したい部位に、高頻度、連続あるいはバースト磁気刺激を加えることができる。
【0052】
てんかんの治療では、コイル装置により迷走神経に、高頻度磁気、連続、あるいはバースト磁気刺激を加えることにより、てんかん発作の解消あるいは軽減が図られる。
【0053】
切迫性尿失禁治療では、骨盤底筋群、仙骨神経、陰部神経等に磁気刺激が集中するように刺激する。
【0054】
血流改善では、コイル装置より、血流が悪くなった(不十分な)部位あるいはその自律神経に、高頻度、連続あるいはバースト磁気刺激を加えることにより、自律神経が刺激され、血液循環が改善され、血行が改善される。
【0055】
上記のように、種々の症状にあわせて磁気治療または診断のための磁気刺激の駆動条件を決定する。
【0056】
図2に、図1で示されたリッツ線コイル6を巻回してなるコイル部21とハウジング22からなる神経系の治療用コイル装置を示す。コイル部21とハウジング22との間には間隙23があるように配置されている。コイル部21にリッツ線コイルを採用することにより発熱を抑制させ、コイル部21で生じた熱が直接生体表皮に伝わり低温火傷をしないように、間隙23が設けられている。コイル部21により生ずる変動磁場により発生する渦電流密度のピーク値は、コイル部の中心軸側よりも、コイル部の付近にあるので、刺激する部位付近にコイル装置を当てるようにする。また、表皮効果の抑制により実効抵抗を小さくすることができ、大きなコイル電流を流すことができる。この結果、大きな刺激強度の磁気刺激を加えることが可能となるため、コアを用いて磁束を集中させて大きな渦電流を得る工夫は不要となる。このように、リッツ線の採用に伴い、コアを用いない仕様とすることもできる。
【0057】
尿失禁治療用に用いる場合は、臀部下側にコイル部21を有するコイル装置を配置し、骨盤底筋群、仙骨神経、陰部神経等に磁束を集中するとよい。リッツ線コイル6の巻数は5〜100ターンがよい。
図3は、コイル部21により生体内に刺激を行った場合の渦電流密度の分布についての数値解析を示す。X軸はコイル中心からの距離、Y軸は渦電流密度絶対値、Z値は生体表面からの深さである。この図から明らかなように渦電流密度分布の最大値は、コイルの法線方向に分布する。したがって刺激したい部位の大きさに合わせて、コイルの大きさを決定するのがよい。尿失禁治療の場合、コイルの大きさは骨盤底筋群、仙骨神経、陰部神経等の広がりから、コイルの直径Dを40〜160mm程度にするのがよい。
【0058】
上述のように、磁束密度を集中させて刺激効率を高めるために、コアを用いてもよい。
図4は、コアを設けたコイル装置要部の外観である。図4に示すようにコア8はW型である。コア8は2つのU字状のコア要素8a,8bのそれぞれ一方の端部を同じ方向に向けられて相互に固着されている。コア要素8a,8bは積鉄心または巻鉄心であり、材料としてはパーメンジュール、方向性珪素鋼板、無方向性珪素鋼板、パーマロイ、センダスト、純鉄あるいはフェライト等が適している。
コア8はW型としたが、図5のようにカット・コアを用いてもよいし、W型コアの代わりに、図6のように積鉄心のをE型としてもよい。
特に尿失禁治療用として用いる場合は、コアを用いる場合と用いない場合のいずれの場合も、座部の下あるいは座部の中ににコイル部を設け、椅子として着座できるように構成するとよい。
【0059】
図7にリッツ線コイル6を駆動する駆動装置の構成を示す。この駆動装置について説明する。コンデンサ31は、励磁電源部32により充電されるようになっている。リッツ線コイル6は、サイリスタ33とダイオード34が相互に逆方向に向けられて並列接続された回路を介してコンデンサ31に接続されている。コンデンサ31の一端は放電部35に接続されている。制御部36は、励磁電源部32、サイリスタ33および放電部35をそれぞれ制御する回路である。操作部37は種々の指示や制御に必要なデータを制御部36に入力するためのものである。
【0060】
次に、このように構成されたコイル装置の動作を説明する。この例では、最大刺激強度法といって、患者に対する刺激強度を徐々に上げていき患者が我慢できる最大刺激で刺激する方法を説明する。治療開始となると操作者は操作部37を操作し、制御部36を介して、励磁電源部32からコンデンサ31に与える電圧を徐々に上げていく。制御部36は、コンデンサ31に蓄えられるエネルギーがその最大充電エネルギーの40%までは、リッツ線コイル6に一相波形の電流が繰り返し流れるようにし、40%を越えると二相波形の電流が繰り返し流れるようにする。
なお、ここで、コイル装置が汎用的なものであれば、操作部37は治療対象を選択できるように構成させ、これにより選択された治療対象に対し上記に述べた適切な刺激条件を制御部36により制御させてもよい。尿失禁治療装置であれば、治療対象が腹圧性か切迫性か混合性かを選択するスイッチを操作部37に設け、選択された治療対象に対しての上記に述べた適切な刺激条件で制御部36により制御させてもよい。
【0061】
一相波形の場合、各部は次のように動作する。まず、制御部36は励磁電源部32からコンデンサ31に電力を供給し充電させ、次にサイリスタ33に制御パルスを送出してサイリスタ33をオンとすると、コンデンサ31からサイリスタ33を介してリッツ線コイル6に電流が流れる。次に制御部36は、コンデンサ31に蓄えられた電気エネルギーを放電部35により放出する。次に制御部36は、サイリスタ33をオフとする。以後、上記の動作は繰り返し行われる。
【0062】
二相波形の場合、各部は次のように動作する。まず、制御部36は励磁電源部32からコンデンサ31に電力を供給し充電させ、次にサイリスタ33に制御パルスを送出してサイリスタ33をオンとすると、コンデンサ31からサイリスタ33を介してリッツ線コイル6に電流が流れる。そして、コンデンサ31には逆極的に再度充電される。次にコンデンサ31に蓄えられた電気エネルギーは、放電され、リッツ線コイル6とダイオード34を通って流れる。次に制御部36は、サイリスタ33をオフとする。以後、上記の動作は繰り返し行われる。図8にこの駆動により二相波形で出力した場合のコイルにおける波形を示す。
【0063】
図9に二相波形の場合のリッツ線コイル6の周辺のある点における電場Eの変化を示す。一相波形の場合のリッツ線コイル6に電流を流す期間は、放電部35やサイリスタ33の動作のタイミングを制御することによって、二相波形における周期Tの1/4や1/2とすることができる。
【0064】
このように、リッツ線コイル6に流す電流を初めは一相波形とし、次に所定以上の刺激強度とするためにその電流を二相波形とする。このようにすると、一相波形期間に患者が刺激に慣れるので、患者に急激な刺激を与えないで治療を行うことができる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、神経、筋肉、疾患部位に変動磁場を発生させて誘導された渦電流で刺激して、治療または診断を行うための磁気刺激装置において、変動磁場を発生させるリッツ線コイルの絶縁層に防音材・吸音材を使用したので、巻回されたコイル間の衝突による騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置のリッツ線コイル6の断面を示す図。
【図2】図1に示したリッツ線コイル6を用いた刺激装置の例を示す断面図。
【図3】コイルから発生した磁気刺激により生体内で発生する渦電流密度分布を示す図。
【図4】図1に示したリッツ線コイル6を用いたコア付コイルの例を示す図。
【図5】図1に示したリッツ線コイル6を用いたコア付コイルの他の例を示す図。
【図6】図1に示したリッツ線コイル6を用いたコア付コイルの他の例を示す図。
【図7】変動磁場を発生させる装置の駆動装置の構成を示す図。
【図8】図7に示した装置の駆動部により出力される二相波形を示す図。
【図9】図7に示した装置の駆動部により発生された電場を示す図。
【符号の説明】
1 素線
2 導体部
3 絶縁層
4 第1のリッツ線
5 第2のリッツ線
6 リッツ線コイル
8 コア
21 コイル部
22 ハウジング
23 間隙
31 コンデンサ
32 励磁電源部
33 サイリスタ
34 ダイオード
35 放電部
36 制御部
37 操作部
Claims (1)
- 変動磁場を患者の体内に発生させ治療するため磁気的に刺激する磁気刺激装置において、
変動する電流が供給されることにより磁界を発生し、防音材または吸音材で絶縁層を形成し、インダクタンスが10〜50μHであるリッツ線コイルと、
前記リッツ線コイルに変動する電流を供給する電源と、
前記電流の交流周波数が1.0〜10kHz、前記電流のパルス幅が100μs〜1ms、前記電流のコイル電流ピーク値が1000〜8000A、刺激周波数が1Hz〜100Hzの範囲で前記リッツ線コイルを駆動する駆動制御部と、
を有することを特徴とする磁気刺激装置。
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